説明

クロック発振回路

【課題】簡単な回路構成でスペクトラム拡散を行うことが可能なクロック発振回路を提供する。
【解決手段】基本クロック信号を発振する基本クロック発振器と、基本クロック信号と非同期で、かつ基本クロック信号より短い周期としたクロック調整信号を発振する調整クロック発振器と、基本クロック信号をクロック調整信号の1周期分シフトして、クロックシフト信号として出力するシフト回路23cと、基本クロック信号およびクロックシフト信号を1周期ごとに切り替えて、調整クロック信号として出力する切替回路として機能するカウンタ回路23aおよびセレクタ回路23bとを備えている。シフト回路23cは、基本クロック信号をクロック調整信号の立ち上がりで同期する第2フリップフロップ23c1で形成され、カウンタ回路23aは、基本クロック信号を2分周する第1フリップフロップ23a1および第1インバータ23a2で形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基本クロック信号にスペクトラム拡散処理を行ってEMI(Electro Magnetic Interference)ノイズの低減を図ることができるクロック発振回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のクロック発振回路として、特許文献1に記載されたものがある。この特許文献1に記載のノイズ低減機能付き発振器は、スペクトラム拡散変調を行うための変調データを記憶するメモリと、変調データから変調信号を生成する変調信号出力回路と、PLL(Phase locked loop)回路の電圧制御発振器(VCO)の制御電圧に変調信号を重畳するミキサとを有し、スペクトラム拡散変調に対応する変調データをメモリに記憶させることにより、所望とする仕様でスペクトラム拡散変調した出力信号を得ることを可能としたものである。
【特許文献1】特開2002−305446号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1に記載のノイズ低減機能付き発振器は、メモリや、PLL回路などを搭載しているため、回路規模が大きく複雑である。従って、この従来のクロック発振回路は、小型化の阻害要因となったり、コストが増大する要因となったりするおそれがある。
【0004】
そこで本発明は、簡単な回路構成でスペクトラム拡散を行うことが可能なクロック発振回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のクロック発振回路は、基本クロック信号である第1クロック信号と非同期で、かつ前記第1クロック信号より短い周期とした第2クロック信号により、前記第1クロック信号を前記第2クロック信号の所定周期分シフトして、クロックシフト信号として出力するシフト回路と、前記第1クロック信号および前記クロックシフト信号を、前記第1クロック信号の1周期ごとに切り替えて、出力クロック信号として出力する切替回路とを備えた。
【発明の効果】
【0006】
本発明のクロック発振回路は、メモリやPLL回路を使用していないので、回路規模が小さく簡単に構成することができる。よって、本発明は、簡便な回路構成でスペクトラム拡散を行うことが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本願の第1の発明は、基本クロック信号である第1クロック信号と非同期で、かつ第1クロック信号より短い周期とした第2クロック信号により、第1クロック信号を第2クロック信号の所定周期分シフトして、クロックシフト信号として出力するシフト回路と、第1クロック信号およびクロックシフト信号を、第1クロック信号の1周期ごとに切り替えて、出力クロック信号として出力する切替回路とを備えたことを特徴としたものである。
【0008】
本発明のクロック発振回路は、シフト回路が第1クロック信号を第2クロック信号の所定周期分シフトしてクロックシフト信号として出力し、切替回路が第1クロック信号と、クロックシフト信号とを、第1クロック信号の1周期ごとに切り替えて、出力クロック信号として出力するので、第1クロック信号の周期を、第2クロック信号の所定周期分未満短い周期から、第2クロック信号の所定周期分未満長い周期までの範囲で分散させることができる。従って、基本となる第1クロック信号の周波数を分散させることができるので、EMIノイズを低減させることができる。また、本発明のクロック発振回路は、従来のクロック発振回路のようにメモリやPLL回路を使用していないので、回路規模が小さく簡単に構成することができる。
【0009】
本願の第2の発明は、本願の第1の発明において、切替回路は、第1クロック信号を2分周して、セレクト信号として出力するカウンタと、セレクト信号に基づいて第1クロック信号およびクロックシフト信号を選択するセレクタとにより形成されていることを特徴としたものである。
【0010】
本願の第2の発明においては、切替回路を、第1クロック信号を2分周して、セレクト信号として出力するカウンタと、セレクト信号に基づいて第1クロック信号およびクロックシフト信号を選択するセレクタとにより形成することができる。
【0011】
本願の第3の発明は、第1または2の発明において、シフト回路は、第1クロック信号を、第2クロック信号で同期するフリップフロップで形成されていることを特徴としたものである。
【0012】
本願の第3の発明においては、シフト回路は、第1クロック信号を、第2クロック信号で同期するフリップフロップで形成することができる。
【0013】
(実施の形態)
本発明の実施の形態に係るクロック発振回路を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施の形態に係るクロック発振回路が搭載された表示装置を示すブロック図である。図2は、図1に示すクロック調整回路を示す回路図である。
【0014】
図1に示すように表示装置10は、クロック発振回路20と、表示制御回路30と、表示パネル40とを備えている。クロック発振回路20は、表示パネル40への表示データの表示制御を行う表示制御回路の基本となるクロックを出力するものである。
【0015】
クロック発振回路20は、基本クロック発振器(第1クロック発振器)21と、調整クロック発振器(第2クロック発振器)22と、クロック調整回路23とを備えている。
【0016】
基本クロック発振器21は、4MHzの基本クロック信号(第1クロック信号)を発振して出力する発振器である。調整クロック発振器22は、基本クロック信号と非同期で、かつ基本クロック信号より短い周期としたクロック調整信号(第2クロック信号)を発振して出力する発振器である。本実施の形態では、クロック調整信号を、55MHzとしている。
【0017】
クロック調整回路23は、クロック調整信号に基づいてスペクトラム拡散処理を行った基本クロック信号を、表示制御回路30に出力するものである。
【0018】
図2に示すようにクロック調整回路23は、カウンタ回路23aと、セレクタ回路23bと、シフト回路23cとを備えている。クロック調整回路23は、基本クロック信号入力端子23xから基本クロック信号(BASECLKIN)が入力され、クロック調整信号入力端子23yからクロック調整信号(CNTCLK)が入力される。そして、調整された基本クロック信号(出力クロック信号)である調整クロック信号(CLKOUT)が調整クロック信号出力端子23zから出力される。
【0019】
カウンタ回路23aは、基本クロック信号を2分周するためのカウンタであり、第1フリップフロップ23a1と、第1インバータ23a2とを備えている。
【0020】
第1フリップフロップ23a1は、基本クロック信号の立ち上がりで第1インバータ23a2からの出力をラッチするD−FF(D型フリップフロップ)である。この第1フリップフロップ23a1のクロック入力に基本クロック信号入力端子23xが接続されている。第1フリップフロップ23a1のデータ出力は、第1インバータ23a2の入力に接続されている。第1インバータ23a2の出力は、第1フリップフロップ23a1のデータ入力に接続されている。
【0021】
セレクタ回路23bは、第1フリップフロップ23a1の出力信号であるセレクト信号に基づいて、基本クロック信号(BASECLKIN)と、シフト回路23cからのクロックシフト信号とを選択するセレクタである。このセレクタ回路23bは、第1アンド23b1と、第2アンド23b2と、第2インバータ23b3と、オア23b4とを備えている。
【0022】
第1アンド23b1は、一方の入力が基本クロック信号入力端子23xに接続され、他方の入力が第2インバータ23b3の出力に接続されている。そして第1アンド23b1の出力は、オア23b4の一方の入力に接続されている。第2アンド23b2は、一方の入力が第1フリップフロップ23a1の出力に接続され、他方の入力がシフト回路23cの出力に接続されている。そして、第2アンド23b2の出力は、オア23b4の他方の入力に接続されている。オア23b4の出力は、調整クロック信号出力端子23zに接続されている。カウンタ回路23aと、セレクタ回路23bとで、切替回路が構成されている。
【0023】
シフト回路23cは、第2フリップフロップ23c1を備えている。第2フリップフロップ23c1は、データ入力が基本クロック信号入力端子23xに接続され、クロック入力がクロック調整信号入力端子23yに接続された、クロック調整信号の立ち上がりで基本クロック信号をラッチするD−FFである。
【0024】
なお、第1フリップフロップ23a1と第2フリップフロップ23c1とは、プリセットおよびリセットが電源電圧に接続されている。
【0025】
以上のように構成されたクロック発振回路20の動作を、図3から図4に基づいて説明する。図3は、図2に示すクロック調整回路23の動作を示すタイムチャートである。図4は、調整クロック信号の特性を示す図であり、(A)は周期の分散を示す図、(B)は周波数の分散を示す図である。
【0026】
第1フリップフロップ23a1のクロック入力に、基本クロック信号が接続されているので、基本クロック信号S1の立ち上がりのたびに第1フリップフロップ23a1の出力がトグルする。つまり、カウンタ回路23aは、基本クロック信号S1を2分周する分周回路として機能することで、基本クロック信号S1の周波数が半分となったセレクト信号S2を出力する。また、セレクト信号S2は、第1インバータ23a2を介在させることで、反転したセレクト信号(*セレクト信号)S3となる。
【0027】
シフト回路23cの第2フリップフロップ23c1は、クロック調整信号S4の立ち上がりで、基本クロック信号S1をラッチするので、基本クロック信号S1がクロック調整信号S4の1周期分ほどシフトしたクロックシフト信号S5を出力する。
【0028】
従って、セレクタ回路23bの第1アンド23b1の出力信号Aは、基本クロック信号S1の2周期に一度、セレクト信号S2によって選択されることで、基本クロック信号S1がクロック調整信号S4の1周期分ほどシフトされたクロックシフト信号S5が出力されるので、クロックシフト信号S5が2周期に一度出力される出力信号S6となる。
【0029】
また、セレクタ回路23bの第2アンド23b2の出力信号Bは、基本クロック信号の2周期に1度、*セレクト信号S3によって選択されることで、基本クロック信号S1が2周期に一度出力される出力信号S7となる。
【0030】
そして、オア23b4により第1アンド23b1の出力信号Aと、第2アンド23b2の出力信号Bとを論理和して、調整クロック信号S8として調整クロック信号出力端子23zから表示制御回路30(図1参照)へ出力される。
【0031】
調整クロック信号S8は、基本クロック信号S1と、クロックシフト信号S5とを、基本クロック信号S1の1周期ごとにセレクタ回路23bで切り替えることで、交互に出力した信号である。
【0032】
クロックシフト信号S5は、基本クロック信号S1を第2フリップフロップ23c1によりクロック調整信号S4で同期を取った信号である。基本クロック信号S1とクロック調整信号S4とは非同期であるので、基本クロック信号S1の立ち上がりを基準にすると、最大でクロック調整信号の1周期分未満のずれがある。従って、このクロックシフト信号S5と、基本クロック信号S1とを、1周期ごと交互に論理和をとった調整クロック信号S8とすることで、基本クロック信号S1の周期を、クロック調整信号の1周期分未満短い周期から、クロック調整信号の1周期分未満長い周期までの範囲で、図4(A)および同図(B)に示すように分散させることができる。従って、表示制御回路30を動作させる基本となる調整クロック信号S8の周波数を分散させることができるので、EMIノイズを低減させることができる。
【0033】
また、クロック調整回路23は、フリップフロップやゲートなどで構成されているため、メモリやPLL回路などが不要である。従って、クロック調整回路23は、回路規模が小さく簡単に構成することができるので、安価に作製することができる。
【0034】
なお、本実施の形態では、クロック調整信号をシフト回路23cである第2フリップフロップ23c1に直接入力することで、基本クロック信号のシフト量を、クロック調整信号の1周期分としているが、2分周して2周期分としたり、それ以上としたりすることも可能である。また、本実施の形態では、基本クロック信号を4MHz、クロック調整信号を55MHzとしたが、基本クロック信号とクロック調整信号とは、非同期で、かつ基本クロックよりクロック調整信号を短い周期としていれば、クロック調整信号は他の周波数に適宜設定することができる。しかし、クロック調整信号を分周したり、クロック調整信号の周波数を基本クロック信号に近づけたりして、基本クロック信号のシフト量を大きくすればするほど、周波数の変動範囲が広くなるだけでなく、デューティ比も変動範囲が大きくなるので、クロック調整信号の周波数は、調整クロック信号に基づいて動作する後段の回路(例えば、表示制御回路30)が動作可能な範囲とするのが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、簡単な回路構成でスペクトラム拡散を行うことが可能なので、基本クロック信号にスペクトラム拡散処理を行ってEMIノイズの低減を図るクロック発振回路に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施の形態に係るクロック発振回路が搭載された表示装置を示すブロック図
【図2】図1に示すクロック調整回路を示す回路図
【図3】図2に示すクロック調整回路の動作を示すタイムチャート
【図4】調整クロック信号の特性を示す図であり、(A)は周期の分散を示す図、(B)は周波数の分散を示す図
【符号の説明】
【0037】
10 表示装置
20 クロック発振回路
21 基本クロック発振器
22 調整クロック発振器
23 クロック調整回路
23a カウンタ回路
23a1 第1フリップフロップ
23a2 第1インバータ
23b セレクタ回路
23b1 第1アンド
23b2 第2アンド
23b3 第2インバータ
23b4 オア
23c シフト回路
23c1 第2フリップフロップ
23x 基本クロック信号入力端子
23y クロック調整信号入力端子
23z 調整クロック信号出力端子
30 表示制御回路
40 表示パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基本クロック信号である第1クロック信号と非同期で、かつ前記第1クロック信号より短い周期とした第2クロック信号により、前記第1クロック信号を前記第2クロック信号の所定周期分シフトして、クロックシフト信号として出力するシフト回路と、
前記第1クロック信号および前記クロックシフト信号を、前記第1クロック信号の1周期ごとに切り替えて、出力クロック信号として出力する切替回路とを備えたクロック発振回路。
【請求項2】
前記切替回路は、
前記第1クロック信号を2分周して、セレクト信号として出力するカウンタと、
前記セレクト信号に基づいて前記第1クロック信号および前記クロックシフト信号を選択するセレクタと
により形成されていることを特徴とする請求項1記載のクロック発振回路。
【請求項3】
前記シフト回路は、前記第1クロック信号を、前記第2クロック信号で同期するフリップフロップで形成されていることを特徴とする請求項1または2記載のクロック発振回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−188796(P2009−188796A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−27469(P2008−27469)
【出願日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】