説明

コンクリート部材の結合装置

【課題】 コンクリート部材を結合することによって、結合箇所に圧接に基く結合力を発生させ、結合箇所に引き離す外力が働いたときにその外力に対抗し得るものとする。
【解決手段】 コンクリート部材を所定の位置に結合するための装置について、コンクリート部材11、12の結合箇所に凹部13、14を有し、凹部13、14は、結合箇所からコンクリート部材11、12の内方に向かって先細状に形成され、結合のためにコンクリート部材11、12を誘導可能なガイド斜面18、19を有しており、かつまた、コンクリート部材11、12の結合箇所である凹部13、14に嵌合する形状及び中空構造を持つ結合具15を有し、結合具15は、コンクリート部材11、12の接近又は接触により上記凹部内にて加圧されることにより変形し、凹部13、14の内壁面に圧接状態となるか或いは結合具内部に配置される軸体25、26に圧接状態になる外向きか或いは内向きの突部23、24を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート部材を所定の位置にて結合するための装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ブロック状のコンクリート製品によって構造物を構築する場合、構築要素のコンクリートブロックを何らかの手段、方法によって結合ないし連結する必要がある。そのための一つの技術として、カップルジョイント或いは結合ピンなどと通称されている部材を用い
て、上下のコンクリート部材を結合する方法が知られている。しかしその方法は、上下に重ねられたコンクリート部材の重なり面に部材を嵌め込むものであり、実質的に水平面内におけるずれ止めというのに等しい。また上下方向に力が加わった場合、コンクリート部材は殆んど抵抗なく離れてしまい結合力が働らかないものであった。このため左右に敷き並べられるコンクリート部材の連結の場合、結合力を期待できない従来のものは有効ではない。
【0003】
【特許文献1】特開平11−81207号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は前記の点に着目してなされたもので、その課題は、コンクリート部材を結合することによって、結合箇所に圧接に基く結合力を発生させ、結合箇所に引き離す外力が働いたときにその外力に対抗し得るようにすることである。また本発明の他の課題は、上下方向へのコンクリート部材の積み重ねにおいてはもちろんのこと、左右方向へ並べられるコンクリート部材においても、必要な圧接に基く結合力を結合箇所に発生させることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記の課題を解決するため本発明は、本発明は、コンクリート部材を所定の位置にて結合するための装置について、コンクリート部材の結合箇所に凹部を有し、凹部は、結合箇所からコンクリート部材の内方に向かって先細状に形成され、結合のためにコンクリート部材を誘導可能なガイド斜面を有しており、かつまた、コンクリート部材の結合箇所である凹部に嵌合する形状及び中空構造を持つ結合具を有し、結合具は、コンクリート部材の接近又は接触により上記凹部内にて加圧されることにより変形し、凹部の内壁面に圧接状態となるか或いは結合具内部に配置される軸体に圧接状態になる外向きか或いは内向きの突部を有しているという構成を具備している。
【0006】
本発明に係るコンクリート部材の結合装置は、コンクリート部材を所定の位置に結合するために使用される装置であり、1個のコンクリート部材を例えば基盤に据え付けるような場合にも適用される。ほかにコンクリート部材同士を結合する場合には、これを連結と呼んで区別するが、これは呼び方を変えているだけで結合の一種であるので、このようなコンクリート部材同士の結合についてはコンクリート部材の連結装置というのと同じことである。
【0007】
本発明に係るコンクリート部材の結合装置は、コンクリート部材の結合箇所に用意された凹部と、凹部に嵌合する形状、構造を持つ結合具とを有する。つまり凹部に結合具が入り込んで、圧接力を発生するものであり、その凹部は、結合箇所からコンクリート部材の内方へ向かって先細状に形成されていて、その先細状の部分はガイド斜面を有しており、結合具を誘導することができるようになっている。
【0008】
これに対する結合具は、凹部に嵌合する形状を有するとともに、中空構造を有してお
り、その中空構造部内に軸体が配置される。結合具は、コンクリート部材の接近又は接触により凹部内にて加圧されることにより変形し、この変形は結合具の外方又は内方に向けられる。即ち、変形により凹部の内壁面に圧接状態となるものが外向きの突部であり、変形により結合具内の軸体に圧接状態となるものが内向きの突部である。外向きにせよ内向きにせよ、突部は、結合具に加圧力が働いた場合に、最先に変形が生ずる容易変形部分として機能し、外径又は内径を増減するように設けられている。このような中空構造体の突部は、バルジ工法によって形成することが望ましい。
【0009】
結合具の具体的構成として必要なものは、中空構造及び外向きか或いは内向きの変形容易な突部であり、また先細状に形成されている凹部への誘導を容易にする先細状の端部である。そして、鼓型或いはラグビーボール型のように、両端を先細状に形成し、かつ中間部の胴周りに少なくとも2個の突部を環状に設けたものが、一つの典型的な形態である。この形態は図1或いは図3の実施例1或いは実施例2に例示されている。このように、鼓型或いはラグビー型のように対称形状を有するものは、両端の先細状の部分を、隣接するコンクリート部材の凹部に夫々嵌合させるためのものであり、従って隣接のコンクリート部材同士を誘導し、所定の位置にて連結することができる。
【0010】
コンクリート部材の結合箇所には、凹部の内壁面を構成する補強部材を設けることができる。この補強は、凹部がコンクリートのままである場合には、圧接に基く結合力によってコンクリート肌が削られ、圧接に基く結合力を伝えにくくなり所期の連結力を期待できなくなる可能性があるのを防止するために取られる措置である。この補強のための部材
は、コンクリート部材を型成形する際に、インサート部材として成形型に配置し、コンクリート打設後コンクリート部材と一体化するように形成することが望ましい。
【0011】
このようなコンクリート部材の結合装置を用いてコンクリート部材を結合ないし連結する場合、結合具がコンクリート部材の接近又は接触により加圧されることにより、外向き又は内向きの突部が変形し、凹部の内壁面に圧接して一体的な結合状態となる。コンクリート部材の接近又は接触による加圧力は、コンクリート部材を上下に積み重ねる場合には上部のコンクリート部材の自重による力である。またコンクリート部材を左右に敷き並べるような場合には、コンクリート部材同士を連結するボルトなどの締結力が結合具に加えられる加圧力となる。
【0012】
凹部内にて結合具の外向き又は内向きの突部が塑性変形し、外向きの突部は凹部の内壁面に圧接状態となり、また内向きの突部は軸体に圧接状態となり、夫々一体化する。このため、コンクリート部材を上下方向へ離そうとする外力、或いは左右方向へ離そうとする外力が働いても、その外力に圧接に基く結合力が対抗し得るので、従来のずれ止めと異なり縦連結、横連結のどちらについても、コンクリート部材に対して結合力が維持されることになる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は以上の如く構成されかつ作用するものであるから、コンクリート部材を結合することによって結合箇所に圧接に基く結合力を発揮させ、結合箇所に引き離す外力が働いたときにその外力に対抗して結合を維持することができ、しかもこの結合の維持は、上下に積み重ねたコンクリート部材については勿論のこと、左右に並設されたコンクリート部材についても期待することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下図示の実施形態を参照して本発明をより詳細に説明する。図1、図2は本発明の実施形態の例1を示しており、10は本発明に係る結合装置であって、上下コンクリート部材11、12の結合箇所に設けられた凹部13,14と、そこに嵌合する中空構造を持つ結合具15とから成る。例示の凹部13、14には補強部材16、17が一体に設けられており、その内壁面に圧接可能な外向きの突部が結合具15の周囲に2条所定の間隔で形成されている。
【0015】
補強部材16、17は、凹部13、14のコンクリート表面を覆うとともに、凹部13、14と同様コンクリート部材11、12の内方に向かって先細状に形成され、結合のためにコンクリート部材11、12を誘導するガイド斜面18、19を有している。ガイド斜面18、19に到る補強部材16、17の入口部は平行な円筒面から成っている。
【0016】
また結合具15は、隣接するコンクリート部材11、12の補強部材16、17の内部に収まる外径と補強部材16、17の深さの和より大きい長さを持ち、ほぼ鼓型の形状を有している。両端は先細状の結合端部21、22それらの中間は円筒状の胴部20になっており、胴部20と結合端部21、22の境に外向きの突部23、24がバルジ成形によって設けられている。図中、25、26は配筋である軸体を示すが、例1では使用されない。
【0017】
故に、施工の際には下位のコンクリート部材12の補強部材17の内部に結合具15を嵌めておき、それに対して上位のコンクリート部材11を、矢印で示すように、その補強部材16が結合具15の上部に被さるように下降させる。その際、結合具15の上部結合端部21はガイド斜面18に誘導され、凹部13側に正しく嵌合することとなる。上部コンクリート部材11が下部コンクリート部材12に接近すると、凹部13、14側の深さの和(具体的には補強部材16、17の内部の深さの和)よりも大きい上下寸法を有する結合具15は、上下から加圧されることになり、外向きの突部23、24が変形して外径が増大し、補強部材16、17の内壁面に圧接状態で食い込みを生じ、一体的に結合す
る。図2は上、下コンクリート部材11、12が接触している積み重ね状態を示してお
り、この状態で上部コンクリート部材11が持ち上げられようとしても、本発明に係る装置10により下部コンクリート部材12を一体化しているので、上部コンクリート部材11が下部コンクリート部材12から簡単に離れてしまうことはない。
【0018】
図3、図4は本発明の実施形態の例2を示しており、上、下コンクリート部材11、12には凹部13、14のみが型成形の際に形成されており、また結合具35については内向きの突部33、34を有するものとされている点で実施例1のものと相違している。結合具35は凹部13、14内に収まる外径と、上、下コンクリート部材11、12の凹部13、14の深さの和よりも大きい長さを持ち、例1と同様にほぼ鼓型の外形を有しているが、先細状の結合端部31、32と中央の胴部30との境界には内向きに突部33、34が設けられている。また、例2の場合はコンクリート部材11、12に設けられている配筋である軸体25、26が凹部13、14に突出しており、従ってこれらの軸体25、26が通過する小孔36、37を結合具35の結合端面に設けている。さらに軸体25、26の表面には、粗面38、39としておねじを切っており、内向きの突部33、34の食い込みによる結合力向上を図っている。
【0019】
例2による施工の場合も、下位のコンクリート部材12の凹部14に結合具35を嵌めておき、かつ軸体26が結合具35の中に下部小孔37から入り込んだ状態とし、その上で上部コンクリート部材11を下降させる。その際、軸体25の先端は結合具35の上部小孔36に入り込み、さらに上部コンクリート部材11が下部コンクリート部材12に接近すると、凹部13、14の深さよりも大きい上下寸法を有する結合具35は上下から加圧されることになり、内向きの突部33、34が変形して内方へ膨らみ内径を減少し、軸体25、26の結合具内に入り込んでいる粗面38、39に圧接して食い込みを生じ一体的に結合する。図4の状態であり、上、下コンクリート部材11、12は本装置10より一体化しているので、上部コンクリート部材を持ち上げようとしても簡単に離れてしまうことはない。
【0020】
図5、図6は本発明の実施形態の例3を示しており、また例1の変形例に該当する。即ち、例3は、補強部材16、17の開口端に内向きの突縁41、42を設けている点で例1と相違しており、突縁41、42は変形前の結合具15の外向きの突部23、24を通過させ得る内径を有している(図5)。上、下コンクリート部材11、12の接近により結合具15が変形し、突部23、24の外径が増大すると、補強部材16、17の開口端に設けられた内向きの突縁41、42の内径よりも大径となることにより、外向きの突部23、24が変形して外径が増大し、補強部材16、17の内壁面に圧接し、一体化するとともに、突縁41の内径よりも大径となるので、万が一内壁面の圧接部がずれ動いて
も、突縁41、42から抜け出ることができない。従って例1のものにおけるコンクリート部材11、12の連結をより確実なものとする。
【0021】
図7、図8は本発明の実施形態の例4を示しており、また例2の変形例に該当する。そこで例2の符号を援用して説明すると、例4は、軸体25、26の先端に鍔状の突縁43、44を設けている点で例2と相違しており、突縁43、44は、変形前の結合具35の内向きの突部33、34を通過させ得る外径を有している(図7)。上、下コンクリート部材11、12の接近により結合具35が変形し、突縁43、44の内径が縮小すると、軸体25、26の外周の粗面38、39に食い込み、結合一体化するとともに、鍔状の突部43、44の外径よりも小径となることにより、万が一粗面38、39との圧接がずれ動いても突縁43、44から抜け出すことはない。従って例4のものは例1におけるコンクリート部材11、12の連結をより確実なものとする。
【0022】
図9、図10は本発明の実施形態の例5を示しており、これまでの例と異なり、左右に敷き並べられるコンクリート部材51、52に本発明を適用した例である。例5の結合装置10′の場合、例1の結合装置10を横にしたものに相当するが、それだけではなく、配筋である軸体45、46を利用して結合具55の脱落防止ピン56を設け、左、右コンクリート部材51、52の接近、圧接まで正しく結合具55を保持する構成を有してい
る。53、54は凹部であり、インサート成形された補強部材57、58で覆われてい
る。例示の場合、脱落防止ピン56を設けている側の凹部54及び補強部材58の方は大型であり、結合具55も脱落防止ピン56との結合分だけ大型である。また、結合具55は外向きの突部63、64を有しているとともに、それらの間は両端よりも大径の中径部65となっており、両端は開口した状態になっている。
【0023】
例5の装置を用いて施工する場合、右コンクリート部材52の脱落防止ピン56に結合具55を固定しておき、左方に並べた左コンクリート部材51と結合箇所を一致させ、通り、レベルを確認して、左右コンクリート部材51、52の一方又は双方に外力を加えて接近させ、補強部材を57、58の深さの和よりも大きい長さの結合具55を加圧することにより変形を生じさせ、外向きの突部63、64を大径化することにより補強部材57、58の内壁面に圧接させ結合状態を作り出す(図10)。かくして、例5に示す左右並置コンクリート部材51、52についても、本発明の結合装置10′による結合力を適用した結合或いは連結を実施することができる。また、例5のような左右並置コンクリート部材51、52の結合装置10′についても、図3、図5、図7に示した例2、3、4と同様の変更を加えることが可能である。また本例5のものについても、凹部53、54又は補強部材57、58としてコンクリート部材51、52を誘導するために便宜なように構成することができる。
【0024】
なお、コンクリート部材11、12、51、52の接近、接触のための外力は上位コンクリート部材11の荷重を利用するほか、ボルト締結力やその他の圧縮力、加圧力より荷重を加えることで得ることができる。また、結合具15、55、補強部材16、17、57、58などは鋼材を基本とするが、変形して元に戻らない塑性を示す強靭な材料であれば鋼以外にも使用することができる。他の適当な材料は例えば熱硬化性或いは弾性を示すことが少ない樹脂材料である。
【産業上の利用可能性】
【0025】
コンクリート部材同様に重量のある鋼製部材の結合及び連結、鋼やコンクリート、木製部材その他の重量物の結合及び連結に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係るコンクリート部材の結合装置の実施形態の例1を示す変形前の断面図。
【図2】同上の変形後の断面図。
【図3】同じく例2を示す変形前の断面図
【図4】同上の変形後の断面図。
【図5】同じく例3を示す変形前の断面図。
【図6】同上の変形後の断面図。
【図7】同じく例4を示す変形前の断面図。
【図8】同上の変形後の断面図。
【図9】同上の例5を示す変形前の断面図。
【図10】同上の変形後の断面図。
【符号の説明】
【0027】
10、10′ 結合装置
11、12、51、52 コンクリート部材
13、14、53、54 凹部
15、35、55 結合具
16、17、57、58 補強部材
18、19 ガイド斜面
23、24、63、64 外向きの突部
25、26、45、46 軸体
33、34 内向きの突部
38、39 粗面
41、42 内向きの突縁
43、44 鍔状の突縁


【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート部材を所定の位置にて結合するための装置であって、コンクリート部材の結合箇所に凹部を有し、凹部は、結合箇所からコンクリート部材の内方に向かって先細状に形成され、結合のためにコンクリート部材を誘導可能なガイド斜面を有しており、かつまた、コンクリート部材の結合箇所である凹部に嵌合する形状及び中空構造を持つ結合具を有し、結合具は、コンクリート部材の接近又は接触により上記凹部内にて加圧されることにより変形し、凹部の内壁面に圧接状態となるか或いは結合具内部に配置される軸体に圧接状態になる外向きか或いは内向きの突部を有していることを特徴とするコンクリート部材の結合装置。
【請求項2】
コンクリート部材を誘導し、所定の位置にて結合するための装置は、隣接のコンクリート部材同士を、所定の位置にて連結するものである請求項1記載のコンクリート部材の結合装置。
【請求項3】
コンクリート部材の結合箇所には、凹部の内壁面を構成する補強部材がコンクリート部材の型成形の際にインサート部材として一体化している請求項1又は2記載のコンクリート部材の結合装置。
【請求項4】
補強部材は、開口端に内向きの突縁を有し、突縁は、変形前の外向きの突部を通過させ、変形後の突部を通過させない内径を有している請求項3記載のコンクリート部材の結合装置。
【請求項5】
軸体は、先端に鍔状の突縁を有し、突縁は、変形前の内向きの突部を通過させ、変形後の突部を通過させない外径を有している請求項1記載のコンクリート部材の結合装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−188826(P2006−188826A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−382055(P2004−382055)
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(398004688)株式会社アイ・アイ・ピー (7)
【出願人】(391034499)鶴見コンクリート株式会社 (15)
【Fターム(参考)】