説明

カムフォロアおよびローラフォロア

【課題】ミスアライメント等によるモーメント荷重や誘起スラスト荷重を適切に支持可能で、かつ、アキシアル荷重が負荷される環境でも使用可能なカムフォロアを提供する。
【解決手段】カムフォロア21は、外径面がトラックと当接し、内径面に軌道面22aを有する外輪22と、外径面に軌道面23aを有する内輪部材としてのスタッド23と、外輪22およびスタッド23の軌道面22a,23aに沿って配置される複数のころ24と、隣接するころ24の間隔を保持する保持器25とを備える。ころ24の転動面24aは、凸形状の曲面であり、外輪22およびスタッド23の軌道面22a,23aは、それぞれ転動面24aに沿う凹形状の曲面である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ガイドローラ等として使用され、トラックと当接するカムフォロアやローラフォロアに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のカムフォロア11は、図4に示すように、内径面に軌道面を有する外輪12と、外径面に軌道面を有するスタッド13と、外輪12およびスタッド13の間に配置される複数のころ14と、隣接するころ14の間隔を保持する保持器15とを備える。
【0003】
このカムフォロア11には、カムフォロアの取り付け誤差や、トラックと当接する外輪12の外径面の摩耗によるミスアライメントによって、モーメント荷重や誘起スラスト荷重が負荷される。そこで、従来では例えば、外輪12の軌道面またはころ14の転動面のいずれかにクラウニング加工を施していた。
【0004】
しかし、外輪12の軌道面にのみクラウニング加工を施した場合、ミスアライメントが大きくなると、ころ14の角部が外輪12の軌道面に干渉して接触部分にエッジ応力を生じ、内部の剥離が起こりやすくなる。一方、ころ14の転動面にのみクラウニング加工を施した場合、軌道面との接触面積が減少して接触部分の接触面圧が高くなり、軸受回転中の挙動が不安定になるという問題がある。
【0005】
そこで、この問題を解決するために、特開平11−101229号公報(特許文献1)に、ころの転動面を凸曲面とし、外輪の軌道面をころの転動面に沿う凹曲面とした例が開示されている。同公報には、対応する凹凸曲面が調心性を発揮するので、ミスアライメント等によるモーメント荷重や誘起スラスト荷重を吸収することができる旨が記載されている。
【特許文献1】特開平11−101229号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
カムフォロア11は、取り付け誤差が生じると回転時にアキシアル荷重を受ける。しかし、同公報に記載されたころ軸受は、内輪の軌道面が平坦面であるので、アキシアル荷重が負荷される環境で使用することができない。また、転動面が凸曲面であるころと軌道面が平坦面である内輪との間では、接触部分での接触面圧が高くなるという問題もある。さらに、同様の問題が、ローラフォロアにおいても見られる。
【0007】
そこで、この発明の目的は、ミスアライメント等によるモーメント荷重や誘起スラスト荷重を適切に支持可能で、かつ、アキシアル荷重が負荷される環境でも使用可能なカムフォロアおよびローラフォロアを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係るカムフォロアは、外径面がトラックに当接し、内径面に軌道面を有する外輪と、外径面に軌道面を有する内輪部材と、外輪および内輪部材の軌道面に沿って配置される複数のころとを備え、ころの転動面は凸形状の曲面であって、外輪および内輪部材の軌道面は、ころの転動面に沿う凹形状の曲面である。また、好ましくは、ころは複列に配置されている。
【0009】
上記構成とすることにより、対応する凹凸曲面が調心性を発揮するので、ミスアライメント等によるモーメント荷重や誘起スラスト荷重を吸収することが可能となる。また、外輪軌道面だけでなく、内輪部材の軌道面をも凹形状の曲面とすることにより、アキシアル荷重が負荷される環境でも使用可能となる。
【0010】
この発明に係るローラフォロアは、外径面がトラックに当接し、内径面に軌道面を有する外輪と、外径面に軌道面を有する内輪部材と、外輪および内輪部材の軌道面に沿って配置される複数のころとを備え、ころの転動面は凸形状の曲面であって、外輪および内輪部材の軌道面は、ころの転動面に沿う凹形状の曲面である。また、好ましくは、ころは複列に配置されている。
【0011】
この発明は、カムフォロアだけでなく、外輪外径面に当接する部材の回転に伴って外輪が回転するローラフォロアに適用しても同様の効果が期待できる。
【発明の効果】
【0012】
この発明は、ころの転動面を凸形状の曲面とし、内外輪の軌道面をころの転動面に沿う凹形状の曲面とすることにより、ミスアライメント等によるモーメント荷重や誘起スラスト荷重を吸収できると共に、アキシアル荷重が負荷される環境でも使用可能なカムフォロアおよびローラフォロアを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1を参照して、この発明の一実施形態に係るカムフォロア21を説明する。
【0014】
カムフォロア21は、内径面に軌道面22aを有する外輪22と、外径面に軌道面23aを有する内輪部材としてのスタッド23と、外輪22およびスタッド23の軌道面22a,23aに沿って配置される複数のころ24と、隣接するころ24の間隔を保持する保持器25とを備える。
【0015】
このカムフォロア21は、スタッド23がハウジング(図示せず)に固定され、外輪21が、外輪22の外径面に当接するトラック(図示せず)の相対移動に伴って回転する。
【0016】
上記構成のカムフォロア21において、ころ24の転動面24aは、凸形状の曲面であり、外輪22およびスタッド23の軌道面22a,23aは、それぞれ転動面24aに沿う凹形状の曲面である。
【0017】
上記構成のカムフォロア21は、対応する凹凸曲面が調心性を発揮するので、ミスアライメント等によるモーメント荷重や誘起スラスト荷重を吸収することが可能となる。また、外輪22の軌道面だけでなく、スタッド23の軌道面をも凹形状の曲面とすることにより、アキシアル荷重が負荷される環境でも使用可能となる。
【0018】
次に、図2を参照して、この発明の他の実施形態に係るカムフォロア31を説明する。
【0019】
カムフォロア31は、基本構成は図1に示したカムフォロア21と同様のカムフォロアであって、スタッド31の両端にころ34の端面と当接する鍔部33bを有する。
【0020】
このカムフォロア31は、図1に示したカムフォロア21と同様の効果を得ることができると共に、鍔部33bによってころ34の軸方向への移動を規制するので、大きなアキシアル荷重が負荷される環境でも使用可能である。
【0021】
なお、図1および図2に示したようなカムフォロア21,31においては、ころ24,34を単列に配置した例を示したが、これに限ることなく、複列に配置してもよい。
【0022】
例えば、カムフォロア41は、内径面に軌道面42aを有する外輪42と、外径面に軌道面43aを有する内輪部材としてのスタッド43と、外輪42およびスタッド43の軌道面42a,43aに沿って複列に配置される複数のころ44と、隣接するころ44の間隔を保持する保持器45とを備えるカムフォロアである。
【0023】
このカムフォロア41は、ころ44の転動面44aが凸形状の球面であり、外輪42の軌道面42aは、ころ44の転動面44aに沿う凹形状の球面である。また、スタッド43の軌道面43aは、複列のころ44それぞれの転動面44aに沿う凹形状の球面を組み合わせた形状となっている。
【0024】
また、図1〜図3に示した実施形態では、スタッドがハウジング(図示せず)に固定され、外輪が、外径面に当接するトラック(図示せず)の相対移動に伴って回転するカムフォロアの例を示したが、これに限ることなく、外輪の外径面がトラックと当接するローラフォロアにも適用可能である。
【0025】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0026】
この発明は、カムフォロアおよびローラフォロアに有利に利用される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】この発明の一実施形態に係るカムフォロアを示す図である。
【図2】この発明の他の実施形態に係るカムフォロアであって、スタッドの両端に鍔部を設けた例を示す図である。
【図3】この発明の他の実施形態に係るカムフォロアであって、球面ころを複列に配置した例を示す図である。
【図4】従来のカムフォロアを示す図である。
【符号の説明】
【0028】
11,21,31,41 カムフォロア、12,22,32,42 外輪、22a,32a,42a,23a,33a,43a 軌道面、13,23,33,43 スタッド、33b 鍔部、14,24,34 ころ、44 球面ころ、24a,34a,44a 転動面、15,25,35,45 保持器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外径面がトラックに当接し、内径面に軌道面を有する外輪と、
外径面に軌道面を有する内輪部材と、
前記外輪および前記内輪部材の軌道面に沿って配置される複数のころとを備え、
前記ころの転動面は、凸形状の曲面であって、
前記外輪および前記内輪部材の軌道面は、前記ころの転動面に沿う凹形状の曲面である、カムフォロア。
【請求項2】
前記ころは、複列に配置されている、請求項1に記載のカムフォロア。
【請求項3】
外径面がトラックに当接し、内径面に軌道面を有する外輪と、
外径面に軌道面を有する内輪部材と、
前記外輪および前記内輪部材の軌道面に沿って配置される複数のころとを備え、
前記ころの転動面は、凸形状の曲面であって、
前記外輪および前記内輪部材の軌道面は、前記ころの転動面に沿う凹形状の曲面である、ローラフォロア。
【請求項4】
前記ころは、複列に配置されている、請求項3に記載のローラフォロア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−120591(P2007−120591A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−312451(P2005−312451)
【出願日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】