グリーンシートの膜厚測定装置
【課題】誤差を抑制して測定の精度を向上することができるグリーンシートの膜厚測定装置を提供すること。
【解決手段】膜厚測定装置1は、光源51及び光源51から発せられた光を測定領域Aに向けてライン状に出射する投光ロッド52を有するライン光照明5と、測定領域Aを挟んで投光ロッド52と対向するように配置されたラインカメラ6と、を備えている。投光ロッド52のライン状の光の出射範囲(出射口53)は、投光ロッド52の軸線方向に沿った長さが搬送部3により搬送されるグリーンシートGの軸線方向に沿った長さよりも長い。投光ロッド52と測定領域Aとの間には、投光ロッド52から出射された光のうち、測定領域Aに搬送されたグリーンシートGの軸線方向での端の外側を通って、ラインカメラ6に入射する光を遮光する遮光部材7が設けられている。
【解決手段】膜厚測定装置1は、光源51及び光源51から発せられた光を測定領域Aに向けてライン状に出射する投光ロッド52を有するライン光照明5と、測定領域Aを挟んで投光ロッド52と対向するように配置されたラインカメラ6と、を備えている。投光ロッド52のライン状の光の出射範囲(出射口53)は、投光ロッド52の軸線方向に沿った長さが搬送部3により搬送されるグリーンシートGの軸線方向に沿った長さよりも長い。投光ロッド52と測定領域Aとの間には、投光ロッド52から出射された光のうち、測定領域Aに搬送されたグリーンシートGの軸線方向での端の外側を通って、ラインカメラ6に入射する光を遮光する遮光部材7が設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリーンシートの膜厚測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
積層セラミックコンデンサや積層圧電素子等の積層型電子部品の製造に使用されるグリーンシートは、例えば、原料粉末、バインダ材及び溶剤等を含むスラリーをPETフィルム等の基材フィルム上に塗布し、これを乾燥することにより得られる。このようにして得られるグリーンシートの膜厚は、上記積層型電子部品の寸法や電気特性等に影響を与えるため、ばらつきが少ないことが好ましい。従って、グリーンシートの製造工程において、膜厚のばらつきを把握すべく、グリーンシートの膜厚の測定が行われる場合がある。
【0003】
塗膜の膜厚を測定する装置として、例えば以下の特許文献1に記載の膜厚測定装置が知られており、この膜厚測定装置をグリーンシートの膜厚の測定に用いることが考えられる。この膜厚測定装置は、製造ライン上を移動する被測定シートの移動方向に直交するように被測定シートの下方に配置されたライン状の照明装置と、被測定シートの上方であって照明装置と対向する位置に配置された測定用ラインCCDカメラと、測定用ラインCCDカメラの側方であって照明装置と対向する位置に配置された基準用ラインCCDカメラと、基準用ラインCCDカメラと照明装置との間に配置された基準シートとを備えている。この膜厚測定装置では、基準シートの透過光を検出した基準用ラインCCDカメラにより得られる基準シートデータと、被測定シートの透過光を検出した測定用ラインCCDカメラにより得られる被測定シートデータとを比較することにより、被測定シートに形成された塗膜の膜厚を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−309215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述のようなライン状の照明装置を用いてグリーンシートの膜厚を測定する場合、ライン状の照明装置から出射された光は、グリーンシートに照射され、グリーンシートを透過した光がラインカメラに入射して検出されるが、一部は、グリーンシートを透過することなく、グリーンシートの側方を通って、ラインカメラに入射して検出されることがある。グリーンシートを透過しない光がラインカメラにより検出されると、ラインカメラの出力から得られる光量分布において、グリーンシートの側方にあたる位置で光量が急峻に上昇し、この影響でグリーンシートの両端部にあたる位置で中央部よりも光量が低く測定されてしまう。この場合、グリーンシートの両端部における膜厚が実際よりも薄く測定され、測定に誤差が生じるおそれがある。
【0006】
また、一般的に、ライン状の照明装置では、両端部の光量が低い場合があり、これにより、光量ムラが発生するおそれがある。光量ムラを有するライン光照明をグリーンシートの膜厚測定に用いると、グリーンシートの膜厚を正確に測定できず、測定に誤差が生じるおそれがある。
【0007】
本発明は、このような課題を解決するために成されたものであり、誤差を抑制して測定の精度を向上することができるグリーンシートの膜厚測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るグリーンシートの膜厚測定装置は、光源、及び、光源から発せられた光を測定領域に向けてライン状に出射する投光ロッドを有するライン光照明と、基材フィルムを投光ロッドの軸線方向と直交する方向に沿って移動させ、基材フィルムに形成されたグリーンシートを測定領域に搬送する搬送手段と、測定領域を挟んで投光ロッドと対向するように配置されたラインカメラと、ラインカメラの出力から得られるグリーンシートの光量分布データから、グリーンシートの膜厚分布を算出する演算手段とを備えるグリーンシートの膜厚測定装置であって、投光ロッドのライン状の光の出射範囲は、投光ロッドの軸線方向に沿った長さが搬送手段により搬送されるグリーンシートの軸線方向に沿った長さよりも長く、投光ロッドと測定領域との間には、投光ロッドから出射された光のうち、測定領域に搬送されたグリーンシートの軸線方向での端の外側を通って、ラインカメラに入射する光を遮光する遮光部材が設けられていることを特徴とする。
【0009】
本発明に係るグリーンシートの膜厚測定装置では、投光ロッドから出射された光のうち、測定領域に搬送されたグリーンシートの軸線方向での端の外側を通って、ラインカメラに入射する光は、投光ロッドと測定領域との間に設けられた遮光部材によって遮光される。従って、グリーンシートを透過しない光がラインカメラに入射することが防止され、測定に生じる誤差を抑制でき、測定の精度を向上することができる。また、投光ロッドのライン状の光の出射範囲は、軸線方向に沿った長さが搬送手段により搬送されるグリーンシートの軸線方向に沿った長さよりも長いため、光量ムラが生じやすい出射範囲の両端部における光を測定に用いないようにすることができる。よって、測定に生じる誤差を抑制でき、測定の精度を向上することができる。
【0010】
ここで、演算手段は、ラインカメラの出力から得られる基準シートの光量分布データを用いてシェーディング補正用のマスタ画像を作成し、前記マスタ画像を用いてグリーンシートの光量分布データをシェーディング補正することが好ましい。この場合には、ライン光照明の光量分布におけるばらつきをシェーディング補正することが可能となり、測定の精度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、誤差を抑制して測定の精度を向上することができるグリーンシートの膜厚測定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態に係るグリーンシートの製造装置を示す概略図である。
【図2】本実施形態に係るグリーンシートの膜厚測定装置を示す概略図である。
【図3】遮光部材を示す平面図である。
【図4】遮光部材を示す側面図である。
【図5】図1に示す膜厚測定装置の動作を示すフローチャートである。
【図6】シェーディング補正前のグリーンシートの膜厚分布を示すグラフである。
【図7】シェーディング補正前のグリーンシートの撮像画像である。
【図8】シェーディング補正後のグリーンシートの膜厚分布を示すグラフである。
【図9】シェーディング補正後のグリーンシートの補正画像である。
【図10】従来の膜厚測定装置により得られる光量分布を示すグラフである。
【図11】投光ロッドから出射される光の光量分布の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、「上」「下」「左」「右」の語は、図面の上下左右方向に対応するものであり、便宜的なものである。
【0014】
図1は、本実施形態に係るグリーンシートの製造装置を示す概略図である。膜厚測定装置1は、グリーンシートの製造装置2に設置され、製造装置2で製造されるグリーンシートの膜厚を測定する。
【0015】
図1に示すように、製造装置2では、基材繰出部31から繰り出されたPET等の基材フィルムFが、従動ローラ32〜34を介して駆動ローラ35により引っ張れられ、基材フィルムFにテンションが付加される。テンションが付加された基材フィルムFには、従動ローラ34と駆動ローラ35との間で、原料粉末、バインダ材、及び溶剤等を含むスラリーが塗工部Dにより塗布され、基材フィルムF上に未乾燥状態のグリーンシートGが形成される(図2参照)。
【0016】
未乾燥状態のグリーンシートGが形成された基材フィルムFは、ヒータ等の加熱手段を備えた乾燥部Hに送られて加熱され、基材フィルムF上に乾燥状態のグリーンシートGが形成される。乾燥状態のグリーンシートGが形成された基材フィルムFは、従動ローラ36〜38を介してシート巻取部39に巻き取られ、グリーンシートの製造工程が終了する。
【0017】
製造装置2において、基材フィルムF上に形成された未乾燥状態のグリーンシートGの膜厚を測定すべく、駆動ローラ35と乾燥部Hとの間に測定領域Aが位置するように、膜厚測定装置1が設置されている。
【0018】
製造装置2では、制御部(演算手段)4が、基材繰出部31、駆動ローラ35、シート巻取部39、及び塗工部D等と接続されており、製造装置2全体の制御を行うようになっている。基材フィルムF上にグリーンシートGを形成する際、制御部4により、駆動ローラ35及び基材繰出部31の回転速度を調節することで基材フィルムFに付加されるテンションを制御すると共に、塗工部Dにおける吐出圧を制御し、これにより、基材フィルムF上に形成されるグリーンシートGの膜厚を調節することが可能となっている。
【0019】
次に、本実施形態に係る膜厚測定装置について詳細に説明する。
【0020】
図2は、本実施形態に係るグリーンシートの膜厚測定装置を示す概略図である。膜厚測定装置1は、上述の基材繰出部31、従動ローラ32〜34、駆動ローラ35、従動ローラ36〜38、及びシート巻取部39を有する搬送手段としての搬送部3(図2において不図示)、及び制御部4の他、ライン光照明5、ラインカメラ6、及び遮光部材7を備えている。
【0021】
ライン光照明5は、測定領域Aの下方に配置されて、測定領域Aに向けてライン状の光を照射する。ライン光照明5は、ハロゲン光源(光源)51,51、及び投光ロッド52を備えている。本実施形態では、投光ロッド52は、例えば円柱形状や円筒形状を呈している。ハロゲン光源51は、投光ロッド52の端の外側に位置し、投光ロッド52の内部に向けて光を発する。ハロゲン光源51は、制御部4により光量等が制御される。
【0022】
投光ロッド52は、石英等から形成されており、その内周面は入射光を内部に向けて反射する面になっている。内周面の中央部には、ライン状のスリットである出射口53が設けられている。投光ロッド52は、ハロゲン光源51から発せられた光を内部で全反射させ、出射口53からライン状の光にして出射する。
【0023】
投光ロッド52は、出射口53が測定領域Aと対向するように、測定領域Aの下方にその軸線が左右方向に沿うように配置されている。膜厚測定装置1では、グリーンシートGが形成された基材フィルムFが、投光ロッド52の軸線方向と直交する方向(図2において紙面垂直方向)に沿って移動させられ、測定領域Aに搬送される。
【0024】
投光ロッド52の出射口53の長さd1は、基材フィルムF上に形成されたグリーンシートGの幅(すなわち、投光ロッド52の軸線方向に沿ったグリーンシートGの長さ)d2よりも長くなっている。本実施形態では、出射口53の両端部から出射される光は、測定に用いられない。
【0025】
ラインカメラ6は、光をライン状に検出して光量分布データを得る。ラインカメラ6としては、例えば、CCD(Charge Coupled Device)ラインカメラが用いられる。ラインカメラ6は、測定領域Aを挟んで投光ロッド52と対向する位置に配置されている。ラインカメラ6は、投光ロッド52から出射されて測定領域A内のグリーンシートGを透過した光を検出し、グリーンシートGの光量分布データを得る。ラインカメラ6は、得られたグリーンシートGの光量分布データを制御部4に出力する。ラインカメラ6は、光をライン状に検出できるものであれば良く、赤外線カメラ、白黒カメラ、カラーカメラ等であっても良い。
【0026】
制御部4は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を含む不図示のECU(Electronic Control Unit)等を有している。制御部4は、ラインカメラ6から出力された光量分布データを処理してグリーンシートGの膜厚分布を算出する。
【0027】
制御部4は、基準シートの光量分布データを用いて作成したシェーディング補正用のマスタ画像を記憶し、マスタ画像を用いてグリーンシートGの光量分布データをシェーディング補正する。基準シートの光量分布データは、基準シートを載せた状態の基材フィルムFを測定領域Aに配置し、投光ロッド52から出射されて基材フィルムF及び基準シートを透過した光をラインカメラ6で検出することで得られる。なお、基準シートとしては、グリーンシートGの材質と同じ材質のものを使用してもよいし、グリーンシートGの材質と異なる材質のものを使用してもよく、要は、測定領域Aに配置されたときの材質及び厚さの均一性が予め確認されているシートを使用すればよい。
【0028】
遮光部材7は、投光ロッド52から出射された光のうち、測定領域Aに搬送されたグリーンシートGの投光ロッド52の軸線方向での端の外側を通って、ラインカメラ6に入射する光を遮光する。図3及び図4は、それぞれ遮光部材を示す平面図及び側面図である。遮光部材7は、基板71、及び一対の調節板72,72を有している。
【0029】
基板71は矩形状を呈しており、その中央部には、長手方向に沿って矩形状の貫通孔が設けられている。調節板72は矩形状を呈しており、その長手方向の長さは基板71の短手方向の長さよりも短くなっている。調節板72の長手方向両端部には、短手方向に沿って長孔が設けられている。一対の調節板72,72は、基板71の貫通孔の長手方向両端部を覆うように、長孔に挿入されたボルトによって基板71に締結されている。一対の調節板72,72の間には、長さd3の通過口73が形成されている。調節板72は、長孔が基板71の長手方向に沿うように基板71に締結されており、ボルトを緩めて調節板72を基板71の長手方向に沿ってスライドさせることで、通過口73の長さd3を調節することが可能となっている。
【0030】
図2に戻り、遮光部材7は、投光ロッド52からの光が通過口73を通過して測定領域Aに向けて出射されるように、投光ロッド52と測定領域Aとの間に、基板71の長手方向が投光ロッド52の軸線方向に沿うように配置されている。通過口73は、長さd1の出射口53から出射した光が測定領域Aを通る際に、光の一部が幅d2のグリーンシートGの外側を通ることを防止すべく、投光ロッド52から出射された光の一部を遮光できるような長さd3に調整されている。
【0031】
次に、本実施形態に係るグリーンシートの膜厚測定装置の動作について説明する。
【0032】
図5は、図1に示す膜厚測定装置の動作を示すフローチャートである。図5に示すように、膜厚測定装置1の動作は、ラインカメラ6によるグリーンシートGの光量分布データの取得から始まる(ステップS101)。
【0033】
ステップS101では、搬送部3により測定領域Aに搬送された基材フィルムFに向けて、ライン光照明5からライン状の光を照射し、基材フィルムF上に形成されたグリーンシートGを透過した光をラインカメラ6により検出する。この際、グリーンシートGの側方を通過しようとする光は、遮光部材7により遮光される。これにより、ラインカメラ6で得られるグリーンシートGの光量分布データには、グリーンシートGを透過しない光のデータは含まれないこととなる。ラインカメラ6で得られた光量分布データは、制御部4に出力される。
【0034】
ここで、図6は、シェーディング補正前のグリーンシートの膜厚分布を示すグラフであり、制御部4に出力された光量分布データをそのまま膜厚分布に変換したグラフである。図7は、シェーディング補正前のグリーンシートの撮像画像である。ライン光照明5から照射される光の光量分布には、元々ばらつきが存在する場合があり、このばらつきが制御部4に出力されたグリーンシートGの光量分布データに含まれていることがある。従って、制御部4に出力されたグリーンシートGの光量分布データをそのまま膜厚に変換すると、図6に示すように、例えば、両端部において膜厚が実際よりも厚く測定されてばらつきが生じるおそれや、図7に示すように、撮像画像において左右方向に濃淡差が生じるおそれがある。
【0035】
図5に戻り、そこで、次に、制御部4は、ライン光照明5から照射される光に元々存在するばらつきを除去するため、ステップS101で得られたグリーンシートGの光量分布データに対してシェーディング補正を行う(ステップS103)。
【0036】
ステップS103では、制御部4は、ラインカメラ6から出力されたグリーンシートGの光量分布データから、予め制御部4に記憶されているマスタ画像のデータ値を除算することで、グリーンシートの光量分布データに対してシェーディング補正を行う。
【0037】
次に、制御部4は、ステップS103で得られたシェーディング補正後の光量分布データを膜厚分布に変換するデータ変換を行う(ステップS105)。図8はシェーディング補正後のグリーンシートの膜厚分布を示すグラフ、図9はシェーディング補正後のグリーンシートの補正画像である。シェーディング補正を行うことで、図8に示すように、ライン光照明5から照射される光に元々存在するばらつきがグリーンシートGの膜厚分布から除去され、また、図9に示すように、撮像画像における濃淡差が解消される。
【0038】
図5に戻り、次に、制御部4は、ステップS105で得られたグリーンシートGの膜厚分布を用いて、グリーンシートGの膜厚のばらつきである膜厚変動を算出する膜厚変動算出を行う(ステップS107)。
【0039】
次に、制御部4は、ステップS107で得られた膜厚変動が、所定の閾値より大きいか否かを判定することで、製造されたグリーンシートGの良否を判定する検査判定を行い(ステップS109)、膜厚測定装置1の一連の動作は終了する。
【0040】
以上、本実施形態に係る膜厚測定装置1では、投光ロッド52から出射された光のうち、測定領域Aに搬送されたグリーンシートGの投光ロッド52の軸線方向での端の外側を通って、ラインカメラ6に入射する光は、投光ロッド52と測定領域Aとの間に設けられた遮光部材7によって遮光される。
【0041】
ここで、図10は、従来の膜厚測定装置により得られる光量分布を示すグラフである。ライン光照明が用いられている従来の膜厚測定装置では、ライン光照明から出射された光は、グリーンシートに照射され、グリーンシートを透過した光がラインカメラに入射して検出されるが、一部は、グリーンシートを透過することなく、グリーンシートの側方を通って、ラインカメラに入射して検出される。グリーンシートを透過しない光がラインカメラにより検出されると、図10に示すように、ラインカメラの出力から得られる光量分布において、グリーンシートの側方にあたる位置で光量が急峻に上昇し、この影響でグリーンシートの両端部にあたる位置で中央部よりも光量が低く測定されてしまう。このような場合、グリーンシートの両端部における膜厚が実際よりも薄く測定され、測定に誤差が生じてしまう。
【0042】
これに対し、膜厚測定装置1では、上述のように、グリーンシートGの投光ロッド52の軸線方向での端の外側を通って、ラインカメラ6に入射する光は、遮光部材7によって遮光される。このため、グリーンシートGを透過しない光がラインカメラ6に入射することが防止される。従って、測定に生じる誤差を抑制でき、測定の精度を向上することができる。
【0043】
また、図11は、投光ロッドから出射される光の光量分布の一例を示すグラフである。図11に示すように、一般的に、ライン光照明では、両端部の光量が低い場合があり、これにより、光量ムラが発生するおそれがある。光量ムラを有するライン光照明をグリーンシートの膜厚測定に用いると、グリーンシートの膜厚を正確に測定できず、測定に誤差が生じるおそれがある。
【0044】
これに対し、膜厚測定装置1では、投光ロッド52の出射口53は、投光ロッド52の軸線方向に沿った長さが搬送部3により搬送されるグリーンシートGの投光ロッド52の軸線方向に沿った長さよりも長く、光量ムラが生じやすい出射口53の両端部における光を測定に用いないようになっている。よって、測定に生じる誤差を抑制でき、測定の精度を向上することができる。
【0045】
また、膜厚測定装置1では、制御部4は、ラインカメラ6の出力から得られる基準シートの光量分布データを用いてシェーディング補正用のマスタ画像を作成し、マスタ画像を用いてグリーンシートGの光量分布データをシェーディング補正するため、ライン光照明5の光量分布に元々存在するばらつきをシェーディング補正により除去することが可能となり、測定の精度を向上させることができる。
【0046】
以上、本発明に係るグリーンシートの膜厚測定装置の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、上記実施形態においては、膜厚測定装置1は、未乾燥状態のグリーンシートGの膜厚を測定すべく、駆動ローラ35と乾燥部Hとの間に配置されているが、これに加え、乾燥状態のグリーンシートGの膜厚を測定すべく、乾燥部Hと従動ローラ36との間にも配置されても良い。
【符号の説明】
【0047】
1…膜厚測定装置、3…搬送部(搬送手段)、4…制御部(演算手段)、5…ライン光照明、6…ラインカメラ、7…遮光部材、51…ハロゲン光源(光源)、52…投光ロッド、A…測定領域、F…基材フィルム、G…グリーンシート。
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリーンシートの膜厚測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
積層セラミックコンデンサや積層圧電素子等の積層型電子部品の製造に使用されるグリーンシートは、例えば、原料粉末、バインダ材及び溶剤等を含むスラリーをPETフィルム等の基材フィルム上に塗布し、これを乾燥することにより得られる。このようにして得られるグリーンシートの膜厚は、上記積層型電子部品の寸法や電気特性等に影響を与えるため、ばらつきが少ないことが好ましい。従って、グリーンシートの製造工程において、膜厚のばらつきを把握すべく、グリーンシートの膜厚の測定が行われる場合がある。
【0003】
塗膜の膜厚を測定する装置として、例えば以下の特許文献1に記載の膜厚測定装置が知られており、この膜厚測定装置をグリーンシートの膜厚の測定に用いることが考えられる。この膜厚測定装置は、製造ライン上を移動する被測定シートの移動方向に直交するように被測定シートの下方に配置されたライン状の照明装置と、被測定シートの上方であって照明装置と対向する位置に配置された測定用ラインCCDカメラと、測定用ラインCCDカメラの側方であって照明装置と対向する位置に配置された基準用ラインCCDカメラと、基準用ラインCCDカメラと照明装置との間に配置された基準シートとを備えている。この膜厚測定装置では、基準シートの透過光を検出した基準用ラインCCDカメラにより得られる基準シートデータと、被測定シートの透過光を検出した測定用ラインCCDカメラにより得られる被測定シートデータとを比較することにより、被測定シートに形成された塗膜の膜厚を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−309215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述のようなライン状の照明装置を用いてグリーンシートの膜厚を測定する場合、ライン状の照明装置から出射された光は、グリーンシートに照射され、グリーンシートを透過した光がラインカメラに入射して検出されるが、一部は、グリーンシートを透過することなく、グリーンシートの側方を通って、ラインカメラに入射して検出されることがある。グリーンシートを透過しない光がラインカメラにより検出されると、ラインカメラの出力から得られる光量分布において、グリーンシートの側方にあたる位置で光量が急峻に上昇し、この影響でグリーンシートの両端部にあたる位置で中央部よりも光量が低く測定されてしまう。この場合、グリーンシートの両端部における膜厚が実際よりも薄く測定され、測定に誤差が生じるおそれがある。
【0006】
また、一般的に、ライン状の照明装置では、両端部の光量が低い場合があり、これにより、光量ムラが発生するおそれがある。光量ムラを有するライン光照明をグリーンシートの膜厚測定に用いると、グリーンシートの膜厚を正確に測定できず、測定に誤差が生じるおそれがある。
【0007】
本発明は、このような課題を解決するために成されたものであり、誤差を抑制して測定の精度を向上することができるグリーンシートの膜厚測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るグリーンシートの膜厚測定装置は、光源、及び、光源から発せられた光を測定領域に向けてライン状に出射する投光ロッドを有するライン光照明と、基材フィルムを投光ロッドの軸線方向と直交する方向に沿って移動させ、基材フィルムに形成されたグリーンシートを測定領域に搬送する搬送手段と、測定領域を挟んで投光ロッドと対向するように配置されたラインカメラと、ラインカメラの出力から得られるグリーンシートの光量分布データから、グリーンシートの膜厚分布を算出する演算手段とを備えるグリーンシートの膜厚測定装置であって、投光ロッドのライン状の光の出射範囲は、投光ロッドの軸線方向に沿った長さが搬送手段により搬送されるグリーンシートの軸線方向に沿った長さよりも長く、投光ロッドと測定領域との間には、投光ロッドから出射された光のうち、測定領域に搬送されたグリーンシートの軸線方向での端の外側を通って、ラインカメラに入射する光を遮光する遮光部材が設けられていることを特徴とする。
【0009】
本発明に係るグリーンシートの膜厚測定装置では、投光ロッドから出射された光のうち、測定領域に搬送されたグリーンシートの軸線方向での端の外側を通って、ラインカメラに入射する光は、投光ロッドと測定領域との間に設けられた遮光部材によって遮光される。従って、グリーンシートを透過しない光がラインカメラに入射することが防止され、測定に生じる誤差を抑制でき、測定の精度を向上することができる。また、投光ロッドのライン状の光の出射範囲は、軸線方向に沿った長さが搬送手段により搬送されるグリーンシートの軸線方向に沿った長さよりも長いため、光量ムラが生じやすい出射範囲の両端部における光を測定に用いないようにすることができる。よって、測定に生じる誤差を抑制でき、測定の精度を向上することができる。
【0010】
ここで、演算手段は、ラインカメラの出力から得られる基準シートの光量分布データを用いてシェーディング補正用のマスタ画像を作成し、前記マスタ画像を用いてグリーンシートの光量分布データをシェーディング補正することが好ましい。この場合には、ライン光照明の光量分布におけるばらつきをシェーディング補正することが可能となり、測定の精度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、誤差を抑制して測定の精度を向上することができるグリーンシートの膜厚測定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態に係るグリーンシートの製造装置を示す概略図である。
【図2】本実施形態に係るグリーンシートの膜厚測定装置を示す概略図である。
【図3】遮光部材を示す平面図である。
【図4】遮光部材を示す側面図である。
【図5】図1に示す膜厚測定装置の動作を示すフローチャートである。
【図6】シェーディング補正前のグリーンシートの膜厚分布を示すグラフである。
【図7】シェーディング補正前のグリーンシートの撮像画像である。
【図8】シェーディング補正後のグリーンシートの膜厚分布を示すグラフである。
【図9】シェーディング補正後のグリーンシートの補正画像である。
【図10】従来の膜厚測定装置により得られる光量分布を示すグラフである。
【図11】投光ロッドから出射される光の光量分布の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、「上」「下」「左」「右」の語は、図面の上下左右方向に対応するものであり、便宜的なものである。
【0014】
図1は、本実施形態に係るグリーンシートの製造装置を示す概略図である。膜厚測定装置1は、グリーンシートの製造装置2に設置され、製造装置2で製造されるグリーンシートの膜厚を測定する。
【0015】
図1に示すように、製造装置2では、基材繰出部31から繰り出されたPET等の基材フィルムFが、従動ローラ32〜34を介して駆動ローラ35により引っ張れられ、基材フィルムFにテンションが付加される。テンションが付加された基材フィルムFには、従動ローラ34と駆動ローラ35との間で、原料粉末、バインダ材、及び溶剤等を含むスラリーが塗工部Dにより塗布され、基材フィルムF上に未乾燥状態のグリーンシートGが形成される(図2参照)。
【0016】
未乾燥状態のグリーンシートGが形成された基材フィルムFは、ヒータ等の加熱手段を備えた乾燥部Hに送られて加熱され、基材フィルムF上に乾燥状態のグリーンシートGが形成される。乾燥状態のグリーンシートGが形成された基材フィルムFは、従動ローラ36〜38を介してシート巻取部39に巻き取られ、グリーンシートの製造工程が終了する。
【0017】
製造装置2において、基材フィルムF上に形成された未乾燥状態のグリーンシートGの膜厚を測定すべく、駆動ローラ35と乾燥部Hとの間に測定領域Aが位置するように、膜厚測定装置1が設置されている。
【0018】
製造装置2では、制御部(演算手段)4が、基材繰出部31、駆動ローラ35、シート巻取部39、及び塗工部D等と接続されており、製造装置2全体の制御を行うようになっている。基材フィルムF上にグリーンシートGを形成する際、制御部4により、駆動ローラ35及び基材繰出部31の回転速度を調節することで基材フィルムFに付加されるテンションを制御すると共に、塗工部Dにおける吐出圧を制御し、これにより、基材フィルムF上に形成されるグリーンシートGの膜厚を調節することが可能となっている。
【0019】
次に、本実施形態に係る膜厚測定装置について詳細に説明する。
【0020】
図2は、本実施形態に係るグリーンシートの膜厚測定装置を示す概略図である。膜厚測定装置1は、上述の基材繰出部31、従動ローラ32〜34、駆動ローラ35、従動ローラ36〜38、及びシート巻取部39を有する搬送手段としての搬送部3(図2において不図示)、及び制御部4の他、ライン光照明5、ラインカメラ6、及び遮光部材7を備えている。
【0021】
ライン光照明5は、測定領域Aの下方に配置されて、測定領域Aに向けてライン状の光を照射する。ライン光照明5は、ハロゲン光源(光源)51,51、及び投光ロッド52を備えている。本実施形態では、投光ロッド52は、例えば円柱形状や円筒形状を呈している。ハロゲン光源51は、投光ロッド52の端の外側に位置し、投光ロッド52の内部に向けて光を発する。ハロゲン光源51は、制御部4により光量等が制御される。
【0022】
投光ロッド52は、石英等から形成されており、その内周面は入射光を内部に向けて反射する面になっている。内周面の中央部には、ライン状のスリットである出射口53が設けられている。投光ロッド52は、ハロゲン光源51から発せられた光を内部で全反射させ、出射口53からライン状の光にして出射する。
【0023】
投光ロッド52は、出射口53が測定領域Aと対向するように、測定領域Aの下方にその軸線が左右方向に沿うように配置されている。膜厚測定装置1では、グリーンシートGが形成された基材フィルムFが、投光ロッド52の軸線方向と直交する方向(図2において紙面垂直方向)に沿って移動させられ、測定領域Aに搬送される。
【0024】
投光ロッド52の出射口53の長さd1は、基材フィルムF上に形成されたグリーンシートGの幅(すなわち、投光ロッド52の軸線方向に沿ったグリーンシートGの長さ)d2よりも長くなっている。本実施形態では、出射口53の両端部から出射される光は、測定に用いられない。
【0025】
ラインカメラ6は、光をライン状に検出して光量分布データを得る。ラインカメラ6としては、例えば、CCD(Charge Coupled Device)ラインカメラが用いられる。ラインカメラ6は、測定領域Aを挟んで投光ロッド52と対向する位置に配置されている。ラインカメラ6は、投光ロッド52から出射されて測定領域A内のグリーンシートGを透過した光を検出し、グリーンシートGの光量分布データを得る。ラインカメラ6は、得られたグリーンシートGの光量分布データを制御部4に出力する。ラインカメラ6は、光をライン状に検出できるものであれば良く、赤外線カメラ、白黒カメラ、カラーカメラ等であっても良い。
【0026】
制御部4は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を含む不図示のECU(Electronic Control Unit)等を有している。制御部4は、ラインカメラ6から出力された光量分布データを処理してグリーンシートGの膜厚分布を算出する。
【0027】
制御部4は、基準シートの光量分布データを用いて作成したシェーディング補正用のマスタ画像を記憶し、マスタ画像を用いてグリーンシートGの光量分布データをシェーディング補正する。基準シートの光量分布データは、基準シートを載せた状態の基材フィルムFを測定領域Aに配置し、投光ロッド52から出射されて基材フィルムF及び基準シートを透過した光をラインカメラ6で検出することで得られる。なお、基準シートとしては、グリーンシートGの材質と同じ材質のものを使用してもよいし、グリーンシートGの材質と異なる材質のものを使用してもよく、要は、測定領域Aに配置されたときの材質及び厚さの均一性が予め確認されているシートを使用すればよい。
【0028】
遮光部材7は、投光ロッド52から出射された光のうち、測定領域Aに搬送されたグリーンシートGの投光ロッド52の軸線方向での端の外側を通って、ラインカメラ6に入射する光を遮光する。図3及び図4は、それぞれ遮光部材を示す平面図及び側面図である。遮光部材7は、基板71、及び一対の調節板72,72を有している。
【0029】
基板71は矩形状を呈しており、その中央部には、長手方向に沿って矩形状の貫通孔が設けられている。調節板72は矩形状を呈しており、その長手方向の長さは基板71の短手方向の長さよりも短くなっている。調節板72の長手方向両端部には、短手方向に沿って長孔が設けられている。一対の調節板72,72は、基板71の貫通孔の長手方向両端部を覆うように、長孔に挿入されたボルトによって基板71に締結されている。一対の調節板72,72の間には、長さd3の通過口73が形成されている。調節板72は、長孔が基板71の長手方向に沿うように基板71に締結されており、ボルトを緩めて調節板72を基板71の長手方向に沿ってスライドさせることで、通過口73の長さd3を調節することが可能となっている。
【0030】
図2に戻り、遮光部材7は、投光ロッド52からの光が通過口73を通過して測定領域Aに向けて出射されるように、投光ロッド52と測定領域Aとの間に、基板71の長手方向が投光ロッド52の軸線方向に沿うように配置されている。通過口73は、長さd1の出射口53から出射した光が測定領域Aを通る際に、光の一部が幅d2のグリーンシートGの外側を通ることを防止すべく、投光ロッド52から出射された光の一部を遮光できるような長さd3に調整されている。
【0031】
次に、本実施形態に係るグリーンシートの膜厚測定装置の動作について説明する。
【0032】
図5は、図1に示す膜厚測定装置の動作を示すフローチャートである。図5に示すように、膜厚測定装置1の動作は、ラインカメラ6によるグリーンシートGの光量分布データの取得から始まる(ステップS101)。
【0033】
ステップS101では、搬送部3により測定領域Aに搬送された基材フィルムFに向けて、ライン光照明5からライン状の光を照射し、基材フィルムF上に形成されたグリーンシートGを透過した光をラインカメラ6により検出する。この際、グリーンシートGの側方を通過しようとする光は、遮光部材7により遮光される。これにより、ラインカメラ6で得られるグリーンシートGの光量分布データには、グリーンシートGを透過しない光のデータは含まれないこととなる。ラインカメラ6で得られた光量分布データは、制御部4に出力される。
【0034】
ここで、図6は、シェーディング補正前のグリーンシートの膜厚分布を示すグラフであり、制御部4に出力された光量分布データをそのまま膜厚分布に変換したグラフである。図7は、シェーディング補正前のグリーンシートの撮像画像である。ライン光照明5から照射される光の光量分布には、元々ばらつきが存在する場合があり、このばらつきが制御部4に出力されたグリーンシートGの光量分布データに含まれていることがある。従って、制御部4に出力されたグリーンシートGの光量分布データをそのまま膜厚に変換すると、図6に示すように、例えば、両端部において膜厚が実際よりも厚く測定されてばらつきが生じるおそれや、図7に示すように、撮像画像において左右方向に濃淡差が生じるおそれがある。
【0035】
図5に戻り、そこで、次に、制御部4は、ライン光照明5から照射される光に元々存在するばらつきを除去するため、ステップS101で得られたグリーンシートGの光量分布データに対してシェーディング補正を行う(ステップS103)。
【0036】
ステップS103では、制御部4は、ラインカメラ6から出力されたグリーンシートGの光量分布データから、予め制御部4に記憶されているマスタ画像のデータ値を除算することで、グリーンシートの光量分布データに対してシェーディング補正を行う。
【0037】
次に、制御部4は、ステップS103で得られたシェーディング補正後の光量分布データを膜厚分布に変換するデータ変換を行う(ステップS105)。図8はシェーディング補正後のグリーンシートの膜厚分布を示すグラフ、図9はシェーディング補正後のグリーンシートの補正画像である。シェーディング補正を行うことで、図8に示すように、ライン光照明5から照射される光に元々存在するばらつきがグリーンシートGの膜厚分布から除去され、また、図9に示すように、撮像画像における濃淡差が解消される。
【0038】
図5に戻り、次に、制御部4は、ステップS105で得られたグリーンシートGの膜厚分布を用いて、グリーンシートGの膜厚のばらつきである膜厚変動を算出する膜厚変動算出を行う(ステップS107)。
【0039】
次に、制御部4は、ステップS107で得られた膜厚変動が、所定の閾値より大きいか否かを判定することで、製造されたグリーンシートGの良否を判定する検査判定を行い(ステップS109)、膜厚測定装置1の一連の動作は終了する。
【0040】
以上、本実施形態に係る膜厚測定装置1では、投光ロッド52から出射された光のうち、測定領域Aに搬送されたグリーンシートGの投光ロッド52の軸線方向での端の外側を通って、ラインカメラ6に入射する光は、投光ロッド52と測定領域Aとの間に設けられた遮光部材7によって遮光される。
【0041】
ここで、図10は、従来の膜厚測定装置により得られる光量分布を示すグラフである。ライン光照明が用いられている従来の膜厚測定装置では、ライン光照明から出射された光は、グリーンシートに照射され、グリーンシートを透過した光がラインカメラに入射して検出されるが、一部は、グリーンシートを透過することなく、グリーンシートの側方を通って、ラインカメラに入射して検出される。グリーンシートを透過しない光がラインカメラにより検出されると、図10に示すように、ラインカメラの出力から得られる光量分布において、グリーンシートの側方にあたる位置で光量が急峻に上昇し、この影響でグリーンシートの両端部にあたる位置で中央部よりも光量が低く測定されてしまう。このような場合、グリーンシートの両端部における膜厚が実際よりも薄く測定され、測定に誤差が生じてしまう。
【0042】
これに対し、膜厚測定装置1では、上述のように、グリーンシートGの投光ロッド52の軸線方向での端の外側を通って、ラインカメラ6に入射する光は、遮光部材7によって遮光される。このため、グリーンシートGを透過しない光がラインカメラ6に入射することが防止される。従って、測定に生じる誤差を抑制でき、測定の精度を向上することができる。
【0043】
また、図11は、投光ロッドから出射される光の光量分布の一例を示すグラフである。図11に示すように、一般的に、ライン光照明では、両端部の光量が低い場合があり、これにより、光量ムラが発生するおそれがある。光量ムラを有するライン光照明をグリーンシートの膜厚測定に用いると、グリーンシートの膜厚を正確に測定できず、測定に誤差が生じるおそれがある。
【0044】
これに対し、膜厚測定装置1では、投光ロッド52の出射口53は、投光ロッド52の軸線方向に沿った長さが搬送部3により搬送されるグリーンシートGの投光ロッド52の軸線方向に沿った長さよりも長く、光量ムラが生じやすい出射口53の両端部における光を測定に用いないようになっている。よって、測定に生じる誤差を抑制でき、測定の精度を向上することができる。
【0045】
また、膜厚測定装置1では、制御部4は、ラインカメラ6の出力から得られる基準シートの光量分布データを用いてシェーディング補正用のマスタ画像を作成し、マスタ画像を用いてグリーンシートGの光量分布データをシェーディング補正するため、ライン光照明5の光量分布に元々存在するばらつきをシェーディング補正により除去することが可能となり、測定の精度を向上させることができる。
【0046】
以上、本発明に係るグリーンシートの膜厚測定装置の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、上記実施形態においては、膜厚測定装置1は、未乾燥状態のグリーンシートGの膜厚を測定すべく、駆動ローラ35と乾燥部Hとの間に配置されているが、これに加え、乾燥状態のグリーンシートGの膜厚を測定すべく、乾燥部Hと従動ローラ36との間にも配置されても良い。
【符号の説明】
【0047】
1…膜厚測定装置、3…搬送部(搬送手段)、4…制御部(演算手段)、5…ライン光照明、6…ラインカメラ、7…遮光部材、51…ハロゲン光源(光源)、52…投光ロッド、A…測定領域、F…基材フィルム、G…グリーンシート。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源、及び、前記光源から発せられた光を測定領域に向けてライン状に出射する投光ロッドを有するライン光照明と、基材フィルムを前記投光ロッドの軸線方向と直交する方向に沿って移動させ、基材フィルムに形成されたグリーンシートを前記測定領域に搬送する搬送手段と、前記測定領域を挟んで前記投光ロッドと対向するように配置されたラインカメラと、前記ラインカメラの出力から得られるグリーンシートの光量分布データから、グリーンシートの膜厚分布を算出する演算手段とを備えるグリーンシートの膜厚測定装置であって、
前記投光ロッドのライン状の光の出射範囲は、前記投光ロッドの軸線方向に沿った長さが前記搬送手段により搬送されるグリーンシートの前記軸線方向に沿った長さよりも長く、
前記投光ロッドと前記測定領域との間には、前記投光ロッドから出射された光のうち、前記測定領域に搬送されたグリーンシートの前記軸線方向での端の外側を通って、前記ラインカメラに入射する光を遮光する遮光部材が設けられていること、
を特徴とするグリーンシートの膜厚測定装置。
【請求項2】
前記演算手段は、前記ラインカメラの出力から得られる基準シートの光量分布データを用いてシェーディング補正用のマスタ画像を作成し、前記マスタ画像を用いてグリーンシートの光量分布データをシェーディング補正することを特徴とする請求項1に記載のグリーンシートの膜厚測定装置。
【請求項1】
光源、及び、前記光源から発せられた光を測定領域に向けてライン状に出射する投光ロッドを有するライン光照明と、基材フィルムを前記投光ロッドの軸線方向と直交する方向に沿って移動させ、基材フィルムに形成されたグリーンシートを前記測定領域に搬送する搬送手段と、前記測定領域を挟んで前記投光ロッドと対向するように配置されたラインカメラと、前記ラインカメラの出力から得られるグリーンシートの光量分布データから、グリーンシートの膜厚分布を算出する演算手段とを備えるグリーンシートの膜厚測定装置であって、
前記投光ロッドのライン状の光の出射範囲は、前記投光ロッドの軸線方向に沿った長さが前記搬送手段により搬送されるグリーンシートの前記軸線方向に沿った長さよりも長く、
前記投光ロッドと前記測定領域との間には、前記投光ロッドから出射された光のうち、前記測定領域に搬送されたグリーンシートの前記軸線方向での端の外側を通って、前記ラインカメラに入射する光を遮光する遮光部材が設けられていること、
を特徴とするグリーンシートの膜厚測定装置。
【請求項2】
前記演算手段は、前記ラインカメラの出力から得られる基準シートの光量分布データを用いてシェーディング補正用のマスタ画像を作成し、前記マスタ画像を用いてグリーンシートの光量分布データをシェーディング補正することを特徴とする請求項1に記載のグリーンシートの膜厚測定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図10】
【図11】
【図7】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図10】
【図11】
【図7】
【図9】
【公開番号】特開2012−242325(P2012−242325A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−114748(P2011−114748)
【出願日】平成23年5月23日(2011.5.23)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月23日(2011.5.23)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】
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