説明

クロック同期装置及びそれに用いるクロック同期方法

【課題】 二つの出力クロック間の位相関係を一定とし、二つの出力クロック間の位相ズレの発生を防ぐことが可能なクロック同期装置を提供する。
【解決手段】 初期状態がデフォルトで基準クロック信号REFnをリファレンスクロックとする場合、同期マスタ制御部11はREF選択回路(n)12の選択信号SELnの出力制御として基準クロック信号REFnを選択し、REF選択回路(e)13の選択信号SELeの出力制御として同期回路(A)14の出力信号n1を選択する。出力切替制御部16によって切替制御が行われ、クロック出力は出力n1から出力e1への選択に切替わる時、同期マスタ制御部11はREF選択回路(n)12の選択信号SELnの出力制御として基準クロック信号REFnの選択を保持し、REF選択回路(e)13の選択信号SELeの出力制御として同期回路(A)14の出力信号n1の選択を保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はクロック同期装置及びそれに用いるクロック同期方法に関し、特に現用、予備の冗長構成を持つ2つのクロック出力回路間のクロック同期方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のクロック同期方法においては、図5及び図6に示すように、出力切替制御部21のクロック出力制御と同期してREF(reference)選択回路(n)22,(e)23の切替えを行っている。尚、図5はこのクロック同期方法を用いるクロック同期装置の構成を示し、図6は出力切替制御を行う際の信号の組合せを示している。
【0003】
例えば、クロック出力回路Nがクロック出力として現用の場合、基準クロック信号REFnがREF選択回路(n)22でリファレンスクロックとして選択されるので、同期回路(A)24は基準クロック信号REFnに同期したクロック(出力n2)を生成し、同期回路(B)25は同期回路(A)24の出力n2をリファレンスとして同期をとっている。
【0004】
また、出力切替制御部26の制御によってアクティブNからアクティブEへの切替えを行った場合、基準クロック信号REFeがREF選択回路(e)23でリファレンスとして選択されるので、同期回路(B)25は基準クロック信号REFeに同期したクロック(出力e2)を生成し、同期回路(A)24は同期回路(B)25の出力e2をリファレンスとして同期をとっている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2003−198430号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来のクロック同期方法では、出力クロック切替えの制御と同時に、同期回路(A)24及び同期回路(B)25のREF選択回路(n)22,(e)23を切替えているため、基準クロック信号REFnと基準クロック信号REFeとが同一リファレンスを使用していない場合、クロック出力回路Nとクロック出力回路Eとを連続的に切替えると、非同期のリファレンス切替えと同様の切替えとなるため、二つの出力クロック間に位相ズレが発生してしまう。
【0007】
そこで、本発明の目的は上記の問題点を解消し、二つの出力クロック間の位相関係を一定とすることができ、二つの出力クロック間の位相ズレの発生を防ぐことができるクロック同期装置及びそれに用いるクロック同期方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によるクロック同期装置は、現用及び予備の冗長構成をなす2つのクロック出力回路間のクロック同期を行うクロック同期装置であって、
前記クロック同期回路同士を同期させる場合の同期基準を一方のリファレンスに固定している。
【0009】
本発明によるクロック同期方法は、現用及び予備の冗長構成をなす2つのクロック出力回路間のクロック同期を行うクロック同期装置に用いるクロック同期方法であって、
前記クロック同期装置において、前記クロック同期回路同士を同期させる場合の同期基準を一方のリファレンスに固定している。
【0010】
すなわち、本発明のクロック同期装置は、現用、予備の冗長構成を持つ2つのクロック出力回路間のクロック同期方法において、この二つのクロック同期回路同士を同期させる場合の同期基準を一方のリファレンスに固定することで、長期間の現用、予備のクロック出力切替制御においても、互いの同期状態に影響を与えなくすることで、切替え時の出力クロックの位相ズレを少なくすることを特徴としている。
【0011】
より具体的に説明すると、本発明のクロック同期装置では、第1及び第2のクロック出力回路において、出力切替制御部によってどちらか一方を出力制御しているが、これら第1及び第2のクロック出力回路内のPLL(Phase Locked Loop)回路を持つ第1及び第2の同期回路が、リファレンスクロックとしてそれぞれ第1及び第2の選択信号を入力し、そのリファレンスクロックに同期したクロックを生成している。
【0012】
第1の選択信号は同期マスタ制御部により第1の基準クロック信号REF(reference)nか、第2の同期回路の出力e1かのどちらかを選択した信号である。また、第2の選択信号は同期マスタ制御部によって第2の基準クロック信号REFeか、第1の同期回路の出力n1かのどちらかを選択した信号である。通常、第1の基準クロック信号REFnと第2の基準クロック信号REFeとは同一リファレンスとして使用するが、ここでは、同一リファレンスが入力できず、第1及び第2のクロック出力回路それぞれで独立したリファレンスを使用した場合についての2つのクロック出力回路間のクロック同期方法について述べる。
【0013】
本発明のクロック同期装置では、これら第1及び第2の選択信号の切替え制御として、常に、どちらか一方の回路をマスタとしてリファレンスクロックを選択する制御を行うことによって、第1及び第2の同期回路でそれぞれ生成する出力クロックの出力制御状態によらず、一定のクロック位相を保って出力することが可能となる。
【0014】
第1及び第2のリファレンス選択回路の制御として、第1及び第2のクロック出力回路のどちらか一方の出力をリファレンスとする制御に変更することによって、第1の同期回路の出力クロックと第2の同期回路の出力クロックとの位相は、切替え制御によらず、一定になるため、出力クロック間の位相ズレの発生が抑制可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、以下に述べるような構成及び動作とすることで、二つの出力クロック間の位相関係を一定とすることができ、二つの出力クロック間の位相ズレの発生を防ぐことができるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、本発明の実施例について図面を参照して説明する。図1は本発明の一実施例によるクロック同期装置の構成を示すブロック図である。図1において、本発明の一実施例によるクロック同期装置は、クロック出力回路Nとクロック出力回路Eとの2種類のクロック出力回路間のクロック同期回路構成として、同期マスタ制御部11と、REF(reference)選択回路(n)12,(e)13と、同期回路(A)14,(B)15と、出力切替制御部16と、クロック出力回路N,Eとから構成されている。
【0017】
REF選択回路(n)12はクロック出力回路Nにおいて基準クロック信号REFnと同期回路(B)15の出力信号e1とを入力として、同期マスタ制御部11による制御によってどちらか一方を選択し、選択信号SELnとして出力する。同期回路(A)14はREF選択回路(n)12の出力である選択信号SELnを入力するとともに、自回路の出力信号n1をフィードバック入力し、PLL(Phase Locked Loop)回路を構成する。
【0018】
REF選択回路(e)13はクロック出力回路Eにおいて基準クロック信号REFeと同期回路(A)14の出力信号n1とを入力として、同期マスタ制御部11による制御によってどちらか一方を選択し、選択信号SELeとして出力する。同期回路(B)15はREF選択回路(e)13の出力である選択信号SELeを入力するとともに、自回路の出力信号e1をフィードバック入力し、PLL回路を構成する。
【0019】
出力切替制御部16はクロック出力回路Nへの出力n1とクロック出力回路Eへの出力e1の切替え制御を行う。同期マスタ制御部11はREF選択回路(n)12及びREF選択回路(e)13の切替え制御を行う。また、基準クロック信号REFn,REFeはクロック出力回路Nとクロック出力回路Eとにて互いに独立に生成するリファレンスクロックとする。
【0020】
図2は本発明の一実施例による同期マスタ制御部11の同期マスタ選択状態表を示す図であり、図3は本発明の一実施例によるNアクティブの場合のREF選択処理を示すシーケンスチャートであり、図4は本発明の一実施例によるEアクティブの場合のREF選択処理を示すシーケンスチャートである。これら図2〜図4を参照して、同期マスタ制御部11の動作の説明及びそれを用いた本実施例によるクロック同期方法の動作について説明する。
【0021】
ここで、Nアクティブとは初期状態がデフォルトで基準クロック信号REFnをリファレンスクロックとする場合を示し、Eアクティブとは初期状態がデフォルトで基準クロック信号REFeをリファレンスクロックとする場合を示している。図2(a)は初期状態がデフォルトでNアクティブの場合の同期マスタ選択状態表を示し、図2(b)は初期状態がデフォルトでEアクティブの場合の同期マスタ選択状態表を示している。
【0022】
同期マスタ制御部11の制御手順を説明すると、初期状態がデフォルトで基準クロック信号REFnをリファレンスクロックとする場合(Nアクティブの場合)、同期マスタ制御部11はREF選択回路(n)12の選択信号SELnの出力制御として基準クロック信号REFnを選択し、REF選択回路(e)13の選択信号SELeの出力制御として同期回路(A)14の出力信号n1を選択する。また、この時、出力切替制御部16によるクロック出力は出力n1を選択する(図3のa1,a11)。
【0023】
出力切替制御部16によって切替制御が行われると、クロック出力は出力n1から出力e1への選択に切替わる(図3のa2,a12)。この時、同期マスタ制御部11はREF選択回路(n)12の選択信号SELnの出力制御として基準クロック信号REFnの選択を保持し、REF選択回路(e)13の選択信号SELeの出力制御として同期回路(A)14の出力信号n1の選択を保持する。つまり、出力n1と出力e1との切替えによる同期マスタの切替えは行わない。
【0024】
次に、再度、出力切替制御部16によってクロック出力が出力e1から出力n1に切替えた場合も(図3のa3,a13)、同期マスタ制御部11は、上記と同様にして、同期マスタの切替えを行わない。以上の処理によって、初期状態がNアクティブの場合、クロック出力の切替えによる同期マスタは、基準クロック信号REFn/出力信号n1の固定となる。
【0025】
これによって、同期回路(A)14はクロック出力切替によらず、基準クロック信号REFnをリファレンスとしたクロック(出力n1)を生成し、同期回路(B)15は同期回路(A)14の出力信号n1をリファレンスとしたクロック(出力e1)を生成する動作となる[図2(a)参照]。
【0026】
次に、初期状態がデフォルトで基準クロック信号REFeをリファレンスクロックとする場合(Eアクティブの場合)、同期マスタ制御部11はREF選択回路(n)12の選択信号SELnの出力制御として同期回路(B)15の出力信号e1を選択し、REF選択回路(e)13の選択信号SELeの出力制御として基準クロック信号REFeを選択する。また、この時、出力切替制御部16によるクロック出力は出力e1を選択する(図4のb1,b11)。
【0027】
出力切替制御部16によって切替制御が行われると、クロック出力は出力e1から出力n1への選択に切替わる(図4のb2,b12)。この時、同期マスタ制御部11はREF選択回路(n)12の選択信号SELnの出力制御として同期回路(B)15の出力信号e1の選択を保持し、REF選択回路(e)13の選択信号SELeの出力制御として基準クロック信号REFeの選択を保持する。つまり、出力e1と出力n1との切替えによる同期マスタの切替えは行わない。
【0028】
次に、再度、出力切替制御部16によってクロック出力が出力n1から出力e1に切替えた場合も(図4のb3,b13)、同期マスタ制御部11は、上記と同様にして、同期マスタの切替えを行わない。以上の処理によって、初期状態がEアクティブの場合、クロック出力の切替えによる同期マスタは、出力信号e1/基準クロック信号REFeの固定となる。
【0029】
これによって、同期回路(B)15はクロック出力切替によらず、基準クロック信号REFeをリファレンスとしたクロック(出力e1)を生成し、同期回路(A)14は同期回路(B)15の出力信号e1をリファレンスとしたクロック(出力n1)を生成する動作となる[図2(b)参照]。
【0030】
上記のように、本実施例では、クロック出力の切替えを複数回実施した場合でも、初期状態で決めた同期マスタの制御が一定であることから、クロック出力回路Nの出力n1とクロック出力回路Eの出力e1との位相関係も一定となる。
【0031】
このように、本実施例では、同期回路(A)14,(B)15のリファレンスクロックとして一定のリファレンスを選択する制御を行っているため、クロック出力回路Nの出力n1とクロック出力回路Eの出力e1との位相関係も一定となる。また、本実施例では、クロック出力回路Nの出力n1とクロック出力回路Eの出力e1との位相関係が一定となることによって、出力切替制御を複数回繰り返しても、出力クロックの位相ズレの発生を防ぐことができる。
【0032】
尚、本発明は、上記の実施例において、同期マスタ制御部11の初期条件についてNアクティブとEアクティブとを固定で設定する方法をとっているが、以前のマスタ制御状態を保持しておく方法とすることも可能である。この場合、本発明は、同期マスタの初期状態(デフォルト状態)によらず、どちらかのリファレンスに同期することができるため、完全に出力切替制御部と独立した回路構成にすることができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施例によるクロック同期装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施例による同期マスタ制御部の同期マスタ選択状態表を示す図である。
【図3】本発明の一実施例によるNアクティブの場合のREF選択処理を示すシーケンスチャートである。
【図4】本発明の一実施例によるEアクティブの場合のREF選択処理を示すシーケンスチャートである。
【図5】従来例によるクロック同期装置の構成を示すブロック図である。
【図6】従来例による出力切替制御を行う際の信号の組合せを示す図である。
【符号の説明】
【0034】
11 同期マスタ制御部
12 REF選択回路(n)
13 REF選択回路(e)
14 同期回路(A)
15 同期回路(B)
16 出力切替制御部
N,E クロック出力回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現用及び予備の冗長構成をなす2つのクロック出力回路間のクロック同期を行うクロック同期装置であって、
前記クロック同期回路同士を同期させる場合の同期基準を一方のリファレンスに固定することを特徴とするクロック同期装置。
【請求項2】
前記クロック出力回路内のPLL(Phase Locked Loop)回路を持つ第1及び第2の同期回路と、前記第1及び第2の同期回路のリファレンスクロックとしてそれぞれ第1及び第2の選択信号を出力する第1及び第2の選択回路とを含み、
前記第1及び第2の同期回路各々は、前記第1及び第2の選択回路各々からの前記第1及び第2の選択信号に同期したクロックを生成することを特徴とする請求項1記載のクロック同期装置。
【請求項3】
前記第1の選択回路は、第1の基準クロック信号と前記第2の同期回路の出力とのうちのいずれかを選択して前記第1の選択信号として出力し、
前記第2の選択回路は、第2の基準クロック信号と前記第1の同期回路の出力とのうちのいずれかを選択して前記第2の選択信号として出力することを特徴とする請求項2記載のクロック同期装置。
【請求項4】
前記第1及び第2の選択信号の切替え制御として前記第1及び第2の選択回路のうちのどちらか一方をマスタとして前記リファレンスクロックを選択する制御を行う同期マスタ制御回路を含むことを特徴とする請求項3記載のクロック同期装置。
【請求項5】
前記同期マスタ制御回路は、初期状態がデフォルトで前記第1の基準クロック信号を前記リファレンスクロックとする場合と、前記初期状態がデフォルトで前記第2の基準クロック信号を前記リファレンスクロックとする場合とのいずれかを固定で設定することを特徴とする請求項4記載のクロック同期装置。
【請求項6】
前記同期マスタ制御回路は、前記マスタの制御状態を保持しておくことを特徴とする請求項4記載のクロック同期装置。
【請求項7】
現用及び予備の冗長構成をなす2つのクロック出力回路間のクロック同期を行うクロック同期装置に用いるクロック同期方法であって、
前記クロック同期装置において、前記クロック同期回路同士を同期させる場合の同期基準を一方のリファレンスに固定することを特徴とするクロック同期方法。
【請求項8】
前記クロック同期装置に、前記クロック出力回路内のPLL(Phase Locked Loop)回路を持つ第1及び第2の同期回路と、前記第1及び第2の同期回路のリファレンスクロックとしてそれぞれ第1及び第2の選択信号を出力する第1及び第2の選択回路とを設け、
前記第1及び第2の同期回路各々が、前記第1及び第2の選択回路各々からの前記第1及び第2の選択信号に同期したクロックを生成することを特徴とする請求項7記載のクロック同期方法。
【請求項9】
前記第1の選択回路が、第1の基準クロック信号と前記第2の同期回路の出力とのうちのいずれかを選択して前記第1の選択信号として出力し、
前記第2の選択回路が、第2の基準クロック信号と前記第1の同期回路の出力とのうちのいずれかを選択して前記第2の選択信号として出力することを特徴とする請求項8記載のクロック同期方法。
【請求項10】
前記クロック同期装置に、前記第1及び第2の選択信号の切替え制御として前記第1及び第2の選択回路のうちのどちらか一方をマスタとして前記リファレンスクロックを選択する制御を行う同期マスタ制御回路を設けたことを特徴とする請求項9記載のクロック同期方法。
【請求項11】
前記同期マスタ制御回路が、初期状態がデフォルトで前記第1の基準クロック信号を前記リファレンスクロックとする場合と、前記初期状態がデフォルトで前記第2の基準クロック信号を前記リファレンスクロックとする場合とのいずれかを固定で設定することを特徴とする請求項10記載のクロック同期方法。
【請求項12】
前記同期マスタ制御回路が、前記マスタの制御状態を保持しておくことを特徴とする請求項10記載のクロック同期方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−43436(P2007−43436A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−224803(P2005−224803)
【出願日】平成17年8月3日(2005.8.3)
【出願人】(390010179)埼玉日本電気株式会社 (1,228)
【Fターム(参考)】