説明

ガスエンジンの排ガス浄化装置

【課題】メタンを主成分に含む燃料ガスを用いたガスエンジンにおいて、未燃成分として排出されるメタン成分を効率的に吸着するとともにエンジンに再循環させてエンジンの熱効率の改善と排ガス浄化性能の向上を図ることを目的とする。
【解決手段】メタンを主成分に含む燃料ガスを用いたガスエンジンの排ガス浄化装置において、メイン排ガス通路11と、バイパス排ガス通路15と、分岐制御弁17と、メタン吸着触媒21、23と、メタン吸着に適する排ガス温度に冷却する排ガス冷却手段19と、メタン脱着に適した温度に加熱する放出ガス加熱手段29と、入口側制御弁37と、循環通路33と、出口側制御弁39と、排ガス冷却手段19、放出ガス加熱手段29、入口側制御弁37、出口側制御弁39、および分岐制御弁17を制御して、第1系統のメタン吸着触媒21と第2系統のメタン吸着触媒23の吸着と脱着を切換える制御装置41とを備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスエンジンの排ガス浄化装置に関するものであり、特に、メタンを主成分に含む燃料ガスを用いるガスエンジンの排ガス浄化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、天然ガス(都市ガス)、炭鉱から発生する炭鉱メタンなどのメタンを主成分とするガスを、燃料としたガスエンジンにより、発電システムや冷暖房を行うヒートポンプシステムが、その優れた省エネルギー性、経済性により、急速に普及しつつある。
【0003】
一般に、燃焼室内に導入された燃料と空気との予混合ガスは燃焼室内で完全には燃え切らずに、燃焼室内のシリンダ天井部や、シリンダライナ壁面部や、ピストンリング付近や、給気ポートや排気ポート内に残存ガスとして未燃ガスが溜り、燃焼することなく未燃成分として排出される。
【0004】
一方、未燃成分の大気への排出を低減する技術として、吸着材によって吸着する技術や、酸化触媒を後処理として用いる技術が知られており、例えば、特許文献1(特開2002−227635号公報)には、排気ガス通路を、メイン排気通路およびバイパス通路の一方に切り替える排気通路切替装置と、メイン排気通路内に配置され、メイン排気通路に導かれた排気ガス中の未燃成分を吸着すると共に、吸着した未燃成分を脱着させるHC吸着材と、排気ガスの流路を、HC吸着材に排気ガス中の未燃成分を吸着させるときにはメイン排気通路に切り替え、HC吸着材から吸着した未燃成分を脱着させるときにはバイパス排気通路に切り替え、HC吸着材からの未燃成分の脱着が完了したときにはメイン排気通路に切り替えるように、排気通路切替装置を制御する制御手段と、を備える構成が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−227635号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1記載の技術は、前述のようにHC吸着材に一旦吸着し、吸着したHCを吸着材が高温度のときに、脱着して、EGR管を介してエンジンに再循環されて、エンジンで燃焼されるようになっている。
このため、HC吸着材が脱着作動を行っている間は、該HC吸着材は吸着機能を有さず、排ガスはバイパス排気通路を通って排出されてしまい、また、吸着作動を行っている間は、脱着作動を行えないため、HC吸着材に吸着されたHC成分のエンジンへの再循環が行われない。
【0007】
従って、本発明は前記問題点に鑑み、メタンを主成分に含む燃料ガスを用いたガスエンジンにおいて、未燃成分として排出されるメタン成分を効率的に吸着するとともにエンジンに再循環させてエンジンの熱効率の改善と排ガス浄化性能の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明はかかる課題を解決するためになされたものであり、本発明は、メタンを主成分に含む燃料ガスを用いたガスエンジンの排ガス浄化装置において、前記ガスエンジンに接続されたメイン排ガス通路と、該メイン排ガス通路から分岐し且つ該メイン排ガス通路に再度合流するバイパス排ガス通路と、前記メイン排ガス通路から前記バイパス排ガス通路への排ガスの流れを制御する分岐制御弁と、前記バイパス排ガス通路に並列に複数配置され排ガス中のメタン成分を吸着するメタン吸着触媒と、前記メタン吸着触媒へ流入する排ガスをメタン成分の吸着に適する排ガス温度に冷却する排ガス冷却手段と、前記メタン吸着触媒を通過させて前記メタン吸着触媒に吸着したメタン成分を脱着する放出ガスを脱着に適した温度に加熱する放出ガス加熱手段と、前記複数のメタン吸着触媒は2系統からなり第1系統のメタン吸着触媒および第2系統のメタン吸着触媒のそれぞれの入口への排ガスの流入と遮断とを切換える入口側制御弁と、前記第1系統のメタン吸着触媒および第2系統のメタン吸着触媒の出口から排出されるガスを前記エンジンの給気通路に循環させる循環通路と、前記第1系統のメタン吸着触媒および第2系統のメタン吸着触媒のそれぞれの出口から排出されるガスを前記バイパス排ガス通路または前記循環通路への流出と遮断とを切換える出口側制御弁と、前記排ガス冷却手段、前記放出ガス加熱手段、前記入口側制御弁、前記出口側制御弁、および前記分岐制御弁を制御して、前記第1系統のメタン吸着触媒と第2系統のメタン吸着触媒の吸着と脱着を切換える制御装置と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
かかる発明によれば、未燃燃料のメタンを含む排ガスを、2系統からなる複数のメタン吸着触媒(例えば、ゼオライト)の一方(第1系統)に通してメタン成分を吸着させて捕集する。この吸着の際にメタン吸着能力を高めるために、排ガス温度を低く(ゼオライトの場合は、100℃以下)制御する必要があり、そのために排ガス冷却手段を用いて制御する。
【0010】
また、他方(第2系統)のメタン吸着触媒においては、メタンが吸着済みの場合にはメタンを脱着させる。この脱着の際にメタン脱着性を高めるために、放出ガス温度を高く(ゼオライトの場合は、400℃以上)制御する必要があり、そのために、放出ガス加熱手段を用いて制御する。
このように、排ガス冷却手段および放出ガス加熱手段を用いて、メタン吸着触媒(例えば、ゼオライト)への吸着およびメタン吸着触媒からの脱着を効果的に行わせることができる。
【0011】
そして、脱着して前記循環通路に放出されたメタン成分は再度エンジンの給気通路に戻して燃料として用いられる。
従って、従来は燃焼することなく排出されていた未燃成分のメタンの活用によって、ガスエンジンの熱効率を向上できるとともに、未燃成分の排出量低減効果によって排ガス浄化機能も得られる。
【0012】
また、本発明において好ましくは、排ガス冷却手段と排ガス加熱手段を次のように構成するとよい。
(1)前記排ガス冷却手段は、前記第1系統のメタン吸着触媒および第2系統のメタン吸着触媒のそれぞれの入口へ流入する排ガスを冷却する排ガスクーラによって構成され、前記放出ガス加熱手段は、過給機のコンプレッサによって加圧された給気と前記第1系統のメタン吸着触媒および第2系統のメタン吸着触媒に設けられたヒータ手段とによって構成されるとよい。
【0013】
このように、排ガスクーラでメタン吸着触媒に流入する排ガスの温度を制御するため、吸着に適した排ガス温度への制御を確実に行うことができる。また、脱着のための放出ガスを過給機のコンプレッサで加圧された給気を用いるため、脱着後のメタンガスをエンジンの給気通路に戻してもEGR(排ガス再循環装置)のように燃焼温度の低下を生じせしめないため、EGRを装着しないエンジンにおいてもメタンガスの再循環が可能となる。また、ヒータ手段にメタン吸着触媒に流入する排ガスの温度を制御するため、脱着に適した排ガス温度への制御を確実に行うことができる。
【0014】
(2)前記排ガス冷却手段は、前記第1系統のメタン吸着触媒および第2系統のメタン吸着触媒のそれぞれの入口へ流入する排ガスに、給気通路に設けられた給気クーラによって冷却された給気を混合させることによって構成され、前記放出ガス加熱手段は、前記第1系統のメタン吸着触媒および第2系統のメタン吸着触媒のそれぞれの入口へ、エンジン出口からの排ガスを導くことによって構成されるとよい。
【0015】
このように、給気クーラを用いて冷却した給気を利用して排ガス温度を低下して吸着に適した温度になるようにするため、排ガスを冷却する排ガスクーラが不要となりシステムが簡単化される。
また、放出ガス加熱手段も、エンジン出口から排出される高温の排ガスを導くことによって、ヒータ手段のような装置が不要となり、システムが簡単化される。さらに、排ガスを用いてメタンをメタン吸着触媒から脱着させて給気通路に再循環させるため、排ガスも給気通路に戻るのでEGR機能が得られて燃焼温度の低下によるNOx低減効果が得られる。
【0016】
(3)前記排ガス冷却手段は、前記第1系統のメタン吸着触媒および第2系統のメタン吸着触媒のそれぞれの入口へ流入する排ガスに、給気通路に設けられた給気クーラによって冷却された給気を混合させることによって構成され、前記放出ガス加熱手段は、過給機のコンプレッサによって加圧された給気と前記第1系統のメタン吸着触媒および第2系統のメタン吸着触媒に設けられたヒータ手段とによって構成されるとよい。
【0017】
このような構成によると、前述のように給気クーラを用いるため、排ガスを冷却する排ガスクーラが不要となりシステムが簡単化される。また、放出ガス加熱手段は、ヒータ手段を設けるため温度調整が容易化する。
【0018】
(4)前記排ガス冷却手段は、前記第1系統のメタン吸着触媒および第2系統のメタン吸着触媒のそれぞれの入口へ流入する排ガスを冷却する排ガスクーラによって構成され、前記放出ガス加熱手段は、前記第1系統のメタン吸着触媒および第2系統のメタン吸着触媒のそれぞれの入口へ、エンジン出口からの排ガスを導くことによって構成されるとよい。
【0019】
このように、排ガスクーラによるメタン吸着触媒に流入する排ガスの温度を制御するため、吸着に適した排ガス温度への制御を確実に行うことができる。
また、放出ガス加熱手段としてのヒータ手段を設ける必要がないため、システムが簡単化される。さらに、前述のようにEGR機能が得られる。
【0020】
また、本発明において好ましくは、前記循環通路を給気通路に設けられた過給機のコンプレッサの上流側に戻すとよく、このように過給機のコンプレッサの上流側に戻すと、給気側は排気側より低圧状態のため給気通路への循環流が生じやすい。また、前記循環通路を給気通路に設けられた過給機のコンプレッサの下流側に設けられた給気冷却器の上流側に戻すとよく、このように給気冷却器の上流側に戻すことによって給気冷却器を利用して循環流を冷却できるため、循環通路に冷却器を設ける必要がなくシステムを簡単化できる。
【0021】
また、本発明において好ましくは、前記制御装置は、メタン成分を吸着するのに適した温度の排ガスがメタン吸着触媒を通過した時間に基づいてメタン吸着限界を判定するメタン吸着限界判定手段を有しているとよい。
このようにメタン吸着触媒であるゼオライトの吸着限界に達したことを、対象触媒を通過した時間(動作時間)を基に判定することで、正確に対象触媒の吸着限界を判定できる。この際、エンジン負荷の影響やメタン濃度の影響を、重み付けして判定してもよい。
【0022】
また、本発明において好ましくは、前記制御装置は、メタン成分を脱着するのに適した温度の放出ガスがメタン吸着触媒を通過した時間に基づいてメタン放出完了を判定するメタン脱着完了判定手段を有しているとよい。
このように、メタン吸着触媒を通過した時間(動作時間)を基に判定することで、正確に対象触媒の脱着終了を判定できる。この際、通過する排ガス温度の影響を重み付けして判定してもよい。
【0023】
また、本発明において好ましくは、前記ガスエンジンは、発電用のエンジンからなり、前記制御装置は、始動から一定回転数の定格回転数に達するまで前記バイパス排ガス通路への排ガスの流れを遮断するとよい。
このように、発電機用のガスエンジンにおいて、始動から一定回転数の定格運転に達するまでは、メイン排ガス通路からバイパス排ガス通路への排ガスの流れを分岐制御弁で遮断して、メタン吸着触媒による排圧上昇を防止して、始動性の向上および低回転運転時の安定性を確保できる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、ガスエンジンから排出される未燃燃料のメタンを含む排ガスを2系統あるメタン吸着触媒(ゼオライト)の一方系統に通してメタン成分を吸着させて捕集する。また、他方系統のメタン吸着触媒においては、メタンが吸着済みの場合にはメタンを脱着させる。このように、2系統のメタン吸着触媒を用いて吸着と脱着を切り替え、さらに、放出後のメタン成分は再度エンジンの給気通路に戻されて燃料として用いられる。これによって、従来は燃焼することなく排出されていた未燃成分のメタンの活用によって、ガスエンジンの熱効率を向上できるとともに、未燃成分の排出量低減効果が得られ排ガス浄化機能も向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1実施形態を示すガスエンジンの排ガス浄化装置の全体構成図である。
【図2】第1実施形態のメタン吸着時の制御フローチャートを示す。
【図3】第1実施形態のメタン脱着時の制御フローチャートを示す。
【図4】第1実施形態における第1メタン吸着触媒が吸着時で、第2メタン吸着触媒が脱着時のガス弁の開閉を示す説明図表である。
【図5】第2実施形態を示すガスエンジンの排ガス浄化装置の全体構成図である。
【図6】第2実施形態のメタン吸着時の制御フローチャートを示す。
【図7】第2実施形態のメタン脱着時の制御フローチャートを示す。
【図8】第3実施形態を示すガスエンジンの排ガス浄化装置の全体構成図である。
【図9】第4実施形態を示すガスエンジンの排ガス浄化装置の全体構成図である。
【図10】第5実施形態を示すガスエンジンの排ガス浄化装置の全体構成図である。
【図11】第6実施形態を示すガスエンジンの排ガス浄化装置の全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。
但し、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0027】
(第1実施形態)
図1を参照して、本発明の第1実施形態のガスエンジンの排ガス浄化装置の全体構成につき説明する。同図において、ガスエンジン1は、発電機用のエンジンであり、該エンジン1には直結駆動される発電機3が取り付けられている。
【0028】
燃料となる燃料ガスは、天然ガス(都市ガス)、炭鉱から発生する炭鉱メタンガス、またはランドフィルガスのようなバイオガス等のメタンを主成分とする燃料ガスが、給気通路5から流入されるようになっている。
給気通路5には、排気タービン7a及びコンプレッサ7bからなる過給機7が備えられ、各燃焼室の給気入口に給気ガスを供給する。過給機7のコンプレッサ7bの下流側には給気クーラ9が設けられる。
【0029】
エンジン1の排気出口にはメイン排ガス通路11が接続され、過給機7の排気タービン7aが設けられ、その下流側に排熱回収装置13が設置されている。この排熱回収装置13は排熱を利用して蒸気等を生成して利用するものである。この排熱回収装置13の下流側には、メイン排ガス通路11から分岐し且つ該メイン排ガス通路11に再度合流するバイパス排ガス通路15が設けられている。また、メイン排ガス通路11からバイパス排ガス通路15への排ガスの流れを制御する分岐制御弁17が設けられている。
【0030】
バイパス排ガス通路15には、排ガスクーラ(排ガス冷却手段)19と、その下流に並列に、排ガス中のメタン成分を吸着する第1メタン吸着触媒(第1系統のメタン吸着触媒)21と、第2メタン吸着触媒(第2系統のメタン吸着触媒)23とが配設されている。第1メタン吸着触媒21および第2メタン吸着触媒23のそれぞれには、排ガス中の水分を除去して、メタン成分を吸着し易いようにする水分除去触媒25、27がそれぞれ、上流側に隣接して設けられている。
【0031】
また、第1メタン吸着触媒21および第2メタン吸着触媒23には、吸着触媒を加熱するヒータ29がそれぞれ設置されている。
第1メタン吸着触媒21と第2メタン吸着触媒23の2つの吸着触媒に限定するものではなく、複数の吸着触媒を備えそれらを2系統に区分して一方領域と他方領域として用いてもよい。
【0032】
また、第1メタン吸着触媒21および第2メタン吸着触媒23のそれぞれの入口には、バイパス排ガス通路15と合流して混合するように、過給機7のコンプレッサ7b出口と接続する第1放出ガス通路31が設けられ、コンプレッサ7bで加圧された高温の給気がメタン吸着触媒に吸着したメタンを脱着する際に放出ガスとして導かれるようになっている。なお、前記ヒータ29と第1放出ガス通路31とで放出ガス加熱手段を構成している。
【0033】
第1メタン吸着触媒21および第2メタン吸着触媒23は、例えばゼオライトからなり、Na−A型ゼオライト(細孔径4Å)、Na−X型ゼオライト(細孔径3.8Å)のものが適している。
また、水分除去触媒25、27も、例えばゼオライトからなり、K−A型ゼオライト(細孔径3Å)、シリカゲル(細孔径2.8Å)のものが適している。
なお、メタン吸着触媒としてゼオライト以外にも分子篩カーボン、メソポーラスシリケートなどがある。
【0034】
メタン成分の吸着性能は排ガス温度が100℃程度よりも低い温度領域で高められ、また脱着時には400℃程度より高い温度領域で脱着性が高められる。このため、第1メタン吸着触媒21および第2メタン吸着触媒23に流入する排ガス温度を吸着時には100℃程度を目標に冷却制御を行う。なお、100℃よりさらに低温度にするにはそれだけ冷却器性能を向上する必要がありコスト増大、システムの大型化等の問題があるため、略100℃を目標として吸着時の排ガス温度制御を行う。
【0035】
また、メタン成分の脱着時の放出ガスの加熱温度についても、ヒータ29の大容量化に伴うコスト増大、システムの大型化等の問題化のため、略400℃を目標して脱着時の放出ガスのガス温度の制御を行う。
【0036】
第1メタン吸着触媒21および第2メタン吸着触媒23のそれぞれの出口は、放出ガスをガスエンジン1の給気通路5に循環させる循環通路33と、バイパス排ガス通路15の戻り側に接続している。また、循環通路33には、循環流を冷却するために還流クーラ35が設置されている。
第1実施形態では、循環通路33は、過給機7のコンプレッサ7bの上流側に戻しており、このようにコンプレッサ7bの上流側に戻すことで、コンプレッサ7bの上流側は下流側より低圧状態のため給気通路5への循環流が生じやすくなる。
【0037】
第1メタン吸着触媒21および第2メタン吸着触媒23のそれぞれの入口への排ガスの流入と遮断、またはメタン成分の脱着時の放出ガスの流入と遮断を切換える入口側制御弁37が設けられている。この入口側制御弁37は、図1に示すように、ガス弁VC11、VC12、VC21、VC22によって構成されている。
【0038】
また、第1メタン吸着触媒21および第2メタン吸着触媒23のそれぞれの出口からの排ガスのバイパス排ガス通路15への流出と遮断、またはメタン成分の脱着時の放出ガスの循環通路33への流出と遮断とを切換える出口側制御弁39が設けられている。この出口側制御弁39は、図1に示すように、ガス弁VC13、VC14、VC23、VC24によって構成されている。
【0039】
次に、入口側制御弁37および出口側制御弁39の開閉制御を行う制御装置41について説明する。
ガスエンジン1の給気入口部分の給気温度を検出する給気温度センサ43からの給気温度Ta1、給気圧力を検出する給気圧力センサ45からの給気圧力Pa1、第1メタン吸着触媒21へ流入するガス温度を検出する第1入口温度センサ47からの第1入口温度T11、第2メタン吸着触媒23へ流入するガス温度を検出する第2入口温度センサ49からの第2入口温度T21、第1メタン吸着触媒21および第2メタン吸着触媒23から流出するガス温度を検出する出口温度センサ51からの出口ガス温度T、両メタン吸着触媒に流入する排ガス中のメタン濃度を検出する排ガスメタン濃度センサ53からの排ガスメタン濃度C、脱着後のガス中のメタンガス濃度を検出する放出ガスメタン濃度センサ55からの脱着メタンガス濃度Cの信号がそれぞれ入力される。
【0040】
また、制御装置41には、主に、メタン成分を吸着するのに適した温度の排ガスに制御する排ガス冷却制御手段57と、メタン吸着触媒を通過した時間に基づいてメタン吸着限界を判定するメタン吸着限界判定手段59と、メタン成分を脱着させるのに適した温度の放出ガスに制御する放出ガス加熱制御手段61と、メタン成分の脱着時の放出ガスがメタン吸着触媒を通過した時間に基づいてメタン放出完了を判定するメタン脱着完了判定手段63とを有している。
【0041】
さらに、給気通路5側に循環された脱着メタンガスの脱着メタンガス濃度C基づいて、ガスエンジン1の燃料量を補正制御、すなわち、循環されるメタンガス濃度Cに応じたガス量だけ供給ガス量を低減できるので、その補正を行いガスエンジン1への燃料量を制御する燃料制御手段65を有している。
【0042】
制御装置41は、前記各センサからの検出信号を基に、分岐制御弁17、入口側制御弁37のガス弁VC11、VC12、VC21、VC22、および出口側制御弁39のガス弁VC13、VC14、VC23、VC24の開閉を制御するとともに、ガス燃料量を制御する。
始動開始後の所定時間、または所定の低回転数域や低負荷域においては、排気圧損の増大による不安定運転の回避のため、分岐制御弁17を制御してバイパス排ガス通路15側には流さないようにし、始動後、一定回転の安定運転領域に達してからメタン吸着触媒による吸着と脱着の制御が行われる。
【0043】
メタン吸着時の制御を図2のフローチャートを参照して説明する。
ステップS1で、吸着作動を行わせるメタン吸着触媒を、第1メタン吸着触媒21と第2メタン吸着触媒23とから選択し、その選択した触媒に応じてガス弁の開閉制御を行う。図4に示すように、第1メタン吸着触媒21を吸着触媒に選択した場合には、図4(a)に示すガス弁の開閉を行わせる。また、第2メタン吸着触媒23を吸着触媒に選択した場合には、図4(b)に示すガス弁の開閉を行わせる。図4(a)、(b)で示すように、第1メタン吸着触媒21と第2メタン吸着触媒23とは、吸着と脱着とを交互に切換えるように制御される。
【0044】
ステップS2で、選択したメタン吸着触媒に流入する排ガス温度を第1入口温度センサ47、または第2入口温度センサ49で検出する。そして、ステップS3で、第1メタン吸着触媒21へ流入する排ガスの第1入口温度T11または第2メタン吸着触媒23へ流入する排ガスの第2入口温度T21が略100℃か否かを判定する。NOの場合にはステップS4で排ガスクーラ19の冷却水量を調整して略100℃になるように調整する。
【0045】
次に、ステップS5で、対象のメタン吸着触媒の吸着動作時間の積算を行う。つまり、排ガス温度が略100℃の場合の通過時間の累積を算出する。そして、ステップS6で、その積算値が予め設定された限界時間に到達したか否かを比較して判定する。到達している場合には、NOとなり、ステップS7でメタン吸着触媒を他の触媒に切換えてステップ1で他の吸着触媒を選択して、前記同様の手順を繰り返す。
また、同時に、ステップS8で、限界に到達した対象のメタン吸着触媒からのメタン放出操作を行う。この放出操作は後述する。
【0046】
一方、ステップS6で、限界時間前であれば、ステップS9で吸着動作を対象のメタン吸着触媒で継続させ、ステップ1にリターンして吸着を継続させる。
【0047】
ステップS5の対象触媒の動作時間の積算において、単なる動作時間ではなく、エンジン負荷の影響の重み付けをして、負荷が大きいときには燃料量が多くなりそれに応じて未燃メタン成分も多く排出されるため負荷の大きさに応じた重み付けをした動作時間(「エンジン負荷」×「エンジン動作時間」)として算出することにより、より精度良い吸着量の判定ができるようになる。
【0048】
さらに、排ガスメタン濃度センサ53の測定値Cの影響の重み付けをして、濃度が濃い場合にはそれに応じて未燃メタン成分も多く排出されるため濃度の濃さに応じた重み付けをした動作時間(「濃度測定値」×「エンジン動作時間」)として算出することにより、より精度良い吸着量の判定ができるようになる。
また、前記したエンジン負荷と排ガスメタン濃度センサ53の測定値Cとを併用して、(「エンジン負荷」×「濃度測定値」×「エンジン動作時間」)としてもよく、さらに、バイパス排ガス通路15を通って第1メタン吸着触媒21または第2メタン吸着触媒23に流入する排ガス流量を流量計(不図示)で検出して、該流量と排ガスメタン濃度センサ53の測定値Cとを併用して、(「排ガス流量」×「濃度測定値」×「エンジン動作時間」)とすることもできる。
このように、エンジン負荷と濃度の併用、または排ガス流量と濃度の併用によってエンジン動作時間を補正することで、より精度良い吸着量の判定ができるようになる。
【0049】
次に、制御装置41におけるメタンの放出時の制御を図3のフローチャートを参照して説明する。
ステップS11では、脱着作動を行わせるメタン吸着触媒を、第1メタン吸着触媒21と第2メタン吸着触媒23とから選択し、その選択した触媒に応じてガス弁の開閉制御を行う。ステップS12では、具体的に、対象触媒が第1メタン吸着触媒21の場合にはガス弁VC12を開とし、対象触媒が第2メタン吸着触媒23の場合にはガス弁VC22を開として放出動作を開始する。
【0050】
ステップS13では、触媒の出口ガス温度Tを出口温度センサ51で検出する。そして、ステップS15で、出口ガス温度Tが略400℃か否かを判定する。NOの場合にはステップS16でヒータ29の加熱量を調整して略400℃になるように調整する。
【0051】
次に、ステップS17では、対象のメタン吸着触媒の脱着動作時間の積算を行う。すなわち、触媒の出口ガス温度Tが略400℃またはそれ以上の場合の通過時間の累積を算出する。そして、ステップS18で、その積算値が予め設定された処理完了時間に到達したか否かを比較して判定する。
【0052】
到達している場合には、NOとなり、ステップS20でガス弁VC12(VC22)を閉として放出ガスの流入を遮断する。同時に、ステップS21で、他の触媒での吸着動作が吸着限界に達するまで待機する。そして、他の触媒が吸着限界に達するとステップS22で、脱着が完了した対象触媒をメタン吸着操作が可能なようにガス弁VC11〜VC24を設定する。
【0053】
ステップS17での対象触媒の動作時間の積算において、単なる動作時間ではなく、ステップS14で、触媒の出口ガス温度Tの出口温度センサ51での検出値に応じて補正した時間を用いてメタン脱着時の動作時間の積算値を算出してもよい。
このように出口温度の影響の重み付けは、温度が400℃より高い場合には脱着量が多くなるため、動作時間としては大きくなるように補正する。
予め設定した処理完了時間の設定の際には、400℃の放出ガスの通過による動作完了時間の理論的算出値、または、実験によって捕捉された必要時間から設定される時間であるため。400℃に対する上下によって補正することで、より精度良い脱着完了の判定ができるようになる。
【0054】
また、前記ステップS17における対象触媒のメタン脱着時の動作時間の積算について、第1放出ガス通路31もしくは循環流路33に流量計(不図示)を設けて、該流量計からの検出値と、触媒の下流側に設けた放出ガスメタン濃度センサ55によって検出した放出ガスメタン濃度Cの検出値とを用いて動作時間を補正して、(「検出流量」×「濃度」×「動作時間」)によって算出してもよく、より精度良い脱着完了の判定ができるようになる。
【0055】
さらに、前記ステップS14、S17、S18によって算出した動作時間に基づく判定に代えて、触媒の下流側に設けた放出ガスメタン濃度センサ55によって放出ガスメタン濃度Cを検出して、その濃度が予め設定した閾値濃度を下回ったか否かを判定してもよい。すなわち、検出濃度が閾値濃度以下であれば、脱着は完了したと判定するものである。この場合には、直接メタン濃度を検出してその濃度だけによって判定するため、動作時間に基づく判定よりもより簡単に且つ精度よく脱着完了を判定できる。
【0056】
以上説明したように、第1実施形態によれば、未燃燃料のメタンを含む排ガスを第1メタン吸着触媒21および第2メタン吸着触媒23に通過させるとともに、排ガスクーラ19を用いて、排ガスを、メタン吸着能力が高められる略100℃へ温度制御し、およびヒータ29を用いて、放出ガスを、メタン脱着性が高められる略400℃へ温度制御することで、第1メタン吸着触媒21および第2メタン吸着触媒23への吸着およびこれら触媒からの脱着を効果的に行うことができる。
【0057】
そして、脱着後のメタン成分を、循環通路33を介して再度エンジンの給気通路5に戻して、燃料として用いられることによって、従来は燃焼することなく排出されていた未燃成分のメタンが活用されて、ガスエンジン1の熱効率の改善と排ガス浄化性能の向上を図ることができる。
特に、第1メタン吸着触媒21および第2メタン吸着触媒23を交互に吸着と脱着を繰り返し、一方では吸着作動がなされている間に、他方では脱着作動がなされ、常に排ガスがいずれかの吸着触媒を通過し、また常に吸着触媒からのメタン成分は大気に放出されずにエンジンの給気通路5に戻される。このため、未燃成分のメタンの大気への排出量が効果的に低減され、熱効率の改善とともに排ガス浄化機能が向上する。
【0058】
(第2実施形態)
次に、図5〜7を参照して、第2実施形態について説明する。
第1実施形態は、図1に示すように排ガス冷却手段として排ガスクーラ19が設けられ、また放出ガス加熱手段として過給機7のコンプレッサ7bによる加圧後の給気とヒータ29によって構成しているが、第2実施形態は、これら排ガスクーラ19およびヒータ29を用いずに排ガス冷却手段および放出ガス加熱手段を構成することを特徴とし、システム全体を簡単化するものである。
【0059】
図5のように、給気クーラ9の出口と、排熱回収装置13の下流側で且つバイパス排ガス通路15との分岐部より上流側とを連通するように、給気バイパス通路70が設けられる。この給気バイパス通路70によって給気クーラ9で冷却された給気を導いて排ガスと合流混合させることで排ガスを冷却する排ガス冷却手段を構成している。
【0060】
また、ガスエンジン1の排ガス出口と、第1メタン吸着触媒21および第2メタン吸着触媒23の入口とを連通するように、第2放出ガス通路72が設けられる。この第2放出ガス通路72によってガスエンジン1からの高温の排ガスを導くことによって、放出ガス加熱手段を構成している。
【0061】
制御装置74は、図5に示すように、主に、メタン成分を吸着するのに適した温度の排ガスに制御する排ガス冷却制御手段76と、メタン吸着触媒を通過した時間に基づいてメタン吸着限界を判定するメタン吸着限界判定手段78と、メタン成分の脱着時の放出ガスがメタン吸着触媒を通過した時間に基づいてメタン放出完了を判定するメタン脱着完了判定手段80と、給気通路5側に循環された脱着メタンガスの脱着メタンガス濃度C(第1実施形態参照)基づいて、ガスエンジン1の燃料量を補正制御するガスエンジンの燃料制御手段65を有している。
【0062】
そして、第2放出ガス通路72の排ガス温度を検出する放出ガス温度センサ82からの放出ガス温度Tと、バイパス排ガス通路15を流れる排ガス温度を検出する排ガス温度センサ84からの排ガス温度Tとを基に、給気バイパス通路70に設けられた給気バイパス弁VA、第2放出ガス通路72に設けられた放出ガス弁VE、および各ガス弁VC11〜VC24、さらに分岐制御弁17の開閉を制御する。
その他構成については、第1実施形態と同様のものは同一符号を付する。
【0063】
メタン吸着時の制御を図6のフローチャートを参照して説明する。
ステップS1のメタン吸着触媒の選択は第1実施形態と同様である。ステップS2の処理排ガス温度の検出は、第1実施形態では各メタン吸着触媒の入口部の温度を検出したが、第2実施形態では、排ガス温度センサ84の設置位置がバイパス排ガス通路15での1箇所で検出している。これによりシステムを簡単化している。
【0064】
ステップS3は、第1実施形態と同様であり、選択したメタン吸着触媒に流入する排ガス温度が略100℃であるかを判定する。ステップS31では、略100℃になるように調整するが、この調整を給気バイパス弁VAの開度操作によって行う。すなわち、給気バイパスガスは給気クーラ9で冷却されているため、給気バイパス通路70によって排ガスに混合する給気量を調整することで行われる。
その後の処理は、第1実施形態と同様である。
【0065】
次に、メタンの放出時の制御を図7のフローチャートを参照して説明する。
ステップS11は、第1実施形態と同様であり、脱着作動を行わせるメタン吸着触媒を、第1メタン吸着触媒21と第2メタン吸着触媒23から選択し、その選択した触媒に応じてガス弁の開閉制御を行う。
【0066】
ステップS41では、放出ガス弁VEを開く。ステップS42では、放出ガス温度センサ82によって放出ガス温度Tを検出する。そして、ステップS44で、対象のメタン吸着触媒の脱着動作時間の積算を開始する。第1実施形態では、略400℃またはそれ以上の場合の通過時間の累積として算出したが、第2実施形態では、排ガスを放出ガスとして利用するため400℃以上の場合が多いことから、積算時間の積算開始条件をガス温度では設けずにステップS44では放出ガス弁VEを開いてからの積算を行っている。
【0067】
ただし、ステップS43で、放出ガス温度に応じて通過時間の補正を行って処理完了時間の判定に反映している。すなわち、放出ガス温度が400℃より高い場合には脱着量が多くなるため、動作時間としては大きくなるように積算時間を補正する。
そして、ステップS45で、その積算値が予め設定された処理完了時間に到達したか否かを比較して判定する。
【0068】
到達している場合には、NOとなり、ステップS46で放出ガス弁VEを閉として放出ガスとしての排ガスの流入を遮断する。同時に、ステップS21で、他の触媒での吸着動作が吸着限界に達するまで待機する。これ以降は第1実施形態と同様である。
【0069】
以上の第2実施形態によれば、第1実施形態の排ガスクーラ19およびヒータ29を用いずに、給気クーラ9の出口と、バイパス排ガス通路15との分岐部より上流側とを連通する給気バイパス通路70によって排ガス冷却手段を構成し、さらに、ガスエンジン1の排ガス出口と、メタン吸着触媒の入口とを連通する第2放出ガス通路72を設けてエンジン1からの高温の排ガスを用いて放出ガス加熱手段を構成するので、システム全体構成を簡単化できる。
【0070】
また、排ガスを用いてメタンをメタン吸着触媒から脱着させて給気通路5に再循環させるため、排ガスも給気通路5に戻るのでEGR機能が得られて燃焼温度の低下によるNOx低減効果も得られる。その他については第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0071】
(第3実施形態)
次に、図8を参照して、第3実施形態について説明する。
第3実施形態は、図5に示す第2実施形態の変形例で、循環通路33に設けられた循環流を冷却するために還流クーラ35を省略するものであり、その他は第2実施形態と同一の構成である。
【0072】
図8に示すように、循環通路33の給気通路5への接続位置を、給気クーラ9の入口側とする。これによって、循環通路33を通過する放出ガスの冷却を給気クーラ9で行わせることでシステムを簡単化できる。
【0073】
(第4実施形態)
次に、図9を参照して、第4実施形態について説明する。
前述した第2、3実施形態では、図5に示すように、排ガスクーラ19およびヒータ29を用いずに、給気バイパス通路70によって排ガス冷却手段を構成し、ガスエンジン1の排ガス出口と、メタン吸着触媒の入口とを連通する第2放出ガス通路72を設けてエンジン1からの高温排ガスを用いて放出ガス加熱手段を構成していた。
これに対して、以下の第4、5実施形態は、ヒータ29と第1放出ガス通路31による放出ガス加熱手段は残し、排ガスクーラ19による排ガス冷却手段を、給気バイパス通路70によって構成するものである。
【0074】
このような、第4、5実施形態における共通の作用効果は、放出ガス加熱手段として排ガスを用いずに、過給機7のコンプレッサ7bによる加圧後の高温給気とヒータ29によって構成するので、放出ガスは排ガスでないため、EGR機能が得られないため、EGRを装着しないエンジン仕様に対するシステム構成として適用できる。
また、ヒータ29による加熱制御を行うため放出ガスの温度制御を精度よく行うことができる。
【0075】
本第4実施形態は、図9に示すように、給気クーラ9の出口と、排熱回収装置13の下流側で且つバイパス排ガス通路15との分岐部の上流側とを連通するように、給気バイパス通路70が設けられる。この給気バイパス通路70によって給気クーラ9で冷却された給気を導いて排ガスと合流混合させることで排ガスを冷却する排ガス冷却手段を構成する。そして、給気バイパス通路70に給気バイパス弁VAが設けられている。
【0076】
本第4実施形態の制御装置は、図示しないが、図1に示す第1実施形態の制御装置41の排ガスクーラ19による排ガスの冷却を、給気バイパス弁VAで行うように置き換える。すなわち、図2のフローチャートのステップS4の排ガスクーラの冷却水量調整を、給気バイパス弁VAの調整に置き換えるものである。
【0077】
また、第1メタン吸着触媒21および第2メタン吸着触媒23のそれぞれの入口には第1放出ガス通路31が接続され、コンプレッサ7bで加圧された高温の給気ガスがメタン吸着触媒にメタン脱着時に放出ガスとして導かれるようになっている。この放出制御は、第1実施形態と同様である。
【0078】
以上の第4実施形態によれば、過給機7のコンプレッサ7bの出口と接続する第1放出ガス通路31によって供給される給気をヒータ29で加熱するため、排ガスは環流せずEGR機能が得られないため、EGRを装着しないエンジン仕様に対するシステム構成として適用できる。また、ヒータ29による加熱制御を行うため放出ガスの温度制御を精度よく行うことができる。
【0079】
(第5実施形態)
次に、図10を参照して、第5実施形態について説明する。
この第5実施形態は、図9に示す第4実施形態の変形例であり、図9に示した給気バイパス通路70と第1放出ガス通路31とを共通化して、システムをより簡単化したものである。その他は第4実施形態と同一の構成である。
【0080】
図10に示すように、給気クーラ9の出口から分岐して共用ガス通路90が設けられ、この共用ガス通路90は途中で分岐して、一方は給気バイパス弁VAを備えた給気バイパス通路90aとしてメイン排ガス通路11に接続し、他方は共有放出ガス通路90bとして第1メタン吸着触媒21および第2メタン吸着触媒23の入口に接続する。
このように、共用ガス通路90によって、図9に示した給気バイパス通路70と第1放出ガス通路31とを共通化した通路構成とすることができ、システムをより簡単化できる。
【0081】
(第6実施形態)
次に、図11を参照して、第6実施形態について説明する。
前述した第4、5実施形態は、図9に示すように、ヒータ29と第1放出ガス通路31とによる放出ガス加熱手段を設けて、排ガスクーラ19に代えて給気バイパス通路70によって排ガス冷却手段を構成していた。
本第6実施形態は、逆に、放出ガス加熱手段として排ガスクーラ19を設けて、放出ガス加熱手段としてヒータ29と第1放出ガス通路31との代わりに、ガスエンジン1の出口からの排ガスを第1メタン吸着触媒21および第2メタン吸着触媒23の入口に導く第2放出ガス通路72を設けるものである。
【0082】
すなわち、図11に示すように、エンジン1の排ガス出口と、第1メタン吸着触媒21および第2メタン吸着触媒23の入口とを連通するように、第2放出ガス通路72が設けられる。この第2放出ガス通路72によってエンジン1からの高温の排ガスを導いて用いることによって、放出ガス加熱手段を構成している。
【0083】
放出ガス加熱手段をエンジン1からの排ガスの熱によって構成するので、ヒータ29(図9参照)のような装置が不要となると共に、排ガスによって放出されたメタンが還流するため、EGR機能が得られる。
また、排ガスクーラ19によって吸着する排ガス温度を制御するので、精度よく排ガス温度を適切な温度(略100℃)への制御ができるため、吸着性能が向上する。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明によれば、メタンを主成分に含む燃料ガスを用いたガスエンジンにおいて、未燃成分として排出されるメタン成分を効率的に吸着するとともにエンジンに再循環させてエンジンの熱効率の改善と排ガス浄化性能の向上を図ることができるため、ガスエンジンの排ガス浄化装置への利用に適している。
【符号の説明】
【0085】
1 エンジン(ガスエンジン)
3 発電機
5 給気通路
7 過給機
7b コンプレッサ
7a 排気タービン
9 給気クーラ
11 メイン排ガス通路
15 バイパス排ガス通路
17 分岐制御弁
19 排ガスクーラ
21 第1メタン吸着触媒(第1系統のメタン吸着触媒)
23 第2メタン吸着触媒(第2系統のメタン吸着触媒)
29 ヒータ(ヒータ手段)
31 第1放出ガス通路
33 循環通路
37 入口側制御弁
39 出口側制御弁
41、74 制御装置
59、78 メタン吸着限界判定手段
63、80 メタン脱着完了判定手段
72 第2放出ガス通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタンを主成分に含む燃料ガスを用いたガスエンジンの排ガス浄化装置において、
前記ガスエンジンに接続されたメイン排ガス通路と、
該メイン排ガス通路から分岐し且つ該メイン排ガス通路に再度合流するバイパス排ガス通路と、
前記メイン排ガス通路から前記バイパス排ガス通路への排ガスの流れを制御する分岐制御弁と、
前記バイパス排ガス通路に並列に複数配置され排ガス中のメタン成分を吸着するメタン吸着触媒と、
前記メタン吸着触媒へ流入する排ガスをメタン成分の吸着に適する排ガス温度に冷却する排ガス冷却手段と、
前記メタン吸着触媒を通過させて前記メタン吸着触媒に吸着したメタン成分を脱着する放出ガスを脱着に適した温度に加熱する放出ガス加熱手段と、
前記複数のメタン吸着触媒は2系統からなり第1系統のメタン吸着触媒および第2系統のメタン吸着触媒のそれぞれの入口への排ガスの流入と遮断とを切換える入口側制御弁と、
前記第1系統のメタン吸着触媒および第2系統のメタン吸着触媒の出口から排出されるガスを前記エンジンの給気通路に循環させる循環通路と、
前記第1系統のメタン吸着触媒および第2系統のメタン吸着触媒のそれぞれの出口から排出されるガスを前記バイパス排ガス通路または前記循環通路への流出と遮断とを切換える出口側制御弁と、
前記排ガス冷却手段、前記放出ガス加熱手段、前記入口側制御弁、前記出口側制御弁、および前記分岐制御弁を制御して、前記第1系統のメタン吸着触媒と第2系統のメタン吸着触媒の吸着と脱着を切換える制御装置と、
を備えたことを特徴とするガスエンジンの排ガス浄化装置。
【請求項2】
前記排ガス冷却手段は、前記第1系統のメタン吸着触媒および第2系統のメタン吸着触媒のそれぞれの入口へ流入する排ガスを冷却する排ガスクーラによって構成され、前記放出ガス加熱手段は、過給機のコンプレッサによって加圧された給気と前記第1系統のメタン吸着触媒および第2系統のメタン吸着触媒に設けられたヒータ手段とによって構成されることを特徴とする請求項1に記載のガスエンジンの排ガス浄化装置。
【請求項3】
前記排ガス冷却手段は、前記第1系統のメタン吸着触媒および第2系統のメタン吸着触媒のそれぞれの入口へ流入する排ガスに、給気通路に設けられた給気クーラによって冷却された給気を混合させることによって構成され、前記放出ガス加熱手段は、前記第1系統のメタン吸着触媒および第2系統のメタン吸着触媒のそれぞれの入口へ、エンジン出口からの排ガスを導くことによって構成されることを特徴とする請求項1に記載のガスエンジンの排ガス浄化装置。
【請求項4】
前記排ガス冷却手段は、前記第1系統のメタン吸着触媒および第2系統のメタン吸着触媒のそれぞれの入口へ流入する排ガスに、給気通路に設けられた給気クーラによって冷却された給気を混合させることによって構成され、前記放出ガス加熱手段は、過給機のコンプレッサによって加圧された給気と前記第1系統のメタン吸着触媒および第2系統のメタン吸着触媒に設けられたヒータ手段とによって構成されることを特徴とする請求項1に記載のガスエンジンの排ガス浄化装置。
【請求項5】
前記排ガス冷却手段は、前記第1系統のメタン吸着触媒および第2系統のメタン吸着触媒のそれぞれの入口へ流入する排ガスを冷却する排ガスクーラによって構成され、前記放出ガス加熱手段は、前記第1系統のメタン吸着触媒および第2系統のメタン吸着触媒のそれぞれの入口へ、エンジン出口からの排ガスを導くことによって構成されることを特徴とする請求項1に記載のガスエンジンの排ガス浄化装置。
【請求項6】
前記循環通路を給気通路に設けられた過給機のコンプレッサの上流側に戻すことを特徴とする請求項1に記載のガスエンジンの排ガス浄化装置。
【請求項7】
前記循環通路を給気通路に設けられた過給機のコンプレッサの下流側に設けられた給気冷却器の上流側に戻すことを特徴とする請求項1に記載のガスエンジンの排ガス浄化装置。
【請求項8】
前記制御装置は、メタン成分を吸着するのに適した温度の排ガスがメタン吸着触媒を通過した時間に基づいてメタン吸着限界を判定するメタン吸着限界判定手段を有していることを特徴とする請求項1に記載のガスエンジンの排ガス浄化装置。
【請求項9】
前記制御装置は、メタン成分を脱着するのに適した温度の放出ガスがメタン吸着触媒を通過した時間に基づいてメタン放出完了を判定するメタン脱着完了判定手段を有していることを特徴とする請求項1に記載のガスエンジンの排ガス浄化装置。
【請求項10】
前記ガスエンジンは、発電用のエンジンからなり、前記制御装置は、始動から一定回転数の定格回転数に達するまで前記バイパス排ガス通路への排ガスの流れを遮断することを特徴とする請求項1に記載のガスエンジンの排ガス浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−180765(P2012−180765A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−43107(P2011−43107)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】