説明

キー接点内蔵型多層回路基板およびその製造方法

【課題】低コスト化を図ることができると共に、薄型化および軽量化ならびに実装作業を容易にしたキー接点内蔵型の多層回路基板を提供すること。
【解決手段】キー接点の一方となる導体部15を形成した第1基材11と、キー接点の他方となる導体部24を形成した第2基材21と、前記第1基材と第2基材との間に介在されて両基材を積層形成させる層間接着層41とを少なくとも備えた多層回路基板が構成される。前記層間接着層41を構成する素材の一部には開口部61が形成され、前記第1基材のキー接点の一方となる導体部15と前記第2基材のキー接点の他方となる導体部24とが、前記開口部61により形成された内層中空部内において対向するようにして配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、多層回路基板内にキー接点を例えばマトリクス状に内蔵させたキー接点内蔵型多層回路基板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器の高機能化ならびに軽量、薄型化に伴い電子部品の高密度集積化、さらには高密度実装化が進んでいる。一方、昨今における携帯電話機や携帯型の情報端末機(PDA)等の普及に伴い、これらに搭載される例えばマトリクス型のキースイッチは、その小型軽量化に対応して益々の薄型化ならびにキー接点部分の構造の簡素化が求められている。
【0003】
図9および図10は、現状の携帯電話機やPDA等に用いられているマトリクス型キースイッチの構成例を示したものである。なお、図9は基板にマトリクス状に形成されたキー接点用パターンの例を示しており、また図10は図9において鎖線で囲んだ1つのキー接点用パターンに対応して実装されるキースイッチの構造を説明する拡大断面図である。
【0004】
図9に示すように基板上には同心円状に形成されたk1,k2からなるキー接点用のパターンが、行および列方向にマトリクス状に配列されており、これらのキー接点用パターンk1,k2をそれぞれ行および列方向で接続する縦横方向の各検出ラインm1,n1は、図示せぬCPUの入力ポートに接続されている。この構成によりいずれのキー接点用パターンにおいて、オン動作(短絡動作)がなされたかを前記CPUにおいて検出することができる。
【0005】
また図10に示す符号k1,k2は、前記したキー接点用のパターンを示しており、これらは前記したとおり、基板bの一面に形成されている。そして前記キー接点用のパターンk1,k2の前面には、ドーム状に形成された導電性のキー接点cが配置され、さらに導電性のキー接点cの前面にはキートップtを備えた化粧板pが配置されている。
【0006】
図10に示す構成において、化粧板pに配置されたキートップtをプッシュ操作することにより、キー接点cの中央部が反転してキー接点用のパターンk1,k2間を電気的に短絡するように動作する。すなわち、前記したキー接点cの反転動作により、電気的な短絡動作を実現させると共に、キートップtのプッシュ操作にクリック感を与えることができる。
【0007】
前記した図9および図10に示す構成のマトリクス型キースイッチについては、次に示す特許文献1ないし3などに開示されている。
【特許文献1】特開平5−325709号公報
【特許文献2】特開平11−122650号公報
【特許文献3】特開2000−349420号公報
【0008】
ところで、前記した特許文献に開示されたキースイッチにおいては、図9および図10に示したように、キー接点用のパターンk1,k2を形成した基板b、ドーム状に形成された導電性のキー接点cと、図には示されていないが前記キー接点cを支持する支持部材、およびキートップtを配列した化粧板p等の各部材が必要になる。
【0009】
したがって、前記したキー接点用のパターンを形成した基板、導電性のキー接点を支持する支持部材、キートップtを配列した化粧板とを個別に製造し、これらの位置合わせをしつつ実装する作業を余儀なくされる。しかも、前記した各部品の組み合わせによるキースイッチの構成においては、全体をさらに薄型化ならびに軽量化させることには限界が生じており、従来のキースイッチの構成においては、前記した点で改良の余地が残されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この発明は、前記した従来のキースイッチの問題点に着目してなされたものであり、多層回路基板内にキー接点を内蔵させることによりキー接点構造の簡素化を図り、コストの低減は勿論のこと、益々の薄型化および軽量化ならびに実装作業を容易にしたキー接点内蔵型の多層回路基板を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記した課題を解決するためになされたこの発明に係るキー接点内蔵型の多層回路基板は、キー接点の一方となる導体部を形成した第1基材と、キー接点の他方となる導体部を形成した第2基材と、前記第1基材と第2基材との間に介在されて両基材を積層形成させる層間接着層とを少なくとも備えた多層回路基板であって、前記層間接着層を構成する素材の一部には開口部が形成され、前記第1基材のキー接点の一方となる導体部と前記第2基材のキー接点の他方となる導体部とが、前記開口部により形成された内層中空部内において対向するようにして配置されている点に特徴を有する。
【0012】
この場合、一つの好ましい形態においては、前記第1基材および第2基材にそれぞれ形成されたキー接点となる導体部として、各基材に形成された表層導体の必要部分を残して他の部分をそれぞれ溶解除去するエッチング処理により形成した金属箔を用いるように構成される。
【0013】
また、他の好ましい形態においては、前記第1基材に形成されたキー接点となる導体部と、前記第2基材に形成されたキー接点となる導体部のいずれか一方が、基材に形成された表層導体の必要部分を残して他の部分を溶解除去するエッチング処理により形成した金属箔により構成され、他方が基材に形成されたビアホールを介して基材面から突出して形成された導体ポストを用いるように構成される。
【0014】
そして、前記したいずれの構成であっても、キー操作が行われる前記中空部よりも表面側の積層構造体が、前記中空部よりも裏面側の積層構造体に対して、より柔軟性を有するように構成されていることが望ましい。
【0015】
一方、前記した課題を解決するためになされたこの発明に係るキー接点内蔵型の多層回路基板の製造方法は、第1基材の一方の面にキー接点の一方となる導体部を形成する工程と、第2基材の一方の面にキー接点の他方となる導体部を形成する工程と、前記両基材を積層形成させる層間接着層を構成する素材の一部に開口部を形成し、前記開口部において前記両基材における各導体部を対向するように位置合わせして加圧接合する工程とを実行することで、前記開口部により形成された内層中空部内において、各キー接点が対向配置された多層基板を得る点に特徴を有する。
【0016】
この場合、好ましくは前記第1基材および第2基材にそれぞれキー接点となる導体部を形成する工程が、各基材に形成された表層導体の必要部分を残して他の部分をそれぞれエッチング処理により溶解除去する手段を用いるようになされる。
【0017】
また、前記第1基材にキー接点となる導体部を形成する工程および前記第2基材にキー接点となる導体部を形成する工程のうちのいずれか一方の工程においては、基材に形成された表層導体の必要部分を残して他の部分をエッチング処理により溶解除去する手段を用い、他の工程においては基材にビアホールを形成し、導電性ペーストまたは電解メッキにより前記ビアホール内から導体ポストを突出させるようにして形成する手段を採用することもできる。
【発明の効果】
【0018】
前記した多層回路基板およびその製造方法によると、第1基材と第2基材との間に介在される層間接着層の一部に内層中空部が形成され、当該内層中空部において第1基材に形成されたキー接点の一方となる導体部と、第2基材に形成されたキー接点の他方となる導体部とが対向するようにして配置された多層回路基板を得ることができる。
【0019】
前記した構成の多層回路基板によると、キー操作面として機能する前記中空部よりも表面側の積層構造体部分をプッシュ操作することで、内層中空部に配置された前記キー接点を容易に短絡状態にすることができる。これによりキー接点構造の簡素化を図ることができ、コストの低減は勿論のこと、益々の薄型化および軽量化ならびに実装作業を容易にしたキー接点内蔵型の多層回路基板を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、この発明にかかるキー接点内蔵型多層回路基板およびその製造方法について、図に示す実施の形態に基づいて説明する。図1はキー接点を内蔵した多層回路基板の第1の実施の形態を示したものであり、これはキー接点を含む多層回路基板の一部分を拡大断面図で示したものである。
【0021】
図1に示す積層構成においては、第1基材11、第2基材21、第3基材31が、層間接着層41、51を介して積層されている。そして、前記第1基材11の上下両面にはそれぞれ導体回路(配線パターン)が形成されており、これらの導体回路が第1導体部14、第2導体部15を構成している。また、前記第2基材21の上下両面にもそれぞれ導体回路(配線パターン)が形成されており、これらの導体回路が第3導体部24、第4導体部25を構成している。
【0022】
さらに、前記第3基材31の上下両面にもそれぞれ導体回路(配線パターン)が形成されており、これらの導体回路が第5導体部34、第6導体部35を構成している。そして、第1基材11の上面、すなわち前記層間接着層41への接着面とは反対面には外装被覆17が被覆され、また第3基材13の下面、すなわち前記層間接着層51への接着面とは反対面にも外装被覆37が被覆されている。
【0023】
図1に示す実施の形態においては、前記層間接着層41を構成する素材の一部には開口部61が形成されており、この層間接着層41の開口部61の上下が前記第1基材11および第2基材21で囲まれることにより、内層中空部(符号は開口部と同じく61で示す)が形成されている。
【0024】
そして、第1基材11に形成された第2導体部15の一部と、第2基材21に形成された第3導体部24の一部が、前記内層中空部61内において対向するようにして配置されている。すなわち、第1基材11に形成された第2導体部15がキー接点の一方となる導体部を構成しており、第2基材21に形成された第3導体部24がキー接点の他方となる導体部を構成している。
【0025】
また、キー接点の一方となる導体部を構成する第2導体部15は、図示せぬスルーホール等を介して、適宜第1導体部14などに接続されて多層回路を構成している。またキー接点の他方となる導体部を構成する第3導体部24においても、同様に図示せぬスルーホールや導体ポスト等を介して、第4導体部25、第5導体部34、第6導体部35などに接続されて多層回路を構成している。
【0026】
図1に示す構成においては第1基材11の上面、すなわち前記した外装被覆17側がキー操作面71を構成しており、白抜きで示した矢印Y方向にプッシュ操作することにより、内層中空部61が撓み、キー接点の一方となる第2導体部15が、キー接点の他方となる第3導体部24に接触する。このキー接触状態は各基材に形成された内層導体回路を適宜介して図示せぬCPUに伝達され、CPUによってキー接触を認識することができる。
【0027】
また図1に示す実施の形態においては、内層中空部61に連通するように、外装被覆17側から空気孔62が形成されており、これによりプッシュ操作に伴う中空部61内の容積変化を容易にし、キー接点の接触動作に支障が生じないようにされている。
【0028】
さらに図1に示す実施の形態においては、第1基材11と第2基材21との間において内層中空部61を構成しており、中空部61よりも裏面側において第2基材21に対して第3基材31が接合された構成にされている。これにより、キー操作が行われる前記中空部61よりも表面側の積層構造体が、前記中空部よりも裏面側の積層構造体に対して、より柔軟性を有するように構成されている。
【0029】
なお、好ましくは図1に示す構成におけるキー接点を構成する第2導体部15と第3導体部24の導体厚はそれぞれ10〜40μm程度、接点間のクリアランスは50〜100μm程度、中空部61の空間内の厚さは、70〜200μm程度に設定される。
【0030】
斯くして、前記したキー接点が形成された内層中空部61は、図1に示す多層回路基板の全体において、例えばマトリクス状に配置される。これを前記したように携帯電話機やPDAなどに利用することで、発明の効果の欄に記載したような独自の作用効果を期待することができる。
【0031】
図2〜図5は、図1に示したキー接点内蔵型の多層回路基板の製造方法について説明するものである。まず、図2は前記した第1基材11を中心にした積層板の構成例を説明するものであり、この積層板を形成するには、図2(A)に示すように例えばポリイミド樹脂、エポキシ樹脂などの樹脂を硬化させた第1基材11の両面に表層導体12,13が積層された積層板(両面銅張積層板)を準備する。
【0032】
この積層板の表層導体(銅箔)12,13を利用して、図2(B)に示すようにエッチングにより導体回路(第1導体部および第2導体部)14,15を形成する。すなわち、第1基材11に形成された表層導体12,13の必要部分を残して他の部分をそれぞれエッチング処理により溶解除去する処理が実行される。その後、図2(C)に示すように第1導体部14を覆うようにして表面被覆17が施され、第1積層板L1を得ることができる。
【0033】
前記表面被覆17を施す手段としては、絶縁樹脂に接着剤を塗布したオーバーレイフィルムを貼付する手段、またインクを直接第1基材11に印刷する方法などがある。なお、この実施の形態における第2導体部15は、キー接点の一方を構成するものであり、したがって第2導体部15に対しては金メッキ等の酸化防止処理を施すことが望ましい。
【0034】
図3は前記した第2基材21を中心にした積層板の構成例を説明するものであり、この積層板を形成するには、図3(A)に示すように例えばポリイミド樹脂、エポキシ樹脂などの樹脂を硬化させた第2基材21の両面に表層導体22,23が積層された積層板(両面銅張積層板)を準備する。
【0035】
この積層板の表層導体(銅箔)22,23を利用して、図3(B)に示すようにエッチングにより導体回路(第3導体部および第4導体部)24,25を形成する。すなわち、第2基材21に形成された表層導体22,23の必要部分を残して他の部分をそれぞれエッチング処理により溶解除去する処理が実行される。これにより、第2積層板L2を得ることができる。なお、前記第2積層板L2に形成される第3導体部24もキー接点の他方を構成するものであり、したがって第3導体部24に対しても金メッキ等の酸化防止処理を施すことが望ましい。
【0036】
続いて図4は前記した第3基材31を中心にした積層板の構成例を説明するものであり、この積層板を形成するには、図4(A)に示すように同じくポリイミド樹脂、エポキシ樹脂などの樹脂を硬化させた第3基材31の両面に表層導体32,33が積層された積層板(両面銅張積層板)を準備する。
【0037】
この積層板の表層導体(銅箔)32,33を利用して、図3(B)に示すようにエッチングにより導体回路(第5導体部および第6導体部)34,35を形成する。すなわち、第3基材31に形成された表層導体32,33の必要部分を残して他の部分をそれぞれエッチング処理により溶解除去する処理が実行される。
【0038】
その後、図4(C)に示すように第6導体部35を覆うようにして表面被覆37が施され、第3積層板L3を得ることができる。なお、すでに説明したとおり、前記表面被覆37を施す手段としては、絶縁樹脂に接着剤を塗布したオーバーレイフィルムを貼付する手段、またインクを直接第3基材31に印刷する方法などがある。
【0039】
図5は前記のようにして得られた第1〜第3積層板L1,L2,L3を、層間接着層を介して加圧接合させる工程を示したものである。図5に示すように、第1積層板L1と第2積層板L2との間には、層間接着層41が介在され、第2積層板L2と第3積層板L3との間には、層間接着層51が介在されて多層回路基板が形成される。ここで、前記層間接着層41を構成する素材には、キー接点が形成される位置において、開口部61が形成されている。
【0040】
前記層間接着層41および51を構成する素材については、ガラス繊維を好適に利用することができ、これに例えばエポキシ系樹脂等の熱硬化性樹脂を含浸させたプリプレグシートを用いることが望ましい。前記したプリプレグシートを用いることにより、第1〜第3積層板L1,L2,L3の相互の密着性および耐熱性を向上させることができる。また、前記したプリプレグシートを用いることで、特に加圧接合工程における熱圧着による圧力を受けて前記開口部61により形成されるべき内層空間部が埋没するを効果的に阻止し、必要十分な容積の内層空間部を確保することができる。
【0041】
加圧接合工程においては図5に示すように下から第3積層板L3、層間接着層51、第2積層板L2、層間接着層41、第1積層板L1を順に積み重ねるようにしてレイアップする。その際の位置合わせは、各基板の導体回路の形成と同時に形成された位置決めマークを画像認識装置により読み取って位置合わせする方法、また位置合わせ用のピンを利用する方法などを用いることができる。
【0042】
そして、所定の圧力を加えつつ、前記熱硬化性樹脂が硬化し得る適正な温度が加えられる。これにより、図1に示した積層構造を有するキー接点内蔵型多層回路基板を得ることができる。なお、図1に示した外装被覆17側から内層中空部61に連通するように形成された空気孔62は、図5に示した加圧接合工程の後において、例えばレーザー光を用いることで、容易に形成することができる。
【0043】
次に図6はキー接点を内蔵した多層回路基板の第2の実施の形態を示したものであり、これはすでに説明した図1と同様に、キー接点を含む多層回路基板の一部分を拡大断面図で示したものである。なお、図6においてはすでに説明した図1に示した各部と同一の機能を果たす部分を同一の符号で示しており、したがってその詳細な説明は省略する。
【0044】
この図6に示した多層回路基板においては、第1基材11に形成されたキー接点となる導体部が、第1基材11に形成されたビアホールを介して基材面から突出して形成された導体ポスト(バンプ)19を構成している点に特徴を有する。一方、第2基材21に形成されたキー接点の他方となる導体部は、図1に示した例と同様にエッチング処理により形成された金属箔(銅箔)24により構成されている。
【0045】
図7は、前記した導体ポスト19を備えた第1積層板L1を形成する例を説明するものである。第1積層板L1を形成するには、図7(A)に示すように例えばポリイミド樹脂、エポキシ樹脂などの樹脂を硬化させた第1基材11の片面に表層導体12が積層された積層板(片面銅張積層板)を準備する。
【0046】
この積層板の表層導体(銅箔)12を利用して、図7(B)に示すようにエッチングにより導体回路(第1導体部)14を形成する。すなわち、第1基材11に形成された表層導体12の必要部分を残して他の部分をエッチング処理により溶解除去する処理が実行される。その後、図7(C)に示すように第1導体部14を覆うようにして表面被覆17が施される。前記表面被覆17を施す手段としては、すでに説明したとおり、絶縁樹脂に接着剤を塗布したオーバーレイフィルムを貼付する手段、またインクを直接第1基材11に印刷する方法などを採用することができる。
【0047】
続いて、図7(D)に示すように絶縁基材11側の面から、第1導体部14が露出するまで、ビアホール(Blind Via)18を形成する。この際、レーザー法を用いるとホールを容易に形成することができ、かつ小径のホールも正確に形成することができる。さらに、過マンガン酸カリウム水溶液によるウェットデスミアまたはプラズマによるドライデスミアなどの方法により、ビアホール18内に残存している樹脂を除去することで、後述する導体ポストの接続の信頼性を向上させることができる。
【0048】
続いて、図7(E)に示すように導電性ペーストまたは電解メッキ法などを利用して、導体ポスト19を絶縁基材11の面から突出するように形成する。この導体ポスト19は、ビアホール18内において、一端が前記した第1導体部14に接続され、他端が基材11の他方の面より突出した突出状端子を構成する。この実施の形態における導体ポスト19は、キー接点の一方を構成するものであり、したがって導体ポスト19には金メッキ等の酸化防止処理を施すことが望ましく、以上の工程により第1積層板L1を得ることができる。
【0049】
図8は、前記のようにして得られた第1積層板L1を用い、多層回路基板を形成する例を示したものである。すなわち図8はすでに説明した図5と同様の第2、第3積層板L2,L3を利用し、層間接着層41,51をそれぞれ介在させて多層回路基板を形成させる例を示している。したがって、層間接着層41,51等を構成する素材、ならびに加圧接合工程等においては、図5に基づいてすでに説明したものと同様であり、その説明は省略する。
【0050】
そして、図8に示した加圧接合工程の後において、図6に示した空気孔62を、例えばレーザー光を用いることで形成するようになされる。
【0051】
斯くして、図6〜図8に基づいて説明した第2の実施の形態によると、キー接点の一方となる導体部を、基材を貫通して突出する導体ポストにより構成しているので、電気的に安定したキー接点の構成を提供することができる。そして、図6〜図8に基づいて説明した第2の実施の形態においても、これを例えば携帯電話機やPDAなどに利用することで、発明の効果の欄に記載したような独自の作用効果を期待することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】この発明にかかるキー接点内蔵型多層回路基板の第1の実施の形態を示した部分拡大断面図である。
【図2】図1に示す多層回路基板を構成する第1積層板の形成例を示した工程図である。
【図3】同じく第2積層板の形成例を示した工程図である。
【図4】同じく第3積層板の形成例を示した工程図である。
【図5】第1〜第3積層板を層間接着層と共に加圧接合する様子を示した断面図である。
【図6】この発明にかかるキー接点内蔵型多層回路基板の第2の実施の形態を示した部分拡大断面図である。
【図7】図6に示す多層回路基板を構成する第1積層板の形成例を示した工程図である。
【図8】図7に示す第1積層板を利用して層間接着層と共に加圧接合する様子を示した断面図である。
【図9】従来のマトリクス状に形成されたキー接点用パターンの構成例を示した模式図である。
【図10】従来のキー接点用パターンに対応して実装されるキースイッチの構造を示した断面図である。
【符号の説明】
【0053】
11 第1基材
15 導体部(キー接点)
18 ビアホール
19 導体ポスト(キー接点)
21 第2基材
24 導体部(キー接点)
31 第3基材
41 層間接着層
51 層間接着層
61 開口部(内層中空部)
71 キー操作面
L1 第1積層板
L2 第2積層板
L3 第3積層板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キー接点の一方となる導体部を形成した第1基材と、キー接点の他方となる導体部を形成した第2基材と、前記第1基材と第2基材との間に介在されて両基材を積層形成させる層間接着層とを少なくとも備えた多層回路基板であって、
前記層間接着層を構成する素材の一部には開口部が形成され、前記第1基材のキー接点の一方となる導体部と前記第2基材のキー接点の他方となる導体部とが、前記開口部により形成された内層中空部内において対向するようにして配置されていることを特徴とするキー接点内蔵型多層回路基板。
【請求項2】
前記第1基材および第2基材にそれぞれ形成されたキー接点となる導体部が、各基材に形成された表層導体の必要部分を残して他の部分をそれぞれ溶解除去するエッチング処理により形成した金属箔であることを特徴とする請求項1に記載されたキー接点内蔵型多層回路基板。
【請求項3】
前記第1基材に形成されたキー接点となる導体部と、前記第2基材に形成されたキー接点となる導体部のいずれか一方が、基材に形成された表層導体の必要部分を残して他の部分を溶解除去するエッチング処理により形成した金属箔であり、他方が基材に形成されたビアホールを介して基材面から突出して形成された導体ポストであることを特徴とする請求項1に記載されたキー接点内蔵型多層回路基板。
【請求項4】
キー操作が行われる前記中空部よりも表面側の積層構造体が、前記中空部よりも裏面側の積層構造体に対して、より柔軟性を有するように構成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載されたキー接点内蔵型多層回路基板。
【請求項5】
第1基材の一方の面にキー接点の一方となる導体部を形成する工程と、第2基材の一方の面にキー接点の他方となる導体部を形成する工程と、前記両基材を積層形成させる層間接着層を構成する素材の一部に開口部を形成し、前記開口部において前記両基材における各導体部を対向するように位置合わせして加圧接合する工程とを実行することで、
前記開口部により形成された内層中空部内において、各キー接点が対向配置された多層基板を得ることを特徴とするキー接点内蔵型多層回路基板の製造方法。
【請求項6】
前記第1基材および第2基材にそれぞれキー接点となる導体部を形成する工程が、各基材に形成された表層導体の必要部分を残して他の部分をそれぞれエッチング処理により溶解除去する手段を用いることを特徴とする請求項5に記載されたキー接点内蔵型多層回路基板の製造方法。
【請求項7】
前記第1基材にキー接点となる導体部を形成する工程および前記第2基材にキー接点となる導体部を形成する工程のうちのいずれか一方の工程が、基材に形成された表層導体の必要部分を残して他の部分をエッチング処理により溶解除去する手段を用い、他の工程が基材にビアホールを形成し、導電性ペーストまたは電解メッキにより前記ビアホール内から導体ポストを突出させるようにして形成する手段を用いたことを特徴とする請求項5に記載されたキー接点内蔵型多層回路基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−135550(P2008−135550A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−320345(P2006−320345)
【出願日】平成18年11月28日(2006.11.28)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】