説明

ガス用紫外線照射装置およびドライ表面処理装置

【課題】オゾンやラジカル酸素等、高濃度の紫外線照射済ガスを生成するガス用紫外線照射装置と、該装置を用いたドライ表面処理装置。
【解決手段】ランプハウス2と、上方からガスを供給する供給部5と、供給ガスに紫外線を照射する複数本のUVランプ4と、下方から紫外線照射済ガスを排出する排出部6とを有し、複数本の紫外線放射部3を間隔をあけ平行してランプハウス内の全体にほぼ均一に前後は上下に段違いに上から見て前後の間隙がないよう配し、前後の壁面8と紫外線放射部3の間隔がUVランプ4で通過ガスを変質できる有効照射距離以内であるガス用紫外線照射装置1。この装置を用いて生成排出した高濃度のラジカル酸素(O)を被処理体11に接触させて処理するドライ表面処理装置。酸素(O)またはオゾン(O)を供給し、185nmや254nmの紫外線を照射し、ラジカル酸素(O)を生成排出し、高精細な表面処理をすることが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、供給されたガスに対して効率よく紫外線を照射して変質させムラなく高濃度の紫外線照射済ガスを生成排出できるガス用紫外線照射装置と、この装置を用いて供給ガスを変質させ生成した紫外線照射済ガスであるオゾンやラジカル酸素を用いてプリント基板等の被処理体の表面処理を行うことができるドライ表面処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
供給されたガスに紫外線を照射するガス用紫外線照射装置は、プリント基板等のドライ表面処理装置に多く利用されている。表面処理装置はドライ表面処理とウェット表面処理の2種類に大別できる。ドライ表面処理の代表的な方法は、被処理体を収納したチャンバ内を真空状態にして発生させたプラズマにより表面処理を行うものである(特許文献1 の特開平2004−267951号公報参照。)。ウェット表面処理の方法は、生成したオゾン水に被処理体を浸しこれに紫外線を照射し発生したラジカル酸素により表面処理を行うものである。プラズマ表面処理装置は、真空状態を作るためのポンプ装置と、被処理体を収納することができる大きさと真空に耐え得る頑丈な構造を持ったチャンバと、プラズマを発生させるための装置とを必要とするため、装置が大掛かりであり、製造コストが高い。装置が大きく設置場所の確保が困難である。被処理体を交換するたびにチャンバ内を真空状態にしたり大気圧に戻したりする作業がひつようであるため、被処理体一個当たりの処理速度が遅い。プラズマ表面処理は大掛かりな装置を必要とし、被処理体一個あたりの処理に要する時間が長いため、プラズマ表面処理と比較して比較的小型な装置ですみ処理速度が速いウェット表面処理装置が表面処理装置の主流となっている。
【0003】
プリント基板製造業界が直面している課題。IT関連機器の心臓部ともいえる電子回路基板は、プリント配線技術によって、急速に高精細化・高密度化を達成してきたが、今日の社会的・経済的要求は、その到達点に満足せず、この分野においては、ますます小型化・軽量化・低価格化への要求と、高性能・高機能化への要求という、二律背反的なテーマが突きつけられている。このテーマに対していかに応え、解決していくかは、今日、電子回路基板製造分野における最も重要な技術課題となっている。こうした矛盾する要請にたいして、プリント基板製造業界では、配線構造を微細化・多層化することで対応してきた。しかし、従来の工程では技術上の限界から、すでにこれ以上の微細な配線構造を形成することは困難になっており、不良発生率の増大も悩みの種となっている。たとえば、従来の製造技術では、メタルピッチが30μmより微細な配線構造を形成することは、ほとんど不可能である。それは、レジスト(ドライフィルム)現像後の残渣を除去する際に、薬液を使用するウェットプロセスという工程で処理しているが、配線構造が超微細化しているもとで、単なるウェットプロセスでは残渣(スカム)を除去しきれなくなっているためである。同様に、ビア径が70μm以下の構造を形成する場合も、従来のウェットプロセスではビア径が小さすぎ、薬液の回りが悪くなるため、ビア底やビア壁面の有機物残渣(スミア)を取り除くことは、困難な事態となっている。つまり、配線構造の微細化が進行するもとで、従来のウェットプロセスという手法では、十分な残渣除去を行うことがもはや技術的に限界となっており、この問題を解決しない限り、前後の工程をどんなに精緻にしても、不良発生率の低減、歩留率の改善は不可能なのである。そして、プリント基板製造工程におけるこの歩留率の低さは、製造効率を悪化させ、コストダウンの大きな障害となっており、今後ますます進行するであろうIT化の流れに逆行している。プリント基板製造業界ばかりでなく、社会全体の利便性向上にとっても、同製造工程における不良発生率の低減、歩留率の大幅な改善、さらにはいっそうの微細化への対応は、急務の課題となっており、現状をブレイク・スルーしていく技術の出現が待たれている。
【0004】
ドライ表面処理装置には、プラズマ表面処理とは異なる、大気圧ドライ表面処理装置もある。これは、チャンバ内に被処理体を収納し大気圧状態で酸素やオゾンを供給し、チャンバ内に設置されたUVランプで被処理体を直接照射して被処理体表面でラジカル酸素を発生させることにより、表面処理を行うというものである。この方法は、さらに、チャンバ内にガスを供給したら密封した状態で行なうものと、チャンバ内にガスを供給し続け排出し続ける状態で行なうものとがある。
【0005】
上記した大気圧下でチャンバ内への酸素供給と排気とを連続的に行なう表面処理装置としては、たとえば、特許文献2の特開平10−036536号公報(光ディスクの製造方法、表面処理装置及び光アッシング装置)があげられる。この発明は、特許請求の範囲によれば、 請求項1「処理チャンバと、この処理チャンバ内に収容される被処理体を保持する保持台と、この保持台に対向させて設けられて酸素を含む処理ガスを導入する処理ガス導入部と、ラジカル酸素を発生させるために前記処理ガス導入部と前記保持台との間に複数段に亘って設けられた紫外線ランプと、前記保持台に対して前記処理ガス導入部とは反対側に設けられたガス排気部とを備えたことを特徴とする。」、請求項2「前記紫外線ランプは、少なくとも波長185nm近傍の紫外線と、波長254nm近傍の紫外線とを出力する低圧水銀ランプであることを特徴とする請求項1記載の表面処理装置。」、請求項3「前記低圧水銀ランプは、冷陰極水銀ランプであることを特徴とする請求項2記載の表面処理装置。」、請求項4「前記処理ガス導入部は、空気を導入する空気導入部と、酸素を必要に応じて導入する酸素導入部とよりなることを特徴とする請求項1乃至3記載の表面処理装置。」、請求項5「溝またはピットの形成されたディスク基板上に複数の層を形成してなる光ディスクの製造方法において、前記各層を形成するに際して、処理チャンバと、この処理チャンバ内に収容される被処理体を保持する保持台と、この保持台に対向させて設けられて酸素を含む処理ガスを導入する処理ガス導入部と、ラジカル酸素を発生させるために前記処理ガス導入部と前記保持台との間に複数段に亘って設けられた紫外線ランプと、前記保持台に対して前記処理ガス導入部とは反対側に設けられたガス排気部とを備えてなる表面処理装置を用いて、前記ディスク基板及び前記層の表面にラジカル酸素で表面酸化処理を施すように構成したことを特徴とする光ディスクの製造方法。」、請求項6「 前記層は、金属薄膜反射層または情報記録層及び保護コート層を含むことを特徴とする請求項5記載の光ディスクの製造方法。」、請求項7「前記溝またはピットの形成されたスタンパの形成時に、このスタンパ及びスタンパ基板に前記表面酸素処理を施すように構成したことを特徴とする請求項5または6記載の光ディスクの製造方法。」、請求項8「被処理体の表面のレジスト等の薄膜をラジカル酸素により灰化させる光アッシング装置において、処理チャンバと、この処理チャンバ内に収容される被処理体を保持する保持台と、この保持台に対向させて設けられて酸素を含む処理ガスを導入する処理ガス導入部と、ラジカル酸素を発生させるために前記処理ガス導入部と前記保持台との間に複数段に亘って設けられた紫外線ランプと、前記保持台に対して前記処理ガス導入部とは反対側に設けられたガス排気部と前記保持台と前記紫外線ランプとの間に設けられて前記被処理体の表面を加熱する近赤外線を放出する近赤外線ランプとを備えたことを特徴とする光アッシング装置。」、請求項9「前記紫外線ランプは、少なくとも波長185nm近傍の紫外線と、波長254nm近傍の紫外線とを出力する低圧水銀ランプであることを特徴とする請求項8記載の光アッシング装置。」、請求項10「前記低圧水銀ランプは、冷陰極水銀ランプであることを特徴とする請求項9記載の光アッシング装置。」、請求項11「前記処理ガス導入部は、空気を導入する空気導入部と、酸素を必要に応じて導入する酸素導入部とよりなることを特徴とする請求項8乃至10記載の光アッシング装置」、請求項12「前記近赤外線ランプの近傍には、これより前記紫外線ランプへ向かう近赤外線を遮断する遮蔽板が設けられていることを特徴とする請求項8乃至11記載の光アッシング装置。」、請求項13「 前記遮蔽板は、前記近赤外線を反射する反射板であることを特徴とする請求項12記載の光アッシング装置」、請求項14「前記紫外線と前記近赤外線は、交互に照射されることを特徴とする請求項8乃至13記載の光アッシング装置。」、というものである。
【0006】
上記した従来の装置に使用されるUVランプは、185nmの波長と254nmの波長が同時に放射されるタイプのものである。したがって一種類のUVランプを用いることで、185nmの波長の紫外線で酸素(O)を分解してオゾン(O)を生成し(O+185nm=2O→O+O=O)、254nmの波長の紫外線でオゾン(O)を分解してラジカル酸素(O)を生成することができる(O+254nm=O+O)。
【特許文献1】特開平2004−267951号公報
【特許文献2】特開平10−036536号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記した従来のガス用紫外線照射装置および表面処理装置に関する問題点について述べる。
【0008】
まず、上記した各装置はいずれも非常に大型であり、大きな設置スペースを必要とすることである。プラズマ方式で用いる真空用チャンバにせよ、ウェット方式で用いるチャンバにせよ、大気圧ドライ方式で用いるチャンバにせよ、非常に大型のものが必要である。チャンバの内部に、UVランプその他の装置をセットし、そのうえ被処理体を収容しなければならないからである。設置する場所の確保が難しい場合がある。広い空間での処理のため、UVランプは出力の大きな高価なものを使用しなければならない。
【0009】
また、被処理体一個当たりの処理速度が遅いため、コストが高くなる。プラズマ方式、ウェット方式、大気圧ドライ方式のどの方式も、被処理体をセットし表面処理して次の被処理体と交換するまでにかかる時間が長い。処理を構成する作業プロセスが多いことと、表面処理自体にかかる時間が長いことによる。表面処理に要する時間が長いのは、生成されるラジカル酸素の濃度が低いためである。
【0010】
また、必要とするUVランプ(紫外線照射部)の本数が非常に多いことである(本発明における紫外線照射部とは、たとえば直管型のUVランプならば紫外線照射部は1本であるし、コンパクト型のUVランプならば紫外線照射部は2本、という数え方をしている。)。被処理体全体を丸ごと表面処理するために、広いチャンバ内部の被処理体の上方に多数のUVランプを配置しなければならない。UVランプの本数が多く、その分、装置の製造コストやランディングコストが高くなる。特許文献2の図2の装置では20本、図17の装置では22本のUVランプが使用されている。
【0011】
また、表面処理にともなう不良品の割合が高く歩留りが低い。現状、大気圧ドライ表面処理を行なった場合、歩留りは3割程である。不良品が多数発生する原因は1つではなく多数の原因が複合した結果である。第一の理由は、技術の進歩に伴い要求される精密の度合いが非常に高度化しているためで、製品自体が非常に微細構造のものへと変化しており、表面処理にも高度な精度が求められるようになってきた。第二の理由は、酸素からオゾンへ、オゾンからラジカル酸素へ等、ガス用紫外線照射装置部分における各段階でガスが変質する割合が低く、生成されるラジカル酸素濃度も低いためである。ラジカル酸素濃度が低いと、表面処理が不十分となる。第三の理由は、ガス用紫外線照射装置部分が生成するラジカル酸素の濃度が低いこととあわせて、ラジカル酸素の濃度にムラが大きいことである。ラジカル酸素の濃度の低さとムラは、大気圧ドライ表面処理装置の歩留りを悪化させている大きな要因である。チャンバの広い空間の中でUVランプを点灯させるため、どうしても濃度は均一になりにくいし、濃度は高くなりにくい。UVランプにはガスを変質させることが可能な距離があり、それ以上UVランプから離れると、波長が伸びてしまいエネルギーが低下してガスは変質しない。広いチャンバ内部では、UVランプからガスまでの距離が、ガスを紫外線で変質可能な距離以上に離れた場所がどうしても存在する。たとえば、チャンバの前後の壁面とUVランプとの間に距離があれば、ここを通過するガスの変質割合は低くなる。また、ガス用紫外線照射装置部分であるチャンバの空間内にUVランプの全体がセットされているため、特許文献2の図2や図17の装置もそうであるが、UVランプの口金など紫外線を放射せず紫外線をさえぎる部分があることにより、UVランプの左側と右側を通過するガスは変質せずに素通りする。また、特許文献2のように、チャンバに対してガス供給とガス排出を継続しつつ紫外線を照射するタイプの装置では、ガスを変質させることが可能な距離は、ガスが静止している場合と比較して大幅に短くなる。ガスを変質できるウVランプとの距離の範囲内にガスがとどまっている時間が短いためである。前後の壁面とUVランプとの間を通過するガスは、UVランプと壁面との間隔が広いことと、3方向からの同時照射がないことで、UVランプ間を通るガスと比べて、ほとんど変質しないまま通過するといっていい状態である。特許文献2の装置は処理ガス導入部13として、酸素を導入する細管と空気を導入する太管を有しているが、このような構造は酸素の流れとは別に空気の流れを作ってしまうため、酸素と空気の濃度のムラが生まれやすく、これがそのままラジカル酸素の濃度のムラとなって被処理体に影響を及ぼし、被処理体の中央付近でラジカル酸素濃度が低くなり、歩留りを悪化させていることが考えられる。これもチャンバが大型で内部空間が広ために濃度にムラが生まれやすい影響のあらわれである。特許文献2の図2と図17の装置は、全体のラジカル酸素濃度を高めるための工夫として、UVランプを上下方向に3段あるいは4段配置しているが、チャンバ内の空間が広く前後の幅が長いため、空気を導入する太管のある部分と他の部分ではガスの流れる速度に大きな違いを生じてしまい、流れの遅い部分では少量の比較的濃度の高いラジカル酸素が生成され、流れの速い部分でさらに低い濃度のラジカル酸素が大量に生成され、全体として濃度にムラが生じる結果となっている。特許文献2をはじめとする従来の装置は、UVランプで被処理体を直接照射するので、被処理体の温度が上昇して高温とり、その結果歩留りを悪化させる一因になっている。被処理体を高温にさらすことは、微細な精度の表面処理と歩留りの改善とコストの低減が遠のくことを意味している。特許文献2の装置は温度上昇をおさえるために、図2と図17の装置においてはUVランプと被処理体の距離を大きくとり、さらに図17の装置においてはUVランプと近赤外線ランプの交互点滅を行なっているが、その分、従来の装置よりもさらに大掛かりな装置となるが、ラジカル酸素濃度も低くなり、根本的に被処理体の温度上昇を解消するところまではいたっていない。
【0012】
また、生成したラジカル酸素は全部が表面処理に有効利用されるわけではなく、一部のラジカル酸素はまったく無駄になっている。これはドライ方式でもウェット方式でも同様である。ラジカル酸素をチャンバ内の雰囲気中や水槽内で生成しても、その後ラジカル酸素が被処理体まで到達してその表面に接するかどうかは偶然任せとなっている。特許文献2は、従来の装置がチャンバ内に導入されたガスの流れが被処理体を通らずに排気されており、せっかく生成されたラジカル酸素の一部が排気と一緒に捨てられていることに着目し、チャンバの下方から排気することによりガスの流れが被処理体を通過するように改善した。それにより従来の装置よりもラジカル酸素の利用率に多少改善はみられるが、まだ完全ではない。被処理体に接触せずに排気されるガスの流れが依然存在している状況に変わりはない。従来の装置では、たとえラジカル酸素を表面処理に十分な量を生成していたとしても、実際に表面処理する段階でラジカル酸素が被処理体の表面に接触しなければ、その被処理体は不良品となってしまう。
【0013】
また、被処理体全面の表面処理はできるが、部分的な表面処理はできない。被処理体の全体を取りまいているガス中に浮遊しているラジカル酸素が接触するのであって、被処理体表面を部分的に表面処理することはできない。前記従来の装置では希望した部分だけに表面処理を施すことはできないので、たとえばラジカル酸素を用いた表面処理でプリント基板の配線を形成する等の超微細配線構造の掘削はできない。
【0014】
また、185nmと254nmの2つの波長の紫外線がUVランプから同時に放射されおり、2つの波長の割合はUVランプでほぼ決まっているため、ラジカル酸素の生成効率の優れた波長割合への変更を希望したとしても、変更することはできない。2波長併存UVランプを用いた従来の装置によれば、酸素のあるところではオゾンの生成と分解がつねに繰り返されているため、高濃度のオゾンを生成することができない。
【0015】
また、ガスに紫外線を照射できる能力、つまり、ラジカル酸素を生成できる能力は、個々の装置によってほぼ固定的に決まっており、求められる表面処理能力が高度になったからといって、これに対応してラジカル酸素生成能力を高めることはできない。これまでの装置を廃して新しい装置に交換するほかなかった。
【0016】
また、従来の表面処理装置は構造が大掛かりで製造コストが高いため、数億円程度の価格で市場に提供されている。非常に高額な装置である。
【0017】
また、プリント基板製造業において大気圧ドライ表面処理装置があまり用いられてこなかった理由は、以下のとおりである。第一に、低温処理に対応できない。半導体製造における配線形成工程では、500℃までの温度が許容されるが、プリント基板製造では、材料がエポキシ系樹脂やポリイミド系樹脂、液晶ポリマー等、いわゆる有機物質系材料であり、耐熱性がはるかに悪いため、プロセス温度をおよそ150℃以下に引き下げる必要がある。第二に、製造コストの低減が難しい。ドライ表面処理装置の価格は一台数億円といわれており、これをそのままプリント基板製造工程に転用することは、コスト面から見て不可能である。現状において、プリント基板の製造コストを考慮すると、現在の大気圧ドライ表面処理装置の5分の1から10分の1程度の価格で提供する必要がある。第三に、装置の構造上の問題である。プリント基板製造のなかでもフレキシブル基板の量産ラインを想定した場合、ロール・ツー・ロール構造に対応できなければならない。しかし、半導体製造工程で使用されているドライプロセス装置では、バッチ処理(一度に20枚程度のチップを処理する方式)が主流となっており、これではロール・ツー・ロールには対応できない。
【0018】
本発明は、上記した従来の問題点を解決するためのガス用紫外線照射装置およびドライ表面処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1のガス用紫外線照射装置は、少なくとも、紫外線照射の対象となるガスを上方から内部に供給するための供給部と、供給部から供給されてきた前記のガスに対して内部に設けられた複数本のUVランプにより紫外線を照射するためのランプハウスと、内部で紫外線照射処理を受けたガスを排出するための排出部とを有したガス用紫外線照射装置において、前記のUVランプは、複数本の紫外線放射部がおのおの間隔をあけ平行してランプハウス内の全体にほぼ均一に、しかも、前後に隣接する紫外線放射部は上下に段違いであり上から見た場合に前後の間隙がないよう配置され、さらに、ランプハウスの前後の壁面とこれに対向した最前列と最後列の紫外線放射部との間隔がUVランプで通過ガスを変質できる有効照射距離以内であることを特徴とする。
【0020】
また、本発明の請求項2のガス用紫外線照射装置は、請求項1記載のガス用紫外線照射装置において、UVランプの内部で発生した紫外線を透過して外部に放射する紫外線放射部をランプハウスの中に配置し、UVランプの内部で発生した紫外線を透過せず紫外線を放射しない部分はランプハウスの外に配置したことを特徴とする。
【0021】
また、本発明の請求項3のガス用紫外線照射装置は、請求項1または2記載のガス用紫外線照射装置において、ランプハウスの側面形状が縦長長方形であることを特徴とする。
【0022】
また、本発明の請求項4のガス用紫外線照射装置は、請求項1または2記載のガス用紫外線照射装置において、ランプハウスの側面形状が逆三角形漏斗状であることを特徴とする。
【0023】
また、本発明の請求項5のガス用紫外線照射装置は、請求項1、2、3または4記載のガス用紫外線照射装置において、ガスの供給と紫外線照射とガス排出を複数回連続処理できるよう、複数の上記のランプハウスを排出部と供給部で直列に連結したことを特徴とする。
【0024】
また、本発明の請求項6のガス用紫外線照射装置は、請求項1、2、3、4または5記載のガス用紫外線照射装置において、ランプハウス内部のUVランプが、紫外線185nmのUVランプ、または、紫外線254nmのUVランプ、あるいは紫外線185nmのUVランプと紫外線254nmのUVランプの両方であることを特徴とする。
【0025】
また、本発明の請求項7のガス用紫外線照射装置は、請求項1、2、3、4、5または6記載のガス用紫外線照射装置において、ガス流路の上流側に紫外線185nmのUVランプを配し、下流側に紫外線254nmのUVランプを配したことを特徴とする。
【0026】
また、本発明の請求項8のガス用紫外線照射装置は、請求項1、2、3、4、5または6記載のガス用紫外線照射装置において、供給するガスに酸素(O)が含まれ、紫外線照射によってオゾン(O)が生成され、排出されるガスに高濃度のオゾン(O)が含まれることを特徴とする。
【0027】
また、本発明の請求項9のガス用紫外線照射装置は、請求項1、2、3、4、5、6または7記載のガス用紫外線照射装置において、供給するガスに酸素(O)またはオゾン(O)が含まれ、紫外線照射によってラジカル酸素(O)が生成され、排出されるガスに高濃度のラジカル酸素(O)が含まれることを特徴とする。
【0028】
また、本発明の請求項10のガス用紫外線照射装置は、請求項1、2、3、4、5、6、7、8または9記載のガス用紫外線照射装置において、ランプハウスから出た紫外線照射済ガスを貯留し底のガスから排出させるための貯留室を設けたことを特徴とする。
【0029】
また、本発明の請求項11のガス用紫外線照射装置は、請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9または10記載のガス用紫外線照射装置において、紫外線照射済ガスを大気圧中に排出する排出口がスリットノズルであることを特徴とする。
【0030】
また、本発明の請求項12のドライ表面処理装置は、請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10または11に記載されたガス用紫外線照射装置を用いて、紫外線照射済ガスを大気圧中でプリント基板等の被処理体の上に排出することにより、被処理体の表面処理が可能であることを特徴とする。
【0031】
また、本発明の請求項13のドライ表面処理装置は、請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10または11に記載されたガス用紫外線照射装置を用いて、紫外線照射済ガスを大気圧中でプリント基板等の被処理体の上に排出するに、被処理体のあらかじめ表面処理することが設定された部分にだけ紫外線照射済ガスを排出することにより、被処理体の全体あるいは特定部分のみの表面処理が可能であることを特徴とする。
【0032】
また、本発明の請求項14のドライ表面処理装置は、請求項12または13記載のドライ表面処理装置において、酸素(O)またはオゾン(O)を供給し、紫外線照射により高濃度のラジカル酸素(O)を生成し、高濃度のラジカル酸素(O)をプリント基板等の被処理体の上に排出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0033】
請求項1に記載されたガス用紫外線照射装置によれば、ランプハウス内には複数本のUVランプの紫外線放射部が密に集積された状態で配置されており、ランプハウスをコンパクトにまとめることができるため、このガス用紫外線照射装置ならびにこの装置を使用した各装置が小型化できる。ランプハウスに被処理体を収納する空間が不要であることと、比較的少ない本数の紫外線放射部でガスに対して効率的に紫外線照射できる構造であるため、紫外線放射部の本数を大幅に削減して、非常に小さくできる。また、ランプハウスは構造が簡単であるため軽量化をはかることができる。また、前後に隣り合う紫外線放射部は上下に段差が設けられ、上から見た場合に間隙がない状態に配置されているため、供給されたガスはランプハウスの内部を上方から下方に向かい移動する際に、狭い流路を各紫外線放射部に当たりながら分流と合流を繰り返し蛇行しながら下降し、蛇行した分だけ長く紫外線照射を受けることができる。狭いランプハウス内部でのこのようなガスの流れは、紫外線を受けて変質したガスを拡散させて濃度を均一化させることに役立つ。また、前後に隣り合う紫外線放射部の間の間隔が非常に近くに迫っており、ほぼ同じ間隔でランプハウス内部に均一に紫外線放射部が配置されていて上下の間隔も当然狭いため、紫外線放射部の間を流れるガスは常に紫外線放射部と非常に接近した距離を通過するため、非常に強い紫外線照射を受けることができる。また、前後の壁面と紫外線照射部との間を通過するガスも強い紫外線を受けることができる。ランプハウスの前後の壁面とこれに対向した最前列と最後列の紫外線放射部との間隔がUVランプで通過ガスを変質できる有効照射距離以内であるため、高濃度のオゾンやラジカル酸素を生成可能である。ランプハウス内部の流路はすべて複数本の紫外線放射部により二重三重に紫外線に曝された状態なので、通過ガスに強力な紫外線を効率よく照射できる。ランプハウス内には、紫外線放射部から離れた強い紫外線を受けられないエリアは存在しない。ガスに対して非常に強い紫外線照射能力を有している。高濃度のオゾンやラジカル酸素を生成可能である。
【0034】
請求項2に記載されたガス用紫外線照射装置によれば、ランプハウス内には、紫外線が照射されない影のエリアは存在しない。ガスに対してムラなく完全な紫外線照射が可能となる。
【0035】
請求項3に記載されたガス用紫外線照射装置によれば、上方から供給されたガスに対して全体的に効率よく均一な紫外線照射をすることができる。オゾンやラジカル酸素を効率よく生成して下方に行くほど濃度を高めることができる。
【0036】
請求項4に記載されたガス用紫外線照射装置によれば、上方から供給されたガスに対して、ランプハウスの上方ほど多い紫外線放射部で紫外線を照射しつつ、下方ほど狭まるランプハウスにより、効率よい紫外線照射をすることができる。オゾンやラジカル酸素を生成して下方に行くほど濃度を高めることができる。
【0037】
請求項5に記載されたガス用紫外線照射装置によれば、連結するランプハウスが多いほど、供給したガスに対する紫外線照射量を倍増させることができる。それだけ、オゾンやラジカル酸素の濃度をさらに高めることができるようになる。連結するランプハウスの数を増加または減少させることで、簡単に、要求される表面処理能力に対応することができる。
【0038】
請求項6に記載されたガス用紫外線照射装置によれば、必要に応じて、紫外線185nmを照射させることも、紫外線254nmを照射させることも、紫外線185nmと紫外線254nmを照射させることもできる。紫外線185nmは酸素からオゾンを生成することができ、紫外線254nmはオゾンからラジカル酸素を生成することができ、2つの波長の紫外線は酸素やオゾンからラジカル酸素を生成することができる(図13参照。)。2種類の波長の紫外線を照射する場合、それぞれの波長のUVランプの本数を調整することで、ガスに照射する2つの波長の比率を調整することができるため、効率的なオゾンやラジカル酸素の生成が可能となる。
【0039】
請求項7に記載されたガス用紫外線照射装置によれば、上流側で紫外線185nmを照射し、下流側で紫外線254nmを照射することができる。酸素またはオゾンを含むガスを供給することにより、まず紫外線185nmの照射により高濃度のオゾンを生成し、つづく紫外線254nmの照射により高濃度オゾンから高濃度ラジカル酸素を生成することができる(図13(C)参照。)。
【0040】
請求項8に記載されたガス用紫外線照射装置によれば、均一かつ高濃度のオゾンを生成することができる。
【0041】
請求項9に記載されたガス用紫外線照射装置によれば、均一かつ高濃度のラジカル酸素を生成することができる。
【0042】
請求項10に記載されたガス用紫外線照射装置によれば、ランプハウスで紫外線照射を受けたガスはひとまず貯留室に入れられる。ランプハウスで生成されたオゾンあるいはラジカル酸素は、貯留室に落ちてきて底に溜まる。したがって貯留室の下ほどオゾンやラジカル酸素の濃度が高く、排出時はつねに貯留室の下方に溜まっている高濃度のオゾンやラジカル酸素を排出できる。
【0043】
請求項11に記載されたガス用紫外線照射装置によれば、ランプハウスから排出された紫外線照射済ガスをスリットノズルから噴射することができる。スリットノズルから排出することで、紫外線照射済ガスを高濃度のまま被処理体の表面めがけて排出することが可能となる。もちろん、高濃度のラジカル酸素を生成して被処理体をスリットノズルと直交方向に移動させながら噴射させれば、プリント基板のドライ表面処理を行うことができる。
【0044】
請求項12に記載されたドライ表面処理装置によれば、紫外線照射済ガスを被処理体に向けて排出することにより表面処理を行うことができる。
【0045】
請求項13に記載されたドライ表面処理装置によれば、紫外線照射済ガスをあらかじめ設定しておいた表面処理が必要な部分だけに排出することにより、被処理体の表面全体あるいは表面の設定された部分のみを設定どおりに表面処理することができる。プリント基板の超微細配線構造の掘削も可能となる。
【0046】
請求項14に記載されたドライ表面処理装置によれば、ガス用紫外線照射装置から生成排出された高濃度のラジカル酸素により、被処理体の表面処理を行うことができる。
【0047】
本発明に係わるドライ表面処理装置によれば、生成された高濃度の紫外線照射済ガス(ラジカル酸素(O))を無駄にすることなく100%表面処理に利用することができるため、効率のよい表面処理ができる。プリント基板や半導体製造における残渣除去クリーニングや微細配線の掘削等の処理ができる。被処理体をチャンバに出し入れする交換作業が不要であるため、作業時間が短縮できる。従来の半導体製造におけるバッチ処理ではなく、枚葉処理(1枚ずつ処理する方式)を採用することが可能となる。ロール・ツー・ロール処理へも対応可能である。それだけでなく、プリント基板製造における従来の工程をほぼそのまま活用しながら、圧倒的に高い処理能力を、従来のウェットプロセスよりもはるかに少ない工程で達成できる。ラジカル酸素の濃度が高いため、表面処理にかかる時間が短縮され、処理速度が速い。紫外線を被処理体に直接照射しないので、被処理体を表面処理するプロセス温度が120℃前後までしか上がらないため、高温での製品破損の恐れがない。従来技術から見れば驚異的な、歩留り率90%以上の数値を実際に達成している。
【0048】
ガス用紫外線照射装置の主要部分はランプハウスとUVランプだけなので価格を安くできる。従来数億円していたドライ表面処理装置を、わずか2000万円台で市場に提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
以下、本発明に係わるガス用紫外線照射装置およびドライ表面処理装置を実施するための最良の形態について説明するが、本発明がこれらの形態にのみ限定されるべきものでないことはいうまでもない。
【0050】
図中1はガス用紫外線照射装置である。ガス用紫外線照射装置1は、ランプハウス2の内部に棒状の紫外線放射部3を有する複数本のUVランプ4を配置し、紫外線照射の対象であるガスを上方からランプハウス2内に供給するための供給部5と、UVランプ4の紫外線照射にさらされランプハウス2内を通過し終わった紫外線照射済ガスをランプハウス2外に排出するための排出部6とを有している。1本の紫外線照射部3を有したUVランプ4を用いてもよく、複数本の紫外線放射部3が平行に並んでいるUVランプ4を用いてもよい。UVランプ4には実際に紫外線を放射する紫外線放射部3と紫外線を放射しない部分7があり、紫外線放射部3をランプハウス2内部に配し、紫外線を放射しない部分7をランプハウス2の外に配して設置する。紫外線放射部3とは、具体的には、UVランプ4の内部で発生した紫外線を透過して外部に放射するガラス管のことである。紫外線を放射しない部分7とは、具体的には、UVランプ4の内部で発生した紫外線を透過せず紫外線を放射していない口金等のことである。UVランプ4が放射する紫外線を無駄なくガスに照射し、かつ、ランプハウス2内に紫外線の当たらない死角をつくらない構造となっている。ガスをランプハウス2内に供給するための供給部5はランプハウス2の上方に配される。供給部5は、ガスの送管をランプハウス2内部の上方に設置し、紫外線放射部3と平行にあけられた複数の穴からガスを供給する。ランプハウス2内のUVランプ4は、複数本の紫外線放射部3がおのおの間隔をあけ平行してランプハウス2内の全体にほぼ均一に配置されている。前後に隣接する紫外線放射部3は上下に段違いであり上から見た場合に前後の間隙がない。紫外線放射部3と対向したランプハウス2の前後の壁面8との間隔は、この間を通過するガスをUVランプ4で変質できる有効照射距離以内である。有効照射距離はUVランプ4の性能によって異なるため、紫外線放射部3と壁面8との間隔は、たとえば10数mmとする場合もあれば、4mmとする場合もあれば、2mmとする場合もある。段差的に隣接している紫外線放射部3同士の各間隔は略3〜7mm程度である。紫外線放射部3とガスとの距離を短くすることで、すべてのガスが強力な紫外線を受けることができる。複数本の紫外線放射部3をほぼ均一で段違いに配置することにより、ランプハウス2内部の流路はすべて二重三重に紫外線に曝される状態となり、通過ガスに強力な紫外線を照射することができる。供給部5から供給されたガスは、紫外線放射部3に吹き付けられ、複数本の紫外線放射部3に衝突と分散を繰り返しながらランプハウス2内を上方から下方へと流れ下る。ランプハウス2で紫外線照射を終えたガスを貯留するための貯留室9を設けることもできる(図2、図4、図6、図7、図8、図9、図10、図11、図12参照。)。紫外線照射済のガスを貯留室9で貯留することにより、高い濃度のガスをつねに安定して排出することができる。貯留室9を設けた場合、出口制御によりガス排出を止めるとその間に貯留室9に高い濃度のガスをストックできるため(図6、図9参照。)、必要な時に必要な分量の高濃度のガスを安定して排出することが可能となる(図7、図8、図10、図11、図12参照。)。排出部6はランプハウス2から直接でもよいし(図3、図12(上側のランプハウスに設けられた排出部)を参照。)、貯留室9からでもよい(図4、図5、図6、図7、図8、図9、図10、図11、図12(下側のランプハウスに設けられた排出部)を参照。図5は陰になって見えない。)。排出する方向は、図ではすべて下向きだが、これに限定されない。排出部6をどのような形態にするかは、単にスリットを設ける場合や(図1、図2参照。)、別装置に送気する管を設ける場合や(図12参照。)、スリットノズル10を設ける場合(図3〜図12参照。図5は陰になって見えない。)等あるが、これらに限定されない。被処理体11に幅広にガスを排出接触させるにはスリットノズル10が適している。
【0051】
ランプハウス2の側面形状は限定しないが、縦長長方形(図1、図2、図3、図4、図5、図6、図7、図11、図12参照。)と逆三角形漏斗状(図9、図10参照。)がある。どちらも、供給されたガスに対して強力な紫外線を効率よく照射するための形状である。図の縦長長方形のランプハウス2は、段違いの前後2列、高さ4段、計8本の紫外線放射部3が配されている。図の逆三角形漏斗状のランプハウス2は、段違いの前後7列、高さ4段、計10本の紫外線放射部3が配されている。どちらのランプハウス2の場合も、この列数、段数、本数に限定されない。図11のランプハウス2は、段違いの前後2列、高さ8段、計16本の紫外線放射部3が配されている。
【0052】
複数個のランプハウス2を直列に連結してガス用紫外線照射装置1とすることができる(図12参照。)。上流と下流のランプハウス2を排出部6と供給部5で連結する。これは特に非常に高い濃度の紫外線照射済ガスを得る場合に使用することができる。
【0053】
ガス用紫外線照射装置1に使用する紫外線の波長は場合により異なるが、本使用形態においては紫外線185nmのUVランプ4と紫外線254nmのUVランプ4を使用する。この場合、185nmのUVランプ4だけを配したランプハウス2、254nmのUVランプ4だけを配したランプハウス2185nmのUVランプ4と254nmのUVランプ4の両方を配したランプハウス2、の3種類のランプハウス2が成り立つ。どのランプハウス2にするかは用途による。この2種類の波長のUVランプ4を、1個のランプハウス2内に配する場合であれ(図11参照。)、複数連結したランプハウス2内に配する場合であれ(図12参照。)、ガス流路の上流側に紫外線185nmのUVランプ4を配し、下流側に紫外線254nmのUVランプ4を配することで、供給ガスに対し、初めは185nmの紫外線を照射させ、つぎに254nmの紫外線を照射させることができる。
【0054】
ガス用紫外線照射装置1に供給するガスは限定しないが、酸素(O)を供給した場合は波長185nmの紫外線照射によりオゾン(O)を生成することができ、またオゾン(O)が含まれている場合は波長254nmの紫外線照射によりラジカル酸素(O)を生成することができる(図13参照。)。
【0055】
具体的な紫外線照射とドライ表面処理の流れについて説明する。ガスは供給部5の管を通り複数の穴からランプハウス2内に入り紫外線放射部3の上方に供給される。ここから狭い流路を蛇行しながら下っていく。まず、前後を段違いに配された最上段の複数の紫外線放射部3の間と前後の壁面8と紫外線放射部3の間からガスが入る。2本の紫外線放射部3の間を通過するガスは近距離から強力な紫外線二重照射を受ける。段違いの紫外線放射部3と紫外線放射部3の間を抜けるとその下には次の段の紫外線放射部3があり、これに当たってガスは前後に分流する。この間のガスは3本の紫外線放射部3に挟まれた狭い空間で近距離から強力な紫外線三重照射を受ける。分流したガスは紫外線放射部3に添って流れ、隣接する紫外線放射部3に沿って流れているガスと合流しつつ次の段の紫外線放射部3へと下りていく。前後の壁面8と紫外線放射部3との間隔が狭いのは、距離を短くして強い紫外線照射をするためと、狭くすることで流速が落ちたガスに対して長時間紫外線を照射するためと、ここを流れるガスの流量を抑えるためである。仮に、前後の壁面8と紫外線放射部3との間隔を広くすると、大量のガスが前後の壁面8に沿ってランプハウス2の上から下まで直線的に流れ下ってしまい、オゾン(O)やラジカル酸素(O)等の紫外線照射済ガス濃度が低下する結果となってしまう。ガスは紫外線放射部3の前と後だけを流れ、紫外線を放射しない部分7がランプハウス2から外に配されているためUVランプ4の左と右は通らない(図8参照。)。そのため、ランプハウス2内に紫外線の当たらない場所はない。ランプハウス2の中に紫外線放射部3が密集しているので、ガスは強力な紫外線の照射を受けながら分流と合流を繰り返し蛇行しながら流れ下る。ランプハウス2の上流から下流へいくにしたがってオゾン(O)やラジカル酸素(O)等の紫外線照射済ガス濃度が高くなり、ランプハウス2を通過した紫外線照射済ガスは高濃度を保ったまま大気中に排出される。ランプハウス2の下に貯留室9を設けた場合は、生成された紫外線照射済ガスを貯留室9に貯留することができ(図6、図9参照。)、底に溜まった高濃度のガスから排出して使用に供することができる(図7、図10参照。)。ノズルの種類は自由であるが、スリットノズル10を用いると高濃度の紫外線照射ガスを被処理体11の目的の部分に正確に接触させることができる。プリンターに用いられるようなスリットノズル10を用いれば、印刷するのと同じ動作でラジカル酸素(O)等の紫外線照射済ガスをプリント基板等の被処理体11に接触させて、高精細なドライ表面処理を行うことができる。ノズルの向きは下向きとは限らない。紫外線照射済ガスの排出場所を移動させて表面処理を行う場合は、ノズルを固定して被処理体11を移動させる方法、被処理体11を固定させてノズルを移動させる方法、その他あり限定しないが、図面では被処理体11を移動させる方法をとっている。高濃度の紫外線照射済ガスを排出して被処理体11に接触させる表面処理によれば、スピーディで正確、かつ、確実に、表面処理できる。被処理体11に紫外線は照射されないので高温にはならない。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】ランプハウスの側面形状が縦長長方形であるガス用紫外線照射装置の側面断面図。
【図2】ランプハウスの側面形状が縦長長方形である貯留室を有したガス用紫外線照射装置の側面断面図。
【図3】ランプハウスの側面形状が縦長長方形であるスリットノズルを有したガス用紫外線照射装置を用いたドライ表面処理装置の側面断面図。
【図4】ランプハウスの側面形状が縦長長方形である貯留室とスリットノズルを有したガス用紫外線照射装置を用いたドライ表面処理装置の側面断面図。
【図5】ランプハウスの側面形状が縦長長方形であるガス用紫外線照射装置を用いたドライ表面処理装置の説明図。
【図6】ランプハウスの側面形状が縦長長方形である貯留室とスリットノズルを有したガス用紫外線照射装置を用いたドライ表面処理装置であり、ガスを貯留室に貯留している状態をあらわす側面断面図。
【図7】ランプハウスの側面形状が縦長長方形である貯留室とスリットノズルを有したガス用紫外線照射装置を用いたドライ表面処理装置であり、貯留室の下方からガスを排出している状態をあらわす側面断面図。
【図8】貯留室とスリットノズルを有したガス用紫外線照射装置を用いたドライ表面処理装置であり、貯留室の下方からガスを排出している状態をあらわす正面断面図。
【図9】ランプハウスの側面形状が逆三角形である貯留室とスリットノズルを有したガス用紫外線照射装置を用いたドライ表面処理装置であり、ガスを貯留室に貯留している状態をあらわす側面断面図。
【図10】ランプハウスの側面形状が逆三角形である貯留室とスリットノズルを有したガス用紫外線照射装置を用いたドライ表面処理装置であり、貯留室の下方からガスを排出している状態をあらわす側面断面図。
【図11】ランプハウスの側面形状が縦長長方形である貯留室とスリットノズルを有したガス用紫外線照射装置を用いたドライ表面処理装置であり、貯留室の下方からガスを排出している状態をあらわす側面断面図。
【図12】2つのランプハウスを連結させたガス用紫外線照射装置を用いたドライ表面処理装置が、貯留室の下方からガスを排出している状態をあらわす側面断面図。
【図13】紫外線照射によるガスの変質をあらわし、(A)は紫外線185nmにより酸素からオゾンを生成し、(B)は紫外線254nmによりオゾンからラジカル酸素を生成し、(C)は紫外線185nmと254nmにより酸素からラジカル酸素を生成することをあらわす説明図。
【符号の説明】
【0057】
1 ガス用紫外線照射装置
2 ランプハウス
3 紫外線放射部
4 UVランプ
5 供給部
6 排出部
7 紫外線を放射しない部分
8 前後の壁面
9 貯留室
10 スリットノズル
11 被処理体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、紫外線照射の対象となるガスを上方から内部に供給するための供給部と、供給部から供給されてきた前記のガスに対して内部に設けられた複数本のUVランプにより紫外線を照射するためのランプハウスと、内部で紫外線照射処理を受けたガスを排出するための排出部とを有したガス用紫外線照射装置において、前記のUVランプは、複数本の紫外線放射部がおのおの間隔をあけ平行してランプハウス内の全体にほぼ均一に、しかも、前後に隣接する紫外線放射部は上下に段違いであり上から見た場合に前後の間隙がないよう配置され、さらに、ランプハウスの前後の壁面とこれに対向した最前列と最後列の紫外線放射部との間隔がUVランプで通過ガスを変質できる有効照射距離以内であることを特徴とするガス用紫外線照射装置。
【請求項2】
UVランプの内部で発生した紫外線を透過して外部に放射する紫外線放射部をランプハウスの中に配置し、UVランプの内部で発生した紫外線を透過せず紫外線を放射しない部分はランプハウスの外に配置したことを特徴とする請求項1記載のガス用紫外線照射装置。
【請求項3】
ランプハウスの側面形状が縦長長方形であることを特徴とする請求項1または2記載のガス用紫外線照射装置。
【請求項4】
ランプハウスの側面形状が逆三角形漏斗状であることを特徴とする請求項1または2記載のガス用紫外線照射装置。
【請求項5】
ガスの供給と紫外線照射とガス排出を複数回連続処理できるよう、複数の上記のランプハウスを排出部と供給部で直列に連結したことを特徴とする請求項1、2、3または4記載のガス用紫外線照射装置。
【請求項6】
ランプハウス内部のUVランプが、紫外線185nmのUVランプ、または、紫外線254nmのUVランプ、あるいは紫外線185nmのUVランプと紫外線254nmのUVランプの両方であることを特徴とする請求項1、2、3、4または5記載のガス用紫外線照射装置。
【請求項7】
ガス流路の上流側に紫外線185nmのUVランプを配し、下流側に紫外線254nmのUVランプを配したことを特徴とする請求項1、2、3、4、5または6記載のガス用紫外線照射装置。
【請求項8】
供給するガスに酸素(O)が含まれ、紫外線照射によってオゾン(O)が生成され、排出されるガスに高濃度のオゾン(O)が含まれることを特徴とする請求項1、2、3、4、5または6記載のガス用紫外線照射装置。
【請求項9】
供給するガスに酸素(O)またはオゾン(O)が含まれ、紫外線照射によってラジカル酸素(O)が生成され、排出されるガスに高濃度のラジカル酸素(O)が含まれることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6または7記載のガス用紫外線照射装置。
【請求項10】
ランプハウスから出た紫外線照射済ガスを貯留し底のガスから排出させるための貯留室を設けたことを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8または9記載のガス用紫外線照射装置。
【請求項11】
紫外線照射済ガスを大気圧中に排出する排出口がスリットノズルであることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9または10記載のガス用紫外線照射装置。
【請求項12】
請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10または11に記載されたガス用紫外線照射装置を用いて、紫外線照射済ガスを大気圧中でプリント基板等の被処理体の上に排出することにより、被処理体の表面処理が可能であることを特徴とするドライ表面処理装置。
【請求項13】
請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10または11に記載されたガス用紫外線照射装置を用いて、紫外線照射済ガスを大気圧中でプリント基板等の被処理体の上に排出するに、被処理体のあらかじめ表面処理することが設定された部分にだけ紫外線照射済ガスを排出することにより、被処理体の全体あるいは特定部分のみの表面処理が可能であることを特徴とするドライ表面処理装置。
【請求項14】
酸素(O)またはオゾン(O)を供給し、紫外線照射により高濃度のラジカル酸素(O)を生成し、高濃度のラジカル酸素(O)をプリント基板等の被処理体の上に排出することを特徴とする請求項12または13記載のドライ表面処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−105621(P2007−105621A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−298624(P2005−298624)
【出願日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【出願人】(505383730)
【出願人】(505383741)
【出願人】(505383752)
【Fターム(参考)】