説明

ケイ酸チタン再循環を備えた反応器

本発明は、化学反応を実施するための、少なくとも1つの反応器(1)を有する装置に関するものであり、前記反応器の反応空間は、過酸化水素(H22)及びチタンシリカライト(TS−1)を有する(図3)。本発明には、この種の装置を、活性触媒の連続的な分離及び反応空間への返送が長いフィルター耐用時間で可能であるように改善するという課題が基礎となっている。この課題は、前記反応空間が、固体ケイ素源を有し、前記装置が、水並びにその中に溶解された及び/又は分散された成分を反応空間から導出するために調整されている水抜き管路(3)を含み、前記水抜き管路(3)が、前記水中に溶解された及び/又は分散された成分を分離するフィルター(4)に導き、かつ前記装置が、前記フィルター(4)を用いて分離された成分を前記反応空間中へ返送するために調整されている返送管路(5)を含むことによって解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学反応を実施するための、少なくとも1つの反応器を備えた装置に関するものであり、前記反応器の反応空間は、過酸化水素及びチタンシリカライトを有する。そのような装置は欧州特許(EP-B1)第1 316 545号明細書から知られている。さらに、本発明は、この装置の特別な使用、並びに前記装置によって可能となる、反応を実施する方法に関する。
【0002】
工業的に実施される多数の化学反応は、チタンシリカライトの存在で行われ、このチタンシリカライトはその際に触媒として利用される。例として、アンモオキシム化、すなわちケトン又はアルデヒドからのオキシムの製造が挙げられる。この反応に関して、欧州特許(EP-B1)第1 316 545号明細書並びに同様に欧州特許(EP-B1)第1 191 017号明細書が指摘され、それらの開示内容に関して本明細書に全面的に関連付けられる。
【0003】
挙げたチタンシリカライトは、チタン、ケイ素及び酸素をベースとする触媒であり;好ましくはゼオライト構造のものである。この種の触媒は、Evonik Degussa GmbHから製品名称"TS−1"で入手可能である。
【0004】
アンモオキシム化の反応条件下で、チタンシリカライト中に含まれているSiO2含分は、前記系に可溶である。故に、前記触媒は、飽和していないSiO2流により、SiO2が減損される(abgereichert)ので、反応空間中には、不溶の不活性ナノスケールTiO2粒子が生じる。これらのセラミック微小粒子は、水中に分散されて − この水はとりわけH22から反応により生じ、かつ前記反応から抜き出されなければならない − 反応器から排出され、かつそれらの僅かなサイズに基づいて後接続された廃水処理の装置を汚染する。触媒残留物の効率的なろ別は、必然的に必要である。
【0005】
触媒溶液はしばしば、古典的な分離装置、例えばフィルター、遠心機又は液体サイクロンを用いて分離される。当該の場合に、しかしながらそのような方法は、活性触媒のナノスケール含分により制約されて、濃縮水中もしくは浄化流(Klarlauf)中の受け入れられる触媒損失をもたらさない。さらにこれらの方法の不連続な特徴が加わり、これらの方法は、相応する出費を伴ってのみ連続的な反応操作へ組み込まれることができる。
【0006】
独国特許(DE-C3)第32 45 318号明細書からは、触媒分散液を十字流ろ過法で分離し、かつ連続的に反応へ返送することが知られている。実験室での試験において、しかしながら、セラミック限外ろ過膜での十字流ろ過が、簡単にはアンモオキシム化と組み合わされることができないことが確認された、それというのも、その際に生じるナノスケールTiO2粒子が、短時間の後に被覆層を限外ろ過膜上に形成し、かつ前記フィルターの不可逆的な閉塞をまねくからである:
図1は、アンモニア性条件(5%NH3溶液)下での、1.5%のTS−1触媒スラリー分散液が連続的に装入された0.05μmの分離限界を有するセラミック膜の透過水流束低下を示す。150時間後に既に、透過水流束は、不可逆的に25kg/m2h未満に低下されていた。その場合に、前記膜について通常の運転条件が選択されていた。膜間圧は0.5バールであり、かつ溢流速度は約4m/sであった。透過水収率は、フィードを基準として10%未満であった。走査型電子顕微鏡写真は、反応条件下でSiO2が前記触媒から溶出され、その際に形成されるナノスケールTiO2が前記膜をふさぐことを示す。
【0007】
米国特許(US-B2)第7 408 080号明細書には、アンモオキシム化の際のチタンシリカライトの溶解を、液状ケイ素源の添加により阻止することが提案されている。試験は、しかしながら、この措置が不都合な反応条件で前記膜の急激な閉塞をまねきうることを示す。これは、液状ケイ素源の添加が反応混合物を過飽和させ、このことがそしてまた酸化ケイ素の突然の結晶化(沈殿)を引き起こすことに起因されうる。沈殿された結晶粒子は、前記フィルター膜を不意にふさぐ。
【0008】
この技術水準に関して、本発明には、冒頭に挙げた種類の装置を、活性触媒の連続的な分離及び反応空間への返送が長いフィルター耐用時間で可能であるように改善するという課題が基礎となっている。
【0009】
この課題は、化学反応を実施するための、少なくとも1つの反応器を有し、前記反応器の反応空間が過酸化水素及びチタンシリカライトを有する、装置によって解決され、
・その際に前記反応空間が、固体ケイ素源を有し、
・その際に前記装置が、水並びにその中に溶解された及び/又は分散された成分を反応空間から導出するために調整されている水抜き管路を含み、
・その際に前記水抜き管路が、前記水中に溶解された及び/又は分散された成分を分離するフィルターに導き、
・かつその際に前記装置が、前記フィルターを用いて分離された成分を前記反応空間中へ返送するために調整されている返送管路を含む。
【0010】
本発明には、固体ケイ素犠牲系の計量供給を用いて、前記触媒の溶解プロセスをナノスケール触媒粒子の水準で効率的に停止させ、不活性TiO2の発生を回避し、ろ過膜上での不可逆的な被覆層の形成を効率的に迂回し、かつそのために最後にフィルター耐用時間を高めることができるという知見が基礎となっている。
【0011】
固体Si犠牲系の添加は、チタンシリカライト及び過酸化水素の存在下での本発明による装置上での前記反応の効果的な実施を可能にし、その場合に、前記触媒及び/又はその残留物の分離がフィルターを用いて行われ、前記フィルターは、水抜き管路でもしくは還流管路で反応空間と結合されており、かつこうして過剰の反応水で洗い流されたチタンシリカライトの再循環を可能にする。挙げた水は、通例、純H2Oではなくて、溶解された、分散された又は特に懸濁された成分を含有する前記反応の水相である。概念"水抜き管路(Wasserabzugsleitung)"は、故に一般的に、前記フィルターの方向の水性反応相の制御された物質流として理解される。すなわち、水抜き管路を管路として設計することは必ずしも不要である:その代わりに、本発明による装置はその要素の内部で流路を含む定義された流れプロファイルを形成することができ、それに沿って反応水の質量流が進む。このことは、後でより詳細に説明される。
【0012】
固体ケイ素源の使用に関して、本発明は、米国特許(US-B2)第7 408 080号明細書に教示された液状犠牲系とは相違する。過飽和溶液からのケイ素結晶の突然の沈殿の問題は、前記固体の使用の際に生じない、それというのも、この固体は常にその現在の溶解度が許容するような含分のみが系中に溶解するからである。前記ケイ素の高度に精密で自己制御する計量供給がほぼ行われ、この計量供給は液状ケイ素源の添加の計量供給のための装置的な構成では達成できない:液状ケイ素が一滴ずつのみ添加される場合ですら、反応混合物中の液滴のすぐ周囲では、沈殿反応を引き起こしうるケイ素での局所的な過飽和が生じるだろう。前記固体の添加は、計量供給精度の改善の際に装置的な計量供給の出費を明らかに低下させる。
【0013】
Si犠牲系として、多数のケイ素含有固体が適している。沈降シリカの使用が特に好ましい、それというのも、この沈降シリカは − 前記触媒と比べて − 安価であり、かつ故に犠牲にされることができるからである。
【0014】
前記反応が実施される反応空間は、必ずしも個々の反応器へ広がっている必要はない。装置が反応器カスケードを、すなわち多数の直列接続された個々の反応器を備えることが考えられ、その際に各後続反応器は、その先行反応器の溢流から供給される。そうすると、第一反応器用の水抜き管路は、溢流に沿って後続反応器を経て前記フィルターまでの流路として理解される。
【0015】
前記反応が多相である場合には、反応水の抜取りは、通例、水相の予めの分離を必要とする。相分離は、反応空間自体中で、例えば撹拌機の停止により、それで前記相が互いに沈降する限りは、行われることができる。これが当てはまらないか又は連続的な方法実施が意図される場合には、前記反応器に、反応空間から導出されるべき水並びにその中に溶解された及び/又は分散された成分を、反応空間中に含まれているその他の液状成分から分離する液−液分離器が割り当てられることができる。前記反応及び相分離は、ついで前記装置の異なる要素中で行われる。水抜き管路は、これに関連して、反応器から分離器中へ及びそこからフィルターまでの流路として理解される。
【0016】
そして相分離は反応器自体中で行われ、前記フィルターは有利には前記反応器へ組み込まれることができる。そうすると、水抜き用の管路は部分的に余分であり、その代わりに、断面が反応空間自体を流路として進み、それによりコストが節約される。そうすると、前記フィルターは、例示的に反応器壁の一部として設計されていることができる。
【0017】
本発明の特に有利な実施態様は、前記フィルターを、たいていの反応器中に存在している撹拌機をジャケットのように取り囲むろ過管として設計することが考えられる。そうすると、前記フィルターを経る流束は、撹拌機により維持される。そのような状況はそれゆえ、追加のポンプの節約を可能にする。
【0018】
好ましくは、前記フィルターは、セラミック膜を有するメンブランフィルターである、それというのも、そのような分離ユニットは、アンモオキシム化の際に、反応空間から水抜き管路を用いて抜き取られ、かつ前記フィルターに導かれるような、約85〜95℃でのアンモニア性のH22含有水溶液に対して耐性であるからである。
【0019】
特に、十字流メンブランフィルターがフィルターとして適している、それというのも、これらは一方では前記触媒を確実に分離することを可能にし、かつ他方では高い連続的なフィルター性能を達成し、ひいては流通式工業プロセスにおいて一体化されることができるからである。
【0020】
好ましくは、本発明による装置は、特に2相のアンモオキシム化を実施するために使用される。本発明により達成される利点は、しかし、反応系が通常チタンシリカライトを溶解する他の反応の際にも利用されることができる。
【0021】
チタンシリカライトの存在下で実施される反応の実施は、本発明による装置で次のように行われる:
・水が、その中に溶解された及び/又は分散されたチタンシリカライトと共に、前記反応から抜き取られ、
・抜き取られたチタンシリカライトが、前記フィルターを経て前記水から分離され、かつ前記反応へ返送され、
・前記反応に、固体ケイ素源が添加される。
【0022】
好ましくは、ケイ素源は、沈降シリカ、すなわち比較的安価である固体である。
【0023】
本発明の特に好ましい一実施態様において、ケイ素源の濃度は少なくとも、前記触媒の濃度である:ケイ素源の質量対チタンシリカライトの質量の比は、前記反応において1:1である。最良の結果は、比が約3:1、すなわち前記触媒に比較して3倍の濃度のケイ素である場合に、達成される。
【0024】
水の抜き取り及び分離された触媒の返送は、周期的に、すなわち前記反応器の撹拌装置の一時的な停止により行われることができるので、空間的に分かれている相が反応器中で形成され、前記相が前記水相の抜き取りを単純化する。しかしながら、連続的な方法実施がより経済的である;これは、前記反応の水相を反応器の外部で分離する液−液分離器を用いてできる。
【0025】
本発明による方法は、アルカリ性反応を実施するため、とりわけ2相のアンモオキシム化を実施するために卓越して適している。
【0026】
本発明は、目下、好ましい実施例に基づき、添付した図を用いてより詳細に説明される。これらについて以下に示す:
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】シリカの添加なしでのセラミック膜を用いたTS−1触媒スラリー分離の際の透過水流束低下(技術水準);
【図2】図1と同じであるが、しかしながらシリカの添加ありでのセラミック膜を用いたTS−1触媒スラリー分離の際の透過水流束低下(本発明による);
【図3】個々の反応器及び別個のフィルターを有する装置の接続図(第一実施態様);
【図4】個々の反応器及びその壁中に埋め込まれたフィルターを有する装置の接続図(第二実施態様);
【図5】個々の反応器及びろ過管を有する装置の接続図(第三実施態様);
【図6】反応器カスケード及び別個の分離器を有する装置の接続図(第四実施態様);
【図7】シリカの添加あり及びなしでの前記装置中のCDONの転化率の変化。
【0028】
図1に属する試験は、上記で本発明の基礎となる課題を説明するために記載されている。
【0029】
図2は、それとは異なり、前記膜のろ過効率の尺度として、1.5%のTS−1(チタンシリカライト)分散液への前記固体"Sipernat 320"1.5%(Evonik Degussa GmbHで入手可能な沈降シリカ)の添加による、それ以外は図1の基礎となる試験の場合と同じ条件下での、透過水流束の経過を示す。本発明による方法実施が、ほぼ一定のベース(Sockel)-透過水流束への漸近的な近似を生じさせることを認識することができ、その間にSipernatの添加なしでは、流束は、ふさがる膜により急速に干上がる(図1参照)。
【0030】
前記フィルターの信頼できる分離効率は、2相のアンモオキシム化を連続的に実施するための装置の構成を可能にする。にも拘わらず、周期的に運転される装置も本発明の対象である。第一の周期的に運転される装置は、図3に記号的に示されている。この装置は、 − 欧州特許(EP-B1)第1 316 545号明細書に教示されたように − 2相のアンモオキシム化が実施される反応器1を含む。この方法の場合に、反応条件(圧力:4〜6バール;温度:95〜105℃)下で反応空間中で2つの液相、すなわち有機相O及び水相Aが形成される。有機相Oは、出発成分であるシクロデカノン(略称:CDON)及び目的成分であるシクロドデカノンオキシム(略称:オキシム)から、双方とも、有機溶剤であるイソプロピルシクロヘキサン(呼称:ヒドロクメン)中に溶解されて、形成される。水相Aは、溶解されてアンモニア(NH3)、過酸化水素(H22)並びにアンモニウム塩(NH4+-)を含有する。前記液相中に、チタンシリカライト(TS−1)及び3倍の濃度の沈降シリカ(Sipernat)が懸濁されている。水相のpH値は、約9〜11である。前記水相は、分散された含分のその高い割合に基づいて、粥状のコンシステンシーを有し、スラリーと呼ばれる。WとAとの間の相溶化剤(Phasenvermittler)として、Sasol Germany GmbHの"Marlon PS 30"のような界面活性剤が供されていてよい。双方の相O及びAは、通常の反応運転において − 図3に示されているように − 空間的に互いに分かれているのではなくて、図3に示されていない撹拌機を用いて互いに混合される。
【0031】
反応の際に生じる水を反応器から除去するために、前記撹拌機は、一時的に停止されるので、前記相は示されたように順次沈降する。ついで、スラリーは、ポンプ2を用いて水抜き管路3に沿って反応器空間からポンプ排出され、かつ十字流メンブランフィルター4に搬送される。水抜き管路3中の水相Aの温度は、フィルター4の前で約85℃〜95℃である。十字流フィルター4のセラミックフィルター膜は、前記水で洗い流された固体TS−1及びSipernatを前記水相から分離する。TS−1及びSipernatを含有する濃縮水Rは、濃縮されたスラリーとして返送管路5に沿って反応器1へ再循環される。水、アンモニア及びアンモニウム塩を含有する透過水Pは、さらに透過水管路6を経て蒸留装置7に達する。この蒸留装置は、水中に濃縮されて溶解されたアンモニアを回収する;後者は、アンモニア返送管路8を経て再度前記反応へ達する。残留水はその中に溶解されたアンモニウム塩と共に、廃水管路9を経て前記装置を去る。回収サイクルが終了した後に、撹拌機は再び電源投入され、かつ前記反応は混合された相と共に継続される。運転状態の交替は、周期的に行われる。前記プロセスを連続的に行うためには、2つの反応器は、並列に接続されなければならず、それらのうちそれぞれ一方が常に反応運転状態で存在しており、その間に他方が再循環する。
【0032】
図4に切り抜いて示された装置はより高い一体化度を達成する。フィルター4は、ここでは反応器1の壁中へ直接埋め込まれており、これは管路を節約する。水抜き管路3の(極めて短い)断面は、反応器空間の水相Aが占める部分の内部で流路30として進む。この態様の利点は、反応空間とフィルターとの間に管路断面がないので事実上圧力損失が起こらないことにある;反応圧(4〜6バール)は、フィルター4の膜上に直接負荷し、これは図3に示された実施態様と比較して透過水流束を上昇させる。そうすると、濃縮水R用の返送管路5は短くすることができる。
【0033】
図5に示された実施態様の場合に、図4に示された装置に比べて、ポンプさえも節約されることができる:これは、前記フィルターが、反応器1中でいずれにせよ必要な撹拌機10を包囲する円筒形のろ過管40として設計されていることにより達成される。ろ過管40に対して同軸で回転する撹拌機10は、反応器空間内部で、流路30に沿って、ろ過管40の膜を経る反応水の質量流を含む流れプロファイルを発生させる。濃縮水Rの質量流は、ろ過管40を経て前記反応空間中へ直接引き戻される。返送管路5は、そのために、チャネル化されない流路に相当する。
【0034】
前記で説明された実施例は、反応空間内での有機相Oと水相Aとの清浄な分離を示す。これは努力されるべきである(anzustrebsam)、それというのも、フィルター4は、原理に制約されて相分離に適していないからである。前記反応が、空間的に分かれていない相の間で行われる場合には、相分離が、例えば撹拌機10を周期的に電源を切ることにより、必要である。この不連続な方法実施は、2相のアンモオキシム化の際に不経済である;図6に示された装置が可能にする連続的な運転が努力されるべきである:
この装置の反応空間は、カスケードに直列に接続されている3つの反応器1a、1b、1c上に分配されている。第二及び第三の反応器1b及び1cは、先行反応器1aもしくは1bの溢流11からそれぞれ供給される。反応器温度は、ヒドロクメン中のオキシムの溶解度を上昇させるために、カスケード1a、1b、1c内部で反応器から反応器へと上昇させる。相A及びOは、反応器1a、1b、1c内部で空間的に互いに分かれているのではなくて、常に互いに混合されている。それにも拘わらず水を抜き取ることができるように、最後の反応器1cに、相分離を反応空間の外部で行う液−液分離器12が割り当てられている。分離器12は、流れを静めるように作用し、かつその下部領域内で円錐形の断面を有し、その中でより重い水相Aが沈降する。円錐形の断面の先端部から、水抜き管路3は管路として設計されている;前記カスケード中に空間的に分配されている相Aから出発して挙げた先端部までは、水抜き管路は、反応器1a、1b、1cを経て、それらの溢流11に沿って分離器12中へまでの流路30として理解される。管路3は、ついで反応水Aを、さらにポンプ2を経てフィルター4に導き、そこで前記触媒の再循環用の濃縮水Rが返送管路5を経てろ別される。その他の点では、前記濃縮水のろ別は、相分離の前にも行われることができ、そうすると、液−液分離器は返送管路中に配置されうる。
【0035】
まさに描写された装置は、沈降シリカの添加によって、CDONのほぼ一定の転化率での2相のアンモオキシム化の連続的な実施を可能にする:
そして、水/ヒドロクメンの系中でのTS−1触媒スラリー上でのCDONとNH3(25%)及びH22(50%)とのオキシムへの反応へのSipernat添加の影響を調べた。CDON 1.82kg/hの供給流の反応を、90〜105℃の段階的に上昇する温度プロファイルでそれぞれ10 lの反応器空間内容積を有する3つの撹拌槽反応器からなるカスケード中で、引き続き別個の分離器中での生成物分離のための相分離を、及び引き続き触媒スラリーを反応器カスケードへ返送しながらの水相の分離のための膜ろ過を、行った。前記系中で、本発明による例において、1kgのTS1触媒材料を、タイプSipernatの沈降シリカ2kgに加えて装入した。
【0036】
反例において、Sipernatを省略した。前記系からは、アンモニア水及び反応水と共に、2.56kg/hの質量流量でSiO2それぞれ900ppmが前記系から排出された。この排出により、前記触媒は、犠牲系なしで(反例)、700h後に、CDON転化率が当初の98〜99%から40%に低下されている程度に、溶解されていた。前記系から排出されたSiO2量よりも多い量の沈降シリカの添加を用いれば(本発明による例)、触媒TS−1は維持される。
【0037】
図7は、Si犠牲系Sipernatが添加された本発明による系と比較して、Si犠牲系の添加なしでのCDONの転化率の低下を明確に示す。
【符号の説明】
【0038】
1 反応器、 2 ポンプ、 3 水抜き管路、 4 十字流メンブランフィルター、 5 返送管路、 6 透過水管路、 7 蒸留装置、 8 アンモニア返送管路、 9 廃水管路、
30 流路、
10 撹拌機、 40 ろ過管、
1a,1b,1c 反応器、 11 溢流、 12 液−液分離器、
A 水相、 O 有機相、 P 透過水、 R 濃縮水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学反応を実施するための、少なくとも1つの反応器(1)を備え、前記反応器の反応空間が過酸化水素及びチタンシリカライトを有する、装置であって、
a)前記反応空間が、固体ケイ素源を有し、
b)前記装置が、水並びにその中に溶解された及び/又は分散された成分を反応空間から導出するために調整されている水抜き管路(3)を含み、
c)前記水抜き管路(3)が、前記水中に溶解された及び/又は分散された成分を分離するフィルター(4)に導き、
d)かつ前記装置が、前記フィルター(4)を用いて分離された成分を前記反応空間中へ返送するために調整されている返送管路(5)を含む
ことを特徴とする、化学反応を実施するための装置。
【請求項2】
固体ケイ素源が沈降シリカである、請求項1記載の装置。
【請求項3】
カスケードに対して直列接続された多数の反応器(1a、1b、1c)を特徴とする、請求項1又は2記載の装置。
【請求項4】
反応器(1)に、前記反応空間から導出すべき水並びにその中に溶解された及び/又は分散された成分を、前記反応空間中に存在しているその他の液状成分から分離する液−液分離器(12)が割り当てられている、請求項1、2又は3記載の装置。
【請求項5】
フィルター(4)が、前記反応器(1)へ組み込まれており、その際に前記水抜き管路が少なくとも断片的に、反応器(1)中に形成される流れプロファイル内部の流路(30)である、請求項1から4までのいずれか1項記載の装置。
【請求項6】
フィルター(4)が、前記反応器壁へ組み込まれている、請求項5記載の装置。
【請求項7】
反応器(1)に撹拌機(10)が設けられている請求項5記載の装置であって、
フィルター(4)が、撹拌機(10)を包囲するろ過管(40)として設計されていることを特徴とする、請求項5記載の装置。
【請求項8】
フィルター(4)がセラミック膜を有するメンブランフィルターである、請求項1から7までのいずれか1項記載の装置。
【請求項9】
フィルター(4)が十字流フィルターである、請求項8記載の装置。
【請求項10】
アンモオキシム化、特に2相のアンモオキシム化を実施するための、請求項1から9までのいずれか1項記載の装置の使用。
【請求項11】
チタンシリカライトの存在下で実施される反応を実施する方法であって、
水を、その中に溶解された及び/又は分散されたチタンシリカライトと共に、前記反応から抜き取り、抜き取ったチタンシリカライトを、フィルターを経て前記水から分離し、かつ前記反応へ返送し、かつ前記反応に固体ケイ素源を添加する
ことを特徴とする、反応を実施する方法。
【請求項12】
固体ケイ素源が沈降シリカである、請求項11記載の方法。
【請求項13】
ケイ素源の質量対チタンシリカライトの質量の比が、1:1又はそれ以上、好ましくは約3:1である、請求項11又は12記載の方法。
【請求項14】
水の抜き取り及び分離されたチタンシリカライトの返送を連続的に行う、請求項11から13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
前記反応をアルカリ性条件下で実施する、請求項11から13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
前記反応が、アンモオキシム化、特に2相のアンモオキシム化である、請求項15記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−501992(P2012−501992A)
【公表日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−525495(P2011−525495)
【出願日】平成21年8月14日(2009.8.14)
【国際出願番号】PCT/EP2009/060536
【国際公開番号】WO2010/026031
【国際公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(501073862)エボニック デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
【Fターム(参考)】