説明

キャブ及びこれを備えた建設機械

【課題】上ガラスと下ガラスとの間隔を正確に位置決めすることにより、両ガラスの間のシールを確実に行うことができるキャブ及びこれを備えた建設機械を提供すること。
【解決手段】フロントウインドウ12は、フロア部材9上に支持される下ガラス19と、この下ガラス19の上方で各支柱10により上下にスライド可能に支持される上ガラス20と、この上ガラス20が予め設定された下限位置までスライドした状態で前記下ガラス19と上ガラス20との間に挟持されるシール材21とを備え、上ガラス20のスライドを下限位置で規制するための規制部25と、フロア部材9に設けられているとともに下ガラス19を支持する支持部23と、これら規制部25と支持部23とを連結する連結部26とを一体に有する窓受け部材14を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロントウインドウが上下に2分割され、上ガラスが上下にスライド可能とされたキャブ及びこれを備えた建設機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、建設機械のキャブであって、運転室の前方に位置するフロントウインドウが上下に2分割されたもの(例えば、特許文献1)が知られている。
【0003】
図9は、従来のキャブの側面断面図であり、フロントウインドウの上ガラスを開けた状態を示している。図10は、図9に示すキャブの側面断面図であり、上ガラスを閉じた状態を示している。図11は、図9及び図10に示す上ガラスの支持構造を説明するための断面図である。
【0004】
図9〜図11を参照して、キャブは、フロアプレート101と、このフロアプレート101上で運転室S1の前方の左右両側に立設された支柱102(図11では1本示している)と、これら支柱101の間に設けられたフロントウインドウ103と、このフロントウインドウ103の下面を支持する支持部材104とを備えている。
【0005】
各支柱102には、後述する上ガラス106をスライド可能に支持するためのレール105(図11参照)がそれぞれ設けられている。
【0006】
フロントウインドウ103は、上下方向にスライド可能に支持された上ガラス106と、前記支持部材104上に支持された下ガラス107とを備えている。上ガラス106は、その下端面に固定されたシール材106aと、左右方向に突出する複数対のローラ106b(図11参照)とを備えている。これらローラ106bが前記レール105に対して転がり接触することにより、前記上ガラス106がレール105に沿って上下方向にスライドすることになる。なお、前記レール105には、前記上ガラス106の各ローラ106bに当接することにより、上ガラス106を予め設定された下限位置で位置決めするためのストッパ105aが設けられている。前記シール材106aは、前記下限位置とされた上ガラス106と下ガラス107との間で押し潰されることにより、両窓部106、107の間をシールするように設計されている。
【0007】
支持部材104は、フロアプレート101上に形成された台座部101aにボルトB1によって固定され、その上面で前記下ガラス107の下面を支持するようになっている。
【特許文献1】特開平8−156701号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した従来のキャブにおいては、支持部材104上にその下面が支持された下ガラス107と、ストッパ105aにより下限位置で位置決めされた上ガラス106との間でシール材106aを押し潰すことにより、両窓部106、107間がシールされるため、ストッパ105aと支持部材104との相対位置に誤差が生じることに応じて、上ガラス106の下面位置と下ガラス107の上面位置との間の寸法D1が不安定となり、シール材106aの潰し代が変化してしまうおそれがあった。
【0009】
そのため、従来のキャブにおいては、前記支持部材104と台座部101aとの間にシム等を抜き差しして前記寸法D1を調整することが行われていた。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、上ガラスと下ガラスとの間隔を正確に位置決めすることにより、両ガラスの間のシールを確実に行うことができるキャブ及びこれを備えた建設機械を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明は、運転室の床部を構成するフロア部材と、前記運転室の前方の左右位置で前記フロア部材上に立設された一対の支柱と、これら支柱の間に設けられたフロントウインドウとを有する建設機械のキャブであって、前記フロントウインドウは、前記フロア部材上に支持される下ガラスと、この下ガラスの上方で前記各支柱により上下にスライド可能に支持される上ガラスと、この上ガラスが予め設定された下限位置までスライドした状態で前記下ガラスと上ガラスとの間に挟持されるシール材とを備え、前記上ガラスのスライドを前記下限位置で規制するための規制部と、前記フロア部材に設けられているとともに前記下ガラスの下面を支持する支持部と、これら規制部と支持部とを連結する連結部とを一体に有する窓受け部材をさらに備えていることを特徴とする建設機械のキャブを提供する。
【0012】
本発明によれば、上ガラスのスライドを規制するための規制部と、下ガラスの下面を支持する支持部とが連結部を介して一体に形成されているため、これら規制部と支持部とを別々に取り付ける場合と比較して、当該規制部と支持部との相対位置の変動を小さくすることができ、上ガラスの下面位置と下ガラスの上面位置とをより精緻に位置決めすることができる。
【0013】
したがって、本発明によれば、上ガラスと下ガラスとの上下位置を正確に位置決めすることにより、当該上ガラスと下ガラスとの間をシール材によって確実にシールすることができる。
【0014】
前記キャブにおいて、前記連結部は、前記下ガラスの左右方向の縁部を後ろから覆うための被覆部を有していることが好ましい。
【0015】
このようにすれば、上ガラスと下ガラスとの間から異物(例えば、雨水)が侵入した場合であっても、この異物が運転室側(後方)へ飛散するのを抑制することができる。具体的に、上ガラスと下ガラスとの間は前記シール材によるシールが図られているものの、上ガラスが上下にスライドする関係上、当該上ガラスの左右下隅と下ガラスの左右上隅との間から異物が侵入するのを阻止することが困難であるが、前記構成とすることにより、仮に異物が侵入した場合であっても、被覆部によって異物がオペレータに向かうのを阻止することができる。
【0016】
前記キャブにおいて、前記下ガラスの左右の両縁部及び下の縁部を前から覆う前パネルと、この前パネルと前記下ガラスの縁部との間に設けられた縁部シール材とをさらに備え、前記窓受け部材は、前記前パネルとの間で前記縁部シール材を前後方向に弾性変形させるように前記前パネルに対する下ガラスの前後位置を位置決めするための位置決め部をさらに一体に備えていることが好ましい。
【0017】
この構成によれば、前パネルと下ガラスとの間が縁部シール材によりシールされるのに適した間隔となるように下ガラスを前パネルに対して位置決めすることができる。そして、このような位置決めの機能を窓受け部材にもたせることが可能となるため、位置決めのための部材を個別に用意する場合よりも部品点数を少なくすることができ、その分組み付けの工数を減らすことができる。
【0018】
また、前記窓受け部材が、前記フロア部材上に敷設されるフロアマットを係止するための係止部をさらに一体に備えた構成とすることができる。
【0019】
この構成によれば、フロアマットを係止する機能を窓受け部材にもたせることが可能となるため、係止のための部材を個別に用意する場合よりも部品点数を少なくすることができ、その分組み付けの工数を減らすことができる。
【0020】
前記キャブにおいて、前記各支柱には上ガラスの左右両縁部をスライド可能に支持するスライド支持部がそれぞれ設けられ、前記規制部は、前記各スライド支持部のそれぞれに対応して左右一対設けられ、前記窓受け部材は、前記左右の規制部を前記連結部を介して一体に有していることが好ましい。
【0021】
この構成によれば、前記窓受け部材の一部として左右一対の規制部が一体に設けられているため、これら左右の規制部同士の相対位置の変動も小さくすることができ、これら規制部により規制された上ガラスの高さ位置を左右方向で同等にすることができる。
【0022】
前記窓受け部材のように左右の規制部を連結する連結部を有する構成において、前記連結部は、前記下ガラスの左右の両縁部及び下の縁部を後ろから覆うための被覆部を有していることが好ましい。
【0023】
このようにすれば、上ガラスと下ガラスとの間から異物が侵入した場合であっても、この異物を運転室側(後方)へ飛散するのを抑制しつつ、さらに、フロア部材まで落下した異物が運転席側へ移動するのを阻止することもできる。例えば、上ガラスの左右下隅と下ガラスの左右上隅との間から雨水が浸入してきた場合、この雨水は下ガラスの縁部に沿ってフロア部材まで流下することになるが、このフロア部材上の雨水が運転席側へ移動するのを被覆部によって塞き止めることができる。
【0024】
具体的に、前記窓受け部材は、合成樹脂の成形品により構成することができる。
【0025】
また、本発明は、前記キャブと、このキャブが搭載されたベースフレームと、このベースフレームに対し起伏可能に取り付けられた作業アタッチメントとを備えていることを特徴とする建設機械を提供する。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、上ガラスと下ガラスとの間隔を正確に位置決めすることにより、両ガラスの間のシールを確実に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照して説明する。
【0028】
図1は、本発明の実施形態に係る油圧ショベルを示す側面図である。
【0029】
図1を参照して、建設機械の一例としての油圧ショベル1は、クローラ式の下部走行体2と、この下部走行体2上に旋回可能に搭載された旋回フレーム(ベースフレーム)3と、この旋回フレーム3に対し起伏可能な作業アタッチメント4と、前記旋回フレーム3上に立設されたキャブ5とを備えている。
【0030】
作業アタッチメント4は、前記旋回フレーム3に対して起伏可能に軸支されたブーム6と、このブーム6の先端部に支持されたアーム7と、このアーム7の先端部に支持されたバケット8とを備えている。
【0031】
図2は、図1の油圧ショベルのキャブの正面図である。図3は、図2のIII−III線断面図である。図4は、図3における上ガラスを開放した状態を示したものである。なお、以下の説明では、キャブ5内のオペレータから見た前後左右方向を用いて説明する。
【0032】
図1〜図4を参照して、キャブ5は、前記旋回フレーム3上に設けられたフロア部材9(図3参照)と、このフロア部材9上に立設された支柱10(図3、図4参照)と、この支柱10の前方に設けられた前パネル11と、前記運転室S1の前方に保持されたフロントウインドウ12と、このフロントウインドウ12を支持する左右一対の窓受け部材14(図2及び図5参照)とを備えている。
【0033】
フロア部材9は、運転室S1の床面を構成するためのものであり、フロアプレート15と、このフロアプレート15の前部に立設された台座16とを備えている。
【0034】
支柱10は、運転室S1の前方の左右位置で前記フロアプレート15上に一対立設されている(図3、図4に1本のみ示している)。これら支柱10には、互いに相対向する側面にレール(スライド支持部)10aが設けられている。これらのレール10aによって、後述するフロントウインドウ12の上ガラス20がスライド可能に支持されることになる。
【0035】
前パネル11は、図2に示すように、フロントウインドウ12の周縁部を除く部分を前に露出させることができる窓部17が形成されている。つまり、窓部17は、前パネル11によりフロントウインドウ12の周縁部を前から覆うことが可能となる開口面積とされている。そして、前パネル11は、前記窓部17に沿って設けられた縁部シール材18を備えている。この縁部シール材18は、前パネル11に固定される固定部18aと、この固定部18aの後部に連結され、前後方向に弾性変形可能な変形部18bとを備えている。そして、後述する下ガラス19と前パネル11との間で前記変形部18bが押し潰されることにより、前パネル11と下ガラス19との間がシールされる。なお、図4では、縁部シール材18とフロントウインドウ12とが重なっている状態を示しているが、実際には前記潰し代の分だけ縁部シール材18が前後に押し潰された状態(図3の状態)となっている。
【0036】
フロントウインドウ12は、前記フロアプレート15上に支持された下ガラス19と、この下ガラス19の上方で前記左右の支柱10同士の間に支持された上ガラス20と、これら下ガラス19と上ガラス20との間をシールするためのシール材21とを備えている。下ガラス19は、後述する窓受け部材14を介して前記台座16上に支持されている。上ガラス20は、左右の端面からそれぞれ左右反対の方向に突出する一対のローラ22(図3及び図4参照)を備えている。これらローラ22は、前記支柱10の各レール10aにそれぞれ挿入されており、各レール10aに対して転がり接触するようになっている。これにより、上ガラス20は、各レール10aに沿って各支柱10に対して上下にスライド可能に支持されることになる。シール材21は、前記上ガラス20に固定された固定部21aと、この固定部21aから下に延びて上下方向に弾性変形可能な変形部21bとを備えている。そして、前記上ガラス20が予め設定された下限位置(図2及び図3の位置)まで下にスライドされることにより、前記変形部21bが上下に押し潰されて、下ガラス19と上ガラス20との間がシールされることになる。
【0037】
各窓受け部材14は、前記前パネル11の窓部17の縁部に沿って当該前パネル11の後方に配置されている。また、各窓受け部材14は、それぞれ左右対称の形状を有しているとともに、前記下ガラス19の左右中央位置を挟んで左右対称に配置されている。そして、詳しくは後述するが、各窓受け部材14は、下ガラス19を上下に挿抜可能に保持するとともに上ガラス20のスライドを前記下限位置で規制するための役割を担っている。以下、右側に配置された窓受け部材14の構成を取り上げて説明する。
【0038】
図5は、図2の窓受け部材14を後ろ寄りから見たときの斜視図を示したものである。
【0039】
図2〜図5を参照して、窓受け部材14は、熱可塑性樹脂からなる成形品である。この窓受け部材14は、前記下ガラス19の下面を支持するための支持部23と、前記下ガラスの上部を支持するためのガイド部24と、前記上ガラスのスライドを前記下限位置で規制するための規制部25と、支持部23とガイド部24と規制部25とを連結する連結部26とを備えている。
【0040】
支持部23は、下ガラス19の左右中央位置の若干右よりの位置で、前記台座16上に固定されている。支持部23と台座16との固定は、ボルト等によって行うことができる。この支持部23は、前記下ガラス19の下面を載置するための載置面23aと、この載置面23aの後部で立ち上がる当接面23bと、この当接面23bの上端から後方に向けて高くなる傾斜面23cとを備えている。
【0041】
ガイド部24は、下ガラス19の右端面に摺接する右摺接面24aと、下ガラス19の右縁部に後ろから摺接する後摺接面24bとを備え、上から見て下ガラス19の右から後ろにわたって配置されたL字型のブロック体である。前記後摺接面24bは、後方へ向けて高くなる傾斜面である。
【0042】
つまり、下ガラス19は、前記支持部23及びガイド部24によって後ろから支持されている一方、縁部シール材18を介して前記前パネル11によって前から支持されていることになる。このように下ガラス19が前後に保持されているため、上方にスライドさせることにより下ガラス19を支持部23及びガイド部24と前パネル11との間から抜き取ることができる。下ガラス19を差し込むときには、ガイド部24の後摺接面24bに沿わせるようにして、ガイド部24と前パネル11との間に上から下ガラス19を挿入していき、下ガラス19の下面を支持部23の載置面23aに載置させる。ここで、載置面23aに対しては傾斜面23cが連続して形成されているため、下ガラス19の下面が載置面よりも後方に挿入された場合でも当該下面が傾斜面23cに沿って前方の載置面23aに導かれることになる。換言すると、支持部23及びガイド部24の傾斜面23c、24bによって、縁部シール材18によるシールを得ることができる前後位置に下ガラス19が位置決めされることになる。
【0043】
規制部25は、前記下ガラス19の抜き取り動作と干渉しないように前記右摺接面24よりも右側となる位置で前記ガイド部24の上に設けられている。この規制部25は、前記各支柱10のレール10a内に挿入されるようになっており、前記上ガラス20のローラ22の半径に対応する半径を有する円弧面25a(図4参照)を有している。つまり、この円弧面25aは、ローラ22の当たり止めとして機能するようになっており、前記レール10aに沿って移動するローラ22の終点位置、つまり、下限位置を規定する。
【0044】
連結部26は、前記窓部17の縁部に沿って延びて前記支持部23とガイド部24とを連結するとともに、上下左右方向に扁平な帯状に形成されている。この連結部26は、図2に示すように、下ガラス19の右縁部及び下縁部の一部を後ろから被覆するようになっている。したがって、下ガラス19と上ガラス20との間から雨水等が浸入した場合であっても、この雨水が運転室S1側へ飛散するのを抑制することができる。
【0045】
以上説明したように、前記実施形態によれば、上ガラス20のスライドを規制するための規制部25と、下ガラス19の下面を支持する支持部23とが連結部26を介して一体に形成されているため、これら規制部25と支持部23とを別々に取り付ける場合と比較して、当該規制部25と支持部23との相対位置の変動を小さくすることができ、上ガラス20の下面位置としたガラス19の上面位置とをより精緻に位置決めすることができる。
【0046】
したがって、前記実施形態によれば、上ガラス20と下ガラス19との上下位置を正確に位置決めすることにより、当該上ガラス20と下ガラス19との間をシール材21によって確実にシールすることができる。
【0047】
前記実施形態のように、連結部26により下ガラス19の左右方向の縁部を後ろから覆うようにすれば、下ガラス19と上ガラス20との間から異物(例えば、雨水)が侵入した場合であっても、この異物が運転室S1側へ飛散するのを抑制することができる。具体的に、上ガラス20と下ガラス19との間はシール材21によるシールが図られているものの、上ガラス20が上下にスライドする関係上、当該上ガラス20の左右下隅と下ガラス19の左右上隅との間から異物が侵入するのを阻止することが困難であるが、前記構成とすることにより、仮に異物が侵入した場合であっても、連結部26によって異物がオペレータに向かうのを阻止することができる。
【0048】
前記実施形態のように、下ガラス19と上ガラス20との間で縁部シール材18を前後方向に弾性変形させるように、下ガラス19を前パネル11に対して位置決めする構成によれば、前パネル11と下ガラス19との間が縁部シール材18によりシールされるのに適した間隔となるように下ガラス19を前パネル11に対して位置決めすることができる。そして、このような位置決めの機能を窓受け部材14にもたせることが可能となるため、位置決めのための部材を個別に用意する場合よりも部品点数を少なくすることができ、その分組み付けの工数を減らすことができる。
【0049】
以下、図6及び図7を参照して、別の実施形態について説明する。
【0050】
図6は、本発明の別の実施形態に係る窓受け部材の一部を拡大して示す斜視図である。図7は、図6の窓受け部材を装着したキャブを示す側面一部略図である。なお、前記実施形態と同様の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0051】
図6及び図7を参照して、この実施形態に係る窓受け部材30は、前記支持部23の後面に設けられた係止部31をさらに一体に備えている。この係止部31は、前記支持部23から後方に延びるとともにその先端部が上方へ屈曲された鉤状に形成され、前記フロアプレート15上に敷設されたフロアマット32の前端部と係止するようになっている。
【0052】
つまり、フロアマット32の前端部は、下方に屈曲する鉤状に形成されており、この鉤状部分が窓受け部材30の係止部31に対し上から係止することにより、当該フロアマット32の前後方向の移動が規制されるようになっている。
【0053】
この実施形態によれば、フロアマット32を前後方向に係止する機能を窓受け部材30に持たせることができるので、フロアマット32の係止のための部材を個別に用意する場合よりも部品点数を少なくすることができ、その分組み付けの工数を減らすことができる。
【0054】
以下、図8を参照してさらに別の実施形態について説明する。
【0055】
図8は、本発明のさらに別の実施形態に係る窓受け部材を示す斜視図である。なお、前記各実施形態と同様の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0056】
上述の実施形態に係る窓受け部材14、30が左右で対をなして使用されるのに対し、図8に示す窓受け部材33は、全体を一部品としたものである。
【0057】
つまり、窓受け部材33は、図6及び図7に示す窓受け部材30が、第2連結部34を介して左右に連結された形態を有している。したがって、窓受け部材33を使用することにより、下ガラス19の左右の両縁部を前記連結部26によって被覆することができるとともに、連結部26及び第2連結部34によって下ガラス19の下の縁部も被覆することができる。
【0058】
この実施形態によれば、左右一対の規制部25、25が一体に設けられているため、これら左右の規制部25、25同士の相対位置の変動も小さくすることができ、これら規制部25により規制された上ガラス20の高さ位置を左右方向で同等にすることができる。
【0059】
さらに、前記実施形態では、連結部26及び第2連結部34によって下ガラス19の左右の縁部及び下の縁部を後ろから被覆することができるので、上ガラス20と下ガラス19との間から異物が侵入した場合であっても、この異物を運転室S1側へ飛散するのを阻止することができる。例えば、上ガラス20の左右下隅と下ガラス19の左右上隅との間から雨水が浸入してきた場合、この雨水は下ガラス19の縁部に沿ってフロア部材9まで流下することになるが、このフロア部材9上の雨水が運転席側へ移動するのを連結部26及び第2連結部34によって塞き止めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の実施形態に係る油圧ショベルを示す側面図である。
【図2】図1の油圧ショベルのキャブの正面図である。
【図3】図2のIII−III線断面図である。
【図4】図3における上ガラスを開放した状態を示したものである。
【図5】図2の窓受け部材14を後ろ寄りから見たときの斜視図を示したものである。
【図6】本発明の別の実施形態に係る窓受け部材の一部を拡大して示す斜視図である。
【図7】図6の窓受け部材を装着したキャブを示す側面一部略図である。
【図8】本発明のさらに別の実施形態に係る窓受け部材を示す斜視図である。
【図9】従来のキャブの側面断面図であり、フロントウインドウの上ガラスを開けた状態を示している。
【図10】図9に示すキャブの側面断面図であり、上ガラスを閉じた状態を示している。
【図11】図9及び図10に示す上ガラスの支持構造を説明するための断面図である。
【符号の説明】
【0061】
S1 運転室
1 油圧ショベル(建設機械)
3 旋回フレーム(ベースフレーム)
4 作業アタッチメント
5 キャブ
9 フロア部材
10 支柱
10a レール(スライド支持部)
11 前パネル
12 フロントウインドウ
14、30、33 窓受け部材
18 縁部シール材
19 下ガラス
20 上ガラス
21 シール材
22 ローラ
23 支持部
24 ガイド部
25 規制部
26 連結部
31 係止部
32 フロアマット
34 第2連結部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転室の床部を構成するフロア部材と、前記運転室の前方の左右位置で前記フロア部材上に立設された一対の支柱と、これら支柱の間に設けられたフロントウインドウとを有する建設機械のキャブであって、
前記フロントウインドウは、前記フロア部材上に支持される下ガラスと、この下ガラスの上方で前記各支柱により上下にスライド可能に支持される上ガラスと、この上ガラスが予め設定された下限位置までスライドした状態で前記下ガラスと上ガラスとの間に挟持されるシール材とを備え、
前記上ガラスのスライドを前記下限位置で規制するための規制部と、前記フロア部材に設けられているとともに前記下ガラスの下面を支持する支持部と、これら規制部と支持部とを連結する連結部とを一体に有する窓受け部材をさらに備えていることを特徴とする建設機械のキャブ。
【請求項2】
前記連結部は、前記下ガラスの左右方向の縁部を後ろから覆うための被覆部を有していることを特徴とする請求項1に記載の建設機械のキャブ。
【請求項3】
前記下ガラスの左右の両縁部及び下の縁部を前から覆う前パネルと、この前パネルと前記下ガラスの縁部との間に設けられた縁部シール材とをさらに備え、前記窓受け部材は、前記前パネルとの間で前記縁部シール材を前後方向に弾性変形させるように前記前パネルに対する下ガラスの前後位置を位置決めするための位置決め部をさらに一体に備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の建設機械のキャブ。
【請求項4】
前記窓受け部材は、前記フロア部材上に敷設されるフロアマットを係止するための係止部をさらに一体に備えていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の建設機械のキャブ。
【請求項5】
前記各支柱には上ガラスの左右両縁部をスライド可能に支持するスライド支持部がそれぞれ設けられ、前記規制部は、前記各スライド支持部のそれぞれに対応して左右一対設けられ、前記窓受け部材は、前記左右の規制部を前記連結部を介して一体に有していることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の建設機械のキャブ。
【請求項6】
前記連結部は、前記下ガラスの左右の両縁部及び下の縁部を後ろから覆うための被覆部を有していることを特徴とする請求項5に記載の建設機械のキャブ。
【請求項7】
前記窓受け部材は、合成樹脂の成形品からなることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の建設機械のキャブ。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか1項に記載のキャブと、このキャブが搭載されたベースフレームと、このベースフレームに対し起伏可能に取り付けられた作業アタッチメントとを備えていることを特徴とする建設機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−161092(P2009−161092A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−2003(P2008−2003)
【出願日】平成20年1月9日(2008.1.9)
【出願人】(000246273)コベルコ建機株式会社 (644)
【Fターム(参考)】