説明

キャビンのシール構造

【課題】 アウタルーフとキャビンフレームとの間のシール性を向上させることのできるキャビンのシール構造を実現する。
【解決手段】 シール材40を装着したアウタルーフ31をキャビンフレーム20に上方から締め付け固定してあるキャビン14のシール構造において、アウタルーフ31の縁部に、下方に突出させたシール取付部31dを形成するとともに、シール材40の本体部41に設けた凹部41aにアウタルーフ31のシール取付部31dを嵌め込み装着して、シール材40の本体部41の側方に、キャビンフレーム20と接当させてシールするシールリップ42〜45と、シール材40とキャビンフレーム20との間に入ってきた水を排水する排水溝48〜50を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール材を装着したアウタルーフをキャビンフレームに上方から締め付け固定してあるキャビンのシール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術としては、例えば、特許文献1に開示されているように、アウタルーフ(特許文献1の図1の10A)を、シール部材(特許文献1の図1の20)を介してキャビンフレーム(特許文献1の図1の5)に上方から締め付け固定することによって、アウタルーフとキャビンフレームとの間をシール可能に構成してあるキャビンのシール構造が知られている。また、特許文献2に開示されているように、天板周縁部(特許文献2の図3の22a)と天板支持部(特許文献2の図3の25)との間に弾性変形させた状態のシール材(特許文献2の図3の27)を嵌め込むことによって、天板(特許文献2の図3の22)とキャビンフレーム(特許文献2の図3の10)との間をシール可能に構成してあるキャビンのシール構造が知られている。
【特許文献1】特開平8−133123号公報(図1参照)
【特許文献2】特開平11−91639号公報(図3参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に開示されている従来のキャビンのシール構造においては、アウタルーフを上方から締め付け固定することによって、この締め付け力でシール部材をキャビンフレームに押し付けることでアウタルーフとキャビンフレームとの間のシール性を確保できるように構成されている。しかし、シール部材によってシールする箇所が1箇所であるため、例えば、シール部材が劣化した場合やアウタルーフを締め付ける締め付け力が弱くなった場合には、水がキャビン内に漏れ易くなるといった問題があった。
【0004】
また、特許文献2に開示されている従来のキャビンのシール構造においては、シール材を弾性変形させて、その弾性変形の復元力によって天板とキャビンフレームとの間のシール性を確保できるように構成されている。しかし、シール材の弾性変形による復元力は弱く、例えば、シール材が劣化した場合には、水がキャビン内に漏れ易くなるといった問題があった。
本発明は、アウタルーフとキャビンフレームとの間のシール性を向上させることのできるキャビンのシール構造を実現することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[I]
(構成)
本発明の第1特徴は、キャビンを形成するキャビンフレームと、前記キャビンフレームを上方から覆うアウタルーフとを備え、シール材を装着した前記アウタルーフを前記キャビンフレームに上方から締め付け固定してあるキャビンのシール構造において、次のように構成することにある。
前記アウタルーフの縁部に、下方に突出させたシール取付部を形成するとともに、前記シール材の本体部に設けた凹部に前記アウタルーフのシール取付部を嵌め込み装着して、
前記シール材の本体部の側方に、前記キャビンフレームと接当させてシールするシールリップと、前記シール材と前記キャビンフレームとの間に入ってきた水を排水する排水溝を備える。
【0006】
(作用)
本発明の第1特徴によると、アウタルーフの縁部に、下方に突出させたシール取付部を形成するとともに、シール材の本体部に設けた凹部にアウタルーフのシール取付部を嵌め込み装着してアウタルーフをキャビンフレームに上方から締め付け固定することにより、シール材の本体部を上方からキャビンフレームに押し付けてシールすることができる。また、シール材の本体部の側方に、キャビンフレームと接当させてシールするシールリップを備えることにより、シールリップをキャビンフレームに接当させることによってシールすることができる。すなわち、シール材の本体部とシールリップの2箇所でアウタルーフとキャビンフレームとの間をシールすることができる。
【0007】
本発明の第1特徴によると、シール材の本体部の側方にシール材とキャビンフレームとの間に入ってきた水を排水する排水溝を備えることにより、シール材とキャビンフレームとの間に入ってきた水を排水溝から無理なく排水することができる。そのため、シール材とキャビンフレームとの間に水が滞留することを防止できる。
【0008】
(発明の効果)
本発明の第1特徴によると、シール材の本体部とシールリップの2箇所でアウタルーフとキャビンフレームの間をシールすることができるため、アウタルーフとキャビンフレームとの間のシール性を向上させることができる。
【0009】
本発明の第1特徴によると、シール材とキャビンフレームとの間に水が滞留することを防止できるため、水がシール材とキャビンフレームの間からキャビン内に入り込み難くなって、アウタルーフとキャビンフレームとの間のシール性を向上させることができる。
【0010】
[II]
(構成)
本発明の第2特徴は、本発明の第1特徴のキャビンのシール構造において、次のように構成することにある。
前記シールリップの上面を斜めに傾斜させることによって、前記シールリップの上側に前記排水溝を形成する。
【0011】
(作用)
本発明の第2特徴によると、本発明の第1特徴と同様に前項[I]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。
【0012】
本発明の第2特徴によると、シールリップの上面を斜めに傾斜させることによって、シールリップの上側に排水溝を形成することにより、シールリップによって排水溝を形成することができて(シールリップを排水溝に兼用することができて)、例えば、シール材にシールリップと排水溝を別個に設ける場合に比べ、シール材の構造を簡素化できる。
【0013】
(発明の効果)
本発明の第2特徴によると、本発明の第1特徴と同様に前項[I]に記載の「発明の効果」を備えており、これに加えて以下のような「発明の効果」を備えている。
本発明の第2特徴によると、シール材の構造を簡素化できるため、シール材の製造コストを削減できる。
【0014】
[III]
(構成)
本発明の第3特徴は、本発明の第1特徴又は第2特徴のキャビンのシール構造において、次のように構成することにある。
前記シール材の本体部の内方側及び外方側に、前記シールリップ及び排水溝を備える。
【0015】
(作用)
本発明の第3特徴によると、本発明の第1特徴又は第2特徴と同様に前項[I][II]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。
【0016】
本発明の第3特徴によると、シール材の本体部の内方側及び外方側にシールリップ及び排水溝を備えることにより、シールリップによってシール材の本体部の内方側及び外方側の両側のシール性を確保することができ、排水溝によってシール材の本体部の内方側及び外方側の両側から水を排水できる。
【0017】
(発明の効果)
本発明の第3特徴によると、本発明の第1特徴又は第2特徴と同様に前項[I][II]に記載の「発明の効果」を備えており、これに加えて以下のような「発明の効果」を備えている。
本発明の第3特徴によると、シールリップによってシール材の本体部の内方側及び外方側の両側のシール性を確保することができ、排水溝によってシール材の本体部の内方側及び外方側の両側から水を排水できるため、アウタルーフとキャビンフレームとの間のシール性を更に向上させることができる。
【0018】
[IV]
(構成)
本発明の第4特徴は、本発明の第1〜第3特徴のいずれか一つに記載のキャビンのシール構造において、次のように構成することにある。
前記シール材に、前記キャビンフレームを上方から覆う第1舌片部と、前記アウタルーフを上方から覆う第2舌片部を備える。
【0019】
(作用)
本発明の第4特徴によると、本発明の第1〜第3特徴のいずれか一つと同様に前項[I][II][III]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。
【0020】
本発明の第4特徴によると、シール材にキャビンフレームを上方から覆う第1舌片部を備えることにより、第1舌片部によってキャビンフレームを上方から覆うことができて、シール材とキャビンフレームの間に水が入り込み難くなる。また、シール材にアウタルーフを上方から覆う第2舌片部を備えることにより、第2舌片部によってアウタルーフを上方から覆うことができて、シール材とアウタルーフの間に水が入り込み難くなる。すなわち、シール材とキャビンフレームの間及びシール材とアウタルーフの間に水が入り込み難くなる。
【0021】
(発明の効果)
本発明の第4特徴によると、本発明の第1〜第3特徴のいずれか一つと同様に前項[I][II][III]に記載の「発明の効果」を備えており、これに加えて以下のような「発明の効果」を備えている。
本発明の第4特徴によると、シール材とキャビンフレームの間及びシール材とアウタルーフの間に水が入り込み難くなるため、アウタルーフとキャビンフレームとの間のシール性を更に向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
〔多目的作業車の全体構成〕
図1に作業車の一例である多目的作業車の全体側面図を、図2に多目的作業車の全体平面図を示す。多目的作業車は、車体フレーム1に防振支持されたエンジン2からの動力を、ギヤ式変速装置4及び静油圧式無段変速装置3等を介して、左右一対の前輪5及び後輪6に伝達することで四輪駆動するように構成されている。
【0023】
図1及び図2に示すように、多目的作業車の前部には、前輪フェンダ兼用の下部カバー7、上部の左右中央が開口された上部カバー8及びその開口を開閉可能に覆う揺動開閉式のボンネット9等が配備されている。
【0024】
多目的作業車の前後中央部には、前輪操舵用のステアリングハンドル11及び運転座席12等が配備されたキャビン14を備え、このキャビン14によって搭乗空間が形成されている。
【0025】
多目的作業車の後部でギヤ式変速装置4の上方に油圧式のダンプシリンダ15が配備され、このダンプシリンダ15を伸縮することで、車体フレーム1の後端部に配備した左右向きの支軸16を支点にして荷台17が上下にダンプするように構成されている。
【0026】
車体フレーム1は、搭乗空間を形成するキャビンフレーム20と、このキャビンフレーム20から前後に延出された前部フレーム18及び後部フレーム19等を備えて構成されており、車体フレーム1を構成する各種フレーム類(18,19,20等)は、溶接によって強固に連結されている。
【0027】
キャビンフレーム20は、乗降口を形成する左右一対のドアフレーム21、この左右のドアフレーム21に亘って設けられた複数のクロスメンバ22、搭乗空間の床を形成するフロアパネル23、運転座席12を支持する支持フレーム24、搭乗空間の天井を形成するアウタルーフ31及びインナルーフ36を支持する前後のルーフパネル25,25等を備えて構成されており(図3参照)、このキャビンフレーム20の前面側は開閉可能なフロントガラス26で覆われており、キャビンフレーム20の後面側は開閉可能なリアガラス27で覆われている。
【0028】
乗降口を形成する左右一対のドアフレーム21は、パイプ状の鋼管をループ状に湾曲した形状に成形されており、ドアフレーム21の内方側の上部は全周に亘って凹状に入り込んだ形状に成形されて、この凹状に入り込んだ部分にフレーム受け部21a及びシール部21bが形成されている(図5参照)。
【0029】
キャビンフレーム20の両側面に位置するドアフレーム21には、ドア28を備え、運転座席12の内側又は外側から開閉ハンドル29を操作すると、外開き式の左右一対のドア28が、ドア28の前部上下に位置するヒンジ30の上下方向の軸心周りで片開き式に開閉するように構成されている。
【0030】
〔アウタルーフ付近の詳細構造〕
図3にアウタルーフ31付近の構造を示す平面図を、図4に、図3のA−A断面図をそれぞれ示す。図3及び図4に示すように、前後のルーフパネル25,25は、それぞれ後述するアウタルーフ31及びインナルーフ25に合わせた形状に成形されている。前側のルーフパネル25の前部及び後側のルーフパネル25の後部には、内方側に凹状に入り込んだ凹部25aが形成されており、この凹部25aにアウタルーフ31取付用のボルト35が固着されている。
【0031】
前後のルーフパネル25,25の左右両側部には、全長に亘ってフランジ部25cが形成されており、このフランジ部25cをドアフレーム21のフレーム受け部21aに上方から載せた状態で、ルーフパネル25,25がドアフレーム21に固着されている(図5参照)。
【0032】
アウタルーフ31は、ABS製の樹脂板をプレス成形して外面側をアクリルシートで被膜することによって構成されており、アウタルーフ31の前部及び後部に、下方側に凹状に入り込んだ凹部31aが形成されて、この凹部31aにボルト35を貫通させてアウタルーフ31を取り付けるための取付穴が形成されている。アウタルーフ31の前端部には、上方側に突出したヒンジ取付部31cが形成されており、フロントガラス26上端部のヒンジ37を上側からアウタルーフ31で覆うことで、ヒンジ37が錆び付き難く、見栄えが良くなるように構成されている。
【0033】
アウタルーフ31の両側部には、全長に亘って下方へ湾曲させて折り曲げられたシール取付部31dが形成されており、このシール取付部31dに後述するシール材40を取り付けることができるように構成されている(図5参照)。アウタルーフ31のシール取付部31dの前端部と後端部とに亘って後述するシール材40が取り付けられており、シール材40の前端部及び後端部は車外に開放されて、後述する排水溝48〜50によって雨水等の水を車外に排水できるように構成されている。
【0034】
図4に示すように、ドアフレーム21及びアウタルーフ31の形状は、前後に湾曲した形状に成形されており、シール材40に設けた排水溝48〜50が前後に傾斜するように構成されている。そのため、この傾斜を有効に活用して無理なく前後に排水できるようになっている。
【0035】
アウタルーフ31の下面側には、吸音防水シート32が全面に亘って接着されている。吸音防水シート32は、上側から吸音防水スポンジ、遮音シート、吸音防水スポンジを3層に重ねた3層構造に構成されており(図5参照)、後述するアウタルーフ31からシール材40を介して水がルーフパネル25の上面側に入ったとしても、吸音防水シート32によって水を吸収することができ、かつ、車外からの音を吸音防水シート32で吸音してキャビン14内に伝わり難いように構成されている。
【0036】
アウタルーフ31は、後述するシール材40を取り付けた状態で上方から前後のルーフパネル25,25に密着するように、ルーフパネル25のボルト35とアウタルーフ31の凹部31aの取付穴の位置を合わせて、ゴム板33及び押え板34を介して上方からルーフパネル25に締め付け固定されている。このように、シール材40を外周部に取り付けたアウタルーフ31を上方から締め付け固定する構造を採用することにより、組立作業の作業性を向上させることができて、製造コストを削減することができる。
【0037】
また、アウタルーフ31と前後のルーフパネル25,25との間に吸音防水シート32を介在させて、上方からアウタルーフ31を前後のルーフパネル25,25に締め付け固定する構成を採用することにより、アウタルーフ31を締め付け固定する締め付け力がアウタルーフ31に接着した吸音防水シート32を前後のルーフパネル25,25に押し付ける力として働いて、アウタルーフ31の前部及び後部とルーフパネル25,25との間のシール性を確保することができる。
【0038】
そのため、例えば、多目的作業車を走行させることによって、フロントガラス26とアウタルーフ31の前端部との間から水が侵入して、アウタルーフ31とルーフパネル25の間に前方から水が侵入したとしても、アウタルーフ31とルーフパネル25との間に介在した吸音防水シート32によって水が吸収され、水のキャビン14内への侵入が阻止されて、アウタルーフ31の前端部とルーフパネル25との間のシール性を確保できるように構成されている。なお、リアガラス27とアウタルーフ31の後端部との間から水が侵入した場合も同様に、吸音防水シート32によってアウタルーフ31の後端部とルーフパネル25との間のシール性が確保できるように構成されている。
【0039】
ルーフパネル25,25の下面側には、保温材と不織布をルーフパネル25,25の形状等に合わせて湾曲させた形状に成形されたインナルーフ36がキャビン14の天井を全面に亘って覆うように固定されており、キャビン14内の温度等を快適に保てるように構成されている。
【0040】
〔シール材の詳細構造〕
図5〜図7にシール材40の詳細構造を示す。図5は、シール材40を組み付けた状態における図3のB−B断面図を示し、図6は、シール材40を組み付けた状態における図3のC−C断面図を示し、図7は、組み付けていない状態におけるシール材40の断面図を示す。なお、図5〜図7においては、アウタルーフ31の左側のシール構造を示すが、アウタルーフ31の右側のシール構造についても、左右の勝手が異なる以外の他の構成は同様である。また、図5においては、前側のルーフパネル25の両側部のシール構造を示すが、後側のルーフパネル25の両側部のシール構造についても図5と同様である(図3参照)。
【0041】
図5〜図7に示すように、シール材40は、材質がEPDMによって構成されており、後述するシールリップ42〜45、第1及び第2舌片部46,47等を一体成形した断面形状に構成されている。
【0042】
シール材40は、アウタルーフ31に取り付ける本体部41と、この本体部41の内方側及び外方側に設けられたシールリップ42〜45と、本体部41から上方へ延出された第1及び第2舌片部46,47とを備えて構成されている。
【0043】
図5及び図7に示すように、シール材40の本体部41は、長手方向の全長に亘って上方に開口した凹部41aが形成された断面形状が上向きのコ字状に成形されており、アウタルーフ31にシール40を取り付けた状態でアウタルーフ31を上方から固定すると、本体部41の下面側がルーフパネル25のフランジ部25cの上面に接当して、ルーフパネル25のフランジ部25cと本体部41の下面側が密着してシールできるように構成されている。
【0044】
本体部41の内方側の上部には、長手方向の全長に亘って、斜め上方に凸出した形状のシールリップ42が形成されており、シールリップ42の先端部は丸く湾曲させた滑らかな形状に成形されている。アウタルーフ31にシール材40を取り付けた状態でアウタルーフ31を上方から固定すると、このシールリップ42の下面側が吸音防水シート32の上面側と接当して弾性変形することでシールリップ42の下面側が吸音防水シート32に押し当てられて、アウタルーフ31の内方側のシール性を確保できるように構成されている。
【0045】
このように、シールリップ42を斜め上方に凸出した形状に成形することにより、シールリップ42の上方に断面形状が略三角形の排水溝48を形成することができる。そのため、第2舌片部47の下面側とアウタルーフ31との間から凹部41aを介して侵入した水が、この排水溝48から車体の前方に向って排水されるように構成されている。
【0046】
本体部41の内方側の下部には、長手方向の全長に亘って、内方側に凸出した三角形状のシールリップ43が形成されており、アウタルーフ31にシール材40を取り付けた状態でアウタルーフ31を上方から固定すると、このシールリップ43がルーフパネル25の上面側に接当して、シールリップ42及び吸音防水シート32では防水できなかった水がキャビン14内に入らないように、アウタルーフ31の内方側をシールできるように構成されている。
【0047】
本体部41の外方側の中央部には、長手方向の全長に亘って、斜め上方に凸出した形状のシールリップ44が形成されており、ドアフレーム21と接当する先端部は丸く湾曲させた滑らかな形状に成形されている。アウタルーフ31にシール材40を取り付けた状態でアウタルーフ31を上方から固定すると、このシールリップ44の先端部がドアフレーム21のシール部21bに接当して弾性変形することでシールリップ44の先端部がドアフレーム21のシール部21bに押し当てられてアウタルーフ31の外方側のシール性を確保できるように構成されている。
【0048】
このように、シールリップ44を斜め上方に凸出した形状に成形することにより、シールリップ44の上方に断面形状が略三角形の排水溝49を形成することができる。そのため、第1舌片部46の下面側とドアフレーム21との間から侵入した水がシールリップ44によって堰き止められて、この排水溝49から車体の前方に向って排水されるように構成されている。
【0049】
本体部41の外方側の下部には、長手方向の全長に亘って、斜め下方に凸出した形状のシールリップ45が形成されており、ドアフレーム21に接当する先端部は丸く湾曲させた滑らかな形状に成形されている。アウタルーフ31にシール材40を取り付けた状態でアウタルーフ31を上方から固定すると、このシールリップ45の先端部がドアフレーム21のフレーム受け部21aに接当して弾性変形することでシールリップ45の先端部がドアフレーム21のフレーム受け部21aに押し当てられて、シールリップ44では防水できなかった水がキャビン14内に入らないように、アウタルーフ31の外方側をシールできるように構成されている。
【0050】
シールリップ44,45とドアフレーム21とによって排水溝50が形成されており、シールリップ44によって防水できなかった水がシールリップ44とドアフレーム21との間から浸入したとしても、この排水溝50から車体の前方に向って排水されるように構成されている。
【0051】
本体部41の外方側の上端部から外方側に向って第1舌片部46が延出されており、キャビンフレーム20を構成するドアフレーム21と本体部41との間の隙間を上方から覆うことができるように構成されている。第1舌片部46の下面側は、ドアフレーム21の形状に合わせた形状に成形されており、上面側は、水が外側に無理なく流れ落ちるように滑らかに湾曲した形状に成形されている。第1舌片部46の先端部の形状は、丸く湾曲させた形状に成形されており、アウタルーフ31にシール材40を取り付けた状態でアウタルーフ31を上方から固定すると、第1舌片部46の先端部がドアフレーム21に接当して弾性変形することで、第1舌片部46の先端部とドアフレーム21との間でシール性を確保できるように構成されている。
【0052】
本体部41の外方側の上端部から内方側に向って第2舌片部47が延出されており、アウタルーフ31を上方から覆うことができるように構成されている。第2舌片部47の下面側は、アウタルーフ31の形状に合わせた形状に成形されており、上面側は、滑らかに湾曲した形状に成形されている。第2舌片部47の先端部の形状は、丸く湾曲させた形状に成形されており、アウタルーフ31にシール材40を取り付けると、第2舌片部47の先端部がアウタルーフ31に接当して弾性変形することで、第2舌片部47の先端部とアウタルーフ31との間でシール性を確保できるように構成されている。
【0053】
以上のようにシール材40を構成して、アウタルーフ31にシール材40を取り付けた状態でアウタルーフ31を上方から固定すると、アウタルーフ31の外方側は、第1舌片部46によって上方からドアフレーム21を覆うことによって水の浸入を阻止し、水が第1舌片部とドアフレーム21との間から浸入したとしても、シールリップ44,45によって二重に水のキャビン14内への浸入を阻止するとともに、侵入した水を排水溝49,50から車外へ排出することができる。
【0054】
一方、アウタルーフ31の内方側は、第2舌片部47によって上方からアウタルーフ31を覆うことによって水の浸入を阻止し、第2舌片部47とアウタルーフ31との間から水が侵入したとしても、シールリップ42,43によって二重に水のキャビン14内への浸入を阻止するとともに侵入した水を排水溝48から車外へ排出することができる。また、シールリップ42を跨いで排水溝48から内方側に漏れた水の一部は、吸音防水シート32によって吸収されてキャビン14内に漏れないように構成されている。
【0055】
さらに、アウタルーフ31を上方から固定することにより、樹脂で成形されたアウタルーフ31自体が少し弾性変形して、このアウタルーフ31の弾性変形による復元力が下方に折り曲げ成形したシール取付部31dを下方へ押す力として作用して、本体部41とフランジ部25cとの間、及び、シールリップ43とルーフパネル25の上面側との間のシール性を確保できるように構成されている。
【0056】
図6に基づいて、ルーフパネル25が設けられていないアウタルーフ31の前後中央部のシール構造について説明する。図6に示すように、アウタルーフ31にシール材40を取り付けた状態でアウタルーフ31を上方から固定すると、本体部41の内方側の上部に設けたシールリップ42の先端部が吸音防水シート32と接当して弾性変形することで、第2舌片部47とアウタルーフ31との間から凹部41aを介して水が侵入したとしても、アウタルーフ31の内方側のシール性を確保できるように構成されている。
【0057】
また、シールリップ42の上部に形成された排水溝48によって、第2舌片部47とアウタルーフ31との間から凹部41aを介して侵入してきた水が車体の前後に向って排水されるように構成されている。
【0058】
本体部41の外方側の中央部に設けたシールリップ44の先端部がドアフレーム21のシール部21bに接当して弾性変形し、本体部41の外方側の下部に設けたシールリップ45の先端部がドアフレーム21のフレーム受け部21aに接当して弾性変形することで、水が第1舌片部46とドアフレーム21との間から浸入したとしても、シールリップ44とシールリップ45の2箇所でアウタルーフ31の外方側のシール性を確保できるように構成されている。
【0059】
また、シールリップ44の上部に形成された排水溝49及びシールリップ45の上部に形成された排水溝50によって、第1舌片部46とドアフレーム21との間から侵入してきた水が車体の前後に向って排水されるように構成されている。
【0060】
このように、アウタルーフ31の前後中央部においては、図5に示したルーフパネル25が設けられたアウタルーフ31の前端部及び後端部と異なる断面形状となるように構成されている。このように構成することにより、水が侵入し易いアウタルーフ31の前端部及び後端部におけるアウタルーフ31とドアフレーム21との間のシール性を十分に確保しつつ、アウタルーフ31の前端部及び後端部に比べて水が侵入し難いアウタルーフ31の前後中央部においてはルーフパネル25を設けないでシールする構成を採用することで、フレーム構造を簡素化することができて、車体重量を軽減することができ製造コスト削減を図れる。
【0061】
[発明の実施の第1別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]においては、シール材40を装着したアウタルーフ31をキャビンフレーム21に上方からボルト35で固定する構造を採用した例を示したが、シール材40を装着したアウタルーフ31をキャビンフレーム21に上方から締め付け固定する構造は、異なる構造を採用してもよい。
【0062】
前述の[発明を実施するための最良の形態]においては、アウタルーフ31の両側部におけるアウタルーフ31とドアフレーム21との間のシールにシール材40を用いた例を示したが、アウタルーフ31とキャビンフレーム21を構成する他のフレームとの間のシールにシール材40を用いる構成を採用してもよく、例えば、アウタルーフ31の全周に亘ってシール材40を取り付けてシールする構成を採用してもよい。
【0063】
[発明の実施の第2別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]及び[発明の実施の第1別形態]においては、シールリップ42〜45、排水溝48〜50、及び、第1及び第2舌片部46,47の形状を上述した形状に構成した例を示したが、同様の機能を果たすものであれば異なる形状のシールリップ42〜45、排水溝48〜50、及び、第1及び第2舌片部46,47を採用してもよい。
【0064】
[発明の実施の第3別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]、[発明の実施の第1別形態]及び[発明の実施の第2別形態]においては、作業車の一例として多目的作業車のキャビン14のシール構造について示したが、キャビンを備えた作業車、例えば、トラクタやコンバイン等の農作業車、バックホーやホイルローダ等の建設作業車等のキャビン14のシール構造においても同様に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】多目的作業車の全体左側面図
【図2】多目的作業車の全体平面図
【図3】アウタルーフの構造を示す平面図
【図4】図3のA−Aの位置でのアウタルーフの構造を示す縦断面図
【図5】図3のB−Bの位置でのシール構造を示す縦断面図
【図6】図3のC−Cの位置でのシール構造を示す縦断面図
【図7】シール材の断面構造を示す詳細図
【符号の説明】
【0066】
14 キャビン
31 アウタルーフ
31d シール取付部
40 シール材
41 本体部
41a 凹部
42〜45 シールリップ
46 第1舌片部
47 第2舌片部
48〜50 排水溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビンを形成するキャビンフレームと、前記キャビンフレームを上方から覆うアウタルーフとを備え、シール材を装着した前記アウタルーフを前記キャビンフレームに上方から締め付け固定してあるキャビンのシール構造であって、
前記アウタルーフの縁部に、下方に突出させたシール取付部を形成するとともに、前記シール材の本体部に設けた凹部に前記アウタルーフのシール取付部を嵌め込み装着して、
前記シール材の本体部の側方に、前記キャビンフレームと接当させてシールするシールリップと、前記シール材と前記キャビンフレームとの間に入ってきた水を排水する排水溝を備えてあるキャビンのシール構造。
【請求項2】
前記シールリップの上面を斜めに傾斜させることによって、前記シールリップの上側に前記排水溝を形成してある請求項1記載のキャビンのシール構造。
【請求項3】
前記シール材の本体部の内方側及び外方側に、前記シールリップ及び排水溝を備えてある請求項1又は2記載のキャビンのシール構造。
【請求項4】
前記シール材に、前記キャビンフレームを上方から覆う第1舌片部と、前記アウタルーフを上方から覆う第2舌片部を備えてある請求項1〜3のいずれか一つに記載のキャビンのシール構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−94180(P2008−94180A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−276273(P2006−276273)
【出願日】平成18年10月10日(2006.10.10)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】