説明

ガス供給システム

【課題】 ガス供給対象への充填終了後のノズルの取り外しを容易化できるガス供給システムを提供すること。
【解決手段】 圧縮機で圧縮されたガスを蓄積する蓄圧器6と、蓄圧器6からのガスを冷却するプレクーラ8と、プレクーラ8で冷却されたガスを供給対象に充填するためのノズル3と、がガス流路4に設けられ、ノズル3の温度を検出する温度センサ(ノズル温度検出部)T1と、温度センサT1の検出温度が少なくとも氷点以下である所定の昇温許可閾値よりも低い場合に、供給対象に充填されるガスの温度をプレクーラ8で冷却されたガスの温度よりも上昇させる制御部(ガス供給温度制御部)41と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス供給対象に所定のガスを供給するガス供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ガス供給システムとして、車両に燃料として供給するCNG等のガスを所定圧力に圧縮してこの加圧されたガスを生成する圧力発生ユニットと、圧力発生ユニットにより圧縮されたガスを燃料タンクに供給するディスペンサユニットと、を備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平08−68495号公報
【特許文献2】特開2005−285403号公報
【特許文献3】特開2005−69329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなガス供給システムでは、水素カードルに貯蔵された水素を圧縮して蓄圧器に蓄え、充填時にプレクーラを用いて予備冷却した後にノズルを介して供給対象である車両に充填する。このプレクーラによって、蓄圧器からの水素を例えば−20℃に冷却したうえで車両内のタンクに供給することにより、充填時間の短縮化を実現している。
【0005】
このようなガス供給システムでは、ディスペンサから供給される低温の水素により、外気に含まれる水分や雨等がノズル周囲で凍結し、ノズルとこのノズルが接続される車両側のレセプタクルとの接続部分が固着してしまう場合がある。このため、充填終了後にノズルをレセプタクルから容易に外せなくなる虞があった。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、ガス供給対象への充填終了後のノズルの取り外しを容易化できるガス供給システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明のガス供給システムにおいては、圧縮機で圧縮されたガスを蓄積する蓄圧器と、該蓄圧器からのガスを冷却するプレクーラと、該プレクーラで冷却されたガスを供給対象に充填するためのノズルと、がガス流路に設けられ、前記ノズルの温度を検出するノズル温度検出部と、該ノズル温度検出部の検出温度が少なくとも氷点以下である所定の昇温許可閾値よりも低い場合に、前記供給対象に充填されるガスの温度を前記プレクーラで冷却されたガスの温度よりも上昇させるガス供給温度制御部と、を有する構成を採用する。
【0008】
かかる構成によれば、ノズルの凍結は、プレクーラで冷却されたガスよりも高温のガスが保有する熱により解消される。しかも、所定条件下でのみ充填ガスの温度をプレクーラで冷却されたガスの温度よりも上昇させるようにしているため、充填速度の低下も抑制できる。
【0009】
供給対象に対する充填圧力を検出する充填圧力検出部を備え、前記ガス供給温度制御部は、前記充填圧力検出部による検出圧力がユーザにより設定された充填終了圧力よりも所定圧力だけ低い充填終了間際判定閾値よりも高く、かつ前記ノズル温度検出部の検出温度が前記昇温許可閾値よりも低い場合に、前記供給対象に充填されるガスの温度を前記プレクーラで冷却されたガスの温度よりも上昇させるようにしてもよい。
【0010】
前記プレクーラを通過したガスを前記ガス流路から分岐させて前記圧縮機あるいは当該圧縮機から流出するガスと熱交換させることにより前記ガスを加熱する熱交換部を備え、前記ガス供給温度制御部は、ガス流を前記熱交換部側に分岐させることにより、前記供給対象に充填されるガスの温度を前記プレクーラで冷却されたガスの温度よりも上昇させるようにしてもよい。
かかる構成では、圧縮機を熱源とすることにより、新たな加熱源が不要である。
【0011】
前記プレクーラをバイパスするバイパス流路を備え、前記ガス供給温度制御部は、ガス流を前記バイパス流路側に切り替えて前記プレクーラをバイパスさせることにより、前記供給対象に充填されるガスの温度を前記プレクーラで冷却されたガスの温度よりも上昇させるようにしてもよい。
【0012】
前記ガスを加熱するヒータを備え、前記ガス供給温度制御部は、前記供給対象に充填されるガスを、前記ヒータで加熱することにより、前記プレクーラで冷却されたガスの温度よりも上昇させるようにしてもよい。
【0013】
また、本発明に係る他のガス供給システムは、圧縮機で圧縮されたガスを蓄積する蓄圧器と、該蓄圧器からのガスを冷却するプレクーラと、該プレクーラで冷却されたガスを供給対象に充填するためのノズルと、がガス流路に設けられ、更に、前記ノズルの温度を検出するノズル温度検出部と、該ノズル温度検出部の検出温度が少なくとも氷点以下である所定の昇温許可閾値よりも低くならないように前記供給対象に充填されるガス温度を制御するガス供給温度制御部と、を有するものである。
かかる構成によれば、ガス供給対象への充填終了時での凍結が解消されるようにノズルの温度が制御される。
【発明の効果】
【0014】
本発明のガス供給システムによれば、ガス供給対象への充填終了後のノズルの取り外しを容易化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】ガスステーションの概略を示す構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係るガス供給システムの構成図である。
【図3】制御部による制御を説明するフローチャートである。
【図4】本発明の他の実施形態に係るガス供給システムの構成図である。
【図5】同実施形態における制御部による制御を説明するフローチャートである。
【図6】本発明の更に他の実施形態に係るガス供給システムの構成図である。
【図7】本発明の更に他の実施形態に係るガス供給システムの構成図である。
【図8】本発明の更に他の実施形態に係るガス供給システムによるノズル温度制御を示した図である。
【図9】同ノズル温度制御の他の例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係るガス供給システムについて説明する。このガス供給システムは、燃料ガスと酸化ガスとの電気化学反応により発電を行なう燃料電池が搭載された燃料電池車両(ガス供給対象)に対して燃料ガスである水素ガスを供給する水素ガスステーションに適用されるものである。
【0017】
図1及び図2に示すように、ガス供給システム1は、ガス供給対象である車両Sに搭載されているガス貯蔵タンクに水素ガスを供給するガスステーション10内に設けられており、水素を貯蔵する水素カードル2(ガス供給源)と、水素ガスを供給対象である車両Sに搭載されている水素タンク(以下、単にタンクという。)に向け放出して充填するノズル3と、これらを結ぶガス流路4とを有している。ノズル3には、温度センサ(ノズル温度検出部)T1が設けられている。
【0018】
ガス流路4には、水素カードル2側(上流側)から順に、水素カードル2からの水素ガスを圧縮して吐出する圧縮機5と、圧縮機5によって所定圧力まで昇圧された水素ガスを蓄えておく蓄圧器6と、蓄圧器6からの水素ガスを予備冷却するプレクーラ8と、ノズル3にプレクーラ8からの水素ガスを供給するディスペンサ部11とを備えている。
【0019】
制御部(ガス供給温度制御部)41は、ガス供給システム1を統括的に制御するものであり、例えば圧縮機5やプレクーラ8の駆動状態を制御する。また、制御部41は、例えば上記ノズル3からのレバー操作検知信号の他、各圧力センサ及び温度センサT1からの検出信号を受信し、受信した検出信号に基づき各部の動作を制御する。
【0020】
更に、本実施形態では、蓄圧器6の下流でガス流路4から水素ガスを分流させた後、当該水素ガスを圧縮機5で発生する熱を利用して加熱し、プレクーラ8の下流で再びガス流路4に合流するバイパス流路(熱交換部側)9が設けられている。
【0021】
バイパス流路9には遮断弁9aが設けられており、ガス流路4にはバイパス流路9の合流位置よりも下流側に遮断弁4aが設けられている。そして、これら遮断弁4a,9aが制御部41からの制御信号により選択的に開閉されることによって、タンクに充填される水素ガスの供給流路をガス流路4とバイパス流路9とに切り替えられるように構成されている。
【0022】
バイパス流路9は圧縮機5の吐出側の配管またはハウジングに接触状態で配設され、バイパス流路9を流れる水素ガスは、圧縮機5あるいは上記吐出側の配管を流れる水素ガスと熱交換される。
【0023】
上記のガス供給システム1によって車両Sに搭載されたタンク(不図示)へ水素ガスを充填する場合は、ノズル3を車両Sの水素ガス充填口(供給口)に設けられたレセプタクル22に嵌合状態に接続する。
【0024】
この状態にて、ノズル3のトリガーレバーを引いてディスペンサ部11を作動させる。
通常時は、遮断弁4aが開、遮断弁9aが閉状態であり、水素カードル2から圧縮機5で圧縮されて蓄圧器6に溜められていた水素ガスが、プレクーラ8によって予冷されてノズル3側へ送り出される。すると、ノズル3内に設けられている例えば逆止弁からなる開閉弁(図示略)が開き、車両Sに搭載されているタンク内への水素ガス充填が開始される。
【0025】
蓄圧器6からの水素ガスは室温程度であるが、プレクーラ8によって−20℃程度に冷却される。このため、外部環境によってはノズル3が氷点下となり、凍結が生ずる可能性がある。
本実施形態においては、制御部41がレセプタクル22とノズル3との嵌合部温度を温度センサT1によって監視しており、この嵌合部に凍結の可能性があると判断した場合には、圧縮機5からの高温ガスを利用してノズル3を昇温させるようにしている。
【0026】
より具体的に説明すると、図3のフローチャートに示すように、まずステップST1にて、ノズル3とレセプタクル22との嵌合部が少なくとも氷点以下に設定される所定の昇温許可閾値、例えば0℃以下であるかどうかを温度センサT1の出力に基づいて判定し、0℃以下でない場合には、そのまま通常の充填を続行する。
【0027】
ノズル3とレセプタクル22との嵌合部が0℃以下である場合には、ステップST2にて、充填圧力を例えば車両S側に設けられた圧力センサ(充填圧力検出部)P1により計測し、充填終了が近いかどうかを判定する(ステップST3)。
【0028】
この判定では、ユーザが設定した充填終了圧力(例えば、満タン、50MPa、10MPa等)から所定圧力(例えば、1〜5MPa)だけ低い充填終了間際判定閾値を用い、この充填終了間際判定閾値よりも検出圧力が高いかどうかが判定される。そして、検出圧力が充填終了間際判定閾値に満たず、充填終了間際でない場合には、そのまま通常の充填を続行する。
【0029】
これに対し、検出圧力が充填終了間際判定閾値以上、すなわち充填終了間際(例えば10秒前)である場合には、遮断弁4aを閉、遮断弁9aを開とすることにより、蓄圧器6からの水素ガス(室温程度のガス温度)をバイパス流路9により圧縮機5に導く。これにより、蓄圧器6からの水素ガスは、圧縮機5あるいは吐出側の配管と熱交換して昇温する。
【0030】
そして、昇温した水素ガスが再びガス流路4に戻ることによってノズル3が加熱され、ノズル3の嵌合部での凍結が溶融される。以上の判定は、充填が終了するまでの間、所定周期で行われる。
【0031】
タンクに充填終了圧力に相当する量の水素ガスが充填されると、制御部41はディスペンサ部11の遮断弁を閉じる。これにより、水素ガス充填は終了する。
タンクへの水素ガス充填終了後は、車両Sのレセプタクル22に接続されたノズル3が当該レセプタクル22から取り外され、当該ノズル3はディスペンサ部11のノズルホルダへ収容される。
【0032】
このように、本実施形態に係るガス供給システム1は、ノズル3の凍結を圧縮機5から吐出された高温ガスの保有熱を利用して溶融させる構成であるから、例えば低温環境下であっても、新たなヒータ等を設けること無く、ノズル3の凍結を防止して充填終了後のノズル3の取り外しを容易化することが可能となる。
【0033】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
図4に示すように、本実施形態では、バイパス流路9の代わりに、圧縮機5から吐出された高温(例えば100℃)のガスを、蓄圧器6に流入させる前にガス流路4から分岐させるとともにプレクーラ8の下流側で再びガス流路4に合流させるバイパス路12を備えている。
【0034】
バイパス路12には遮断弁12aが設けられており、ガス流路4にはバイパス路12の合流位置よりも上流側に遮断弁4aが設けられている。そして、これら遮断弁4a,12aが制御部41からの制御信号により選択的に開閉されることによって、タンクに充填される水素ガスの供給流路がガス流路4とバイパス路12とに切り替えられるように構成されている。
【0035】
上記のガス供給システム1によって車両Sに搭載されたタンクへ水素ガスを充填する場合は、ノズル3を車両Sの水素ガス充填口(供給口)に設けられたレセプタクル22に嵌合状態に接続する。
【0036】
この状態にて、ノズル3のトリガーレバーを引いてディスペンサ部11を作動させる。
通常時は、遮断弁4aが開、遮断弁12aが閉状態であり、水素カードル2から圧縮機5で圧縮されて蓄圧器6に溜められていた水素ガスが、プレクーラ8によって予冷されてノズル3側へ送り出される。すると、ノズル3内に設けられている例えば逆止弁からなる開閉弁(図示略)が開き、車両Sに搭載されているタンク内への水素ガス充填が開始される。
【0037】
本実施形態において、制御部41は、レセプタクル22とノズル3との嵌合部温度を温度センサT1によって監視しており、この嵌合部に凍結の可能性があると判断した場合には、圧縮機5からの高温ガスを利用してノズル3を昇温させる。
【0038】
より具体的に説明すると、図5のフローチャートに示すように、まずステップST1にて、ノズル3とレセプタクル22との嵌合部が少なくとも氷点以下に設定される所定の昇温許可閾値、例えば0℃以下であるかどうかを温度センサT1の出力に基づいて判定し、0℃以下でない場合には、そのまま通常の充填を続行する。
【0039】
ノズル3とレセプタクル22との嵌合部が0℃以下である場合には、ステップST2にて充填圧力を圧力センサP1により計測し、充填終了が近いかどうかを判定する(ステップST3)。そして、検出圧力が充填終了間際所定閾値に満たず、充填終了間際でない場合には、そのまま通常の充填を続行する。
【0040】
これに対し、検出圧力が充填終了間際判定閾値以上、すなわち充填終了間際(例えば10秒前)である場合には、遮断弁4aを閉、遮断弁12aを開とすることにより、圧縮機5からの高温ガスがプレクーラ8をバイパスしてノズル3に供給されることになる。これにより、圧縮機5からの高温ガスの保有熱によってノズル3が昇温し、ノズル3の嵌合部での凍結が溶融される。以上の判定は、充填が終了するまでの間、所定周期で行われる。
【0041】
タンクに充填終了圧力に相当する量の水素ガスが充填されると、制御部41はディスペンサ部11の遮断弁を閉じる。これにより、水素ガス充填は終了する。
タンクへの水素ガス充填終了後は、車両Sのレセプタクル22に接続されたノズル3が当該レセプタクル22から取り外され、当該ノズル3はディスペンサ部11のノズルホルダへ収容される。
【0042】
このように、本実施形態に係るガス供給システム1は、ノズル3の凍結を圧縮機5から吐出された高温ガスの保有熱を利用して溶融させる構成であるから、例えば低温環境下であっても、新たなヒータ等を設けること無く、ノズル3の凍結を防止して充填終了後のノズル3の取り外しを容易化することが可能となる。
【0043】
図6は、本発明に係る他の変形例である。
本変形例では、蓄圧器6の下流にてガス流路4から分岐し、プレクーラ8をバイパスしてプレクーラ8の出口側にてガス流路4に再び合流するバイパス流路13が設けられている。バイパス流路13には、バイパス流路13を通過する水素ガスを加熱するヒータ14が設けられている。また、バイパス流路13には遮断弁13aが設けられている。その他の構成は上記実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0044】
本変形例においては、ノズル3を昇温させる手段として、圧縮機5から吐出された高温のガスをバイパスさせるかわりに、ヒータ14を使用して蓄圧器6から吐出されたガスを加熱する。
【0045】
具体的には、図3および図5に示すフローチャートと同様に、まず、ノズル3とレセプタクル22との嵌合部が少なくとも氷点以下である所定の昇温許可閾値、例えば0℃以下であるかどうかを温度センサT1の出力に基づいて判定し、0℃以下でない場合には、そのまま通常の充填を続行する。
【0046】
そして、ノズル3とレセプタクル22との嵌合部が0℃以下である場合には、充填圧力を圧力センサP1により計測し、充填終了が近いかどうかを判定する。そして、検出圧力が充填終了間際判定閾値に満たず、充填終了間際でない場合には、そのまま通常の充填を続行する。
【0047】
これに対し、検出圧力が充填終了間際判定閾値以上、すなわち充填終了間際(例えば10秒前)である場合には、遮断弁4aを閉、遮断弁13aを開とし、さらにヒータ14を起動させることにより、蓄圧器6からの水素ガスをヒータ14によって加熱する。これにより、水素ガスの温度は例えば40〜50℃となる。
【0048】
この水素ガスをノズル3に供給することにより、その水素ガスの保有熱によってノズル3が昇温し、ノズル3の嵌合部での凍結が溶融される。以上の判定は、充填が終了するまでの間、所定周期で行われる。
【0049】
このように、本変形に係るガス供給システム1は、ノズル3の凍結をヒータ14で加熱した水素ガスの保有熱を利用して溶融させる構成であるから、例えば低温環境下であっても、ノズル3の凍結を防止して充填終了後のノズル3の取り外しを容易化することが可能とる。
【0050】
上記変形例の更なる変形例として、図7に示すように、図4に示したようなヒータ14を設けずに、単にプレクーラ8をバイパスさせる構成としても良い。これによっても、プレクーラ8で冷却されない水素ガスの保有熱により、ノズル3の凍結を溶融させることができる。
【0051】
また、更に他の変形例として、上記のようにバイパス路を設けるのではなく、プレクーラ8による冷却温度を上げても良い。その他の構成は上記実施形態と同様であるので、説明を省略する。
すなわち、図3及び図5に示すフローチャートと同様に、まず、ノズル3とレセプタクル22との嵌合部が所定の低温、例えば3℃以下であるかどうかを温度センサT1の出力に基づいて判定し、3℃以下でない場合には、そのまま通常の充填を続行する。
【0052】
ノズル3とレセプタクル22との嵌合部が3℃以下である場合には、充填圧力を圧力センサP1により計測し、充填終了が近いかどうかを判定する。そして、検出圧力が充填終了間際所定閾値に満たず、充填終了間際でない場合には、そのまま通常の充填を続行し、充填終了間際(例えば10秒前)である場合には、プレクーラ8による冷却温度を維持する。
【0053】
このときのプレクーラ8による冷却温度は、図8に示すように制御される。
すなわち、プレクーラ8によって冷却された水素ガスの温度が3℃を下回らないように制御されることにより、ノズル3の温度が氷点を下回らないようにする。したがって、ノズル3の嵌合部での凍結が抑えられ、充填終了後のノズル3の取り外しを容易化することが可能となる。
【0054】
なお、プレクーラ8による温度設定は、図9に示すように、温度低下の傾きと充填時間予測からノズル3の温度が氷点以下にならないように制御しても良い。
【0055】
また、上記実施形態においては、充填圧力をレセプタクル22に設けられた圧力センサP1で測定する構成であるが、本発明においては、充填終了直前であることを検出できる構成であれば、いかなる構成を用いても良い。
【符号の説明】
【0056】
1…ガス供給システム、2…水素カードル、3…ノズル、4…ガス流路、4a…遮断弁、5…圧縮機、6…蓄圧器、8…プレクーラ、9…バイパス流路(熱交換部)、9a…遮断弁、10…ガスステーション、12…バイパス路、12a…遮断弁、13…バイパス流路、13a…遮断弁、14…ヒータ、22…レセプタクル、P1…圧力センサ(充填圧力検出部)、T1…温度センサ(ノズル温度検出部)、41…制御部(ガス供給温度制御部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機で圧縮されたガスを蓄積する蓄圧器と、
該蓄圧器からのガスを冷却するプレクーラと、
該プレクーラで冷却されたガスを供給対象に充填するためのノズルと、がガス流路に設けられ、
前記ノズルの温度を検出するノズル温度検出部と、
該ノズル温度検出部の検出温度が少なくとも氷点以下である所定の昇温許可閾値よりも低い場合に、前記供給対象に充填されるガスの温度を前記プレクーラで冷却されたガスの温度よりも上昇させるガス供給温度制御部と、
を有するガス供給システム。
【請求項2】
供給対象に対する充填圧力を検出する充填圧力検出部を備え、
前記ガス供給温度制御部は、前記充填圧力検出部による検出圧力がユーザにより設定された充填終了圧力よりも所定圧力だけ低い充填終了間際判定閾値よりも高く、かつ前記ノズル温度検出部の検出温度が前記昇温許可閾値よりも低い場合に、前記供給対象に充填されるガスの温度を前記プレクーラで冷却されたガスの温度よりも上昇させる、請求項1に記載のガス供給システム。
【請求項3】
前記プレクーラを通過したガスを前記ガス流路から分岐させて前記圧縮機あるいは当該圧縮機から流出するガスと熱交換させることにより前記ガスを加熱する熱交換部を備え、
前記ガス供給温度制御部は、ガス流を前記熱交換部側に分岐させることにより、前記供給対象に充填されるガスの温度を前記プレクーラで冷却されたガスの温度よりも上昇させる、請求項1または2に記載のガス供給システム。
【請求項4】
前記プレクーラをバイパスするバイパス流路を備え、
前記ガス供給温度制御部は、ガス流を前記バイパス流路側に切り替えて前記プレクーラをバイパスさせることにより、前記供給対象に充填されるガスの温度を前記プレクーラで冷却されたガスの温度よりも上昇させる、請求項1または2に記載のガス供給システム。
【請求項5】
前記ガスを加熱するヒータを備え、
前記ガス供給温度制御部は、前記供給対象に充填されるガスを、前記ヒータで加熱することにより、前記プレクーラで冷却されたガスの温度よりも上昇させる、請求項1または2に記載のガス供給システム。
【請求項6】
圧縮機で圧縮されたガスを蓄積する蓄圧器と、
該蓄圧器からのガスを冷却するプレクーラと、
該プレクーラで冷却されたガスを供給対象に充填するためのノズルと、がガス流路に設けられ、
前記ノズルの温度を検出するノズル温度検出部と、
該ノズル温度検出部の検出温度が少なくとも氷点以下である所定の昇温許可閾値よりも低くならないように前記供給対象に充填されるガス温度を制御するガス供給温度制御部と、を有するガス供給システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−2052(P2011−2052A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−146418(P2009−146418)
【出願日】平成21年6月19日(2009.6.19)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】