説明

オンライン決定システムに基づく冶金プロセス用ソフトセンサー

【課題】スラグコーテングの厚みおよび高温冶金炉の耐火物に起こる浸食の深さを決めるためのシステムと方法
【解決手段】システムは、スラグの化学組成、バスの温度、シェルの温度、熱損失、耐火物の性質、ジャケットのインレット水の温度、ジャケットのアウトレット水の温度およびジャケット中の水塊流速のような或る特定炉とスラグに関連するパラメータを感知して記録し、温度プロフィールを規定し、スラグの固相線を決めため、これらを処理する。 温度プロフィールとスラグの固相線はスラグコーテングの厚みと耐火物に起こった浸食の深さを査定するため更に使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は冶金の分野に属するものと関連している。本発明は冶金における精錬/転換プロセスと特に関連している。本発明はソフトセンサーを使用した精錬/転換プロセス中の特定パラメータをオンラインで査定するシステム想定する。
【背景技術】
【0002】
生産冶金の分野に属する精錬/転換はその鉱石から金属を取得するプロセスである。鉱石の殆どは(複数の)化合物の混合物である。従って、この生産(抽出)技法は通常空気あるいは純酸素である酸素源との化学反応を規定することに依存する。それ故に、精錬には、これらの酸化元素と結合して、金属を遊離させる適当なオキシダントを使用するプロセスが含まれる。
【0003】
1つの炉の中で、純度が低く、品位の異なる素材を使って、生産性が高く且つ安定した生産を行うことに対して益々高まるニーズは、強靱でよく管理された乾式高温冶金炉運転によって殆ど満たされる。このようなハイレートな炉の主要な特徴には、強度および耐熱強靱性が高い壁を使った冷却システムとスラグによる安定した被覆が含まれる。これは、腐食性液体スラグが側壁耐火物と直接接触し、当該耐火物に浸透して、それを浸食するのを阻止する。 スラグコーテングの形成と管理は、コーテングを貫通して起こる熱流の量と方向、スラグの化学成分、溶融温度および耐火物の性質に依存する。スラグのコーテング量が少ないとライニングの寿命が短くなるか、ライニングが破損される恐れが生じ、これによって、生産に損失がもたらされる。スラグのコーテングが多すぎると、磁鉄鉱を使った操業が困難に導かれ、効率的な精錬/転換が失われる可能性が高まる。
【0004】
固化されたスラグの厚みを前もって知る費用効果の高い、共通な方法は、数学的モデルを使ったものである。今日、熱流と流体流の現象を含む数学的モデルが数多く存在しているが、炉壁における熱の移動の本質を捕らえるには、熱伝導モデルが十分であることが観察されている。プラント データで補うことによって、凍結されたインタフェースの場所について適度に予測することが可能である。例えば C SCHMITZは1996年に主要なアルミ産業に、炉を設計する方法を提案した。彼はここで、主要なアルミ精錬業者に炉のデザインに、より複雑な対流方程式の適用を避けることができるガイドラインを提供した。
【0005】
特許文献1は冶金トレード溶鉱炉を対象とするライニング摩耗解析用オンラインモニターシステムを開発するアイデアを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】CN101812559A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしこの特許には、被覆するスラグの厚みを予測する方法は述べられていない。
【0008】
それ故に、スラグコーテングの最適な厚みおよび高温パイロ冶金炉用耐火物の浸食プロフィールを予測、モニターおよび制御する自動化されたシステムを開発する必要があると感じられた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の目的は、炉中で、スラグコーテングの安定した厚みを達成することである。発明のもう1つの目的は、炉の浸食プロフィールを査定するシステムを提供することである。発明の更なるもう1つの目的は、炉の性能を改善することである。
【0010】
本発明はスラグコーテングの厚みと高温冶金炉の耐火物に起こる浸食の深さを定めるシステムを想定する。但し、当該システムには、少なくとも数個の炉、スラグの化学組成、バス温度、シェル温度、および耐火物の性質を検知して記録するよう調整された第1感知手段;ジャケットへのインレット水の温度、ジャケットへのトレット水の温度およびジャケット中のウォーター質量流量からなるグループから選んだスラグ関連パラメータを検知するよう調整された第2感知手段; 第1感知手段および第2感知手段に連結され、炉の酸素ポテンシャルと熱損を査定することによって温度プロフィールを規定するよう調整され、スラグの固相を査定するよう更に調整されたプロセス手段;並びにスラグコーテングの厚みと耐火物の浸食を感知したパラメータ、温度プロフィールおよびスラグの固相に基づき査定するよう調整された査定手段が含まれるものとする。
【0011】
第2感知手段は大抵分散制御システム(DCS)である。
【0012】
システムには、ユーザーインターフェースと査定手段が求めたスラグコーテングの厚みおよび耐火物の浸食の深さを表示するのに適したグラフィック表示手段が更に含まれる。
【0013】
プロセス手段は、温度プロフィールを査定するため予め定めたサーマルモデルおよびスラグの固相を査定するため予め定めた熱力学モデルをそれぞれ展開するのに適している。
【0014】
典型的なシステムはスラグコーテングの厚みと耐火物の浸食の深さを査定するため、オンライン運転およびオフライン運転の両方を実施するのに適している。
【0015】
本特許はスラグコーテングの厚みと高温冶金炉の耐火物に起こる浸食の深さを査定する方法であり、ジャケットインレット水の温度、ジャケットアウトレット水の温度および水塊流速(water mass flow rate)、シェル温度、バス温度、スラグの化学組成および耐火物の性質からなるグループの中から選んだパラメータの少なくとも幾つかを感知するステップと、炉の酸素ポテンシャルおよび熱損を査定することによって温度プロフィールを規定し、スラグとスラグの固相線を規定するため検知したパラメータを処理するステップと、検知したパラメータ、温度プロフィールおよびスラグの固相に基づきスラグコーテングの厚みを査定するステップと、を含みことを想定している。
【0016】
方法には大抵査定手段によって決められたスラグコーテングの厚みと耐火物に起こった浸食の深さを表示するステップが更に含まれる。
【0017】
炉の温度プロフィールを規定し、スラグの固相を査定するため検知したパラメータを処理するステップには、温度プロフィールを規定するため、予め査定したサーマルモデルを展開するサブステップが更に含まれる。
【0018】
炉の温度プロフィールを規定し、スラグの固相を査定するため検知したパラメータを処理するステップには、スラグの固相を定めるため、予め査定した熱力学モデルを展開するサブステップが更に含まれる。
【0019】
ジャケット インレット水の温度、ジャケット アウトレット水の温度およびジャケット中の水塊流速(water mass flow rate)、シェル温度、バス温度、スラグの化学組成および耐火物の性質からなるグループの中から選んだパラメータの少なくとも幾つかを感知するステップには、ジャケット インレット水の温度、ジャケット アウトレット水の温度およびジャケット中の水の全水塊流速を分散制御システム(DCS)から取り出すサブステップが更に含まれる。
【0020】
方法には、スラグの厚みが適切ではない場合影響を受けたジャケットに近いバーナーおよびランスの機能を停止させるサブステップが含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本発明に基づき、スラグコーテングの厚みおよび高温冶金炉の耐火物に起こった浸食の深さを査定するためのシステムを例証している。
【図2】図2は、本発明に基づき数学的サーマル均衡モデルを実行したシステムのループを示す。
【図3】図3(a)は、本発明に基づくジャケットアセンブリーを含む転炉の平面図であり、図3(b)は、固化されたスラグを描写した、本発明に基づく転炉の平面図である。
【図4】図4は本発明に基づくシングルジャケット、バスおよび耐火物の2次元配置を例証している。
【図5】図5(a)は本発明に基づくスラグコーテングの厚みとシステムの温度プロフィールの関係を例証したものであり、図5(b)は本発明に基づく耐火物の浸食プロフィールとシステムの温度プロフィールの関係を例証したものである。
【図6】図6は本発明に基づくスラグの固相の変化に起因して起こるスラグコーテングの厚みの変化を例証したものである。
【図7】図7は本発明に基づく熱損の変化に起因して起こるスラグコーテングの厚みの変化を例証したものである。
【図8】図8は本発明に基づくサーモグラフ計量の値の変化に起因して起こるスラグコーテングの厚みの変化を例証したものである。
【図9】図9は本発明に基づく溶融温度の変化に起因して起こるスラグコーテングの厚みの変化を例証したものである。
【図10】図10は本発明に基づく転炉スラグの液相を例証したものである。
【図11】図11はスラグコーテングの厚みおよび本発明に基づく高温冶金炉の耐火物に起こった浸食の深さを査定するための方法を例証したものである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明に基づき、数学的熱平衡モデルが実行されるシステムが想定される。 システムは基本的に、スラグコーテングの厚みと耐火物に起こる浸食の深さを査定する。
【0023】
図1中に、スラグコーテングの厚みと耐火物に起こる浸食の深さを査定するためのシステム100を開示する。 スラグの化学組成、バスの温度、シェルの温度並びに耐火物の性質のような必要とされる炉とスラグに関するパラメータを検知して記録する第1検知手段105が提供される。 ジャケットインレット水の温度、ジャケットアウトレット水の温度およびジャケット中の水塊質量流量からなるグループの中から選んだパラメータを検知する第2検知手段110が提供される。
【0024】
上に述べたパラメータを感知するだけでなく、検知されたパラメータは、酸素ポテンシャルを査定することによって、温度プロフィールを規定し、予め規定したサーマルモデルを展開することによって、炉の熱損失を規定する処理手段115に送られ、予め査定した熱力学モデルを展開することによって、スラグのスラグ固相線を査定する。
【0025】
温度プロフィールが規定され、スラグの固相線が査定された後、査定手段120は感知されたパラメータおよびスラグの固相線に基づいてスラグコーテングの厚みと耐火物に起こった浸食を査定する。
【0026】
システムは、スラグコーテングの厚みと耐火物に起こった浸食の深さを査定するため、高温炉のため、スラグコーテングに安定した厚みを達成するスラグの化学的性質(スラグの組成)、バスの温度、熱損失および耐火物の性質を含めて、冶金中の精錬と転換に付随する異なったパラメータを考慮する。 システムは、ジャケットインレット水およびジャケットアウトレット水のオンライン温度並びに冷却水質量流速データ(インレットとアウトレット)に基づいて、スラグコーテングの平衡厚あるいはスラグコーテングの厚みと耐火物に起った浸食の深さを予測/査定する。 システムは更に、産業オートメーション基礎構造(分散制御システム DCSあるいはプログラム可能なロジックコントローラー PLC)と連結されたオンラインカップリングのために使用することも出来る。
【0027】
(壁の深さ(x)と炉の高さ(y))は定常状態にあると思われるので、スラグコーテングの厚みと耐火物に発生した浸食の深さを査定するため、本発明のもう1つの具体化の要件に基づき、処理手段には2次元デカルトシステムが使用される。 銅のブロックは、この方向の熱流を吸収するに十分な熱容量を持っていると思われるので、炉の幅(円筒座標中のzまたはθ)は考慮されない。 さらに、熱流は主に冷却要素(すなわちジャケット)に向かい、屋根や炉床に向かう熱流は非常に小さいので無視され、マット反射炉に対する熱の巨視的バランスの殆どの場合、熱の約2%が側壁、屋根、底部および炉床を経由してそれぞれ失われる。
【0028】
同じく2次元で解かれるエンタルピーのための輸送支配方程式中に2次元デカルトシステムが使われる。
【0029】
支配方程式は有限ボリュームデカルト座標の中に差別化される。 差別化された線型方程式の組を解くため、トーマス アルゴリズムとも呼ばれている3対角行列アルゴリズムが使われる。
【0030】
図2には、メッシュ表示中の10mmのセルサイズにおいて統一された520 x130セルと一緒に使われるデカルト座標の模範例が開示されている。収束の要件が以下の基準によって満たされる:
(a) 残余の総量は最初の繰り返しに対して減少し続けるべきである;
(b) インプット熱流束は出口熱流束と等しいので、アンバランス<0.1%;更に
(c) 幾つかの危険個所におけるスポット温度の値は、変化していない状態に保たれていたこと、即ち、以前の繰り返し後に起こった値の変化%が0.001%未満であることを確認するため、モニターされる。
【0031】
本発明の更なるもう一つの具体化要件に従って、数値コードdeterinationをMatlabTM PDEソルバーを使ったソリューションと比較して、精度と正確さおよび遵守を確認した。
【0032】
転炉多成分 スラグ システムに対する固相線(solidus)を査定するため、本発明の更なる具体化要件に従って、熱力学モデルを展開させた。
【0033】
熱力学モデルは、多成分系のすべての相のギブスエネルギーに対する(温度、組成および圧力の函数である)一連のモデル方程式から成り立っている。これらの方程式から、すべての熱力学的性質と単純システムの状態図を再現でき、多成分系のこれらを予測することができる。 これはモデルパラメータをソリューションデータベース中に保存することによって、技術的に実現され、その後、多成分と多相異質均衡を計算するため、モデル方程式を含む一般ギブス自由エネルギー最小化ツールによって純粋成分のデータベースと一緒に使われる。 熱力学モデルの助けを借りて、組成と温度の幾つかの領域を対象として、スラブ−液相線およびスラグ−固相線が予測できた。
【0034】
本発明の要件を満たすスラグシステムは、FeOx-CaO-Cu2O-SiO2系に属し、転炉のスラグシステムは以下の成分から成り立っている: FeO、Fe2O3,、Fe3O4、Cu2O、Cu2S、CaOおよびSiO2。スラグ システムは実質的にカルシウムフェライト系でなければならない。
【0035】
図3(a)には、数字の30によって識別される複数のジャケットを含むジャケットアセンブリーの付いた炉の平面が開示されている。炉に発生した熱は、スラグのレベルに位置する銅製の水冷式ジャケットによって除去される。 ジャケットのインレット水は数字33を、またアウトレット水は数字35をそれぞれ付けて開示される。ブリスターアウトレットは数字37を付けて開示され、スラグアウトレットは数字39を付けて開示される。マットインレットとガスアウトレットはそれぞれ43と45の数字を付けて開示される。図3(b)は、固化されたスラグが識別引用数字36をつけて開示されていることを示している。
【0036】
図4は、単一水冷ジャケット (の側面) の形状も開示している。水冷式パイプジャケットのウォーターインレットとウォーターアウトレットは銅製のブロックを通して突き出ている。引用識別番号56は耐火物、58は炉床、52はブリスター、54はスラグを示す。銅製ブロックの熱伝導率を高めると、スラグレベルに発生した熱の効率的な除去が保証される。従って、ジャケット(銅製ブロック)近傍のスラグの温度は低下する傾向がある。スラグの温度がその固相線上に到達すると、スラグは固化(凍結)されるようになる。スラグの固相線が判明すると、これはその後、スラグコーテングの厚みを決めるのに利用される。付与された境界条件と幾何学的配置に対する方程式の解の助けを借りて、各ノード上の温度の値を決め、これによって、異なった温度における等温線を引くこともできた。
【0037】
図5(a)および図5(b)の中には、スラグコーテングの厚み65を考慮して得られた、システムの温度プロフィールの模範例が開示されている。ここには、溶融スラグあるいは液体スラグは67の識別番号を付け、ブリスターは63の識別番号を付けてそれぞれ開示されている。
【0038】
本発明の更なるもう1つの具体化の要件に従って、固化されたスラグの厚みを以下の通り決める。 スラグの固溶温度 (例えば、1075°C) を先ず、図5(a)に概略的に開示されているような状態図から求める。スラグコーテングの厚みを耐火物から固相線までの距離として計量する。図5(a)には耐火物の外面と固相線(1075℃)の間の斜線部分がスラグの固化された層として開示されている。
【0039】
固化されたスラグの層はブリスター側に向かって次第に縮む。従って、ガスとスラグのインターフェースにおけるスラグコーテングの厚みは、スラグコーテングの最大厚(SCTmax)と呼ばれ、スラグとブリスターのインターフェースにおけるスラグコーテングの厚みは、スラグコーテングの最小厚み(SCTmin)と呼ばれている。 液体スラグが耐火物と接触するようになるのを避けるため、(SCTmin)がポジティブであることを保証しなければならない。 スラグの化学組成、バスの温度および熱損失のようなプロセス条件が、(SCTmin)がポジティブであることが保証される安全な運転条件にもたらされなくてはならない。 SCTminの値がネガティブであることは、図5(b)中の参照番号69によって開示されているように、スラグの固相が耐火物の内側に存在し、スラグの固相の深さと等しい距離の耐火物が浸食されていることを示す。
【0040】
スラグの化学組成、バスの温度、熱損失およびサーモグラフィーによる計量値のスラグコーテングの厚みに及ぼす効果がモデルの助けを借りて分析されている。これらのパラメータの値はプラントの運転範囲の中で取得され、これによって、スラグコーテングに及ぼすプロセス可変性の効果が確認されると説明されている。
【0041】
図6には、スラグの固化温度(℃)(y軸)に及ぼすスラグコーテングの厚み(mm)の効果を示すグラフが開示されている。 スラグの固化温度が上昇し、所定の熱損失その他の条件により、それが1090℃を超えると、厚みの勾配が険しくなるので、スラグコーテングの厚みは増加する。この時点で、スラグとブリスターのインターフェース(SCTmin)におけるスラグコーテングが消失し、スラグの固化温度が1070℃未満のとき、炉の他の条件が変化しなくとも、液体スラグに耐火物との接触が引き起こされる。ガス/スラグインターフェースにおける厚み(SCTmax)およびスラグ/ブリスターインターフェースにおける厚み(SCTmin)が、高ソリダスにおいて、ほぼ同じ値に達することも観察されている。これは、スラグの温度とブリスターの温度がジャケットから離れて、同じ値に達することによって起こる。
【0042】
本発明のもう1つの具体化の条件に従って、熱損失Qは、ジャケットを通過するジャケット水の質量流量およびジェケットのインレット水とジャケットのアウトレット水、即ち温度差から以下の方程式中に示すように計算される
【0043】
[数1]
Q = m Cp (Tout - Tin)
但し、m=質量流量またはジャケット水;Cp=比熱.
他のファーネスパラメーターを不変に保った状態で、熱損失が減少すると、スラグコーテングの厚みが増加する。これは、図7中のグラフによっても表される。ここでは、(mmを単位とする)スラグコーテングの厚みはx軸から読み取られ、(Kcalを単位とする)熱損失はy軸上から読み取られる。
【0044】
スラグとブリスタ−のインターフェースにおけるスラグの厚みの増加は、ジャケット毎の熱損失が、或るパラメーターに対して21000 Kcal/hr未満の時急速に起こる。スラグコーテングの厚みがゼロの状態で、熱損失が27000 Kcal/hr.を超える値に増加すると、液相スラグと耐火物の接触が確立される。
【0045】
ブリスターレベルのファーネスシェルに対して実施したサーモグラフィイーによる計測結果(℃)もモデルの境界条件と見なした。しばしば、サーモグラフィーによる計測結果に基づいて耐火物の状態を推測することは非常に難しい。よって、サーモグラフィーによる計測結果(℃)(y軸)とスラグコーテングの厚み(mm)(x軸)の関係を図8に示した。
【0046】
図8に示すように、スラグの十分な厚みは190℃未満の温度に維持されるので、スラグレベルの耐火物に対して190℃以下の温度で実施するサーモグラフィーによる計測は安全である。サーモグラフィーによる計測値が高いことは、ブリスターレベルで耐火物から起こる熱損失が大きいことを示すので、サーモグラフィーによる計測結果が190℃未満である時、スラグの厚みは急速に増加する。
【0047】
C炉の溶融温度に変動も毎日観察された。従って、それが変動する範囲中で、スラグの厚みと溶融温度を関連づけることは有用である。
【0048】
図9に、所定の条件で、スラグに厚みを達成しながら、炉が1210℃以下の溶融温度で安全運転されるスラグコーテングの厚み(mm)(x軸)と溶融温度(℃)(y軸)の関係が開示した。溶融度が1210℃未満に下がると、スラグの厚みは急激に増加する。溶融温度を出来るだけ低く保って、スラグの厚みを十分確保しながら、磁鉄鉱の析出や運転上のその他の困難を回避するため、溶融温度がスラグの固化温度より高くなっていることを確認することも大変重要である。 従って、図10に開示したスラグの固化温度(℃)(x軸)とFe/CaO(重量%)(y軸)の関係を示すグラフに示されているように、スラグの化学組成を炉内に維持する範囲を対象として、スラグの液相を計算した。
【0049】
最適溶融温度を、図9に示す固相線より上の温度にする方法で維持すると同時に、スラグとブリスターのインターフェースにあるスラグコーテングに十分な厚みを確保すべきである。最適な溶融温度を維持することが不可能な場合、(Fe/CaOを例として含む)スラグの化学成分の組成を変えて、溶融温度が液相線より上の温度になるようにしなければならない。
【0050】
処理手段は、オンライン実装された現発明の更なる具体化条件に従って、スラグコーテングの厚みを連続して査定するためのソフトセンサーとして作用し、プラント運転に対して炉の健康に関するガイダンスを絶えず提供し、更にプラント稼働の最適条件についてアドバイスする。 これは、オペレーターの決定能力を高め、プロセスに変更機会の削減と改善された運転をもたらす。
【0051】
図11に、スラグコーテングの厚みと高温冶金炉の耐火物に起こる浸食の深さを査定するためのプロセスのフローチャートを開示する。その方法には、ジャケットインレット水の温度、ジャケットアウトレット水の温度およびジャケット中の水塊流速(water mass flow rate)、シェル温度、バス温度、スラグの化学組成および耐火物の性質からなるグループの中から選んだパラメータの少なくとも幾つかを検知するステップ、405と、感知したパラメータを処理して、炉の温度プロフィールを規定し、スラグの固相線を査定するステップ、410と、感知したパラメータ、温度プロフィールおよびスラグ固相に基づきスラグコーテングの厚みを査定するステップ、415とが含まれる。
【0052】
方法には、スラグの厚みが適切ではない場合影響を受けたジャケットに近いバーナーおよびランスの機能を停止させるサブステップ、420が含まれる。
【0053】
方法には、査定手段によって決められたスラグコーテングの厚みと耐火物に起こった浸食の深さを表示するステップが更に含まれる。
【0054】
炉の温度プロフィールを規定し、スラグの固相を査定するため検知したパラメータを処理するステップには、温度プロフィールを規定するため予め定めたサーマルモデルを展開するサブステップが更に含まれる。
【0055】
炉の温度プロフィールを規定し、スラグの固相を査定するため検知したパラメータを処理するステップには、スラグの固相を定めるため予め定めた熱力学モデルを展開するサブステップが更に含まれる。
【0056】
ジャケット インレット水の温度、ジャケット アウトレット水の温度およびジャケット中の水塊流速(water mass flow rate)、シェル温度、バス温度、スラグの化学組成および耐火物の性質からなるグループの中から選んだパラメータの少なくとも幾つかを感知するステップには、ジャケット インレット水の温度、ジャケット アウトレット水の温度およびジャケット中の水のトータル マスフロー レートを分散制御システム(DCS)から取り出すサブステップが含まれる。
【0057】
ジャケットのインレット水並びにアウトレット水の温度および水のトータルマスフローレートはオンラインで計測し、分散制御装置DCSから直接取り出すことができる。 バスの温度、スラグの化学組成およびサーモグラフィーの読みは手作業で計量される。 上記のデータに基づき、プロセスの酸素ポテンシャルおよびジャケットから起こる熱損失が計算される。 スラグコーテングの厚みは、システムの温度プロフィールをサーマルモデルで計算し、スラグの固相線を熱力学モデルで査定した後に決定される。
【0058】
本発明には、以下の技術的利点が含まれる。
【0059】
炉の中にスラグコーテングの厚みを安定して確保する。
【0060】
炉の侵食プロフィールを決定するためのシステムを提供する。
【0061】
炉の性能を改善する。
【0062】
好適な実施形態のコンポーネントとその一部をかなり強調しながら、多くの実施形態を創生し、好適な実施形態に、発明の原則から外れることなく、多くの変更を施すことができることが高く評価される。 好適な実施形態中のこれらおよびその他の変更並びに発明の他の実施形態は、熟練した技能を有する人々にとって本書の開示内容から明白なものである。従って、前述の記述事項は発明の単なる例証で、限定するものでないとはっきり理解しなければならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スラグコーテングの厚みおよび高温冶金路の耐火物に起こる浸食の深さを決めるためのシステムであって、
スラグの化学組成、バスの温度、シェルの温度および耐火物の性質からなるグループの中から選んだ炉およびスラグに関連する少なくとも幾つかを感知して記録するのに適した第1感知手段と、
ジャケットインレット水の温度、ジャケットアウトレット水の温度およびジャケット中の水塊質量流量からなるグループの中から選んだパラメータを検知するのに適した第2検知手段と、
第1感知手段および第2感知手段と連結された処理手段であって、酸素ポテンシャルおよび炉の熱損失を決めることによって、温度プロフィールを規定し、更にスラグの固相線を決めるのに適したものと、
感知されたパラメータ、温度プロフィールおよびスラグの固相に基づきスラグコーテングの厚みと耐火物の浸食を決めるのに適した査定手段と、を含みことを条件とするシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前述の感知手段が分散制御システム(DCS)であることを特徴とするシステム。
【請求項3】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前述の査定手段が決めたスラグコーテングの厚みと耐火物に起こった浸食の深さを表示するのに適したユーザーインターフェースとグラフィック表示手段を更に含むことを特徴とするシステム。
【請求項4】
請求項1に記載のシステムにおいて、
処理手段が前述の炉の温度プロフィールを決めるため予め定めたサーマルモデルを展開するのに適していることを特徴とするシステム。
【請求項5】
請求項1に記載のシステムにおいて、
処理手段が前述の炉のスラグの固相を決めるための熱力学モデルの展開に適していることを特徴とするシステム。
【請求項6】
請求項1に記載のシステムにおいて、
スラグコーテングの厚みと耐火物に起こった浸食の深さを査定するため、オンライン運転とオフライン運転の両方に適していることを特徴とするシステム。
【請求項7】
スラグコーテングの厚みおよび高温冶金炉の耐火物に起こった浸食の深さを決めるための方法であって、
ジャケットインレット水の温度、ジャケットアウトレット水の温度および水塊流速(water mass flow rate)、シェル温度、バス温度、スラグの化学組成および耐火物の性質からなるグループの中から選んだパラメータの少なくとも幾つかを感知するステップと、
炉の酸素ポテンシャルおよび熱損を査定することによって温度プロフィールを規定し、スラグとスラグの固相線を規定するため検知したパラメータを処理するステップと、
検知したパラメータ、温度プロフィールおよびスラグ固相に基づきスラグコーテングの厚みを査定するステップと、を含むことを条件とする方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法において、
前述の査定手段によって決められたスラグコーテングの厚みと耐火物に起こった浸食の深さを表示するステップを更に含むことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項7に記載の方法において、
炉の温度プロフィールを規定し、スラグの固相を査定するため検知したパラメータを処理するステップに、温度プロフィールを規定するため予め定めたサーマルモデルを展開するサブステップを更に含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項7に記載の方法において、
炉の温度プロフィールを規定し、スラグの固相を査定するため検知したパラメータを処理するステップに、スラグの固相を定めるため予め定めた熱力学モデルを展開するサブステップを更に含むことを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項7に記載の方法において、
ジャケット インレット水の温度、ジャケット アウトレット水の温度およびジャケット中の水塊流速(water mass flow rate)、シェルの温度、バスの温度、スラグの化学組成および耐火物の性質からなるグループの中から選んだパラメータの少なくとも幾つかを感知するステップに、ジャケット インレット水の温度、ジャケット アウトレット水の温度およびジャケット中の水のトータル マスフロー レートを分散制御システム(DCS)から取り出すサブステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項7に記載の方法において、
スラグの厚みが適切ではない場合、影響を受けたジャケットに近いバーナーおよびランスの機能を停止させるサブステップを更に含むことを特徴とする方法。

【図1】
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【図11】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2013−517457(P2013−517457A)
【公表日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−549469(P2012−549469)
【出願日】平成23年1月18日(2011.1.18)
【国際出願番号】PCT/IN2011/000036
【国際公開番号】WO2011/089621
【国際公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(510002958)アディティア ビルラ サイエンス アンド テクノロジー カンパニー リミテッド (6)
【出願人】(512189439)ヒンダルコ インダストリーズ リミテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】HINDALCO INDUSTRIES LIMITED
【Fターム(参考)】