説明

キャビン

【課題】 エアコン本体に内気を導入する内気流通用ダクトがエアコン本体の配置空間の邪魔者となるということがないキャビンを提供する。
【解決手段】 キャビン9の後部に配置された運転席44の下方側にエアコン本体60を収容するエアコン本体収容室59を密閉状に形成し、このエアコン本体収容室59を構成する壁部57aにキャビン9室内の空気を該エアコン本体収容室59内にフィルタ63を介して取り入れる内気取入れ部61を設け、エアコン本体60にエアコン本体収容室59内の空気を導入する内気導入口65を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタ等の車両に搭載されるキャビンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、トラクタには、該トラクタに搭載されるキャビンの室内の空気調節を行うエアコンが設けられ、このエアコンのエバポレータ及びブロア等を備えたエアコン本体をキャビンのルーフ内に配置すると、ルーフが大型化してヘッドクリアランスを狭くする等の問題があることから、前記エアコン本体を運転席の下方側のフロアーシートの下側に配置したトラクタがある(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−91636号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記エアコン本体を運転席の下方側のフロアーシートの下側に配置したものにあっては、エアコン本体にキャビン室内の空気(内気)を導入する場合、キャビン室内にフィルタを設け、このフィルタからフロアーシートを貫通してエアコン本体に接続されるダクトを配設するようにすると、該ダクトによってエアコン本体の配置空間が狭くなり、エアコン本体の配置を設計する際に設計の自由度が小さくなるという問題がある。
特に、エアコン本体の背面側に内気導入口を設けた場合、内気導入口に接続されるダクトが邪魔者となってエアコン本体をキャビンの背面ぎりぎりに寄せられなく、オペレータの足元空間を狭くするという問題がある。
【0004】
そこで、本発明は、前記問題点を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この技術的課題を解決するための本発明の技術的手段は、キャビンの後部に配置された運転席の下方側にエアコン本体を収容するエアコン本体収容室を密閉状に形成し、このエアコン本体収容室を構成する壁部にキャビン室内の空気を該エアコン本体収容室内にフィルタを介して取り入れる内気取入れ部を設け、エアコン本体にエアコン本体収容室内の空気を導入する内気導入口を設けたことを特徴とする。
また、キャビンのルーフに外気取入れ部を設けると共にキャビンの骨格を構成するピラーを中空状に形成して該外気取入れ部から取り入れられたキャビン室外の空気を該ピラーを介して下方に案内し、前記ピラーの下端側に一端側が接続された外気流通ダクトの他端側をエアコン本体収容室を構成する壁部を貫通してエアコン本体に接続するのがよい。
【0006】
また、エアコン本体の内気導入口の近傍に外気流通ダクトの他端側に連通する外気導入口を設け、エアコン本体内に、内気導入口を塞いで外気を導入する外気導入状態と外気導入口を塞いで内気を導入する内気導入状態とに切り替える切替ダンパを設けてもよい。
また、エアコン本体の背面側に内気導入口を設け、この内気導入口に近接するエアコン本体の側部に外気導入口を設けるのがよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、エアコン本体を収容するエアコン本体収容室を密閉状に形成して、このエアコン本体収容室を構成する壁部にキャビン室内の空気を該エアコン本体収容室内にフィルタを介して取り入れる内気取入れ部を設け、エアコン本体にエアコン本体収容室内の空気を導入するようにして、エアコン本体収容室をエアコン本体に内気を導入するダクトとしているので、内気取入れ部の配置位置の自由度が大きく、また、エアコン本体に内気を導入する内気流通用ダクトがエアコン本体配置空間の邪魔者となるということがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1はトラクタ(車両)を示しており、該トラクタは、エンジン2と、フライホイールハウジング,クラッチハウジング,ミッションケース等からなる伝動ケース3とを連結してなる車体1を有し、該車体1の前部は左右一対の前輪6によって支持され、後部は左右一対の後輪7によって支持されており、該車体1の後部にはキャビン9が搭載されている。
エンジン2、ラジエータ4、バッテリー10等はトラクタの前部に配置されていてボンネット5によって覆われている。
【0009】
このトラクタは、キャビン9室内の空気調節を行うエアコン(エアーコンディショナ)が装備されており、このエアコンは冷房装置と暖房装置とを備えている。
冷房装置は、例えば、冷媒を圧縮するコンプレッサーと、このコンプレッサーで圧縮された冷媒を放熱させながら凝縮・液化させるコンデンサー(放熱器)と、このコンデンサーで液化された冷媒を減圧して気化しやすい状態とする膨張弁と、冷媒を気化させて周囲から熱を奪って周囲を低温状態とするエバポレータ(蒸発器)とを備えてなる。
暖房装置は、例えば、エンジン2の熱で熱せられた温媒をヒータに送ると共に該ヒータからエンジン2側に戻すように温媒を循環させるようにした構造のものが採用される。
【0010】
このエアコンのエアコン本体60は、ケーシング内にエバポレータとヒータと送風機(ブロワ)等とを収納してなると共にキャビン9室内に配置されており、コンプレッサーと、放熱器と、膨張弁等はボンネット5内に配置されている。
なお、エアコン本体60は、最低限、冷房装置のエバポレータと送風機とを備えていればよい。
図1〜図8において、前記キャビン9は骨格となるキャビンフレーム11を有し、このキャビンフレーム11は、前部に配置された左右一対のフロントピラー12と、後部に配置された左右一対のリヤピラー13とを有し、左右リヤピラー13の上端は左右フロントピラー12と同じ高さとされていると共に左右リヤピラー13の下端の高さは左右フロントピラー12の上下方向の中間部に対応する位置に位置しており、さらに、左右リヤピラー13はキャビン9の上部側背面よりも前方に位置している。
【0011】
また、フロントピラー12とリヤピラー13とは、上下端部が開放状とされた中空構造とされており、リヤピラー13は板金によって形成された左右方向内外一対の構成部材を重ね合わせることにより、フロントピラー12よりも太く形成されている。
左右各フロントピラー12は、上下両端から上下方向中央側に行くに従って左右方向外方に移行するように湾曲形成されていて左右方向外方に凸となる湾曲状に形成されている。
また、左右各フロントピラー12は、上下方向中央よりも上部側が上端に行くに従って徐々に後方に向かうように後方傾斜状に湾曲形成されている。
【0012】
また、左右各リヤピラー13は、フロントピラー12の上半部に対応して、上端から下端に行くに従って左右方向外方に向かうように湾曲状に形成されている。
左右のフロントピラー12の上端同志はフロントルーフビーム15によって連結され、左右のリヤピラー13の上端同志はリヤルーフビーム16によって連結され、左右のリヤピラー13の下端同志はリヤミドルビーム21によって連結され、左右方向で同じ側にあるフロントピラー12とリヤピラー13の上端同志はそれぞれサイドルーフビーム17によって連結されている。
【0013】
フロントルーフビーム15は、左右両端から左右方向中央側に行くに従って上方に移行するように湾曲形成されていて上方に向けて凸となる湾曲状(円弧状)に形成されており、例えば、トラクタの前部に装着されたフロントローダのバケットを上昇させたとき等において、前斜め上方の視界性が良好となるように構成されており、ローダ作業がしやすくなっている。
また、フロントピラー12は、上部側が上端に行くに従って徐々に後方に向かうように後方傾斜状に湾曲形成されているので、従来よりもフロントルーフビーム15が後方に位置し、これによっても前斜め上方の視界性が良好となるように構成されている。
【0014】
リヤルーフビーム16とリヤミドルビーム21とは、中途部が左右方向に形成されると共に左右両側が前方に向けて延出された平面視コ字形に形成されており、また、左右方向部分が、左右両端から左右方向中央側に行くに従って後方に移行するように湾曲形成されていて後方に凸となる湾曲状に形成されている。
サイドルーフビーム17は、前後両端から前後方向中央側に行くに従って左右方向外方に移行するように湾曲形成されていて左右方向外方に凸となるように湾曲状に形成されている。
【0015】
キャビン9の上部側背面(リヤルーフビーム16とリヤミドルビーム21との間)には、キャビン9の側面よりも左右方向内方側に位置する左右一対の上背面ピラー25が配置され、この上背面ピラー25は下方に行くに従って後方に移行する傾斜状に配置されていて該上背面ピラー25の上端側はリヤルーフビーム16に連結され下端側はリヤミドルビーム21に連結されている。
また、キャビン9の下部側背面には、キャビン9の側面よりも左右方向内方側に位置する左右一対の下背面ピラー27が配置され、この下背面ピラー27は下方に行くに従って前方に移行する傾斜状に配置されていて該下背面ピラー27の上端側はリヤミドルビーム21に連結されており下端はフロントピラー12の下端と略同じ高さ位置にある。
【0016】
また、キャビンフレーム11の前面側下部の左右方向中央側には、キャビン9の室内と室外とを仕切る(キャビン9室内とエンジン2側とを仕切る隔壁となる)フロントパネル23が配置され、このフロントパネル23の左右側部の下端側と左右フロントピラー12の下端側との間には、フロントフロアービーム24が配置され、このフロントフロアービーム24の左右方向内端側はフロントパネル23の側部の下端側に連結され左右方向外端側はフロントピラー12の下端側に連結されている。
また、フロントパネル23の左右の側部上部側と左右フロントピラー12の上下方向中途部とが連結フレーム18によって連結されている。
【0017】
また、キャビン9の底部側には前後方向に沿って配設された左右一対のサイドフロアービーム28が配置され、この左右各サイドフロアービーム28は、キャビン9の側面よりも左右方向内方側に位置しており、各サイドフロアービーム28の前端側は左右方向で同じ側にあるフロントフロアービーム24の左右方向中途部に連結され、サイドフロアービーム28の後端側は左右方向で同じ側にある下背面ピラー27の下端側に連結されている。
左右各サイドフロアービーム28の前端側は、伝動ケース3の前部の側部に設けられたブラケット48にマウントゴム(防振ゴム)47を介して取付支持され、左右下背面ピラー27の下部に固定されたブラケット51は、後車軸を支持する後車軸ケースに取付固定された支持台50にマウントゴム49を介して取付支持されており、これによってキャビン9がトラクタ車体1に支持されている。
【0018】
また、キャビンフレーム11は、左右各リヤピラー13の下端側から前下方に向けてキャビン9底部にまで延びるサイドフレーム22を備え、このサイドフレーム22は後輪7に略沿うように前上方に向けて凸となる湾曲状に形成されており、後端側(上端側)はリヤピラー13の下端側に連結され前端側(下端側)は連結部材22b等を介してフロントピラー12の下端側に連結される。
また、このサイドフレーム22は、前後端部から前後方向中央側に行くに従って左右方向外方に移行する湾曲状に形成されていて平面視で左右方向外方に凸となる湾曲状に形成されている。
【0019】
キャビンフレーム11の上部にはルーフ39が設けられ、左右フロントピラー12間にはフロントガラス34が設けられ、左右方向で同じ側にあるフロントピラー12とリヤピラー13との間は乗降口とされていて該フロントピラー12とリヤピラー13との間にはドア35が設けられ、左右方向で同じ側にあるリヤピラー13と上背面ピラー25との間にはリヤサイドガラス36が設けられ、左右の上背面ピラー25間にはリヤガラス37が設けられ、キャビンフレーム11の底部及び背面下部にはフロアーシート31が設けられ、キャビンフレーム11の側部後下部にはサイドパネル32が設けられている。
【0020】
ルーフ39は、キャビン9室内側に配置されていてキャビン9室内の天井部を構成するインナールーフ40と、該インナールーフ40の上方側に配置されたアウタールーフ41とから中空状に形成され、アウタールーフ39の左右一側、本実施の形態では左側部の後部に外側方に突出した外気取入れ部53が設けられ、この外気取入れ部53は、その下面に設けられた外気取入れ口54からキャビン9室外の空気(外気)をフィルタ55を通してルーフ39内の中空部42に取り入れるように構成されている。
また、ルーフ39内部には左側のリヤピラー13の上端開口が連通され、外気取入れ部53からルーフ39内に取り入れられた外気が該リヤピラー13を介して下方に案内されるように構成されており、リヤピラー13がダクトとして利用されている。
【0021】
左右のドア35は、サイドルーフビーム17,サイドフレーム22,フロントピラー12,リヤピラー13の湾曲形状に合わせて左右方向外方に凸となる湾曲状に形成されていると共に、リヤサイドガラス36及びリヤガラス37も、リヤルーフビーム16,リヤミドルビーム21等の湾曲形状に合わせて湾曲状に形成されており、これによって、効果的にキャビン9室内の居住空間を広くして、操縦性、各種装置の操作性等を良好にしている。また、キャビン9が全体的に大きくなることによって、エアコンが効きにくくなる、大型化する等の不具合もない。
【0022】
左右の各サイドパネル32は、板材によって形成されており、サイドフロアービーム28に沿って且つサイドフロアービーム28の後端側からサイドフレーム22の下端部位置対応部分に至るように直線状に形成された下縁部と、下背面ピラー27に沿って且つ下背面ピラー27の下端側から上端側に至るように直線状に形成された後縁部と、下縁部前端から後縁部上端に亘って且つサイドフレーム22及びリヤミドルビーム21側部に沿うように略弧状に形成された弧状縁部とを有する側面視略扇形の主壁部分と、この主壁部分の弧状縁部からサイドフレーム22及びリヤミドルビーム21側部に向けて左右方向外方に延出する延出壁部分とから形成されており、主壁部分の下縁部がサイドフロアービーム28に溶接等によって固定され、主壁部分の後縁部が下背面ピラー27に溶接等によって固定され、延出壁部分がサイドフレーム22及びリヤミドルビーム21側部等に溶接等によって固定されている。
【0023】
このサイドパネル32の左右方向外面側に後輪フェンダが設けられる。
フロアーシート31は、キャビン9の底部を構成する底壁部31aと、この底壁部31aの後端縁から後方に向かうに従って上方に移行する傾斜方向に延出された背面壁31bとを有する。
このフロアーシート31の底壁部31aは、その前後方向が、フロントピラー12及びフロントパネル23の下端から下背面ピラー27の下端(サイドフロアービーム28の後端)に至るように形成され、左右方向は、後部側が左右のサイドフロアービーム28(サイドパネル32)間に亘るように形成され前部側が左右のサイドフロアービーム28から左右方向外方に延出して乗降口の下端に至るように形成されている。
【0024】
また、フロアーシート31の背面壁31bは、左右下背面ピラー27間に亘る幅に形成されると共に、サイドフロアービーム28の後端部から下背面ピラー27に沿って斜め上方に延出されてリヤミドルビーム21に至るように形成され、該フロアーシート31の背面壁31bの上部には、ガラスパネルで閉塞される開口部64が形成されている。
なお、前記開口部64の下側において、左右の下背面ピラー27は連結フレーム56によって連結されている。
前記フロントガラス34、ルーフ39、ドア35、リヤサイドガラス36、リヤガラス37、フロアーシート31、サイドパネル32、フロントパネル23等でキャビン室43が形成されている。
【0025】
キャビン9室内の後部には、フロアーシート31と上下方向に間隔をおいて位置する上部壁57aと、この上壁部57aの前縁から下方に且つフロアーシート31にまで延出する前部壁57bとを有するシート台57が設けられている。
このシート台57は、左右両側縁がサイドパネル32に溶接等によって固着され、上壁部57aの後縁がフロアーシート31の背面壁31bに溶接等によって固着され、前壁部の下縁が溶接等によってフロアーシート31に固着されている。
本実施の形態では、前記フロアーシート31と左右のサイドパネル32とシート台57とで、前記エアコンのエアコン本体60を収容するエアコン本体収容室59が密閉状に形成されている。
【0026】
また、シート台57の上壁部57a上面側には、クッション装置及び前後位置調整装置等を介して運転席44が支持されており、この運転席44の下方側にエアコン本体収容室59が設けられている。
運転席44の前方側にはステアリングハンドル45が設けられ、このステアリングハンドル45はフロントパネル23に固定されたハンドルポスト88に支持されており、フロントパネル23には、その他、クラッチペダル、左右一対のブレーキペダル等が支持されている。
【0027】
前記エアコン本体収容室59を構成する壁部、本実施の形態ではシート台57の上壁部57aの左側の後部側(運転席44の後方左側)には、フィルタ63を介してキャビン9室内の空気(内気)をエアコン本体収容室59内に取り入れる内気取入れ部61が設けられている。
この内気取入れ部61は、シート台57の上壁部57aの左側後部に貫通形成された内気取入れ口62の上方をフィルタ63で覆うようにして構成されている。
また、エアコン本体60の背面左側(左右一側)には、エアコン本体収容室59内の空気をエアコン本体60に導入するための内気導入口65が設けられており、エアコン本体60内のブロアによって、フィルタ63を介してエアコン本体収容室59内に取り入れられた内気が内気導入口65からエアコン本体60内に吸い込まれるように構成されている。
【0028】
したがって、エアコン本体収容室59全体が、フィルタ63を通った内気をエアコン本体60へと案内するダクトとされており、フィルタ63を備えた内気取入れ部61は、エアコン本体収容室59を構成する壁部の内、キャビン9室内に面する所のいずれの位置に設けてもよいように構成されている(内気取入れ部61の配置位置の設計の自由度が大きい)。
また、エアコン本体収容室59全体をダクトとしているので、エアコン本体60の背面に形成した内気導入口65の後方側にダクトを接続するスペース又はフィルタを配置するスペースが必要でなく、エアコン本体60を極力キャビン9の背面側に寄せることができ、これによって、フロアーシート31の底壁部31a前部側のスペース(ステップ、オペレータの足置きスペース)を広くとることができる。
【0029】
左側サイドパネル32の内面側(キャビン9室内側)には、その上端側が左側リヤピラー13の下端側(の内側面)に接続された(左側リヤピラー13内に連通された)外気流通ダクト68が設けられている。
この外気流通ダクト68の下端側は、エアコン本体60を構成する壁部、本実施の形態ではシート台57の上壁部57aの左側部を貫通してエアコン本体収容室59内に挿通されると共にエアコン本体60上面側の左側部の接続口に上方から接続されていて、エアコン本体60のブロアによって、ルーフ39の外気取入れ部53からフィルタを介して取り入れられた外気が、左側リヤピラー13及び外気流通ダクト68を通ってエアコン本体60内に吸い込まれるように構成されている。
【0030】
なお、この外気導入ダクト68は、キャビン9の居住空間を妨げないよう、できるだけ左右方向に関して扁平状に形成するのが好ましい。
また、エアコン本体60内の内気導入口65の近傍には外気導入口66が設けられ、この外気導入口66は前記外気流通ダクト68の下端側開口に連通している。この外気導入口66は、本実施の形態では、内気導入口65の左側に隣接するように配置され且つ右側方に向いて開口状となるように形成されている。
また、エアコン本体60内の内気導入口65と外気導入口66との間には、内気導入口65を塞いで外気を導入する外気導入状態と、外気導入口66を塞いで内気を導入する内気導入状態とに切り替える切替ダンパ70が設けられている。
【0031】
この切替ダンパ70は、内気導入口65の左側方で且つ外気導入口66の後方に位置する上下方向の支軸69回りに揺動自在に支持されていて、該支軸69回りに揺動させることにより外気導入状態と内気導入状態とに切替え操作自在とされている。
また、エアコン本体60の前面側右側には、該エアコン本体60から空調空気を送出する左右一対の送出口67A,67Bが設けられ、該送出口67A,67Bにはそれぞれエアコン本体60から送出された空調空気を案内する左右の送出側ダクト73,74が接続され、一方(右側)の送出側ダクト(第1の送出側ダクト)73は中継ダクト77を介してステアリングハンドル45の近傍にて空調空気を吹き出す吹出側メインダクト(吹出側ダクト)76に接続され、他方(左側)の送出側ダクト(第2の送出側ダクト)74はフロントガラス34の内面側に空調空気を吹き出すデフロスタダクト82に接続されている。
【0032】
一対の送出口67A,67Bは、前方に行くにしたがって左方に移行する傾斜方向を向いており、シート台57の前部壁57bには、左右の送出側ダクト73,74の後端側をエアコン本体60内に挿入させて送出口67A,67Bに接続するための開口部89が形成され、この開口部89は蓋体によって密閉状に閉塞される。
左右の各送出側ダクト73,74は、フロアーシート31の底壁部31a(キャビン9の底部)に沿って前方に延出されており、その後部は、前方に行くにしたがって左方に移行する傾斜状に形成され、前部は、左右方向中央側に位置していて前後方向に沿う方向に形成されている。
【0033】
一方の送出側ダクト73の前部は、フロアーシート31の底壁部31aの前端側左右方向中央部形状に沿って前方に行くに従って上方に移行する傾斜状に形成され、前端部は空調空気の出口となる接続口73aとされ、該接続口73aは前方に指向していてフロントパネル23の下部に形成された下ダクト挿通口72を挿通している。
また、フロアーシート31の底壁部31a前部の左右方向中央側には、フロアーシート31を上方から下方に向けて凹ませることにより形成された凹部91が形成され、左右の送出側ダクト73,74は、この凹部91に収容されるように下方に向けて凸となるように屈曲されており、送出側ダクト73,74がフロアーシート31上面(ステップ上面)から上方に大きく突出しないように構成されている。
【0034】
なお、凹部91は送出側ダクト73,74が凹部91内に完全に没入するように形成されていてもよい。また、フロアーシート31の底壁部31a前部には、ゴム等からなるフロアーマットが敷設される。
吹出側メインダクト76は、左右一対の第1ダクト部76aと、左右一対の第2ダクト部76bと、空調空気の入口となる接続口76cとを有する。
この吹出側メインダクト76の接続口76cは、ハンドルポスト88の基部の上方側に位置しており、前方側に指向していて、フロントパネル23の上部側に形成された上ダクト挿通口71を挿通している。
【0035】
左右の各第1ダクト部76aは、接続口76c側から左右方向外方側に延出され、延出側端部(左右方向外方側の端部)に、後方に行くに従って左右方向外方に移行する方向を向く吹出し口80が設けられている。
第2のダクト部76bは、接続口76c側からハンドルポスト88の側方を通って後方側に延出され、延出側端部(後端側)に、上方に行くに従って後方に移行する傾斜方向を向く吹出し口79を有する。
なお、前記各吹出し口79,80には、風向きを変更する風向き変更部材が設けられる。
【0036】
中継ダクト77は、上下部に接続口77a,77bを有する筒状に形成され、フロントパネル23の前面側に配置されて該フロントパネル23にネジ等によって着脱自在に取付固定されている。
この中継ダクト77の上下の接続口77a,77bは後方を向くように屈曲されており、この中継ダクト77の上側の接続口77aは吹出側メインダクト76の接続口76cに接続され、下側の接続口77bは一方の送出側ダクト73の前部接続口73aに接続されていて、吹出側メインダクト76の接続口76cと一方の送出側ダクト73の前部接続口73aとを連通させている。
【0037】
中継ダクト77をキャビン9室内に設けると、中継ダクト77によってキャビン9室内のスペースが取られ、キャビン9室内空間が狭くなるが、本実施の形態のように、吹出側メインダクト76の接続口76cと一方の送出側ダクト73の前部接続口73aとをフロントパネル23のキャビン9室外側に位置する中継ダクト77によって連通させていることにより、キャビン9室内の空間を狭くするようなことがなく、キャビン9室内のフロントパネル23のキャビン9室内側に設けられる部材の設計の自由度が大きいという利点がある。
【0038】
また、中継ダクト77をキャビン9室内に設けると、キャビン9室内側の部材によって制約を受けて中継ダクト77の構造が複雑となる場合があり、中継ダクト77が複雑な形状に屈曲されると空気抵抗が大きくなるという問題があるが、本実施の形態では、ダクト構造の簡素化が図れ、空気抵抗の低減を図ることができる。
また、中継ダクト77はキャビン9の外側から着脱自在に取り付けられるので、中継ダクト77の接続が容易となると共に中継ダクト77内等の清掃が容易に行える。
なお、中継ダクト77は、必ずしも筒状に構成されていなくてもよく、吹出側メインダクト76の接続口76cと一方の送出側ダクト73の前部接続口73aとを連通させるように形成されていればよく、例えば、吹出側メインダクト76の接続口76cと、一方の送出側ダクト73の前部側接続口73aとを覆うカバー体によって構成してもよい(この場合、フロントパネル23もダクトの一部を構成する)。
【0039】
デフロスタダクト82は、左右一対の側部分83と該左右側部分83の上端同志を連結する上部分84とから、フロントパネル23の外形状に沿う門型状に形成されていてフロントパネル23に取付固定されており、右側部分83の下端側は閉塞され、左側部分83の下端側に他方の送出側ダクト74の前端側が接続されている。
このデフロスタダクト82の左右の側部分83には左右方向外方に指向する吹出し口85が設けられ、上部分84には上方に指向する吹出し口85が設けられ、エアコン本体60から送出された空調空気が各吹出し口85からフロントガラス34の内面側に吹き出される。
【0040】
このデフロスタダクト82をフロントパネル23に取付固定することにより、該デフロスタダクト82の強度を利用してフロントパネル23の剛性アップ(強度アップ)が図れる。
また、このデフロスタダクト82には、ステアリングハンドル45を支持するハンドルポスト88の基部側及び吹出し側メインダクト76等を覆うと共に計器パネル等が取り付けられるインストルメントパネル87が取り付けられており、該デフロスタダクト82がインストルメントパネル87の取付用部材を兼用しており、インストルメントパネル87の取付用部材を省略することができるように構成されている。
【0041】
前記構成のキャビン9にあっては、切替えダンパ70で外気導入口66を塞いで、内気を循環させる場合、吹出側メインダクト76及びデフロスタダクト82の吹出し口79,80,85から吹き出された空調空気は曲面状のドア35、リヤサイドガラス36に沿って後方にスムーズに流れると共にインナールーフ40内面に沿って流れてキャビン9後部の内気取入れ部61に至り、該内気取入れ部61からエアコン本体収容室59を介してエアコン本体60内に吸い込まれ、エアコン本体60の送出口67A,67Bから送出側ダクト73,74を介して吹出側メインダクト76、デフロスタダクト82に至り、また吹出し口79,80,85から吹き出されるように構成され、内気循環が効率よく行われるようになっている。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】トラクタの側面図である。
【図2】キャビンの斜視図である。
【図3】キャビンの正面図である。
【図4】キャビンの平面図である。
【図5】キャビンの右側面図である。
【図6】キャビンの左側面図である。
【図7】キャビンの前下部中央側の背面図である。
【図8】キャビンの前下部中央側をキャビン室内から見た斜視図である。
【図9】エアコン本体の平面断面図である。
【符号の説明】
【0043】
9 キャビン
13 リヤピラー
39 ルーフ
44 運転席
53 外気取入れ部
57a 壁部
59 エアコン本体収容室
60 エアコン本体
61 内気取入れ部
63 フィルタ
65 内気導入口
66 外気導入口
68 外気流通ダクト
70 切替ダンパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビン(9)の後部に配置された運転席(44)の下方側にエアコン本体(60)を収容するエアコン本体収容室(59)を密閉状に形成し、このエアコン本体収容室(59)を構成する壁部(57a)にキャビン(9)室内の空気を該エアコン本体収容室(59)内にフィルタ(63)を介して取り入れる内気取入れ部(61)を設け、エアコン本体(60)にエアコン本体収容室(59)内の空気を導入する内気導入口(65)を設けたことを特徴とするキャビン。
【請求項2】
キャビン(9)のルーフ(39)に外気取入れ部(53)を設けると共にキャビン(9)の骨格を構成するピラー(13)を中空状に形成して該外気取入れ部(53)から取り入れられたキャビン(9)室外の空気を該ピラー(13)を介して下方に案内し、前記ピラー(13)の下端側に一端側が接続された外気流通ダクト(68)の他端側をエアコン本体収容室(59)を構成する壁部(57a)を貫通してエアコン本体(60)に接続したことを特徴とする請求項1に記載のキャビン。
【請求項3】
エアコン本体(60)の内気導入口(65)の近傍に外気流通ダクト(68)の他端側に連通する外気導入口(66)を設け、エアコン本体(60)内に、内気導入口(65)を塞いで外気を導入する外気導入状態と外気導入口(66)を塞いで内気を導入する内気導入状態とに切り替える切替ダンパ(70)を設けたことを特徴とする請求項2に記載のキャビン。
【請求項4】
エアコン本体(60)の背面側に内気導入口(65)を設け、この内気導入口(65)に近接するエアコン本体(60)の側部に外気導入口(66)を設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のキャビン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−8075(P2006−8075A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−191987(P2004−191987)
【出願日】平成16年6月29日(2004.6.29)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】