説明

エンボステープの製造方法、エンボステープの製造装置、およびエンボステープ

【課題】生産性が高く、高品質のエンボステープを製造することのできるエンボステープの製造方法、エンボステープの製造装置、およびエンボステープを提供する。
【解決手段】エンボステープの製造装置は、樹脂シートを押出成形する押出機と、この押出機により成形された樹脂シートを所定幅にスリットして複数の樹脂シートとするスリッターと、前記樹脂シートまたは前記複数の樹脂シートにエンボス成形を施すエンボス成形機とを備え、前記押出機を出た後の樹脂シートの移動速度と、前記スリッターにおける複数の樹脂シートの移動速度と、前記エンボス成形機における樹脂シートの移動速度とが同じになるように、前記各樹脂シートの移動速度のうち少なくともいずれかを制御する制御装置を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンボステープの製造方法、エンボステープの製造装置、およびエンボステープに関する。
【背景技術】
【0002】
LSIやIC等の電子部品のキャリア包装用として、取り扱いが容易で電子部品を配線基板に実装する際の効率に優れたキャリアテープ(エンボステープ)が用いられている。このキャリアテープは、所定の間隔で設けられた複数のエンボス部(凹部)を有しており、この凹部に電子部品を収納するようになっている。
このようなキャリアテープは、一般に、押出機により広幅の樹脂シートを成形しておき、それを複数の樹脂テープにスリットして巻き取り、別途エンボス工程を経ることで製造される。通常、押出機により樹脂シートを成形する成形速度は、樹脂シートにエンボス工程を施すエンボス速度よりもはるかに速い。それ故、各々の工程を効率よく実施するため、各工程を別々の業者が分業して行うことが一般的である。その場合は、樹脂シート製造業者、スリット業者およびエンボス成形業者の三者が、各工程(押出工程、スリット工程、エンボス工程)毎に最適な製造条件を調整した上で、キャリアテープが製造されることになる。これに対して、筒状に押し出された小径の樹脂シートを扁平に融着してテープ状とすることで、スリット工程を要さずに所定幅のキャリアテープを比較的簡便に製造する方法が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−172699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のキャリアテープの製造方法では、樹脂シート製造業者、スリット業者およびエンボス成形業者の三者(3工程)が存在するため、各工程毎の生産性は良好である一方、キャリアテープの全工程を考慮した場合、極めて生産性が悪い。また、各業者(各工程)で原料ロスが発生するがその回収・再利用も困難である。さらに、押出機による樹脂シートの生産性を考慮して、一旦、広幅の樹脂シートを製造した後にスリットを行うが、スリット後の個々の樹脂テープ間の品質のばらつき(厚みムラ等)も大きい。特許文献1の製造方法においては、確かにスリット工程はなくせるものの、キャリアテープを1本ずつ製造しなくてはならずやはり生産性に劣る。また、エンボス工程が別途必要なことに変わりはない。
【0005】
本発明は、生産性が高く、高品質のエンボステープを製造することのできるエンボステープの製造方法、エンボステープの製造装置、およびエンボステープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決すべく、本発明は、以下のようなエンボステープの製造方法、エンボステープの製造装置、およびエンボステープを提供するものである。
(1)樹脂シートを押出成形する押出工程と、前記押出工程により成形された樹脂シートを所定幅にスリットして複数の樹脂シートとするスリット工程と、前記押出工程により成形された樹脂シートおよび前記複数の樹脂シートのいずれかにエンボス成形を施すエンボス工程と、を備えるエンボステープの製造方法であって、前記各工程が連続的に行われるとともに、前記押出工程における樹脂シートの移動速度と、前記スリット工程における複数の樹脂シートの移動速度と、前記エンボス工程における樹脂シートの移動速度とが同じになるように、前記各樹脂シートの移動速度のうち少なくともいずれかを制御することを特徴とするエンボステープの製造方法。
【0007】
(2)上述の(1)に記載のエンボステープの製造方法において、前記押出工程における樹脂シートの移動速度、前記スリット工程における複数の樹脂シートの移動速度、および前記エンボス工程における樹脂シートの移動速度のうち少なくともいずれかをダンサーロールで制御することを特徴とするエンボステープの製造方法
(3)上述の(1)または(2)に記載のエンボステープの製造方法において、前記エンボス工程における樹脂シートの移動速度を基準として、前記押出工程における樹脂シートの移動速度と前記スリット工程における複数の樹脂シートの移動速度のうち少なくともいずれか一方を制御することを特徴とするエンボステープの製造方法。
【0008】
(4)上述の(1)から(3)までのいずれか1つに記載のエンボステープの製造方法において、前記スリット工程および前記エンボス工程の少なくともいずれかで排出される端材を、原料として前記押出工程に戻す回収工程をさらに備えることを特徴とするエンボステープの製造方法。
(5)上述の(1)から(4)までのいずれか1つに記載のエンボステープの製造方法において、前記押出工程、前記スリット工程、前記エンボス工程をこの順で行うことを特徴とするエンボステープの製造方法。
【0009】
(6)上述の(1)から(4)までのいずれか1つに記載のエンボステープの製造方法において、前記押出工程、前記エンボス工程、前記スリット工程をこの順で行うことを特徴とするエンボステープの製造方法。
(7)上述の(5)または(6)に記載のエンボステープの製造方法において、前記押出工程において、前記樹脂シートが、少なくとも基材層とエンボス成形が施されるプレエンボス層とを積層してなるものであることを特徴とするエンボステープの製造方法。
(8)樹脂シートを押出成形する押出機と、前記押出機により成形された樹脂シートを所定幅にスリットして複数の樹脂シートとするスリッターと、前記樹脂シートまたは前記複数の樹脂シートにエンボス成形を施すエンボス成形機と、を備えるエンボステープの製造装置であって、前記押出機を出た後の樹脂シートの移動速度と、前記スリッターにおける複数の樹脂シートの移動速度と、前記エンボス成形機における樹脂シートの移動速度とが同じになるように、前記各樹脂シートの移動速度のうち少なくともいずれかを制御する制御装置を備えることを特徴とするエンボステープの製造装置。
【0010】
(9)上述の(7)に記載のエンボステープの製造方法により製造され、エンボス層と基材層とからなるエンボステープであって、前記エンボス層を構成する樹脂と前記基材層を構成する樹脂がともにポリエステル樹脂であり、該エンボステープにおけるエンボス層の表面固有抵抗値が10Ω以下であり、前記エンボス層を構成する原料樹脂のIV値が、前記基材層を構成する原料樹脂のIV値よりも0.3以上大きいことを特徴とするエンボステープ。
(10)上述の(7)に記載のエンボステープの製造方法により製造され、エンボス層と基材層とからなるエンボステープであって、前記エンボス層を構成する樹脂と前記基材層を構成する樹脂の少なくともいずれかがポリスチレン樹脂であり、該エンボステープにおけるエンボス層の表面固有抵抗値が10Ω以下であることを特徴とするエンボステープ。
(11)上述の(10)に記載のエンボステープにおいて、前記エンボス層を構成する樹脂と前記基材層を構成する樹脂がともにポリスチレン樹脂であることを特徴とするエンボステープ。
(12)上述の(9)から(11)までのいずれか1つに記載のエンボステープがキャリアテープであることを特徴とするエンボステープ。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、生産性が高く、高品質のエンボステープを製造することのできるエンボステープの製造方法、エンボステープの製造装置、およびエンボステープを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第一実施形態に係るエンボステープの製造装置。
【図2】本発明の第二実施形態に係るエンボステープの製造装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第一実施形態]
〔エンボステープの原料〕
エンボステープの原料としては、特に制限はないが、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、およびポリ塩化ビニル樹脂等の熱可塑性樹脂が好適である。エンボステープをキャリアテープとして使用する場合は、特にポリエステル樹脂やポリスチレン樹脂が好ましい。
また、上述した各樹脂はバージン原料として用いるだけでなく、後述するようにロス品(端材)をリサイクルしてバージン原料に配合してもよい。リサイクル率としては、エンボステープの生産性および品質の面から30質量%以上50質量%以下程度が好ましい。
【0014】
〔エンボステープの構成〕
ポリエステル樹脂を原料とした場合、エンボステープとしては、単層でもよいが基材層とエンボス層の2層を含んでなることが好ましい。2層とする場合は、エンボス層の表面固有抵抗値が108Ω以下であり、このエンボス層を構成する樹脂のIV(Intrinsic Viscosity)値が基材層を構成する樹脂のIV値よりも0.3以上大きいことが好ましい。
ポリスチレン樹脂やその他の樹脂にいては特に粘度(分子量)の制限はない。
【0015】
エンボス層の表面固有抵抗値が10Ω以下、好ましくは10Ω以下であると、例えばキャリアテープとして使用した場合に、静電気が起きにくく、LSIやIC等の電子部品のキャリア包装用として好適である。エンボス層の表面固有抵抗値を制御するには、エンボス層用の樹脂として導電性カーボンを添加したMB(マスターバッチ)原料を使用することが好ましい。表面固有抵抗値は、例えばJIS K 7194に準拠して測定できる。
【0016】
また、エンボス層を構成する原料樹脂のIV値が基材層を構成する原料樹脂のIV値よりも0.3以上大きいと、エンボステープ自体の強度を十分保ちながら、エンボス成形を施されるプレエンボス層のエンボス効果を高めることができる。それ故、エンボス層を構成する原料樹脂のIV値は、基材層を構成する原料樹脂のIV値よりも0.4以上大きいことがより好ましく、0.5以上大きいことがさらに好ましい。
ここで、IV値は、例えば、フェノール・テトラクロロエタン混合溶媒(質量比6:4)を用いて、粘度管により20℃で測定することにより求められる。
【0017】
〔エンボステープの製造装置〕
図1に、本実施形態におけるエンボステープの製造装置を模式的に示す。
このエンボステープの製造装置は、所定幅の樹脂シートを押出成形する押出機と、この押出機により成形された樹脂シートを所定幅にスリットして複数の樹脂シート(樹脂テープ)とするインラインスリッターと、このスリッターにより得られた樹脂テープにエンボス成形を施すエンボス成形機と、をこの順で備えている。また、エンボステープを基材層とエンボス層の2層テープとして構成する場合は、基材層用の押出機とエンボス成形が施されるプレエンボス層用の押出機の2台を準備する。そして各々の押出機から押し出された溶融樹脂はフィードブロックダイあるいはマルチマニホールドダイにより接合されて2層からなる樹脂シートとなる。
【0018】
また、前記した押出機とスリッターとエンボス成形機とは近接して載置されており、押出機を出た後の樹脂シートの移動速度と、スリッターにおける樹脂シートの移動速度と、エンボス成形機における樹脂テープの移動速度とが同じになるように、各樹脂シートの移動速度および樹脂テープの移動速度を制御する制御装置(図示せず)が備えられている。本実施形態における制御装置はダンサーロールである。
【0019】
〔エンボステープの製造方法〕
図1の製造装置をもとに説明する。
(押出工程)
ホッパーに入れられたバージン原料とリサイクル原料は、押出機Aにより成形されて所定幅の樹脂シートとなる。その際、この樹脂シートの幅が60mm以上、140mm以下となるように押出条件を設定することが好ましい。樹脂シートの幅が60mm未満であると、後工程で採取できる樹脂テープの本数が少なくなりエンボステープの生産性が低下する傾向がある。一方、樹脂シートの幅が140mmを超えると、樹脂シートの厚み精度が悪化し、エンボステープの品質の低下につながる傾向がある。特に、エンボステープが基材層とエンボス層からなる場合には、基材層は押出機Aにより成形され、プレエンボス層はもう1台の押出機Bにより成形されるため、個々の層厚みの精度が重要であり、上述した樹脂シートの幅の制御は重要である。
ここで、樹脂シートの移動速度は2m/min以上3m/min以下に制御することが好ましい。樹脂シートの移動速度が2m/min未満では生産性が低下する。一方、樹脂シートの移動速度が3m/minを超えると、後工程であるエンボス工程との連動が円滑にいかなくなるおそれがある。
【0020】
(スリット工程)
上述の樹脂シートは、押出機に近接して載置されているインラインスリッターにより所定幅に連続的にスリットされて樹脂テープとなり、各樹脂テープは近接する各エンボス成形機に送られる。スリット時の耳ロス(端材)は回収されリサイクル原料として押出工程に戻される。なお、回収原料は、必要に応じて粉砕されリペレット化される。
【0021】
(エンボス工程)
樹脂テープはエンボス成形機によりエンボス成形を施されエンボステープとなる。エンボス工程におけるロス品(端材)は回収されリサイクル原料として押出工程に戻される。
なお、図1ではインラインスリッターにより2本の樹脂テープが製造されるが、押出工程における樹脂シートの押出し幅によって樹脂テープの本数は任意であり、その本数に応じてエンボス成形機の台数が決定される。また、エンボス工程後に、必要に応じてエンボステープをさらに複数本にスリットしてもよい。
【0022】
上記した、押出工程における樹脂シートの移動速度、スリット工程における樹脂シートの移動速度、およびエンボス工程における樹脂テープの移動速度とは、互いに同じになるように、ダンサーロールにより制御される。特に、エンボス工程における樹脂テープの移動速度を基準にして押出工程およびスリット工程における樹脂シートの移動速度を制御することが好ましい。
【0023】
上述した本実施形態によれば、所定幅の樹脂シートを押出成形する押出工程と、押出工程により成形された樹脂シートを所定幅にスリットして複数の樹脂テープとするスリット工程と、スリット工程により得られた樹脂テープにエンボス成形を施すエンボス工程とが連続的に、かつ、全工程の速度バランスを考慮した条件で行われている。このような一貫工程(一貫設備)とすることにより極めて生産性よくエンボステープを製造することが可能となる。また、各工程における原料ロスの回収も効率的となり、さらに人件費の削減も可能となる。それ故、エンボステープのトータルコストを大幅に削減することが可能となる。
【0024】
また、押出機から押出される樹脂シートの幅を、60mm以上140mm以下としたことで、樹脂シートを基材層とプレエンボス層の2層とした場合でも各層および全層厚みに分布差が生じず、樹脂シートの品質が向上する。それ故、インラインスリット時の耳立ちをなくすことが可能となる。また、最終的なエンボステープの品質も向上する。
さらに、樹脂シートの移動速度を2m/min以上3m/min以下とすることで、生産性を維持しながら、安定して高品質のエンボステープを製造することが可能となる。
さらに、押出工程、スリット工程、エンボス工程をこの順で行うことにより、完全に冷却した状態の樹脂シートに対してスリット工程を実施することになるので、スリット工程を精度よく実施することができる。
それ故、上述の製造方法は、キャリアテープの製造方法として好適であり、高品質のキャリアテープを提供できる。
【0025】
[第二実施形態]
図2に、本発明の第二実施形態におけるエンボステープの製造装置を模式的に示す。この第二実施形態における製造装置(製造方法)はインラインスリッターとエンボス成形機の配置(製造の順序)が逆になっている以外は、第一実施形態と構成は変わらない。また、エンボステープの原料や構成は同じである。
具体的には、本実施形態におけるエンボステープの製造装置は、所定幅の樹脂シートを押出成形する押出機と、この押出機により成形された樹脂シートにエンボス成形を施すエンボス成形機と、エンボス成形が施された樹脂シートを所定幅にスリットして複数の樹脂シート(樹脂テープ)とするインラインスリッターと、をこの順で備えている。
【0026】
本実施形態によっても、第一実施形態と同様に、押出工程と、エンボス工程と、スリット工程とが連続的に、かつ、全工程の速度バランスを考慮した条件で行われているため、極めて生産性よくエンボステープを製造することが可能となる。
また、本実施形態によれば、押出工程、エンボス工程、スリット工程をこの順で行うことで、エンボス工程を押出工程時の加熱処理と連続して行えるため、製造効率を向上できるとともに、熱履歴に伴う樹脂シートの品質劣化を防止することができる。
【0027】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
前記各実施形態では、各工程における樹脂シートや樹脂テープの移動速度を制御(調整)する装置としてダンサーロールを用いたが、これらの移動速度が調整できればどのような制御装置でもよい。また、移動速度の制御は上述した各工程(各機械)全部について行う必要は必ずしもなく、必要な工程について行えばよい。
【実施例】
【0028】
以下に、実施例によりさらに詳しく本発明を説明する。
〔実施例1〕
導電性カーボンブラックMB(ケッチェンブラックインターナショナル株式会社製ケッチェンブラック)8質量%、ポリエステル樹脂(IV値 1.2)92質量%を240℃に設定した二軸混練機でペレット化した。次いでこのペレットを押出温度を260℃に設定したL/D=32の押出機Aに投入した(プレエンボス層用)。また、カーボンブラックMB無添加のポリエステル樹脂(IV値=0.7)100質量%を、押出温度260℃に設定したL/D=27の押出機Bに投入した(基材層用)。そして、プレエンボス層30μmと基材層170μmの2層からなり、全層厚み200μm、幅90mmの樹脂シートを共押出法により成形した。
得られた樹脂シートをサンプリングして、シート厚みおよび各層厚みを測定したところ、全層厚み分布は±2%であり、プレエンボス層の厚み分布は±4%と高品質であった。
【0029】
次に上述の樹脂シートを、連続的にインラインスリッターに投入し両端および中割のスリット刃を入れ幅32mmの樹脂テープ2本を製造した。押出工程やスリット工程で発生した中間ロスは粉砕機に投入して8mm角に粉砕し、押出機Bの原料系にリターンし原料としてリサイクルした。リサイクル条件が安定した後の押出機Bに投入されるポリエステル樹脂(混合品)のIV値は0.9であった(リサイクル率 40質量%)。また、このリサイクル条件下でも樹脂シートの全層厚み分布は±2%であり、プレエンボス層の厚み分布は±4%であった。すなわち、バージン原料の場合と同様に高品質な樹脂シートが得られることがわかった。
【0030】
次いで得られた2本の樹脂テープをそれぞれのエンボス成形機に連続的に投入しエンボス成形をおこなった後、同工程(設備)内でエンボステープを4本にスリットし専用のリールに巻き取った。
押出工程やスリット工程における樹脂シートの移動速度は、下流のエンボス工程における樹脂テープの移動速度(2.5m/min)に合わせるようにダンサーロールで制御した。得られたエンボステープの不良率はゼロであった。ここで、不良率は、エンボス成形機にキャリアテープを供給し金型寸法通りの凹部形成がされるまでのロス量とリール交換時のロス量の合計値より算出される。
また、エンボステープにおけるエンボス層の表面固有抵抗値(JIS K 7194準拠)は、10Ωであった。
それ故、本実施例のエンボステープは、キャリアテープとして好適であることが理解できる。
【0031】
〔実施例2〕
MIが5のポリスチレン樹脂に、界面活性剤(三洋化成製ペレスタットNC−6321)を10質量%混練した原料を、押出温度を215℃に設定したL/D=32の押出機Aに投入した(プレエンボス層用)。また、ポリスチレン樹脂(上記と同じ原料)100質量%を、押出温度215℃に設定したL/D=27の押出機Bに投入した(基材層用)。そして、実施例1と同様にしてエンボス層30μmと基材層170μmの2層からなり、全層厚み200μm、幅90mmの樹脂シートを共押出法により成形した。
得られた樹脂シートをサンプリングして、シート厚みおよび各層厚みを測定したところ、全層厚み分布は±2%であり、プレエンボス層の厚み分布は±4%と高品質であった。
【0032】
次に上述の樹脂シートを、連続的にインラインスリッターに投入し両端および中割のスリット刃を入れ幅32mmの樹脂テープ2本を製造した。押出工程やスリット工程で発生した中間ロスは粉砕機に投入して8mm角に粉砕し、押出機Bの原料系にリターンし原料としてリサイクルした。リサイクル条件が安定した後の押出機Bに投入されるポリスチレン樹脂(混合品)のMI値は0.6であった。また、このリサイクル条件下でも樹脂シートの全層厚み分布は±2%であり、プレエンボス層の厚み分布は±4%であった。すなわち、バージン原料の場合と同様に高品質な樹脂シートが得られることがわかった。
【0033】
次いで得られた2本の樹脂テープをそれぞれのエンボス成形機に連続的に投入しエンボス成形をおこなった後、同工程(設備)内でエンボステープを4本にスリットし(各8mm幅)専用のリールに巻き取った。
押出工程やスリット工程における樹脂シートの移動速度は、下流のエンボス工程における樹脂テープの移動速度(2.5m/min)に合わせるようにダンサーロールで制御した。得られたエンボステープの不良率はゼロであった。また、エンボステープにおけるエンボス層の表面固有抵抗値(JIS K 7194準拠)は、10Ωであった。
それ故、本実施例のエンボステープは、キャリアテープとして好適であることが理解できる。
【0034】
〔実施例3〕
MIが5のポリスチレン樹脂に、界面活性剤(三洋化成製ペレスタットNC−6321)を10質量%混練した原料を、押出温度を215℃に設定したL/D=32の押出機Aに投入した。また、ポリスチレン樹脂(上記と同じ原料)100質量%を、押出温度215℃に設定したL/D=27の押出機Bに投入した(基材層用)。そして、実施例1と同様にしてプレエンボス層30μmと基材層170μmの2層からなり、全層厚み200μm、幅90mmの樹脂シートを製膜しエンボスロール(エンボス成形機)へ導いた。得られたシートの厚みを測定したところ厚みの精度は±4%以下と非常に良好であった。次にエンボスロールの真空ポンプを稼動させエンボスシートを得た。得られたエンボスシートは型寸法通りにエンボス加工されていた。次にエンボスシートを各々8mmの幅にインラインスリットし、得られたエンボステープをリールに巻き取った。
この実施例によれば、原料ロスの回収がスリット工程からのみ行われるため、原料ロスの回収が非常に効率的であった。それ故、人件費の削減を含め、エンボステープ製造におけるトータルコストの大幅な削減に寄与することも理解できる。
さらに、この実施例によれば、押出工程、エンボス工程、スリット工程をこの順で行うことで、エンボス工程を押出工程時の加熱処理と連続して行えるため、製造効率に優れているだけでなく、熱履歴に伴う樹脂シートの品質劣化を少なくすることができる。
【0035】
〔比較例1〕
実施例1における押出工程、スリット工程、およびエンボス工程を独立に行った。
押出工程においては、樹脂シートの幅を640mmとした以外は、実施例1と同様にして行った。得られた樹脂シートの厚み分布は全幅で±8%であり、エンボス層の厚み分布精度は±15%であった。また、押出工程内で発生したロス品は原料として可能な限り押出機Bの原料として回収したが全量は回収できなかった。
スリット工程では、樹脂シートを各8mm幅の樹脂テープにスリットし、専用のリールに巻き取った。スリット工程で発生したスリットロス品は産業廃棄物として処理した。
次に、8mm幅にスリットされた樹脂テープはエンボス工程でエンボステープとしたが、シート温度が不安定であることから成形立ち上げロスが発生した。またリール間のシート厚みのバラツキが大きくエンボス品質が安定せずリール交換毎に不良品が5%発生した。ロス品は産業廃棄物として処理した。
この比較例1におけるエンボステープの製造方法では、キャリアテープとしての品質(機能)やコストの面で限界があることが明確になった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂シートを押出成形する押出工程と、
前記押出工程により成形された樹脂シートを所定幅にスリットして複数の樹脂シートとするスリット工程と、
前記押出工程により成形された樹脂シートおよび前記複数の樹脂シートのいずれかにエンボス成形を施すエンボス工程と、を備えるエンボステープの製造方法であって、
前記各工程が連続的に行われるとともに、
前記押出工程における樹脂シートの移動速度と、前記スリット工程における複数の樹脂シートの移動速度と、前記エンボス工程における樹脂シートの移動速度とが同じになるように、前記各樹脂シートの移動速度のうち少なくともいずれかを制御する
ことを特徴とするエンボステープの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のエンボステープの製造方法において、
前記押出工程における樹脂シートの移動速度、前記スリット工程における複数の樹脂シートの移動速度、および前記エンボス工程における樹脂シートの移動速度のうち少なくともいずれかをダンサーロールで制御する
ことを特徴とするエンボステープの製造方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のエンボステープの製造方法において、
前記エンボス工程における樹脂シートの移動速度を基準として、
前記押出工程における樹脂シートの移動速度と前記スリット工程における複数の樹脂シートの移動速度のうち少なくともいずれか一方を制御する
ことを特徴とするエンボステープの製造方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のエンボステープの製造方法において、
前記スリット工程および前記エンボス工程の少なくともいずれかで排出される端材を、原料として前記押出工程に戻す回収工程をさらに備える
ことを特徴とするエンボステープの製造方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のエンボステープの製造方法において、
前記押出工程、前記スリット工程、前記エンボス工程をこの順で行うことを特徴とするエンボステープの製造方法。
【請求項6】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のエンボステープの製造方法において、
前記押出工程、前記エンボス工程、前記スリット工程をこの順で行うことを特徴とするエンボステープの製造方法。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載のエンボステープの製造方法において、
前記押出工程において、前記樹脂シートが、少なくとも基材層とエンボス成形が施されるプレエンボス層とを積層してなるものである
ことを特徴とするエンボステープの製造方法。
【請求項8】
樹脂シートを押出成形する押出機と、
前記押出機により成形された樹脂シートを所定幅にスリットして複数の樹脂シートとするスリッターと、
前記樹脂シートまたは前記複数の樹脂シートにエンボス成形を施すエンボス成形機と、を備えるエンボステープの製造装置であって、
前記押出機を出た後の樹脂シートの移動速度と、前記スリッターにおける複数の樹脂シートの移動速度と、前記エンボス成形機における樹脂シートの移動速度とが同じになるように、前記各樹脂シートの移動速度のうち少なくともいずれかを制御する制御装置を備える
ことを特徴とするエンボステープの製造装置。
【請求項9】
請求項7に記載のエンボステープの製造方法により製造され、エンボス層と基材層とからなるエンボステープであって、
前記エンボス層を構成する樹脂と前記基材層を構成する樹脂がともにポリエステル樹脂であり、
該エンボステープにおけるエンボス層の表面固有抵抗値が10Ω以下であり、
前記エンボス層を構成する原料樹脂のIV値が、前記基材層を構成する原料樹脂のIV値よりも0.3以上大きい
ことを特徴とするエンボステープ。
【請求項10】
請求項7に記載のエンボステープの製造方法により製造され、エンボス層と基材層とからなるエンボステープであって、
前記エンボス層を構成する樹脂と前記基材層を構成する樹脂の少なくともいずれかがポリスチレン樹脂であり、
該エンボステープにおけるエンボス層の表面固有抵抗値が10Ω以下である
ことを特徴とするエンボステープ。
【請求項11】
請求項10に記載のエンボステープにおいて、
前記エンボス層を構成する樹脂と前記基材層を構成する樹脂がともにポリスチレン樹脂である
ことを特徴とするエンボステープ。
【請求項12】
請求項9から請求項11までのいずれか1項に記載のエンボステープがキャリアテープである
ことを特徴とするエンボステープ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−106475(P2012−106475A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−93933(P2011−93933)
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(500163366)出光ユニテック株式会社 (128)
【Fターム(参考)】