説明

カーナビゲーションシステム

【課題】走行距離や走行時間、あるいは走りやすさなどの利便性を残しながら燃費向上にも寄与する。
【解決手段】サーバ3の制御部16は、各リンクにおける固有の燃料消費量を予測し、この予測した燃料消費量と車両固有の実用燃費とから当該リンク固有のエコ係数を算出し、前記各リンクの前記リンクコストを当該エコ係数で調整してエコ付きリンクコストを作成するから、各リンクのごとに当該リンクに応じた燃料消費量の重みづけをした固有のエコ付きリンクコストを得ることができ、そして、このエコ付きリンクコストと、ノードコストとを用いて目的地までの推奨する経路をダイクストラ法により計算する。これにより、燃料消費低減のみを考慮した経路とならず、燃料消費量を加味しない従来からの走行時間や走行距離について利便性を考慮しつつ燃料消費も低減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、指定された目的地までの推奨する経路を探索する経路探索手段を備えるカーナビゲーションシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車に搭載されるカーナビゲーションシステムは、自己の現在位置を検出し表示装置に道路地図に重ね合わせて表示するロケーション機能や、ユーザが指定した目的地までの推奨する経路を計算により探索し、案内する経路探索、案内機能を備えている。そのうち経路探索機能による経路の計算には、ダイクストラ法が一般に用いられている。この経路計算は、簡単にいうと、指定された優先条件などに応じて、出発地(現在地)から目的地に向けて、次に到達できる交差点(ノード)までの道路(リンク)のコストの計算(積算)を順次行なっていき、目的地までが最小コストとなる経路を選ぶ手法である。前記コストは、各リンクにおける、道路長さや道路種別、道路幅、有料無料の別、渋滞度などと、各ノードにおける信号機の有無や右左折などから、所定の重み付けがなされて計算されるようになっている。
【0003】
ところで、以前より、ガソリンなどの燃料の消費を抑えると共に、CO2などの排ガスの低減を図ろうとするいわゆるエコ指向が強まってきており、従来のカーナビゲーション装置としても、最少燃料経路を探索する技術がある(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−2553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来のカーナビゲーション装置では、ある経路の燃料消費量を予測あるいは取得し、この燃料消費量のみをコストとして使用して上記ダイクストラ法で経路を探索するため、消費燃料は少なくなるものの、かえって走りにくい経路が探索されたり、又は走行時間や走行距離が予想以上に長くなったりすることがある。
【0006】
本発明は上述の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、走行距離や走行時間、あるいは走りやすさなどの利便性を残しながら燃費向上にも寄与できるカーナビゲーションシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1のカーナビゲーションシステムによれば、エコ係数算出手段により、各リンクにおける固有の燃料消費量を予測し、この予測した燃料消費量と車両固有の実用燃費とから当該リンク固有のエコ係数を算出し、エコ付きリンクコスト作成手段により、前記各リンクの前記リンクコストを当該エコ係数で調整してエコ付きリンクコストを作成するから、各リンクのごとに当該リンクに応じた燃料消費量の重みづけをした固有のエコ付きリンクコストを得ることができ、そして、経路探索手段が、このエコ付きリンクコストを用いて目的地までの推奨する経路をダイクストラ法により計算するから、燃料消費低減のみを考慮した経路とならず、燃料消費量を加味しない従来からの走行時間や走行距離について利便性を考慮しつつ燃料消費も低減できる。
【0008】
つまり、あるリンクのコストを、単純に燃料消費量のみで重み付けしていくと、従来のように、走行時間が過度に長くなったり、また走行距離が過度に長くなったりするが、走行時間や走行距離の最適化に適った従前のリンクコストをベースにして、このリンクコストを、当該リンクの燃料消費量予測値に相関するリンク固有の前記エコ係数により調整するから、従来からの走行時間や走行距離について利便性を考慮しつつ燃料消費も低減できるものとなる。
【0009】
又、請求項2においては、変更可能な補正係数を備え、前記エコ係数をこの補正係数により補正可能としている。これによれば、従来のリンクコスト係数とエコ係数との重み付け調整をこの変更可能な補正係数により調整可能となる。
【0010】
又、請求項3においては、この補正係数を特定条件で変更するようにしている。これによれば、推奨経路に特定条件としての特定の道路種別や、特定走行区域が含まれるときに、当該特定走行区域でのエコ係数を補正することで、特定条件以外での走行時では、燃料消費量低減優先度を大であったものを、特定条件での走行時に燃料消費量低減優先度をやや低める(従来からの走行時間や走行距離について利便性を優先する)などの変更ができる。
【0011】
又、請求項4においては、前記エコ係数算出手段は、リンクにおける固有の燃料消費量をエンジン回転数、補機作動、道路勾配、タイヤ転がり抵抗、運転の仕方、風圧の少なくとも一つの要素から予測するようにしている。これによれば、当該リンクに合致した燃料消費量を予測できる。
【0012】
請求項5においては、前記エコ付きリンクコスト作成手段がリンクコストに前記エコ係数を乗じてエコ付きリンクコストを算出するようにしている。これによれば、エコ付きリンクコストの算出が極めて容易である。
又、このエコ付きリンクコストは、前記エコ係数にリンク長さを乗じて、エコ定数を算出し、このエコ定数をリンクコストに加算してエコ付きリンクコストを算出するようにしても良い(請求項6)。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態を示すもので、カーナビゲーションシステムの電気的構成を概略的に示すブロック図
【図2】サーバの制御部が実行する処理手順を示すフローチャートで、(a)メインルーチンを示し、(b)、(c)は夫々サブルーチンを示す
【図3】リンク及びノードを模式的に示す図
【図4】ノードにおける進入コスト及び退出コストを概念的に示す図
【図5】エコ付きリンクコストを用いた経路探索を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を具体化した一実施形態について、図面を参照しながら説明する。尚,本実施形態は、車両の出発地から目的地までの推奨する経路を経路案内センタにおいて演算するようにした、いわゆるセンタ計算型のカーナビゲーションシステム1に本発明を適用したものである。
図1は、本実施形態に係るカーナビゲーションシステム1の構成を概略的に示している。このカーナビゲーションシステム1は、車両に搭載されるナビゲーション装置2と、サービスセンタ(経路案内センタ)に設けられるサーバ3とを備えて構成される。
【0015】
前記ナビゲーション装置2は、コンピュータ(CPU)を主体として構成され全体を制御する制御装置4を備えると共に、その制御装置4に接続された、外部との無線通信を行う通信装置5、自車位置を検出するための位置検出部6、例えばフルカラー液晶ディスプレイからなり表示手段として機能する表示装置7、タッチパネルやメカスイッチを含む操作スイッチ群8、音声出力装置9、地図データベース10等を備えて構成されている。
【0016】
前記位置検出部6は、GPS用の人工衛星からの送信電波に基づいて自車両の位置を検出(測位)するGPS(Global Positioning System )のためのGPS受信機13、自車両の回転角速度を検出するジャイロセンサ14、車速度センサ15を含んでいる。前記制御装置4は、そのソフトウエア構成(及びハードウエア構成)により、前記位置検出部6を構成する各センサ13〜15からの入力に基づいて、自車両の現在位置(絶対位置)、進行方向、速度や走行距離、現在時刻等を高精度で検出する。
【0017】
そして、その自車の現在位置、及び、前記地図データベース10から得られる地図データに基づいて、前記表示装置7の画面に、自車周辺の道路地図と共に自車の現在位置(及び進行方向)を重ね合せて表示させるロケーション機能を実現する。この場合、一般に、ロケーション機能を実現するにあたっては、自車の位置を、表示される電子地図上の道路に乗せるために、自車の移動軌跡と道路地図データ中の道路形状とを比較照合して、現在走行中の道路を推測するマップマッチングが行われる。
【0018】
前記地図データベース10は、例えば日本全土の道路地図データや、それに付随する、各種施設や店舗等の施設データ等を記憶するものである。前記道路地図データは、地図上の道路を、交差点等をノードとして複数の部分に分割し、各ノード間の部分をリンクとして規定したリンクデータとして与えられる。このリンクデータは、リンク固有のリンクID(識別子)、リンク長、リンクの始点,終点(ノード)の位置データ(経度,緯度)、角度(方向)データ、道路幅、道路種別などのデータを含んで構成される。また、道路地図を表示装置の画面上に再生(描画)するためのデータも含まれている。
【0019】
そして、このナビゲーション装置2(制御装置4)は、前記通信装置5により、例えば、図示しない無線基地局及びインターネット等の通信ネットワークを介して、サービスセンタのサーバ3との間で通信を行うようになっている。前記通信装置5としては、携帯電話機、DSRC、無線LANなど様々なものを採用することができる。この場合、ユーザの操作スイッチ群8の操作に基づいて、サーバ3に対し、現在地(出発地)及び目的地のデータ並びに自車両(車体)IDなどのデータを通信装置5により送信し、また、サービスセンタのサーバ3において演算された推奨経路を構成する経路案内データを通信装置5により取得(受信)する。
【0020】
ナビゲーション装置2(制御装置4)は、サーバ3から取得した経路案内データに基づいて経路案内を実行する。周知のように、この経路案内は、表示装置7の画面に、道路地図に重ね合わせて走行すべき経路を表示すると共に、自車位置が所定のポイントに至ったときに、音声出力装置9により案内音声を出力することにより行われる。これにて、ユーザにより指定された目的地までの推奨する走行経路を探索する経路探索機能が実現されるようになっている。
【0021】
一方、図1に示すように、前記サービスセンタのサーバ3は、コンピュータを主体として構成された制御部16を備えると共に、その制御部16に接続された、外部との間で無線通信を行う通信手段たる通信装置17、経路探索に関連する各種情報を記憶する情報記憶部18、地図データベース19などを備えて構成されている。前記通信装置17は、前記ナビゲーション装置2の通信装置5との間の通信を行なうようになっている。このとき、上記のように、通信装置17は、通信装置5との通信により、現在地(出発地)及び目的地のデータを受信すると共に、探索された推奨する経路の経路案内データを送信するようになっている。
【0022】
また、前記通信装置17は、例えば種々のサーバ20、VICSセンタ21、他の車両等から送信される、道路交通情報(渋滞、事故、工事、車線規制、交通規制などの情報)、気象情報(天候、風向き、路面状況)等の経路探索に有用な最新のデータを受信し、それら各種データが情報記憶部18に蓄積されるようになっている。前記地図データベース19には、経路探索用の最新の道路地図データが記憶されている。この道路地図データは、上記と同様に、地図上の交差点などをノードとして道路を複数の部分に分割し、各ノード間の部位分をリンクとして規定したリンクデータとして与えられ、リンクデータは、リンクID、リンク長、リンクの始点、終点の位置データ、角度(方向)データ、道路幅、道路種別等のデータを含んで構成される。
【0023】
前記制御部16は、地図データベース19の道路地図データ(リンク、ノードのデータ)を用いて、受信した出発地(現在地)から目的地までの推奨する経路を演算により求める(探索する)ようになっており、経路探索手段として機能する。この経路の演算には、例えば、周知のダイクストラ法が用いられ、出発地から目的地までのコストが最小となる走行経路が求められる。また、この経路探索の際には、上記情報記憶部18に蓄積されている最新の道路交通情報などのデータが加味される。このとき、後述するように、本実施形態では、燃料消費量低減となる経路を探索することができるようになっている。推奨経路が求められると、経路案内データとしてナビゲーション装置2に送信される。
【0024】
ここで、経路探索において一般的に用いられるダイクストラ法について簡単に述べる。経路探索は、出発地(現在地)から目的地へ向けて、次に到達できる交差点(ノード)までの道路(リンク)の探索及びそのコスト(評価値)の計算を順次行なっていき、目的地までが最小コストとなる経路(リンク列)を求めることにより行われる。前記リンクのコスト及びノードのコストは、道路長や道路種別、車線数、道路幅、急カーブ、起伏(勾配)、信号、一時停止や踏切の有無、更には、車線規制、渋滞度、路面状況(凍結、積雪)等から、所定の計算式にて算出され、例えば他の条件が同一の道路(リンク)の場合には、道路長にほぼ比例して大きな値となるようになっている。また、交差点(ノード)において右左折を行う場合には、直進の場合よりもコストが大きくなる。
【0025】
さて、本実施形態では、地図データベース19中の経路探索用の道路データ(リンクデータ、ノードデータ)には、所定の(基準となる)コストが予め付与されているのであるが、燃料消費量低減と走りやすさ(走行距離が短い、走行時間が短い、複雑でない道路などが走りやすさの目安となる)を両立させる経路を探索する観点から、後述より明らかとなるが、リンクコストの変更がなされるようになっている。
【0026】
さて、前記制御部16は、ナビ装置2から経路探索開始コマンドを受け取ると、図2に示す制御処理を実行する。この場合ナビ装置2は、ユーザが設定した目的地と自車位置のデータ、さらに自車のID番号も自動的にサーバ3の制御部16に送信する。
【0027】
この図2(a)において、制御部16は、ステップS1で省燃費経路探索制御を実行する。この省燃費経路探索制御を図2(b)にサブルーチンとして示している。ステップT1においては、まず、全ノード情報を初期化する。すなわち、全てのノード値を「0」且つ「未確定」状態とする。そしてステップT2でノード値が全て「確定」状態になったか否かを判断し、最初の時点では「未確定」状態であるので、「NO」に従ってステップT3に移行し、車両現在位置周囲のノード値未確定のノードの中から最小ノード値を選択し、これを現ノードとする。
【0028】
そして、ステップT4で次のノードがあるか否かを判断し、次のノードがあればステップT5に移行して、コスト計算処理を行う。すなわち、現ノードから次ノードまでのリンクコスト及びノードコストを求める。このコスト計算処理の制御内容は、図2(c)にサブルーチンとして示している。
【0029】
図3は従来の経路探索道路リンク列L0を示しており、このリンク列L0のコストC(L0)は、ノードN1の退出コストCt(N1)と、リンクL1のコストC(L1)と、ノードN2の進入コストCs(N2)及び退出コストCt(N2)(Cs(N2)+Ct(N2)=C(N2)とする)と、リンクL2のコストC(L2)、ノードN3の進入・退出コストC(N3)、リンクL3のコストC(L3)とノードN4の進入コストCs(N4)とからなり、
C(L0)=Ct(N1)+C(L1)+C(N2)+C(L2)+C(N3)+C(L3)+Cs(N4) ・・・(1)
で示される。
【0030】
さて、図2(c)のステップU1においては、リンクの燃料消費量の予測値Qを計算する。これは、次のようにして行う。
まず、各リンクの燃料消費量の予測値は、エンジン回転数、車両補機(エアコンなど燃料消費につながる機器)、道路勾配、タイヤ転がり抵抗、運転の仕方、風圧の少なくとも一つの要素により予測する。上記エンジン回転数は道路種別と運転の仕方を考慮して設定され、高速道路は燃料消費量大、国道以下は小となる。又、加減速が多い運転の仕方をするドライバほど燃料消費量大となる。又、車両補機は車両情報から設定される。道路勾配は地図データから得られ、登り勾配が急であるほど燃料消費量大である。又、タイヤ転がり抵抗は、車両情報のタイヤ情報及び地図データからの路面情報により得られ、抵抗が大であるほど燃料消費量大である。又、風圧は車両情報と、予測した巡航速度から得られ、風圧が大であるほど燃料消費量大である。
【0031】
上記各リンクにおいてノードに依存する燃料消費量は、ノード進入に依存する燃料消費量(これは当該ノードでの停止確率と停止時間、アイドリング時のエンジン回転数と車両排気量の要素で算出する)とノード退出に依存する燃料消費量(これは発進時の加速抵抗の要素で算出する)とで予測する。前記停止確率が高い場合、停止時間が長い場合、アイドリング回転数高(エアコンやライトをつけている)や車両排気量大である場合にはそれぞれ燃料消費量大となる。
【0032】
上述の停止確率、停止時間は、交差点形態(地図データから取得できる)や、信号機の有無情報(地図データから取得できる)や、信号機動作形態、他車からのプローブ情報などから得ることができる。なお、これら停止確率、停止時間の取得方法は、この他種々ある。例えば信号機データは関係施設(警察など)から得ることもできるし、又、一旦停止や見通しが悪い交差点などの場所での停止確率や停止時間は現地調査や交通量調査結果から入手しても良い。又、ノードだけに限られず、リンクにおいて学校付近に横断歩道がある場合には登下校時において停止確率が増える。このリンクにおける停止確率もノードに入れ込んでも良い。
【0033】
上述のリンクにおける燃料消費量と当該リンクにおいてノードに依存する燃料消費量の合計予測値Qは、リンク列L0(リンクL1、L2、L3、ノードtN1(退出が考慮されたノード)、N2、N3、sN4(進入が考慮されたノード))においては、
QL0=QL1+QL2+QL3+QtN1+QN2+QN3+QsN4 ・・・(2)
となる。
【0034】
又、単一のリンクから成るリンク列を取り扱う場合において、その単一のリンクL(n)における燃料消費量予測値Qxは、
Qx=QL(n)+QtN(n)+QsN(n+1) ・・・(3)
となる。
【0035】
ステップU2では、上述のリンクにおける燃料消費量の上記予測値Qからエコ係数Eを算出する(エコ係数算出手段)。
E=Q/Q0 ・・・(4)
Q0=(D/G0)
G0:車両固有の実用燃費・・・カタログ燃費(10/15モード値)×k
k:適宜定められる係数
D:リンク長・・・地図データから取得。
【0036】
上記Qは、リンク列L0の場合には前記式(2)となり、又、単一リンクの場合には、前記式(3)となる。
ここで前記Qには、前記式(2)、(3)から分かるように、各リンクごとの固有の道路状況(道路種別、道路勾配、路面情報、交差点形態、信号機の有無情報)が含まれているから、各リンク固有の燃料消費量予測値となり、且つ前記カタログ燃費は車両情報から取得できるから、前記エコ係数Eは車両固有の値であって且つ各リンクごとの固有の係数(燃料消費量の目安)となる。
【0037】
次のステップU3では、エコ付きリンクコストC(Ln)´を算出(作成)する(エコ付リンクコスト作成手段)。この算出式を次式(5)で示す。
C(Ln)´=C(Ln)×E ・・・(5)
ここでC(Ln)は従来のリンクコストである。リンク列L0の場合のエコ付きリンクコストC(L0)´は、
C(L0)´=CL(1)×E(L1)+CL(2)×E(L2)+CL(3)×E(L3) ・・・(6)
となる。ここで、E(L1)、E(L2)、E(L3)は、各リンク固有のエコ係数であり、各リンクでの渋滞度が変わる場合があるので、各リンクで固有となる。
【0038】
次のステップU4で当該リンクもしくはリンク列に付随するノードのコストを前述したように計算する。リンク列L0では、前記式(1)から分かるように、Ct(N1)+C(N2)+C(N3)+Cs(N4)となり、単一のリンクでは、当該リンクでの退出コストCt(Nn)+進入コストCs(Nn+1)となる。
【0039】
そして、ステップT6に戻って、今回のコスト計算により次ノード値が今までより少ない値であれば、次ノードを更新するとともに、次ノードに接続するリンクのコスト計算が全て終了した場合には次ノードのノード値を「未確定」から「確定」に変更する。
【0040】
ステップT4でまだ次ノードがあれば(現ノードに接続するリンクで、コスト未計算のリンクがあれば)、前述のステップT5及びステップT6に移行する。つまり、目的地までの各ノード間のリンクコスト及びノードコストが計算されると、ステップT2→ステップT3→ステップT4→ステップT2のループを実行し、順次未確定のノードの中から最小ノード値のノードを選択して各エコ付きリンクコストC(Ln)´及びノードコストが最小の経路を確定してゆき、ノード値が全て確定したら経路探索を終了する(経路探索手段)。
【0041】
このように本実施形態によれば、制御部16におけるエコの係数算出手段により、各リンクにおける固有の燃料消費量Qを予測し、この予測した燃料消費量と車両固有の実用燃費とから当該リンク固有のエコ係数を算出し、そして、エコ付きリンクコスト作成手段により、各リンクのリンクコストを当該エコ係数Eで調整(乗算)して、エコ付きリンクコストC(Ln)´を作成するから、各リンクごとに、従来のリンクコストC(Ln)に当該リンクに応じた燃料消費量の重みづけをした固有のエコ付きリンクコストC(Ln)´を得ることができる。
【0042】
そして、制御部16における経路探索手段が、このエコ付きリンクコストC(Ln)´を用いて目的地までの推奨する経路をダイクストラ法により計算するから、燃料消費低減のみを考慮した経路とならず、燃料消費量を加味しない従来からの走行時間や走行距離について利便性を考慮しつつ、燃料消費も低減できる。
【0043】
つまり、図6は、従来のリンクコストによる経路計算と、本実施形態による経路計算との違いを説明するための図であり、この図6では、便宜上、二つのルートRa、Rbを例示しているが、実際には多数のルート候補がある場合もある。この図6に示すように、リンクL1、L2、L3の従来のコスト(便宜上ノードコストは省略する)をC(L1)=3、C(L2)=3、C(L3)=1、C(L4)=2、C(L5)=2、C(L6)=2とし、各リンクのエコ係数をE1、E2、E3、E4、E5、E6を、夫々、0.8、0.9、1.1、1.1、1.15、1.15とすると、従来のリンクコストを用いた場合においてはRbルートを設定するが、本実施形態では、エコ付きリンクコストC(Ln)´を用いるので、ルートRaを設定することになる。
【0044】
又、本実施形態においては、制御部16におけるエコ係数算出手段が、リンクにおける固有の燃料消費量をエンジン回転数、補機作動、道路勾配、タイヤ転がり抵抗、運転の仕方、風圧から予測するようにしたから、当該リンクにおける道路状況や停止及び加速状況に合致した燃料消費量を予測できると共に、当該ノードに合致した燃料消費量を予測できる。なお、この燃料消費量はこれらエンジン回転数、補機作動、道路勾配、タイヤ転がり抵抗、運転の仕方、風圧の少なくとも一つの要素から予測するようにしても良い。
【0045】
又、本実施形態によれば、リンクコストC(Ln)に前記エコ係数Eを乗じてエコ付きリンクコストC(Ln)´を算出するようにしている。これによれば、エコ付きリンクコストの算出が極めて容易である。
【0046】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、次のようにしても良い。
例えば、変更可能な補正係数αを備え、エコ係数をこの補正係数αにより補正可能としても良い。このようにすれば、従来のリンクコスト係数とエコ係数との重み付け調整をこの変更可能な補正係数により調整可能となる。
【0047】
又、上記補正係数αは、所定条件で変更するようにしても良い。例えば、所定条件としては目的地付近で補正係数適用という条件として、当該目的地付近ではエコ付きリンクコストC(Ln)´を上記補正係数で補正しても良い。すなわち、
C(Ln)´=C(Ln)×E×α
としても良い。
【0048】
これによれば、目的地付近では、燃料消費量低減優先度を大であったものを、燃料消費量低減優先度をやや低める(従来からの走行時間や走行距離について利便性を優先する)などの変更ができる。なお上記所定条件は適宜変更することができる。
【0049】
又、エコ付きリンクコストC(Ln)´は
C(Ln)´=C(Ln)+Et
Et=E×L
としても良い。Etはエコ定数、Lはリンク長を示す。
【0050】
すなわち、エコ付きリンクコストC(Ln)´を、前記エコ係数Eにリンク長さLを乗じて、エコ定数Etを算出し、このエコ定数EtをリンクコストC(Ln)に加算してエコ付きリンクコストC(Ln)´を算出するようにしても良い。
【符号の説明】
【0051】
図面中、1はカーナビゲーションシステム、2はナビゲーション装置、3はサーバ、4は制御装置、5は通信装置、6は位置検出部、7は表示装置(表示手段)、16は制御部(経路探索手段、エコ係数算出手段、エコ付きリンクコスト作成手段)、17は通信装置,19は地図データベースを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
指定された目的地までの推奨する経路をリンクコスト及びノードコストを用いてその総和コストが最小となるダイクストラ法により計算する経路探索手段を備えるカーナビゲーションシステムであって、
各リンクにおける固有の燃料消費量を予測し、この予測した燃料消費量と車両固有の実用燃費とから当該リンク固有のエコ係数を算出するエコ係数算出手段と、
前記各リンクの前記リンクコストを当該エコ係数で調整してエコ付きリンクコストを作成するエコ付きリンクコスト作成手段とを備え、
前記経路探索手段は、前記エコ付きリンクコストとノードコストを用いて目的地までの推奨する経路を前記ダイクストラ法により計算することを特徴とするカーナビゲーションシステム。
【請求項2】
変更可能な補正係数を備え、前記エコ係数をこの補正係数により補正可能とすることを特徴とする請求項1に記載のカーナビゲーションシステム。
【請求項3】
前記補正係数は、所定条件下で変更することを特徴とする請求項2に記載のカーナビゲーションシステム。
【請求項4】
前記エコ係数算出手段は、リンクにおける固有の燃料消費量をエンジン回転数、補機作動、道路勾配、タイヤ転がり抵抗、運転の仕方、風圧の少なくとも一つの要素から予測することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のカーナビゲーションシステム。
【請求項5】
前記エコ付きリンクコスト作成手段はリンクコストに前記エコ係数を乗じてエコ付きリンクコストを作成することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のカーナビゲーションシステム。
【請求項6】
前記エコ付きリンクコスト作成手段は、前記エコ係数にリンク長さを乗じて、エコ定数を算出し、このエコ定数をリンクコスト加算してエコ付きリンクコストを作成することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のカーナビゲーションシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−232146(P2011−232146A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−102038(P2010−102038)
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】