説明

カメラおよびカメラの制御方法

【課題】特別な計測装置などを用いることなく、ユーザがシャッタ精度の保全を行うことを可能とする。
【解決手段】カメラ10は、撮影レンズ180の絞り値、シャッタ開放時間、および撮像素子の設定感度を含む、複数の露出パラメータのうち、シャッタ開放時間を含む少なくとも二つの露出パラメータを、予め定められた露出プログラムに従い、測光部で検出された被写体の輝度に応じて決定する。調整モードにおいてカメラ10は、所定の基準シャッタ開放時間を含む露出パラメータで被写体を撮影して得られた画像から露光量誤差を求める。この露光量誤差が誤差許容値を超す場合に、撮影モードにおいて測光部で検出された被写体の輝度に応じて決定される露出パラメータ中に含まれるシャッタ開放時間が、制御目標EV値の大小によらず基準シャッタ開放時間よりも常に長くなるように露出プログラムを修正する処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子式のスチルカメラ等のカメラにおいて、製品の使い始めから寿命を過ぎても安定した露光量を得ることを可能とする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルスチルカメラの多くはフォーカルプレンシャッタ、レンズシャッタ等の、遮光部材が機械的に動作して撮像素子の受光面に入射する被写体光の光量(露光量)を調節するシャッタを有する。これらのシャッタは、遮光幕、この遮光幕を高速で走行(往復動)させるための機構部品、スプリング、電磁石等を有する。例えば、フォーカルプレンシャッタでは、先幕、後幕と称される二組の遮光部材が所定の時間間隔をおいて走行する(先幕走行により開成動作を行い、後幕走行により閉成動作を行う)ことにより、所望の露光量を得ることができる。二組の遮光部材が相次いで走行する際の時間間隔は、多くの場合、マイクロコンピュータ等によって電子的に制御される。
【0003】
以下では、上述した遮光部材を機械的に作動させて撮像素子の露光量を調節するシャッタをメカニカルシャッタと称する。メカニカルシャッタの多くはスプリングを蓄勢して得た力で遮光部材を駆動するため、スプリングの形状、弾性係数のばらつきや、遮光部材が走行する際にこの遮光部材に作用する摩擦力のばらつき等によって露光精度に誤差を生じることがある。そのような露光精度の誤差を最小化するため、カメラ組立時にシャッタ試験器等を用いて調整が行われる。
【0004】
ところで、デジタルスチルカメラは連続して撮影する機能(連写機能)を有するものが多い。また、撮影して得られた画像データを記録するためのメモリカードの大容量化が進み、アクセス速度が向上していることも相まって、銀塩カメラに比して撮影駒数は増加する傾向にある。
【0005】
つまり、銀塩カメラではフイルムの装填や巻き戻しと云った作業を伴うため、例えば500駒の写真撮影をすることは多くの時間と労力を要するところ、連続撮影(連写)機能を有するデジタルスチルカメラでは数分で完了することも可能である。また、デジタルスチルカメラではフイルム代や現像代等を必要としない。このような要因によって、デジタルスチルカメラの撮影駒数(使用頻度)は増加する傾向にある。
【0006】
このように撮影駒数が増加するのに伴い、比較的短い期間のうちに、設計上想定される寿命(シャッタ回数)に達してしまう。そのような場合、シャッタ機構中の摩擦係数の変化や摩耗等が原因で露光精度が変化する場合がある。このような精度変化を生じた場合、ユーザが自分で調整を行うことは困難である。理由は、シャッタ精度の調整には輝度箱や像面露光量を計測する器等が必要となるからである。
【0007】
特許文献1には、フォーカルプレンシャッタユニットにおいて先幕および後幕の走行を検出可能なセンサを設けたものが開示されている。このセンサにより、先幕および後幕の走行状態を測定し、測定の結果が正常であるかどうかを判断する。正常と判断されず、且つ、先幕の走行を開始してから後幕の走行を開始するまでのシャッタ秒時が予め設定されたシャッタ秒時よりも高速である場合に、シャッタ秒時をより低速なシャッタ秒時に変更して先幕と後幕の走行状態の測定を繰り返す。この技術を用いることにより、フォーカルプレンシャッタの精度が低下した場合にも、より正確にシャッタ精度を測定することが可能となる。
【特許文献1】特開2008−170473号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示される技術では、フォーカルプレンシャッタ内に先幕および後幕の走行を検出するセンサを設ける必要があるので、シャッタの構成が複雑になり、高価格化を招くおそれがある。
【0009】
本発明は上記の問題に鑑みなされたもので、シャッタの構成の複雑化を招くことなく、製品の寿命を過ぎても安定した露光精度を得ることを可能とする技術を提供することを第一の目的とする。
【0010】
本発明はまた、撮影現場で実際に稼働している複数のカメラから集められた露光量誤差情報をもとに、個々のカメラの使用状況に対応してより正確な露光量制御を可能とすることを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様は、撮像素子と、遮光部材を開成させてから閉成させるまでの時間間隔を調節することにより、前記撮像素子の受光面に入射する被写体光の光量を制御することが可能に構成されるシャッタとを備えるカメラであって、
被写体の輝度を検出する測光部と、
撮影レンズの絞り値、シャッタ開放時間、および前記撮像素子の設定感度を含む、複数の露出パラメータのうち、前記シャッタ開放時間を含む少なくとも二つの露出パラメータを、予め定められた露出プログラムに従い、前記測光部で検出された被写体の輝度に応じて決定する露出パラメータ決定部と、
時間的に略一定の輝度を有する静止物体を、第1のシャッタ開放時間で撮影して得られる第1の画像と、前記静止物体を第2のシャッタ開放時間で撮影して得られる第2の画像との比較に基づいて実露光量比を導出する実露光量比導出部と、
前記第1のシャッタ開放時間による理論上の露光量と前記第2のシャッタ開放時間による理論上の露光量との比に基づいて求められる理論上の露光量比と、前記実露光量比導出部で導出された前記実露光量比との比較結果に基づいて露光量誤差を求め、前記露光量誤差が誤差許容値を超す場合に前記露出プログラムを修正する処理を行う露出プログラム変更部とを有するカメラが提供される。
【0012】
本発明の第1の態様によれば、時間的に略一定の輝度を有する静止物体を、第1のシャッタ開放時間で撮影して第1の画像を得て、第2のシャッタ開放時間で撮影して第2の画像を得て、これら第1の画像、第2の画像の比較に基づいて実露光量比が導出される。そして、第1のシャッタ開放時間による理論上の露光量と第2のシャッタ開放時間による理論上の露光量との比に基づいて求められる理論上の露光量比と、上記実露光量比との比較結果に基づいて露光量誤差を求め、この露光量誤差が誤差許容値を超す場合に露出プログラムを修正する処理を行うことにより、カメラを使用していてシャッタ精度が変化してしまった場合でも輝度箱や特別な調整装置等を用いて調整をすることなく、好ましい撮影結果を得ることが可能となる。
【0013】
本発明の第2の態様においては、本発明の第1の態様に係るカメラにおいてさらに、
外部情報処理装置との通信を可能とする通信部と、
当該カメラの機種を特定する情報である機種特定情報と、前記露光量誤差に関する情報である露光量誤差情報とを前記外部情報処理装置に送出する処理を行う露光量誤差情報送出部と、
前記露光量誤差情報送出部で送出した当該カメラの前記機種情報及び露光量誤差情報に応じて前記外部情報処理装置から送出される露光量誤差改善情報を受信する処理を行う露光量誤差改善情報受信部と
をさらに有し、
前記露出プログラム変更部は、前記露光量誤差改善情報に基づいて前記露出プログラムを修正する処理を行うように構成されるカメラが提供される。
【0014】
本発明の第2の態様によれば、外部情報処理装置との通信を可能とする通信部と、当該カメラの機種を特定する情報である機種特定情報と、露光量誤差に関する情報である露光量誤差情報とを外部情報処理装置に送出する処理を行う露光量誤差情報送出部と、露光量誤差情報送出部で送出した当該カメラの機種情報及び露光量誤差情報に応じて外部情報処理装置から送出される露光量誤差改善情報を受信する処理を行う露光量誤差改善情報受信部とをカメラがさらに有していて、露出プログラム変更部は、露光量誤差改善情報に基づいて露出プログラムを修正する処理を行うように構成されることにより、カメラのシャッタ精度の変化に応じて常に最新の露光量誤差改善情報に基づいて露出プログラムを修正することが可能となる。
【0015】
本発明の第3の態様によれば、撮像素子と、遮光部材を開成させてから閉成させるまでの時間間隔を調節することにより、前記撮像素子の受光面に入射する被写体光の光量を制御することが可能に構成されるシャッタと、被写体の輝度を検出する測光部と、撮影レンズの絞り値、シャッタ開放時間、および前記撮像素子の設定感度を含む、複数の露出パラメータのうち、前記シャッタ開放時間を含む少なくとも二つの露出パラメータを、予め定められた露出プログラムに従い、前記測光部で検出された被写体の輝度に応じて決定する露出パラメータ決定部とを備えるカメラの制御方法であって、
時間的に略一定の輝度を有する静止物体を、第1のシャッタ開放時間で撮影して第1の画像を得ることと、
前記静止物体を、第2のシャッタ開放時間で撮影して第2の画像を得ることと、
前記第1の画像と前記第2の画像とから、前記第1のシャッタ開放時間で得られた露光量と前記第2のシャッタ開放時間で得られた露光量の比である実露光量比を導出することと、
前記第1のシャッタ開放時間によって得られる理論上の露光量と前記第2のシャッタ開放時間によって得られる理論上の露光量との比に基づいて理論上の露光量比を導出することと、
前記実露光量比と前記理論上の露光量比との比較結果に基づいて露光量誤差を求め、前記露光量誤差が誤差許容値を超す場合に前記露出プログラムを修正することと
を有する制御方法が提供される。
【0016】
本発明の第4の態様によれば、前記カメラが、外部情報処理装置との交信を可能とする通信部をさらに有していて、上記第3の態様による制御方法において、
当該カメラの機種を特定する情報である機種特定情報と、前記露光量誤差に関する情報である露光量誤差情報とを前記外部情報処理装置に送出することと、
当該カメラから送出された前記機種情報及び露光量誤差情報に応じて前記外部情報処理装置から送出される露光量誤差改善情報を受信することと
をさらに有し、
前記露出プログラムを修正することが、前記露光量誤差が誤差許容値を超す場合に、前記露光量誤差改善情報に基づいて前記露出プログラムを修正する制御方法が提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、輝度箱や特別な調整装置等を用いることなく、ユーザが簡単な操作をするだけで露光量誤差の影響が減じられた好ましい撮影結果を得ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
− 第1の実施の形態 −
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るカメラ10の概略的構成を示すブロック図である。本発明の第1の実施の形態において、カメラ10は、撮影レンズ180を取り外し可能なフォーカルプレンシャッタ式の一眼レフレックスデジタルスチルカメラであるものとして説明する。無論、他の形式のカメラ、例えば撮影レンズ固定式のカメラやレフレックスミラーを有していないカメラ、レンズシャッタ式のカメラ等にも本発明は適用可能である。
【0019】
カメラ10は、システムコントローラ100と、情報表示部102と、操作スイッチ104と、通信部108と、不揮発性メモリ110と、DRAM116と、画像信号処理部(DSP)120と、表示制御部122と、画像表示部124と、アナログ・フロントエンド130と、タイミング・ジェネレータ132とを有する。カメラ10はさらに、撮像素子134と、光学的ローパスフィルタ136と、シャッタ140と、先幕係止マグネット142と、後幕係止マグネット144と、シャッタチャージ機構146と、メインミラー150と、ミラー駆動・シャッタ係止機構152と、サブミラー154とを有する。カメラ10はまた、ペンタプリズム160と、接眼レンズ162と、測光部164と、焦点検出装置170とを有する。カメラ10には撮影レンズ180および画像データ記録媒体126が着脱自在に装着される。
【0020】
上述した構成要素について以下に説明する。撮影レンズ180は、レンズエレメント182と、絞り装置184と、絞り駆動部186と、レンズ駆動部188とを有する。撮影レンズ180をカメラ10に装着してカメラ10の電源を投入するとカメラ10側から撮影レンズ180に電力が供給される。撮影時には、絞り駆動部186、レンズ駆動部188に制御信号が発せられて、絞り装置184の開度(設定絞り値)、レンズエレメント182の光軸方向の位置が調節される。
【0021】
メインミラー150は図1の紙面に直交する方向に延在する回動軸Pを中心として回動可能に構成される、いわゆるクイックリターン式のレフレックスミラーである。メインミラー150の背面に設けられたサブミラー154は、同じく図1の紙面に直交する方向に延在する軸Qを中心として回動可能に構成される。撮影準備状態(ユーザが構図決定、焦点調節等の操作をしている状態)において、メインミラー150は撮影レンズ180を透過してカメラ10内を進む被写体光の光路中に位置している。そして、撮影レンズ180を透過した被写体光の大半は、メインミラー150によってペンタプリズム(ペンタゴナルダハプリズム)160に向けて反射される。メインミラー150の一部は半透鏡となっている。メインミラー150が上述のようにカメラ10内を進む被写体光の光路中に位置しているとき、メインミラー150の上記半透鏡の部分を透過した一部の被写体光はサブミラー154によって反射され、焦点検出装置170に導かれる。焦点検出装置170は、反射鏡、コンデンサレンズ、セパレータレンズ、小型イメージセンサ等を有する、いわゆる位相差検出式のものとすることができる。
【0022】
ペンタプリズム160に入射した被写体光は、このペンタプリズム160に設けられる三つの反射面で反射されて接眼レンズ162に入射する。ユーザは、接眼レンズ162に眼をあてることにより、接眼レンズ162で拡大された被写体像を観察することができる。また、ペンタプリズム160で反射されて導かれた被写体光の一部は、測光部164が有するフォトセンサに入射し、被写体の輝度が測光部164によって計測される。
【0023】
ミラー駆動・シャッタ係止機構152は、メインミラー150およびサブミラー154を駆動し、これらのメインミラー150およびサブミラー154が被写体光の光路中に位置して被写体光をペンタプリズム160、焦点検出装置170に導く状態、または被写体光の光路から退避して被写体光を撮像素子134の方に導く状態に切り替える。
【0024】
上記ミラー駆動・シャッタ係止機構152によってメインミラー150は駆動され、撮影動作時には軸Pを回動中心として、上記被写体光の光路から退避する位置に跳ね上げられる。このとき、サブミラー154もまた軸Qを回動中心として、上記被写体光の光路から退避する位置に跳ね上げられる。撮影動作終了時、これらのメインミラー150およびサブミラー154は上述した撮影準備状態の位置に戻される。
【0025】
シャッタ140について説明する。本発明の第1の実施の形態においてシャッタ140は、フォーカルプレンシャッタであるものとして説明をする。シャッタ140は、メインミラー150と撮像素子134との間に設けられ、撮影レンズ180の光軸に略直交する面に沿って走行可能に構成される先幕および後幕を有する。また、シャッタ140はいわゆる縦走り式のフォーカルプレンシャッタで、幕の走行方向は上から下に向かう方向であるものとする。すなわち、カメラ10を横位置で構えて撮影したときに、鉛直方向の上側から下側に向かって先幕、後幕が走行して露光動作が行われるものとする。無論、幕の走行方向は下側から上側に向かう方向であっても良く、また、いわゆる横走り式やロータリー式の遮光幕を有するものであってもよい。
【0026】
シャッタ140は、先幕と、後幕と、先幕を上下方向に走行させる機構部品と、後幕を上下方向に走行させる機構部品と、先幕係止機構と、後幕係止機構(以上、不図示)とを有する。シャッタ140はさらに、先幕係止マグネット142と、後幕係止マグネット144とを有する。シャッタ140はまた、先幕、後幕を走行させる際の駆動力を蓄える先幕用弾性部材および後幕用弾性部材等を備えていてもよい。なお、先幕、後幕を走行させる際の駆動力としては弾性力以外に電磁力等を用いるものであってもよい。
【0027】
先幕係止マグネット142、後幕係止マグネット144は、電磁石、可動鉄片(アーマチュア)等で構成される。通電状態で電磁石に生じる磁力によって可動鉄片が電磁石に吸着され、先幕、後幕の係止状態が維持される。
【0028】
シャッタ140の作動時、最初に先幕係止マグネット142への通電を解除すると、電磁石による吸着力が失われて可動鉄片が離反する。これにより、先幕係止状態が解除されて先幕が走行を開始する。その後、後幕係止マグネット144への通電を解除すると、上述したのと同様の作用によって後幕係止状態が解除されて後幕が走行する。先幕が走行し始めるタイミングと後幕が走行し始めるタイミングとを、上述した先幕係止マグネット142、後幕係止マグネット144それぞれへの通電解除タイミングを変えることによって所望のシャッタ秒時でシャッタ140を露光動作させることが可能となる。
【0029】
シャッタチャージ機構146は、ミラー駆動・シャッタ係止機構152がメインミラー150およびサブミラー154を撮影準備状態の位置に戻す際、あるいは戻した後に、シャッタ140の先幕および後幕を走行開始前の位置に戻す。このときに、上記の先幕用弾性部材、後幕用弾性部材が弾性変形されて蓄勢される。なお、シャッタチャージ時に、先幕係止マグネット142、後幕係止マグネット144は通電されておらず、吸着力を生じていない。しかし、メインミラー150およびサブミラー154が撮影準備状態の位置にある場合には、ミラー駆動・シャッタ係止機構152が先幕および後幕の係止状態を機械的に維持している。したがって、シャッタ140が意図しないタイミングで作動してしまうことは無い。そして、ミラー駆動・シャッタ係止機構152がメインミラー150およびサブミラー154を被写体光の光路から退避する位置へ駆動する寸前に先幕係止マグネット142、後幕係止マグネット144への通電が開始される。これにより電力の消費が抑制される。
【0030】
光学的ローパスフィルタ136は、複屈折作用を有する光学部材と偏光作用を有する光学部材とを組み合わせて構成され、透過する被写体光中の高い空間周波成分を減じる。光学的ローパスフィルタ136の表面には、必要に応じて赤外光を遮断する特性を有する層(薄膜)が形成される。あるいは、赤外光を吸収する特性を有するフイルムやガラス基板等が別に設けられていてもよい。
【0031】
撮像素子134は、CCDイメージセンサ、あるいはCMOSイメージセンサとすることが可能である。本発明の実施の形態において、撮像素子134はその受光面上にベイヤ配列のオンチップカラーフィルタが形成された単板式のCMOSカラーイメージセンサであるものとして説明をする。
【0032】
アナログ・フロントエンド130(図1中では「AFE」と表記されている)は、撮像素子134から出力されるアナログ画像信号に対して相関二重サンプリング、増幅、AD変換等の処理を行い、デジタル画像信号を生成する。このアナログ・フロントエンド130は、撮像素子134中に設けられていてもよい。
【0033】
タイミング・ジェネレータ132(図1中では「TG」と表記されている)は、画像信号処理部120から出力される指令に基づいてタイミングパルスを生成し、撮像素子134に出力する。撮像素子134は、このタイミングパルスに同期して画像信号を点順次の方式でアナログ・フロントエンド130に出力する。
【0034】
DRAM116は、画像信号処理部120、システムコントローラ100の双方からアクセス可能に構成される揮発性メモリであり、上記画像信号処理部120、システムコントローラ100で後述する処理が行われる際の作業エリアとして用いられる。
【0035】
不揮発性メモリ110はフラッシュメモリ等で構成される。不揮発性メモリ110には、調整用パラメータ112、制御プログラム114等が記憶される。これらの調整用パラメータ112、制御プログラム114については後で説明する。
【0036】
画像データ記録媒体126は、メモリカード、小型ハードディスクドライブ、あるいはフロッピー(登録商標)ディスク等で構成され、カメラ10に対して着脱自在に構成される。カメラ10で生成された画像データは、この画像データ記録媒体126に記録される。
【0037】
画像表示部124は、TFT表示素子とバックライト装置、あるいは有機EL表示素子等で構成され、撮影して得られた画像をカラー表示することが可能に構成される。また、必要に応じてメニュー画面を表示したり、ユーザに情報を伝達するための文字表示やグラフィック表示をしたりすることも可能に構成される。
【0038】
表示制御部122は、画像信号処理部120から出力される信号に基づいて画像を表示するように画像表示部124を制御する。
【0039】
画像信号処理部120は、アナログ・フロントエンド130から出力されるデジタル画像信号を入力してDRAM116へ一時的に記憶する。画像信号処理部120は、DRAM116に記憶されるデジタル画像信号にデモザイク、ホワイトバランス補正、シェーディング補正、レベル補正、階調補正等の処理をして画像データを生成する。なお、本明細書中では、上記の処理をする前のものをデジタル画像信号と称し、処理をしたものをデジタル画像データと称する。画像信号処理部120は、デジタル画像データに対して必要に応じて圧縮処理をし、処理後の画像データを画像データ記録媒体126に記録する。
【0040】
画像信号処理部120はまた、生成された画像データや、画像データ記録媒体126から読み出された画像データに基づき、表示用画像データを生成して表示制御部122に出力する。表示制御部122は、受信した表示用画像データに基づく画像を画像表示部124に表示する。
【0041】
システムコントローラ100は、CPU、またはハードウェアロジック等で構成可能であるが、本実施の形態においてはCPUで構成されるものとする。システムコントローラ100と先幕係止マグネット142、後幕係止マグネット144、シャッタチャージ機構146、ミラー駆動・シャッタ係止機構152、絞り駆動部186、レンズ駆動部188等とはバス106を介して電気的に接続されている。システムコントローラ100は、不揮発性メモリ110からDRAM116に転送された制御プログラム114を逐次読み込んで実行し、上述した各構成要素の動作を制御してカメラ10全体の動作を制御する。
【0042】
調整用パラメータ112について説明する。カメラ10を構成する機械部品や電子部品は製造上のばらつきがある。それらのばらつきによって、同じ制御プログラムに基づいて個々のカメラ10を制御しても動作や精度にばらつきを生じる場合がある。調整用パラメータ112は、このようなばらつきを減じるために製造・調整過程で個々のカメラ10に対応して書き込まれる。
【0043】
例えば、先幕係止マグネット142、後幕係止マグネット144への通電を解除してから可動鉄片が離反を開始するまでの時間に個体差を有する場合があり、先幕、後幕を走行させるための弾性部材の弾性力もまた個体差を有する場合がある。加えて、先幕や後幕が走行する際にこれら先幕や後幕に作用する摩擦力なども個体差を有する場合がある。これらの個体差は、先幕と後幕との走行間隔(スリット幅)のばらつきや幕の走行速度のばらつきの要因となる。従って、先幕係止マグネットへの通電を解除してから1/8000秒後に後幕係止マグネット144への通電を解除しても、得られるシャッタ秒時(シャッタ開放時間)は必ずしも1/8000秒になるとは限らない。そこで、先幕係止マグネット142への通電を解除してから後幕係止マグネット144への通電を解除するまでの時間間隔を調整(増減)するための時間間隔補正情報を調整用パラメータ112として不揮発性メモリ110に記憶することが可能である。
【0044】
調整用パラメータ112には、上述した時間間隔補正情報以外にも、測光部164の測光精度調整用情報、アナログ・フロントエンド130でのゲイン調整、あるいはAD変換に際してのレベルやリニアリティ等の調整をするための情報等、様々な調整用情報を記憶可能に構成される。
【0045】
調整用パラメータ112にはさらに、露出プログラム特性変更情報も記憶可能に構成される。露出プログラム特性変更情報について以下に説明する。最初に、露出プログラム特性変更情報とは、予め定められている露出プログラムの特性を変更するための情報である。露出プログラムは、測光部164で得られた被写体輝度に応じて、カメラ10が撮影動作を実行する際のシャッタ開放時間、撮影レンズ180で設定される絞り値(以下、設定絞り値と称する)、撮像素子134で設定される等価ISO感度(アナログ・フロントエンド130で設定されるゲイン)等の露出パラメータを決定するためのものとして予め定められているものである。一例として、システムコントローラ100内に露出プログラムが組み込まれたものとすることができる。
【0046】
この露出プログラムとしては、測光部164で得られた被写体輝度に対応してシャッタ開放時間と設定絞り値との組み合わせを決定するように予め定められたものとすることができる。あるいは、設定絞り値はユーザにより設定された値に固定した状態で、撮像素子134で設定される等価ISO感度とシャッタ開放時間との組み合わせを決定するように予め定められたものとすることができる。
【0047】
同様に、シャッタ開放時間は固定した状態で、撮像素子134で設定される等価ISO感度と設定絞り値との組み合わせを決定するように予め定められたものとすることもできる。さらに、測光部164で得られた被写体輝度に対応して、撮像素子134で設定される等価ISO感度、シャッタ開放時間、設定絞り値等の全ての露出パラメータの組み合わせを決定するように予め定められたものとすることもできる。
【0048】
以下、本発明の第1の実施の形態においては、設定絞り値、シャッタ開放時間、および撮像素子の等価ISO感度を含む、複数の露出パラメータのうち、シャッタ開放時間を含む少なくとも二つの露出パラメータが、予め定められた露出プログラムに従い、測光部164で検出された被写体の輝度に応じて決定されるものとする。
【0049】
露出プログラム特性変更情報は、測光部164で得られた被写体輝度に対応して露出パラメータが決定される際に、シャッタ開放時間としてとりうる値に制限を加えるための情報である。例えば、カメラ10に組み込まれるシャッタが高速側(短秒時側)のシャッタ開放時間として1/8192秒で作動可能なものである場合、露出プログラム特性変更情報は、高速側のシャッタ開放時間を1/4096秒、1/2048秒、1/1024秒、…といった値に制限を加えるための情報である。例えば、露出プログラム特性変更情報に基づいて高速側のシャッタ開放時間が1/2048に制限される場合、制御目標EV値の大小によらず、設定されるシャッタ開放時間は1/2048秒よりも短くなることはない。
【0050】
情報表示部102は、カメラ10の上部や背面、さらにはファインダ内等に設けられるモノクロまたはカラーの液晶表示装置等で構成される。情報表示部102はまた、LED等を有していてもよい。また、情報表示部102に加えて、あるいは置き換えて、音や振動をユーザに伝えるための発音体や振動モータ等の装置をカメラ10が有していてもよい。
【0051】
操作スイッチ104は、レリーズスイッチ、スライドスイッチ、ダイヤルスイッチ、プッシュスイッチ等、カメラ10に設けられる各種スイッチを総称したものである。ユーザが操作スイッチ104を用いて、絞り値、シャッタ速度、等価ISO感度、露出モード等の設定、カメラの動作モード(記録モード/再生モード等)の切り替え、メニュー選択、撮影動作の開始等の操作をすることが可能となる。
【0052】
通信部108は、IEEE802.11で規定される無線規格に準拠した送受信機能を有するものとすることができる。この通信部108により、カメラ10はインターネットに接続することができる。カメラ10はインターネットを介し、後で詳しく説明するサーバと通信可能に構成されている。あるいは、通信部108を介して携帯電話等の公衆無線網に接続可能とし、公衆無線網を経由して、インターネットに接続されるサーバと通信可能に構成されていてもよい。
【0053】
また、この通信部108については、有線の形態でインターネットに接続可能に構成されるものであってもよい。この場合、通信部108はLANインターフェースであっても良いし、USBインターフェースであってもよい。通信部108がUSBインターフェースである場合、ネットワークに接続されるパーソナルコンピュータ等にUSBケーブルを介してカメラ10を接続することができる。そして、このパーソナルコンピュータ等を経由してサーバとカメラ10との間で情報の授受を行うことが可能に構成されていてもよい。
【0054】
図2は、システムコントローラ100が有する処理部を説明するブロック図である。図2には、システムコントローラ100が、図1に示される構成要素中の一部の構成要素とともに示されている。システムコントローラ100は、シャッタ時間設定部200と、シャッタタイミング制御部202と、露光量誤差導出部204と、シャッタ精度低下告知処理部206と、露出パラメータ決定部208と、露出プログラム変更部210とを有する。不揮発性メモリ110からDRAM116に転送された制御プログラム114をシステムコントローラ100が逐次読み込んで実行することにより、上述した各処理部が機能する。
【0055】
シャッタ時間設定部200は、シャッタ140の開放時間(シャッタ秒時)を設定する処理を行う。例えば、カメラ10が絞り優先露出モードに設定されている場合、設定されている等価ISO感度と、ユーザにより設定されている撮影レンズ180の絞り値と、測光部164から得られる測光結果等とに基づき、シャッタ時間設定部200はシャッタ140が作動する際の開放時間(シャッタ秒時)を設定する。
【0056】
シャッタタイミング制御部202は、シャッタ時間設定部200で設定された開放時間に基づき、シャッタ140を開成させてから閉成させるまでの時間間隔を制御する。具体的には、シャッタタイミング制御部202は、シャッタ時間設定部200で設定された開放時間に基づき、先幕係止マグネット142への通電を解除してから後幕係止マグネット144への通電を解除するまでの時間間隔(以下では先幕係止マグネット142への通電を解除してから後幕係止マグネット144への通電を解除するまでの時間間隔をディレイタイムと称する)を決定する。
【0057】
このディレイタイムは、シャッタ時間設定部200で設定されるシャッタ秒時に対応するものがデータテーブルの形式で不揮発性メモリ110に記憶されていて、それをシャッタタイミング制御部202が読み出すことが可能である。あるいは、シャッタ時間設定部200で設定されるシャッタ秒時からディレイタイムを算出するための計算式が制御プログラム114中に組み込まれていて、シャッタ開閉動作にあたってシャッタタイミング制御部202でディレイタイムを算出するようにしてもよい。
【0058】
露光量誤差導出部204は、予め定められた基準シャッタ開放時間を含む露出パラメータで被写体を撮影して得られた画像から露光量誤差を求める。基準シャッタ開放時間としては、カメラ10で設定可能なシャッタ開放時間中、最も短い開放時間(例えば1/8192秒)とすることが露光量誤差をより正確に導出する上で望ましい。
【0059】
ここで図3から図5を参照して露光量誤差導出部204において行われる露光量誤差導出の方法について説明する。図3は、先幕係止マグネット142、後幕係止マグネット144への通電を解除するタイミングとシャッタ140の先幕、後幕の走行タイミングとの関係を示す図である。図3(a)は、シャッタタイミング制御部202で設定されるディレイタイムに対して理想的なシャッタ開放時間(シャッタ秒時)が得られる様子を示す。図3(b)は、目標とするシャッタ開放時間(目標秒時)に対応してシャッタタイミング制御部202で設定されるディレイタイムに対して、得られるシャッタ秒時(実秒時)が誤差を有する様子を示す。図3(b)に示されるように、実秒時と目標秒時との差をシャッタ秒時誤差と称する。
【0060】
ところで、フォーカルプレンシャッタでは、このシャッタ秒時誤差が目標秒時の長短によらず略一定であることが多い。これはすなわち、結果として得られる露光量に及ぼすシャッタ秒時誤差の影響が長秒時であるほど小さいことを意味する。図3(c)は、図3(b)に示されるものよりも長い目標秒時が設定されているのに対して、シャッタ秒時誤差は図3(b)に示されるものとほぼ同じである様子を示している。図3の(a)、(b)、(c)のそれぞれにおいて、図の左右方向には時間の経過を示しており、上下方向には事象の変化(先幕係止解除信号、後幕係止解除信号の変化、先幕、後幕が走行を開始してから走行を完了するまでの様子)が示されている。
【0061】
シャッタ秒時誤差が露光量に与える影響は、目標とするシャッタ開放時間(目標秒時)のTv値と実際のシャッタ開放時間(実秒時)のTv値(Tv値はシャッタ秒時をアペックス演算で表したものを意味する)との差で求めることができる。例えば、目標秒時が122マイクロ秒(1/8192秒)で、シャッタ秒時誤差が25マイクロ秒(1/40000秒)長すぎであったとする。この場合、露光量の誤差(ΔEv)は、以下のように求めることができる。

ΔEv=[−log2(1/8192)]−[−log2(1/8192+1/40000)]
=log2(8192)−log2(6799)≒0.27

上記に対して、目標秒時が244マイクロ秒(1/4096秒)の場合にもシャッタ秒時誤差が25マイクロ秒(1/40000秒)長すぎであったとする。この場合、露光量の誤差(ΔEv)は、以下のように求めることができる。

ΔEv=[−log2(1/4096)]−[−log2(1/4096+1/40000)]
=log2(4096)−log2(3716)≒0.14

以上の比較から、25マイクロ秒のシャッタ秒時誤差(長すぎ)が露光量に与える影響は、シャッタ開放時間が1/8192秒(称呼値で1/8000秒)の場合は0.27Ev、1/4096秒(称呼値で1/4000秒)の場合は0.14Evとなる。上記と同様の計算を1/2048秒(称呼値で1/2000秒)に対して行うと、0.07Evとなる。以上のように、シャッタ秒時誤差が設定シャッタ開放時間の長短によらず一定の場合、シャッタ開放時間が長くなるにつれて、シャッタ秒時誤差が露光量に与える影響は減少する。
【0062】
以上から明らかなように、目標秒時が短い程、シャッタ秒時誤差が露光量に及ぼす影響は大きい。つまり、目標秒時が短い程、上述したシャッタ秒時誤差に起因する露光量誤差は大きくなる傾向にあるので、露光量誤差の測定精度を上げるという観点からは、より短いシャッタ開放時間で露光量誤差を測定することが望ましい。
【0063】
図4は、カメラ10のシャッタ精度を確認する際の様子を概念的に示す図である。テストチャートTCは、時間的にほぼ一定の照度で照明された、ほぼ一様の反射率を有するものであることが望ましい。一例としては、太陽光やDC駆動された照明機器等で照明された無地の紙をテストチャートTCとして用いることが可能である。なお、テストチャートTCとして適当なものが無ければ、静止物体をテストチャートTCの代わりに用いることも可能である。例えば晴天の青空にカメラ10を向けることも可能である。また、静止物体が必ずしも無地である必要は無い。
【0064】
図5は、図4に示される状態で撮影をしてアナログ・フロントエンド130から出力されるデジタル画像信号(デモザイク処理等を行う前のデジタル信号)を概念的に示している。あるいは、撮像素子134のイメージエリア上に二元的に配列される画素と考えても良い。シャッタ140の先幕、後幕は、図5の上側から下側に向かう方向に対応して走行するものとする。このデジタル画像信号はB行×A列の二次元配列されたものであるとする。
【0065】
図5中、R、Gr、Gb、またはBの符号が付された1つの矩形が1つの画素を意味している。そして、符号Rが付された矩形は赤色のオンチップカラーフィルタがフォトダイオード上に設けられた画素を意味する。同様に、符号Gr、Gbの付された矩形は緑色のオンチップカラーフィルタがフォトダイオード上に設けられた画素を、符号Bの付された矩形は青色のオンチップカラーフィルタがフォトダイオード上に設けられた画素を意味する。以下では赤色のオンチップカラーフィルタが設けられた画素をR画素、緑色のオンチップカラーフィルタが設けられた画素をG画素(区別する必要があるときにはGr画素、Gb画素と称する)、青色のオンチップカラーフィルタが設けられた画素をB画素と称する。これらR画素、G画素、B画素に対応する画素値は、例えば8ビット、12ビット、14ビットといったビット深度を有するデジタル値とすることが可能である。
【0066】
1回の撮影で得られる画像信号から、露光量誤差導出部204は以下のようにG出力平均値を求める。すなわち、露光量誤差導出部204は以下に示されるようにGr画素、Gb画素の画素値の総和を求め、その総和からG出力平均値を求める。
【0067】
Gr画素の画素値の総和をSumGrで表し、Gb画素の画素値の総和をSumGbで表すと、G出力平均値は以下の式で求めることができる。下記の式でA、Bはそれぞれ、図5に示される画像信号の、横方向の画素数(列の数)、縦方向の画素数(行の数)を意味する。G画素の数は、全画素数(A×B)の半分しか無いので、下記式において2が乗じられている。

G出力平均値=(SumGr+SumGb)÷(A×B)×2 … 式(1)

ところで、測光部164での測光結果に基づいて決められる露出パラメータで撮影を行って得られる画像から求められるG出力平均値は、カメラ10が正常に機能している場合、設計値に近い値となる。何故ならば、与えられた被写体輝度(測光部164での測光結果)に対応して、撮像素子134の受光面上で所定の像面露光量が得られるように露出パラメータが決定されるからである。しかし、シャッタ140が上述した秒時誤差を有する場合、想定した像面露光量が得られず、従ってG出力平均値は設計値からずれる。
【0068】
つまり、上述のようにして得られるG出力平均値と、設計上予想されるG出力平均値(以下ではこれを単に設計値と称する)との比を求めることにより露光量誤差ΔEvを求めることが可能となる。露光誤差ΔEvは、以下の式(2)から求めることができる。

ΔEv=log2(G出力平均値/設計値) … 式(2)
なお、上記G出力平均値を求める際に、撮影レンズ180や撮像素子134の特性によって生じるシェーディングの影響を軽減するため、補正処理を行うことも可能である。あるいは、画面の中心部分の画素値のみを用いてG出力平均値を求めることにより、シェーディングの影響を軽減するようにしてもよい。
【0069】
再び図2を参照して、シャッタ精度低下告知処理部206は、露光量誤差導出部204で導出された露光量誤差が所定の量、例えばAPEX演算でプラス・マイナス0.3Ev分に相当する量を越したときに、シャッタ精度が低下している旨をユーザに対して告知する処理を行う。ユーザに対する告知の方法としては、画像表示部124にシャッタ精度が低下している旨の表示をしたり、情報表示部102に絵文字等を表示したりすることが可能である。あるいは、ファインダ内の液晶表示装置やLED等を用いて表示したり、発音体や振動モータ等を作動させてユーザに告知したりしてもよい。
【0070】
露出パラメータ決定部208は、ユーザにより設定された露出モード(プログラム露出モード、絞り優先露出モード、シャッタ速度有線露出モード、撮像素子感度自動設定モード等)と、測光部164から出力された被写体輝度の情報とから露出パラメータを決定する。露出パラメータは、先にも説明したように、カメラ10が撮影動作を実行する際のシャッタ開放時間、撮影レンズ180の設定絞り値、撮像素子134で設定される等価ISO感度等である。
【0071】
露出プログラム変更部210は、露光量誤差導出部204で導出された露光量誤差が所定の量を越している状況において、このシャッタ精度低下に対して露出プログラムを変更して対処することをカメラ10のユーザが希望している場合に、露出プログラムを変更する処理を行う。上記所定の量としては、例えばAPEX演算で0.3Ev分に相当する量とすることが可能である。本発明の第1の実施の形態において、露出プログラム変更部210は、露出パラメータ決定部208で露出パラメータが決定される際に、以下に説明する処理を行う。
【0072】
図6は、目標とするEv値に対して露出パラメータ決定部208で決定される設定絞り値(Av)、シャッタ開放時間(Tv)の組み合わせを概念的に示すプログラム線図である。図6(a)は、通常の状態(露光量誤差導出部204で導出された露光量誤差が比較的少なく、良好な状態)のときに適用されるプログラム線図の例を示す。図6(b)は、露光量誤差導出部204で導出された露光量誤差が、例えば0.3Evあった場合に適用されるプログラム線図の例を示す。図6(c)は、露光量誤差導出部204で導出された露出誤差が、例えば0.5Evあった場合に適用されるプログラム線図の例を示す。
【0073】
図6(a)に示されるプログラム線図では、Tv値の上限が13となっている。例えば、Ev18の制御目標に対してAv5(絞り値F5.66)とTv13(シャッタ開放時間1/8192秒)との組み合わせとなっている。図6(b)に示されるプログラム線図では、Tv値の上限が12となっている。つまり、Ev18の制御目標に対してはAv6(絞り値F8)とTv12(シャッタ開放時間1/4096秒)との組み合わせとなっている。図6(c)に示されるプログラム線図では、Tv値の上限が11となっている。つまり、Ev18の制御目標に対してはAv7(絞り値F11.3)とTv11(シャッタ開放時間1/2048秒)との組み合わせとなっている。
【0074】
露出プログラム変更部210は、図6を参照して例示したように露出プログラムの特性を変更する際に、不揮発性メモリ110内に記憶される露出プログラムの特性を規定するプログラムに修正を加えることが可能である。あるいは、以下に説明するように露出パラメータ決定部208で決定されるシャッタ開放時間に制限を加えるための情報(以下ではこれをTv制限値と称する)を調整用パラメータ112の1つとして記憶することも可能である。つまり、露出パラメータ決定部208は、図6(a)に示されるような露出プログラム特性に従ってAv値、Tv値を求め、求められたTv値をTv制限値と比較する。そして、求められたTv値がTv制限値を超している場合、求められたTv値をTv制限値と等しい値に変更し、制御目標のEv値と変更後のTv値とから新たなAv値を求めることができる。
【0075】
図6に示される例を用い、上記の例について具体的に説明する。Tv制限値は図6(c)に示されるように11であったとする。制御目標Ev値が17であった場合、露出パラメータ決定部208は図6(a)に示される露出プログラム特性に基づいてTv値を13と決定する。露出パラメータ決定部208はこのTv値13をTv制限値の11と比較する。Tv13はTv11を越しているので、露出パラメータ決定部208はTv値を11に変更する。そして露出パラメータ決定部208は、制御目標Ev値17と変更後のTv値11とからAv値を6に決定することができる。
【0076】
図7は、カメラ10で撮影動作が実行されるときにシステムコントローラ100により実行される処理を示す概略フローチャートである。S700で一連の撮影動作が行われ、S702では累計シャッタレリーズ回数が確認される。累計シャッタレリーズ回数は、ユーザがカメラ10を新規に使用開始してからの累計のシャッタレリーズ回数である。
【0077】
S704でシステムコントローラ100は、累計シャッタレリーズ回数をもとに、シャッタ精度保全処理を行うレリーズ回数に達したか否かを判定する。この判定が否定される間は、通常の撮影動作が繰り返し行われる。S704での判定が肯定されると処理はS706に進む。そしてシステムコントローラ100は画像表示部124にシャッタ精度保全処理を行うかどうかの判定をユーザに促すための表示を行う。S706の処理によって画像表示部124に表示される内容の一例が図8に示されている。ユーザは操作スイッチ104を操作して図8に示される「はい」または「いいえ」を選択する。
【0078】
S708においてシステムコントローラ100は、シャッタ精度保全処理をユーザが希望しているか否かを判定する。S708での判定が否定された場合、S700に戻り、上述した処理が繰り返し行われる。S708での判定が肯定された場合、処理はS710に進んでシステムコントローラ100はシャッタ精度保全処理を実行した後、図7に示される一連の動作を完了する。
【0079】
図9、図10は、システムコントローラ100で実行されるシャッタ精度保全処理の手順を概略的に示すフローチャートである。この処理手順は、図7に示すフローチャート中におけるS710の処理に対応する。図9、図10に示される処理が実行される際の前提として、カメラ10は図4を参照して説明した状態に設定されているものとする。つまり、カメラ10は三脚TP等によって固定され、時間的に輝度の安定している静止物体(テストチャートTP)に向けられているものとする。また、カメラ10が連写モード(レリーズスイッチを押下している間、撮影動作が連続して行われるモード)を有するものである場合、この連写モードに設定されることが較正動作を短時間のうちに完了させる上で望ましい。
【0080】
S900においてシステムコントローラ100は、カメラ10のAv値、Sv値を設定する。つまり、シャッタ較正モードで撮影動作を行う際の、撮影レンズ180の絞り値、アナログ・フロントエンド130で設定されるゲインを予め定められた値、あるいはユーザにより決定された値に設定する。以降、シャッタ較正モードの処理が完了するまで、上記Av値、Sv値は一定に維持される。
【0081】
S902においてシステムコントローラ100は、カウンタ値Cをクリアする。このカウンタ値Cは、シャッタ秒時誤差を導出するために撮影動作を繰り返し行う際の回数を計数するカウンタである。
【0082】
S904においてシステムコントローラ100は、シャッタ秒時(開放時間)を1/8000秒の称呼値に設定する。このとき、シャッタタイミング制御部202(図2)では1/8192秒(122マイクロ秒)のディレイタイムが設定される。本実施の形態においてはシャッタ開放時間として1/8192秒が設定される場合を例に説明するが、このシャッタ開放時間はカメラ10で設定しうる最短のシャッタ開放時間であることが望ましい。
【0083】
S906においてシステムコントローラ100は、撮影を実行する。このとき、撮像素子134から出力され、アナログ・フロントエンド130で処理されて生成されたデジタル画像信号は画像信号処理部120を経由してシステムコントローラ100に出力される。システムコントローラ100はS908でこのデジタル画像信号を取得し、DRAM116に一時的に記録する。
【0084】
S910においてシステムコントローラ100は、S906で撮影が実行される直前、あるいは直後の測光値を測光部164から入力し、それをB1として記憶する。S912においてシステムコントローラ100は、S908で取得したデジタル画像信号から、式(1)を用いてG出力平均値を導出する。
【0085】
S914においてシステムコントローラ100は、シャッタ秒時を1/4000秒の称呼値に設定する。このとき、シャッタタイミング制御部202(図2)では1/4096秒(244マイクロ秒)のディレイタイムが設定される。S914で設定されるシャッタ開放時間は、例えばS904で設定されるシャッタ開放時間の2倍、4倍などと云った時間とすることができる。
【0086】
S916においてシステムコントローラ100は、撮影を実行する。このとき、撮像素子134から出力され、アナログ・フロントエンド130で処理されて生成されたデジタル画像信号は画像信号処理部120を経由してシステムコントローラ100に出力される。システムコントローラ100はS918でこのデジタル画像信号を取得し、DRAM116に一時的に記録する。
【0087】
S920においてシステムコントローラ100は、S916で撮影が実行される直前、あるいは直後の測光値を測光部164から入力し、それをB2として記憶する。S922においてシステムコントローラ100は、S918で取得したデジタル画像信号から、式(1)を用いてG出力平均値を導出する。
【0088】
S924においてシステムコントローラ100は、B1からB2を引いた値の絶対値が予め定められた値Bよりも小さいか否かを判定し、この判定が肯定される場合にはS926に進む一方、否定される場合にはS902に戻る。つまり、称呼値1/8000秒のシャッタ秒時で撮影を実行したときの被写体輝度と、シャッタ秒時1/4000秒の称呼値で撮影を実行したときの被写体輝度との差が予め定められた基準値Bよりも大きいと判定される場合には、この判定の時点までに得られたデータを全て捨て、一連のシャッタ秒時較正に係る処理手順を最初からやり直す。
【0089】
上記の被写体輝度の差が大きい、ということは、被写体輝度が安定していないことを意味する。例えば、テストチャートTC(図4)が蛍光灯等で照明されている場合には、フリッカ等の影響によって上記の差が大きくなることがある。予め定められた基準値Bとしては、例えばAPEX演算のBv値換算で0.1程度とすることができる。被写体輝度の差が小さい場合には、被写体輝度は安定している(時間的に略一定の輝度を有している)ということになる。
【0090】
S910、S920、S924の処理を行う理由は、より正確な露光量誤差の導出を可能とするためである。つまり、露光量の差から露光量の誤差を求めるので、不安定な被写体輝度のもとで撮影を行うとそれが露光量のばらつきを生じる原因となり、結果として求められる露光量誤差の信頼度を低下させる可能性があるからである。
【0091】
S926においてシステムコントローラ100は、以下に説明する露光量誤差導出の処理を行う。すなわち、システムコントローラ100は、測光部164から出力された被写体輝度(これをBvとして以下の説明をする)、カメラ10で設定されたAv値、Sv値、そしてS904、S914で設定されたシャッタ秒時(シャッタ開放時間)すなわちTv値から、設計上予想されるG出力平均値(設計値)を導出する。そしてS912、S922それぞれで導出されたG出力平均値と、上記設計値とから式(2)を用いて露光量誤差を導出する。
【0092】
図9に示される処理では、シャッタ開放時間の称呼値を1/8000秒にしたときと、1/4000秒にしたときとの二つの場合で露光量誤差を導出しているが、いずれか一方のシャッタ開放時間のみで撮影をし、露光量誤差を導出してもよい。ただし、本実施の形態で例示するように、異なる複数のシャッタ開放時間で撮影を行い、露光量誤差を導出することにより、以下で説明するようにシャッタに起因する露光量誤差をより正確に推測することが可能となるからである。
【0093】
図3(b)、図3(c)を参照して先に説明したように、シャッタ秒時誤差はシャッタ開放時間の長短によらず略一定の長さとなる。従って、シャッタ開放時間が短くなるほどシャッタ秒時誤差が露光量に及ぼす影響は大きくなる。つまり、シャッタ開放時間の称呼値が1/8000秒のときの露光量誤差と、シャッタ開放時間の称呼値が1/4000秒のときの露光量誤差とを比較して、これらの露光量誤差の差が想定される差に対して乖離しているとき、それはシャッタの精度が原因ではなく、測光部164や絞り装置184、あるいはアナログ・フロントエンド130等が原因であることを推測することが可能となる。
【0094】
S928においてシステムコントローラ100は、カウンタ値Cをインクリメントする。続くS930では、インクリメント後のカウンタ値Cが正の整数N以上であるか否かが判定される。この判定が肯定されると処理はS932に進む一方、否定されるとS904に戻り、上述した処理が繰り返し行われる。つまり、予め設定された回数であるN回にわたって上記の処理が繰り返し行われる。Nは、例えば5とすることができる。N=5の場合、合計で10回の撮影動作が行われることになるが、カメラ10が連写モードに設定されていて、被写体輝度が安定していれば数秒程度の間にS904からS930までの一連の処理を完了することが可能である。
【0095】
S932においてシステムコントローラ100は、シャッタ開放時間の称呼値が1/8000秒の場合、1/4000秒の場合、それぞれに対応してS926で導出されたN個の露光量誤差から、露光量誤差の平均値を導出する。つまり、シャッタ開放時間の称呼値が1/8000秒の場合、1/4000秒の場合それぞれに対応した露光量誤差の平均値をS932で得る。
【0096】
S934でシステムコントローラ100は、S932で導出された、シャッタ開放時間の称呼値が1/8000秒の場合、1/4000秒の場合それぞれに対応した露光量誤差の平均値をもとにシャッタ精度が良好であるか否かを判定する。これらの露光量誤差の大小関係から、先に説明したように露光量誤差がシャッタの精度に起因するものか、他の原因によるものかをS934で判定することも可能である。あるいは、シャッタ開放時間の称呼値が1/8000秒の場合の露光量誤差の大小だけをもとにS934での判定を行うことも可能である。
【0097】
S934での判定が肯定された場合、処理はS950に進み、シャッタ精度は良好である旨を画像表示部124に表示する処理をシステムコントローラ100は行う。図11には、画像表示部124に表示される内容の例が示されており、図11(a)に示される例がS950での表示処理結果に対応するものである。
【0098】
S952においてシステムコントローラ100は、ユーザが「戻る」の操作をしたか否かの判定をし、この判定が否定される間はS952の処理を繰り返し、S952の判定が肯定されるとシャッタ秒時較正の処理を完了する。例えば、図11の(a)に示されるような「戻る」の文字が画像表示部124に表示されていて、この表示を見たユーザが操作スイッチ104を押下する操作をしたことが検出されると、S952の判定が肯定される。
【0099】
S934での判定が否定された場合、つまりシャッタ精度が良好でないと判定された場合の分岐先であるS936において、シャッタ開放時間の称呼値が1/8000秒の場合の露光量誤差の大小に基づき、Tv制限値を決定する。露光量誤差に対応して決定されるTv制限値の一例を図12に示す。図12に示される例によれば、露光量誤差が例えば0.5Evのとき、Tv制限値は11となる。図12に例示されるものに対応するようなデータテーブルを、調整用パラメータ112の1つとして記憶しておくことにより、システムコントローラ100はこのデータテーブルを参照してTv制限値を決定することができる。
【0100】
S938においてシステムコントローラ100は、Tv制限値変更の処理(露出プログラムの特性を変更する処理)を実行するか否か、ユーザに確認するための処理を行う。このS938の処理に対応して、画像表示部124には図11の(b)に例示されるような表示がなされる。なお、図11の(b)のような表示がなされる際に、Tv制限値変更後に使用可能なシャッタ開放時間の最短値を表示してもよい。例えば、「高速シャッタは1/2000秒まで使用可能です。」というような表示をすることができる。
【0101】
システムコントローラ100はS940において、ユーザがTv制限値の変更(露出プログラムの特性の変更)を実行することを希望しているか否かを判定する。例えば、図11の(b)に示されるような「はい」、「いいえ」の表示のうち、ユーザが操作スイッチ104を操作して「はい」を選択し、選択した内容を確定する操作をしたことが検出されると、S940の判定が肯定される。S940の判定が肯定された場合、処理はS942に進み、調整用パラメータ112内に記録されているTv制限値の情報を更新する処理が行われる。S942の処理が終わると一連のシャッタ精度保全処理が完了する。
【0102】
S940での判定が否定された場合の分岐先であるS960においてシステムコントローラ100は、図11の(c)に例示されるような、サポートセンターへの連絡を促すメッセージを連絡先情報などとともに画像表示部124に表示する処理を行う。
【0103】
S962においてシステムコントローラ100は、ユーザが「閉じる」の操作をしたか否かの判定をし、この判定が否定される間はS962の処理を繰り返し、S962の判定が肯定されるとシャッタ精度保全の処理を完了する。例えば、図11の(c)に示されるような「閉じる」の文字が画像表示部124に表示されていて、この表示を見たユーザが操作スイッチ104を押下する操作をしたことが検出されると、S962の判定が肯定される。
【0104】
以上に説明した第1の実施の形態によれば、輝度箱やシャッタ試験器、あるいは像面露光量計等の機器を用いることなく、シャッタ精度の確認と、必要に応じてTv制限値の更新処理をすることが可能となる。これにより、想定される寿命を過ぎてカメラを使用しても適正な露光量の画像を継続して得ることが可能となる。
【0105】
以上ではカメラ10を三脚に固定して一連の較正動作を行う例について説明したが、連写モードに切り替えたカメラ10をユーザが快晴の青空等に向けてカメラを保持すれば、数秒のうちに一連のシャッタ秒時較正、調整を完了することも可能である。このとき、S910、S920、およびS924の処理によって、較正動作中の被写体輝度が安定していない場合には途中まで得られたデータは捨てられる。したがって、カメラの保持のしかたが不適切であっても、それが較正の結果に悪影響を及ぼすことが無い。なお、カメラ10がいわゆる多分割測光可能なものである場合、S910、S920で被写界輝度を得る際に被写界輝度の分布も得ておくようにしてもよい。その場合、S924での判定処理では輝度値の比較だけでなく、被写界輝度の分布の一致度を判定することができる。
【0106】
以上では、遮光部材を開成させてから閉成させるまでの時間間隔を調節することにより撮像素子の受光面に入射する被写体光の光量を制御することが可能に構成されるシャッタとしてフォーカルプレンシャッタを用いる例について説明した。しかし、本発明はこの例に限られるものでは無い。つまり、遮光部材を開成させてから閉成させるまでの時間間隔を調節することにより撮像素子の受光面に入射する被写体光の光量を制御可能な全ての形式のシャッタを有するカメラに本発明を適用可能である。
【0107】
− 第2の実施の形態 −
図13は、本発明の第2の実施の形態に係るカメラ10が有するシステムコントローラ100Aの構成を説明するブロック図である。図13において、図2に示される本発明の第1の実施の形態に係るカメラ10が有するシステムコントローラ100と同一の構成要素には同じ符号を付してその説明を省略する。本発明の第2の実施の形態に係るカメラ10のその他の構成は、図1を参照して説明した本発明の第1の実施の形態に係るカメラ10とほぼ同一の構成を有するものとすることができる。
【0108】
システムコントローラ100Aは、システムコントローラ100が有している露光量誤差導出部204を有しておらず、代わりに実露光量比導出部212を有する。実露光量比導出部212は、時間的に略一定の輝度を有する静止物体を、第1のシャッタ開放時間で撮影して得られる第1の画像と、同じ静止物体を第2のシャッタ開放時間で撮影して得られる第2の画像との比較に基づいて以下に詳述するように実露光量比を導出する。
【0109】
図4に示されるように、三脚TPに固定されたカメラ10は、時間的にほぼ一定の照度で照明された、ほぼ一様の反射率を有するテストチャートTCに向けられる。テストチャートTCは、本発明の第1の実施の形態で説明したものと同様、太陽光、あるいはDC駆動された照明機器等で照明された無地の紙等を用いることが可能である。テストチャートTCとして適当なものが無ければ、静止物体をテストチャートTCの代わりに用いることが可能である点もまた本発明の第1の実施の形態で説明したのと同様である。
【0110】
上記のように設置されたカメラ10で、等価ISO感度、絞り値は固定したままで第1のシャッタ開放時間T1(例えばT1=1/8192秒)で撮影が行われ、そして第1のシャッタ開放時間とは異なる第2のシャッタ開放時間T2(例えばT2=1/4096秒)で撮影が行われる。実露光量比導出部212は、それぞれの撮影で得られた第1の画像、第2の画像から、式(1)を用いてG出力平均値をそれぞれ導出する。実露光量比導出部212はさらに、導出された、第1のシャッタ開放時間に対応するG出力平均値(G1で表す)と第2のシャッタ開放時間に対応するG出力平均値(G2で表す)とから以下の式(3)を用いて実露光量比δEvを導出する。

δEv=log22−log21=log2(G2/G1) … 式(3)

露出プログラム変更部210は、上記第1のシャッタ開放時間による理論上の露光量と第2のシャッタ開放時間による理論上の露光量との比に基づいて求められる理論上の露光量比、つまりlog2(T2/T1)と上記δEvとを比較し、露光量誤差ΔEvを求める。例えば以下の式(4)を用いて露光量誤差ΔEvを求めることができる。

ΔEv=log2(T2/T1)−δEv … 式(4)

上記式(4)を用いて導出された露光量誤差ΔEvが0のとき、シャッタ140の精度は良好であることが推定される。何故ならば、第1のシャッタ開放時間で得られる実露光量と第2のシャッタ開放時間で得られる実露光量との比が理論上の露光量比と等しいからである。
【0111】
一方、図3の(b)、(c)を参照して説明したようなシャッタ秒時誤差が存在する場合、第1のシャッタ開放時間で生じる露光量の誤差と第2のシャッタ開放時間で生じる露光量の誤差とは異なるものとなる。例えば第1のシャッタ開放時間が1/8192秒(122マイクロ秒)、第2のシャッタ開放時間が1/4096秒(244マイクロ秒)で、シャッタ秒時誤差が50マイクロ秒である場合を例に説明する。
【0112】
第1のシャッタ開放時間(1/8192秒)で得られるG出力平均値G1は、log2(122+50)に比例した値となり、第2のシャッタ開放時間(1/4096秒)で得られるG出力平均値G2は、log2(244+50)に比例した値となる。したがって、式(3)より、実露光量比δEv=log2(G2/G1)=log2[(244+50)/(122+50)]=log2(294/172)=0.77となる。従って、式(4)より、露光量誤差ΔEv=log2[(1/4096)/(1/8192)]−0.77=1−0.77=0.23となる。露出プログラム変更部210は、この露光量誤差ΔEvに基づいて露出プログラムを変化させる、すなわち修正する。
【0113】
以上の説明から明らかなように、本発明の第2の実施の形態において、露光量誤差ΔEvは第1のシャッタ開放時間、あるいは第2のシャッタ開放時間で得られる露光量の誤差そのものを表しているのではない。すなわち、露光量誤差ΔEvは、二つの異なるシャッタ開放時間それぞれに対応して求められる実露光量比δEvが理論上の露光量比に対してどれだけ乖離しているかを示すものである。この露光量誤差ΔEvが大きい、ということは、図3を参照して説明したシャッタ秒時誤差が大きいことを意味する。
【0114】
ところで、上記にようにして求められる露光量誤差ΔEvは、例えば絞り装置184の誤差等の影響を最小化することができる点で有利である。何故ならば、第1のシャッタ開放時間T1、第2のシャッタ開放時間T2で撮影を行う際に、同じ絞り値が設定されるからである。つまり、設定絞り値に誤差を有していても、この誤差は上記式(3)の計算過程において相殺されるからである。
【0115】
なお、絞り装置184の各設定絞りに対応する誤差が既知の場合、第1のシャッタ開放時間、第2のシャッタ開放時間で撮影を行う際に設定絞り値を変えることも可能である。例えば第1のシャッタ開放時間T1を1/8192秒として第2のシャッタ開放時間を1/256秒とするような場合、実露光量比は5Evに近い値となることが予想される。実露光量比が大きいと、テストチャートTCの輝度によっては撮像素子134のダイナミックレンジを越してしまう可能性がある。このようなときに、シャッタ開放時間を長めに設定するのに応じて絞りを絞るようにすることにより、上記ダイナミックレンジの問題は解消できる。但し、第1のシャッタ開放時間T1、第2のシャッタ開放時間T2に対応して設定される絞り値の大きさに応じて、上記式(3)を適宜変更する必要がある。
【0116】
シャッタ精度低下告知処理部206は、実露光量比導出部212で導出された露光量誤差ΔEvが所定の許容量、例えばAPEX演算でプラス・マイナス0.2Ev分に相当する許容量を越したときに、シャッタ精度が低下している旨をユーザに対して告知する処理を行うことができる。ユーザに対する告知の方法としては、シャッタの秒時誤差が大きくなってきている旨の表示を画像表示部124にしたり、情報表示部102に絵文字等を表示したりすることが可能である。あるいは、ファインダ内の液晶表示装置やLED等を用いて表示したり、発音体や振動モータ等を作動させてユーザに告知したりしてもよい。
【0117】
上記露出プログラム変更部210はさらに、シャッタ精度低下に対応して露出プログラムを変更することをユーザが希望している場合に、露出プログラムを変更する処理を行う。本発明の第2の実施の形態においても、露出プログラム変更部210は、図6を参照して本発明の第1の実施の形態で説明した露出プログラムの特性を変更する処理を行うことができる。
【0118】
露出プログラム変更部210が露出プログラムの特性を変更する際の処理も、本発明の第1の実施の形態で説明したものと同様である。すなわち、不揮発性メモリ110内に記憶される露出プログラムの特性を規定するプログラムに修正を加えることが可能である。あるいは、露出パラメータ決定部208で決定されるシャッタ開放時間に制限を加えるための情報(Tv制限値)を調整用パラメータ112の1つとして記憶することも可能である。この場合、本発明の第1の実施の形態で説明したのと同様に、露出パラメータ決定部208は図6(a)に示されるような露出プログラム特性に従ってAv値、Tv値を求め、求められたTv値をTv制限値と比較する。そして、求められたTv値がTv制限値を超している場合、求められたTv値をTv制限値と等しい値に変更し、制御目標のEv値と変更後のTv値とから新たなAv値を求めることができる。
【0119】
以下、システムコントローラ100Aによって行われる処理について説明する。本発明の第2の実施の形態においても、図7を参照して説明したのと同様、カメラ10の撮影動作に伴う処理が行われる。そしてシステムコントローラ100Aは、累計シャッタレリーズ回数をもとに、シャッタ精度保全処理を行うレリーズ回数に達したか否かを判定される。
【0120】
そして、シャッタ保全処理を行うレリーズ回数に達したと判定されると、システムコントローラ100Aは画像表示部124にシャッタ精度保全処理を行うかどうかの判定をユーザに促すための表示を行う。シャッタ精度保全処理をユーザが希望していると判定されると、以下で説明するシャッタ精度保全処理が行われる。
【0121】
図14は、システムコントローラ100Aによって実行されるシャッタ精度保全処理手順を概略的に示すフローチャートである。なお、図14に示される処理は、図9の処理に続いて行われる処理手順の部分のみを示している。つまり、本発明の第2の実施の形態においても、シャッタ精度保全処理として図9に示される処理が行われ、図9の処理に続いて図14の処理が行われる。
【0122】
図9、図14に示される処理が実行される際の前提として、カメラ10は図4を参照して説明した状態に設定されているものとする。つまり、本発明の第1の実施の形態と同様、カメラ10は三脚TP等によって固定され、時間的に輝度の安定している静止物体(テストチャートTP)に向けられているものとする。また、カメラ10が連写モード(レリーズスイッチを押下している間、撮影動作が連続して行われるモード)を有するものである場合、この連写モードに設定されることが較正動作を短時間のうちに完了させる上で望ましい点も本発明の第1の実施の形態と同様である。
【0123】
図9に示される処理については本発明の第1の実施の形態で説明したものにほぼ準ずるので要点のみを説明する。S912におけるG出力平均値導出の処理では、上記のG出力平均値G1が導出される。S922におけるG出力平均値導出の処理では、G出力平均値G2が導出される。そして、S926における露光量誤差導出の処理では、式(3)を用いて実露光量比δEvが求められ、次いで式(4)を用いて露光量誤差ΔEvが求められる。
【0124】
図9に示される処理に続き、図14のフローチャートの処理が行われる。S1400においてシステムコントローラ100Aは、図9の処理で得られたN個の露光量誤差ΔEvの平均値を導出する。システムコントローラ100AはS1402において、導出された露光量誤差の平均値を履歴としてEEPROMに記録する。S1404においてシステムコントローラ100Aは、S1400で導出された露光量誤差ΔEvの平均値をもとに、現在使用可能な最高速のシャッタ開放時間においてシャッタ精度は良好であるか否かを判定する。すなわち、露光量誤差ΔEvが大きい、ということから、上記の式(4)についての説明にもあるように、高速のシャッタ開放時間におけるシャッタ精度が低下しているということが類推可能である。そこで、図15に例示されるものに対応するようなデータテーブルを、不揮発性メモリ110に記憶しておくことにより、システムコントローラ100Aは、シャッタ精度が良好であるか否か(露光量誤差ΔEvが0.1Ev未満なら良好と判断)を判定できる。また、シャッタ精度が良好では無いと判定される場合、露光量誤差ΔEvの大きさに応じて、Tv制限値をいくらにすればよいかを図15に例示されるものに対応するデータテーブルから判定可能である。
【0125】
S1404での判定が肯定された場合、処理はS1406に進み、シャッタ精度は良好である旨を画像表示部124に表示する処理をシステムコントローラ100Aは行う。このときに表示される内容は、図11(a)に示されるのと同様のものとすることが可能である。
【0126】
S1408においてシステムコントローラ100Aは、ユーザが「戻る」の操作をしたか否かの判定をし、この判定が否定される間はS1408の処理を繰り返し、S1408の判定が肯定されるとシャッタ秒時較正の処理を完了する。例えば、図11の(a)に示されるような「戻る」の文字が画像表示部124に表示されていて、この表示を見たユーザが操作スイッチ104を押下する操作をしたことが検出されると、S1408の判定が肯定される。
【0127】
S1404での判定が否定された場合、つまりシャッタ精度が良好でないと判定された場合の分岐先であるS1410において、図15に例示されるものに対応するようなデータテーブルから、S1400で導出された露光量誤差ΔEvの平均値に対応するTv値を決定する。図15に示される例によれば、露光量誤差ΔEvが例えば0.3Evのとき、Tv制限値は10となる。図15に対応するようなデータテーブルを、調整用パラメータ112の1つとして記憶しておくことにより、システムコントローラ100Aはこのデータテーブルを参照してTv制限値を決定することができる。
【0128】
S1412においてシステムコントローラ100Aは、Tv制限値変更の処理(露出プログラムの特性を変更する処理)を実行するか否か、ユーザに確認するための処理を行う。このS1412の処理に対応して、画像表示部124には図11の(b)に例示されるような表示がなされる。なお、図11の(b)のような表示がなされる際に、Tv制限値変更後に使用可能なシャッタ開放時間の最短値を表示してもよい。例えば、「高速シャッタは1/1000秒まで使用可能です。」というような表示をすることができる。
【0129】
システムコントローラ100AはS1414において、ユーザがTv制限値の変更(露出プログラムの特性の変更)を実行することを希望しているか否かを判定する。例えば、図11の(b)に示されるような「はい」、「いいえ」の表示のうち、ユーザが操作スイッチ104を操作して「はい」を選択し、この選択を確定する操作をしたことが検出されると、S1414の判定が肯定される。S1414の判定が肯定された場合、処理はS1416に進み、調整用パラメータ112内に記録されているTv制限値の情報を更新する処理が行われる。S1416の処理が終わると一連のシャッタ精度保全処理が完了する。
【0130】
S1414での判定が否定された場合の分岐先であるS1420においてシステムコントローラ100Aは、図11の(c)に例示されるような、サポートセンターへの連絡を促すメッセージを連絡先情報などとともに画像表示部124に表示する処理を行う。
【0131】
S1422においてシステムコントローラ100Aは、ユーザが「閉じる」の操作をしたか否かの判定をし、この判定が否定される間はS1422の処理を繰り返し、S1422の判定が肯定されるとシャッタ精度保全の処理を完了する。例えば、図11の(c)に示されるような「閉じる」の文字が画像表示部124に表示されていて、この表示を見たユーザが操作スイッチ104を押下する操作をしたことが検出されると、S1422の判定が肯定される。
【0132】
以上に説明した本発明の第2の実施の形態によっても第1の実施の形態と同様、輝度箱やシャッタ試験器、あるいは像面露光量計等の機器を用いることなく、シャッタ精度の確認と、必要に応じてTv制限値の更新処理をすることが可能となる。これにより、想定される寿命を過ぎてカメラを使用しても、継続して適正な露光量の画像を得ることが可能となる。
【0133】
以上ではカメラ10を三脚に固定して一連の較正動作を行う例について説明したが、連写モードに切り替えたカメラ10をユーザが快晴の青空等に向けてカメラを保持すれば、数秒のうちに一連のシャッタ秒時較正、調整を完了することも可能である。
【0134】
本発明の第2の実施の形態に係るカメラもまた、フォーカルプレンシャッタを有するものだけではなく、遮光部材を開成させてから閉成させるまでの時間間隔を調節することにより撮像素子の受光面に入射する被写体光の光量を制御可能な全ての形式のシャッタを有するものとすることが可能である。
【0135】
− 第3の実施の形態 −
図16は、本発明の第3の実施の形態に係るカメラ10が有するシステムコントローラ100Bの構成を説明するブロック図である。図16において、図2に示される本発明の第1の実施の形態に係るカメラ10が有するシステムコントローラ100、あるいは図13に示される本発明の第2の実施の形態に係るカメラ10が有するシステムコントローラ100Aと同一の構成要素には同じ符号を付してその説明を省略する。本発明の第3の実施の形態に係るカメラ10のその他の構成は、図1を参照して説明した本発明の第1の実施の形態に係るカメラ10とほぼ同一の構成を有するものとすることができる。
【0136】
システムコントローラ100Bは、本発明の第2の実施の形態で説明したシステムコントローラ100Aが有している構成要素に加えて、露光量誤差情報送出部1602と露光量誤差改善情報受信部1604を有する。
【0137】
カメラ10は、通信部108を介してネットワークNWに接続可能に構成される。このネットワークNWにはサーバ(外部情報機器)1700が接続されているものとする。なお、これらのネットワークNW、サーバ1700については後で図17を参照して説明する。)ネットワークとしては、LAN、WAN、インターネット、携帯電話やPHSの公衆回線網等、カメラ10の利用形態に応じて任意のものを利用可能である。カメラ10が接続されるネットワークの種類に対応して、通信部108は本発明の第1の実施の形態でも説明したようにIEEE802.11規格の無線規格に準拠した送受信機能を有するもの、LANインターフェース、USBインターフェース、あるいは携帯電話やPHS用のRF送受信部等で構成可能である。
【0138】
露光量誤差情報送出部1602は、露光量誤差情報を、通信部108を介してサーバ1700に送出する処理を行う。露光量誤差情報には、露出プログラム変更部210において本発明の第2の実施の形態で説明したように求められた露光量誤差ΔEvに関連する情報、カメラ10の累計レリーズ回数、機種ID情報(カメラ10の機種を特定可能な情報)、カメラ10を一意に識別可能な個体識別ID情報(例えばカメラ製造時に付されたシリアル番号)などが含まれる。
【0139】
露光量誤差改善情報受信部1604は、通信部108を介してサーバ1700から露光量誤差改善情報を受信する処理を行う。この露光量誤差改善情報については後で説明する。
【0140】
図17は、ネットワークNWを介してカメラ10と接続されるサーバ1700の概略的構成を説明するブロック図である。サーバ1700は、通信部1702と、カメラ認証部1704と、処理部1706と、データベース1708とを有する。データベース1708は、フィールドデータ蓄積部1710とシャッタ修理情報蓄積部1712とを有する。
【0141】
通信部1702は、ネットワークNWとサーバ1700とを接続可能とするものであれば、カメラ10が有する通信部108と同様、任意のものを利用可能である。本発明の第3の実施の形態において、ネットワークNWはインターネットを含むものとする。
【0142】
カメラ認証部1704は、ネットワークNWに接続されたカメラ10から送出される機種ID情報や個体識別ID情報、さらに必要があればパスワード等をもとに認証作業を行い、カメラ10、あるいはそのユーザに対するサービスの提供を許可する処理を行う。認証作業に成功した場合、カメラ認証部1704は処理部1706にカメラ10を特定する情報を出力する。認証作業が成功しなかった場合、カメラ認証部1704は通信部1702を介し、カメラ10に対して認証がうまく行われなかった旨を通知する情報を送信する。
【0143】
カメラ10の認証がうまく行われた後、処理部1706はカメラ10から送出される露光量誤差情報を受信する。この露光量誤差情報には、カメラ10を使用し始めてからの累計レリーズ回数、露光量誤差ΔEvに関連する情報が含まれる。
【0144】
処理部1706は、上記露光量誤差情報をもとに統計処理を行なって得られるシャッタ精度変化特性データをフィールドデータ蓄積部1710に記憶する。シャッタ精度変化特性データとは、様々なユーザの手に渡ったカメラ10から集められた露光量誤差情報を統計処理して得られるデータである。このシャッタ精度変化特性データにより、カメラ10に組み込まれるシャッタの累計レリーズ回数が増すにつれてシャッタ精度が傾向としてどのような変化をしてゆくかを予測することが可能となる。
【0145】
シャッタ精度変化特性データは、ネットワークNWを介してサーバ1700に随時接続される様々なユーザのカメラ10から送出された露光量誤差情報が反映されたものである。したがって、シャッタ精度変化特性データは、カメラ10が市場に提供され始めてからの時間経過に伴って日々集積される情報が反映された、確度の高いものとすることが可能である。
【0146】
処理部1706は、フィールドデータ蓄積部1710に記憶されるシャッタ精度変化特性情報、シャッタ修理情報蓄積部1712に記憶される情報を露光量誤差改善情報として、認証に成功したカメラ10に送出する処理を行う。
【0147】
以下、システムコントローラ100Bによって行われる処理について説明する。本発明の第3の実施の形態においても、図7を参照して説明したのと同様、カメラ10の撮影動作に伴う処理が行われる。そしてシステムコントローラ100Bは、累計シャッタレリーズ回数をもとに、シャッタ精度保全処理を行うレリーズ回数に達したか否かを判定される。
【0148】
そして、シャッタ保全処理を行うレリーズ回数に達したと判定されると、システムコントローラ100Bは画像表示部124にシャッタ精度保全処理を行うかどうかの判定をユーザに促すための表示を行う。シャッタ精度保全処理をユーザが希望していると判定されると、以下で説明するシャッタ精度保全処理が行われる。
【0149】
図18、図19は、システムコントローラ100Bによって実行されるシャッタ精度保全処理手順を概略的に示すフローチャートである。なお、図18、図19に示される処理は、図9の処理に続いて行われる処理手順の部分のみを示している。つまり、本発明の第3の実施の形態においても、シャッタ精度保全処理として図9に示される処理が行われ、図9の処理に続いて図18、図19の処理が行われる。
【0150】
図9、図18、図19に示される処理が実行される際の前提として、カメラ10は図4を参照して説明した状態に設定されているものとする。つまり、本発明の第1、第2の実施の形態と同様、カメラ10は三脚TP等によって固定され、時間的に輝度の安定している静止物体(テストチャートTP)に向けられているものとする。また、カメラ10が連写モード(レリーズスイッチを押下している間、撮影動作が連続して行われるモード)を有するものである場合、この連写モードに設定されることが較正動作を短時間のうちに完了させる上で望ましい点も本発明の第1、第2の実施の形態と同様である。
【0151】
図9に示される処理については本発明の第2の実施の形態で説明したものと同じであるのでその説明を省略する。
【0152】
図9に示される処理に続き、図18、図19に示すフローチャートの処理が行われる。図18のフローチャートにおいて、S1400からS1408までの処理は、本発明の第2の実施の形態で図14のフローチャートを参照して説明したのと同じであるので図14のものと同じステップ番号を付してその説明を省略する。そして、S1404での判定が否定された場合の分岐先であるS1810の処理から説明をする。
【0153】
S1404での判定が否定された場合、つまりシャッタ精度が良好でないと判定された場合の分岐先であるS1810において、システムコントローラ100Bはサーバ1700に機種ID、個体識別IDに関連する情報を送出する。
【0154】
S1812においてシステムコントローラ100Bは、サーバ1700から送出される情報を受信する。そして、この情報に基づき、システムコントローラ100Bは当該カメラ10がサーバ1700によって認証されたか否かの判定を行う。
【0155】
S1814での判定が肯定された場合、システムコントローラ100BはS1816において、露光量誤差情報として累計レリーズ回数に関連する情報と露光量誤差ΔEvに関連する情報とをサーバ1700に送出する。S1814での判定が否定された場合、処理はS1820に分岐する。
【0156】
システムコントローラ100BはS1818において、シャッタ精度誤差改善処理用の情報をサーバ1700から受信し、カメラ10の不揮発性メモリ110に記憶されている古い情報をS1818で受信した情報に置き換える。この結果、図15に例示されるものに対応するようなデータテーブルの内容が更新される。また、S1818でサーバ1700から受信する情報の中には、後で説明するアドバイス情報も含まれる。
【0157】
S1820においてシステムコントローラ100Bは、図15に例示されるものに対応するようなデータテーブルから、S1400で導出された露光量誤差ΔEvの平均値に対応するTv制限値を決定する。
【0158】
S1822においてシステムコントローラ100Bは、Tv制限値変更の処理(露出プログラムの特性を変更する処理)を実行するか否か、ユーザに確認するための処理を行う。このS1822の処理に対応して、画像表示部124には図11の(b)に例示されるような表示がなされる。本発明の第2の実施の形態で説明したのと同様、図11の(b)のような表示がなされる際に、Tv制限値変更後に使用可能なシャッタ開放時間中の最短値を表示してもよい。
【0159】
システムコントローラ100BはS1824において、ユーザはTv制限値変更の処理をせずにカメラ10をそのまま使用し続けるためのアドバイスを希望しているか否かの判定を行う。具体的には、図20に例示されるような表示を画像表示部124に表示し、「はい」、「いいえ」の表示のうち、ユーザが操作スイッチ104を操作して「はい」を選択し、続いて選択を確定する操作をしたことが検出されると、S1824の判定が肯定される。
【0160】
S1824の判定が肯定された場合の分岐先であるS1828においてシステムコントローラ100Bは、アドバイス表示処理を行う。つまり、S1818でサーバ1700から受信したシャッタ精度誤差改善処理用の情報に含まれるアドバイス情報に基づいてアドバイス表示処理が行われる。サーバ1700は、多数のユーザが所有するカメラ10とネットワークNWを介して接続した際に、それぞれのカメラ10から送出される露光量誤差情報中から露光量誤差ΔEvに関連する情報、カメラ10の累計レリーズ回数等を抽出して記録する。
【0161】
このようにして、個々のカメラ10から得られたフィールドデータを収集した結果に基づいて、より的確なアドバイスをカメラ10のユーザに提供することができる。その一例としては、「お客様がご使用中のカメラは1/8000秒において+0.3Ev程度の露出誤差が見込まれますので、マイナス0.3Evの露出補正をかけてください。」といったアドバイスが可能である。あるいは、「大事な撮影をする前には事前に1/8000秒、1/4000秒のシャッタ開放時間でテスト撮影をしておきましょう。」といったアドバイスが可能である。無論、露光量誤差ΔEvが小さい場合であっても、「お客様がご使用中のカメラは、現在のところ正常に作動していますが、相当の回数にわたってシャッタが切られていますので、オーバーホールをお勧めします。」といったアドバイスも可能である。
【0162】
S1830においてシステムコントローラ100Bは、ユーザが「閉じる」の操作をしたか否かの判定をし、この判定が否定される間はS1830の処理を繰り返し、S1830の判定が肯定されるとシャッタ精度保全の処理を完了する。
【0163】
S1824での判定が否定された場合、すなわちユーザはカメラ10をそのまま使用し続けるためのアドバイスを希望していない場合に処理はS1840に分岐する。
【0164】
S1840においてシステムコントローラ100Bは、ユーザがTv制限値の変更(露出プログラムの特性の変更)を実行することを希望しているか否かを判定する。例えば、図11の(b)に示されるような「はい」、「いいえ」の表示のうち、ユーザが操作スイッチ104を操作して「はい」を選択し、この選択を確定する操作をしたことが検出されると、S1840の判定が肯定される。S1840の判定が肯定された場合、処理はS1842に進み、調整用パラメータ112内に記録されているTv制限値の情報を更新する処理が行われる。S1842の処理が終わると一連のシャッタ精度保全処理が完了する。
【0165】
S1840での判定が否定された場合の分岐先であるS1844においてシステムコントローラ100Bは、図11の(c)に例示されるような、サポートセンターへの連絡を促すメッセージを連絡先情報などとともに画像表示部124に表示する処理を行う。
【0166】
S1846においてシステムコントローラ100Bは、ユーザが「閉じる」の操作をしたか否かの判定をし、この判定が否定される間はS1846の処理を繰り返し、S1846の判定が肯定されるとシャッタ精度保全の処理を完了する。例えば、図11の(c)に示されるような「閉じる」の文字が画像表示部124に表示されていて、この表示を見たユーザが操作スイッチ104を押下する操作をしたことが検出されると、S1846の判定が肯定されて一連のシャッタ精度保全処理が完了する。
【0167】
本発明の第3の実施の形態によれば、様々なユーザによって使用されているカメラ10の累積レリーズ回数や露光誤差ΔEvに関連する情報がサーバ1700に集められるので、製品開発時の信頼性テストからは得ることのできない、様々な使用環境や使い方に応じたシャッタ精度変化特性を得ることが可能となる。このようにして集められた情報に基づいて、例えば、図21に示されるようなシャッタ精度変化特性を求めることができる。
【0168】
いま、あるユーザが使用しているカメラの累計レリーズ回数が15万回に達し、上述したような一連のシャッタ精度保全処理が行われたとする。サーバ1700で統計的処理がなされた結果、累計レリーズ回数15万回で生じる露光量誤差は0.34Ev程度であることが図21のグラフから読みとれる。システムコントローラ100Bは、次のシャッタ精度保全処理を行うタイミングとして、露光量誤差が例えば現状からさらに0.15Ev変化する時点と決定することができる。
【0169】
図21に例示される特性からは、累計レリーズ回数が17万5千回に達したときに、露光量誤差が現状からさらに0.15Ev変化することが読みとれる。システムコントローラ100Bは、上述のようにして、累計レリーズ回数が17万5千回に達したときに次のシャッタ精度保全処理を予定することが可能となる。
【0170】
以上に説明した本発明の第3の実施の形態によっても第1あるいは第2の実施の形態と同様、輝度箱やシャッタ試験器、あるいは像面露光量計等の機器を用いることなく、シャッタ精度の確認と、必要に応じてTv制限値の更新処理をすることが可能となる。これにより、想定される寿命を過ぎてカメラを使用しても、継続して適正な露光量の画像を得ることが可能となる。
【0171】
本発明の第3の実施の形態に係るカメラもまた、フォーカルプレンシャッタを有するものだけではなく、遮光部材を開成させてから閉成させるまでの時間間隔を調節することにより撮像素子の受光面に入射する被写体光の光量を制御可能な全ての形式のシャッタを有するものとすることが可能である。
【0172】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の改良・変更が可能であることは勿論である。
【0173】
本発明の態様を以下に示す。
【0174】
(1) 撮像素子と、
遮光部材を開成させてから閉成させるまでの時間間隔を調節することにより、前記撮像素子の受光面に入射する被写体光の光量を制御することが可能に構成されるシャッタと
を備えるカメラであって、
被写体の輝度を検出する測光部と、
撮影レンズの絞り値、シャッタ開放時間、および前記撮像素子の設定感度を含む、複数の露出パラメータのうち、前記シャッタ開放時間を含む少なくとも二つの露出パラメータを、予め定められた露出プログラムに従い、前記測光部で検出された被写体の輝度に応じて決定する露出パラメータ決定部と、
予め定められた基準シャッタ開放時間を含む露出パラメータで被写体を撮影して得られた画像から露光量誤差を求める露光量誤差導出部と、
前記露光量誤差が誤差許容値を超す場合に、前記測光部で検出された被写体の輝度に応じて前記露出パラメータ決定部で決定される露出パラメータ中に含まれるシャッタ開放時間が、制御目標EV値の大小によらず前記基準シャッタ開放時間よりも常に長くなるように前記露出プログラムの特性を変化させる処理を行う露出プログラム変更部と
を有することを特徴とするカメラ。
【0175】
(2) 撮像素子と、
遮光部材を開成させてから閉成させるまでの時間間隔を調節することにより、前記撮像素子の受光面に入射する被写体光の光量を制御することが可能に構成されるシャッタと、
被写体の輝度を検出する測光部と、
撮影レンズの絞り値、シャッタ開放時間、および前記撮像素子の設定感度を含む、複数の露出パラメータのうち、前記シャッタ開放時間を含む少なくとも二つの露出パラメータを、予め定められた露出プログラムに従い、前記測光部で検出された被写体の輝度に応じて決定する露出パラメータ決定部と
を備えるカメラの制御方法であって、
予め定められた基準シャッタ開放時間を含む露出パラメータで被写体を撮影して得られた画像から露光量誤差を求めることと、
前記露光量誤差が誤差許容値を超す場合に、前記測光部で検出された被写体の輝度に応じて前記露出パラメータ決定部で決定される露出パラメータ中に含まれるシャッタ開放時間が、制御目標EV値の大小によらず前記基準シャッタ開放時間よりも常に長くなるように前記露出プログラムの特性を変化させることと
を有することを特徴とする制御方法。
【0176】
本発明の上記態様によれば、予め定められた基準シャッタ開放時間を含む露出パラメータで被写体を撮影して得られた画像から求められた露光量誤差が誤差許容値を超す場合に、制御目標EV値の大小によらず、シャッタ開放時間が基準シャッタ開放時間よりも常に長くなるように露出プログラムの特性を変化させる処理を行う。カメラの使用が進むにつれてシャッタ精度が変化してしまった場合でも、上記のように処理を行うことにより、輝度箱や特別な調整装置等を用いてカメラの調整をすることなく、好ましい撮影結果を得ることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0177】
本発明は、遮光部材を開成させてから閉成させるまでの時間間隔を調節することにより撮像素子の受光面に入射する被写体光の光量を制御することが可能に構成されるシャッタを有するものであれば、デジタルスチルカメラのみならず、静止画記録機能を有する様々な画像記録装置に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0178】
【図1】本発明が適用されるデジタルカメラの内部構成を説明するブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るカメラが有するシステムコントローラ内の機能ブロックを説明するブロック図である。
【図3】フォーカルプレンシャッタにおける先幕、後幕係止解除信号の変化タイミングと先幕、後幕走行タイミングとの関係を説明するタイミング図であり、(a)は正常に作動している場合の例を、(b)はシャッタ秒時誤差を生じていてシャッタ開放時間が比較的短い場合の例を、(c)はシャッタ秒時誤差を生じていてシャッタ開放時間が(b)に示される例よりも長い場合の例を説明する図である。
【図4】シャッタ秒時の較正を行う際のカメラおよびテストチャートの設置例を説明する図である。
【図5】画素が二次元配列されるデジタル画像信号を概念的に説明する図である。
【図6】カメラの露光プログラム線図の一例を示す図であり、(a)はTv制限値が設定されていない場合のプログラム線図を、(b)はTv制限値が12に設定された場合のプログラム線図を、(c)はTv制限値が11に設定された場合のプログラム線図を、それぞれ示す図である。
【図7】カメラ1で撮影動作が実行されるときにシステムコントローラにより実行される処理を示すフローチャートである。
【図8】シャッタ精度の保全処理を行うことをユーザに推奨する表示例を説明する図である。
【図9】システムコントローラによって実行されるシャッタ精度保全処理の手順を説明する概略フローチャートである。
【図10】図9に示される処理手順に続く処理手順を説明する概略フローチャートである。
【図11】シャッタ精度保全処理の結果を表示する例を説明する図であり、(a)は露出プログラムの特性変更が必要無い場合の、(b)は変更することが望ましい場合の、(c)はサポートセンターへの連絡が推奨される場合の表示例を説明する図である。
【図12】シャッタ精度保全処理で検出された露光量誤差と適用するTv制限値との関係を規定するテーブルの例を示す図である。
【図13】本発明の第2の実施の形態に係るカメラ中の構成要素中、第1の実施の形態に係るカメラの構成要素と異なる点を中心に示すブロック図である。
【図14】本発明の第2の実施の形態に係るカメラ中のシステムコントローラによって実行されるシャッタ精度保全処理の手順を説明する概略フローチャートである。
【図15】シャッタ精度保全処理で検出された露光量誤差ΔEvと適用するTv制限値との関係を規定するテーブルの例を示す図である。
【図16】本発明の第3の実施の形態に係るカメラ中の構成要素中、第1、あるいは第2の実施の形態に係るカメラの構成要素と異なる点を中心に示すブロック図である。
【図17】本発明の第3の実施の形態に係るカメラがネットワークを介してサーバに接続される様子を説明する図である。
【図18】システムコントローラによって実行されるシャッタ精度保全処理の手順を説明する概略フローチャートである。
【図19】図18に示される処理手順に続く処理手順を説明する概略フローチャートである。
【図20】シャッタ精度保全処理結果の表示例を説明する図であり、露光量誤差を生じているカメラを継続して使用する際のアドバイスを表示することをユーザが欲しているか否かを確認する表示例を示す図である。
【図21】サーバに蓄積されたフィールドデータに基づいて求められる、カメラの累積レリーズ回数と予想される露光量誤差との関係の例を概念的に示すグラフである。
【符号の説明】
【0179】
10 … デジタルカメラ
100、100A、100B … システムコントローラ
102 … 情報表示部
104 … 操作スイッチ
106 … バス
108 … 通信部
110 … 不揮発性メモリ
112 … 調整用パラメータ
114 … 制御プログラム
116 … DRAM
120 … 画像信号処理部(DSP)
122 … 表示制御部
124 … 画像表示部
126 … 画像データ記録媒体
130 … アナログ・フロントエンド
132 … タイミング・ジェネレータ
134 … 撮像素子
140 … シャッタ
142 … 先幕係止マグネット
144 … 後幕係止マグネット
146 … シャッタチャージ機構
150 … メインミラー
152 … ミラー駆動・シャッタ係止機構
160 … ペンタプリズム
164 … 測光部
180 … 撮影レンズ
182 … レンズエレメント
184 … 絞り装置
186 … 絞り駆動部
188 … レンズ駆動部
200 … シャッタ時間設定部
202 … シャッタタイミング制御部
204 … 実露光量誤差導出部
206 … シャッタ精度低下告知処理部
208 … 露出パラメータ決定部
210 … 露出プログラム変更部
212 … 実露光量比導出部
1602 … 露光量誤差情報送出部
1604 … 露光量誤差改善情報受信部
1700 … サーバ
1702 … 通信部
1704 … カメラ認証部
1706 … 処理部
1708 … データベース
1710 … フィールドデータ蓄積部
1712 … シャッタ修理情報蓄積部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像素子と、
遮光部材を開成させてから閉成させるまでの時間間隔を調節することにより、前記撮像素子の受光面に入射する被写体光の光量を制御することが可能に構成されるシャッタと
を備えるカメラであって、
被写体の輝度を検出する測光部と、
撮影レンズの絞り値、シャッタ開放時間、および前記撮像素子の設定感度を含む、複数の露出パラメータのうち、前記シャッタ開放時間を含む少なくとも二つの露出パラメータを、予め定められた露出プログラムに従い、前記測光部で検出された被写体の輝度に応じて決定する露出パラメータ決定部と、
時間的に略一定の輝度を有する静止物体を、第1のシャッタ開放時間で撮影して得られる第1の画像と、前記静止物体を第2のシャッタ開放時間で撮影して得られる第2の画像との比較に基づいて実露光量比を導出する実露光量比導出部と、
前記第1のシャッタ開放時間による理論上の露光量と前記第2のシャッタ開放時間による理論上の露光量との比に基づいて求められる理論上の露光量比と、前記実露光量比導出部で導出された前記実露光量比との比較結果に基づいて露光量誤差を求め、前記露光量誤差が誤差許容値を超す場合に前記露出プログラムを修正する処理を行う露出プログラム変更部と
を有することを特徴とするカメラ。
【請求項2】
前記カメラはさらに、
外部情報処理装置との通信を可能とする通信部と、
当該カメラの機種を特定する情報である機種特定情報と、前記露光量誤差に関する情報である露光量誤差情報とを前記外部情報処理装置に送出する処理を行う露光量誤差情報送出部と、
前記露光量誤差情報送出部で送出した当該カメラの前記機種情報及び露光量誤差情報に応じて前記外部情報処理装置から送出される露光量誤差改善情報を受信する処理を行う露光量誤差改善情報受信部と
をさらに有し、
前記露出プログラム変更部は、前記露光量誤差改善情報に基づいて前記露出プログラムを修正する処理を行うように構成されることを特徴とする請求項1に記載のカメラ。
【請求項3】
前記第2のシャッタ開放時間は、前記第1のシャッタ開放時間の2倍に設定されることを特徴とする請求項1または2に記載のカメラ。
【請求項4】
前記第1のシャッタ開放時間は、当該カメラで設定可能な最短のシャッタ開放時間であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載のカメラ。
【請求項5】
前記シャッタを開閉させて被写体を撮影するモードである通常撮影モードと、
前記露出プログラム変更部が前記理論上の露光量比と前記実露光量比との比較結果に基づいて前記露出プログラムを修正する処理を行うモードである調整モードと
をさらに有することを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載のカメラ。
【請求項6】
前記シャッタの累積動作回数を計数するカウンタ部と、
前記カウンタ部での計数結果が予め定められた回数に達したときに、前記調整モードでの動作を実行する事を当該カメラのユーザに推奨するための告知を行う告知部と
をさらに有することを特徴とする請求項5に記載のカメラ。
【請求項7】
撮像素子と、
遮光部材を開成させてから閉成させるまでの時間間隔を調節することにより、前記撮像素子の受光面に入射する被写体光の光量を制御することが可能に構成されるシャッタと、
被写体の輝度を検出する測光部と、
撮影レンズの絞り値、シャッタ開放時間、および前記撮像素子の設定感度を含む、複数の露出パラメータのうち、前記シャッタ開放時間を含む少なくとも二つの露出パラメータを、予め定められた露出プログラムに従い、前記測光部で検出された被写体の輝度に応じて決定する露出パラメータ決定部と
を備えるカメラの制御方法であって、
時間的に略一定の輝度を有する静止物体を、第1のシャッタ開放時間で撮影して第1の画像を得ることと、
前記静止物体を、第2のシャッタ開放時間で撮影して第2の画像を得ることと、
前記第1の画像と前記第2の画像とから、前記第1のシャッタ開放時間で得られた露光量と前記第2のシャッタ開放時間で得られた露光量の比である実露光量比を導出することと、
前記第1のシャッタ開放時間によって得られる理論上の露光量と前記第2のシャッタ開放時間によって得られる理論上の露光量との比に基づいて理論上の露光量比を導出することと、
前記実露光量比と前記理論上の露光量比との比較結果に基づいて露光量誤差を求め、前記露光量誤差が誤差許容値を超す場合に前記露出プログラムを修正することと
を有することを特徴とする制御方法。
【請求項8】
前記カメラは、外部情報処理装置との交信を可能とする通信部をさらに有し、
前記制御方法はさらに、
当該カメラの機種を特定する情報である機種特定情報と、前記露光量誤差に関する情報である露光量誤差情報とを前記外部情報処理装置に送出することと、
当該カメラから送出された前記機種情報及び露光量誤差情報に応じて前記外部情報処理装置から送出される露光量誤差改善情報を受信することと
をさらに有し、
前記露出プログラムを修正することは、前記露光量誤差が誤差許容値を超す場合に、前記露光量誤差改善情報に基づいて前記露出プログラムを修正する
ことを特徴とする請求項7に記載の制御方法。
【請求項9】
前記第2のシャッタ開放時間として、前記第1のシャッタ開放時間の2倍に設定することをさらに有することを特徴とする請求項7または8に記載の制御方法。
【請求項10】
前記第1のシャッタ開放時間として、当該カメラで設定可能な最短のシャッタ開放時間を設定することをさらに有することを特徴とする請求項7から9のいずれか1つに記載の制御方法。
【請求項11】
前記シャッタを開閉させて被写体を撮影するモードである通常撮影モードで当該カメラを作動させることと、
前記理論上の露光量比と前記実露光量比との比較結果に基づいて前記露出プログラムを修正することを行うモードである調整モードで当該カメラを作動させることと
をさらに有することを特徴とする請求項7から10のいずれか1つに記載の制御方法。
【請求項12】
前記シャッタの累積動作回数を計数することと、
前記累積動作回数の計数結果が予め定められた回数に達したときに、前記調整モードでの動作を当該カメラのユーザに提案するための告知を行うことと
をさらに有することを特徴とする請求項11に記載の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2010−226221(P2010−226221A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−68635(P2009−68635)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.EEPROM
【出願人】(504371974)オリンパスイメージング株式会社 (2,647)
【Fターム(参考)】