説明

カーボンナノチューブ及びカーバイド誘導炭素を含む混成複合体、該混成複合体を含む電子放出源及びその製造方法、並びに該電子放出源を採用した電子放出素子

【課題】カーボンナノチューブ及びカーバイド誘導炭素を含む混成複合体、該混成複合体を含む電子放出源及びその製造方法、並びに該電子放出源を採用した電子放出素子を提供する。
【解決手段】炭素ナノチューブと、カーバイド化合物をハロゲン族元素含有ガスと熱化学反応させて、カーバイド化合物内の炭素以外の残りの元素を抽出することによって製造されたカーバイド誘導炭素と、を含む混成複合体、該混成複合体を含む電子放出源の製造方法、その方法によって製造された電子放出源及び電子放出源を採用した電子放出素子。これにより、炭素ナノチューブとカーバイド誘導炭素が混成複合化されることによって、多量の炭素ナノチューブの使用時に発生するスクリーン効果を防止できて、電子放出能力が優秀なだけでなく、均一性に優れて長寿命の電子放出源を提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素ナノチューブ及びカーバイド誘導炭素を含む混成複合体、前記混成複合体を含む電子放出源及びその製造方法、並びに前記電子放出源を採用した電子放出素子に係り、さらに具体的には、炭素ナノチューブとカーバイド誘導炭素とが混成複合化された混成複合体、これを利用して多量の炭素ナノチューブの使用時に発生するスクリーン効果を防止できるだけでなく、均一性に優れて長寿命をもった電子放出源、その製造方法及び前記電子放出源を備える電子放出素子に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に電子放出素子は、電子放出源として熱陰極を利用する方式と冷陰極を利用する方式とがある。冷陰極を利用する方式の電子放出素子としては、FEA(Field Emitter Array)型、SCE(Surface Conduction Emitter)型、MIM(Metal Insulator Metal)型及びMIS(Metal Insulator Semiconductor)型、BSE(Ballistic electron Surface Emitting)型などが知られている。
【0003】
前述したような電子放出素子のうち、電子を放出させる電子放出源をなす物質として、カーボン系物質、例えば、特許文献1に記載されたように、伝導性、電界集中効果及び電界放出特性に優れて仕事関数の低いカーボンナノチューブが広く使われている。
【0004】
【特許文献1】大韓民国特許出願公開第2005−0024674号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、カーボンナノチューブは、電子放出素子内で垂直配向しても電子放出が発生しないか、多量の隣接したカーボンナノチューブによるスクリーン効果のために電子放出性能が低下するという問題があるが、これは、カーボンナノチューブと電極とのオーミック接触が完壁でないためであると把握される。カーボンナノチューブは、フィールド強化因子(β)の大きいファイバ形態のものが一般的であり、このような形態を持つ材料は材料の均一性及び寿命などで多くの問題点を有している。
【0006】
そこで、本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、多量の炭素ナノチューブの使用時に発生するスクリーン効果を防止できるだけでなく、均一性に優れるとともに長寿命の電子放出源を製造できる混成複合体、前記混成複合体を含む電子放出源及びその製造方法、並びに前記電子放出源を採用した電子放出素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、炭素ナノチューブと、カーバイド化合物をハロゲン族元素含有ガスと熱化学反応させて、前記カーバイド化合物内の炭素以外の残りの元素を抽出することによって製造されたカーバイド誘導炭素と、を含む混成複合体が提供される。
【0008】
また、上記課題を解決するために、本発明の他の観点によれば、炭素ナノチューブ、カーバイド化合物をハロゲン族元素含有ガスと熱化学反応させて、前記カーバイド化合物内の炭素以外の残りの元素を抽出することによって製造されたカーバイド誘導炭素、及びバインダーを含むビヒクルを攪拌して混成複合体組成物を提供する工程と、前記混成複合体組成物を基板上に塗布する工程と、前記塗布結果物を焼成する工程とを含む電子放出源の製造方法が提供される。
【0009】
また、上記課題を解決するために、本発明のさらに他の観点によれば、前記電子放出源の製造方法によって製造された電子放出源が提供される。
【0010】
また、上記課題を解決するために、本発明のさらに他の観点によれば、前記電子放出源を備えた電子放出素子が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電子放出源の分散性が向上して電子放出素子の公正性が向上する。また、本発明によれば、電界放出性能に優れ、均一性及び寿命特性が向上した電子放出素子を製作でき、またこれは、平板ディスプレイのバックライトユニット(BLU)などとしても有効に使われうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0013】
本発明による混成複合体は、炭素ナノチューブと、カーバイド化合物をハロゲン族(17族)元素含有ガスと熱化学反応させて前記カーバイド化合物内の炭素以外の残りの元素を抽出することによって製造されたカーバイド誘導炭素とを含む。
【0014】
通常、電子放出素子において、電子放出源として使われるカーボンナノチューブは、電子の放出能力を向上させるために垂直方向に成長した形状を持つことが望ましい。このようなCNTは、カーボンプレカーサとしてメタルカーバイドを使用して高温で塩素化を通じてメタルを除去し、準備されたCDC材料を利用して前述した方法によって実施して得られる。すなわち、CDC材料が、CNT成長のための支持材料となり、FeまたはMoイオンがCDC表面などに担持される。従って、均一に分散されたFe,MoイオンによってCDCから放射形に垂直方向に成長することに反して、一般的にCNTは、からみあって成長する。
【0015】
しかし、カーボンナノチューブが垂直配向しても電子放出が形成されないか、多量のカーボンナノチューブが使われる場合、隣接したカーボンナノチューブ間のスクリーン効果によって電子放出性能が低下する場合がある。このような現象は、カーボンナノチューブと電極とのオーミック接触が完壁でないために発生したと把握される。本発明者は前記のような従来技術の問題点を解決するために、カーボンナノチューブと導電性物質であるカーバイド誘導炭素とを混成複合化することで、前記のカーボンナノチューブ間のスクリーン効果を防止できることを見出した。また、このようにカーバイド誘導炭素を含む混成複合体を使用することによって、電子放出源の製造過程で分散性のような公正性が向上し、最終製品である電子放出素子の寿命が延長することを見出した。
【0016】
図2A及び図2Bは、それぞれ本発明による混成複合体に含まれるカーバイド誘導炭素の走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscopic:SEM)及び透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscopic:TEM)写真である。このようなカーバイド誘導炭素は、カーバイド化合物をハロゲン族元素含有ガスと熱化学反応させて、前記カーバイド化合物内の炭素以外の残りの元素を抽出することによって製造できる。これは、大韓民国公開特許公報第2001−13225号明細書に開示されたように、i)カーバイド化合物の粒子に所定の運搬孔隙率を持つ作業片を形成する工程、及びii)350℃ないし1200℃範囲の温度でハロゲン族元素含有ガス中で前記作業片を熱化学的に処理して、前記作業片中の炭素以外の残りの元素を抽出することによって、前記作業片全体にかけてナノ孔隙率を持つカーバイド誘導炭素を製造する工程によって行われる。
【0017】
望ましくは、本発明による混成複合体のカーバイド誘導炭素を製造するためのカーバイド化合物は、炭素と周期律表の2族、3族、4族、5族または6族元素との化合物として、シリコンカーバイド(Si−C)またはボロンカーバイド(B−C)のようなダイアモンド類カーバイド;チタンカーバイド(Ti−C)またはジルコニウムカーバイド(Zr−C)のような金属類カーバイド;アルミニウムカーバイド(Al−C)またはカルシウムカーバイド(Ca−C)のような塩類カーバイド;チタン−タンタルカーバイド(Ti−Ta−C)またはモリブデン−タングステンカーバイド(Mo−W−C)のような錯体カーバイド;炭窒化チタン(Ti−C−N)または炭窒化ジルコニウム(Zr−C−N)のようなカーボナイトライド;または前記カーバイド物質の混合物を使用できる。前記化合物のうち、シリコンカーバイド、ボロンカーバイド、アルミニウムカーバイドまたはこれらの混合物が、カーバイド誘導炭素の収率が高く、エミッション性能に優れただけでなく長寿命の特徴を示すので望ましい。
【0018】
本発明による混成複合体のカーバイド誘導炭素を製造するためにSiと表現されるシリコンカーバイドを使用する場合、xに対するyのモル比は0.95ないし1.05であることが、化学量論及び構造的安定性側面でさらに望ましい。本発明による混成複合体のカーバイド誘導炭素を製造するためにBx’y’と表現されるボロンカーバイドを使用する場合、x’に対するy’のモル比は0.24ないし0.26であることが、化学量論及び構造的安定性側面でさらに望ましい。本発明による混成複合体のカーバイド誘導炭素を製造するためにAlx’y’と表現されるアルミニウムカーバイドを使用する場合、x”に対するy”のモル比は0.74ないし0.76であることが、化学量論及び構造的安定性側面でさらに望ましい。”
【0019】
一方、前記ハロゲン族元素含有ガスはCl、TiClまたはFガスでありうる。
【0020】
前記方法によって製造されたカーバイド誘導炭素のうち、特に、ラマンスペクトル分析時(分析条件:Ar 514.5nm、2mW、60sec(2回)、50×)、1350cm−1での無秩序−誘導されたDバンド(disordered−induced D band)に対する1590cm−1でのグラファイトGバンド(graphite G band)の強度比率が0.2ないし5の範囲にあることを特徴とするカーバイド誘導炭素、BET比表面積が500〜1400m/g以上であり、望ましくは700〜1000m/gであることを特徴とするカーバイド誘導炭素、X線回折分析の結果、2θ=25゜でグラファイト(002)面の弱ピークまたは広いシングルピークが現れることを特徴とするカーバイド誘導炭素、または、電子顕微鏡分析の結果、電子回折パターンが非晶質炭素のハロパターンを表すことを特徴とするカーバイド誘導炭素が優秀な電子放出特性を持つために望ましい。なお、BET比表面積の上限は、1400m/g以下が望ましい(Gordeev S.K.ら著、「HYDROGEN ADSORPTION ON CARBON NANOPOROUS MATERIALS」を参照。)。
【0021】
また、本発明では、BET比表面積の測定を例えば以下のようにして行うことができる。
1)試料容器内のHeを除去する。
2)装置内に窒素ガスを注入して圧力を記録する。
3)試料容器部分を液体窒素が含まれている容器に入れ、吸着実験中液体窒素の水位を表示された部分に維持するために、実験中に液体窒素を添加し続ける(77K 維持)。
4)試料容器内に窒素を入れて平衡圧力を記録する。
5)装置内の圧力を少しずつ増加させながら2)〜4)を繰り返す。
(0.03〜0.3atmの間で5つ〜6つの平衡圧力値を得る。)
6)液体窒素除去後、常温で30分間真空排気する。
7)試料が入っている試料容器の質量を測定する。
8)各粉末試料に対して全処理と吸着実験過程を繰り返す。
<測定条件>
試料重量(Loading量):0.3〜0.5g
平衡時間:10秒
自動脱気(Automatic Degas)
冷却浴温度(Analysis Bath Temp.):−195.8℃
【0022】
一般的に、ラマンスペクトル分析結果、X線回折分析結果及び電子顕微鏡分析結果は結晶化度に対する尺度として頻繁に使われるが、本発明によるカーバイド誘導炭素は、前述したような分析結果を持つことによって、その構造が短範囲で結晶化度を持つ非晶質炭素に近接な構造的特性を持つようになる。このように、短範囲で結晶化度を持つ非晶質炭素の場合、曲げられたグラファイトシート及び非六員環構造の開孔が混在された構造を持つと報告されたことがある(Enn Lust et al.,J.electroanalytical Chem.,vol.586,pp247,2006)。図6には、前記文献で提案した非晶質炭素のナノ構造を模式的に示した。電界放出は、表面に垂直方向である非六員環構造の開孔で発生すると推定される。
【0023】
図3には、本発明の一実施形態による混成複合体に含まれるカーバイド誘導炭素に対するラマンスペクトル分析を、Ar 514.5nm、2mW、60sec(2回)、50×の条件で測定して得られた結果を示し、図3を参照すれば、前記カーバイド誘導炭素は、1350cm−1での無秩序−誘導されたDバンドの強度が約1.75であり、1590cm−1でのグラファイトGバンドの強度が約1.70であり、その比率であるI/I値が約0.97程度であることが分かる。
【0024】
なお、本発明では、ラマン分析用の機器として、例えば、HORIBA JOBINYVON社製のHORIBA HR 800UVを用いることができる。
光源:Arレーザ
レーザ出力:20〜30mW
レーザ波長:514.5nm
露光時間(測定):120秒
ビームホール:100μm
【0025】
また、図4及び図5には、本発明の一実施形態による混成複合体に含まれるカーバイド誘導炭素に対するX線回折分析結果を示し、図4及び図5を参照すれば、前記カーバイド誘導炭素は2θ=25゜でグラファイト(002)面の弱ピークが現れるということが分かる。グラファイト(002)面のピークとは、図6に図示されたように、グラファイト結晶の構造を六角柱形と仮定した場合、六角柱の上面に平行した方向に入射されるX線回折で引き起こされるピークを意味し、図7に図示されたように、一般的に結晶質グラファイトは2θ=25゜の位置で非常に強いピークを表す。しかし、本発明による混成複合体に含まれるカーバイド誘導炭素は2θ=25゜の位置で非常に弱いピークを表し、したがって、結晶質グラファイトとは異なる非晶質の特性を持つということが分かる。
【0026】
また、図8は、TEMを使用して本発明の一実施形態による混成複合体に含まれるカーバイド誘導ハロパターンを示す図面である。これは、結晶質炭素の場合、電子回折パターンが複数の点が散開した形態を持つが、前記カーバイド誘導炭素は、図8に示したように、電子回折パターンがこのような点形状を表さずに緩やかな円形として非晶質炭素のハロパターンを表すので、結晶質炭素とは異なる非晶質特性を持つということが分かる。
一方、本発明の混成複合体に含まれるカーボンナノチューブは、電子放出源として利用される通常のものを使用でき、グラファイトシートがナノサイズの直径に丸く巻き込まれてチューブ形態をなしているカーボン同素体であって、単一壁ナノチューブ及び多重壁ナノチューブをいずれも使用できる。本発明のカーボンナノチューブは、熱化学気相蒸着法(Chemical Vapor Deposition:以下、”CVD法”という)、DCプラズマCVD法、RFプラズマCVD法、マイクロ波プラズマCVD法のようなCVD法を利用して製造されたものでありうる。
【0027】
本発明の一具現例による混成複合体において、前記のカーバイド誘導炭素はカーボンナノチューブと共に混成化される。混成化されるカーバイド誘導炭素に対するカーボンナノチューブの質量比は0.0001ないし5であり、望ましくは0.001ないし2である。質量比0.001未満のカーボンナノチューブ混成時には十分な伝導ネットワークが形成され難く、3極管駆動時に駆動電圧が増加する問題があり、質量比2を超過するカーボンナノチューブの混成時には粘度があまり高くて公正性が落ち、均一な発光にならないという問題が発生する。また前記範囲でカーバイド誘導炭素が共に混成化されることによってカーボンナノチューブの使用量は減少し、これにより電子放出源の製造過程で分散性が向上できる。
【0028】
本発明による混成複合体を含む電子放出源を製造する方法を説明すれば、下記の通りである。
【0029】
まず、炭素ナノチューブ、カーバイド化合物をハロゲン族元素含有ガスと熱化学反応させて、前記カーバイド化合物内の炭素以外の残りの元素を抽出することによって製造されたカーバイド誘導炭素、及びビヒクルを攪拌して混成複合体を製造する。
【0030】
本発明による電子放出源の製造方法において使われるカーバイド誘導炭素及びカーボンナノチューブは、前記のカーバイド誘導炭素及びカーボンナノチューブを使用できる。
【0031】
本発明による電子放出源の製造方法に使われるビヒクルは印刷性及び粘度を調節し、バインダー、架橋剤、光開始剤、溶媒などの化合物を含む。
【0032】
前記バインダーとしては、望ましくは、カルボキシル基を持つモノマーと1つ以上のエチレン性不飽和モノマーとの共重合体を使用し、本発明において混成複合体が適切な粘度を持ってアルカリ水溶液に現像されるようにする役割を果たす。ビヒクル中のバインダーの含有量は5ないし40質量%が望ましいが、前記範囲を外れる場合には現像性が劣るか焼成時に収縮率が大きくなって望ましくない。
【0033】
前記カルボキシル基を持つモノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、酢酸ビニル及びそれらの無水物からなる群から一つ以上選択されたことが望ましくて、前記エチレン性不飽和モノマーは、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、エチレングリコールモノメチルエーテルアクリレート、及びエチレングリコールモノメチルエーテルメタクリレートからなる群から一つ以上選択されたことが望ましい。バインダーとしては、前記共重合体のカルボキシル基とエチレン性不飽和化合物とを反応させることによって、結果的にバインダー内に架橋反応を引き起こす成分が付加されたものを利用してもよい。前記エチレン性不飽和化合物としては、グリシジルメタクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート、及び3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアクリレートからなる群から選択されたものが使われうる。
【0034】
また、有機バインダーとしては、前記共重合体を単独で使用してもよいが、現像性向上などの目的でセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、及びカルボキシエチルメチルセルロースからなる群から選択された一つ以上の物質を混合して使用してもよい。
【0035】
架橋剤としては、単官能及び多官能モノマーが利用できるが、一般的には露光感度の優秀な多官能モノマーを利用する。このような多官能モノマーとしては、これに制限されるものではないが、エチレングリコールジアクリレート(EGDA)のようなジアクリレート系;トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、トリメチロールプロパンエトキシレートトリアクリレート(TMPEOTA)、またはペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)のようなトリアクリレート系;テトラメチロールプロパンテトラアクリレート、またはペンタエリスリトールテトラアクリレートのようなテトラアクリレート系;ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)のようなヘキサアクリレート系からなる群から一つ以上選択されたものが使われうる。ビヒクル中の前記架橋剤の含有量は5ないし30質量%であることが望ましいが、架橋剤の含有量が5質量%未満である場合には露光感度が落ちるという問題点があり、30質量%を超過する場合には混成複合体を含む組成物の粘度低下による印刷性不良が発生して望ましくない。
【0036】
前記光開始剤としては、これに制限されるものではないが、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4−ビス(ジメチルアミン)ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニル−2−フェニルアセトフェノン、2−メチル−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−1−ブタノン、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、及びビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイドからなる群から一つ以上選択されたものが使われうる。ビヒクル中の前記光開始剤の含有量は1ないし10質量%であることが望ましいが、光開始剤の含有量が1質量%未満である場合には組成物の露光感度が落ちるという問題点があり、10質量%を超過する場合には現像性不良が発生して望ましくない。
【0037】
前記溶媒としては、バインダー及び光開始剤を溶解させることができ、架橋剤及びその他の添加剤とよく混合されつつ沸点が150℃以上のものが使われうる。沸点が150℃未満である場合には組成物の製造過程、特に3ロールミル工程で揮発する傾向が大きくて問題になり、また印刷時に溶媒があまりにも速く揮発して印刷状態がよくなくなるので望ましくない。前記条件を満たせる望ましい溶媒としては、これに制限されるものではないが、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、テキサノール、テルペン、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、及びトリプロピレングリコールからなる群から一つ以上選択されたものが使われうる。ビヒクル中の前記溶媒の含有量は30ないし80質量%であることが望ましいが、溶媒の含有量が30質量%未満である場合には組成物の粘度が高すぎて印刷が正常に行われないという問題点があって望ましくなく、80質量%を超過する場合には粘度が低すぎて印刷できないという問題点があって望ましくない。
【0038】
また、前記ビヒクルは、乾燥速度を調整すると共に柔軟性も付与できる可塑剤をさらに含むことができ、その含有量は質量百分率で0〜10%であることが望ましい。可塑剤としては、ジオクチルフタレート、ジイソオクチルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジブチルフタレート、ジカプリルフタレートなどが使用でき、単独、あるいは所定配合比で混合して使用できる。
【0039】
それ以外にも、前記ビヒクルは漂う向上させる増感剤、組成物の保存性を向上させる重合禁止剤及び酸化防止剤、解像度を向上させる紫外線吸光剤、組成物内の気泡を減らす消泡剤、分散性を向上させる分散剤、印刷時に膜の平坦性を向上させるレベリング剤のような添加剤をさらに含んでもよい。
【0040】
混成複合体組成物は、前記のカーバイド誘導炭素、カーボンナノチューブ、及びビヒクルを混合した後、機械的攪拌、超音波処理、3ロールミル、ボールミル、サンドミルなどの方法によって均一な組成物を得るまで、例えば、8回混練することによって得られる。他の一方では、カーバイド誘導炭素、カーボンナノチューブ及び有機溶媒を混合した後、結果の混合物に前記バインダー及び光開始剤などのその他の添加剤を添加して再攪拌することで製造してもよい。
【0041】
次いで、前記混成複合体組成物を基板に印刷する。本発明による電子放出源は、通常のインクジェット方式によって製造できる。一方、ここで、前記“基板”とは、電子放出源が形成される基板であり、形成しようとする電子放出素子によって異なり、これは、当業者に容易に認識可能なものである。例えば、前記“基板”とは、カソード電極とアノード電極との間にゲート電極が備えられた形態の電子放出素子を製造する場合には、カソード電極になりうる。
【0042】
前述したように印刷された混成複合体組成物は焼成工程を経る。焼成工程を通じて混成複合体と基板との接着力が向上でき、一部以上のビヒクルは揮発する。焼成温度は組成物に含まれたビヒクルの揮発温度及び時間を考慮して決定されねばならない。通常的な焼成温度は400ないし500℃、望ましくは450℃である。焼成温度が400℃未満ならば、ビヒクルなどの揮発が十分になされないという問題点が発生でき、焼成温度が500℃を超過すればコストアップになり、基板が損傷するという問題点が発生するためである。また、焼成時間は、ビヒクルの揮発温度などを考慮して、10分〜2時間程度が望ましい。
【0043】
前記焼成工程は、カーボン系物質の劣化を防止するために不活性ガスの存在下で行われる。前記不活性ガスは、例えば、窒素ガス、アルゴンガス、ネオンガス、キセノンガス及びそれらのうち2つ以上の混合ガスでありうる。
【0044】
また、本発明は前記方法によって製造された電子放出源及び前記電子放出源を採用した電子放出素子を提供する。
【0045】
本発明による電子放出源を採用した電子放出素子は、第1基板と、前記第1基板上に配置されたカソード電極及び電子放出源と、前記カソード電極と電気的に絶縁されるように配置されたゲート電極と、前記カソード電極と前記ゲート電極との間に配置されて、前記カソード電極と前記ゲート電極とを絶縁する絶縁体層を備えることができる。この時、前記電子放出源は前述したような混成複合体を含む。
【0046】
前記電子放出素子は、前記ゲート電極の上側を覆う第2絶縁体層をさらに含むことができ、前記第2絶縁体層によって前記ゲート電極と絶縁され、前記ゲート電極と平行な方向に配置された集束電極をさらに含むことができるなど、多様な変形例が可能である。
【0047】
前記電子放出素子は、多様な電子装置、平板ディスプレイ、テレビ、X線チューブ、エミッションゲート増幅器のような真空電子装置に非常に有効に使われうる。
【0048】
図1は、本発明による電子放出素子の部分断面図であって、代表的に3極管構造の電子放出素子を図示した。
【0049】
図示したように、電子放出素子200は上板201と下板202とを備え、前記上板は上面基板190、前記上面基板の下面190aに配置されたアノード電極180、前記アノード電極の下面180aに配置された蛍光体層170を備える。
【0050】
前記下板202は、内部空間を持つように所定の間隔をおいて前記上面基板190と対向して平行に配置される下面基板110、前記下面基板110上にストライプ状に配置されたカソード電極120、前記カソード電極120と交差するようにストライプ状に配置されたゲート電極140、前記ゲート電極140と前記カソード電極120との間に配置された絶縁体層130、前記絶縁体層130と前記ゲート電極140の一部に形成された電子放出源ホール169、前記電子放出源ホール169内に配置されて前記カソード電極120と通電され、前記ゲート電極140より低く配置される電子放出源160を備える。
【0051】
前記上板201と下板202とは大気圧より低い圧力の真空で維持され、前記真空により発生する前記上板と下板との圧力を支持し、発光空間210を区画するようにスペーサ192が前記上板と下板との間に配置される。
【0052】
前記アノード電極180は、前記電子放出源160から放出された電子の加速に必要な高電圧を印加して、前記電子を前記蛍光体層170に高速で衝突させる。前記蛍光体層は、前記電子により励起されて高エネルギーレベルから低エネルギーレベルに落ちつつ可視光を放出する。カラー電子放出素子の場合には、単位画素をなす複数の前記発光空間210それぞれに赤色発光、緑色発光、青色発光の蛍光体層が前記アノード電極の下面180aに配置される。
【0053】
前記ゲート電極140は、前記電子放出源160から電子を容易に放出させる機能を担当し、前記絶縁体層130は前記電子放出源ホール169を区画し、前記電子放出源160と前記ゲート電極140とを絶縁する機能を担当する。電界形成により電子を放出する前記電子放出源160は前述したように混成複合体を備える。
【0054】
本発明による電子放出素子は、液晶表示装置においてバックライトユニットとして使われうる。このような液晶表示装置は、基本的に液晶パネル組立体と、液晶パネル組立体に光を提供するバックライトユニットとを備え、液晶パネル組立体がバックライトユニットから放出される光を提供されて、この光を液晶層の作用で透過または遮断させることによって所定の画像を具現する。
【実施例】
【0055】
以下、本発明を下記実施例を通じてさらに詳細に説明するが、本発明は下記実施例のみに限定されるものではない。
【0056】
<製造例1> カーバイド誘導炭素の製造
炭素前駆体として平均粒径0.7μmのα−SiC 100gを使用して黒鉛反応チャンバ、トランスフォーマーなどで構成された高温電気炉を利用して、1100℃で分当たり3リットルのClガスを流して、熱化学反応によりSiを前駆体から抽出することによってカーバイド誘導炭素30gを製造した。
【0057】
図2A及び図2Bには、前述した方法によって製造されたカーバイド誘導炭素のSEM写真及びTEM写真を図示した。なお、図3は、製造例1で得られたカーバイド誘導炭素についてのラマンスペクトルを示している。また、図4は、製造例1で得られたカーバイド誘導炭素についてのX線回折の分析結果を示している。
【0058】
<実施例1> 電子放出源の製造
(1)混成複合体組成物の製造
製造例1で得られたカーバイド誘導炭素0.5g、カーボンナノチューブ1.0g、バインダーであるメチルメタクリレートとメタクリル酸との共重合体(分子量12,000、メチルメタクリレート:メタクリル酸のモル比=3:1)37.5g、架橋剤としてトリメチロールプロパンエトキシレートトリアクリレート(TMPEOTA)26g、有機溶媒としてテキサノール27.5g、光開始剤としてベンゾフェノン5g及び可塑剤としてジオクチルフタレート(DOP)2.5gを混合した。得られた混合物を3ロールミルを使用して均一に混合分散させることによって混成複合体組成物を製造した。
【0059】
(2)電子放出源の製造
前記混成複合体組成物をインクとして使用し、商用のピエゾ方式のシングルノズルを持つインクジェットプリンタを使用して、ボロシリケートガラス基板上に幅20μm、塗布厚さ3μm、長さ2インチに塗布した。次いで、電気炉を使用して400℃で30分間焼成することで本発明による電子放出源を製造した。
【0060】
<実施例2〜5> 電子放出源の製造
下記表1に記載された含有量になるようにカーバイド誘導炭素及びカーボンナノチューブを使用し、これに合せて有機ビヒクルの構成成分の成分比は一定に維持しつつその使用量のみ調節したことを除いて、実施例1と同一に混成複合体組成物を製造した。
【0061】
前記得られた混成複合体組成物を利用したことを除いては実施例1と同じ方法で電子放出源を製造した。
【0062】
なお、各実施例におけるBET比表面積は、850m/gであった。
【0063】
【表1】

【0064】
<比較例1> 電子放出源の製造
カーバイド誘導炭素を使用しないことを除いて実施例1と同じ組成で混成複合体組成物を製造した。
【0065】
前記得られた混成複合体組成物を利用したことを除外して実施例1と同じ方法で電子放出源を製造した。
【0066】
<比較例2> 電子放出源の製造
【0067】
カーバイド誘導炭素の代わりにヤシ皮で製造した325メッシュサイズの粉末状活性炭(サイズ44μm以下)を4.5質量%、及びカーボンナノチューブを0.004質量%になるように使用したことを除いては、実施例1と同じ方法で混成複合体組成物を製造し、得られた混成複合体組成物を利用して電子放出源を製造した。
【0068】
<実施例6> 電子放出素子の製作
実施例1で得られた電子放出源を冷陰極カソードとして使用し、100μm厚さのポリエチレンテレフタレートフィルムをスペーサとして、銅プレートをアノード電極として使用して電子放出素子を製作した。図12に製作された電子放出素子の発光写真を図示した。
【0069】
同様に、実施例2ないし5及び比較例1及び2で得られた電子放出源を利用して電子放出素子を製作した。
【0070】
(電子放出素子の性能測定)
(1)電場による電流密度
前記製作された電子放出素子に対して、それぞれ1/500デューティ率でパルス電圧を印加して放出電流密度を測定した。測定結果を図10及び下記の表2に示した。
【0071】
(2)電子放出素子の寿命
また1mA/cmの電流密度が放出されるように電圧を維持した状態で経時的な電流密度の半減期を測定することによって、電子放出素子の加速寿命を相対的に比較した。前記寿命測定条件は非常に厳しい条件であって、実際電子放出素子では1cm当たり数μA程度に所望の輝度を得ることができる。CNT寿命に対する加速係数が現在まで知られなくて正確な寿命は予測し難いが、前記測定方法によって実施例1ないし5及び比較例1及び2の電子放出源を採用した素子の寿命を相手比較することは可能である。ただし、前記条件で実施例4、5及び比較例2の寿命は測定不可能であった。測定結果及び外挿した結果(extrapolated result、計算値)を下記の表2及び図11に示した。寿命曲線は1次指数関数的に減少する形態を示し、その関数の式を図11に示した。実施例1及び実施例2においてR自乗値は、それぞれ0.9962及び0.9898で実際測定結果と外挿結果がよく一致することが分かる。
【0072】
(3)画素間均一度
ピクセル駆動が可能な三極官構造の発光素子を製作するが、実施例1ないし実施例5及び比較例1ないし比較例1及び2で得られた電子放出源形成用組成物を注入して製作された2”カソードと、ホワイトブレンディングされた蛍光体がコーティングされた2”アノードとが10mm間隔で離れるように製作した。製作された素子にVa=4kV、Vs=100Vで電圧を印加して、約60μAの電流密度に到達した時の5つの領域の輝度間散布を測定/計算して各領域の平均値から評価した。得られた結果を下記の表2に共に表した。
【0073】
【表2】

【0074】
前記表2を参照すれば、カーボンナノチューブとカーバイド誘導炭素とを混成複合化することによって製造された電子放出素子は、カーボンナノチューブのみを単独で使用するか、あるいは他の炭素系物質を使用した場合に比較して寿命が1000%程度まで向上できることが分かる。また前記表2を参照すれば、本発明による電子放出素子は、比較例の電子放出素子に比べて優秀な画素間均一度を表すことが分かる。そして前記表2を参照すれば、本発明による電子放出素子は、ターンオン電界が約3.85〜6.25V/μmであり、約6.01〜8.31V/μmで100μA/cmに到達する優秀な電子放出性能を表すことが分かる。
【0075】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、電子放出素子関連の技術分野に好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明による電子放出素子の部分断面図である。
【図2A】本発明によって製造されたカーバイド誘導炭素のSEM写真である。
【図2B】本発明によって製造されたカーバイド誘導炭素のTEM写真である。
【図3】本発明の一実施形態による混成複合体に含まれるカーバイド誘導炭素に対するラマンスペクトル分析結果を示すグラフである。
【図4】本発明の一実施形態による混成複合体に含まれるカーバイド誘導炭素に対するX線回折分析結果を示すグラフである。
【図5】本発明の一実施形態による混成複合体に含まれるカーバイド誘導炭素に対するX線回折分析結果を示すグラフである。
【図6】グラファイト結晶構造を概略的に示す模式図である。
【図7】結晶質グラファイトに対するX線回折分析結果を示すグラフである。
【図8】本発明の一実施形態によるカーバイド誘導炭素に対するTEM分析結果でハロパターンを示す写真である。
【図9】本発明の一実施形態による電子放出素子の発光写真である。
【図10】本発明の一実施形態による電子放出素子において、電界による電流密度特性を示す図面である。
【図11】本発明の一実施形態による電子放出素子において、経時的な電流密度を示すグラフである。
【符号の説明】
【0078】
110 下面基板
120 カソード電極
130 絶縁体層
140 ゲート電極
160 電子放出源
169 電子放出源ホール
170 蛍光体層
180 アノード電極
190 上面基板
192 スペーサ
200 電子放出素子
201 上板
202 下板
210 発光空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素ナノチューブと、
カーバイド化合物をハロゲン族元素含有ガスと熱化学反応させて、前記カーバイド化合物内の炭素以外の残りの元素を抽出することによって製造されたカーバイド誘導炭素と、
を含み、
前記混成複合体のうち、前記カーバイド誘導炭素に対する前記カーボンナノチューブの質量比が0.0001から5であることを特徴とする混成複合体。
【請求項2】
前記カーバイド化合物は、シリコンカーバイド(Si−C)、ボロンカーバイド(B−C)、チタンカーバイド(Ti−C)、ジルコニウムカーバイド(Zr−C)、アルミニウムカーバイド(Al−C)、カルシウムカーバイド(Ca−C)、チタン−タンタルカーバイド(Ti−Ta−C)、モリブデン−タングステンカーバイド(Mo−W−C)、炭窒化チタン(Ti−C−N)及び炭窒化ジルコニウム(Zr−C−N)からなる群から選択された少なくとも一つのカーバイド化合物であることを特徴とする請求項1に記載の混成複合体。
【請求項3】
前記カーバイド化合物は、シリコンカーバイド、ボロンカーバイド及びアルミニウムカーバイドからなる群から選択された一つ以上の化合物であることを特徴とする請求項2に記載の混成複合体。
【請求項4】
前記カーバイド誘導炭素は、ラマンスペクトル分析(分析条件:Ar 514.5nm、2mW、60秒(2回)、50×)の結果、1350cm−1での無秩序−誘導されたDバンド及び1590cm−1に対するグラファイトGバンドの強度比率が0.2から5の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の混成複合体。
【請求項5】
前記カーバイド誘導炭素のBET比表面積が500〜1400m/g以上であることを特徴とする請求項1に記載の混成複合体。
【請求項6】
前記カーバイド誘導炭素は、X線回折分析の結果、2θ=25゜でグラファイト(002)面の弱ピークを表すことを特徴とする請求項1に記載の混成複合体。
【請求項7】
前記カーバイド誘導炭素は、透過型電子顕微鏡分析の結果、電子回折パターンが非晶質炭素のハロパターンを表すことを特徴とする請求項1に記載の混成複合体。
【請求項8】
炭素ナノチューブ及びカーバイド化合物をハロゲン族元素含有ガスと熱化学反応させて前記カーバイド化合物内の炭素以外の残りの元素を抽出することによって製造されたカーバイド誘導炭素と、バインダーを含むビヒクルと、を攪拌して混成複合体組成物を提供する工程と、
前記混成複合体組成物を基板上に塗布する工程と、
前記塗布の結果物を焼成する工程と、
を含むことを特徴とする電子放出源の製造方法。
【請求項9】
前記カーバイド誘導炭素は、ラマンスペクトル分析(分析条件:Ar 514.5nm、2mW、60秒(2回)、50×)の結果、1350cm−1での無秩序−誘導されたDバンド及び1590cm−1に対するグラファイトGバンドの強度比率が0.2から5の範囲にあることを特徴とする請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記カーバイド誘導炭素のBET比表面積は500〜1400m/g以上であることを特徴とする請求項8に記載の製造方法。
【請求項11】
前記カーバイド誘導炭素は、X線回折分析の結果、2θ=25゜でグラファイト(002)面の弱ピークを表すことを特徴とする請求項8に記載の製造方法。
【請求項12】
前記カーバイド誘導炭素は、透過型電子顕微鏡の分析の結果、電子回折パターンが非晶質炭素のハロパターンを表すことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項13】
前記混成複合体のうち、前記カーバイド誘導炭素に対する前記カーボンナノチューブの質量比が0.0001から5であることを特徴とする請求項8に記載の製造方法。
【請求項14】
前記ビヒクルはバインダーであり、
アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、酢酸ビニル、及びそれらの無水物からなる群から一つ以上選択されるカルボキシル基を持つモノマーと、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、エチレングリコールモノメチルエーテルアクリレート、及びエチレングリコールモノメチルエーテルメタクリレートからなる群から一つ以上選択されるエチレン性不飽和モノマーと、の共重合体を含むことを特徴とする請求項8に記載の製造方法。
【請求項15】
前記ビヒクルは、ジアクリレート系、トリアクリレート系、テトラアクリレート系、及びヘキサアクリレート系からなる群から一つ以上選択される架橋剤をさらに含むことを特徴とする請求項8に記載の製造方法。
【請求項16】
前記ビヒクルは、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4−ビス(ジメチルアミン)ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニル−2−フェニルアセトフェノン、2−メチル−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−1−ブタノン、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、及びビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイドからなる群から一つ以上選択される光開始剤をさらに含むことを特徴とする請求項8に記載の製造方法。
【請求項17】
前記ビヒクルは、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、テキサノール、テルペン、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、及びトリプロピレングリコールからなる群から一つ以上選択される有機溶媒をさらに含むことを特徴とする請求項8に記載の製造方法。
【請求項18】
請求項8から17のうちいずれか1項に記載の方法によって製造された電子放出源。
【請求項19】
前記電子放出源は、冷陰極用電子放出源であることを特徴とする請求項18に記載の電子放出源。
【請求項20】
請求項18に記載の電子放出源を備えた電子放出素子。



【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図1】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2008−280241(P2008−280241A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−125067(P2008−125067)
【出願日】平成20年5月12日(2008.5.12)
【出願人】(590002817)三星エスディアイ株式会社 (2,784)
【Fターム(参考)】