説明

オブジェクト検査システムおよび方法

オブジェクト検査のための、特に、リソグラフィプロセスで使用されるレチクルの検査のためのシステムおよび方法が開示される。当該方法は、基準放射ビームをプローブ放射ビームと干渉法により合成することと、それらの合成視野像を記憶することと、を含む。そして、1つのオブジェクトの合成視野像を、基準オブジェクトの合成視野像と比較して差を求める。これらのシステムおよび方法は、欠陥に関するレチクルの検査において特定の有用性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
[0001] 本出願は、2009年6月22日に出願された米国仮出願第61/219,158号の利益を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
[0002] 本発明の実施形態は、一般に、オブジェクト検査システムおよび方法、特に、検査対象オブジェクトが、例えば、レチクルまたは他のパターニングデバイスであり得る場合の、リソグラフィ分野におけるオブジェクト検査システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003] リソグラフィは、集積回路(IC)ならびに他のデバイスおよび/または構造の製造における重要なステップの1つとして広く認識されている。しかし、リソグラフィを使用して作られるフィーチャの寸法が小さくなるにつれ、リソグラフィは、小型ICあるいは他のデバイスおよび/または構造を製造できるようにするための最も重要な要因になりつつある。
【0004】
[0004] リソグラフィ装置は、所望のパターンを基板上、通常、基板のターゲット部分上に付与する機械である。リソグラフィ装置は、例えば、ICの製造に用いることができる。その場合、ICの個々の層上に形成される回路パターンを生成するために、マスクまたはレチクルとも呼ばれるパターニングデバイスを用いることができる。このパターンは、基板(例えば、シリコンウェーハ)上のターゲット部分(例えば、ダイの一部、または1つ以上のダイを含む)に転写することができる。通常、パターンの転写は、基板上に設けられた放射感応性材料(レジスト)層上への結像によって行われる。一般には、単一の基板が、連続的にパターニングされる隣接したターゲット部分のネットワークを含んでいる。
【0005】
[0005] 現在のリソグラフィシステムは、非常に小さいマスクパターンフィーチャを投影する。レチクルの表面上で発生する埃や外部からの粒子状物質が、結果として生じる製品に悪影響を及ぼすおそれがある。リソグラフィプロセスの前に、またはリソグラフィプロセス中にレチクル上に堆積するあらゆる粒子状物質は、基板上に投影されたパターン内のフィーチャを変形させる可能性がある。従って、フィーチャのサイズが小さいほど、レチクルから除去することが重要となる粒子のサイズも小さくなる。
【0006】
[0006] 多くの場合、ペリクルがレチクルとともに使用される。ペリクルは、レチクル表面の上方にあるフレーム全体に広げられ得る薄い透明層である。ペリクルは、粒子が、レチクル表面のパターン形成された側に到達することを阻止するために使用される。ペリクル表面上の粒子は、焦点面から外れており、露光されるウェーハ上に像を形成しないはずであるが、ペリクル表面を可能な限り粒子がない状態にすることが依然として好適である。しかし、一部のタイプのリソグラフィ(例えば、極端紫外線(EUV)リソグラフィプロセス)については、ペリクルは使用されない。レチクルが保護されない場合、レチクルは粒子汚染の影響を受け易く、それによってリソグラフィプロセスで欠陥が生じるおそれがある。EUVレチクル上の粒子は、結像欠陥の主な原因の1つである。
【0007】
[0007] フィーチャのサイズが小さくなるにつれて、粒子のみならず、マスクパターンの他の異常(ずれた部分、欠けている部分、または変形した部分など)がより小さくなるため、正確に検出することが難しくなる。
【0008】
[0008] (すべての実施形態および変形例についての)本開示において、オブジェクトの検査は、欠陥が無いかどうかを評価するためのオブジェクトの試験であると理解される。「欠陥」は、オブジェクトが備えることになっている所望の特性、特に所望の形状、パターン、表面プロファイル、汚染が無いこと、に由来する異常であると理解される。欠陥は、例えば、(オブジェクト上にある、またはオブジェクト上に形成される)粒子、オブジェクト表面の望ましくない孔などの変形、あるいは、オブジェクトのずれた部分、欠けている部分、または変形した部分であり得る。
【0009】
[0009] EUVレチクルを露光位置に動かす前のEUVレチクルの検査および洗浄は、レチクル処理プロセスの重要な一側面であり得る。レチクルは、通常、検査の結果、または履歴統計に基づいて、汚染があると思われる場合に洗浄される。
【0010】
[0010] レチクルは、通常、散乱光技術またはスキャン結像システムを用いて欠陥について検査される。
【0011】
[0011] スキャン結像システムは、例えば、共焦点、EUV、または電子ビーム顕微鏡システムを含む。共焦点顕微鏡システムの例は、2006年5月4日に公開された、“Con-focal Imaging System and Method Using Destructive Interference to Enhance Image Contrast of Light Scattering Objects on a Sample Surface(サンプル面の光散乱物体のイメ−ジ強弱を強める破壊的干渉を使う共焦点イメ−ジシステムと方法)”と題した、Urbach他に対する米国特許出願公開第2006/0091334号に開示されている。この文献に開示されているシステムは、基準光ビームとプローブ光ビームの破壊的干渉を用いて別の平面上の欠陥の検出感度を向上させる。このシステムは、基準光ビームの光路長を変化させてその位相を調整するように一組のミラーの位置を調整することによって、また、基準光ビームの振幅を調整するように一組の偏光子を回転させることによって、破壊的干渉を最大化するように調節される。この調節は、欠陥をスキャンし検出する前の予備工程として、検査される各オブジェクトについて一度行われる。さらに、光減算技術が使用されるので、適切な減算を実現するために、ビームが適切に位置合わせされる必要がある。
【0012】
[0012] 散乱光技術により、レーザービームがレチクル上に集束し、鏡面反射方向から離れるように散乱する放射ビームが検出される。オブジェクト表面上の欠陥は、光をランダムに散乱させる。照射面を顕微鏡で観察すると、欠陥は輝点として輝く。輝点の強度は欠陥のサイズの尺度となる。
【0013】
[0013] 可視光線または紫外線(UV)とともに動作するスキャトロメータは、スキャン結像システム(例えば、共焦点、EUV、または電子ビーム顕微鏡システム)より著しく速いレチクル検査を可能にする。レーザ放射ビームおよびコヒーレント光学システムを、レチクル上のパターンから回折した光を遮断する瞳面内のフーリエフィルタとともに用いるスキャトロメータが知られている。このタイプのスキャトロメータは、レチクル上の周期的パターンに由来する背景のレベルにわたる欠陥によって散乱する光を検出する。
【0014】
[0014] そのようなシステムの一例が、2007年11月8日に公開された、“Inspection Method and Apparatus Using Same(検査方法およびそれを使用する装置)”と題した、Bleeker他に対する米国特許出願公開第2007/0258086号に説明されている。図1に示すように、例示的検査システム100は、顕微鏡対物レンズ104と、瞳フィルタ106と、投影光学システム108と、ディテクタ110と、を含むチャネル102を含む。放射(例えば、レーザ)ビーム112がオブジェクト(例えば、レチクル)114を照明する。瞳フィルタ106は、オブジェクト114のパターンに起因する光散乱を遮断するのに使用される。コンピュータ116は、オブジェクト114のパターンに基づいて瞳フィルタ106のフィルタリングを制御するために使用することができる。従って、フィルタ106は、オブジェクト114に対する瞳面の空間フィルタとして設けられ、散乱放射から放射を除去するようにオブジェクト114のパターン形成された構造と対応付けられる。ディテクタ110は、汚染欠陥の検出のために、フィルタ106が透過させたわずかな放射を検出する。
【0015】
[0015] しかし、任意の(例えば、非周期的)パターンを有するレチクルに対して検査システム100などの検査システムを使用することは実行可能でない。この限界は、パターンによって回折した光によるディテクタの飽和状態の結果である。ディテクタは有限のダイナミックレンジを有し、パターンから散乱した光の存在下で欠陥からの光を検出することができない。言い換えれば、周期的パターンについては、コヒーレント光学システムのフーリエ面での空間フィルタによってしか、該当する光を効率的に除去することができない。(例えば、DRAM用の)周期的パターンについてさえ、レチクルスキャンプロセスにおけるフーリエフィルタを改良する際に重要な問題が存在する。検査視システム100などの検査システムについて、平行放射ビームしか、そのフーリエ濾過(Fourier filtration)に対して使用しないという限界がある。従って、それによって、レチクルの表面粗さに由来する散乱の抑制に必要な照明最適化が可能にはならない。
【0016】
[0016] 公知の検査システムを使用する際、非常に多くの場合に欠陥検出の精度、質、および確実性が損なわれる。クリティカルディメンジョンスキャン電子顕微鏡法(CDSEM)などのスキャン結像システムは、小さい欠陥(例えば、100nm以下、好ましくは20nm以下の特性寸法を有する欠陥)に対して高い感度を示し得るが、これは低速の技術である。しかし、より高速の光学技術は、非常に高レベルの検出感度を実現しない。より高いスループットおよび縮小するリソグラフィフィーチャのサイズの対する要望が高まるにつれて、速度、より小さい欠陥サイズの検出、および望ましくない影響に対する耐性の観点から、検査システムの性能を向上させることがますます重要になっている。
【発明の概要】
【0017】
[0017] 上記に例示した既存の技術と比較して、比較的高速で動作することができ、かつ小さい欠陥を検査可能である、改善されたオブジェクト検査システムが提供される。特に、極端紫外線(EUV)リソグラフィの分野において、100nm以下、さらには20nm以下の欠陥を検出する必要性が実際に感じられる。
【0018】
[0018] 一実施形態において、オブジェクト検査システムであって、基準放射ビームを放出するように配置された放射源と、検査対象オブジェクトに入射するプローブ放射ビームを放出するように配置された放射源と、前記基準放射ビームと前記プローブ放射ビームを干渉法により合成するように配置された1つ以上の光学素子と、基準オブジェクトの合成視野像を記憶するように配置された記憶媒体と、前記検査対象オブジェクトの合成視野像を前記基準オブジェクトの前記記憶された合成視野像と比較するように配置されたコンパレータと、を含む、オブジェクト検査システムが提供される。
【0019】
[0019] 別の実施形態において、オブジェクトを検査する方法であって、基準放射ビームとプローブ放射ビームを干渉法により結合して前記オブジェクトの合成視野像を得ることと、前記オブジェクトの前記合成視野像を記憶することと、前記オブジェクトの前記合成視野像と基準合成視野像を比較することと、を含む、方法が提供される。
【0020】
[0020] 一実施形態において、オブジェクト検査システムを有するリソグラフィシステムであって、前記オブジェクト検査システムは、基準放射ビームを放出するように配置された放射源と、検査対象オブジェクトに入射するプローブ放射ビームを放出するように配置された放射源と、前記基準放射ビームと前記プローブ放射ビームを干渉法により合成するように配置された1つ以上の光学素子と、基準オブジェクトの合成視野像を記憶するように配置された記憶媒体と、前記検査対象オブジェクトの合成視野像を前記基準オブジェクトの前記記憶された合成視野像と比較するように配置されたコンパレータと、を含む、リソグラフィシステムが提供される。
【0021】
[0021] 本発明のさらなる特徴および利点、ならびに本発明のさまざまな実施形態の構造および動作を、添付の図面を参照して以下に詳細に説明する。なお本発明は、本明細書に記載の特定の実施形態に限定されない。このような実施形態は、例示のためにのみ本明細書で示される。本明細書の教示に基づいて、追加の実施形態が当業者には明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
[0022] 本発明のさまざまな態様の実施形態を、単なる例として、添付の概略図を参照して以下に説明する。これらの図面において同じ参照符号は対応する部分を示す。
【0023】
【図1】[0023] 図1は、スキャトロメトリを用いる公知のオブジェクト検査システムの一例を示す。
【図2】[0024] 図2は、プローブビームと干渉する傾斜基準ビームを採用するオブジェクト検査システムの一実施形態を示す。
【図3】[0025] 図3は、基準像が光記憶デバイス上に記録される記録モードのオブジェクト検査システムの一実施形態を示す。
【図4】[0026] 図4は、ここでは、オブジェクト像が光記憶デバイス上で記録された基準像と比較される検査モードで、基準像が光記憶デバイス上に記録されるオブジェクト検査システムの一実施形態を示す。
【図5】[0027] 図5は、位相ステップ基準ビームがプローブビームと干渉する、オブジェクト検査システムの一実施形態を示す。
【図6】[0028] 図6は、振動補償デバイスを含むオブジェクト検査システムの一実施形態を示す。
【図7】[0029] 図7は、鏡面反射が位相ステップ基準ビームとして用いられるオブジェクト検査システムの一実施形態を示す。
【図8】[0030] 図8は、反射型リソグラフィ装置を示す。
【図9】[0031] 図9は、透過型リソグラフィ装置を示す。
【図10】[0032] 図10は、例示的なEUVリソグラフィ装置を示す。
【0024】
[0033] 本発明の特徴および利点は、図面を参照した以下の詳細な説明から、より明らかであろう。これらの図面において、同一の参照符号は、全体を通じて対応する要素を示す。図面において、同一の参照番号は、概して、同一、機能的に同様、および/または構造的に同様の要素を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[0034] 本発明の実施形態は、オブジェクト検査システムおよび方法を目的とするものである。本明細書は、本発明の特徴を組み入れた1つ以上の実施形態を開示する。開示される実施形態は、本発明を例示するに過ぎない。本発明の範囲は、開示される実施形態に限定されない。本発明は、添付の請求項により定義される。
【0026】
[0035] 説明されている実施形態および本明細書での「一実施形態」、「実施形態」、「例示的実施形態」などに関する言及は、説明されている実施形態が特定の特徴、構造、または特性を含み得るが、各実施形態がその特定の特徴、構造、または特性を必ずしも含むとは限らないことを示す。また、そのような表現は同一の実施形態を必ずしも示すものではない。さらに、実施形態と関連して特定の特徴、構造、または特性が説明される場合、明示的に説明されているか否かによらず、他の実施形態と関連してそのような特徴、構造、または特性を達成することは当業者の知識の範囲内であると理解されたい。
【0027】
[0036] 本発明の実施形態または本発明のさまざまな構成要素は、ハードウエア、ファームウエア、ソフトウエア、またはこれらの組合せの形式で実現されてよい。本発明のさまざまな構成要素の実施形態は、1つ以上のプロセッサにより読取かつ実行可能である機械読取可能媒体に記憶された命令として実現されてもよい。機械読取可能媒体は、機械(例えば、演算デバイス)により読取可能な形式で情報を記憶または伝送する任意の機構を含んでよい。例えば、機械読取可能媒体は、読出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、磁気ディスク記録媒体、光記録媒体、フラッシュメモリデバイス、電気的、光学的、または音響的もしくはその他の伝送信号形式(例えば、搬送波、赤外信号、デジタル信号)、またはその他を含んでよい。さらに、本明細書では、ファームウエア、ソフトウエア、ルーチン、または命令は、ある動作を実行するためのものとして記述されていてもよい。しかし、当然のことながら、これらの記述は単に便宜上のものであり、これらの動作は、そのファームウエア、ソフトウエア、ルーチン、命令などを実行する演算デバイス、プロセッサ、コントローラ、または他のデバイスにより実際に得られるものである。
【0028】
[0037] 以下の説明により、オブジェクトの粒子および欠陥検出を可能にするオブジェクト検査システムおよび方法を示す。
【0029】
[0038] 図2は、本発明の一実施形態に係るオブジェクト検査システム200を概略的に示している。オブジェクト検査システム200は、オブジェクト202を検査するように配置され、このオブジェクト202は、例えば、レチクルとすることができる。レチクルは、汚染からの保護を目的とする、仮想線で示すペリクル204(または、例えばガラス窓)を任意に含み得る。ペリクルを含むか否かについての選択は、レチクル202が使用される特定のリソグラフィプロセスおよびリソグラフィ装置の構成によって決まる。
【0030】
[0039] オブジェクト検査システム200は、放射源206を含む。放射源206からの放射ビーム208が、ビームスプリッタ210によって基準ビーム212とプローブビーム214に分割される。基準ビーム212は、反射要素216によって反射され、この反射要素216は、例えば、ミラーまたはプリズムとすることができる。
【0031】
[0040] ビームスプリッタ210から放出されたプローブビーム214は対物レンズ228を介して第2ビームスプリッタ226によって反射され、対物レンズ228はプローブビーム214をオブジェクト202上に集束させる。ペリクル204が含まれる場合、ペリクル204は、対物レンズ228の焦点面から外れている。
【0032】
[0041] そして、プローブビーム214は、オブジェクト202から反射される。鏡面反射が0次反射光230によって示される。また、より高い次数はオブジェクト表面のパターンによって発生する。説明を容易にするために、正の1次232および負の1次234のみを示すが、さらなる次数も存在し得ることを理解されたい。システムによって集光されるさらなる次数の数は、対物レンズ228の光学特性を含むシステムのパラメータによって決まる。
【0033】
[0042] 反射光は、ビームスプリッタ226を介して戻る。レンズ236は、反射光を集光し、視野絞り238、レンズ240、および反射要素242を介して集束させる。プローブビーム214の0次反射光を遮断する空間フィルタ244が設けられ得る(図2は、空間フィルタ244のエッジによって回折するエッジ線も示している)。残りの次数は、レンズ248によって集束する。そして、傾斜基準ビーム212は、透過したプローブビーム214と干渉し、従ってディテクタ250に入射する光は、傾斜基準ビーム212と干渉した残りの次数のプローブビーム214を含み、それによって干渉フリンジパターンが形成される。
【0034】
[0043] 次いで、当業者には知られているように、干渉フリンジパターンは、オブジェクトの複合波面の再構成を可能にする。傾斜基準ビームが用いられるので、弱め合う干渉が像平面体にわたって発生しない。その代わりに、位相変調された干渉フリンジが得られる。これは、通常、空間へテロダイニングと呼ばれる。オブジェクト像の位相分布は、稠密フリンジパターンの位置変化によって回復される。コンピュータ224は、ディテクタ250からの出力を受け、必要な演算を行うために設けられる。この実施形態において、ディテクタは、例えば、CCDまたはCMOSイメージセンサなどの固体イメージセンサとすることができる。
【0035】
[0044] 放射源206から反射要素216を通ってディテクタ250に至る光路は、基準路または基準分岐を表し、放射源206からオブジェクト202を通ってディテクタ250に至る光路は、プローブ路またはプローブ分岐を表す。基準分岐とプローブ分岐の光路長差が照明源206のコヒーレンス長未満であることを理解されたい。光学機能を果たす(図2および他の実施形態の両方における)分岐の各々に設けられたさまざまなコンポーネントは、「光コンポーネント」と呼ばれる。光コンポーネントは、例えば、反射要素、干渉計要素、ビームスプリッタ、レンズ、視野絞り、および光学機能を果たす他のコンポーネントを含み得る。
【0036】
[0045] いったん上述の態様でシステム200を使用してオブジェクト202を結像していると、システム200を使用して同様に第2オブジェクト202’を結像することが可能である。このことは、システム(少なくとも一部)を動かす、またはオブジェクト202’を取り外し、それを新しいオブジェクト202’と交換することによって達成することができる。
【0037】
[0046] そして、コンピュータ224は、例えば、第1オブジェクト202と新しいオブジェクト202’の複合オブジェクトフィールドの一方から他方を減ずることによって両者を比較する。このように、2つのオブジェクトの差は、容易に観測することができる。これは、オブジェクト202が基準レチクルであり、かつ新しいオブジェクト202’が基準レチクル202と同様のパターンを有することになっている試験レチクルである場合に、その類似性を検証することができ、欠陥の存在について新しいオブジェクト202’を試験することが可能であることを意味する。
【0038】
[0047] 放射源206は、いくつかの実施形態において、モノクロレーザであってよい。
【0039】
[0048] 図2に示す傾斜基準波の使用は、傾斜基準ビーム212とプローブビーム214の干渉の結果として得られるフリンジパターンを分解するために、ディテクタが比較的高解像度を有することを必要とする。図3および図4は、本発明の一実施形態に係るオブジェクト検査システム300を概略的に示しており、ここで、合成視野像(または「位相像」)がデジタル方式ではなく光学的に記憶される。
【0040】
[0049] 最初に、記録モードを図3に示す。オブジェクト検査システム300のいくつかのコンポーネントは図2に示すコンポーネントと同様であり、図2で使用される参照符号と同一の参照符号で示されている。空間フィルタ244は設けられ得るが、説明を容易にするために図から省略されている。
【0041】
[0050] 光記憶デバイス302をディテクタ250の前方に設けることができる。光記憶デバイス302は、ホログラフィックプレートや結晶体などの3D光記憶デバイスとすることができる。レンズ305が拡大システムとして機能する。
【0042】
[0051] 上記図2に関して分かるように、傾斜基準ビーム212は透過プローブビーム214と干渉し、従って光記憶デバイス302に入射する光は傾斜基準ビーム212と干渉したプローブビーム214(好ましくは、空間フィルタによって遮断可能な0次数を除く)を含み、それによって干渉フリンジパターンが形成される。この干渉フリンジパターンは、光記憶デバイス302上に記憶される。光記憶デバイス302上の記録位置を制御するためにコンピュータ304を設けることができる。このようにオブジェクト202の合成視野像は、光記憶デバイス302に記憶される。
【0043】
[0052] 一実施形態において、オブジェクト202の製造直後に光記憶デバイス302への記録は一度しか行われない。記憶デバイス302は、常にオブジェクト202とともに存在することになる。このように、記憶デバイス302を別のシステム300の基準として使用することができ、従ってオブジェクト202を別のシステムで、例えば、別の位置において検査することができる。
【0044】
[0053] 記録中、通常、ディテクタ250は停止しているが、別の実施形態では、ディテクタ250は監視目的で、例えば、光強度雑音データを監視するために使用され得る。
【0045】
[0054] 同一のシステム300の検査モードを図4に示す。ここでは、試験オブジェクト202’は記憶されたオブジェクト202との同一性について検査される。オブジェクト202の像が記録されている光記憶デバイス302は基準分岐内に配置され、再構成された基準像が試験オブジェクト202’の像と逆の位相で結合される。
【0046】
[0055] 試験オブジェクト202’の像が基準オブジェクト202の像と同一である場合、ディテクタ250に入射する信号が存在しないことになる。欠陥が存在する場合、この欠陥はディテクタ250上の輝点として現れることになる。
【0047】
[0056] (ホログラフィックプレートまたは結晶体において)像が光学的に記憶されるので、高速電子型または複合型の大型固体イメージセンサは必要とされない。ホログラフィック光記憶の高解像度、データ記憶容量、および記録速度もまた有利である。データ処理は光学領域で行われるので、非常に速く(リアルタイムで)行われることが可能である。さらに、検査時間は非常に短くなり得る。(十分に同質で大型の照明システムおよび検出システムを仮定すると)オブジェクト(レチクル)全体を一度に検査可能であることが理想的である。
【0048】
[0057] ホログラフィックプレートは、マスクと同一の解像度を有する必要はない。プレート上のフィーチャがマスク上のフィーチャより(かなり)大きくなり得るように、適切な拡大光学系を採用することができ、これは使用可能なプレートの最大サイズによって制限される。このため、プレート信号に対するマスク信号の位置合わせはそれほど困難でない。また、倍率の拡大は、ホログラフィックプレートまたは結晶体の変形を軽減し得る。
【0049】
[0058] 図5は、本発明の一実施形態に係るオブジェクト検査システム500を概略的に示しており、このオブジェクト検査システム500は、必要に応じて、図2に示す実施形態と比較して低い解像度を有するディテクタとともに機能することができる。オブジェクト検査システム500は、オブジェクト502を検査するように配置され、このオブジェクト502は、例えば、レチクルとすることができる。レチクルは、汚染からの保護を目的とする、仮想線で示すペリクル504(または、例えばガラス窓)を任意に含み得る。ペリクルを含むか否かについての選択は、レチクル502が使用される特定のリソグラフィプロセスおよびリソグラフィ装置の構成によって決まる。
【0050】
[0059] オブジェクト検査システム500は、放射源506を含む。放射源506からの放射ビーム508が、ビームスプリッタ510によって基準ビーム512とプローブビーム514に分割される。基準ビーム512は、位相シフトを基準ビーム512に与える干渉計要素516を通過する。干渉計要素516は、選択可能な位相シフトを与えるために調整可能である。図5に示す実施形態において、干渉計要素は、2つの反射要素518、520および位相コントローラ222を含む。
【0051】
[0060] 反射要素518、520は、例えば、ミラーまたはプリズムとすることができる。位相コントローラ522は、反射要素518、520の相対位置を調整するためのアクチュエータを含む。図5の具体例において、反射要素518は、反射要素518の下の矢印が示すように移動可能である。反射要素518、520の相対位置は、反射要素518、520の一方または両方を動かすことによって調整され得ることを理解されたい。位相コントローラ522は、コンピュータ524から受ける命令に従って動作可能である。
【0052】
[0061] 反射素子間の調整された相対位置は、基準ビーム512の光路長、ひいては基準ビーム512に加えられる位相差を変化させる。従って、干渉計素子516は、選択された位相シフトを基準ビーム512に加えるために動作することができる。
【0053】
[0062] 別の実施形態において、干渉計素子516は電気光学モジュレータ、例えば、その全体にわたる電界の付与や変化によって屈折率を変化させることが可能な水晶を採用する型の電気光学モジュレータを含むことができる。
【0054】
[0063] ビームスプリッタ510が透過させたプローブビーム514は、第2ビームスプリッタ526によって反射されて対物レンズ528を通過し、この対物レンズ528はプローブビーム514をオブジェクト502上に集束させる。ペリクル504が含まれる場合、このペリクル504は、対物レンズ528の焦点面の外にある。
【0055】
[0064] そして、プローブビーム514は、オブジェクト502から反射される。鏡面反射は0次反射光530によって示される。また、より高い次数はオブジェクト表面のパターンによって発生する。説明を容易にするために、正の1次532および負の1次534のみを示すが、さらなる次数も存在し得ることを理解されたい。システムによって集光されるさらなる次数の数は、対物レンズ528の光学特性を含むシステムのパラメータによって決まる。
【0056】
[0065] 反射光は、ビームスプリッタ526を介して戻る。レンズ536は、反射光を集光し、視野絞り538、レンズ540、および反射要素542上のオブジェクト502の拡大像を生成する。ビームスプリッタ546からの0次反射光を遮断する空間フィルタ544が設けられ得る(図5は、空間フィルタ544のエッジによって回折するエッジ線も示している)。反射光のより高い次数は、ビームスプリッタ546を通過する。基準ビーム512もビームスプリッタ546に入射し、従ってビームスプリッタ546が結像レンズ548に向けて透過させた光は、非0次数の反射光、さらに位相シフトされた基準ビーム512を含む。
【0057】
[0066] 位相シフトされた基準ビーム512は、ビームスプリッタ546から出るプローブビーム514の反射光と干渉し、それによってディテクタ550上に干渉パターンが形成される。この実施形態において、ディテクタは、例えば、CCDまたはCMOSイメージセンサなどの固体イメージセンサとすることができる。ディテクタ550によって検出された像は、この例においてコンピュータである記憶媒体524に記憶される。
【0058】
[0067] そして、干渉計素子516は、連続した別々の位相シフトを加えるために動作することができ、干渉パターンは各位相シフトについて記録することができる。一連の干渉パターンの各干渉は、以下の式で示される:
【数1】

この式において、Iは、一連のn次干渉パターンの強度であり、Rrefは基準ビーム512の複合散乱フィールドであり、Robjはプローブビーム514の複合散乱フィールドであり、Ψobjは散乱プローブビーム514の位相であり、ψは基準ビーム512に加えられた位相シフトを表し、ψはn次干渉パターンに加えられた位相ステップを表すn倍になる。
【0059】
[0068] 実際には、複合オブジェクト波面を再構成するために少なくとも3つの位相ステップが必要とされる。しかし、より多くの位相ステップが行われる場合、信号対雑音比を改善することができ、位相ステップエラーを低減させることができる。通常、数十または数百の位相ステップが実施され得る。また、位相ステップは必ずしも等しいものである必要はないことに留意が必要である。
【0060】
[0069] そして、さまざまな位相ステップからの干渉パターンを用いてオブジェクト502の合成視野像を再構成する。合成視野像は、位相像、すなわち、位相情報を含む像データとも呼ばれる。
【0061】
[0070] いったん上述の態様でシステム500を使用してオブジェクト502を結像していると、システム500を使用して同様に第2オブジェクトを結像することが可能である。このことは、システム(少なくとも一部)を動かす、またはオブジェクト502を取り外し、それを新しいオブジェクト502’と交換することによって達成することができる。
【0062】
[0071] そして、コンピュータ524は、例えば、第1オブジェクト502と新しいオブジェクト502’の複合オブジェクトフィールドの一方から他方を減ずることによって両者を比較する。このように、2つのオブジェクトの差は、容易に観測することができる。これは、オブジェクト502が基準レチクルであり、かつ新しいオブジェクト502’が基準レチクルと同様のパターンを有することになっている試験レチクルである場合に、その類似性を検証することができ、欠陥の存在について新しいオブジェクト502’を試験することができることを意味する。
【0063】
[0072] 放射源506は、いくつかの実施形態において、モノクロレーザであってよい。しかし、別の実施形態では、放射源506は、多数の異なる波長で放射を放出する放射源であってよく、具体例として白色光源であってよい。
【0064】
[0073] 多数のさまざまな波長で放射を放出する放射源506の使用によって、散乱フィールドの分光情報を集めることも可能になる。各位相ステップにおいて、多数のさまざまな波長の合成視野を同時に測定し記憶することが可能である。これによって、波長依存散乱特性を追加識別係数として活用することが可能になり、このことは欠陥の検出可能性を向上させるのに役立つことが可能である。というのは、欠陥は一般に結像されるオブジェクトの表面と異なる分光反応を示し得るからである。こうしたモノクロ光源の結像解像度と同一の結像解像度の分光識別可能性を可能にするために、通常、モノクロ光源に必要とされる数より多い数の位相ステップが必要となる。少なくともλ/△λの全移動範囲が必要とされ、ここでλは中心波長であり、△λは必要スペクトル解像度である。例として、10nmの解像度および400nmの平均波長に対して、16μm以上の範囲が必要となり、位相ステップの総数は、100〜1000の範囲のどこかになるであろう。
【0065】
[0074] 放射源506から干渉計要素516を通ってディテクタ550に至る光路は、基準路または基準分岐を表し、放射源506からオブジェクト502を通ってディテクタ550に至る光路は、プローブ路またはプローブ分岐を表す。基準分岐とプローブ分岐の光路長差が照明源506のコヒーレンス長未満であることを理解されたい。
【0066】
[0075] 図6は、本発明の一実施形態に係る、検査されるオブジェクトの振動を補償可能なデバイスを含むオブジェクト検査システム600を概略的に示している。参照を容易にするために、図6は図5のオブジェクト検査システムに組み込まれるであろう振動補償デバイスの例を示しているが、この振動補償デバイスは、図2〜図5に示すオブジェクト検査システムのいずれにおいても使用することができる。結像処理およびオブジェクト検査の基本原理は図5を参照して説明した上記の基本原理と同様であり、オブジェクト検査システム600の構成要素は、必要に応じて、図5で使用される参照符号と同一の参照符号で示される。
【0067】
[0076] オブジェクト検査システム600は、測定分岐と基準分岐の光路差の変動を測定するために使用されるモニタ光源602を含む。モニタ光源602から放出された放射ビーム604は、任意で反射要素606を介し、ビームスプリッタ510を通過する。ビームスプリッタ510はモニタ放射ビーム604をモニタ基準ビーム608とモニタプローブビーム610に分割する。モニタ基準ビーム608は、主光源506からの基準ビーム512が処理されるのと同様に処理され、同一の分岐をたどる。同様に、モニタプローブビーム610は、主光源506からのプローブビーム514が処理されるのと同様に処理され、同一の分岐をたどる。図6の例において、モニタ基準ビーム608は、干渉計要素516によって加えられる位相変化を有する。モニタ基準ビーム608およびモニタプローブビーム610はともに、ビームスプリッタ546から反射された/ビームスプリッタ546を透過した後に、モニタディテクタ612によって受け取られる。モニタディテクタ612は、自身が受け取る情報をコンピュータ524に送って、コンピュータ524が行う計算に組み入れる。
【0068】
[0077] モニタディテクタ612は、基準ビーム608およびプローブビーム610が結合されてディテクタ550で検出される干渉結合を有する前に、これらのプローブビームを受け取る。従って、このことが作用して2つの分岐間の光路長の変動を測定する。システム内でのオブジェクトの移動、システムの移動、または構成要素の移動によるオブジェクトとシステムとの間で起こる振動が、2つの分岐間の光路長差の変化をもたらすことになる。こうした差はモニタディテクタによって受け取られ、コンピュータ524に送られ、ここで像の分析において差を考慮に入れることができる。
【0069】
[0078] 検出された光路長差をアライメント誤差に変換して適用し、そしてコンピュータ処理における像をシフトすることによって、欠陥の検出精度を向上させることが可能である。
【0070】
[0079] モニタ光源は、例えば、近赤外レーザーダイオードとすることができるが、他の適切な光源を使用することもできる。
【0071】
[0080] モニタ光源602は、検査下においてオブジェクト502、502’上に広がる領域を照明し得る。
【0072】
[0081] 放射源506から干渉計要素516を通ってディテクタ550に至る光路は、基準路または基準分岐を表す。放射源506からオブジェクト502を通ってディテクタ550に至る光路は、プローブ路またはプローブ分岐を表す。モニタ放射源602から干渉計要素516を通ってディテクタ550に至る光路は、モニタ路またはモニタ分岐を表す。基準分岐とプローブ分岐の光路長差が照明源602のコヒーレンス長未満であることを理解されたい。
【0073】
[0082] 図7は、別の実施形態であるオブジェクト検査システム700を示しており、オブジェクト702が垂直に照明され、0次反射光(すなわち鏡面反射)が基準分岐として用いられて、ディテクタ752上に投影された暗視野像の複合振幅を干渉法により測定する。この暗視野結像についての構成は、図3〜図6の装置に対応するいずれの方法とともに使用することもできる。
【0074】
[0083] オブジェクト検査システム700はオブジェクト702を検査するように配置され、オブジェクト702は、例えば、レチクルとすることができる。レチクルは、汚染からの保護を目的とする、仮想線で示すペリクル704(または、例えばガラス窓)を任意に含み得る。ペリクルを含むか否かについての選択は、レチクル702が使用される特定のリソグラフィプロセスおよびリソグラフィ装置の構成によって決まる。
【0075】
[0084] 放射源706からオブジェクト702、そして干渉計要素726を通ってディテクタ752に至る光路は、基準路または基準分岐を表す。放射源706からオブジェクト702を通って干渉計要素726を通過せずにディテクタ752に至る光路は、プローブ路またはプローブ分岐を表す。基準分岐とプローブ分岐の光路長差が照明源706のコヒーレンス長未満であることを理解されたい。
【0076】
[0085] オブジェクト検査システム700は、放射源706を含む。放射源706からの放射ビーム708がビームスプリッタ710およびレンズ702を通過し、次いで反射要素714によって対物レンズ716に向けて反射され、対物レンズ716は放射をオブジェクト702上に集束させる。そして、入射放射がオブジェクト702から反射される。ペリクル704が含まれる場合、このペリクル704は、対物レンズ716の焦点面の外にある。鏡面反射(0次反射光)が718、720で示される。また、より高い次数はオブジェクト表面のパターンによって発生する。説明を容易にするために、正負の1次722および正負の2次724のみを示すが、さらなる次数も存在し得ることを理解されたい。システムによって集光されるさらなる次数の数は、対物レンズ716の光学特性を含むシステムのパラメータによって決まる。
【0077】
[0086] 鏡面反射718、720は反射素子714によって遮断され、レンズ712およびビームスプリッタ710を介して戻る。反射素子714は、0次反射光は遮断されるが他の次数は通過可能である大きさを有する。反射素子714の選択される寸法は、システム700の他の構成要素の特性、例えば、使用されるレンズの寸法および光学特性、によって決まる。
【0078】
[0087] ビームスプリッタ710によって反射された後、鏡面反射ビームは、位相シフトを加える干渉計要素726を通過する。干渉計要素726は選択可能な位相シフトを加えるように調整可能である。図7に示す実施形態では、干渉計要素726は2つの対向伝播性くさび728、730を含む。他の利用可能な位相ステッパの能力と比較して、比較的大きい光路差を実現することが可能になるので、この構成が選択され得る。しかし、所望の場合に図7のくさび728、730に取って代わり得る位相ステッピングを加える他の多くの方法があることを理解されたい。これらの方法には、ポッケルスセル、カーセル、LCD(液晶)位相シフタ、ピエゾ駆動のミラー/コーナーキューブ、バビネ−ソレイユ補償板などが含まれる。
【0079】
[0088] 補償計要素726は位相コントローラによって制御され、この位相コントローラは、コンピュータ/コントローラモジュール732の一部として図7に示されている。別の実施例としては、位相コントローラおよびコンピュータは、別々のデバイスとして実装されてよく、この場合、位相コントローラはコンピュータによって動作可能である(この実施例は、図5および図6の対応するコンピュータによっても分かる)。図7に示すように実施される場合、コンピュータ/コントローラモジュール732はハードウエアおよびソフトウエアの構成要素の組合せを含む、1つ以上のユーザインターフェースを伴った専用機械の形態をとることができる。
【0080】
[0089] 図7の具体例において、くさび728、730は、各くさびの矢印が示すように、それぞれ反対方向に移動可能である。
【0081】
[0090] くさび728、730は、入射ビームの光路長を変化させ、従って位相差が与えられる。加えられる位相差の量は、くさび728、730が移動する量を変えることによって変更することができる。こうして、干渉計要素726は選択された位相シフトを入射ビームに加えるように動作可能である。
【0082】
[0091] そして、位相シフトされた鏡面反射ビームは、反射要素740に入射する前に、集束され、レンズ734、視野絞り736、およびレンズ738を通る。この反射要素740は、鏡面反射ビームを誘導してプローブ分岐の光路と合流するように機能する(以下に述べる)。
【0083】
[0092] オブジェクト702から反射された非0次放射は、反射要素714によって遮断されず、プローブ分岐を形成する。非0次反射放射は、反射要素746によって反射され、そしてレンズ748を通過する前に、レンズ716および742ならびに視野絞り744を通過する。プローブ分岐内の放射は、反射要素740によって遮断されない。そして、プローブ分岐および基準分岐はともにレンズ750に入射する。次に、プローブビームと基準ビームの干渉が、ディテクタ752上の干渉パターンを形成する。一実施形態では、ディテクタは、例えば、CCDまたはCMOSイメージセンサなどの固体イメージセンサである。ディテクタ752によって検出された像は、コンピュータ/コントローラモジュール732によって記憶される。
【0084】
[0093] そして、補償計要素726は一連の異なる位相シフトを加えるように動作可能であり、各位相シフトについて干渉パターンを記録することができる。一連の干渉パターンのうち各干渉は、以下の式によって表される。
【数2】

この式において、Inは一連のうちのn番目の干渉パターンの強度であり、Rrefは基準ビームの複合散乱フィールドであり、Robjはプローブビームの複合散乱フィールドであり、Ψobjは散乱プローブビームの位相であり、△ψは基準ビームに加えられた位相シフトであり、△ψは、n番目の干渉パターンに対して加えられる位相ステップを表すn倍になる。
【0085】
[0094] 実際には、複合オブジェクト波面を再構成するために少なくとも3つの位相ステップが必要とされる。しかし、より多くの位相ステップが行われる場合、信号対雑音比を改善することができ、位相ステップエラーを低減させることができる。通常、数十または数百の位相ステップが実施され得る。
【0086】
[0095] そして、さまざまな位相ステップからの干渉パターンを組み合わせてオブジェクト702の暗視野像を形成する。
【0087】
[0096] いったん上述の態様でシステム700を使用してオブジェクト702を結像していると、システム700を使用して同様に第2オブジェクトを結像することが可能である。このことは、システム(少なくとも一部)を動かす、またはオブジェクト702を取り外し、それを新しいオブジェクト702’と交換することによって達成することができる。
【0088】
[0097] そして、コンピュータ/コントローラモジュール732のコンピュータは、例えば、第1オブジェクト702と新しいオブジェクト702’の複合オブジェクトフィールドの一方から他方を減ずることによって両者を比較する。このように、2つのオブジェクトの差は、容易に観測することができる。これは、オブジェクト702が基準レチクルであり、かつ新しいオブジェクト702’が基準レチクルと同様のパターンを有することになっている試験レチクルである場合に、その類似性を検証することができ、欠陥の存在について新しいオブジェクト702’を試験することができることを意味する。
【0089】
[0098] 放射源706は、いくつかの実施形態において、モノクロレーザであってよい。しかし、別の実施形態では、放射源706は多数の異なる波長で放射を放出する放射源であってよく、具体例として白色光源であってよい。
【0090】
[0099] 多数のさまざまな波長で放射を放出する放射源706の使用によって、散乱フィールドの分光情報を集めることも可能になる。各位相ステップにおいて、多数のさまざまな波長の複合振幅を同時に測定し記憶することが可能である。これによって、波長依存散乱特性を追加識別係数として活用することが可能になり、このことは欠陥の検出可能性を向上させるのに役立つことが可能である。というのは、欠陥は一般に結像されるオブジェクトの表面と異なる分光反応を示し得るからである。こうしたモノクロ光源の結像解像度と同一の結像解像度の分光識別可能性を可能にするために、上述の通り、通常、多数の位相ステップが必要となる。図7の例に示す2つの対向伝播性くさび728、730の使用は、多数のさまざまな波長で放射を放出する放射源706を用いる際に有用であり得る。というのは、このことはモノクロ放射源706と比較して大きい光路差を必要とするからであり、2つの対向伝播性くさび728、730は、上述した比較的広い範囲にわたる光路を調整可能であり、従って十分なスペクトル解像度を確実にする良好な選択肢である。
【0091】
[00100] 基準路がシステム700を表す際のオブジェクトからの0次反射光に使用は、本質的に振動の影響を受けない。というのはオブジェクト702の移動は基準分岐およびプローブ分岐の両方に影響を及ぼし、ディテクタ752で検出された像の共通のモード振動をもたらすからである。
【0092】
[0100] また、システム700は、放射センサ754と、任意の光学素子755と、コンピュータ/コントローラモジュール732で実行される適切なソフトウエアと、を含む任意のモニタデバイス754、755を含む。モニタデバイス754、755は、ビームスプリッタ710からの放射を受ける。一実施形態においては、放射センサ754はフォトダイオードを含み得る。放射センサ754は強度雑音データをコンピュータ/コントローラモジュール732のコンピュータに送るために使用される。強度雑音データを使用してディテクタ752によって得られた像を規格化することができる。像の規格化は、結像されたオブジェクト各々の位相を段階的に変化させた像と、基準オブジェクト702と試験オブジェクト702’の合成視野の比較とを関連させるのに役立ち、これによって感度と欠陥検出の精度がさらに改善される。
【0093】
[0101] モニタデバイス754、755は、図2〜図6の明視野システムおよびそれらの変形例を含む他の実施形態にも適用され得る。
【0094】
[0102] さらなる実施形態において、図2〜図7のうちのいずれのオブジェクト検査システムもレンズ248、548、750とそれぞれのディテクタとの間のフィルタシステムを任意に含むことができる。フィルタシステムは、例えば、望ましくない放射またはエネルギーを打ち消す2つのフーリエレンズとそれらの間の空間フィルタを含むことができる。フィルタシステムを使用することによってより良好な出力信号対雑音比を得ることができ、特に、オブジェクトパターンのパターンが周期的コンポーネントを有する場合に有用である。
【0095】
[0103] また、上述の実施形態は、反射型オブジェクト/レチクルを用いる使用について説明されているが、本発明の実施形態は、透過型オブジェクト/レチクルを伴う使用にも適用することができる。その場合、図2〜図7に示す光源は、図に示す以下のさまざまなオブジェクトを照明するであろう。
【0096】
[0104] 上述の実施形態の各々および(合成視野の比較による)それらの変形例の位相検出の使用により、上記背景技術の説明で述べた従来の強度に基づいた検出と比較して、欠陥の検出に対する感度の向上がもたらされる。このことは、100nm以下、好ましくは20nm以下の特性寸法を有するより小さい欠陥について特に有用である。
【0097】
[0105] 上述の実施形態に係るシステムによって結像可能なオブジェクト202/202’、502/502’、702/702’は、一実施形態において、集積回路の個々の層上に形成される回路パターンを生成するためのリソグラフィパターニングデバイスであり得る。パターニングデバイスの例としては、マスク、レチクル、または動的パターニングデバイスが含まれる。システムを使用できるレチクルとしては、例えば、周期的パターンを有するレチクルおよび非周期的パターンを有するレチクルが含まれる。また、レチクルは、EUVリソグラフィおよびインプリントリソグラフィなどのリソグラフィプロセスとともに用いられるレチクルとすることができる。
【0098】
[0106] 図7に示す実施形態は暗視野システムとして動作する。図2〜図6に示す実施形態は、所望の場合に暗視野システムとして動作するように変更され得ることが明らかである。
【0099】
[0107] 上述の実施形態は別々のデバイスとして示されている。または、これらの実施形態は、インツールデバイスとして、すなわち、リソグラフィシステム内に任意に設けられてよい。別個の装置としては、(例えば、出荷の前に)レチクル検査という目的のために使用することができる。インツールデバイスとしては、リソグラフィプロセス用にレチクルを使用する前にレチクルの迅速な検査を行うことができる。図8〜図10は、インツールデバイスとしてレチクル検査システムを組み込むことができるリソグラフィシステムの例を示している。図8〜図10において、レチクル検査システム800がリソグラフィシステムとともに示されている。レチクル検査システム800は、図2〜図7に示す実施形態またはそれらの変形例のいずれかのオブジェクト検査システムとすることができる。
【0100】
[0108] 以下の説明は、本発明の実施形態が実施され得る詳細な例示的環境を示す。
【0101】
[0109] 図8は、本発明の一実施形態に係るリソグラフィ装置を概略的に示している。このリソグラフィ装置は、
−放射源SOから放射ビームを受け、放射ビームB(例えば、EUV放射)を調整するように構成された照明システム(イルミネータ)ILと、
−パターニングデバイス(例えば、マスクまたはレチクル)MAを支持するように構成され、かつパターニングデバイスMAを正確に位置決めするように構成された第1ポジショナPMに連結されたサポート構造(例えば、マスクテーブル)MTと、
−基板(例えば、レジストコートウェーハ)Wを保持するように構成され、かつ基板Wを正確に位置決めするように構成された第2ポジショナPWに連結された基板テーブル(例えば、ウェーハテーブル)WTと、
−パターニングデバイスMAによって放射ビームBに付けられたパターンを基板Wのターゲット部分C(例えば、1つ以上のダイを含む)上に投影するように構成された投影システム(例えば、反射投影レンズシステム)PSと、を備える。
【0102】
[0110] 照明システムとしては、放射を誘導し、整形し、または制御するための、屈折型、反射型、磁気型、電磁型、静電型、またはその他のタイプの光コンポーネント、あるいはそれらのあらゆる組合せなどのさまざまなタイプの光コンポーネントを含むことができる。
【0103】
[0111] サポート構造MTおよびWTは、パターニングデバイスMAおよびサポート構造WTをそれぞれ含むオブジェクトを保持する。各サポート構造MT、WTは、それぞれのオブジェクトMA、Wの向き、リソグラフィ装置の設計、および、オブジェクトMA、Wが真空環境内で保持されているか否かなどの他の条件に応じた態様で、オブジェクトMA、Wを保持する。サポート構造MT、WTの各々は、機械式、真空式、静電式またはその他のクランプ技術を使って、オブジェクトMA、Wを保持することができる。サポート構造MT、WTは、例えば、必要に応じて固定または可動式にすることができるフレームまたはテーブルを含んでよい。サポート構造MT、WTは、それぞれのオブジェクトMA、Wを、例えば、投影システムPSに対して所望の位置に確実に置くことができる。
【0104】
[0112] 第2ポジショナPWおよび位置センサIF2(例えば、干渉計デバイス、リニアエンコーダ、または静電容量センサ)を使って、例えば、さまざまなターゲット部分Cを放射ビームBの経路内に位置付けるように、基板テーブルWTを正確に動かすことができる。同様に、第1ポジショナPMおよび別の位置センサIF1を使い、パターニングデバイス(例えば、マスク)MAを放射ビームBの経路に対して正確に位置付けることもできる。パターニングデバイス(例えば、マスク)MAおよび基板Wは、マスクアライメントマークM1およびM2と、基板アライメントマークP1およびP2とを使って、位置合わせされてもよい。
【0105】
[0113] 「パターニングデバイス」という用語は、基板のターゲット部分内にパターンを作り出すように、放射ビームの断面にパターンを与えるために使用できるあらゆるデバイスを指していると、広く解釈されるべきである。放射ビームに付けたパターンは、集積回路などのターゲット部分内に作り出されるデバイス内の特定機能層に対応することになる。
【0106】
[0114] パターニングデバイスは、透過型であっても、反射型であってもよい。パターニングデバイスの例としては、マスク、プログラマブルミラーアレイ、およびプログラマブルLCDパネルが含まれる。マスクは、リソグラフィでは公知であり、バイナリ、レべンソン型(alternating)位相シフト、およびハーフトーン型(attenuated)位相シフトなどのマスク型、ならびに種々のハイブリッドマスク型を含む。プログラマブルミラーアレイの一例では、小型ミラーのマトリックス配列が用いられており、各小型ミラーは、入射する放射ビームを様々な方向に反射させるように、個別に傾斜させることができる。傾斜されたミラーは、ミラーマトリックスによって反射される放射ビームにパターンを付ける。
【0107】
[0115] 「投影システム」という用語は、使われている露光放射にとって、あるいは液浸液の使用または真空の使用といった他の要因にとって適切な、屈折型、反射型、反射屈折型、磁気型、電磁型、および静電型光学系、またはそれらのあらゆる組合せを含むあらゆる型の投影システムを包含し得る。EUVまたは電子ビーム放射に対して真空を用いることが望ましい場合がある。というのは、他のガスは放射または電子を吸収し過ぎる場合があるからである。従って、真空壁および真空ポンプを用いて、真空環境をビーム経路全体に提供することができる。
【0108】
[0116] リソグラフィ装置は、2つ(デュアルステージ)以上の基板テーブル(および/または2つ以上のマスクテーブル)を有する型のものであってもよい。そのような「マルチステージ」機械においては、追加のテーブルは並行して使うことができ、または予備工程を1つ以上のテーブル上で実行しつつ、別の1つ以上のテーブルを露光用に使うこともできる。
【0109】
[0117] 図8に示す通り、リソグラフィ装置は、反射型のもの(例えば、反射型マスクを採用しているもの)である。また、リソグラフィ装置は、透過型のもの(例えば、透過型マスクを採用しているもの)であってもよい。透過型のリソグラフィ装置が図9に示されている。
【0110】
[0118] 図9を参照すると、イルミネータILは、放射源SOから放射ビームを受ける。例えば、放射源SOがエキシマレーザである場合、放射源とリソグラフィ装置は、別個の構成要素であってもよい。そのような場合には、放射源SOは、リソグラフィ装置の一部を形成しているとはみなされず、また放射ビームは、放射源SOからイルミネータILへ、例えば、適切な誘導ミラーおよび/またはビームエキスパンダを含むビームデリバリシステムBDを使って送られる。その他の場合においては、例えば、放射源SOが水銀ランプである場合、放射源SOは、リソグラフィ装置の一体部分とすることもできる。放射源SOおよびイルミネータILは、必要ならばビームデリバリシステムBDとともに、放射システムと呼んでもよい。
【0111】
[0119] イルミネータILは、放射ビームの角強度分布を調節するアジャスタADを含むことができる。一般に、イルミネータの瞳面内の強度分布の少なくとも外側および/または内側半径範囲(通常、それぞれσ-outerおよびσ-innerと呼ばれる)を調節することができる。さらに、イルミネータILは、インテグレータINおよびコンデンサCOといったさまざまな他のコンポーネントを含むことができる。イルミネータILを使って放射ビームを調整すれば、放射ビームの断面に所望の均一性および強度分布をもたせることができる。
【0112】
[0120] 放射ビームBは、サポート構造(例えば、マスクテーブル)MT上に保持されているパターニングデバイス(例えば、マスク)MA上に入射して、パターニングデバイスによってパターン形成される。パターニングデバイス(例えば、マスク)MAをした後、放射ビームBは投影システムPSを通過し、投影システムPSは、基板Wのターゲット部分C上にビームの焦点をあわせる。第2ポジショナPWおよび位置センサIF2(例えば、干渉計デバイス、リニアエンコーダ、または静電容量センサ)を使って、例えば、さまざまなターゲット部分Cを放射ビームBの経路内に位置付けるように、基板テーブルWTを正確に動かすことができる。同様に、第1ポジショナPMおよび別の位置センサ(図示せず)を使い、パターニングデバイス(例えば、マスク)MAを放射ビームBの経路に対して正確に位置付けることもできる。パターニングデバイス(例えば、マスク)MAおよび基板Wは、マスクアライメントマークM1およびM2と、基板アライメントマークP1およびP2とを使って、位置合わせされてもよい。
【0113】
[0121] 図9は、形態や動作が当業者によく知られているであろう、透過型リソグラフィ装置で使用される多数の他の構成要素を示している。
【0114】
[0122] 図8および図9に示す装置は、以下に説明するモードのうち少なくとも1つのモードで使用できる。
1.ステップモードにおいては、サポート構造(例えば、マスクテーブル)MTおよび基板テーブルWTを基本的に静止状態に保ちつつ、放射ビームに付けられたパターン全体を一度にターゲット部分C上に投影する(すなわち、単一静的露光)。その後、基板テーブルWTは、Xおよび/またはY方向に移動され、それによって別のターゲット部分Cを露光することができる。
2.スキャンモードにおいては、サポート構造(例えば、マスクテーブル)MTおよび基板テーブルWTを同期的にスキャンする一方で、放射ビームに付けられたパターンをターゲット部分C上に投影する(すなわち、単一動的露光)。サポート構造(例えば、マスクテーブル)MTに対する基板テーブルWTの速度および方向は、投影システムPSの(縮小)拡大率および像反転特性によって決めることができる。
3.別のモードにおいては、プログラマブルパターニングデバイスを保持した状態で、サポート構造(例えば、マスクテーブル)MTを基本的に静止状態に保ち、また基板テーブルWTを動かす、またはスキャンする一方で、放射ビームに付けられているパターンをターゲット部分C上に投影する。このモードにおいては、通常、パルス放射源が採用されており、さらにプログラマブルパターニングデバイスは、基板テーブルWTの移動後ごとに、またはスキャン中の連続する放射パルスと放射パルスとの間に、必要に応じて更新される。この動作モードは、前述の型のプログラマブルミラーアレイといったプログラマブルパターニングデバイスを利用するマスクレスリソグラフィに容易に適用することができる。
【0115】
[0123] 上述の使用モードの組合せおよび/またはバリエーション、あるいは完全に異なる使用モードもまた採用可能である。
【0116】
[0124] 図10は、放射システム42、照明システムIL、および投影システムPSを含む図8の装置を、より詳細に示している。放射システム42は、放電プラズマによって形成され得る放射源SOを含む。EUV放射は、非常に高温のプラズマが生成されて電磁スペクトルのEUV範囲の放射を放出するガスまたは蒸気、例えば、Xeガス、Li蒸気またはSn蒸気によって生成され得る。非常に高温のプラズマは、例えば、電気放電によって少なくとも部分的にイオン化されたプラズマを生じさせることによって生成される。放射を効率よく生成するために、Xe、Li、Sn蒸気または他の適切なガスまたは蒸気の例えば10Paの分圧が必要となり得る。一実施形態において、Sn源はEUV源として用いられる。放射源SOから放出された放射は、放射源チャンバ47から、放射源チャンバ47の開口内または開口の後方に位置決めされた光ガスバリアまたは汚染トラップ49(汚染バリアまたはフォイルトラップと呼ばれることもある)を介してコレクタチャンバ48内へ送られる。汚染トラップ49はチャネル構造を含み得る。また、汚染トラップ49は、ガスバリアまたはガスバリアとチャネル構造の組合せを含み得る。当技術分野において公知であるように、本明細書においてさらに示される汚染トラップまたは汚染バリア49は、少なくともチャネル構造を含む。
【0117】
[0125] コレクタチャンバ48は、かすめ入射コレクタ(いわゆるかすめ入射リフレクタを含む)であり得る放射コレクタ50を含み得る。放射コレクタ50は、上流放射コレクタ側50aと下流放射コレクタ側50bとを有する。コレクタ50によって送られる放射を格子スペクトルフィルタ51で反射させて、コレクタチャンバ48のアパーチャにある中間焦点52に集束させることができる。図10の放射ビーム56によって示されるように、コレクタチャンバ48から放出される放射ビームは、いわゆる法線入射リフレクタ53、54を介して照明システムILを横切る。法線入射リフレクタは、サポート(例えば、レチクルテーブルまたはマスクテーブル)MT上に位置決めされたパターニングデバイス(例えば、レチクルまたはマスク)上にビーム56を誘導する。パターン形成されたビーム57が形成され、このパターン形成されたビーム57は、投影システムPSによって、反射素子58、59を介して、ウェーハステージまたは基板テーブルWTによって保持された基板上に結像される。一般に、図示された素子より数の多い素子が照明システムILおよび投影システムPSに存在してよい。格子スペクトルフィルタ51は、リソグラフィ装置のタイプによって任意で存在してよい。さらに、図示されたミラーより数の多いミラーが存在してよい。例えば、図2に示す素子58、59との比較において1つ〜4つのさらなる反射素子が存在してよい。放射コレクタ50に類似した放射コレクタが、従来技術より公知である。
【0118】
[0126] 放射コレクタ50は、本明細書において、リフレクタ142、143および146を有する入れ子式コレクタとして説明される。図10に概略的に示すように、入れ子式放射コレクタ50は、本明細書において、かすめ入射コレクタ(またはかすめ入射コレクタミラー)の一例としてさらに用いられる。しかし、かすめ入射ミラーを含む放射コレクタ50の代わりに、法線入射コレクタを含む放射コレクタを使用してよい。従って、適用可能な場合には、かすめ入射コレクタとしてのコレクタミラー50を、通常のコレクタとして、そして特定の実施形態においては法線入射コレクタとして解釈してもよい。
【0119】
[0127] さらに、図10に概略的に示すような格子51の代わりに、透過型光フィルタを使用してもよい。EUVを透過させる光フィルタ、ならびにUV放射をより透過させない、または実質的にUV放射を吸収する光フィルタが、関連技術において公知である。従って、「格子スペクトル純度フィルタ」は、本明細書においてさらに「スペクトル純度フィルタ」として示され、これには格子または透過型フィルタが含まれる。図10に示されていないが、任意の光学素子として、例えば、コレクタミラー50の上流に配置されるEUV透過型光フィルタ、または照明システムILおよび/または投影システムPS内の光EUV透過型フィルタを含むことができる。
【0120】
[0128] 放射コレクタ50は、放射源SOまたは放射源SOの像の近傍に通常配置される。各リフレクタ142、143、および146は、少なくとも2つの隣接した反射面を含み得る。これらの反射面のうち、放射源SOからより遠い反射面は、放射源SOにより近い反射面よりも光軸Oに対してより小さい角度で配置される。このように、かすめ入射コレクタ50は、光軸Oに沿って伝搬する(E)UV放射ビームを生成するように構成される。少なくとも2つのリフレクタは、光軸Oについて、実質的に同軸に配置され、かつ実質的に回転対称に延在し得る。当然のことながら、放射コレクタ50は、外側リフレクタ146の外面上のさらなるフィーチャ、または外側リフレクタ146の周りのさらなるフィーチャを有し得る。例えば、さらなるフィーチャは、保護ホルダまたはヒータとすることができる。参照番号180は、2つのリフレクタ間、例えば、リフレクタ142とリフレクタ143との間の空間を示す。
【0121】
[0129] 使用中、外側リフレクタ146ならびに内側リフレクタ142および143のうちの1つ以上の上に、堆積物が発見されることがある。放射コレクタ50は、そのような堆積物により劣化し得る(例えば、放射源SOからのデブリ、例えば、イオン、電子、クラスター、小滴、電極腐食による劣化)。例えばSn源によるSnの堆積は、いくつかの単層の後、放射コレクタ50または他の光学素子の反射に対して有害であり、そのような光学素子のクリーニングを必要とする場合がある。
【0122】
[0130] 本明細書において、IC製造におけるリソグラフィ装置の使用について具体的な言及がなされているが、本明細書記載のリソグラフィ装置が、集積光学システム、磁気ドメインメモリ用のガイダンスパターンおよび検出パターン、フラットパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッド等の製造といった他の用途を有し得ることが理解されるべきである。
【0123】
[0131] 光リソグラフィの関連での本発明の実施形態の使用について上述のとおり具体的な言及がなされたが、当然のことながら、本発明は、他の用途、例えば、インプリントリソグラフィに使われてもよく、さらに状況が許すのであれば、光リソグラフィに限定されることはない。
【0124】
[0132] 本明細書で使用される「放射」および「ビーム」という用語は、紫外線(UV)(例えば、365nm、355nm、248nm、193nm、157nm、または126nmの波長、またはおよそこれらの値の波長を有する)、および極端紫外線(EUV)(例えば、5〜20nmの範囲の波長を有する)、ならびにイオンビームや電子ビームなどの微粒子ビームを含むあらゆる種類の電磁放射を包含している。
【0125】
[0133] 上記実施形態において、照明源からディテクタまでの第1光路と照明源からディテクタまでの第2光路の光路長差は照明源のコヒーレンス長未満でなければならないことが明らかである。光路(または光路長)は、次式:OPL=c∫n(s)dsに示すように幾何学的長さと(s)と屈折率(n)の積であり、ここで積分は光線に沿って行われる。均一な媒体を有する(光源からディテクタまでの)2つの分岐に直線光を用いる例では、光路差(OPD)は、(n1*s1)−(n2*s2)に等しい。
【0126】
[0134] 以上、本発明の具体的な実施形態を説明してきたが、本発明は、上述以外の態様で実施できることが明らかである。例えば、本発明は、上記に開示した方法を表す1つ以上の機械読取可能命令のシーケンスを含むコンピュータプログラムの形態、またはこのようなコンピュータプログラムが記憶されたデータ記憶媒体(例えば、半導体メモリ、磁気ディスクまたは光ディスク)の形態であってもよい。
【0127】
[0135] 上記の説明は、制限ではなく例示を意図したものである。従って、当業者には明らかなように、添付の特許請求の範囲を逸脱することなく本記載の発明に変更を加えてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オブジェクト検査システムであって、
基準放射ビームを放出するように配置された放射源と、
検査対象オブジェクトに入射するプローブ放射ビームを放出するように配置された放射源と、
前記基準放射ビームと前記プローブ放射ビームを干渉法により合成するように配置された1つ以上の光学素子と、
基準オブジェクトの合成視野像を記憶するように配置された記憶媒体と、
前記検査対象オブジェクトの合成視野像を前記基準オブジェクトの前記記憶された合成視野像と比較するように配置されたコンパレータと、を含む、オブジェクト検査システム。
【請求項2】
ビームスプリッタをさらに含み、単一の放射原が前記ビームスプリッタと相互に作用する放射ビームを放出して前記基準放射ビームおよび前記プローブ放射ビームを形成する、請求項1に記載のオブジェクト検査システム。
【請求項3】
前記プローブ放射ビームとの干渉のために傾斜基準放射ビームとして前記基準放射ビームを設けるために、前記1つ以上の光学素子は、前記基準放射ビームを偏向するように配置された反射素子を含む、請求項1または2に記載のオブジェクト検査システム。
【請求項4】
前記記憶媒体は、光記憶デバイスを含む、請求項1〜3のいずれかに記載のオブジェクト検査システム。
【請求項5】
前記光記憶デバイスは、ホログラムプレートまたは結晶である、請求項4に記載のオブジェクト検査システム。
【請求項6】
基準オブジェクトの記憶された合成視野像を有する前記記憶媒体は、前記検査対象オブジェクトから反射された前記プローブ放射ビームと逆の位相で設置され、それによって前記検査対象オブジェクトの前記合成視野像と前記基準オブジェクトの前記記憶された合成視野像の差のみが伝送される、請求項4または5に記載のオブジェクト検査システム。
【請求項7】
前記1つ以上の光学素子は、前記基準放射ビームが前記プローブ放射ビームと合成される前に位相シフトを前記基準放射ビームに加える位相シフタを含む、請求項1または2に記載のオブジェクト検査システム。
【請求項8】
前記位相シフタは、選択可能な位相シフトを利用可能である、請求項7に記載のオブジェクト検査システム。
【請求項9】
前記干渉法により合成された基準放射ビームおよびプローブ放射ビームから得られる干渉パターンを検出する結像センサと、
複数の検出された干渉パターンを合成して前記検査対象オブジェクトの合成視野像を得るためのコンピュータであって、前記記憶媒体を含むコンピュータと、をさらに含む、請求項7または8に記載のオブジェクト検査システム。
【請求項10】
前記位相シフタは、電子光学モジュレータを含む、請求項7〜9のいずれかに記載のオブジェクト検査システム。
【請求項11】
前記位相シフタは、一対の対向伝播性くさびを含む位相ステッパを含む、請求項7〜9のいずれかに記載のオブジェクト検査システム。
【請求項12】
前記または各放射源は、白色光放射源を含む、請求項7〜11のいずれかに記載のオブジェクト検査システム。
【請求項13】
前記コンパレータは、分光情報を読み取るように配置される、請求項12に記載のオブジェクト検査システム。
【請求項14】
暗視野像が得られる、請求項1〜13のいずれかに記載のオブジェクト検査システム。
【請求項15】
鏡面反射ビームを基準放射路に向けて偏向し、かつ非0次数を含む反射ビームがプローブ放射路内を進むことを可能にする反射素子を有する、請求項1〜14のいずれかに記載のオブジェクト検査システム。
【請求項16】
前記基準放射ビームと前記プローブ放射ビームの光路長差を監視し、かつ記憶された干渉パターンと前記基準合成視野像の比較が前記検査対象オブジェクトの振動を考慮に入れるように前記差を前記コンパレータに伝達するように配置されたモニタ光源を含む、請求項1〜15のいずれかに記載のオブジェクト検査システム。
【請求項17】
前記基準放射ビームおよび前記プローブ放射ビームの一方または両方からの強度雑音データを収集するように配置された放射センサを含む、請求項1〜16のいずれかに記載のオブジェクト検査システム。
【請求項18】
前記検査対象オブジェクトは、レチクル、EUVレチクル、および非周期的パターンを有するレチクルからなる群からの少なくとも1つを含む、請求項1〜17のいずれかに記載のオブジェクト検査システム。
【請求項19】
オブジェクトを検査する方法であって、
基準放射ビームとプローブ放射ビームを干渉法により結合して前記オブジェクトの合成視野像を得ることと、
前記オブジェクトの前記合成視野像を記憶することと、
前記オブジェクトの前記合成視野像と基準合成視野像を比較することと、を含む、方法。
【請求項20】
前記基準放射ビームおよびプローブ放射ビームは単一の放射源から得られ、当該放射源の出力ビームが前記基準放射ビームおよびプローブ放射ビームに分割される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記基準合成視野像は先の検査済みオブジェクトから得られる、請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
前記基準放射ビームを前記プローブ放射ビームと干渉法により合成する前記ステップは、前記プローブ放射ビームに対して傾斜した基準放射ビームを設けて干渉パターンを生成することを含む、請求項19〜21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
前記オブジェクトの前記合成視野像を記憶する前記ステップは、前記干渉した基準放射ビームおよびプローブ放射ビームを光記憶デバイスに書き込むことを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記光記憶デバイスは、ホログラムプレートまたは結晶を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記オブジェクトの前記合成視野像を基準合成視野像と比較する前記ステップは、前記検査対象オブジェクトから反射された前記プローブ放射ビームと逆の位相で、前記基準合成視野像を含む前記光記憶デバイスを設置することを含み、それによって前記検査対象オブジェクトの前記合成視野像と前記基準オブジェクトの前記記憶された合成視野像の差のみが伝送される、請求項23または24に記載のオブジェクト検査システム。
【請求項26】
前記基準放射ビームを前記プローブ放射ビームと干渉法により合成する前記ステップは、前記基準放射ビームが前記プローブ放射ビームと合成される前に位相シフトを前記基準放射ビームに加えることを含む、請求項19〜21のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
一連の選択された位相シフトが適用され、干渉パターンが各位相シフトごとに記憶される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
位相シフトを導入する前記ステップは、電子光学モジュレータを含む位相ステッパを使用する、請求項26または27に記載の方法。
【請求項29】
位相シフトを導入する前記ステップは、一対の対向伝播性くさびを含む位相ステッパを使用する、請求項26または27に記載の方法。
【請求項30】
前記オブジェクトの前記合成視野像を記憶する前記ステップは、前記干渉した基準放射ビームおよびプローブ放射ビームを固体イメージセンサで検出することと、前記イメージデータをコンピュータに記憶することと、を含む、請求項26〜29のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
暗視野像が得られる、請求項19〜30のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
鏡面反射ビームが基準放射路に向けて偏向し、かつ非0次数がプローブ放射路内を進むことが可能である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記基準放射ビームと前記プローブ放射ビームの光路長差を監視することと、前記検査対象オブジェクトの振動を考慮に入れるように前記記憶された合成視野像と前記基準合成視野像の比較における前記差を用いることと、を含む、請求項19〜32のいずれかに記載の方法。
【請求項34】
プローブ放射ビームを伴う前記基準放射ビームは、白色光放射を含む、請求項26〜33のいずれかに記載の方法。
【請求項35】
前記白色光放射は、分光情報の特定のために使用される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記基準放射ビームおよび前記プローブ放射ビームの一方または両方からの強度雑音データを収集することをさらに含む、請求項19〜35のいずれかに記載の方法。
【請求項37】
前記検査対象オブジェクトは、レチクル、EUVレチクル、および非周期的パターンを有するレチクルからなる群からの少なくとも1つを含む、請求項19〜36のいずれかに記載の方法。
【請求項38】
オブジェクト検査システムを有するリソグラフィシステムであって、前記オブジェクト検査システムは、
基準放射ビームを放出するように配置された放射源と、
検査対象オブジェクトに入射するプローブ放射ビームを放出するように配置された放射源と、
前記基準放射ビームと前記プローブ放射ビームを干渉法により合成するように配置された1つ以上の光学素子と、
基準オブジェクトの合成視野像を記憶するように配置された記憶媒体と、
前記検査対象オブジェクトの合成視野像を前記基準オブジェクトの前記記憶された合成視野像と比較するように配置されたコンパレータと、を含む、リソグラフィシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2012−530929(P2012−530929A)
【公表日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−515404(P2012−515404)
【出願日】平成22年4月13日(2010.4.13)
【国際出願番号】PCT/EP2010/054785
【国際公開番号】WO2010/149403
【国際公開日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【出願人】(504151804)エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ. (1,856)
【出願人】(503195263)エーエスエムエル ホールディング エヌ.ブイ. (232)
【Fターム(参考)】