説明

ガラス基板積層体用ワークホルダ及びこのワークホルダを用いたガラス基板の製造方法及びこの製造方法で製造されたガラス基板及びこのワークホルダを用いた磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法及び磁気記録媒体用ガラス基板

【課題】本発明はガラス基板積層体を保持する作業を効率良く行えると共に、ガラス基板積層体の研磨を高精度に行えることを課題とする。
【解決手段】ワークホルダ10は、下枠部20と、上枠部30と、側枠部40とを一体に結合させたホルダ本体50を有する。下枠部20と、上枠部30と、側枠部40とは、夫々ステンレス等の金属により形成されており、溶接により一体化される。下枠部20及び/又は上枠部30の機械加工は、溶接終了後に行う。また、ホルダ本体50の上部には、上側保持部60と、位置決め部70とが設けられている。上側保持部60は、ホルダ本体50の上枠部30に取付けられ、ホルダ本体50内に収納されたガラス基板積層体を保持する。位置決め部70は、上側保持部60に取り付けられると共に、センタリングシャフトの上端を保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複数のガラス基板が積層されたガラス基板積層体の径方向の端面を研磨する際のガラス基板積層体を安定的に保持するガラス基板積層体用ワークホルダ及びこのワークホルダを用いたガラス基板の製造方法及びこの製造方法で製造されたガラス基板及びこのワークホルダを用いた磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法及び磁気記録媒体用ガラス基板に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、円盤状のガラス基板を製造する製造工程においては、ガラス基板の平面及び端面(内外周面)に研削、研磨などの加工を施す加工工程があり、例えば、ガラス基板の端面の研磨効率を高める手法として複数枚(例えば、数百枚程度)のガラス基板を面方向に重ね合わせたガラス基板積層体を形成し、多数のガラス基板の端面を同時に研磨する方法が用いられている。
【0003】
このガラス基板積層体の端面の研磨加工を行う工程においては、例えば、100枚のガラス基板を同軸上に積層した積層体を形成し、当該積層体をガラス基板積層体ワークホルダによって位置決めした状態でガラス基板積層体の内周に棒状の研磨ブラシを挿入して端面の研磨加工を行う方法が用いられている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0004】
ガラス基板積層体を保持するワークホルダとしては、特許文献1、2にみられるように、研磨装置のテーブル上に固定される下側支持部と、下側支持部の上面に下方から螺入されたボルトにより固定された複数(3〜4本)の支柱と、支柱の上端に連結される上枠と、上枠にボルトにより固定される上側支持部と、上側支持部の上面に取付けられると共にガラス基板積層体の最上段のガラス基板を下方に押圧する位置決め部材とから構成されている。また、複数のガラス基板は、中心孔をセンタリングシャフトに嵌合させることで順次積層され、所定枚数まで積層されるとセンタリングシャフトと共にワークホルダの下側支持部の上面に載置される。
【0005】
下側支持部の中央には、センタリングシャフトの下端が嵌合する貫通孔が設けられている。そして、ガラス基板積層体の取付位置は、センタリングシャフトが下側支持部の貫通孔に嵌合すること、及びワークホルダ上枠部に設けられた位置決めピン挿入孔で固定される位置決め部の軸受け孔に嵌合されることによって位置決めされる。
【0006】
ここで、上記従来のワークホルダを用いた研磨工程の作業手順について説明する。
(手順1)センタリングシャフトに複数のガラス基板を積層してガラス基板積層体を形成する。
(手順2)ガラス基板積層体をセンタリングシャフトとともに下側支持部に載置する。
(手順3)下側支持部に起立する各支柱の上端に取付けられた上枠に上側支持部を載置し、上側支持部を上枠にねじ止めする。
(手順4)位置決め部材を上側支持部の上面に取付け、上方から複数のボルトを螺入させて位置決め部材を固定する。
(手順5)下側支持部を架台に載置して位置決め部により上側支持部を下方に押圧する。
(手順6)位置決め部材を外した後、センタリングシャフトを下方から抜き取る。
(手順7)ワークホルダに保持されたガラス基板積層体を研磨装置に装着する。
(手順8)研磨ブラシを上方からガラス基板積層体の中央孔に挿入し、研磨ブラシの回転及び軸方向の往復動によりガラス基板の内周端部を研磨する。
(手順9)研磨終了後、研磨ブラシを抜き取り、ワークホルダを研磨装置から分離させる。
(手順10)ワークホルダの上側支持部を支柱の上枠から分離させた後、ガラス基板積層体をワークホルダから取り出す。
【0007】
以上の手順1〜10によりガラス基板積層体の内周端部を研磨による内外周の同芯度及び内周の真円度が確保される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−59727号公報
【特許文献2】特開2008−59728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来のワークホルダは、下側支持部と上側支持部との間に起立する複数の支柱がボルトの締付けによって締結される構成であるので、ボルトの締付け状態で支柱の垂直度が変わり、上側支持部が大きく傾くことになり、且つガラス基板の積層枚数が200枚以上になると、支柱の全長が延長される分、支柱の下端に対して支柱の上端の位置ずれが余計に増幅されることになる。そのため、上記従来のワークホルダでガラス基板積層体を保持した状態でガラス基板積層体の内周端面を研磨する場合、研磨工程が終了したガラス基板の同芯度及び真円度が低下するという問題があった。
【0010】
また、従来のワークホルダでは、ガラス基板の積層枚数を200枚以上に増加させるために支柱の全長を延長すると共に、支柱の下端のガラス基板の取付位置に対して支柱の上端のガラス基板の取付誤差が規定値になるように上側支持部の取付位置を調整する調整作業に時間がかかるという問題があった。
【0011】
そこで、本発明は上記事情に鑑み、上記課題を解決したガラス基板積層体用ワークホルダ及びこのワークホルダを用いたガラス基板の製造方法及びこの製造方法で製造されたガラス基板及びこのワークホルダを用いた磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法及び磁気記録媒体用ガラス基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明は以下のような手段を有する。
(1)本発明は、複数枚のガラス基板をセンタリングシャフトに嵌合させて積層したガラス基板積層体を保持するガラス基板積層体用ワークホルダにおいて、
前記ガラス基板積層体を垂直状態に支持する下枠部と、
前記ガラス基板が挿入または取出しを行うための開口を有する上枠部と、
前記下枠部と前記上枠部との間を結合し、前記ガラス基板積層体の外側に形成された筒状の側枠部と、を有し、
該側枠部の上下端部と前記上枠部、前記下枠部との各結合部分を溶接により固定し、
前記溶接の後、前記上枠部、及び/又は前記下枠部を機械加工することを特徴とする。
(2)本発明は、前記上枠部に設けられる上側保持部と、
前記上側保持部の下端に設けられ、前記ガラス基板積層体の上端に当接する上側当接部と、
前記下枠部の上端に設けられ、前記ガラス基板積層体の下端に当接する下側当接部と、
前記上側保持部と前記上枠部との相対位置を位置決めする位置決め部と、
を有することを特徴とする。
(3)前記側枠部は、内側に収納された前記ガラス基板積層体が外側から目視できるように軸方向に延在する開口が設けられたことを特徴とする。
(4)前記上側保持部は、複数のボルトまたは前記上枠部の外周に形成されたねじにより前記ガラス基板積層体を軸方向に押圧することを特徴とする。
(5)前記機械加工は、前記上枠部の上面の平面と端面の加工、及び前記上枠部の位置決めピンの挿入孔、前記上枠部の取付孔の加工であることを特徴とする。
(6)前記側枠部と前記上枠部との垂直度は50μm以下であり、前記側枠部と前記下枠部との垂直度は50μm以下であることを特徴とする。
(7)前記位置決め部は、前記センタリングシャフトの上端が挿通される軸孔と、前記上枠部の位置決めピンの挿入孔に挿入される挿入ピンとを有し、
前記下枠部は、前記センタリングシャフトの下端が挿通される貫通孔を有し、
前記軸孔と前記貫通孔との同芯度が50μm以下であることを特徴とする。
(8)本発明は、中央孔を有する円盤状のガラス基板の製造方法において、
前記ガラス基板を形成する工程と、
前記ガラス基板の主平面を研削する工程と、
ワークホルダ内に取付けられるセンタリングシャフトに前記ガラス基板の中央孔を嵌合させてガラス基板積層体を形成する工程と、
前記ガラス基板積層体から前記センタリングシャフトを抜き取り、前記ワークホルダを研磨装置のテーブルに取付ける工程と、
前記ガラス基板積層体のガラス基板の中央孔に研磨ブラシを挿入して前記中央孔の内周端面を研磨する工程と、
前記ガラス基板の主平面を研磨する工程と、
前記ガラス基板を洗浄する工程と、
を有し、
前記ワークホルダは、
前記ガラス基板積層体の下端が載置される下枠部と、
前記ガラス基板積層体の上端を保持する上枠部と、
前記下枠部と前記上枠部との間を結合し、前記ガラス基板積層体の外側を覆うように形成された筒状の側枠部と、を有し、
該側枠部の上下端部と前記上枠部、前記下枠部との結合部分を溶接により固定し、
前記溶接の後、前記上枠部、及び/又は前記下枠部の機械加工を行うことを特徴とする。
(9)前記(8)記載のガラス基板の製造方法で製造されたガラス基板であって、
前記中央孔の内周の最内周面とガラス基板の外周の最外周面との同芯度が5μm以下であることを特徴とする。
(10)前記(8)または(9)のガラス基板の製造方法で製造されたガラス基板であって、
前記中央孔の最内周面の真円度が5μm以下であることを特徴とする。
(11)本発明は、中央孔を有する円盤状の磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法において、
前記磁気記録媒体用ガラス基板を形成する工程と、
前記磁気記録媒体用ガラス基板の主平面を研削する工程と、
ワークホルダ内に取付けられるセンタリングシャフトに前記磁気記録媒体用ガラス基板の中央孔を嵌合させてガラス基板積層体を形成する工程と、
前記ガラス基板積層体から前記センタリングシャフトを抜き取り、前記ワークホルダを研磨装置のテーブルに取付ける工程と、
前記ガラス基板積層体の磁気記録媒体用ガラス基板の中央孔に研磨ブラシを挿入して前記中央孔の内周端面を研磨する工程と、
前記磁気記録媒体用ガラス基板の主平面を研磨する工程と、
前記磁気記録媒体用ガラス基板を洗浄する工程と、
を有し、
前記ワークホルダは、
前記ガラス基板積層体の下端が載置される下枠部と、
前記ガラス基板積層体の上端を保持する上枠部と、
前記下枠部と前記上枠部との間を結合し、前記ガラス基板積層体の外側を覆うように形成された筒状の側枠部と、を有し、
該側枠部の上下端部と前記上枠部、前記下枠部との結合部分を溶接により固定し、
前記溶接の後、前記上枠部、及び/又は前記下枠部の機械加工を行うことを特徴とする。
(12)前記(11)記載の磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法で製造された磁気記録媒体用ガラス基板であって、
前記中央孔の内周の最内周面とガラス基板の外周の最外周面との同芯度が5μm以下であることを特徴とする。
(13)前記(11)または(12)記載の磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法で製造された磁気記録媒体用ガラス基板であって、
前記中央孔の最内周面の真円度が5μm以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ワークホルダの側枠部の上下端部と上枠部、下枠部との結合部分を溶接により固定し、溶接後、上枠部、及び/又は下枠部の機械加工を行うため、ワークホルダの加工精度及びガラス基板積層体の取付け精度をより高めることが可能になり、特にガラス基板積層体の基板枚数を増加させて下端のガラス基板と上端のガラス基板との距離が長くなる場合でも、積層された各ガラス基板の同芯度及び真円度の低下を抑制して研磨工程における生産効率と研磨による加工精度を両立させることができる。また、従来のように、上側支持部の取付位置を調整するための調整作業が不要になるので、ガラス基板積層体をワークホルダ内に収納させるための作業時間を短縮することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明によるガラス基板積層体ワークホルダの一実施例を示す斜視図である。
【図2】ホルダ本体50の斜視図である。
【図3】ホルダ本体50の縦断面図である。
【図4】ホルダ本体50の上端に上側保持部60及び位置決め部70を取付ける手順を示す分解斜視図である。
【図5】ホルダ本体50の内部にセンタリングシャフトを起立させた状態を示す側断面図である。
【図6A】ガラス基板の研磨工程の方法Aについての手順A1〜手順A10を示す図である。
【図6B】ガラス基板の研磨工程の方法Bについての手順B1〜手順B10を示す図である。
【図7A】手順A4のワークホルダの状態を模式的に示す縦断面図である。
【図7B】手順A4のワークホルダの状態を模式的に示す縦断面図である。
【図7C】手順A5のワークホルダの状態を模式的に示す縦断面図である。
【図7D】手順A6のワークホルダの状態を模式的に示す縦断面図である。
【図7E】手順A7のワークホルダの状態を模式的に示す縦断面図である。
【図8】手順B3のガラス基板積層体の積層状態を模式的に示す縦断面図である。
【図9】変形例のワークホルダを示す斜視図である。
【図10】変形例のワークホルダを示す分解斜視図である。
【図11】変形例の上側保持部の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態について説明する。
【実施例1】
【0016】
図1は本発明によるガラス基板積層体ワークホルダの一実施例を示す斜視図である。図1に示されるように、ガラス基板積層体ワークホルダ(以下「ワークホルダ」という)10は、磁気記録媒体用ガラス基板を含むガラス基板の中央孔の内周面を研磨する研磨装置に取り付けられ、100枚〜250枚のガラス基板を同軸上に位置決めしてガラス基板積層体として保持する治具である。
【0017】
ワークホルダ10は、下枠部20と、上枠部30と、側枠部40とを一体に結合させたホルダ本体50を有する。下枠部20と、上枠部30と、側枠部40とは、夫々ステンレス等の金属により形成されており、溶接により一体化される。また、ホルダ本体50の上部には、上側保持部60と、位置決め部70とが取り付けられる。
【0018】
上側保持部60は、ホルダ本体50の上枠部30に取付けられ、内部空間に収納されたガラス基板積層体を保持するための保持部材である。位置決め部70は、上枠部30の上面に加工された位置決め孔にピンを挿入して位置決めされ、下枠部20の底部に挿通されるセンタリングシャフト(図9A参照)を位置決めする。
【0019】
図2はホルダ本体50の斜視図である。図2に示されるように、ホルダ本体50は、側枠部40の上下端部と下枠部20、上枠部30との各結合部分を溶接により固定されて一体化される。さらに、ホルダ本体50は、溶接箇所が冷却されて固化した後、下枠部20及び/又は上枠部30に対する端面の切削加工、孔加工等の機械加工が行なわれる。
【0020】
上枠部30の上面には、位置決めピン挿入孔31と、取付孔33とがそれぞれ4個所に90度間隔で設けられている。
【0021】
尚、溶接後に行なわれる機械加工としては、上枠部30の上面の平面及び端面の加工、及び上枠部30の位置決めピン挿入孔31、上枠部30の取付孔33の加工である。
【0022】
このように、溶接により一体化された側枠部40と上枠部30との垂直度は50μm以下であり、側枠部40と下枠部20との垂直度は50μm以下となるように加工される。尚、側枠部40と上枠部30との垂直度の測定方法としては、例えば、ダイヤルゲージを用いて測定する方法で行う。
【0023】
ここで、上記ホルダ本体50を構成する各部の形状について説明する。
【0024】
図3はホルダ本体50の縦断面図である。図3に示されるように、下枠部20は、底部に研磨装置のテーブルに固定されるフランジ22を有し、上部に側枠部40の環状の下端40aが嵌合する環状溝24が設けられている。また、下枠部20の中央には、軸方向(上下方向)に貫通する貫通孔26が設けられている。この貫通孔26は、後述するセンタリングシャフトをホルダ中心に位置決めする孔であり、且つセンタリングシャフトを下方に抜き取るための取出し用孔として作用する。
【0025】
また、下枠部20の上面には、ガラス基板積層体の下端が当接する下側当接部27が形成されている。
【0026】
また、下枠部20の下面には、ベースプレートが取り付けられる凹部28が設けられており、ベースプレートは、凹部28にボルトにより締結され、且つ研磨装置のテーブル側に設けられた凹部に嵌合する。
【0027】
上枠部30は、リング状部材からなり、下面に側枠部40の環状の上端40bが嵌合する環状溝32を有する。また、上枠部30は、内周にガラス基板の外径よりも大径とされた円形開口34が形成されている。
【0028】
側枠部40は、ガラス基板積層体の最外周面を覆うように円筒形状に形成されており、内部にガラス基板積層体を収納する収納室42を有する。また、側枠部40は、収納室42に収納されたガラス基板積層体を外側から目視することができるように軸方向(上下方向)に延在形成された長方形状の開口44が少なくとも2箇所に設けられている。この開口44は、研磨工程時に使用されるスラリー(研磨剤)を排出するための排出孔としても機能すると共に、軽量化にも寄与している。
【0029】
従って、側枠部40の両端を下枠部20、上枠部30に結合させる工程では、側枠部40の下端40a、上端40bを下枠部20の環状溝24、上枠部30の環状溝32に嵌合させた状態で下端40a、上端40bと下枠部20、上枠部30との角部A、Bを隅肉溶接により結合させる。角部A、Bの溶接方法としては、アーク溶接でもガス溶接でも良い。また、角部A、Bの溶接範囲は、下端40a、上端40bの全周に亘って溶接しても良いし、溶接強度が充分ある場合には下端40a、上端40bの周方向の複数箇所を部分的に溶接する方法を用いても良い。
【0030】
側枠部40は、一対の開口44が外周の180度の間隔で対向するように設けられている。側枠部40の内周には、中央孔を有するガラス基板120が上方から挿入される筒状の空間からなる収納室42が設けられている。また、下枠部20のフランジ22には、研磨装置のテーブルに固定するためのボルト挿通孔29が4箇所(周方向に90度間隔)に設けられている。
【0031】
上側保持部60は、例えば、ステンレス等の金属により円盤状に形成されており、中心に中央孔62が軸方向に貫通している。上側保持部60の下面は、ホルダ本体50内に収納されたガラス基板積層体の上端に当接する上側当接部である。また、中央孔62の周囲には、位置決めピン貫通孔64と、取付用孔66とがそれぞれ4個所に90度間隔で軸方向に貫通して設けられている。尚、位置決めピン貫通孔64は、前述した上枠部30の位置決めピン挿入孔31と対向する位置に配され、且つ取付用孔66は、前述した上枠部30の取付用孔33と対向する位置に配されている。また、取付用孔66は、ボルト挿通用の大径部とボルト係止用の小径部とが連続した鍵穴形状に形成されている。
【0032】
ここで、上記上側保持部60をホルダ本体50に取り付ける作業工程について説明する。
【0033】
ホルダ本体50の上端に上側保持部60を係止させるための固定ボルト68を取付用孔33に螺入する。尚、固定ボルト68は、頭部と上枠部30の上面との間隔が上側保持部60の厚さよりも若干大きくなる位置に螺入された状態に起立させる。
【0034】
そして、後述するようにホルダ本体50の底部を研磨装置用のワークセットテーブルのテーブル面上に取り付け、ホルダ本体50の内部に起立するセンタリングシャフトにガラス基板を挿通させて積層する。また、ガラス基板積層体の枚数が規定枚数に達すると、上枠部30に上側保持部60を締付けてガラス基板積層体を上方から押えるように固定する。さらに、センタリングシャフトを抜いた後、ガラス基板積層体を保持したホルダ本体50をワークセットテーブルと共に研磨装置のテーブル上に取り付ける。
【0035】
図4はホルダ本体50の上端に上側保持部60及び位置決め部70を取付ける手順を示す分解斜視図である。図4に示されるように、上側保持部60を上方からホルダ本体50の上枠部30に取付ける。上側保持部60には、位置決め部70が取り付けられている。
【0036】
上側保持部60は、ホルダ本体50の収納部42内にガラス基板積層体が収納されると、ホルダ本体50の上端に取り付けられる。また、上側保持部60は、取付用孔66の大径部を固定ボルト68の頭部に嵌合させて上枠部30に載置された後、円周方向に所定角度回動されると、取付用孔66の小径部が固定ボルト68の軸部に嵌合して締付け可能な位置に係止される。
【0037】
そして、位置決め部70は、位置決めピン76を上方から上側保持部60の位置決めピン貫通孔64に貫通し、さらに位置決めピン76の先端を上枠部30の位置決めピン挿入孔31に挿入させることで、センタリングシャフト(図4では省略してある)の先端と底部の鉛直方向に位置決めする。
【0038】
この後、4本の固定ボルト68を対角位置の順に締付けて徐々に上側保持部60をホルダ本体50の上枠部30に当接させる。これにより、上側保持部60は、ガラス基板積層体を上方から垂下方向に均等に押圧してガラス基板積層体の各ガラス基板を水平状態のまま保持することが可能になる。
【0039】
図5はホルダ本体50の内部にセンタリングシャフトを起立させた状態を示す側断面図である。図5に示されるように、ホルダ本体50の内部には、センタリングシャフト110がホルダ本体50の軸心上に起立されている。また、センタリングシャフト110は、軸112の下端部に下枠部20の貫通孔26に嵌合する大径な嵌合部114を有し、軸112の上端にガラス基板の中央孔が挿通しやすいように小径に絞られたテーパ部116、118を有する。また、センタリングシャフト110の上端は、上側保持部60の中央孔62より上方に突出しており、ガラス基板を挿通しやすいように取り付けられている。尚、軸112の外径は、ガラス基板の中央孔の研磨前の内径より若干小径(例えば、寸法公差がおよそ20μm程度)に形成されている。また、センタリングシャフト110の軸112の全長は、ガラス基板の積層枚数によって異なる長さのものが数種類用意(例えば、ガラス基板積層体130の長さが220mm、250mm、310mm等)してある。また、センタリングシャフト110の垂直度は、50μm以下とすることが望ましい。垂直度の測定方法としては、例えば、ダイヤルゲージを用いて測定する方法で行う。
【0040】
上側保持部60の内周には、ガラス基板積層体の上端面に当接する上側押圧部80が嵌合している。上側押圧部80は、例えば、ポリオキシメチレン(デルリン:登録商標)、四フッ化エチレン樹脂等からなり、表面の摩擦係数が小さい値に設定されている。
【0041】
位置決め部70は、ホルダ本体50内にガラス基板積層体が形成された後に上側保持部60の孔を貫通し、上枠部30に取り付けられる際、位置決めピン76を上方から上側保持部60の位置決めピン貫通孔64及び上枠部30の位置決めピン挿入孔31に挿入させることにより、一対の腕部74が4箇所の固定ボルト68と干渉しない位置となるように取り付けられる。
【0042】
位置決め部70は、センタリングシャフト110の上端が挿通される軸孔71を有する円筒形状の軸受け部72と、軸受け部72より半径方向に突出する一対の腕部74と、各腕部74を貫通する位置決めピン76とを有する。尚、一対の腕部74は、円周方向の180度の位置にあり、各腕部74の端部は上側保持部60の上面に当接する位置まで延在形成されている。
【0043】
また、軸孔71は、センタリングシャフト110の上端部分が挿通され、センタリングシャフト110の先端部分に嵌合されると共に、センタリングシャフト110の上端部の位置をホルダ本体50の軸心と一致する位置に位置決めする。センタリングシャフト110は、下枠部20の貫通孔26、及び上枠部30の位置決めピン挿入孔31に位置決めピン76が差し込まれて、位置決めされた位置決め部70の軸孔71でセンタリングシャフト110の上端、下端での同芯度が確保される。
【0044】
すなわち、位置決め部70は、位置決めピン76を上枠部30の位置決めピン挿入孔31に挿入させることで、軸孔71と下枠部20の貫通孔26との同芯度が50μm以下となるように位置決めする。そのため、センタリングシャフト110の取付位置は、センタリングシャフト110の上端が挿通される軸孔71と、センタリングシャフト110の下端が挿通される貫通孔26との相対位置によって高精度に位置決めされる。
【0045】
これにより、ガラス基板積層体130の同芯度を決めるセンタリングシャフト110は、保持位置が位置決めされ、研磨後の各ガラス基板120の同芯度が5μm以下になる。
【0046】
このように位置決め部70が上側保持部60に取り付けられた状態では、軸孔71の軸心がホルダ本体50の軸心と一致する同軸上の位置にあり、ガラス基板積層体130を貫通するセンタリングシャフト110の挿通位置を位置決めすることができる。
【0047】
ここで、磁気ディスクの製造工程の全体について説明する。一般に、磁気記録媒体用ガラス基板及び磁気ディスクの製造工程は、以下の(工程1)〜(工程6)を含む。
(工程1)フロート法、フュージョン法またはプレス成形法で成形された磁気記録媒体用のガラス素基板を、円盤形状に加工した後、内周端面と外周端面に面取り加工を行う。
(工程2)磁気記録媒体用ガラス基板の上下主平面にラッピング加工を行う。
(工程3)磁気記録媒体用ガラス基板の内周端面の最内周面と面取り部に端面研磨を行う。
(工程4)磁気記録媒体用ガラス基板の上下主平面に研磨を行う。研磨工程は、1次研磨のみでも良く、1次研磨と2次研磨を行っても良く、2次研磨の後に3次研磨を行っても良い。
(工程5)磁気記録媒体用ガラス基板の精密洗浄を行い、磁気記録媒体用ガラス基板を製造する。
(工程6)磁気記録媒体用ガラス基板の上に磁性層などの薄膜を形成し、磁気ディスクを製造する。
【0048】
本発明のガラス基板積層体ワークホルダは、磁気記録媒体用ガラス基板及び磁気ディスクの製造工程の内周端面研磨を行う(工程3)に係るものである。
【0049】
尚、上記磁気記録媒体用ガラス基板及び磁気ディスクの製造工程において、各工程間にガラス基板洗浄(工程間洗浄)やガラス基板表面のエッチング(工程間エッチング)を実施しても良い。
【0050】
さらに、磁気記録媒体用ガラス基板に高い機械的強度が求められる場合、ガラス基板の表層に強化層を形成する強化工程(例えば、化学強化工程)を研磨工程前、または研磨工程後、あるいは研磨工程間で実施しても良い。
【0051】
本発明において、磁気記録媒体用ガラス基板(以下「ガラス基板」と称する)は、アモルファスガラスでもよく、結晶化ガラスでもよく、ガラス基板の表層に強化層を有する強化ガラス(例えば、化学強化ガラス)でも良い。
【0052】
また、本発明のガラス基板のガラス素基板は、フロート法で造られたものでも良く、あるいはフュージョン法、あるいはプレス成形法で造られたものでも良い。
【0053】
本発明の磁気記録媒体用ガラス基板は、最内周面と最外周面との同芯度が5μm以下、最内周面の真円度が5μm以下と、磁気記録媒体用ガラス基板の形状に優れるため、大容量の情報を磁気ディスクへ速く記録再生するため、磁気ディスクの回転速度を高速化しても、磁気ヘッドが磁気ディスクに接触する障害が発生しない。
【0054】
上記(工程3)を有するガラス基板の製造方法の手順について説明する。
【0055】
図6Aはガラス基板の製造方法の方法Aについての手順A1〜手順A10を示す図である。ここで、上記(工程3)は、手順A3〜手順A8に相当する。図6Aに示されるように、方法Aの手順A1で内径、外径を所定寸法とされたガラス基板を形成する。
【0056】
手順A2では、ガラス基板の主平面を研削加工して主平面の厚さ寸法と平坦度を規定寸法に加工する。続いて、ガラス基板の内周端面及び外周端面の面取り加工を粒度が#300〜#1000の砥石により行う。
【0057】
手順A3では、ワークホルダ10をワークセットテーブルのテーブル面に載せる。ホルダ本体50の下枠部20の中央孔26には、上方からセンタリングシャフト110の嵌合部114が挿入されており、ホルダ本体50の収納室42の軸心にセンタリングシャフト110の軸112が起立している。
【0058】
手順A4では、センタリングシャフト110の下側根元部分に下側当接部122を挿通する(図7A参照)。そして、ガラス基板120の中央孔を1枚ずつホルダ本体50内のセンタリングシャフト110に挿通させ、上枠部30の円形開口34を通して下側当接部27に当接する下側当接部122上にガラス基板120を積層し、例えば、200枚程度のガラス基板積層体130を形成する。さらに、ガラス基板120の積層枚数が規定枚数(例えば、200枚)に達すると、ガラス基板積層体130上に上側当接部124を積層させる(図7B参照)。この積層状態では、上側当接部124の上面が上枠部30の上面よりも上方に突出する位置となるようにする。
【0059】
また、ガラス基板120の中央孔をホルダ本体50内のセンタリングシャフト110に挿通させて積層させる際は、各ガラス基板120を直接積層しても良いし、あるいは各ガラス基板120間に樹脂製の薄いスペーサを挿入し、ガラス基板120とスペーサとが交互に積層されるように積み重ねても良い。
【0060】
尚、下側当接部122、上側当接部124は、ガラス基板120と同じ形状のダミーガラス基板を樹脂製のスペーサを介して積層したものでも良いし、あるいは、樹脂材を所定の厚さに切断したディスク状スペーサを積層して高さ調整しても良い。また、下側当接部122、上側当接部124の下側当接部27、上側保持部60に接触する部分は、ポリオキシメチレン(デルリン:登録商標)、四フッ化エチレン樹脂を用いることが望ましい。
【0061】
手順A5では、ホルダ本体50の上端に上側押圧部80及び上側保持部60を取付ける(図4及び図7C参照)。上側保持部60は、取付用孔66の大径部に固定ボルト68の頭部を嵌合させて上枠部30に載置された後、円周方向に所定角度回動されると、取付用孔66の小径部が固定ボルト68の軸部に嵌合する。さらに、位置決め部70の位置決めピン76を上方から上側保持部60の位置決めピン貫通孔64及び上枠部30の位置決めピン挿入孔31に挿入させて上側保持部60の取付位置を位置決めする。このとき、位置決め部70の軸孔71は、センタリングシャフト110の上端に嵌合しており、センタリングシャフト110の上端位置をホルダ本体50の軸心に位置決めしている。
【0062】
この後、4本の固定ボルト68を対角位置の順に締付けて徐々に上側保持部60が下方に押圧すると共に、上側押圧部80がガラス基板積層体130の上部に積層された上側当接部124を下方に押圧する。これにより、上側保持部60は、上側押圧部80を介してガラス基板積層体130を上方から押圧保持する。尚、4本の固定ボルト68の締付けトルクは、トルクレンチにより測定しており、例えば、各固定ボルト68の締付けトルクが均等(例えば、ボルト1本の締付けトルク=2Nm)になるように調整する。
【0063】
手順A6では、ガラス基板積層体130の中央孔132からセンタリングシャフト110を下方に抜き取り、位置決め部70を上方に外す(図7D参照)。
【0064】
手順A7では、ワークホルダ10をワークセットテーブルから外し、ワークホルダ10を内周研磨装置のテーブル100に取り付ける(図7E参照)。
【0065】
手順A8では、ガラス基板積層体130の中央孔132に上方から研磨ブラシ140を挿入し、上方からスラリー(研磨剤)を供給しながらテーブル100と研磨ブラシ140を回転させながら軸方向に往復動させてガラス基板積層体130の中央孔132の内周端面を研磨する(図7E参照)。
【0066】
この内周端面の研磨工程では、例えば、内周端面の研磨量が5〜40μmに設定されており、研磨時間によって研磨量を管理している。研磨終了後、研磨ブラシ140を抜き取る。
【0067】
手順A9では、上側保持部60を外して、ホルダ本体50からガラス基板積層体130を取り出す。続いて、ガラス基板120の外周端面を研磨した後、ガラス基板積層体130からガラス基板120を一枚ずつ分離させた後、ガラス基板120の主平面を研磨する。また、ガラス基板120の強度を高めたい場合、さらに、ガラス基板積層体130の中央孔132の内周端面をエッチング処理して内周端面の表面を仕上げても良い。これにより、ガラス基板120の内周端面の傷が殆ど除去されてガラス基板120の強度をより高められる。特にガラス基板120が磁気ディスクとして用いられる場合には、ガラス基板120の内周端面にモータ回転軸が連結されるため、モータ回転数の高速化に伴って内周端面のガラス基板120の内周強度の向上が要望されている。そのため、ガラス基板積層体130の中央孔132の内周端面を研磨ブラシ140により研磨した後、中央孔132の内周端面にエッチング処理を施すことにより、ガラス基板のモータ回転軸に対する結合強度を高めることが可能になる。
【0068】
手順A10では、ガラス基板120を洗浄液や超純水により洗浄する。
【0069】
この手順A1〜A10によりガラス基板120は、中央孔の最内周面とガラス基板の最外周面との同芯度が5μm以下に仕上げされる。また、中央孔の最内周面とガラス基板の最外周面との同芯度は更に好ましくは3μm以下、最内周面の真円度は更に好ましくは2μm以下に仕上げされる。
【0070】
また、ガラス基板120は、中央孔の最内周面の真円度が5μm以下に仕上げされる。
【0071】
図6Bはガラス基板の製造方法の方法Bについての手順B1〜手順B10を示す図である。図6Bに示されるように、方法Bの手順B1で内径を所定寸法とされたガラス基板120を形成する。
【0072】
手順B2では、ガラス基板120の主平面を研削加工してガラス基板120の主平面の厚さ寸法と平坦度を規定寸法に加工する。
【0073】
手順B3では、ホルダ本体50から分離されたセンタリングシャフト110の下側根元部分に下側当接部122を挿通し、続いて、ガラス基板120を1枚ずつセンタリングシャフト110の軸112に嵌合させ、下側当接部122上に樹脂製のスペーサを介してガラス基板120を積層し、例えば、200枚程度のガラス基板積層体130を形成する(図8参照)。また、ガラス基板積層体130を形成する際は、各ガラス基板120を直接積層しても良いし、あるいは各ガラス基板120間に樹脂製の薄いスペーサを挿入し、ガラス基板120とスペーサとが交互に積層されるように積み重ねても良い。
【0074】
さらに、ガラス基板積層体130上に上側の上側当接部124を積層させる。
【0075】
手順B4では、ガラス基板積層体130をセンタリングシャフト110と共に、ワークホルダ10のホルダ本体50内に上枠部30の円形開口34を通して挿入する(図7B参照)。
【0076】
手順B5では、ホルダ本体50の上端に上側押圧部80及び上側保持部60を取付け、ワークホルダ10をワークセットテーブルのテーブル100に載せる。
【0077】
手順B6〜手順B10は、前述した手順A6〜手順A10と同様なので、その説明を省略する。
【0078】
また、上記説明では、内周端面の研磨量が5〜40μmに設定されている場合について説明したが、これに限らず、例えば、ガラス基板の内周端面及び外周端面の面取り加工を行なった後、エッチング処理を施し、さらにガラス基板の内周端面を研磨する場合、またはガラス基板の内周端面を研磨した後エッチング処理を施す場合にも、上記ワークホルダ10を用いることができる。
【0079】
ここで、変形例について説明する。
【0080】
図9は変形例のワークホルダを示す斜視図である。図10は変形例のワークホルダを示す分解斜視図である。図11は変形例の上側保持部の縦断面図である。尚、図9〜図11において、上記実施例と同一部分には、同一符合を付してその説明を省略する。
【0081】
図9及び図10に示されるように、ワークホルダ200は、ホルダ本体50の上枠部30の外周に雄ねじ210が設けられている。この雄ねじ210には、上側保持部220が螺合される。
【0082】
図11に示されるように、上側保持部220は、ナット形状に形成されており、円筒部222の内周面には雄ねじ210に螺合される雌ねじ224が形成されている。雌ねじ224のピッチは、上側保持部220の回動角度に対する軸方向の締付け代(締付けトルク)を考慮して小さい値に設定されている。そのため、雌ねじ224によって上側保持部220を締付ける際の回動角(例えば、40度〜60度)及び、締付けトルク(例えば、4本の固定ボルトの合計値=10Nm〜20Nm)が設定される。
【0083】
さらに、上側保持部220の上面226には、上記位置決め部70が取り付けられるため、位置決め部70の一対の位置決めピン76が挿通される一対の貫通孔228が設けられている。一対の貫通孔228は、軸心から位置決めピン76の突出位置までの半径を有する円弧形状に形成されており、ねじ締付け角度に対応した角度範囲に形成されている。
【0084】
上側保持部220は、上面226の中央にセンタリングシャフト110の先端部及び研磨ブラシ140を挿通させるための中央孔232を有する。
【0085】
上側保持部220は、中央孔232の周縁部の下面234が前述した上側押圧部80に当接する。従って、上側保持部220をホルダ本体50の上枠部30に対して時計回りに回動させると、上側保持部220は、上枠部30の雄ねじ210に螺合される雌ねじ224が回動しながら下方に変位するため、上側押圧部80を介してガラス基板積層体130を下方に押圧することができる。
【0086】
よって、本変形例では、4本の固定ボルト68を個別に締付けるよりも上側押圧部80を全周に亘り均等に押圧することが可能になり、ガラス基板積層体130に対する保持力を安定的に作用させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0087】
上記実施例では、ガラス基板積層体の内周端面を研磨する場合に使用されるワークホルダを一例として挙げたが、これに限らず、他の加工工程にも適用できるのは勿論である。
【符号の説明】
【0088】
10 ワークホルダ
20 下枠部
22 フランジ
24 環状溝
26 貫通孔
28 凹部
29 ボルト挿通孔
30 上枠部
31 位置決めピン挿入孔
32 環状溝
33 取付孔
34 円形開口
40 側枠部
42 収納室
44 開口
50 ホルダ本体
60 上側保持部
62 中央孔
64 位置決めピン貫通孔
66 取付用孔
68 固定ボルト
70 位置決め部
71 軸孔
72 軸受け部
74 腕部
76 位置決めピン
80 上側押圧部
100 テーブル
110 センタリングシャフト
112 軸
114 嵌合部
120 ガラス基板
122 下側当接部
124 上側当接部
130 ガラス基板積層体
132 中央孔
140 研磨ブラシ
200 ワークホルダ
210 雄ねじ
220 上側保持部
224 雌ねじ
226 上面
228 貫通孔
232 中央孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚のガラス基板をセンタリングシャフトに嵌合させて積層したガラス基板積層体を保持するガラス基板積層体用ワークホルダにおいて、
前記ガラス基板積層体を垂直状態に支持する下枠部と、
前記ガラス基板が挿入または取出しを行うための開口を有する上枠部と、
前記下枠部と前記上枠部との間を結合し、前記ガラス基板積層体の外側に形成された筒状の側枠部と、を有し、
該側枠部の上下端部と前記上枠部、前記下枠部との各結合部分を溶接により固定し、
前記溶接の後、前記上枠部、及び/又は前記下枠部を機械加工することを特徴とするガラス基板積層体用ワークホルダ。
【請求項2】
前記上枠部に設けられる上側保持部と、
前記上側保持部の下端に設けられ、前記ガラス基板積層体の上端に当接する上側当接部と、
前記下枠部の上端に設けられ、前記ガラス基板積層体の下端に当接する下側当接部と、
前記上側保持部と前記上枠部との相対位置を位置決めする位置決め部と、
を有することを特徴とする請求項1記載のガラス基板積層体用ワークホルダ。
【請求項3】
前記側枠部は、内側に収納された前記ガラス基板積層体が外側から目視できるように軸方向に延在する開口が設けられたことを特徴とする請求項1または2記載のガラス基板積層体用ワークホルダ。
【請求項4】
前記上側保持部は、複数のボルトまたは前記上枠部の外周に形成されたねじにより前記ガラス基板積層体を軸方向に押圧することを特徴とする請求項2または3記載のガラス基板積層体用ワークホルダ。
【請求項5】
前記機械加工は、
前記上枠部の上面の平面と端面の加工、及び前記上枠部の位置決めピンの挿入孔、前記上枠部の取付孔の加工であることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のガラス基板積層体用ワークホルダ。
【請求項6】
前記側枠部と前記上枠部との垂直度は50μm以下であり、前記側枠部と前記下枠部との垂直度は50μm以下であることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載のガラス基板積層体用ワークホルダ。
【請求項7】
前記位置決め部は、前記センタリングシャフトの上端が挿通される軸孔と、前記上枠部の位置決めピンの挿入孔に挿入される挿入ピンとを有し、
前記下枠部は、前記センタリングシャフトの下端が挿通される貫通孔を有し、
前記軸孔と前記貫通孔との同芯度が50μm以下であることを特徴とする請求項2乃至6の何れかに記載のガラス基板積層体用ワークホルダ。
【請求項8】
中央孔を有する円盤状のガラス基板の製造方法において、
前記ガラス基板を形成する工程と、
前記ガラス基板の主平面を研削する工程と、
ワークホルダ内に取付けられるセンタリングシャフトに前記ガラス基板の中央孔を嵌合させてガラス基板積層体を形成する工程と、
前記ガラス基板積層体から前記センタリングシャフトを抜き取り、前記ワークホルダを研磨装置のテーブルに取付ける工程と、
前記ガラス基板積層体のガラス基板の中央孔に研磨ブラシを挿入して前記中央孔の内周端面を研磨する工程と、
前記ガラス基板の主平面を研磨する工程と、
前記ガラス基板を洗浄する工程と、
を有し、
前記ワークホルダは、
前記ガラス基板積層体の下端が載置される下枠部と、
前記ガラス基板積層体の上端を保持する上枠部と、
前記下枠部と前記上枠部との間を結合し、前記ガラス基板積層体の外側を覆うように形成された筒状の側枠部と、を有し、
該側枠部の上下端部と前記上枠部、前記下枠部との結合部分を溶接により固定し、
前記溶接の後、前記上枠部、及び/又は前記下枠部の機械加工を行うことを特徴とするガラス基板の製造方法。
【請求項9】
前記請求項8記載のガラス基板の製造方法で製造されたガラス基板であって、
前記中央孔の内周の最内周面とガラス基板の外周の最外周面との同芯度が5μm以下であることを特徴とするガラス基板。
【請求項10】
前記請求項8または9記載のガラス基板の製造方法で製造されたガラス基板であって、
前記中央孔の最内周面の真円度が5μm以下であることを特徴とするガラス基板。
【請求項11】
中央孔を有する円盤状の磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法において、
前記磁気記録媒体用ガラス基板を形成する工程と、
前記磁気記録媒体用ガラス基板の主平面を研削する工程と、
ワークホルダ内に取付けられるセンタリングシャフトに前記磁気記録媒体用ガラス基板の中央孔を嵌合させてガラス基板積層体を形成する工程と、
前記ガラス基板積層体から前記センタリングシャフトを抜き取り、前記ワークホルダを研磨装置のテーブルに取付ける工程と、
前記ガラス基板積層体の磁気記録媒体用ガラス基板の中央孔に研磨ブラシを挿入して前記中央孔の内周端面を研磨する工程と、
前記磁気記録媒体用ガラス基板の主平面を研磨する工程と、
前記磁気記録媒体用ガラス基板を洗浄する工程と、
を有し、
前記ワークホルダは、
前記ガラス基板積層体の下端が載置される下枠部と、
前記ガラス基板積層体の上端を保持する上枠部と、
前記下枠部と前記上枠部との間を結合し、前記ガラス基板積層体の外側を覆うように形成された筒状の側枠部と、を有し、
該側枠部の上下端部と前記上枠部、前記下枠部との結合部分を溶接により固定し、
前記溶接の後、前記上枠部、及び/又は前記下枠部の機械加工を行うことを特徴とする磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法。
【請求項12】
前記請求項11記載の磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法で製造された磁気記録媒体用ガラス基板であって、
前記中央孔の内周の最内周面とガラス基板の外周の最外周面との同芯度が5μm以下であることを特徴とする磁気記録媒体用ガラス基板。
【請求項13】
前記請求項11または12記載の磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法で製造された磁気記録媒体用ガラス基板であって、
前記中央孔の最内周面の真円度が5μm以下であることを特徴とする磁気記録媒体用ガラス基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図7E】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−230276(P2011−230276A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−105713(P2010−105713)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】