説明

コンデンサ、電子部品、およびコンデンサの製造方法

【課題】大容量化および高耐電圧化を図るのに適したコンデンサ、電子部品、およびコンデンサの製造方法を提供すること。
【解決手段】複数のトレンチ11を有する基材1を備えるコンデンサA1であって、基材1は、少なくとも複数のトレンチ11を規定する部分が、絶縁材料からなり、複数のトレンチ11のうち互いに隣り合うトレンチ11の一方に収容された陽極2と、隣り合うトレンチ11の他方に収容された陰極3と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の凹部を有する基材を利用して形成されたコンデンサ、電子部品、およびコンデンサの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図25および図26は、一般的にトレンチと称される複数の凹部を有する基材を利用して形成されたコンデンサの従来例を示している。図25に示されたコンデンサX1には、複数のトレンチ90aが形成されたシリコン基板90が用いられている。トレンチ90aは、絶縁膜92によって覆われている。また、トレンチ90aには、電極93が収容されている。絶縁膜92は、シリコン基板90と電極93とに挟まれた格好となっている。シリコン基板90と電極93とに電圧を印加することにより、絶縁膜92を挟んで電荷が蓄えられる。
【0003】
図26に示されたコンデンサX2は、さらに、シリコン基板90と絶縁膜92との間に、導電膜91が介在している。コンデンサX2においては、導電膜91と電極93とに電圧を印加することにより、絶縁膜92を挟んで電荷が蓄えられる。
【0004】
コンデンサX1,X2においては、複数のトレンチ90aを形成することにより、シリコン基板90の表面積が増大されている。この目的は、絶縁膜92の面積を大きくすることにより、コンデンサX1,X2の大容量化を図ることである。また絶縁膜92を薄くするほど、コンデンサX1,X2は大容量となる。しかしながら、絶縁膜92を、その面積をより大きく、かつより薄く仕上げるほど、絶縁膜92に孔が発生するおそれが大きい。これにより、コンデンサX1,X2の漏れ電流が増大し、さらにはショートに至るという不具合が生じる。
【0005】
また、コンデンサX1,X2の耐電圧は、絶縁膜92によって決定される。大容量化を意図して絶縁膜92を不当に薄くしすぎると、耐電圧が著しく低下してしまうという問題がある。
【0006】
さらに、コンデンサX1,X2においてシリコン基板90の単位面積(または単位体積)あたりの静電容量を大きくするには、トレンチ90aの深さを深くすることが有効である。しかし、トレンチ90aを深くするほど、その内面を覆うように絶縁膜92を形成することが困難となる。たとえば、トレンチ90aの開口部付近のみが絶縁膜92に覆われ、トレンチ90aの最深部付近が絶縁膜92から露出するといった状態となりやすい。このようなことでは、コンデンサX1,X2はコンデンサとしての機能を正常に発揮することができない。したがって、絶縁膜92を適切に形成できる程度に、トレンチ90aの深さを浅くせざるを得なかった。
【0007】
【特許文献1】特開2006−261416号公報
【特許文献2】特開2004−228495号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、大容量化および高耐電圧化を図るのに適したコンデンサ、電子部品、およびコンデンサの製造方法を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の側面によって提供されるコンデンサは、複数の凹部を有する基材を備えるコンデンサであって、上記基材は、少なくとも上記複数の凹部を規定する部分が、絶縁材料からなり、上記複数の凹部のうち互いに隣り合う凹部の一方に収容された陽極と、上記隣り合う凹部の他方に収容された陰極と、を備えていることを特徴としている。
【0010】
このような構成によれば、上記基材のうち上記陽極と上記陰極とに挟まれた部分を、上記コンデンサの誘電体として機能させることができる。このため、上記複数の凹部の数を増やすことなどにより、上記コンデンサの大容量化を図ることが可能である。また、上記凹部の内面をたとえば誘電体膜によって隙間無く覆う必要がない。このため、上記凹部の深さを深くしても、漏れ電流の増大や、ショートの発生といった不具合が生じるおそれがない。
【0011】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記複数の凹部は、マトリクス状に配置されている。このような構成によれば、上記基材のうち誘電体として機能する部分の面積を増大させるのに適している。
【0012】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記複数の凹部は、その断面形状が三角形状または四角形状である。このような構成によれば、上記基材のうち上記複数の凹部に挟まれた壁状部分を、すべて誘電体として機能させることが可能である。これにより、上記コンデンサの容量を合理的に増やすことができる。
【0013】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記基材のうち少なくとも上記複数の凹部を規定する部分が、SiO2からなる。このような構成によれば、上記コンデンサの絶縁耐圧を高めるのに適している。
【0014】
本発明の第2の側面によって提供される電子部品は、本発明の第1の側面によって提供されるコンデンサと、上記基材によって支持されており、上記複数の凹部に収容された上記陽極どうしを導通させる陽極配線と、上記基材によって支持されており、上記複数の凹部に収容された上記陰極どうしを導通させる陰極配線と、を備えており、上記陽極配線および上記陰極配線の少なくともいずれかの一部によって、抵抗素子またはコイル素子が形成されていることを特徴としている。
【0015】
このような構成によれば、上記基材上にキャパシタと抵抗またはインダクタンスとを作りこむことが可能であり、様々な用途に沿った機能を発揮させることができる。
【0016】
本発明の第3の側面によって提供されるコンデンサの製造方法は、複数の凹部を有し、少なくとも上記複数の凹部を規定する部分が絶縁材料からなる基材を形成する工程と、上記複数の凹部のうち互いに隣り合う凹部の一方の内部に陽極を形成する工程と、上記隣り合う凹部の他方の内部に陰極を形成する工程と、を有することを特徴としている。
【0017】
このような構成によれば、上記凹部の内面に誘電体層を隙間無く形成するといった煩雑かつ不具合を生じやすい工程を経ることなく、大容量のコンデンサを製造することができる。
【0018】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記基材を形成する工程は、Si基板に複数の凹部を形成した後に、このSi基板のうち少なくとも上記複数の凹部を規定する部分を酸化させることによりSiO2とすることにより行う。このような構成によれば、たとえば上記Si基板に陽極酸化を利用した多孔質化処理を施すことにより、断面寸法に対する深さの比が顕著に大である上記凹部を形成することが可能である。これは、上記コンデンサの大容量化に好適である。
【0019】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の好ましい実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0021】
図1〜図5は、本発明に係るコンデンサおよび電子部品の第1実施形態を示している。本実施形態の電子部品B1は、基材1、複数の陽極2、複数の陰極3、絶縁膜41,42,43、陽極配線5、および陰極配線6を備えており、2つのコンデンサA1,A2と抵抗素子62とが作りこまれている。なお、図2においては、絶縁膜42,43、および陰極配線6を、図3においては、絶縁膜43を、それぞれ理解の便宜上省略している。
【0022】
基材1は、その大部分がSiO2からなる基板であり、Si基板を酸化させることにより形成される。この酸化処理において未処理となった部分が、図4および図5に示すようにSi領域15として残存している。基材1には、複数のトレンチ11が形成されている。図1〜図3によく表れているように、複数のトレンチ11は、マトリクス状に配置されている。トレンチ11は、断面形状が正方形状とされている。基材1のうち隣り合うトレンチ11どうしの間の部分は、壁12となっている。壁12は、コンデンサA1,A2において、誘電体として機能する部分である。本実施形態においては、基材1は、1mm角程度の大きさである。トレンチ11は、断面寸法が3μm角程度、深さが100〜200μm程度とされている。また、壁12は、その厚さが0.5μm程度とされている。
【0023】
複数の陽極2は、コンデンサA1,A2の一方の電極として機能するものであり、たとえばNiからなる。陽極2は、トレンチ11に収容されており、本実施形態においては、トレンチ11をほぼ完全に埋めている。複数の陽極2は、図4および図5のそれぞれに表れる方向において、配列された複数のトレンチ11の1個おきに形成されている。
【0024】
複数の陰極3は、コンデンサA1,A2の他方の電極として機能するものであり、たとえばNiからなる。陰極3は、トレンチ11に収容されており、本実施形態においては、トレンチ11をほぼ完全に埋めている。複数の陰極3は、図4および図5のそれぞれに表れる方向において、配列された複数のトレンチ11の1個おきに、陽極2を収容するトレンチ11の隣に位置するトレンチ11に形成されている。すなわち、図1〜図3によく表れているように、複数の陽極2と複数の陰極3とは、市松模様を構成する配置とされている。
【0025】
陽極配線5は、たとえばNiからなり、複数の陽極2どうしを導通させるものである。図4および図5に示すように、陽極配線5は、絶縁膜41上に形成されている。絶縁膜41は、たとえばSiO2からなり、複数の陰極3と陽極配線5とが不当に導通することを防止するためのものである。絶縁膜41には、複数の孔44が形成されている。複数の孔44は、複数の陽極2と重なる位置に設けられている。複数の孔44を通して、複数の陽極2と陽極配線5とが導通している。
【0026】
図2に示すように、陽極配線5は、コンデンサA1を構成する複数の陽極2どうしを導通させる矩形状部分と、コンデンサA2を構成する複数の陽極2どうしを導通させる矩形状部分と、これらの矩形状部分を連結するL字状部分とを有する形状とされている。
【0027】
陰極配線6は、たとえばNiからなり、複数の陰極3どうしを導通させるものである。図4および図5に示すように、陰極配線6は、絶縁膜42上に形成されている。絶縁膜42は、たとえばSiO2からなり、陽極配線5と陰極配線6とが不当に導通することを防止するためのものである。陽極配線5には、複数の孔45が形成されている。複数の孔45は、複数の陰極3と重なる位置に設けられている。複数の孔45の内面は、絶縁膜42によって覆われている。また、絶縁膜42には、複数の孔46が形成されている。複数の孔46は、絶縁膜42のうち孔45を埋める部分に形成されている。すなわち、孔45,46は、中心を同じくする二重孔となっている。複数の孔46を通して、複数の陰極3と陰極配線6とが導通している。
【0028】
図3に示すように、陰極配線6は、コンデンサA1を構成する複数の陰極3どうしを導通させる矩形状部分と、コンデンサA2を構成する複数の陰極3どうしを導通させる部分と、抵抗素子62を構成する部分とを有している。抵抗素子62は、陰極配線6のうち蛇行する帯状部分によって形成されている。
【0029】
絶縁膜43は、陰極配線6を覆っており、たとえばSiO2からなる。絶縁膜43には、窓47,48が形成されている。図4に示すように、窓47は、絶縁膜42,43を貫通しており、陽極配線5の一部を露出させている。この露出部分が、陽極パッド51とされている。一方、図5に示すように、窓48は、陰極配線6の一部を露出させている。この露出部分が、陰極パッド61とされている。陽極パッド51および陰極パッド61は、たとえばワイヤ(図示略)がボンディングされる部分である。
【0030】
次に、コンデンサA1,A2および電子部品B1の製造方法について、図6〜図21を参照しつつ、以下に説明する。
【0031】
まず、図6および図7に示すように、Si基板1Aを用意する。そして、たとえば陽極酸化を利用した多孔質化処理により、複数のトレンチ11をマトリクス状に形成する。このとき、トレンチ11の断面寸法をたとえば3μm角程度、深さをたとえば100〜200μm程度とする。また、複数のトレンチ11どうしの隙間を、たとえば0.5μm程度とする。Si基板1Aのうち隣り合うトレンチ11に挟まれた部分は、壁12となる。
【0032】
次いで、Si基板1Aに対して酸化処理を施す。これにより、図8に示すように、基材1が得られる。この酸化処理においては、基材1のうち少なくとも複数のトレンチ11を規定する部分がSiO2となるように温度、時間等の条件を設定する。本実施形態においては、Si基板1Aのうち酸化されなかった部分が、Si領域15として基材1に残存している。この酸化処理は、基材1の全体が完全にSiO2となるように行ってもよいし、壁12の内部にSiが残存する程度に行ってもよい。
【0033】
次いで、図9に示すように、金属膜2Aを形成する。金属膜2Aの形成は、たとえば無電解メッキによって基材1の表面にNiを付着させることにより行う。無電解メッキによれば、金属膜2Aを複数のトレンチ11内に十分に導入することができる。次いで、たとえばCMP法により、金属膜2Aのうち基材1の表面を覆う部分を除去し、金属膜2Aのうち複数のトレンチ11内にある部分を残存させる。これにより、図10に示すように、複数の陽極2と複数の陰極3とが得られる。
【0034】
次いで、図11に示すように、絶縁膜41を形成する。絶縁膜41の形成は、たとえばプラズマCVDによって基材1の表面にSiO2を堆積させることにより行う。この絶縁膜41に対してフォトリソグラフィ技術を利用したパターニングを施すことにより、図12および図13に示す複数の孔44を形成する。複数の孔44は、陽極2と重なる位置に配置する。
【0035】
次いで、図14に示すように、金属膜5Aを形成する。金属膜5Aの形成は、たとえばスパッタリングによって絶縁膜41の表面にNiを付着させることにより行う。このとき、複数の孔44内を、Niによって埋める。これにより、金属膜5Aは複数の陽極2と導通する。
【0036】
次いで、金属膜5Aに対してフォトリソグラフィ技術を利用したパターニングを施すことにより、図15および図16に示す陽極配線5を形成する。このパターニングにおいては、金属膜5AのうちコンデンサA1,A2となるべき部分を覆う矩形状部分と、これらの矩形状部分を繋ぐL字状部分を残存させる。また、複数の陰極3と重なる部分を除去することにより、複数の孔45を形成する。
【0037】
次いで、図17に示すように、絶縁膜42を形成する。絶縁膜42の形成は、たとえばプラズマCVDによって絶縁膜41および陽極配線5の表面にSiO2を堆積させることにより行う。この絶縁膜42に対してフォトリソグラフィ技術を利用したパターニングを施すことにより、図18および図19に示す複数の孔46を形成する。複数の孔46は、複数の孔45内に位置しており、複数の陰極3に到達している。
【0038】
次いで、図20に示すように、金属膜6Aを形成する。金属膜6Aの形成は、たとえばスパッタリングによって絶縁膜42の表面にNiを付着させることにより行う。このとき、複数の孔46内を、Niによって埋める。これにより、金属膜6Aは複数の陰極3と導通する。
【0039】
次いで、金属膜6Aに対してフォトリソグラフィ技術を利用したパターニングを施すことにより、図21に示す陰極配線6を形成する。このパターニングにおいては、金属膜6AのうちコンデンサA1,A2となるべき部分を覆う矩形状部分と、これらの矩形状部分を繋ぐ蛇行帯状部分とを残存させる。この蛇行帯状部分が、抵抗素子62となる。
【0040】
この後は、陰極配線6および絶縁膜42を覆うように、絶縁膜43を形成する。この絶縁膜43に窓47,48を形成することにより陽極パッド51および陰極パッド61を形成する。そして、陽極パッド51および陰極パッド61に、たとえばワイヤ(図示略)をボンディングする。以上の工程により、図1〜図5に示す電子部品B1が得られる。図22に示すように、電子部品B1は、互いに並列に接続されたコンデンサA1,A2と、コンデンサA1に対して直列に接続された抵抗素子62とを含む構成とされている。
【0041】
次に、コンデンサA1,A2、電子部品B1、およびその製造方法の作用について説明する。
【0042】
本実施形態によれば、陽極2と陰極3とに挟まれた壁12が誘電体として機能する。壁12の合計面積は、複数のトレンチ11の個数を増やし、あるいは深さを深くすることにより容易に広くすることが可能である。したがって、コンデンサA1,A2の大容量化を図ることができる。
【0043】
本実施形態においては、トレンチ11は、断面寸法が3μm角程度であるのに対し、深さが100〜200μmであり、断面寸法に対する深さの比か顕著に大となっている。たとえば、図25および図26に示された従来例においては、絶縁膜92に孔が生じることを防止する必要があるため、このような深いトレンチ11は採用し得ない。しかしながら、コンデンサA1,A2においては、トレンチ11を完全に覆う絶縁膜を形成することは不要である。このため、トレンチ11を深くすることによって大容量化を図るにも関わらず、漏れ電流の増大、あるいはショートの発生といったおそれが少ない。
【0044】
たとえば、トレンチ11を深くすることにより、陽極2または陰極3がトレンチ11の最深部に届かない形状となることが予想される。このような場合であっても、陽極2または陰極3が適切に形成されなかったトレンチ11がコンデンサA1,A2の静電容量に寄与しないだけであり、漏れ電流の増大やショートの発生といった不具合は生じない。
【0045】
Si基板1Aに対して陽極酸化を用いた多孔質化処理を施す手法は、断面寸法に対する深さの比が顕著に大であるトレンチ11を形成するのに適している。また、複数のトレンチ11を密に形成することも可能である。さらに、Si基板1Aには、いわゆる集積回路素子を作りこむことが可能である。これにより、電子部品B1のさらなる高機能化をはかることができる。
【0046】
本実施形態においては、断面正方形状とされた複数のトレンチ11が、マトリクス状に配置されている。そして、複数の陽極2と複数の陰極3とが市松模様を構成するように配置されている。このような構成により、コンデンサA1,A2を構成する領域にある全ての壁12が、陽極2と陰極3とによって挟まれた格好となっている。この結果、これらの壁12すべてを誘電体として機能させることが可能であり、コンデンサA1,A2の大容量化に好適である。
【0047】
壁12を形成するSiO2は、絶縁耐圧が非常に高い材質である。このため、コンデンサA1,A2の耐電圧を高めるのに適している。壁12が厚いほど高耐電圧化には好ましいが、コンデンサA1,A2の容量を小さくする要因となる。しかし、トレンチ11の深さを十分に深くすることが可能であるため、コンデンサA1,A2の高耐電圧化と大容量化とを両立することができる。また、SiO2は、比較的高い温度であっても良好な絶縁性を示す。これにより、コンデンサA1,A2の使用可能温度を高めることが可能である。
【0048】
本実施形態のコンデンサA1,A2の場合、耐電圧を400V程度、容量密度を1770nF/cm2程度に高めることができた。また、使用可能温度の上限は、150〜200℃である。発明者らのシミュレーションによれば、本発明に係るコンデンサの容量密度は、10,000nF/cm2に達すると試算される。
【0049】
電子部品B1は、1mm角程度の基材1上に2つのコンデンサA1、A2と抵抗素子62とが作りこまれている。本発明によれば、たとえばコンデンサと抵抗素子といった電子機能素子を同一の基材上にまとめて配置することが可能である。また、抵抗素子62は、陰極配線6の一部として形成されている。これは、電子部品B1の製造効率向上に適している。
【0050】
図23および図24は、本発明の他の実施形態を示している。なお、これらの図において、上記実施形態と同一または類似の要素には、上記実施形態と同一の符号を付している。
【0051】
図23は、本発明に係るコンデンサの第2実施形態を示している。本実施形態のコンデンサA3は、トレンチ11の断面形状が上述した実施形態と異なっている。本図においては、陽極配線5、陰極配線6、および絶縁膜41,42,43を省略している。
【0052】
本実施形態においては、複数のトレンチ11の断面形状が、いずれも三角形状とされている。これらのトレンチ11は、隣り合うトレンチ11の辺どうしが平行に対向するように、マトリクス状に配置されている。隣り合うトレンチ11の一方には陽極2が収容されており、他方には陰極3が収容されている。
【0053】
このような実施形態によっても、コンデンサA3の大容量化を図ることができる。トレンチ11の断面形状が三角形状であることにより、トレンチ11に挟まれた全ての壁12をコンデンサA3の誘電体として活用することが可能である。これは、断面四角形状のトレンチ11を有するコンデンサA1,A2と同様である。
【0054】
図24は、本発明に係る電子部品の第2実施形態を示している。本実施形態の電子部品B2は、コイル素子63を備えている点が、上述した電子部品B1と異なっている。本図においては、絶縁膜43を省略している。
【0055】
コイル素子63は、陰極配線6の一部によって構成されており、渦巻状の帯状部分からなる。コイル素子63の外周端は、陰極配線6のうちコンデンサA1を覆う矩形状部分に連結されている。コイル素子63の内周端は、陰極配線6のうちコンデンサA2を覆う矩形状部分に対して、連結部64を介して導通している。連結部64は、たとえば陰極配線6の一部が絶縁膜43上に形成されたものである。
【0056】
このような実施形態によれば、2つのキャパシタと1つのインダクタンスとを1つの基材1上に作りこむことが可能である。電子部品B1,B2として示されたこれらの実施形態から理解されるように、本発明に係る電子部品は、本発明に係るコンデンサと、抵抗素子、コイル素子、あるいは種々の電子機能素子とを用途に応じて組み合わせることが可能である。
【0057】
本発明に係るコンデンサ、電子部品、およびコンデンサの製造方法は、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係るコンデンサ、電子部品、およびコンデンサの製造方法の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【0058】
トレンチ11は、断面四角形状、断面三角形状のものに限定されず、断面形状がその他の多角形状、円形状などのものであってもよい。また、細長溝状の複数のトレンチを、それらの幅方向に配列させた構成としてもよい。陽極配線5および陰極配線6を絶縁膜41,42,43の膜間に配置する構成は合理的であるが、これに限定されず、コンデンサA1,A2を電気的に適切に機能させる手段を採用すればよい。トレンチ11を形成する手段としては、Si基板1Aに対して陽極酸化処理を施すことが好ましいが、本発明はこれに限定されず、たとえばSiO2からなる基材1に、たとえばドライエッチングを用いてトレンチ11を形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明に係るコンデンサおよび電子部品の第1実施形態を示す平面図である。
【図2】図1に示すコンデンサおよび電子部品の要部平面図である。
【図3】図1に示すコンデンサおよび電子部品の要部平面図である。
【図4】図1のIV−IV線に沿う断面図である。
【図5】図1のV−V線に沿う断面図である。
【図6】図1に示すコンデンサおよび電子部品の製造方法の一例において、Si基板にトレンチを形成した状態を示す平面図である。
【図7】図6のVII−VII線に沿う断面図である。
【図8】図1に示すコンデンサおよび電子部品の製造方法の一例における酸化処理を示す断面図である。
【図9】図1に示すコンデンサおよび電子部品の製造方法の一例において、金属膜を形成する工程を示す断面図である。
【図10】図1に示すコンデンサおよび電子部品の製造方法の一例において、陽極および陰極を形成する工程を示す断面図である。
【図11】図1に示すコンデンサおよび電子部品の製造方法の一例において、絶縁膜を形成する工程を示す断面図である。
【図12】図1に示すコンデンサおよび電子部品の製造方法の一例において、絶縁膜にエッチングを施す工程を示す平面図である。
【図13】図12のXIII−XIII線に沿う断面図である。
【図14】図1に示すコンデンサおよび電子部品の製造方法の一例において、金属膜を形成する工程を示す断面図である。
【図15】図1に示すコンデンサおよび電子部品の製造方法の一例において、金属膜にエッチングを施す工程を示す平面図である。
【図16】図15のXVI−XVI線に沿う断面図である。
【図17】図1に示すコンデンサおよび電子部品の製造方法の一例において、絶縁膜を形成する工程を示す断面図である。
【図18】図1に示すコンデンサおよび電子部品の製造方法の一例において、絶縁膜にエッチングを施す工程を示す平面図である。
【図19】図18のXIX−XIX線に沿う断面図である。
【図20】図1に示すコンデンサおよび電子部品の製造方法の一例において、金属膜を形成する工程を示す断面図である。
【図21】図1に示すコンデンサおよび電子部品の製造方法の一例において、金属膜にエッチングを施す工程を示す平面図である。
【図22】図1に示す電子部品の回路図である。
【図23】本発明に係るコンデンサの第2実施形態を示す要部平面図である。
【図24】本発明に係る電子部品の第2実施形態を示す要部平面図である。
【図25】従来のコンデンサの一例を示す断面図である。
【図26】従来のコンデンサの他の例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0060】
A1,A2,A3 コンデンサ
B1,B2 電子部品
1 基材
1A Si基板
2 陽極
2A 金属膜
3 陰極
5 陽極配線
5A 金属膜
6 陰極配線
6A 金属膜
11 トレンチ(凹部)
12 壁
41,42,43 絶縁膜
44,45,46 孔
47,48 窓
51 陽極パッド
61 陰極パッド
62 抵抗素子
63 コイル素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の凹部を有する基材を備えるコンデンサであって、
上記基材は、少なくとも上記複数の凹部を規定する部分が、絶縁材料からなり、
上記複数の凹部のうち互いに隣り合う凹部の一方に収容された陽極と、
上記隣り合う凹部の他方に収容された陰極と、
を備えていることを特徴とする、コンデンサ。
【請求項2】
上記複数の凹部は、マトリクス状に配置されている、請求項1に記載のコンデンサ。
【請求項3】
上記複数の凹部は、その断面形状が三角形状または四角形状である、請求項2に記載のコンデンサ。
【請求項4】
上記基材のうち少なくとも上記複数の凹部を規定する部分が、SiO2からなる、請求項1ないし3のいずれかに記載のコンデンサ。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載のコンデンサと、
上記基材によって支持されており、上記複数の凹部に収容された上記陽極どうしを導通させる陽極配線と、
上記基材によって支持されており、上記複数の凹部に収容された上記陰極どうしを導通させる陰極配線と、を備えており、
上記陽極配線および上記陰極配線の少なくともいずれかの一部によって、抵抗素子またはコイル素子が形成されていることを特徴とする、電子部品。
【請求項6】
複数の凹部を有し、少なくとも上記複数の凹部を規定する部分が絶縁材料からなる基材を形成する工程と、
上記複数の凹部のうち互いに隣り合う凹部の一方の内部に陽極を形成する工程と、
上記隣り合う凹部の他方の内部に陰極を形成する工程と、
を有することを特徴とする、コンデンサの製造方法。
【請求項7】
上記基材を形成する工程は、Si基板に複数の凹部を形成した後に、このSi基板のうち少なくとも上記複数の凹部を規定する部分を酸化させることによりSiO2とすることにより行う、請求項6に記載のコンデンサの製造方法。

【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図22】
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【図23】
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【図25】
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【図26】
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【図2】
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【図3】
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【図15】
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【図21】
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【図24】
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【公開番号】特開2009−59990(P2009−59990A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−227389(P2007−227389)
【出願日】平成19年9月3日(2007.9.3)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】