説明

コミュニケーションロボットシステム、コミュニケーションロボット制御方法およびプログラム

【課題】人に情報を伝達する動作を実行するときの強制度合いの条件に対応して異なる動作を実行する。
【解決手段】コミュニケーションロボットシステム1は、基本条件DB2、制御装置12、入力部7およびロボット部8を備える。基本条件DB2は、人に情報を伝達する動作を実行するときの、強制度合いの条件に対応して異なる動作をロボット部8に実行させる変化部分を有するプログラムを格納する。行動認識部5は、入力部7から入力したデータに基づいて、人の行動を表す情報を取得する。強制度合決定部4は、行動認識部5で取得した人の行動を表す情報に基づいて、プログラムを実行するときの強制度合いの条件を決定する。タスク決定部3は、ユーザの行動と、基本条件DB2のファイルを照合してプログラムを抽出し、強制度合いの条件に応じてプログラムの変化部分を選択する。ロボット部8は、変化部分が選択されたプログラムに従って動作する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コミュニケーションロボットシステム、コミュニケーションロボットの制御方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ユーザとの間で情報を伝達することを目的とするロボットが出現している。特許文献2には、よりユーザフレンドリーに働きかけるロボットシステムが得られることが記載されている。システムは、映像装置に表示されるソフトウェアエージェントと実体のあるリアルエージェントを有し、各エージェントが連動してそれぞれ対応するジェスチャを行うと同時に、各エージェントが連動してそれぞれ対応するセリフを発音する技術を用いている。
【0003】
特許文献3に記載のロボットの衣装によれば、着脱可能な構成とし、ロボットの動作の妨げにならない本体部に保持される構成とし、ロボットの冷却構造の妨げにならない構成とすることで、ロボットが人間に接触した場合の衝撃や人間の温度的な損傷を低減し、ロボット自体の筐体を外的な衝撃から保護し、ロボット自体に親近感を持たせ、娯楽性を発揮することが記載されている。
【0004】
特許文献4のコミュニケーションロボットについて、入力される座標データから、自身の位置、人間の位置およびオブジェクトの位置を検出し、人間との距離、ロボットと人間とを結ぶ基線に対するロボットの視線および人間の視線に基づいて指示語決定モデルを決定し、発話することで、自然なコミュニケーションを実現することが記載されている。
【0005】
特許文献5には、個別のユーザに適応して快適なインタラクションを行うコミュニケーションロボットが記載されている。ユーザの位置座標および顔方向情報から、インタラクションパラメータ(ユーザとコミュニケーションロボットとの距離、ユーザがコミュニケーションロボットを注視する時間、コミュニケーションロボットのモーション)を検出し、適切度を最適化するようにインタラクションパラメータを更新する技術である。
【0006】
特許文献6には、印象に残るような説明を行うようにするロボットを目的としており、ロボット制御システムは、ロボットの近傍にいる視聴者の数を把握する視聴者状況把握部と、ロボットが説明を行う際にロボットが視聴者に対して行う動作パターンを複数記憶する動作パターン記憶部と、視聴者状況把握部が把握した視聴者の数に基づき、動作パターン記憶部から、いずれかの動作パターンを選択する動作パターン選択部と、動作パターン選択部が選択した動作パターンに基づき、ロボットの動作を決定し、視線モーションを生成する視線モーション生成部と、を含むことが記載されている。
【0007】
特許文献7には、言葉によらないノンバーバルコミュニケーションのインタラクション自体をスムーズに行うことを実現可能とするロボット装置が記載されている。行動記述モジュールを自己の内部状態及び外部刺激に応じて選択して選択された行動記述モジュールに記述されたコマンドを出力する行動制御部からのコマンドに対して、関係性、関係性データ及び態度データと、自己の内部状態及び外部刺激とに応じて、動作又は姿勢を含む出力形態の一部又は全部を変更する。
【0008】
特許文献8には、時間が経過しても飽きが来ないエージェント装置が記載されている。プログラム記憶部に、目的地の場所、季節等の状況別に、内容が種々異なるユーザ性格判別用の質問と、エージェントの性格別の容姿・仕草を画像表示するためのアニメーション画像データを用意しておき、表示装置とスピーカを用いて画像と音声により現出させたエージェントにより状況に応じた違和感の無いユーザ性格判別用の質問をさせ、マイク入力されたユーザの回答結果からユーザの性格を判別し、ユーザの性格に合わせてエージェントの性格を可変させる技術を用いる。
【0009】
なお、生産現場に用いられるロボットには、作業を行う高さを変化させるものがある。特許文献1には、電気機器の鉄心組み立て方法について、接合部を撮像し、その撮像画面の一定範囲内にあるか否かを画像処理装置により判定し、一定範囲内に保持するように作業を行うロボットの高さを制御することで、手作業を要せずに、信頼性のある組立を実行可能としている。
【0010】
また、特許文献9のロボットは、各種センサを含み、温度、湿度、床の汚れ、空気の汚れなどの環境状況を検出し、環境状況を検出した結果が設定した条件(設定温度、設定湿度、汚れ設定値、臭い設定値など)と異なるとき、環境状況を調整するための電気機器を制御し、人間の手を煩わすことなく、人間にとって快適な環境を実現することが記載されている。
【0011】
非特許文献1では、人間に対してロボットの感情を表出する感情表現技術における、人工の目、眉、口などの表情によって感情を表現する顔ロボットが紹介されており、ロボットの表情を変化させることで、被験者に対して複数の印象を可変に与えることができるとしている。顔ロボットは、眉を下げる、えくぼを作る、瞬きするといった24の表情の変化によって、驚き、恐怖、嫌悪、怒り、幸福、悲しみの6感情を表現することができる。
【0012】
【特許文献1】特公平07−007738号公報
【特許文献2】特開2002−132404号公報
【特許文献3】特開2003−001582号公報
【特許文献4】特開2006−231497号公報
【特許文献5】特開2006−247780号公報
【特許文献6】特開2007−050461号公報
【特許文献7】特開2007−125629号公報
【特許文献8】特開2007−133728号公報
【特許文献9】特開2007−147217号公報
【非特許文献1】原文雄,小林宏,顔という知能―顔ロボットによる「人工感情」の創発,共立出版,2004
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
近年、コミュニケーションロボットのユーザへのインタラクション行動の効果を向上するために、コミュニケーションロボットがユーザへ与える印象を利用する研究が注目されている。この研究では、ユーザとコミュニケーションロボットとの距離、ユーザがコミュニケーションロボットを注視する時間、コミュニケーションロボットのモーション、コミュニケーションロボットの近傍にいるユーザの数、コミュニケーションロボットの衣装、複数のコミュニケーションロボットの連動、コミュニケーションロボットの表情などを用いてコミュニケーションロボットがユーザへ与える印象を操作している。
【0014】
前述の関連する技術では、ロボットからユーザまでの距離を測定し、最適な距離でのコミュニケーションを行うことや、環境(音や周りの人数)を把握して対応する方法が記載されている。しかしながら、ユーザの動きに対して、その強制度合いを変化させることについては記載されていない。また、ロボットを用いる条件(対象の事柄や、対象の人の年齢など)が限定されており、汎用性に欠ける部分もあった。
【0015】
参考文献1(本明 寛,話し上手 心をつかむ話し方,日本生産性本部,1981)において、本明らは、見上げる相手を強く感じ、見下げる相手を弱く感じる、などのコミュニケーションの性質を用いて印象を操作できることを述べている。相手に与える印象を操作して、話者がある目的をどの程度対話相手に対して強制したいか(以下強制度合と呼ぶ)を対話相手に伝えることで、依頼、説得、命令といった目的をもった対面コミュニケーションの円滑化を実現できると主張している。
【0016】
参考文献2(森村祐子,遠田敦,渡辺仁史,生活空間における人間とロボットの対話距離に関する研究,日本建築学会,大会学術講演梗概集,2007)では、ロボットへの話し掛け距離には、ロボットの外見と状況、場面が影響し、対話距離においては、空間特性が優先的に影響したことが記載されている。
【0017】
例えば、コミュニケーションロボットとユーザとの対面コミュニケーションを円滑に進めるためには、コミュニケーションロボットがユーザへ与える上下関係の印象を操作する必要がある。ユーザよりも大きなコミュニケーションロボットを利用した場合、コミュニケーションロボットは高い角度からユーザを見下ろすため、親や上司のような強い立場の印象を与えることはできても、子供やペットといった弱い立場の印象を与えることが難しく、ユーザへ与える上下関係の印象に制限がある。そのため、コミュニケーションロボットを予めタスク別にデザインしなければならないという課題があった。
【0018】
本発明は上述の事情に鑑みてなされたもので、人に情報を伝達する動作を実行するときの強制度合いの条件に対応して異なる動作を実行することのできるコミュニケーションロボットシステム、コミュニケーションロボット制御方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の第1の観点に係るコミュニケーションロボットシステムは、
人に情報を伝達する動作をロボットに実行させるプログラムであって、前記人に情報を伝達する動作を実行するときの強制度合いの条件に対応して異なる動作を実行する変化部分を有するプログラムを格納する記憶手段と、
人の行動を表す情報を取得する行動認識手段と、
前記行動認識手段で取得した人の行動を表す情報に基づいて、前記プログラムを実行するときの強制度合いの条件を決定する強制度合決定手段と、
前記強制度合いの条件に対応して前記異なる動作を実行する変化部分を選択して前記プログラムを実行するロボットと、
を備えることを特徴とする。
【0020】
本発明の第2の観点に係るコミュニケーションロボット制御方法は、
人の行動を表す情報を取得する行動認識ステップと、
前記人の行動を表す情報に基づいて、前記人に情報を伝達するプログラムを実行するときの強制度合いの条件を決定する強制度合決定ステップと、
人に情報を伝達する動作をロボットに実行させるプログラムであって、前記人に情報を伝達する動作を実行するときの強制度合いの条件に対応して異なる動作を実行する変化部分を有する前記プログラムを、前記強制度合決定ステップで決定した強制度合いの条件に対応して前記異なる変化部分を選択して、前記ロボットに実行させる情報伝達ステップと、
を備えることを特徴とする。
【0021】
本発明の第3の観点に係るコミュニケーションロボットプログラムは、
コンピュータに、
人の行動を表す情報を取得する行動認識ステップと、
前記人の行動を表す情報に基づいて、前記人に情報を伝達するプログラムを実行するときの強制度合いの条件を決定する強制度合決定ステップと、
人に情報を伝達する動作をロボットに実行させるプログラムであって、前記人に情報を伝達する動作を実行するときの強制度合いの条件に対応して異なる動作を実行する変化部分を有する前記プログラムを、前記強制度合決定ステップで決定した強制度合いの条件に対応して前記異なる変化部分を選択して、前記ロボットに実行させる情報伝達ステップと、を実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明のコミュニケーションロボットシステムによれば、人に情報を伝達する動作を実行するときの強制度合いの条件に対応して異なる動作を実行することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明でタスクとは、ロボットに実行させる動作であって、対象のユーザに情報を伝達する動作のことをいう。ユーザの行動を認識し対応するタスクをロボットが実行することで、ユーザがロボットにインタラクションをもつようになる。タスク内容とは、そのタスクを実行するロボットの具体的な動作をいう。例えば、タスクは、おじぎをすることであり、タスク内容は、30度の傾きで3秒停止するおじぎをすることのように、タスクを実施する具体的なやり方を含む。
【0024】
強制度合いとは、コミュニケーションの性質を用いて印象を操作することで、話者がある目的をどの程度対話相手に対して強制したいかを示す度合いのことで、強制したい内容には、依頼、説得、命令、警告といった目的で、対面コミュニケーションを円滑化する内容を含む。コミュニケーションにより感じる印象の1つに上下関係がある。上下関係とは、人と人の対面コミュニケーションにおける力関係のことで、例えば、相手を見上げることで強い人や優れた人に感じたり、相手に見下げられることで取るに足らない人のように感じられる。ここでは、人と人のコミュニケーションの他に、人とロボット部のコミュニケーションも含む。他に、コミュニケーションをとる相手との距離により感じる感覚の差もある。パーソナル・スペースと呼ばれ、社交的な関係は120cm〜360cmの空間があれば、また親密な関係であれば45cm以内であっても、不快感を感じないとされる。
【0025】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付す。
【0026】
(実施の形態)
図1は、本発明の実施の形態に係るロボットのコミュニケーションロボットシステム全体の構成例を示すブロック図である。コミュニケーションロボットシステム1は、基本条件DB(database)2、制御装置12、入力部7およびロボット部8から構成される。制御装置12は、タスク決定部3と、強制度合決定部4と、行動認識部5と、実行部6とを備える。コミュニケーションロボットシステム1は、これらタスク決定部3、強制度合決定部4、行動認識部5および実行部6が自立的に行動可能に動作するよう、制御部21(図12参照)で動作するプログラム30で実現される。
【0027】
基本条件DB2は、ユーザの行動に対応するロボットのタスクおよびタスク内容などのプログラムを含むファイルを保存する。
【0028】
タスク決定部3は、ユーザの行動と、基本条件DB2のファイルを照合し、タスクを抽出する。また、タスク決定部3に備えられた強制度合決定部4で、タスク内容を決定する。強制度合決定部4は、基本条件DB2から抽出したタスクをもとに、ユーザに対応した強制度合いを決定する。例えば強制度合いのレベルが5段階に分けられており、レベルにより、依頼や命令、指示などの行動パターンがある。ユーザの行動からレベルを選択し、そのレベルに対応したタスクを行うときの行動パターンが予め設定されており、タスク内容が決定する。
【0029】
行動認識部5は、ユーザの行動を認識する。キーボードやタッチパネル、または音声マイクなどの入力部7に、ユーザもしくは第3者が情報を入力する。行動認識部5は、その入力された情報を受け、基本条件DB2に情報があるか照合を行う。基本条件DB2に記載されている情報であれば、ユーザの行動を認識できる。
【0030】
実行部6は、タスク決定部3で決定したタスクを実行するための指示を、ロボット部8へ送信する。具体的には、実行部6の指示により、ロボット部8は手足を動かしたり、顔の表情を変化させたり、を行う。また、ロボット部8の背が高低するなどの外観形状を変化させることや、これらの動きを単独もしくは組み合わせて実行させることもある。
【0031】
以下に、図1の構成図および図2と図3のフローチャート、図4と図5のロボットの実行に関する図を参照して、本実施の形態の全体の動作について説明する。図2は、本発明の実施の形態に係るロボットの行動抽出を示すフローチャートである。図3は、本発明の実施の形態に係るロボットのタスク実行を示すフローチャートである。
【0032】
コミュニケーションロボットシステム1は、ユーザの行動を抽出し、ユーザの行動に対応して、ユーザの行動を支援するタスクを行う。まず、図2を参照して、ユーザの行動抽出を行う。
【0033】
ユーザもしくは第3者が、キーボードなどの入力部7を用いて、ユーザの行動を入力する。行動認識部5は、入力された情報を受け、ユーザの行動を検知する(ステップS11)。行動認識部5は検知した情報を基本条件DB2に入力し、基本条件DB2内の、記憶されているユーザの行動と照合を行う(ステップS12)。予めユーザの行動を記憶している基本条件DB2に、入力されたユーザの行動があれば(ステップS13;YES)、行動認識部5はユーザ行動の決定をする(ステップS14)。そして、新たに、ユーザなどによりユーザの行動が入力された場合、ステップS11に戻る。
【0034】
ステップS12で、ユーザの行動と、基本条件DB2の情報を照合した際に、ユーザの行動がない場合(ステップS13;NO)は、行動認識部5はユーザ行動の決定をせず、ステップS11に戻る。このとき、ユーザの行動が基本条件DB2にないことを知らせる機能をプログラムしておいてもよい。
【0035】
次に、図3を参照して、コミュニケーションロボットシステム1のタスク実行を行う。まず、行動認識部5は、ユーザの行動抽出を行う(ステップS21)。行動認識部5は決定したユーザ行動を基本条件DB2へ入力し、ユーザ行動に対応するタスクの抽出を行う(ステップS22)。強制度合決定部4は、ユーザの行動からレベルを選択し、強制度合いを決定する(ステップS23)。レベルに合わせたタスク内容が抽出され、タスク決定部3はタスク内容を決定する(ステップS24)。実行部6はロボット部8に決定したタスク内容を出力し、ロボット部8は決定したタスク内容の動作を実行する(ステップS25)。
【0036】
次に抽出する行動があれば(ステップS26;YES)、ステップS21に戻り、再度、タスク内容の決定を行い、決定したタスクを実行する。また、次に抽出する行動がなければ(ステップS26;NO)、タスク実行動作は終了となる。
【0037】
図4と図5を用いて、強制度合いを決定する場合の一例について、ユーザが子供であり、その母親がユーザ(子供)の行動の入力を行う場合を例に挙げて説明する。図4は、本発明の実施の形態に係るロボットの強制度合い決定を示す図の一例で、強制度合いとロボットの実行の関係を示す。図5は、本発明の実施の形態に係るロボットの動きの一例で、ロボットの実行において、顔の表情が異なる場合を示す。図5(a)は笑顔、図5(b)は普通の顔、図5(c)は怒り顔を示す。実行部6の指示により、まゆの位置と口の向きを変化させ、表情を作る。
【0038】
タスクの強制度合いを決定する際に、母親がユーザ(子供)の行動を、入力部7で入力する。そのときに、ロボット部8の実行に関する情報も併せて入力しておく。上下関係とは、ここではユーザからロボットへ対する感情についてであり、ユーザがロボットを先生のように感じている場合は上、友達のように感じている場合は中、ペットのように感じている場合は下と、3段階のレベルで入力しておく。ユーザは帰宅して宿題をする必要がある場合に、母親が、ユーザが宿題をすることと、上下関係の選択を中であること、宿題をして欲しいこと(依頼)を入力部7で入力する。
【0039】
タスク決定部3は、タスクが宿題をさせることであることを、行動認識部5から出力された情報より認識する。強制度合決定部4は、行動認識部5から出力された情報より、強制度合いについて、上下関係は中の依頼という選択肢を選択し、実行部6へ情報を出力する。図4の表より、ロボット部8はタスクを笑顔で実行することが決定する。図5(a)の笑顔となるように、実行部6はロボット部8へ、まゆの位置と口の角度の変化を指示し、ロボット部8は笑顔となる。それからユーザに対して、宿題することを伝える。もし母親が宿題するように命令することを入力した場合は、ロボット部8は怒り顔でタスクを実行する。
【0040】
タスク内容に、音声出力の項目がある場合は、依頼では声の大きさを普通で口調をゆっくりとする、命令では声の大きさを大きめで口調を早めにする、などの設定に合わせてタスクを実行する。また、タスク内容に、手の動きの項目がある場合は、依頼では手の位置を下にする、命令では手の位置を上にする、などの設定に合わせてタスクを実行する。顔の表情や音声の大きさ、手の位置などにより、ロボット部8がユーザへ与える印象を操作することが可能である。これらタスク内容は、予め基本条件DB2に入力しておいたものであり、動きを単独、もしくは組み合わせて用いることで、ユーザへ与える印象を操作できる。
【0041】
以上説明したように、実施の形態では、ユーザおよびユーザの行動に対応するタスクを実行するコミュニケーションロボットシステムを実現できる。ユーザの行動に対応し、かつ、ロボットに対するユーザの印象(上下関係など)を利用することで、ユーザに適した強制度合いのタスクを実行することが可能となる。
【0042】
(実施の形態の変形例1)
図6は、実施の形態の変形例1に係るロボットのコミュニケーションロボットシステム全体の構成例を示すブロック図である。人とロボット間の距離や人からロボットへの視線角度を測定し、強制度合いの判定に用いる部分を備える。図7は、実施の形態の変形例1に係るロボットと人との関係を示す一例であり、図7(a)は視線角度を示し、図7(b)は距離を示す。
【0043】
コミュニケーションロボットシステム1は、図1に示す実施の形態のコミュニケーションロボットシステム1と基本的な構造は同じであるが、さらに、計測部9と検知部10とを備える。
【0044】
計測部9は、人とロボットの距離や視線角度を測定する。センサやカメラなどの検知部10で、人とロボットの距離や、位置関係を検知し、検知した情報をもとに、計測部9で、距離や視線角度を算出する。より具体的には、ビデオカメラや加速度センサなどの検知部10で瞳孔や顔の向きを検出し、計測部9でユーザのロボット部8への視線角度を算出する。ビデオカメラや音波センサなどの検知部10で対象物体の距離計測やビデオカメラを用いた対象物体の3次元位置計測をし、計測部9でユーザとロボット部8との対人距離を算出する。検知部10を備える場所は、ロボット部8側に限らずに、ユーザが何らかの形(例えば携帯電話などのような小型機器)で携帯してもよい。
【0045】
人とロボットの距離は、パーソナル・スペースと呼ばれるコミュニケーションをとる相手との物理的な距離に関係する。通常は人と人との距離に用いられるものであり、対象がロボットの場合は、人に対する場合よりも不快感を感じることは少ない。ここでは、距離が近い場合は親密な関係を感じ、遠くなるにつれ、社会的(社交的や公式的)な関係を感じることを利用して、強制度合いを変化させる項目の1つに用いる。
【0046】
例えば、ユーザに対してタスクを実行する際に、ロボット部8が実行するタスクが依頼形式であれば、ユーザが親密な感じを受けやすい45cm程の距離で、タスクを実行する。
また、ロボット部8が実行するタスクが命令形式であれば、同じ45cm程の距離だとユーザに威圧感を与える恐れがあるため、70cm程の距離でタスクを実行する。タスクを実行する際に、顔の表情だけでなく、ユーザとロボット部8との距離をタスク内容に盛り込むことで、ユーザに与える印象を操作する効果がある。
【0047】
人からロボットへの視線角度は、コミュニケーションをとる相手との上下関係と関係がある。見上げる行為には相手を上位として捉え、見下げる行為には相手を下位として捉えることが多い。ロボット部8の形状を、背を高低させて変化させることで、ユーザがロボットに対して感じる感覚(上下関係)を変化させ、コミュニケーションに役に立てるのに用いる。
【0048】
図8は、実施の形態の変形例1に係るロボットの強制度合い決定を示す図の一例で、視線角度と上下関係をパラメータに用いる。θは視線角度を示し、Nは角度の閾値を示す。水平を見たときの角度を0度とし、見上げる方向を正、見下げる方向を負とおき、その角度をθとする。
【0049】
上下関係は、ユーザがロボットを親、大人、子供として捉えることを指し、視線の角度により、相手を上、同等および下のいずれかに感じることを利用している。設定する上下関係を維持させるために、検知部10で検知し、計測部9にて算出した視線角度を元に、強制度合決定部4で判定が行われる。実行部6は、上下関係にふさわしい視線角度となる背の高さになるようロボットの高さを変化する。
【0050】
図9は、ロボットの高さが異なる場合の一例であり、図9(a)はユーザの0.5倍、図9(b)はユーザの0.8倍、図9(c)はユーザの1.0倍の大きさを示す。ユーザに対してロボットの高さを、ユーザの0.5倍とした場合は子供、0.8倍とした場合は大人、1.0倍とした場合は親であるとプログラムしておき、適したサイズにロボットの高さを変化させる。
【0051】
ロボット部8の胴体部の作りは、入れ子になった筒状の外形をしており、内部に備えられたロボット部8の高さを変える機構により胴体部の長さを変化させる。ロボット部8の頭部はロボット部8の胴体部の上に備えられており、ロボット部8は胴体部が伸縮し、プログラムされた所定の高さに変化させることができる。ロボット部8の高さを変える機構としては、例えば、空気圧を用いるシリンダや、回転するねじとナットの嵌合によるねじ送り機構などが挙げられる。その他、ラック・アンド・ピニオンやパンタグラフなどの伸縮機構を採用することができる。また、ロボット部8の高さを変える部分も胴体部に限らずにさまざまな部位が挙げられる。
【0052】
実行部6で高さを高低させた場合、再度、検知部10で検知し、計測部9で算出し、好ましい角度(閾値内)となるか、強制度合決定部4で判定することが望ましい。
【0053】
なお、視線角度や距離を計測するための検知部10は、ロボット部8に備えられていてもよく、コミュニケーションロボットシステム1とは離れた場所に設置し、無線通信などでデータを取得できるようにしてもよい。
【0054】
以上説明したように、実施の形態の変形例1では、ユーザのロボット部8へ対する印象を変え、ロボット部8の実行するタスクが、よりユーザに適したものとなる。ユーザがロボット部8に対して感じる印象は、人それぞれに異なるものであるが、上下関係や距離間を変化させることで、意図する印象を与えることは可能である。再度、入力部7を用いるなどして強制度合決定部4による強制度合いの変化の指示を行わない場合であっても、距離またはおよび視線角度を測定することで、ロボット部8は、ユーザに適したタスクを実行することができる。
【0055】
(実施の形態の変形例2)
図10は、実施の形態の変形例2に係るロボットの一例で、ロボットは仮想物体形状である場合(すなわち表示装置に表示される場合)を示す。仮想物体形状は表示されたクマの絵で、図10(a)は依頼や指示のときに使用される画面、図10(b)は命令や警告のときに使用される画面の一例である。
【0056】
ロボット部8は、擬人化された人形のように、物理的に存在するものに限らず、図10に示すような、仮想物体形状であってもよい。表示装置に仮想物体を表示するだけでなく、タスク内容を文字で表示したり、音声で出力したりなど、表示の方法は様々である。また、入力部7は、表示装置付近にカメラなどの検知部10を備え、ユーザの注視方向を確認してもよい。
【0057】
以上説明したように、実施の形態の変形例2では、表示装置を用いて、ロボット部8はタスクを実行する。表示装置による仮想物体形状の場合、パソコンのディスプレイなどに表示することができ、実体があって作動する機械構造を用意する必要がなく、コミュニケーションロボットシステム1を容易に利用できる。ロボット部8が作動する機械構造を備えない場合、そのものの形状を変化させることはできないが、仮想物体形状としてのロボット部8の動作の種類を多くしたり、画面表示上の大きさを自由に変えたりできる。また、ユーザの好みのキャラクターをモチーフにするなどして、ユーザに適したタスクを実行することができる。
【0058】
ロボット部8の動作は、実施の形態の変形例1、2に示す方法だけでなく、様々な方法がある。ロボット部8が実在する形状のものと表示装置(仮想物体形状)の両方であってもよく、実在する形状のもので手足の動作をし、表示装置で言葉を表示するなどして、併せてロボット部8としてもよい。また、ロボット部8の変形は、背の高低だけでなく、太さや丸みなどの形状を変化させてもよい。丸みのある形状は優しい印象を与えたり、太さは威圧感を与えたりなど、ユーザのロボット部8への印象を変化させることができる。
【0059】
(実施の形態の変形例3)
図11は、実施の形態の変形例3に係るロボットのコミュニケーションロボットシステム全体の構成例を示すブロック図である。基本条件DB2に、ユーザの性格を示す性格条件DB11を備える。
【0060】
性格条件DB11は、交流分析における人格に関する理論などを用いて推定されたユーザの性格に関する情報を格納している。ユーザの性格に関する情報とは、あるユーザが属する人格タイプとある人格タイプに適したタスクの強制度合の程度である。
【0061】
タスク決定部3は、行動認識部5で認識した行動に合わせたタスクを基本条件DB2から抽出し、同時に、ユーザの性格条件を性格条件DB11から抽出する。タスク決定部3は、強制度合決定部4でタスクの強制度合いを選択する際に、性格条件DB11のユーザの性格に関する情報を照合し、適したタスク内容を決定する。ユーザの性格に合わせて、依頼・命令・指示などの情報伝達の仕方や、上下関係を変化させることで、ユーザに適した強制度合いを選択することができ、タスク決定部3はユーザの個性に合わせたタスク内容を決定することが可能となる。
【0062】
実施の形態の変形例3を用いた例として、ユーザの行動がダイエットのときに、基本条件DB2から抽出されるタスクはユーザの間食を防止することであり、コミュニケーションロボットシステム1がタスクを実行する様子を説明する。
【0063】
予め、性格条件DB11に、交流分析における人格に関する理論などを用いて推定されたユーザの性格に関する情報を格納している。この理論を用いて、人間の心の構造を批判的な親心、養育的親心、合理的な大人の心、無邪気な子供の心、順応した子供の心の5つに大別し、人格に関するアンケートを用いて5つの心の中のどれが優位であるか傾向を見ることで、人間の性格を推定できる。
【0064】
例えば、あるユーザの人格に関するアンケートの結果、批判的な親心と順応した子供の心がその他3つの心の構造に比べ優位であれば、そのユーザの性格は理屈タイプであると推定され、説得のためには理屈を重視すべきであると考えられている。また、他のユーザの人格に関するアンケートの結果、順応した子供の心がその他4つの心の構造に比べ優位であれば、そのユーザの性格は自己卑下タイプであると推定され、説得のためには命令を重視すべきであると考えられている。
【0065】
ユーザの性格に関する情報とは、上記のアンケートの結果を予め入力したユーザが属する人格タイプと交流分析の理論に基づいた人格タイプに適したタスクの強制度合の程度である。強制度合決定部4は、性格条件DB11を参照し、ユーザの性格に応じて、ユーザが間食を取ろうした際に間食を食べないように説得するタスクに適したタスクの強制度合を決定し、タスク決定部3へ強制度合いを出力する。ユーザの性格が理屈タイプであれば説得が有効であり、ユーザの性格が自己卑下タイプであれば命令が有効である。
【0066】
以上説明したように、実施の形態の変形例3では、それぞれのユーザに対応したタスクを実行するコミュニケーションロボットシステム1を提供できる。同じ行動を認識した場合であっても、その行動を行うユーザに合わせたタスク内容を選択できる。なお、タスク決定部3でタスク内容を決定する際に、性格条件DB11の性格に関する情報だけでなく、計測部9の距離や視線角度の情報をあわせてもよく、よりユーザに適したタスク内容を選択できる。
【0067】
実施の形態において、コミュニケーションロボットシステム1のタスク決定部3で決定したタスク内容をロボット部8は実行し、ユーザに情報を伝達し、その情報によりユーザは行動する。ロボット部8により伝達した情報を受けて行動した事を、コミュニケーションロボットシステム1が、認識するシステムを備えてもよい。例えば、ユーザは行動を終えた場合に、ロボット部8に備えたセンサに触れたり、また、入力部7から行動を終了したことを入力し、コミュニケーションロボットシステム1は行動の終了を認識する。
【0068】
コミュニケーションロボットシステム1は行動終了を認識するまで、ロボット部8がタスク内容を繰り返し実行するようにプログラムしてもよい。また、タスクを繰り返し実行する場合に、タスクの強制度合いのレベルが徐々に厳しくなるようにプログラムしてもよい。例えば、ロボット部8が大きくなっていったり、表情が怖くなっていったり、音声が大きくなったりするなどして、依頼から命令へ情報の伝達の仕方が変化する。このように強制度合いが変化することにより、ユーザへ与える印象を変化させることが可能である。
【0069】
図12は、図1、図6または図11に示す制御装置12および基本条件DB2のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。制御装置12および基本条件DB2は、図12に示すように、制御部21、主記憶部22、外部記憶部23、操作部24、表示部25、入出力部26および送受信部27から構成される。主記憶部22、外部記憶部23、操作部24、表示部25、入出力部26および送受信部27はいずれも内部バス20を介して制御部21に接続されている。
【0070】
制御部21はCPU(Central Processing Unit)等から構成され、外部記憶部23に記憶されている制御プログラム30に従って、コミュニケーションロボットシステム1はタスク決定部3、行動認識部5、実行部6の各処理を実行する。
【0071】
主記憶部22はRAM(Random-Access Memory)等から構成され、外部記憶部23に記憶されている制御プログラム30をロードし、制御部21の作業領域として用いられる。
【0072】
外部記憶部23は、フラッシュメモリ、ハードディスク、DVD−RAM(Digital Versatile Disc Random-Access Memory)、DVD−RW(Digital Versatile Disc ReWritable)等の不揮発性メモリから構成され、コミュニケーションロボットシステム1の処理を制御部21に行わせるためのプログラムを予め記憶し、また、制御部21の指示に従って、このプログラムが記憶するデータを制御部21に供給し、制御部21から供給されたデータを記憶する。図1の基本条件DB2は、外部記憶部23に構成される。
【0073】
操作部24はキーボード及びマウスなどのポインティングデバイス等と、キーボード及びポインティングデバイス等を内部バス20に接続するインターフェース装置から構成されている。図1の入力部7を含む。操作部24を介して、接触情報の判定条件などが入力され、制御部21に供給される。
【0074】
表示部25は、CRT(Cathode Ray Tube)又はLCD(Liquid Crystal Display)などから構成され、図1のロボット部8が仮想物体形状である場合などに、ロボット部8を表示する。ロボット部8以外にも、タスク内容などを表示したり、コミュニケーションロボットシステム1の設定画面などの表示も行う。
【0075】
入出力部26は、シリアルインタフェースまたはパラレルインタフェースから構成されている。入出力部26は、ロボット部8のセンサとアクチュエータが接続する。センサやカメラなどの検知部10が附属する装置の場合や、表示装置型のロボット部8の場合は、それと接続する。さらに、音声、画像または映像などの情報を関連づけて入出力する場合は、それらの音声入力装置、画像入力装置なども接続する。
【0076】
送受信部27は、ネットワークに接続する網終端装置または無線通信装置、及びそれらと接続するシリアルインタフェース又はLAN(Local Area Network)インタフェースから構成されている。送受信部27は、ネットワークを介して、基本条件DB2にユーザの行動と対応するタスクなど、または性格条件DB11のデータを送受信し、データの登録などの際にも利用する。
【0077】
図1、図6または図11に示すコミュニケーションロボットシステム1のタスク決定部3、行動認識部5および実行部6の処理は、制御プログラム30が、制御部21、主記憶部22、外部記憶部23、操作部24、表示部25、入出力部26および送受信部27などを資源として用いて処理することによって実行する。
【0078】
その他、本発明の好適な変形として、以下の構成が含まれる。
【0079】
本発明の第1の観点に係る活動記録作成システムについて、
好ましくは、前記ロボットはその少なくとも一部が変形する構造を備え、
前記プログラムの変化部分は、前記強制度合いの条件に対応して、前記変形する構造を異なる変形度合いにする動作を含む、
ことを特徴とする。
【0080】
好ましくは、前記変形する構造は、前記ロボットの少なくともその長さの一部が変化することを含むことを特徴とする。
【0081】
好ましくは、前記行動認識手段は、前記人と前記ロボットの間の距離、または、前記人の視線角度を検出する手段を備え、
前記強制度合決定手段は、前記距離および/または前記視線角度に基づいて、前記強制度合いの条件を決定する、
ことを特徴とする。
【0082】
好ましくは、前記行動認識手段は、前記プログラムを実行する前と実行した後とで、それぞれ前記人の行動を表す情報を取得し比較する行動比較手段を備え、
前記強制度合い決定手段は、前記行動比較手段で比較した結果に基づいて、前記強制度合いの条件を決定する、
ことを特徴とする。
【0083】
好ましくは、前記人の性格を表す情報を取得する性格取得手段を備え、
前記強制度合決定手段は、前記人の行動を表す情報に加えて、前記人の性格を表す情報に基づいて、前記強制度合いの条件を決定する、
ことを特徴とする。
【0084】
好ましくは、表示装置を備え、
前記ロボットは、前記表示装置の画面に表示される仮想物体形状を伴う、
ことを特徴とする。
【0085】
本発明の第2の観点に係る活動記録作成方法について、
好ましくは、前記ロボットはその少なくとも一部が変形する構造を備え、
前記プログラムの変化部分は、前記強制度合いの条件に対応して、前記ロボットの前記変形する構造を異なる変形度合いにする動作を含み、
前記情報伝達ステップは、前記強制度合決定ステップで決定した強制度合いの条件に対応して、前記ロボットの前記変形する構造を異なる変形度合いにする動作を選択して、前記ロボットに実行させる、
ことを特徴とする。
【0086】
好ましくは、前記行動認識ステップは、前記人と前記ロボットの間の距離、または、前記人の視線角度を検出するステップを備え、
前記強制度合決定ステップは、前記距離および/または前記視線角度に基づいて、前記強制度合いの条件を決定する、
ことを特徴とする。
【0087】
好ましくは、前記行動認識ステップは、前記プログラムを実行する前と実行した後とで、それぞれ前記人の行動を表す情報を取得し比較する行動比較ステップを備え、
前記強制度合い決定ステップは、前記行動比較ステップで比較した結果に基づいて、前記強制度合いの条件を決定する、
ことを特徴とする。
【0088】
好ましくは、人の性格を表す情報を取得する、性格取得ステップを備え、
前記強制度合決定ステップは、前記人の行動を表す情報に加えて、前記人の性格を表す情報に基づいて、前記強制度合いの条件を決定する、
ことを特徴とする。
【0089】
その他、前記のハードウエア構成やフローチャートは一例であり、任意に変更および修正が可能である。
【0090】
基本条件DB2、タスク決定部3、強制度合決定部4、行動認識部5、実行部6等から構成されるロボットのコミュニケーション処理を行う中心となる部分は、専用のシステムによらず、通常のコンピュータシステムを用いて実現可能である。たとえば、前記の動作を実行するためのコンピュータプログラムを、コンピュータが読みとり可能な記録媒体(フレキシブルディスク、CD−ROM、DVD−ROM等)に格納して配布し、当該コンピュータプログラムをコンピュータにインストールすることにより、前記の処理を実行するコミュニケーションロボットシステムを構成してもよい。また、インターネット等の通信ネットワーク上のサーバ装置が有する記憶装置に当該コンピュータプログラムを格納しておき、通常のコンピュータシステムがダウンロード等することでコミュニケーションロボットシステムを構成してもよい。
【0091】
また、コミュニケーションロボットシステムを、OS(オペレーティングシステム)とアプリケーションプログラムの分担、またはOSとアプリケーションプログラムとの協働により実現する場合等には、アプリケーションプログラム部分のみを記録媒体や記憶装置に格納してもよい。
【0092】
また、搬送波にコンピュータプログラムを重畳し、通信ネットワークを介して配信することも可能である。たとえば、通信ネットワーク上の掲示板(BBS, Bulletin Board System)に前記コンピュータプログラムを掲示し、ネットワークを介して前記コンピュータプログラムを配信してもよい。そして、このコンピュータプログラムを起動し、OSの制御下で、他のアプリケーションプログラムと同様に実行することにより、前記の処理を実行できるように構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明によれば、コミュニケーションロボットがユーザへ与える印象を利用した、コミュニケーションロボットのユーザへのインタラクション行動の効果の高いコミュニケーションロボットシステムといった用途に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明の実施の形態に係るコミュニケーションロボットシステム全体の構成例を示すブロック図である。
【図2】実施の形態に係る行動抽出の動作の一例を示すフローチャートである。
【図3】実施の形態に係るタスク実行の動作の一例を示すフローチャートである。
【図4】基本条件DBに登録した強制度合の保存形式の一例を示す図である。
【図5】ロボット部の強制度合いの変化による動作の状態を表す例を示す図である。
【図6】実施の形態の変形例1に係るコミュニケーションロボットシステム全体の構成例を示すブロック図である。
【図7】人とロボット部の位置関係の一例を示す図である。(a)は人からロボット部への視線角度の検出を示す図であり、(b)は人とロボット部の距離の検出を示す図である。
【図8】ロボット部の強制度合いの変化による動作(ロボット部の形状)の状態を表す例を示す図である。
【図9】ロボット部の形状変化の一例を示す図である。
【図10】実施の形態の変形例2に係るロボット部の仮想物体形状の一例を示す図である。
【図11】実施の形態の変形例3に係るコミュニケーションロボットシステム全体の構成例を示すブロック図である。
【図12】実施の形態に係る制御装置および基本条件DBのハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0095】
1 コミュニケーションロボットシステム
2 基本条件DB
3 タスク決定部
4 強制度合決定部
5 行動認識部
6 実行部
7 入力部
8 ロボット部
9 計測部
10 検知部
11 性格条件DB
12 制御装置
21 制御部
22 主記憶部
23 外部記憶部
24 操作部
25 表示部
26 入出力部
27 送受信部
30 制御プログラム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人に情報を伝達する動作をロボットに実行させるプログラムであって、前記人に情報を伝達する動作を実行するときの強制度合いの条件に対応して異なる動作を実行する変化部分を有するプログラムを格納する記憶手段と、
人の行動を表す情報を取得する行動認識手段と、
前記行動認識手段で取得した人の行動を表す情報に基づいて、前記プログラムを実行するときの強制度合いの条件を決定する強制度合決定手段と、
前記強制度合いの条件に対応して前記異なる動作を実行する変化部分を選択して前記プログラムを実行するロボットと、
を備えることを特徴とするコミュニケーションロボットシステム。
【請求項2】
前記ロボットはその少なくとも一部が変形する構造を備え、
前記プログラムの変化部分は、前記強制度合いの条件に対応して、前記変形する構造を異なる変形度合いにする動作を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のコミュニケーションロボットシステム。
【請求項3】
前記変形する構造は、前記ロボットの少なくともその長さの一部が変化することを含むことを特徴とする請求項2に記載のコミュニケーションロボットシステム。
【請求項4】
前記行動認識手段は、前記人と前記ロボットの間の距離、または、前記人の視線角度を検出する手段を備え、
前記強制度合決定手段は、前記距離および/または前記視線角度に基づいて、前記強制度合いの条件を決定する、
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のコミュニケーションロボットシステム。
【請求項5】
前記行動認識手段は、前記プログラムを実行する前と実行した後とで、それぞれ前記人の行動を表す情報を取得し比較する行動比較手段を備え、
前記強制度合い決定手段は、前記行動比較手段で比較した結果に基づいて、前記強制度合いの条件を決定する、
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のコミュニケーションロボットシステム。
【請求項6】
前記人の性格を表す情報を取得する性格取得手段を備え、
前記強制度合決定手段は、前記人の行動を表す情報に加えて、前記人の性格を表す情報に基づいて、前記強制度合いの条件を決定する、
ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載のコミュニケーションロボットシステム。
【請求項7】
表示装置を備え、
前記ロボットは、前記表示装置の画面に表示される仮想物体形状を伴う、
ことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載のコミュニケーションロボットシステム。
【請求項8】
人の行動を表す情報を取得する行動認識ステップと、
前記人の行動を表す情報に基づいて、前記人に情報を伝達するプログラムを実行するときの強制度合いの条件を決定する強制度合決定ステップと、
人に情報を伝達する動作をロボットに実行させるプログラムであって、前記人に情報を伝達する動作を実行するときの強制度合いの条件に対応して異なる動作を実行する変化部分を有する前記プログラムを、前記強制度合決定ステップで決定した強制度合いの条件に対応して前記異なる変化部分を選択して、前記ロボットに実行させる情報伝達ステップと、
を備えることを特徴とするコミュニケーションロボット制御方法。
【請求項9】
前記ロボットはその少なくとも一部が変形する構造を備え、
前記プログラムの変化部分は、前記強制度合いの条件に対応して、前記ロボットの前記変形する構造を異なる変形度合いにする動作を含み、
前記情報伝達ステップは、前記強制度合決定ステップで決定した強制度合いの条件に対応して、前記ロボットの前記変形する構造を異なる変形度合いにする動作を選択して、前記ロボットに実行させる、
ことを特徴とする請求項8に記載のコミュニケーションロボット制御方法。
【請求項10】
前記行動認識ステップは、前記人と前記ロボットの間の距離、または、前記人の視線角度を検出するステップを備え、
前記強制度合決定ステップは、前記距離および/または前記視線角度に基づいて、前記強制度合いの条件を決定する、
ことを特徴とする請求項8または9に記載のコミュニケーションロボット制御方法。
【請求項11】
前記行動認識ステップは、前記プログラムを実行する前と実行した後とで、それぞれ前記人の行動を表す情報を取得し比較する行動比較ステップを備え、
前記強制度合い決定ステップは、前記行動比較ステップで比較した結果に基づいて、前記強制度合いの条件を決定する、
ことを特徴とする請求項8ないし10のいずれか1項に記載のコミュニケーションロボット制御方法。
【請求項12】
人の性格を表す情報を取得する、性格取得ステップを備え、
前記強制度合決定ステップは、前記人の行動を表す情報に加えて、前記人の性格を表す情報に基づいて、前記強制度合いの条件を決定する、
ことを特徴とする請求項8ないし11のいずれか1項に記載のコミュニケーションロボット制御方法。
【請求項13】
コンピュータに、
人の行動を表す情報を取得する行動認識ステップと、
前記人の行動を表す情報に基づいて、前記人に情報を伝達するプログラムを実行するときの強制度合いの条件を決定する強制度合決定ステップと、
人に情報を伝達する動作をロボットに実行させるプログラムであって、前記人に情報を伝達する動作を実行するときの強制度合いの条件に対応して異なる動作を実行する変化部分を有する前記プログラムを、前記強制度合決定ステップで決定した強制度合いの条件に対応して前記異なる変化部分を選択して、前記ロボットに実行させる情報伝達ステップと、を実行させることを特徴とするコミュニケーションロボットプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−110862(P2010−110862A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−285692(P2008−285692)
【出願日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】