説明

グルタチオン産生促進剤、並びに該グルタチオン産生促進剤を用いた皮膚外用剤及び化粧料

【課題】新規なグルタチオン産生促進剤を提供すること。
【解決手段】本発明では、アカバナ科(Onagraceae)マツヨイグサ属メマツヨイグサ(Oenothera biennis Linne)より抽出されたメマツヨイグサ抽出物を有効成分とするグルタチオン産生促進剤を提供する。該グルタチオン産生促進剤は、生体内に取り込まれることにより、生体内のグルタチオン産生経路に直接作用してグルタチオン産生を促し、1.エネルギー代謝促進、2.抗酸化、3.解毒、4.抗アレルギー、5.色素沈着防止などの働きを発揮する。また、その有効成分が天然由来成分であるため、安全性が高く、長期間、連続的な使用が可能である。そのため、皮膚外用剤や化粧料に好適に用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グルタチオン産生促進剤に関する。より詳細には、有効成分として、メマツヨイグサ抽出物を用いたグルタチオン産生促進剤、並びに該グルタチオン産生促進剤を用いた皮膚外用剤及び化粧料に関する。なお、本発明において、化粧料とは、薬用化粧料(医薬部外品)を含む概念である。
【背景技術】
【0002】
グルタチオンは、生体内に広く分布するペプチド性チオールであり、グルタミン酸、システインおよびグリシンからなるトリペプチドで、別名はγ-L-グルタミル-L-システイニル-グリシンである。グルタチオンは、生体内では、全ての臓器に分布し、特に、肝臓、脾臓、副腎、赤血球などに多く含有されている。
【0003】
グルタチオンは、生体内で様々な機能を発揮することが分かっている。例えば、グルタチオンは、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(nicotinamide adenine dinucleotide phosphate:NADP)やニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(nicotinamide adenine dinucleotide:NAD)などを介して、生体の酸化−還元反系に関与しエネルギー産生に寄与する。また、グルタチオンは、その分子内にチオール基(SH基)を有することから、自ら酸化されることにより、生体内に及ぼされる酸化障害から生体を保護する働きがある。
【0004】
更に、グルタチオンは、生体内における各種抱合解毒反応に関与する酵素活性を高め、優れた解毒作用を発揮する。加えて、グルタチオンには、アレルギー発生の一因子であるアセチルコリン−コリンエステラーゼ平衡の乱れを改善する働きがあり、抗アレルギー作用を有することも分かっている。また、グルタチオン製剤を投与したところ、色素沈着を改善したという報告もなされている(非特許文献1)。
【0005】
このようにグルタチオンは、生体内で様々な機能を発揮する重要な物質であり、近年、生体内のグルタチオン産生を促進する技術が開発されつつある。例えば、特許文献1には、クロセチンにグルタチオン産生促進効果があることが開示されている。また、特許文献2には、γ−トコフェロール、δ−トコフェロールそれぞれが、グルタチオン産生促進作用を有し、そしてこの作用は生理活性の最も高いα−トコフェロールよりも顕著であることが開示されている。
【0006】
ここで、本発明に関連のあるメマツヨイグサについて以下説明する。メマツヨイグサ(Oenothera biennis Linne)は、アカバナ科(Onagraceae)マツヨイグサ属(Oenothera)に属し、北米原産の帰化植物である。メマツヨイグサは、秋に芽生えてロゼットで越冬し、初夏に開花・結実して枯死する。このようなライフサイクルの草本を越年生草あるいは二年草とよぶが、生育期間は実質一年間以内なので、メマツヨイグサは一年生の草本である。メマツヨイグサの姿形は、オオマツヨイグサとよく似ているが、オオマツヨイグサよりも花の大きさが小さいことから、メマツヨイグサの名前が付いた。このほか、メマツヨイグサは荒れ地に生育する傾向が高いことから、アレチマツヨイグサの異名もある。メマツヨイグサの花は、夕方から咲き始め、朝にはしぼむ1日花である。
【0007】
メマツヨイグサの種子油には、γ−リノレン酸やリノール酸などの必須脂肪酸、ビタミン、ミネラルなどが多く含有されており、例えば、保湿効果、ホルモン分泌調整作用(生理痛や月経前症候群(PMS)の改善)、消化器系・呼吸器系の疾患、関節炎、神経性食欲不振などに効果があることが分かっている。
【0008】
また、メマツヨイグサには、皮膚への様々な効果も期待されている。例えば、特許文献3では、マツヨイグサ属植物の抽出物又はL−システイン又はグルタチオン又はN−アセチルシステインを含有してなるトランスグルタミナーゼ活性亢進剤又は表皮角化正常化剤が提案されている。特許文献4では、月見草(メマツヨイグサ)種子抽出エキスが持つ抗酸化作用、抗アレルギー作用、フリーラジカル消去作用、美白作用を利用することにより皮膚の老化を防止する技術が開示されている。特許文献5では、ツキミソウ(メマツヨイグサ)由来ポリフェノール化合物を有効成分とするコラゲナーゼ活性阻害作用,エラスターゼ活性阻害作用及びヒアルロニダーゼ活性阻害作用を有する皮膚老化防止剤が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−074721号公報
【特許文献2】特開2007−284430号公報
【特許文献3】特開2004−091376号公報
【特許文献4】特開2002−308752号公報
【特許文献5】特開2003−128511号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】臨皮 21巻・7号 1967年6月 725−729
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前述のように、生体内のエネルギー代謝、抗酸化、抗アレルギー、色素沈着防止などに、グルタチオンが有効に用いられている。例えば、生体が酸化環境下に曝されると、生体内のグルタチオンが消費されて枯渇し、正常な細胞の働きを維持できなくなり、生体内の生理機能が低下してしまう。生体内の各種生理機能を向上させるために、該当する生理機能を向上させる種々の物質を生体内に投与する試みは、これまでにもなされてきた。しかし、生理機能の維持に必要な各種物質を投与する方法は、一時的な効果しか期待することができず、根本的な解決には至らない。
【0012】
そこで、本発明では、生体内自らのグルタチオン産生を促進させ、生体内の生理機能を持続的に向上させる新規な技術を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、グルタチオンの産生を促進する有効物質の探求を行った結果、メマツヨイグサ抽出物に着目し、メマツヨイグサ抽出物がグルタチオン産生促進効果を有することを具体的に確認することに成功し、本発明を完成させるに至った。
【0014】
即ち、本発明では、まず、アカバナ科(Onagraceae)マツヨイグサ属メマツヨイグサ(Oenothera biennis Linne)より抽出されたメマツヨイグサ抽出物を有効成分とするグルタチオン産生促進剤を提供する。本発明に係るグルタチオン産生促進剤は、生体内において、グルタチオン産生経路に直接働くことにより、グルタチオン産生を促進させ、生体内のエネルギー代謝能、抗酸化能、解毒作用、抗アレルギー作用、色素沈着防止作用などを向上させる。
本発明に係るグルタチオン産生促進剤に有効成分として用いることができるメマツヨイグサ抽出物は、メマツヨイグサのあらゆる部位から抽出することができるが、本発明においては、種子より得られた抽出物を用いることが好ましい。
【0015】
本発明に係るグルタチオン産生促進剤は、薬理学的に許容され得る添加剤を添加した皮膚外用剤や化粧料に好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るグルタチオン産生促進剤は、生体内のグルタチオン産生経路に直接作用してグルタチオン産生を促すため、従来の対処療法とは異なり、根本的に生体内の生理機能を持続的に向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例において、グルタチオン産生量の測定結果を示す図面代用グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための好適な形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0019】
<グルタチオン産生促進剤>
本発明に係るグルタチオン産生促進剤は、メマツヨイグサ抽出物を有効成分とする。本発明に係るグルタチオン産生促進剤に含有されるメマツヨイグサ抽出物は、生体内に取り込まれることにより、生体内のグルタチオン産生経路に直接作用してグルタチオン産生を促す。生体内のグルタチオン産生が促進することにより、以下の効果を奏することが可能である。
【0020】
1.エネルギー代謝促進
グルタチオンは、生体内において、NADPやNADなどを介して、生体の酸化−還元反系に関与しエネルギー産生に寄与する。その結果、細胞の増殖、代謝、修復などの機能の活性化および抗老化(アンチエイジング)などの効果が期待できる。
【0021】
2.抗酸化
グルタチオンは、その分子内にチオール基(SH基)を有することから、自ら酸化されることにより、生体内に及ぼされる酸化障害から生体を保護する。その結果、酸化障害によって生じるあらゆる疾患や老化などを防止する効果が期待できる。
【0022】
3.解毒
グルタチオンは、生体内における各種抱合解毒反応に関与する酵素活性を高め、優れた解毒作用を有する。その結果、生体に悪影響を及ぼす異物侵入によるあらゆる疾患を防止したり、薬剤の代謝を向上させたりする効果が期待できる。
【0023】
4.抗アレルギー
グルタチオンには、アレルギー発生の一因子であるアセチルコリン−コリンエステラーゼ平衡の乱れを改善する働きがあり、抗アレルギー作用を有する。その結果、アレルギーによって引き起こされる各種疾患(例えば、蕁麻疹、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、花粉症、喘息など)を防止する効果が期待できる。
【0024】
5.色素沈着防止
グルタチオンには、皮膚の色素沈着を防止する働きがある。そのため、後述する皮膚用外用剤や化粧料に本発明に係るグルタチオン産生促進剤を用いると、薬剤の副作用などによる色素沈着の防止および改善、しみ・そばかすの防止および改善などへの効果が期待できる。
【0025】
本発明において、メマツヨイグサ抽出物とは、アカバナ科(Onagraceae)マツヨイグサ属メマツヨイグサ(Oenothera biennis Linne)の種子、根茎、茎、葉、花などを適当な溶媒で抽出して得られる抽出物を言い、通常、抽出した溶媒の濃厚溶液として使用する。また、該濃厚溶液を凍結乾燥させたものも、本発明に係るグルタチオン産生促進剤に用いることが可能である。
【0026】
抽出に用いるメマツヨイグサの具体的部位は、本発明の目的を損なわなければ特に限定されず、種子、根茎、茎、葉、花などあらゆる部位を自由に選択して用いることができる。また、それぞれの部位を湯通しして乾燥させた乾燥物などを用いて抽出を行うことも可能である。本発明では、特に、メマツヨイグサの種子を乾燥させた乾燥物を適当な大きさに粉砕して用いることが好ましい。
【0027】
抽出に用いる溶媒も特に限定されず、通常、植物抽出に用いることができる溶媒を1種または2種以上自由に選択して用いることができる。例えば、水、アルコール類、グリコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類、ハロゲン化炭素類などを挙げることができる。アルコール類としては、エタノール、メタノール及びプロパノールなどが挙げられる。グリコール類としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ブチレングリコール及びプロピレングリコール等が挙げられる。ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。エステル類としては、酢酸エチル、酢酸プロピル、ギ酸エチルなどが挙げられる。これらの溶媒は単独或いは水溶液として用いても良く、任意の2種または3種以上の混合溶媒として用いても良い。この中でも本発明においては、親水性溶媒が好ましく、特に、水、エタノール、ブチレングリコールをそれぞれ単独、もしくはこれらを組み合わせて用いることが好ましい。これらの溶媒は、細胞毒性が低いため安全性が高く、得られた抽出物を凍結乾燥させて用いることも可能だからである。
【0028】
抽出方法も特に限定されず、通常の抽出方法を自由に選択して用いることができる。例えば、前記溶媒にメマツヨイグサの任意の部位を24時間浸漬した後に濾過する方法、溶媒の沸点以下の温度で加温、攪拌等しながら抽出した後に濾過する方法、などが挙げられる。
【0029】
抽出したメマツヨイグサ抽出物は、そのままでも本発明に係るグルタチオン産生促進剤の有効成分として用いることができるが、当該抽出物を更に、適当な分離手段(例えば、分配抽出、ゲル濾過法、シリカゲルクロマト法、逆相若しくは順相の高速液体クロマト法など)により活性の高い画分を分画して用いることも可能である。
【0030】
<皮膚外用剤>
本発明に係るグルタチオン産生促進剤は、その優れたグルタチオン産生促進効果を利用して、皮膚外用剤に好適に用いることができる。本発明に係る皮膚外用剤には、メマツヨイグサ抽出物が含有されているため、皮膚から生体内に取り込まれることにより、生体内のグルタチオン産生経路に直接作用してグルタチオン産生を促し、前記のように、1.エネルギー代謝促進、2.抗酸化、3.解毒、4.抗アレルギー、5.色素沈着防止などの働きを発揮する。そのため、例えば、創傷の修復促進、褥瘡、火傷、蕁麻疹、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、湿疹、薬剤の副作用などによる掻痒・色素沈着、などに効果が期待できる。
【0031】
本発明に係る皮膚外用剤は、あらゆる剤型の外用剤に適用することができる。例えば、外用液剤、外用ゲル剤、クリーム剤、軟膏剤、スプレー剤、点鼻液剤、リニメント剤、ローション剤、ハップ剤、硬膏剤、噴霧剤、エアゾール剤、などの外用剤に適用することができる。
【0032】
本発明に係る皮膚外用剤には、薬理学的に許容される添加剤を1種または2種以上自由に選択して含有させることができる。例えば、基剤、界面活性剤、保存剤、乳化剤、着色剤、矯臭剤、香料、安定化剤、防腐剤、酸化防止剤、潤沢剤、溶解補助剤、懸濁化剤、油剤、増粘剤、キレート剤、酵素、pH調整剤などの、医薬製剤の分野で通常使用し得る全ての添加剤を含有させることができる。
【0033】
また、本発明に係るグルタチオン産生促進剤は、その有効成分が天然由来成分であるため、多剤との併用を注意する必要性が低い。そのため、既存のあらゆる薬剤や薬効成分を1種または2種以上自由に選択して、合剤とすることもできる。例えば、抗酸化剤、抗炎症剤、細胞賦活剤、紫外線防止剤、保湿剤、血行促進剤、抗菌剤、鎮痛剤、ステロイド剤、抗真菌剤、鎮咳剤、抗ヒスタミン剤、ビタミン剤、抗腫瘍剤など、あらゆる薬剤を配合することができる。
【0034】
これらの薬剤や薬効成分中、代表的なものについて、具体的に以下例示する。なお、ここでは、「誘導体」とは形成可能なエステルや塩を含む概念である。また、同一成分が複数の薬効を有する場合があるため、その場合には、複数の薬剤や薬効成分に同一名を記載している。植物の場合、かっこ内に別名の生薬名等を併せて記載した。
【0035】
抗酸化剤の一例としては、ビタミンE及びその誘導体、ビタミンC及びその誘導体、カロチノイド、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、ルチン及びその誘導体、グルタチオン及びその誘導体、スーパーオキサイドディスムターゼ、マンニトール、ケイケットウ抽出物、ゲンノショウコ抽出物、サンザシ抽出物、シャクヤク抽出物、イチョウ抽出物、コガネバナ(オウゴン)抽出物、マイカイカ(マイカイ、ハマナス)抽出物、トルメンチラ抽出物、ブドウ抽出物、ヤシャジツ(ヤシャ)抽出物、ユキノシタ抽出物、ローズマリー(マンネンロウ)抽出物、茶抽出物(烏龍茶、紅茶、緑茶等)などが挙げられる。
【0036】
抗炎症剤の一例としては、グリチルリチン酸及びその誘導体、グリチルレチン酸及びその誘導体、イオウ及びその誘導体、アロエ抽出物、アシタバ抽出物、イラクサ抽出物、インチンコウ(カワラヨモギ)抽出物、ウコン抽出物、キハダ(オウバク)抽出物、オトギリソウ抽出物、カミツレ抽出物、コンフリー(ヒレハリソウ)抽出物、スイカズラ(キンギンカ)抽出物、クレソン抽出物、サルビア(セージ)抽出物、ワレモコウ(ジユ)抽出物、シソ抽出物、シラカバ抽出物、ニワトコ抽出物、ガマ(ホオウ)抽出物、ムクロジ抽出物、ユーカリ抽出物、ヨモギ抽出物、レンゲソウ抽出物、クマザサ抽出物、酸化亜鉛などが挙げられる。
【0037】
細胞賦活剤の一例としては、ビタミンA及びその誘導体、アスパラガス抽出物、ダイズ抽出物、ナツメ(タイソウ)抽出物、ニンニク抽出物、ニンジン抽出物、ブナノキ抽出物、ローヤルゼリー、酵母抽出物、微生物醗酵代謝産物、霊芝抽出物などが挙げられる。
【0038】
紫外線防止剤の一例としては、パラメトキシケイ皮酸−2−エチルヘキシル、4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン、オキシベンゾン及びその誘導体、酸化チタン、微粒子酸化チタン、酸化亜鉛及び微粒子酸化亜鉛などが挙げられる。酸化チタン、酸化亜鉛などの無機粉体は、微粒子のものを用いるとより高い効果が発揮される。
【0039】
保湿剤の一例としては、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、タンパク質又はそれらの誘導体もしくは加水分解物並びにそれらの塩(コラーゲン、エラスチン等)、ヒアルロン酸及びその塩、アミノ酸及びそれらの誘導体、糖類、D−パンテノール及びその誘導体、糖脂質、リン脂質、セラミド、尿素、ムチン、アーモンド抽出物、アボカド抽出物、アルテア抽出物、温泉水、アロエ抽出物、ウスベニアオイ抽出物、オノニス抽出物、カラスムギ抽出物、グラブリジン、グラブレン、リクイリチン、イソリクイリチン及びこれらを含有するカンゾウ抽出物、クインスシード抽出物、クララ(クジン)抽出物、クチナシ抽出物、グレープフルーツ抽出物、クレソン抽出物、ゲンチアナ抽出物、ゲンノショウコ抽出物、ゴボウ抽出物、コムギ抽出物、サイシン抽出物、サボテン抽出物、サボンソウ抽出物、サンザシ抽出物、ジオウ抽出物、シモツケ抽出物、ショウガ抽出物、ゼニアオイ(ウスベニタチアオイ)抽出物、クワ(ソウハクヒ)抽出物、タチジャコウソウ(タイム)抽出物、冬虫夏草抽出物、ドクダミ抽出物、ハッカ抽出物、ハトムギ抽出物、ハマメリス抽出物、バラ抽出物、ヒノキ抽出物、フキタンポポ抽出物、ブドウ抽出物、プルーン抽出物、ヘチマ抽出物、ボダイジュ抽出物、ホップ抽出物、マツ抽出物、マルメロ抽出物、マロニエ抽出物、メリッサ抽出物、ヤグルマソウ抽出物、ユリ抽出物、ライム抽出物、ラベンダー抽出物、リンゴ抽出物、コメ及びコメヌカ抽出物、ブラックカラント抽出物、イブキトラノオ抽出物、ノイバラ(エイジツ)抽出物、エゾウコギ抽出物、海藻抽出物などが挙げられる。
また、皮膚表面のシーリングによる保湿(エモリエント)剤の一例としては、ホホバ油、マカデミアナッツ油、オリーブ油、杏仁油、桃仁油、サフラワー油、ヒマワリ油、アボカド油、メドゥホーム油、ツバキ油、アーモンド油、エゴマ油、ゴマ油、ボラージ(ルリジサ)油、カカオ脂、シア脂などが挙げられる。
【0040】
血行促進剤の一例としては、ユズ抽出物、アルニカ抽出物、トウガラシチンキ、ショウブ抽出物、γ―オリザノールなどが挙げられる。
【0041】
本発明に係る皮膚外用剤において、メマツヨイグサ抽出物の配合量は特に限定されず、目的に応じて自由に設定することが可能であるが、固形分として0.0001質量%以上5質量%以下含有させることが好ましく、0.001質量%以上3質量%以下含有させることがより好ましい。この範囲内であればメマツヨイグサ抽出物を安定的に配合することができ、かつ高いグルタチオン産生促進効果を発揮することができる。
【0042】
以上説明した本発明に係る皮膚外用剤は、その有効成分が天然由来成分であるため、種々の疾患を罹患した患者に対しても安心して投与できる可能性も高い。また、長期間、連続的に投与しても副作用を心配する必要性も少ない。
【0043】
<化粧料>
本発明に係るグルタチオン産生促進剤は、その優れたグルタチオン産生促進効果を利用して、化粧料に好適に用いることができる。本発明に係る化粧料には、メマツヨイグサ抽出物が含有されているため、化粧料として生体内に取り込まれることにより、生体内のグルタチオン産生経路に直接作用してグルタチオン産生を促し、前記のように、1.エネルギー代謝促進、2.抗酸化、3.解毒、4.抗アレルギー、5.色素沈着防止などの働きを発揮する。そのため、例えば、しみ改善、しわ改善、肌荒れ改善、肌弾力改善、キメ改善、などに効果が期待できる。
【0044】
本発明に係る化粧料は、あらゆる形態の化粧料に適用することができる。例えば、ローション、乳液、クリーム、美容液などのスキンケア化粧料、ファンデーション、コンシーラー、化粧下地、口紅、頬紅、アイシャドウ、アイライナーなどのメイクアップ化粧料、日焼け止め化粧料などに適用することができる。
【0045】
本発明に係る化粧料には、本発明に係るグルタチオン産生促進剤に加え、通常化粧料に用いることができる成分を、1種または2種以上自由に選択して配合することが可能である。例えば、基剤、保存剤、乳化剤、着色剤、防腐剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、保湿剤、紫外線吸収剤、香料、防腐防黴剤、体質顔料、着色顔料、アルコール、多価アルコール、水、油剤、増粘剤、粉体、キレート剤、酵素、pH調整剤などの、化粧料分野で通常使用し得る全ての添加剤を含有させることができる。
【0046】
また、本発明に係るグルタチオン産生促進剤は、その有効成分が天然由来成分であるため、他の有効成分との併用を注意する必要性が低い。そのため、本発明に係る化粧料組成物には、本発明に係るグルタチオン産生促進剤に加え、他の有効成分を必要に応じて自由に配合することができる。
【0047】
本発明に係る化粧料において、メマツヨイグサ抽出物の配合量は特に限定されず、目的に応じて自由に設定することが可能であるが、固形分として0.0001質量%以上5質量%以下含有させることが好ましく、0.001質量%以上3質量%以下含有させることがより好ましい。この範囲内であれば、メマツヨイグサ抽出物を安定的に配合することができ、かつ高いグルタチオン産生促進効果を発揮することができる。
【0048】
以上説明した本発明に係る化粧料は、その有効成分が天然由来成分であるため、安全性が高く、長期間、連続的な使用が可能である。
【実施例】
【0049】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。なお、以下に説明する実施例は、本発明の代表的な実施例の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0050】
<実験1:メマツヨイグサ抽出物のグルタチオン産生促進効果の検討>
本実験1では、メマツヨイグサ抽出物のグルタチオン産生促進効果について検討を行った。なお、本実施例においては、抽出に用いるメマツヨイグサの具体的部位として、種子部分を用いた。
【0051】
(1)メマツヨイグサ抽出物の調製
まず、アカバナ科(Onagraceae)マツヨイグサ属メマツヨイグサ(Oenothera biennis Linne)の種子を、エタノールと水の混液1:1にて抽出して濾過を行い、含有固形分量が1.0質量%となるようにメマツヨイグサ抽出物を調製した。
【0052】
(2)グルタチオン産生量の測定
正常ヒト新生児線維芽細胞を前培養後、培地に対して1v/v%の前記メマツヨイグサ抽出物を添加し、それぞれの培地条件で一週間培養した。比較対象としては、メマツヨイグサ抽出物を添加せず、培地のみで生育したものを用いた。培養後、培地を取り除きPBS(−)で1回洗浄してから線維芽細胞を回収した。
【0053】
次に、回収した細胞を遠心分離により細胞残渣を取り除いてから、細胞数をカウントし、各サンプルの細胞数が一定となるように調整した。それぞれの細胞数を調整した後、市販のグルタチオン測定キット(株式会社同仁化学製)を用いて測定した。産生されたグルタチオン量は、吸光度測定により求め、既知の濃度のグルタチオン標準液により検量線を作成することで、総グルタチオン量を算出した。
【0054】
(5)結果
算出された1細胞あたりのグルタチオン産生量を下記の表1および図1に示す。表1および図1に示す通り、培地のみの場合に比べ、メマツヨイグサ抽出物を添加した場合のグルタチオン産生量は、約1.6倍増加することが分かった。この結果から、メマツヨイグサ抽出物は、細胞に直接働き、細胞内のグルタチオンの産生を促進させることが分かった。
【0055】
【表1】

【0056】
<実験2:メマツヨイグサ抽出物を含有する皮膚外用剤の調製とその効果の検討>
本実験2ではメマツヨイグサ抽出物を含有する皮膚外用剤の調製とその効果を検討した。
【0057】
以下の表2および3に示す組成の実施例1および2に係る皮膚外用剤の調製およびその効果の検討を行った。なお、メマツヨイグサ抽出物としては、前記実験1と同様の方法で抽出したもの(固形分として1.0質量%)を用いた。
【0058】
[実施例1:軟膏の調製]
以下の製法により、軟膏を調製した。
(製法)
A.下記成分(3)、(4)および(9)の一部を加熱混合し、75℃に保った。
B.下記成分(1)、(2)、(7)および(8)を加熱混合し、75℃に保った。
C.AにBを徐々に加え、これを冷却しながら成分(9)の残部で溶解した成分(5)および(6)を加え、実施例1に係る軟膏を得た。
【0059】
【表2】

【0060】
(効果)
実施例1に係る軟膏は、経時安定性に優れ、皮膚に適用することにより、皮膚内のグルタチオン産生を促進させることで、しみ改善、しわ改善、肌あれ改善、肌弾力改善、キメ改善させる軟膏であった。
【0061】
[実施例2:パップ剤の調製]
以下の製法により、パップ剤を調製した。
(製法)
A.下記成分(1)、(3)、(4)、(6)〜(8)および(10)を混合し、70℃に保ちながら、撹拌した。
B.下記成分(2)及び(9)を混合した。
C.上記Bを先のAに加え、混合した後、冷却し、成分(5)を均一に分散して実施例2に係るパップ剤を得た。
【0062】
【表3】

【0063】
(効果)
実施例2に係るパップ剤は、経時安定性に優れ、皮膚に適用することにより、皮膚内のグルタチオン産生を促進させることで、しみ改善、しわ改善、肌あれ改善、肌弾力改善、キメ改善させるパップ剤であった。
【0064】
<実験3:メマツヨイグサ抽出物を含有する化粧料の調製とその効果の検討>
本実験3では、メマツヨイグサ抽出物を含有する化粧料の調製とその効果を検討した。
【0065】
以下の表4から11に示す組成の実施例3〜10に係る化粧料の調製およびその効果の検討を行った。なお、メマツヨイグサ抽出物としては、前記実験1と同様の方法で抽出したもの(固形分として1.0質量%)を用いた。
【0066】
[実施例3:化粧水の調製]
以下の製法により、化粧水を調製した。
(製法)
A.下記成分(1)〜(10)を混合溶解した。
B.下記成分(11)〜(17)を混合溶解した。
C.AにBを加え均一に混合して実施例3に係る化粧水を得た。
【0067】
【表4】

【0068】
(効果)
実施例3に係る化粧水は、経時安定性に優れ、皮膚に適用することにより、皮膚内のグルタチオン産生を促進させることで、しみ改善、しわ改善、肌あれ改善、肌弾力改善、キメ改善させる化粧水であった。
【0069】
[実施例4:クリームの調製]
以下の製法によりクリームを調製した。
(製法)
A.下記成分(1)〜(10)を加熱溶解し、70℃に保った。
B.下記成分(11)〜(20)を加熱溶解し、70℃に保った。
C.AにBを加え混合し、均一に乳化した。
D.Cを冷却し、下記成分(21)を加え混合し、実施例4に係るクリームを得た。
【0070】
【表5】

【0071】
(効果)
実施例4に係るクリームは、経時安定性に優れ、皮膚に適用することにより、皮膚内のグルタチオン産生を促進させることで、しみ改善、しわ改善、肌あれ改善、肌弾力改善、キメ改善させるクリームであった。
【0072】
[実施例5:クレンジングクリームの調製]
以下の製法によりクレンジングクリームを調製した。
(製法)
A.下記成分(1)〜(9)を加熱溶解し、70℃に保った。
B.下記成分(10)〜(14)を加熱溶解し、70℃に保った。
C.AにBを加え混合し、均一に乳化した。
D.Cを冷却し、下記成分(15)を加え混合し、実施例5に係るクレンジングクリームを得た。
【0073】
【表6】

【0074】
(効果)
実施例5に係るクレンジングクリームは、経時安定性に優れ、皮膚に適用することにより、皮膚内のグルタチオン産生を促進させることで、しみ改善、しわ改善、肌あれ改善、肌弾力改善、キメ改善させるクレンジングクリームであった。
【0075】
[実施例6:乳液の調製]
下記の製法により、乳液を調製した。
(製法)
A.下記成分(13)〜(23)を加熱溶解し、70℃に保った。
B.下記成分(1)〜(12)を加熱溶解し、70℃に保った。
C.AにBを加え混合し、均一に乳化した。
D.Cを冷却し、下記成分(24)および(25)を加え混合し、実施例6に係る乳液を得た。
【0076】
【表7】

【0077】
(効果)
実施例6に係る乳液は、経時安定性に優れ、皮膚に適用することにより、皮膚内のグルタチオン産生を促進させることで、しみ改善、しわ改善、肌あれ改善、肌弾力改善、キメ改善させる乳液であった。
【0078】
[実施例7:パックの調製]
以下の製法により、パックを調製した。
(製法)
A.下記成分(1)〜(7)を混合し、70℃にて加熱溶解した。
B.下記成分(8)〜(13)を混合溶解した。
C.下記成分(14)〜(16)を混合溶解した。
D.AにBを加え混合し冷却後、Cを加え混合し、実施例7に係るパックを得た。
【0079】
【表8】

【0080】
(効果)
実施例7に係るパックは、経時安定性に優れ、皮膚に適用することにより、皮膚内のグルタチオン産生を促進させることで、しみ改善、しわ改善、肌あれ改善、肌弾力改善、キメ改善させるパックであった。
【0081】
[実施例8:クリームファンデーション(O/W型)]
以下の製法により、クリームファンデーションを調製した。
(製法)
A.下記成分(1)〜(11)を加熱混合し、70℃に保った。
B.下記成分(12)〜(17)を加熱混合し、70℃に保った。
C.AにBを加えて混合し、均一に乳化した。
D.Cを冷却後、下記成分(18)を加え混合し、実施例8に係るクリームファンデーション(O/W型)を得た。
【0082】
【表9】

【0083】
(効果)
実施例8に係るクリームファンデーションは、経時安定性に優れ、皮膚に適用することにより、皮膚内のグルタチオン産生を促進させることで、しみ改善、しわ改善、肌あれ改善、肌弾力改善、キメ改善させるクリームファンデーションであった。
【0084】
[実施例9:リキッドファンデーション(O/W型)]
以下の製法により、リキッドファンデーションを調製した。
(製法)
A.下記成分(1)〜(9)を混合溶解した。
B.Aに下記成分(20)〜(25)を加え、均一に混合し、70℃に保った。
C.下記成分(10)〜(19)を均一に溶解し、70℃に保った。
D.CにBを添加して乳化した。
E.Dを冷却後、下記成分(26)を加えて混合し、実施例9に係るリキッドファンデーションを得た。
【0085】
【表10】

【0086】
(効果)
実施例9に係るリキッドファンデーションは、経時安定性に優れ、皮膚に適用することにより、皮膚内のグルタチオン産生を促進させることで、しみ改善、しわ改善、肌あれ改善、肌弾力改善、キメ改善させるリキッドファンデーションであった。
【0087】
[実施例10:日焼け止め乳液]
以下の製法により、日焼け止め乳液を調製した。
(製法)
A.下記成分(1)〜(10)を混合し、70℃に保った。
B.下記成分(11)〜(14)および(15)の一部を混合し、70℃に保った。
C.AにBを添加して、均一に乳化した。
D.Cを冷却後、成分(15)の残部および下記成分(16)〜(19)を加えて混合し、実施例10に係る日焼け止め乳液を得た。
【0088】
【表11】

【0089】
(効果)
実施例10に係る日焼け止め乳液は、経時安定性に優れ、皮膚に適用することにより、皮膚内のグルタチオン産生を促進させることで、しみ改善、しわ改善、肌あれ改善、肌弾力改善、キメ改善させる日焼け止め乳液であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アカバナ科(Onagraceae)マツヨイグサ属メマツヨイグサ(Oenothera biennis Linne)より抽出されたメマツヨイグサ抽出物を有効成分とするグルタチオン産生促進剤。
【請求項2】
前記メマツヨイグサ抽出物は、前記メマツヨイグサの種子より得られる抽出物である請求項1記載のグルタチオン産生促進剤。
【請求項3】
請求項1または2に記載のグルタチオン産生促進剤と、薬理学的に許容され得る添加剤と、を含有する皮膚外用剤。
【請求項4】
請求項1または2に記載のグルタチオン産生促進剤を含有する化粧料。

【図1】
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【公開番号】特開2010−195744(P2010−195744A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−45540(P2009−45540)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(000145862)株式会社コーセー (734)
【Fターム(参考)】