説明

コンバイン

【課題】運転部の足元空間を広くできると共に、ステアリング機構、チルト調節の機能、テレスコ調節の機能を収納したステアリングユニットを備えるコンバインを提供する。
【解決手段】本発明は、上端部に設けたステアリングハンドルと、前記ステアリングハンドルに連動連結したステアリング機構と、このステアリング機構を収納する略箱状のハンドル本体と、前記ハンドル本体の下方に配設し、ハンドルのチルト調節機能とテレスコ調節機能を有するチルト・テレスコ機構とによりステアリングユニットを構成すると共に、前記ステアリングユニットはキャビン前壁下部から上方に立ち上がり状に配設していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステアリングユニットを備えたコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載の作業車両の操向装置は、ステアリングハンドル等のステアリング機構やこのステアリングハンドルの操作角を検出する切れ角センサやステアリングハンドルを中立位置に付勢するコイルスプリング等を備えており、これらの各種機能を一つのユニット内に収納するようにしている。また、このステアリングユニットは、運転席前方の床部に立設した状態で取付ける構成としており、前記ユニットを運転部内に取付けた際には、ステアリングユニットの下部が運転席側に突出して床部の前方空間を占有した状態で配設されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−034252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように特許文献1に記載のステアリングユニットは、運転部の床に立設し、そのステアリングユニットの下部が運転席側に突出して床部の前方空間を占有しているために、操縦者が運転部に乗降する際に、前記ユニットの下部に操縦者が足をぶつけてしまい乗降しづらい不都合があった。さらに、運転席に着座した操縦者がステアリングを操縦する際にも操縦者にとっては、足元が狭く窮屈な状態となり、その窮屈な姿勢のままでステアリングの操縦をしなければならない不都合があった。
さらに、コンバインを操作する操縦者の操作性を向上する目的で、ステアリングユニットにおいては、ステアリング機構をテレスコ調節する機能やチルト調節する機能を備えることが臨まれている。しかし、ステアリングユニットにステアリング機構をテレスコ調節する機能やチルト調節する機能を設けようとすると、前記ユニット自体が大型化して、限られたスペースの運転部に設けることができない問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、請求項1に記載のコンバインは、ステアバイワイヤ方式のステアリングハンドル操向操作機構を有するコンバインにおいて、上端部に設けたステアリングハンドルと、前記ステアリングハンドルに連動連結したステアリング機構と、このステアリング機構を収納する略箱状のハンドル本体と、前記ハンドル本体の下方に配設し、ハンドルのチルト調節機能とテレスコ調節機能を有するチルト・テレスコ機構とによりステアリングユニットを構成すると共に、前記ステアリングユニットはキャビン前壁下部から上方に立ち上がり状に配設する。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のコンバインにおいて、前記チルト・テレスコ機構はステアリングユニットの下部に配設すると共に、前記チルト・テレスコ機構は、キャビン前壁下部に取り付けた台座に固定するための固定プレートと、前記固定プレートに昇降自在に配設した六角状の支持軸と、運転部のサイドコラム側に配設したテレスコレバーにより前記支持軸の昇降調整をするテレスコ部と、前記支持軸の頭部に連設したハンドル本体の角度をチルト調節するために運転部のサイドコラム側に配設したチルトレバーにより変位させるチルト部とから構成することを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載のコンバインにおいて、前記ステアリングハンドルの中央には、コンバインの各種作業形態を表示するモニターを配設することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明によれば、ステアバイワイヤ方式のステアリングハンドル操向操作機構を有するコンバインにおいて、上端部に設けたステアリングハンドルと、前記ステアリングハンドルに連動連結したステアリング機構と、このステアリング機構を収納する略箱状のハンドル本体と、前記ハンドル本体の下方に配設し、ハンドルのチルト調節機能とテレスコ調節機能を有するチルト・テレスコ機構とによりステアリングユニットを構成すると共に、前記ステアリングユニットはキャビン前壁下部から上方に立ち上がり状に配設したので、ステアリングユニットの下部に空間ができて、操縦者が運転部に乗降する際に、操縦者は足をぶつけることなく乗降できる効果がある。運転席に着座した操縦者がステアリングを操縦する際にも、操縦者にとっては、足元空間が広いため、楽な姿勢でステアリングの操縦を行うことができる効果がある。さらに、ステアリングハンドルと、前記ステアリングハンドルに連動連結したステアリング機構と、このステアリング機構を収納する略箱状のハンドル本体と、前記ハンドル本体の下方にチルト・テレスコ機構を配設したのでステアリングユニットを小型化することが可能となり、しかも、集中的に一か所に操作関係の部品が配設されるので操作自体の効率化も図れると共に、多数の部品からなるステアリング関係の操作部材を限られたスペースの運転部に効率的に配設することができ、従って、ステアリングユニットが小型化されるためステアリング関係の操作部材が操縦者の動作に支障とならず、作業時の運転動作の疲労を可及的に軽減することができる効果がある。
【0009】
請求項2の発明によれば、前記チルト・テレスコ機構をステアリングユニットの下部に配設したので、かかる機構を操作するに際して運転席からの操作が行いやすく、チルト・テレスコ機構の操作系の構造も簡略化することが出来る効果があり、また、前記チルト・テレスコ機構は、キャビン前壁下部に取り付けた台座に固定するための固定プレートと、前記固定プレートに昇降自在に配設した六角状の支持軸と、テレスコレバーにより前記支持軸の昇降調整をするテレスコ部と、前記支持軸の頭部に連設したハンドル本体の角度をチルト調節のためにチルトレバーにより変位させるチルト部とから構成しているので、チルト・テレスコ機構を介してその上部にステアリング機構を配設することができるためステアリングユニットの全体構造を可及的に小さくして運転部の空間を広く利用できる効果があり、しかも、ステアリングユニットの下部を構成するチルト・テレスコ機構がキャビン前壁下部に昇降自在に配設した六角状の支持軸を中心に構成する構造となっているため、構造が簡略化されてステアリング操作の効率化に貢献することができる効果があり、また、ステアリングユニットの固定はキャビン前壁下部の台座に固定した固定プレートによって行っているのでステアリングユニットの固定構造が簡略化でき、しかも、ステアリングユニットの下部のみでキャビン前壁下部に固定し、前記ステアリングユニットはキャビン前壁下部から上方に立ち上がり状に配設するので、ステアリングユニットの固定構造も簡単に構成することができ、更には、ステアリングユニットの下部に空間ができて、運転者の足元を入れる余裕が出来るため運転姿勢の無理がなく運転疲労を低減することが出来る効果がある。
【0010】
請求項3の発明によれば、前記ステアリングハンドルの中央には、コンバインの各種作業形態を表示するモニターを配設するので、ステアリングユニットの操作をするに際してもコンバインの各種作業形態を表示するモニターの監視が容易に行えると共に、ステアリングハンドル操作中においてもその中央にモニターがあるため視線を離反させることなくモニターを注視しながら操行操作や作業操作などを行えることとなり、作業性効率が飛躍的に向上する効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係るコンバインの全体構成を示す左側面図。
【図2】キャビンを示す平面図。
【図3】キャビンを示す左側面図。
【図4】ステアリングユニットを示す背面図。
【図5】(a)ステアリングユニットの取付状態を示す説明図。(b)ハンドル本体を示す側面図。
【図6】(a)ハンドル本体を示す平面図。(b)図6(a)におけるA−A断面図。
【図7】(a)チルト・テレスコ機構を示す斜視図。(b)チルト・テレスコ機構を示す斜視図。
【図8】チルト・テレスコ機構のチルト部を示す断面図。
【図9】コンバインのステアバイワイヤ方式のシステム全体を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施の形態について説明する。
【0013】
本発明の実施形態のコンバインは、ステアバイワイヤ方式のステアリングハンドル操向操作機構を有するコンバインにおいて、上端部に設けたステアリングハンドルと、前記ステアリングハンドルに連動連結したステアリング機構と、このステアリング機構を収納する略箱状のハンドル本体と、前記ハンドル本体の下方に配設し、ハンドルのチルト調節機能とテレスコ調節機能を有するチルト・テレスコ機構とによりステアリングユニットを構成すると共に、前記ステアリングユニットはキャビン前壁下部から上方に立ち上がり状に配設している。
【0014】
また、前記チルト・テレスコ機構はステアリングユニットの下部に配設すると共に、前記チルト・テレスコ機構は、キャビン前壁下部に取り付けた台座に固定するための固定プレートと、前記固定プレートに昇降自在に配設した六角状の支持軸と、テレスコレバーにより前記支持軸の昇降調整をするテレスコ部と、前記支持軸の頭部に連設したハンドル本体の角度をチルト調節のためにチルトレバーにより変位させるチルト部とから構成している。
【0015】
また、前記ステアリングハンドルの中央には、コンバインの各種作業形態を表示するモニターを配設している。
【0016】
本発明の一実施形態に係るコンバインの全体構成について説明する。
【0017】
コンバインAは、図1に示すように、左右一対のクローラ式の走行部1,1上に機体フレーム2を設け、前記機体フレーム2の左側前端部に刈取フレーム3を介して刈取部4と搬送部5とを昇降自在に取り付け、前記機体フレーム2上の左側前部に穀稈移送部6と脱穀部7と選別部8を配設すると共に、後部に排藁処理部9を配設する一方、機体フレーム2上の右側前部にキャビン10を配設すると共に、右側中途部に穀粒貯留部11を配設している。12は穀粒搬出用のオーガ、13はエンジン14の動力を各部の装置に供給するエンジン部である。
【0018】
このようにして、刈取部4により穀稈を刈り取り、刈り取った穀稈を搬送部5により後上方の穀稈移送部6まで搬送して、前記穀稈移送部6に穀稈を受け渡し、前記穀稈移送部6により穀稈の株元を挟扼すると共に穂先を脱穀部7内に挿入した状態で後方へ移送させるようにしている。
【0019】
この際、穀稈の穂先は脱穀部7により脱穀されると共に、脱穀された穀粒は選別部8により選別されて、精粒のみが穀粒貯留部11に搬送されて貯留され、必要に応じてオーガ12を介して搬出されるようにしている。
【0020】
また、脱穀された穀稈は排藁として排藁処理部9に搬送され、前記排藁処理部9にて細断・排出処理されるようにしている。
【0021】
そして、キャビン10は、図1から図3に示すように、略四角形箱型に形成して内部に運転部19を設けている。運転部19においては、キャビン前壁20下部に台座21を取付け、前記台座21にステアバイワイヤ方式のステアリングユニット22におけるチルト・テレスコ機構36を連設し、前記ステアリングユニット22の上部、すなわち、チルト・テレスコ機構36の上端にステアリングハンドル23を取り付け、前記ステアリングハンドル23の後方位置に運転席24を配置している。前記運転席24の前方から左側方にかけてはサイドコラム25を配設し、サイドコラム25上部に変速レバー26、副変速レバー、その他レバーを取り付けている。31はキャビン前壁20の上方に取り付けたフロントガラス、32は左側開閉窓、33は乗降用開閉扉である。
【0022】
このように、前記ステアリングユニット22はキャビン前壁20下部から上方に立ち上がり状に配設されている。
【0023】
ここで、キャビン前壁20の構造について詳説すると、キャビン前壁20はフレーム内において上半分に透明板を下半分に金属板を上下に配設し、図1,2に示すように中途部を内側に傾斜させた側面視略くの字状に形成しており、下半部の金属傾斜面に台座21を固定し、この台座21から前記ステアリングユニット22が上方に立ち上がり状に配設されている。
【0024】
ステアリングユニット22は、図3から図5に示すように、上端部に設けたステアリングハンドル23と、前記ステアリングハンドル23に連動連結したステアリング機構34と、このステアリング機構34を収納する略箱状のハンドル本体35と、前記ハンドル本体35の下方に設けたチルト・テレスコ機構36と、ハンドル本体35やチルト・テレスコ機構36を覆うユニットカバー体37からなり、ユニットカバー体37は上部のハンドル本体35から下方のチルト・テレスコ機構36に向けて漸次狭窄した形状に構成している。
【0025】
ステアリングユニット22をキャビン前壁20下部の台座21に取付ける際には、ハンドル本体35とチルト・テレスコ機構36を被覆するユニットカバー体37の下端をフロアーに当接させることなく所定間隔だけ離間した取付け形態とし、その間に操縦者の足元空間Sを形成している。
【0026】
すなわち、キャビン10内におけるステアリングユニット22下端は、フロアー29から所定間隔だけ離間しているために操縦者の足元空間Sが広く形成されることにより、乗降時に操縦者は足をぶつけることがなくなり乗降し易くなると共に、操縦者は運転席24に着座してステアリングハンドル23を操縦する際にも常に最適な操作姿勢を得られることができる。
【0027】
ステアリングハンドル23は、ステアリング機構34を収納する略箱状のハンドル本体35の中のハンドル軸43上端と連結されており、ステアリングハンドル23内径の中央部分にはモニター用の窓空間を形成しており、モニター44はこの空間の下方に位置するようにハンドル本体35の前方上部にアーム45を介して連設されている。従って、ステアリングハンドル23の操向回動にもかかわらず常にステアリングハンドル23のモニター用の窓空間から操縦者がモニター44を透視できるように構成さている。なお、ステアリングハンドル23とハンドル軸43上端とは、ステアリングハンドル23の下部に突設した支持フレーム41を介して連設されている。
【0028】
ハンドル軸43の下端側は、図6に示すようにハンドル本体35内のハンドル軸ギア46を介してステアリング機構34に連動連結する構成としている。
【0029】
ステアリング機構34には、ステアリングハンドル23の切れ角を検出する操向ポテンショメータ47と、ステアリングハンドル23の切れ角に応じた負荷を生起する中立復元機構48とが設けられている。
【0030】
すなわち、ステアリングハンドル23のハンドル軸ギア46は、左側方に配設した操向ポテンショメータギア49と、また、右側方に配設した中立復元機構48のハート形状のカムギア50と上下段の位置でそれぞれ噛合しており、従って、ステアリングハンドル23を右に回転すると、ハンドル軸ギア46にそれぞれ噛合した操向ポテンショメータギア49とカムギア50は同時に左回転するようことになる。
【0031】
このように、操向ポテンショメータギア49と一体の操向ポテンショメータ47は、ステアリングハンドル23の回転によりハンドル軸ギア46を介して回転されると、操向ポテンショメータ47の回転角を検知して所定の電気信号に変換して後述するコントローラ130に送信している。
【0032】
中立復元機構48は、外形の半分をハート形状に形成したカム部51と残りの半分をギアに形成したギア部52とからなるカムギア50を回動自在にカムギア軸53に軸支した構成とし、更に、ハート型のカム部51の周縁には付勢機構54を介してローラ状のカムフォロワー55を圧接する構成としており、カムギア50にギア噛合したハンドル軸43の回動操作に負荷をかけてハンドル回転操作を重くし電気的なハンドリング操作にメカニカルなハンドル操作の重さを付加していると共に、カム部51のハート形状中央の窪部51aを中心にしてその左右の湾曲周縁部をカムフォロワー55の圧接負荷の変動調整機能部としている。
【0033】
すなわち、カムギア軸53の中心と窪部51aの距離H1と、カムギア軸53の中心から左右の湾曲周縁部の所定位置までの距離H2との比較によるカムフォロワー55の圧接負荷の変動により操縦者はハンドル操作の操作負荷の変動を手で感じてステアリングハンドル23の操向位置を知覚することができるように構成している。
【0034】
なお、カムフォロワー55の付勢機構54は、スプリング軸56にコイルスプリング57を挿通して、コイルスプリング57の付勢力をアーム58を介してカムフォロワー55に伝達する構成としている。
【0035】
中立復元機構48の作動について説明する。
(1)ステアリングハンドル23の切れ角が0度の場合において、付勢機構54のカムフォロワー55は、カムギア50のカム部51の中央位置(中立位置)の窪部51aを付勢力F1で付勢している。この付勢力は、カム部51の幅員、すなわち、カム部51の周縁からカムギア軸53の中心までの距離に比例し、その距離が離間するにしたがって漸次大きくなる。距離H1のとき、付勢力F1となり付勢力が一番小さい状態である。
(2)ステアリングハンドル23を右に切れ角0度から180度回転して変位する場合において、付勢機構54のカムフォロワー55は、カムギア50のカム部51の窪部51aから脱し、付勢機構54による付勢力が値F2になるまで漸次増加し、すなわち、カム部51の側端における距離H2において付勢力F2>F1となる。
(3)ステアリングハンドル23を左に切れ角0度から180度回転して変位する場合において、付勢機構54のカムフォロワー55は、カムギア50のカム部51の窪部51aから脱し、付勢機構54による付勢力が値F2になるまで漸次増加し、すなわち、カム部51の側端における距離H2において付勢力F2>F1となる。
【0036】
従って、ステアリングハンドル23には、切れ角0度のときの付勢力F1が順次、付勢機構54のカムギア50→ハンドル軸ギア46→ハンドル軸43→ハンドル部40に伝達して所定の小さい負荷として印加されることで、ステアリングハンドル23を把持している操縦者に中立位置を認識させることができる。
一方、ステアリングハンドル23には、切れ角180度のときの付勢力F2>F1が順次、付勢機構54のカムギア50→ハンドル軸ギア46→ハンドル軸43→ハンドル部40に伝達して所定の大きい負荷として印加されることで、付勢力による負荷をステアリングハンドル23を把持している操縦者に認識させることができる。
【0037】
上記のように構成されたステアリング機構34の下方には、図4及び図5に示すように、ステアリングユニット22下部を構成するチルト・テレスコ機構36を配設している。
【0038】
すなわち、前記チルト・テレスコ機構36は、キャビン前壁20下部に取り付けた台座21に固定するための固定プレート62と、前記固定プレート62に昇降自在に配設した六角状の支持軸63と、テレスコレバー84により前記支持軸63の昇降調整をするテレスコ部61と、前記支持軸63の頭部に連設したハンドル本体35の角度をチルト調節のためにチルトレバー77により変位させるチルト部60とから構成している。
【0039】
具体的には、チルト部60は次のように構成されている。
【0040】
図5及び図7に示すように、固定プレート62に昇降自在に配設した六角状の支持軸63の頭部にハンドル支持台68を連設し、このハンドル支持台68の左右側部70,71の枢支孔73,73とハンドル支持台68にチルト自在に載置したハンドル本体35の下部左右前端35aの受孔35b,35bにボルト76,76を挿通することにより、ボルト76,76を枢支軸としてハンドル支持台68にハンドル本体35をチルト自在に枢支しており、更に、ハンドル支持台68の左右側部70,71に形成した長孔74,75とハンドル本体35底部のブラケット38の孔38bにチルトレバー77の基端軸78を挿通して長孔74,75に沿ってチルトレバー77を摺動させることによりハンドル支持台68上でハンドル本体35をチルト自在に操作することが出来るように構成している。
【0041】
しかも、チルトレバー77はハンドル本体35の左側に配設しており、キャビン10の左側方に配設したサイドコラム25側に配設することにより、サイドコラム25に装置した変速レバー26や各種の操作具とともに運転席の左側での各種操作の効率化を図っている。
【0042】
また、ハンドル支持台68に形成した長孔74,75に挿通したチルトレバー77の基端軸78中途においては、長孔外側方に長孔周縁に当接するフランジ78aを固設しており、しかも、チルトレバー77はフランジ78aが長孔外側方から長孔周縁に当接付勢されるように軸端方向に所定の構造により付勢されるよう構成している。
【0043】
チルトレバー77によりステアリングハンドル23のチルト操作を行うに際しては、まず、チルトレバー77の基端軸78をハンドル支持台68から離隔する方向に引き出して長孔74の周縁に当接したフランジ78aを長孔74から離反させてチルトレバー77と共にハンドル本体35を枢支部72を中心にして上下方に回動してチルト操作を行う。
【0044】
かかるチルト操作の後には、フランジ78aを付勢機構により長孔周縁に押圧状態とすればハンドル本体35のチルト後の固定が完了する。すなわち、操縦者はチルトレバー77の回動操作をすることで、最適なステアリングユニット22の角度となるチルト調節機能が行われる。
【0045】
具体的には、テレスコ部61は次のように構成されている。
【0046】
テレスコ部61は、図7及び図8に示すように、キャビン前壁下部20の台座21に固定プレート62の四隅をボルト80・ナット81で締結し、固定プレート62中央には固定プレート62の面に水平基部を溶着した2個の互いに対向した略L字形状の左右把持金具64,65を立設し、その間に六角状の支持軸63を挿通して上下方向に昇降自在とし、更に、左右把持金具64,65の外側壁に左右作動アーム66,67をそれぞれ固設し、該アーム66,67の基端間には各アーム66,67を近接及び離隔自在に操作することが出来るように操作ネジ機構が介設されている。図5中37aはユニットカバー体37に開口したテレスコレバー84を昇降操作するための長孔である。
【0047】
すなわち、操作ネジ機構は、互いに対向状態とした左右作動アーム66,67の基端に共通の操作ネジ86を挿通して一方のアーム67の該側面に固設したナット83に螺合させることにより構成しており、操作ネジ86はテレスコレバー84に連動連設されており、テレスコレバー84を作動させれば、テレスコレバー84の基端部の操作ネジ86とナット83との螺合の進退動作により左右アーム66,67の近接離反動作が生起し、該アーム66,67先端の左右把持金具64,65同士を締め付け或いは解除して六角状の支持軸63を所定高さ位置に昇降調整する。
【0048】
そして、適当な位置において左右把持金具64,65同士の締め付けにより支持軸63を固定すれば、ハンドル本体35を操縦者に対して適当に近接離反させるテレスコ調整が達成される。
【0049】
しかも、テレスコレバー84はチルトレバー77と同様にハンドル本体35の左側に配設しており、キャビン10の左側方に配設したサイドコラム25側に配設することにより、サイドコラム25に装置した変速レバー26や各種の操作具とともに運転席の左側での各種操作の効率化を図っている。
【0050】
また、コンバインにおけるステアリングハンドル23と変速レバー26とは、いわゆるステアバイワイヤ方式の操作構造により構成されている。すなわち、従来はスアリングハンドルや変速レバーは操向装置や変速装置にギア群やリンク機構やラックピニオン構造などの機械要素を介して連動連結されているものであるが、本発明のコンバインにおけるステアリングハンドル23や変速レバー26は、機械的な連動機構を採用せずステアバイワイヤ方式を採用して電気的に制御して操向調整や走行調整を行うように構成している。以下にステアリングハンドル23と変速レバー26を操向装置と走行装置に電気的に接続したステアバイワイヤ方式について説明する。
【0051】
すなわち、ステアバイワイヤ方式においては、図9に示すようにステアリングハンドル23と変速レバー26の操作量を操向ポテンショメータ47、変速ポテンショメータ100により電気信号に変換して、コントローラ130に送信し、コントローラ130からの制御情報によって走行用HST140、操向用HST150を駆動制御して最終的に走行部の直進走行や走行旋回やスピンターン等の操作を可能としている。
【0052】
すなわち、走行用HST140は、可変容積型の走行ポンプ140Pと可変容積型の走行モータ140Mとを具備し、互いに流体接続されていると共に、走行ポンプ140Pの駆動はエンジン14からの動力を受けつつ走行ポンプ用電磁弁147を介して走行調整駆動が行われる。かかる走行ポンプ140Pの駆動調整による走行モータ140Mの駆動は、出力軸149に伝達される。148は走行モータ用電磁弁である。
【0053】
出力軸149は、副変速機構170を介して遊星歯車群より構成された伝動機構160に連動連結されている。このように、変速レバー26の操作による変速ポテンショメータ100を介したコントローラ130からの制御情報は、基本的には走行ポンプ用電磁弁147の制御を行い、走行ポンプ140P、走行モータ140Mの駆動制御によって出力軸149から伝動機構160へ動力伝達するように構成している。
【0054】
伝動機構160においては、各種遊星歯車群を介して左右の第1及び第2出力軸161a,161bに出力がなされて、各出力軸161a,161bは、それぞれ左右のクローラ式の走行部1,1としての左右のクローラの駆動輪に駆動動力を伝達し、左右のクローラの走行駆動がなされる。
【0055】
従って、変速レバー26を操作することにより、変速ポテンショメータ100、コントローラ130、走行ポンプ140P、走行モータ140M等を経由して出力軸149に動力が伝達されると、出力軸149に連動連結した伝動機構160において、各種遊星歯車群を介して第1及び第2出力軸161a,161bに駆動力が伝達され同一方向に回転駆動するように構成されている。
【0056】
すなわち、変速レバー26の操作によるコントローラ130からの制御情報によって走行用HST140の回転駆動制御を行い伝動機構160の遊星歯車群を介して第1及び第2出力軸161a,161bの走行制御を行って、各出力軸の正回転あるいは逆回転を行う。このようにして、クローラ式走行部1,1の前後の直進走行を可能としている。
【0057】
なお、前後の直進走行の制御は、変速レバー126の前後の移動位置を変速ポテンショメータ100からの検出情報を走行ポンプ140P、走行モータ140Mへ伝達することにより行う。
【0058】
従って、変速レバー26を操作すれば、変速ポテンショメータ100、コントローラ130、走行ポンプ140P等の制御により出力軸149に駆動力が伝達されると伝動機構160における各種遊星歯車群を介して第1及び第2出力軸161a,161bが同一方向に正逆回転駆動する。
【0059】
すなわち、変速レバー26の操作によって走行用HST140からの回転駆動を受けた第1及び第2出力軸161a,161bは、伝動機構160を介してクローラ式の走行部1,1を前進又は後進させる。
【0060】
また、操向用HST150は、可変容積型の操向ポンプ150Pと可変容積型の操向モータ150Mとを具備し、互いに流体接続されていると共に、操向ポンプ150Pの駆動はエンジン14からの動力を受けつつ操向ポンプ用電磁弁157を介して操向調整駆動が行われる。かかる操向ポンプ150Pの駆動調整により操向モータ150Mの駆動は、出力軸159に伝達される。
【0061】
出力軸159は、クラッチ装置180を介して遊星歯車群より構成された伝動機構160に連動連結されている。このように、ステアリングハンドル23の操作による操向ポテンショメータ47を介したコントローラ130からの制御情報は、基本的には操向ポンプ用電磁弁157の制御を行う。すなわち、操向ポンプ150P、操向モータ150Mの制御駆動によって出力軸159から伝動機構160へ動力伝達がなされるように構成されている。
【0062】
伝動機構160においては、各種遊星歯車群を介して左右の第1及び第2出力軸161a,161bに出力されて、各出力軸161a,161bは、それぞれ左右のクローラ式の走行部1,1としてのクローラに駆動動力を伝達し、左右のクローラの旋回駆動がなされる。
【0063】
従って、ステアリングハンドル23を操作することにより、操向ポテンショメータ47、コントローラ130、操向ポンプ150P、操向モータ150M等の制御により出力軸159が駆動すると、出力軸159に連動連結した伝動機構160は、各種遊星歯車群を介して第1及び第2出力軸161a,161bを互いに反対方向に回転駆動するように構成されている。
【0064】
すなわち、ステアリングハンドル23の操作によりコントローラ130からの制御情報によって操向用HST150の回転駆動制御が行われると伝動機構160による遊星歯車群を介して第1及び第2出力軸161a,161bに動力が伝達され、第1出力軸161aと第2出力軸161bとを互いに逆回転して、クローラ式走行部1,1を旋回あるいはスピンターンさせる。
【0065】
なお、左右走行旋回、左右スピンターンの左と右の振り分けは、ステアリングハンドル23の左右の回転を操向ポテンショメータ47を介してコントローラ130からの制御情報により操向ポンプ150P、操向モータ150Mを制御作動することにより行う。
【0066】
このように、ステアリングハンドル23及び変速レバー26は、ステアバイワイヤ方式を介して走行用HST140、操向用HST150等を電気的に制御しながら、かつ一部は歯車群による機械伝動によってクローラ式走行部1,1の前後進、走行旋回、スピンターン等を行うように構成されている。
【0067】
具体的に述べれば、
(1)変速レバー26により走行用HST140の走行モータ140Mを駆動すると共にステアリングハンドル23を回転操作しない状態とする場合について説明する。すなわち、操向用HST150の操向モータ150Mを停止した状態においては、伝動機構160の第1及び第2出力軸161a,161bは、同一回転数で回転し、駆動輪を介してクローラ式走行部1,1は、同一回転方向に同一回転数で回転し、機体は前後方向に直進走行する。
【0068】
(2)変速レバー26の操作により走行用HST140の走行モータ140Mを停止し、ステアリングハンドル23による制御情報によって操向用HST150の操向モータ150Mを駆動する状態とした場合について説明する。すなわち、操向モータ150Mからの駆動は伝動機構160に伝わり、伝動機構160の第1出力軸161aと第2出力軸161bとは互いに反対方向に回転されて、左右一方のクローラ式走行部1,1の駆動輪が正または逆方向へ回転される。その結果、左右のクローラ式走行部1,1は、その場で機体のスピンターン旋回が行われる。
【0069】
(3)走行用HST140の走行モータ140Mを駆動する共に操向用HST150の操向モータ150Mを駆動する場合について説明する。すなわち、伝動機構160によって第1及び第2出力軸161a,161bは互いに異なる回転数で回転され、左右の各クローラ式走行部1,1の駆動輪も互いに異なる回転数で回転される。その結果、左右のクローラ式走行部1,1が一定の速度差をもって駆動し、走行しながら左または右方向へ旋回する。なお、旋回方向および旋回半径は左右のクローラ式走行部1,1の速度差に応じて決定される。
【0070】
本発明の実施例のステアバイワイヤ方式のコンバインの構造、機能は上記した通りである。
【0071】
このようにステアバイワイヤ方式のコンバインにおけるステアリングハンドルは、ハンドル本体のステアリング機構に連動連設されているものであり、従来の機械的な操向機構を電気的な処理による操向操作を可能としたので、ハンドル本体の中にはステアリング機構に連動連設する電気的な部材、たとえば、ポテンショメータや電気配線や中立復元機構などの各種の部材を収納しなければならない。かかる電気的な部材をテレスコ機構やチルト機構の配設構造と組み合わせてステアリングユニットとして最小の容積の空間に収めながらハンドリング操作の効率化を図ったものが本件発明の実施例である。
【0072】
このように構成することによりステアバイワイヤ方式のコンバインにおいて、足元空間が広いため、楽な姿勢でステアリングの操縦を行うことができる効果があり、さらに、ステアリングユニットを小型化することが可能となり、しかも、集中的に一か所に操作関係の部品が配設されるので操作自体の効率化も図れると共に、多数の部品からなるステアリング関係の操作部材を限られたスペースの運転部に効率的に配設することが出来、従って、ステアリングユニットが小型化されるためステアリング関係の操作部材が操縦者の動作に支障とならず、作業時の運転動作の疲労を可及的に軽減することができる効果を生起し、更には、かかる機構を操作するに際して運転席からの操作が行いやすく、チルト・テレスコ機構の操作系の構造も簡略化することができ、また、チルト・テレスコ機構を介してその上部にステアリング機構を配設することができるためステアリングユニットの全体構造を可及的に小さくして運転部の空間を広く利用でき、しかも、構造が簡略化されてステアリング操作の効率化に貢献することができる。しかも、ステアリングユニットの固定はキャビン前壁下部の台座に固定した固定プレートによって行っているのでステアリングユニットの固定構造が簡略化でき、また、前記ステアリングユニットはキャビン前壁下部から上方に立ち上がり状に配設するので、ステアリングユニットの固定構造も簡単に構成することができ、更には、ステアリングユニットの下部に空間ができて、運転者の足を入れる余裕が出来るため運転姿勢の無理がなく運転疲労を低減することが出来る。
【0073】
また、ステアリングユニットの操作をするに際してもコンバインの各種作業形態を表示するモニターの監視が容易に行えると共に、ステアリングハンドル操作中においてもその中央にモニターがあるため視線を離反させることなくモニターを注視しながら操行操作や作業操作などを行えることとなり、作業効率が飛躍的に向上する効果がある。
【符号の説明】
【0074】
A コンバイン
1 走行部
2 機体フレーム
3 刈取フレーム
4 刈取部
5 搬送部
6 穀稈移送部
7 脱穀部
8 選別部
9 排藁処理部
10 キャビン
11 穀粒貯留部
12 オーガ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアバイワイヤ方式のステアリングハンドル操向操作機構を有するコンバインにおいて、
上端部に設けたステアリングハンドルと、前記ステアリングハンドルに連動連結したステアリング機構と、このステアリング機構を収納する略箱状のハンドル本体と、前記ハンドル本体の下方に配設し、ハンドルのチルト調節機能とテレスコ調節機能を有するチルト・テレスコ機構とによりステアリングユニットを構成すると共に、前記ステアリングユニットはキャビン前壁下部から上方に立ち上がり状に配設する
ことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記チルト・テレスコ機構はステアリングユニットの下部に配設すると共に、前記チルト・テレスコ機構は、キャビン前壁下部に取り付けた台座に固定するための固定プレートと、前記固定プレートに昇降自在に配設した六角状の支持軸と、運転部のサイドコラム側に配設したテレスコレバーにより前記支持軸の昇降調整をするテレスコ部と、前記支持軸の頭部に連設したハンドル本体の角度をチルト調節するために運転部のサイドコラム側に配設したチルトレバーにより変位させるチルト部とから構成する
ことを特徴とする請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記ステアリングハンドルの中央には、コンバインの各種作業形態を表示するモニターを配設する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−79498(P2011−79498A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−235451(P2009−235451)
【出願日】平成21年10月9日(2009.10.9)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】