説明

コーティング方法

【課題】基材に変形や組織変化を生じさせず、製造時間が短く、製造コストが安い簡単なプロセスで、高温酸化性および耐食性に優れる被膜を形成するコーティング方法を提供する。
【解決手段】コーティング方法は、Aイオン(Aは、CoまたはNiを示す。)を含む電解液中にMCrAlY粉末(式中、Mは、NiおよびCoから選択される少なくとも1種の元素を示し、AがCoであるときに少なくともNiを含み、AがNiであるときに少なくともCoを含む。)を分散させて得られた分散液中に、合金基材80を浸漬し、回動可能な筒状回転電極と筒状回転電極の表面を被覆する不織布層31とを有する回転電極装置10を用い、合金基材の表面が不織布層で被覆された筒状回転電極を転がしながら電解して、合金基材表面上に複合被膜層を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温の酸化雰囲気、腐食性雰囲気等で使用される耐熱部品のコーティング方法に関し、特に、ガスタービン、ジェットエンジン等の耐熱部品のコーティング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービン発電はエネルギー資源の有効利用の点から注目されている。ガスタービン発電は、燃焼器から排出される高温・高圧の燃焼ガスをタービン本体に導入し、動翼に直結した発電機の軸を回して発電するものである。
【0003】
一般に、ガスタービンは、ガスタービン入口温度を高温にするほど熱効率が高くなるため、高温・高圧に曝されるガスタービンの静翼や動翼には高い耐熱性が求められている。
【0004】
また、高温の燃焼ガスを用いると、燃焼ガス中に燃料中から生成した硫酸や海塩等の腐食成分が含まれやすく、ガスタービンの高温腐食や高温酸化が生じるため、ガスタービンには、耐熱性だけでなく耐食性も求められる。
【0005】
ガスタービンの静翼や動翼等の金属基材に、高い耐熱性および耐食性を備えた耐食被膜を形成する技術としては、たとえば、特公昭60−13056号公報(特許文献1)に、Ni基合金の表面にプラズマ溶射で堆積されたCoCrAlY被膜を形成することにより、所定の膨張係数を有する被覆Ni基合金製品が開示されている。特許文献1に開示される被覆Ni基合金製品は、高温酸化性、耐食性に優れる。
【0006】
しかし、プラズマ溶射は原料粉末を高温で溶融して基材等に吹き付ける方法であるため、高熱により基材全体が変形して歩留まりが低下したり、基材の組織に破壊や変形が生じ、この組織の修復のための熱処理により基材の寿命が低下したり製造コストが高くなるといった問題がある。また、プラズマ溶射は被覆層の形成に時間がかかるという問題もある。
【0007】
これに対し、高い耐熱性および耐食性を備えた耐食被膜をプラズマ溶射以外の方法で作製する技術が開示されている。たとえば、米国特許4789441号明細書(特許文献2)には、電気めっきにより得られ、CrAlY含有粒子を含む金属マトリクス相M(MはNi、Co、Feまたはこれらの金属の2種以上)からなる被覆層を有する被覆基材が開示されている。特許文献2に開示された被覆基材は、酸化性、耐食性に優れる。
【特許文献1】特公昭60−13056号公報
【特許文献2】米国特許4789441号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2に開示された被覆基材は、電気めっきにより得られるため、ガスタービン動翼等の複雑な形状の基材の表面に、特許文献2の被覆層を均一な厚さで形成することは困難であるという問題があった。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、基材に変形や組織変化を生じさせず、製造時間が短く、製造コストが安い簡単なプロセスで、高温酸化性および耐食性に優れる被膜を形成するコーティング方法を提供することを目的とする。
【0010】
を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るコーティング方法は、上記問題点を解決するものであり、Aイオン(Aは、CoまたはNiを示す。)を含む電解液中にMCrAlY粉末(式中、Mは、NiおよびCoから選択される少なくとも1種の元素を示し、かつ、前記AがCoであるときに少なくともNiを含み、前記AがNiであるときに少なくともCoを含む。)を分散させて得られた分散液中に、合金基材を浸漬し、回動可能な筒状回転電極とこの筒状回転電極の表面を被覆する不織布層とを有する回転電極装置を用い、前記合金基材の表面が前記不織布層で被覆された筒状回転電極を転がしながら電解して、前記合金基材表面上に複合被膜層を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るコーティング方法によれば、基材に変形や組織変化を生じさせず、製造時間が短く、製造コストが安い簡単なプロセスで、高温酸化性および耐食性に優れる被膜を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明に係るコーティング方法は、特定の分散液中に、合金基材を浸漬し、特定の回転電極装置を用いて電解して、合金基材表面上に特定の複合被膜層を形成するものである。
【0014】
[第1の実施形態]
本発明で用いられる電解装置の第1実施形態について、図面を参照して説明する。図1は、電解装置1の全体構成を示す図である。
【0015】
図1に示すように、電解装置1は、次の構成要素を備えている。すなわち、分散液97を満たした電解槽70と、この分散液97中に筒状回転電極21を備えた回転ドラム部11が浸漬されるように設置された回転電極装置10と、この回転電極装置10の回転ドラム部11を先端部に取り付けて、分散液97中で移動させるためのロボットアーム50と、このロボットアーム50の動きを制御する制御装置60と、回転ドラム部11から分散液97を噴出させるように回転電極装置10に接続された分散液供給ポンプ45と、分散液97を撹拌する攪拌器75と、を備えている。
【0016】
以下、上記各構成要素について、詳細に説明する。
【0017】
回転電極装置10は、前述のように回転ドラム部11に設けられた筒状の回転電極21を有しており、電解槽70の分散液97中で回転電極21とタービン動翼等の合金基材80との間に直流電圧を印加することにより、合金基材80の表面に複合皮膜層を形成する。
【0018】
直流電源40は、導線41、42を介して、回転電極装置10および合金基材80に直流電流を供給する。
【0019】
分散液供給ポンプ45は、回転電極装置10に分散液97を供給するものであり、その吸込口に接続される吸込側ホース46の端部は電解槽70の分散液97中に浸漬され、一方、吐出口に接続される吐出側ホース47の端部は回転電極装置10のドラム操作部材13の中空部に接続され、分散液97を回転電極装置10のドラム操作部材13に供給する。ドラム操作部材13内の分散液97は、軸支部材12の図示しない中空部を介して回転ドラム部11の図示しない中空部内に供給される。
【0020】
ロボットアーム50は、基部51と、基部アーム53と、中間アーム55と、先端アーム57と、基部51および基部アーム53を接続する関節部52と、基部アーム53および中間アーム55を接続する関節部54と、中間アーム55および先端アーム57を接続する関節部56と、を備える。
【0021】
先端アーム57は、回転電極装置10のドラム操作部材13と接続され、回転電極装置10を移動させることができるようになっている。
【0022】
制御装置60は、ロボットアーム50に電気的に接続され、ロボットアーム50の動きを制御する。制御装置60は、制御装置60内に予め入力された合金基材80の三次元形状のデータに基づき、ロボットアーム50の動きを制御する。
【0023】
制御装置60を用いて回転電極装置10の回転ドラム部11を合金基材80の表面形状に沿って動かすと、合金基材80の表面に膜厚の均一な複合被膜層を形成することができる。
【0024】
電解槽70は、回転電極装置10および合金基材80を浸漬可能になっている。電解槽70内には、分散液97を撹拌する攪拌器75が設けられ、MCrAlY粉末94を分散液97中で分散させることができるようになっている。
【0025】
(回転電極装置)
回転電極装置について、図面を参照して詳細に説明する。図2は、回転電極装置10を示す斜視図である。図3は、図2のA−A線に沿う断面の一部を模式的に示す断面図である。図4は、図2のB−B線に沿う断面を模式的に示す断面図である。
【0026】
図2に示すように、回転電極装置10は、筒状回転電極21を有する回転ドラム部11と、回転ドラム部11の両側面の側面部材22、22を軸支する軸支部材12と、軸支部材12に連接されるドラム操作部材13と、筒状回転電極21の表面を被覆する不織布層31とを備える。
【0027】
<回転ドラム部>
図2に示すように、回転ドラム部11は、筒状回転電極21と、筒状回転電極21の軸方向の両端面を閉塞する円盤状の側面部材22、22とからなり、円柱状になっている。側面部材22、22の中心部には、軸孔23、23が設けられ、軸支部材12を挿入可能になっている。
【0028】
図3および図4に示すように、回転ドラム部11は、筒状回転電極21の内部に中空部27が形成され、円筒状になっている。
【0029】
筒状回転電極21としては、たとえば、鉛電極、鉛基材の表面に金および白金を順次めっきしてなる複合電極、チタン電極、チタン基材の表面を白金でめっきしてなる複合電極が用いられる。これらの電極のうち、鉛基材の表面に金および白金を順次めっきしてなる複合電極、および、チタン基材の表面を白金でめっきしてなる複合電極は、耐食性が高いため好ましい。
【0030】
筒状回転電極21には、第1の液噴出孔25が複数個穿設される。第1の液噴出孔25は、中空部27内の分散液97を分散液供給ポンプ45の吐出圧により筒状回転電極21外に噴出させるものである。
【0031】
第1の液噴出孔25は、直径が、通常0.1mm〜0.5mm、好ましくは0.2mm〜0.4mmの範囲内にある。第1の液噴出孔25の直径がこの範囲内にあると、分散液97中のMCrAlY粉末94が通過可能であるため好ましい。
【0032】
<軸支部材12>
図2に示すように、軸支部材12は、棒状の基部12cと、基部12cの両端から直角方向に屈曲した中間部12b、12dと、中間部12b、12dからそれぞれ直角方向に屈曲した先端部12a、12eとからなり、外形が略C字状になっている。
【0033】
図3に示すように、軸支部材12は、先端部12a、12eがボールベアリング(軸受)17を介して回転ドラム部11の軸孔23、23に挿入される。回転ドラム部11は軸支部材12に回動自在に軸支される。
【0034】
軸支部材12は、内部に中空部28が設けられる。軸支部材12は、先端部12a、12eの端部に開口しており、中空部28が回転ドラム部11の中空部27に連通している。
【0035】
<ドラム操作部材13>
図2に示すように、ドラム操作部材13は、軸支部材12の基部12cに接続される。ドラム操作部材13は、内部に図示しない中空部が設けられ、この中空部が基部12cの中空部28に連通している。
【0036】
<不織布層>
図2に示すように、不織布層31は、筒状回転電極21の表面を被覆する。不織布層31としては、分散液97中の電解液が通過可能であり、かつ、MCrAlY粉末94が捕捉されるような大きさの目を有する不織布が用いられる。
【0037】
不織布層31は、分散めっきの際に、合金基材80と筒状回転電極21とを絶縁させるためのものである。このため、不織布層31の材質としては、絶縁性を有するが用いられる。不織布層31の材質としては、たとえば、合成繊維、ガラス繊維等からなる不織布が用いられる。
【0038】
不織布層31は、厚さが、通常500μm〜5000μmの範囲内にある。不織布層31の厚さがこの範囲内にあると、絶縁性を確保しつつ、電解液とMCrAlY粉末の通過性がよいため好ましい。
【0039】
図3および図4に示すように、不織布層31には、第2の液噴出孔35が複数個穿設される。ここで、第2の液噴出孔35とは、分散液97中のMCrAlY粉末94が通過可能な大きさの孔を意味する。
【0040】
不織布層31は、第2の液噴出孔35においてMCrAlY粉末94を含む分散液97全体が通過可能であり、第2の液噴出孔35でない部分において分散液97中のMCrAlY粉末94が通過できないようになっている。
【0041】
第2の液噴出孔35は、直径が、通常0.1mm〜0.5mm、好ましくは0.2mm〜0.4mmの範囲内にある。第2の液噴出孔35の直径がこの範囲内にあると、MCrAlY粉末94が通過可能であるため好ましい。
【0042】
不織布層31の第2の液噴出孔35は、筒状回転電極21の第1の液噴出孔25の部分に重なるように設けられることが好ましい。
【0043】
本発明に係るコーティング方法は、上記回転電極装置10を含む電極装置1を用い、特定の分散液97中で電解して、合金基材80表面上に特定の複合被膜層を形成するものである。
【0044】
(合金基材)
本発明で用いられる合金基材80は、Ni、CoおよびFeから選択される少なくとも1種の元素を主成分として含む超合金からなる。ここで、超合金とは、少なくとも耐熱性を有する合金を意味し、高温での耐酸化性、耐食性を有している。
【0045】
ここで、主成分とは、合金基材80を構成する金属元素の全モル数のうちで、Ni、CoおよびFeから選択される少なくとも1種の元素のモル数が、最も多いことを意味する。たとえば、合金基材80がNiと、Coと、Fe以外の金属とを含む合金である場合は、合金基材80を構成する金属元素の全モル数中で、NiおよびCoのモル数の合計値が最も多いことを意味する。
【0046】
合金基材80を構成する超合金の組成としては、たとえば、Ni60重量%、Cr16重量%、Co8.5重量%、Mo1.7重量%、の合金が挙げられる。
【0047】
合金基材80としては、上記組成の超合金からなるものである限り、形状は特に限定されないが、たとえば、タービンブレードの動翼、静翼、シュラウド、燃焼器等のガスタービン用部品等の、複雑な表面形状を有するものが好ましい。合金基材80が複雑な表面形状を有するものであると、通常の分散めっきでは厚さを均一にしにくい複合被膜層であっても、回転電極装置10を用いて厚さを均一にしやすいため、本発明の方法を用いる意義が大きい。
【0048】
合金基材80について、図面を参照して説明する。図5は、合金基材80がタービンブレードの動翼である場合の一例の外観を示す図である。図6は、図5のC−C線に沿う断面図である。
【0049】
図5に示すように、タービンブレードの動翼(合金基材)80は、基部81と、基部81から立設される翼部82とからなる。
【0050】
翼部82には、長手方向に貫通し、一方端が先端部83に開口する空気冷却孔85が設けられる。空気冷却孔85は他方端が基部81に連通しており、基部81側に設けた図示しない空気供給装置により冷却空気が供給される。冷却空気は、空気冷却孔85中を流れ、矢印G方向に排出される。
【0051】
図6に示すように、翼部82は、超合金からなり横断面が略三日月状の合金基材相91中に、空気冷却孔85が設けられる。
【0052】
次に、本発明で用いられる分散液について説明する。本発明で用いられる分散液は、特定の電解液中に、MCrAlY粉末を分散させて得られるものである。
【0053】
(電解液)
本発明で用いられる電解液は、特定の金属Aのイオンを含む。本発明に用いられる金属Aとしては、CoまたはNiが挙げられる。電解液は、金属Aイオンとして、通常、CoイオンまたはNiイオンのみを含む。電解液の具体例としては、スルファミン酸ニッケル水溶液、スルファミン酸コバルト水溶液が挙げられる。
【0054】
電解液中の金属Aイオンは、回転電極装置10の回転ドラム部11を陽極、合金基材80を陰極とした電気めっきにより、合金基材80表面上に金属Aのマトリクス相を形成する。金属Aのマトリクス相は、実質的に、CoまたはNiのいずれかで構成される。
【0055】
(MCrAlY粉末)
本発明で用いられるMCrAlY粉末は、金属M、Cr、AlおよびYからなる合金の粉末である。本明細書においてMCrAlY粉末とは、金属M、Cr、AlおよびYからなる合金の粉末であればよく、金属M、Cr、AlおよびYの組成比を限定しない意味で用いる。
【0056】
MCrAlY粉末は、分散めっきにより、合金基材80表面上に金属Aのマトリクス相中に分散して取り込まれ、金属Aのマトリクス相とMCrAlY粉末とで複合被膜層を形成するものである。
【0057】
MCrAlY粉末を構成する金属Mとしては、NiおよびCoから選択される少なくとも1種の金属元素が挙げられる。MCrAlY粉末の金属Mは、電解液中の金属AイオンのAがCoであるときMは少なくともNiを含み、AがNiであるときMは少なくともCoを含むように選択される。
【0058】
たとえば、電解液がCoイオンを含むものであるときは、MCrAlY粉末として、NiCrAlY粉末等が選択される。
【0059】
また、電解液がNiイオンを含むものであるときは、MCrAlY粉末として、CoCrAlY粉末等が選択される。
【0060】
電解液中の金属Aイオンの種類に応じてMCrAlY粉末がこのように選択されると、複合被膜層における金属Aのマトリクス相とMCrAlY粉末との界面で、NiおよびCoの金属間化合物が生成し、マトリクス相とMCrAlY粉末との接着性が高くなりやすいため好ましい。NiおよびCoの金属間化合物は、たとえば、複合被膜層に加熱処理を行うことにより形成される。
【0061】
MCrAlY粉末は、粒径が、通常10μmを超え30μm以下、好ましくは10μmを超え25μm以下である。MCrAlY粉末の粒径がこの範囲内にあると、合金基材80表面の保護に十分な膜厚の複合被膜層を作製したときに、気孔率が小さい複合被膜層を短時間で作製可能であるため好ましい。
【0062】
ここで気孔率とは、複合被膜層の全体積に占める空隙の体積の割合を示す指標である。気孔率は、たとえば、複合被膜層の断面写真における複合被膜層の全面積に対する空隙の面積の比率として算出される。
【0063】
MCrAlY粉末は、粒径が10μm以下であると、合金基材80表面の保護に十分な膜厚の複合被膜層を作製する時間が長くなったり、濡れ性が悪く、凝集して気孔率が増加したりするおそれがある。また、MCrAlY粉末は、粒径が30μmを超えると、合金基材80表面の保護に十分な膜厚の複合被膜層を作製したときに、複合被膜層の気孔率が大きくなるおそれがある。
【0064】
MCrAlY粉末は、たとえば粒径の上限値の目開きを有する篩と粒径の下限値の目開きを有する篩とを用いた分級や、サイクロン式の分級器を用いた分級を行うことにより、粒径を上記範囲内にすることができる。
【0065】
(分散液)
本発明で用いられる分散液は、上記電解液中に上記MCrAlY粉末を分散させて得られる。電解液中にMCrAlY粉末を分散させる方法としては、たとえば、電解液中にMCrAlY粉末を加えて攪拌させる方法が挙げられる。
【0066】
分散液は、前記MCrAlY粉末を、通常10g/l〜30g/l、好ましくは10g/l〜25g/l含む。分散液中のMCrAlY粉末の含有量がこの範囲内にあると、合金基材80表面の保護に十分な膜厚の複合被膜層を作製したときに、気孔率が小さい複合被膜層を短時間で作製可能であるため好ましい。
【0067】
分散液中のMCrAlY粉末の含有量が10g/l未満であると、合金基材80表面の保護に十分な膜厚の複合被膜層を作製する時間が長くなるおそれがある。
【0068】
また、分散液中のMCrAlY粉末の含有量が30g/lを超えると、合金基材80表面の保護に十分な膜厚の複合被膜層を作製したときに、複合被膜層の気孔率が大きくなるおそれがある。
【0069】
分散液は、電解時の温度が、通常40℃〜60℃、好ましくは45℃〜55℃である。電解時の分散液の温度がこの範囲内にあると、電解液中の金属イオンの析出が活性化されて短時間で皮膜形成ができたり、合金基材80表面に形成される複合被膜層の気孔率が小さくなったりするため好ましい。
【0070】
(電解)
本発明に係るコーティング方法は、上記回転電極装置10を含む電極装置1を用い、上記分散液中で電解して、合金基材80の表面上に特定の複合被膜層を形成する。
【0071】
次に、電極装置1の作用を説明する。
【0072】
(粗面化処理および洗浄処理工程)
はじめに、合金基材80に、ブラスト処理等の粗面化処理と、酸洗、アルカリ洗浄等の洗浄処理とを、必要により行う。粗面化処理および洗浄処理を行うと、合金基材80に対する複合被膜層の密着性が高くなるため好ましい。
【0073】
(分散液の撹拌工程)
一方、図1に示すように、電極装置1の電解槽70に分散液97を貯留した後、分散液97中に合金基材80を浸漬し、撹拌器75を用いて分散液97を撹拌させておく。
【0074】
分散液97を撹拌させておくことにより、分散液97中のMCrAlY粉末94が複合被膜層中に均一に巻き込まれる分散めっきが可能になる。ここで、分散めっきとは、分散液97中の電解液のAイオンが還元されて金属Aのマトリクス相を形成する際に、分散液97中のMCrAlY粉末94が金属Aのマトリクス相中に取り込まれるめっき方法を意味する。
【0075】
分散液97中に浸漬された合金基材80は、電解時に、分散液97と実質的に同じ温度にしておくことが好ましい。合金基材80と分散液97が実質的に同じ温度であると、電解液の温度低下を防止し、合金基材80の初層から高品質で均一な皮膜形成が可能になるため好ましい。
【0076】
(分散液の供給工程)
次に、分散液の供給工程として、分散液供給ポンプ45を稼動して、電解槽70中の分散液97を回転電極装置10の回転ドラム部11の中空部27内に供給する。回転ドラム部11の中空部27内に供給された分散液97は、分散液供給ポンプ45の吐出圧により、回転ドラム部11の第1の液噴出孔25を通過し不織布層31の第2の液噴出孔35から噴出される。
【0077】
(分散めっき工程)
さらに、分散めっき工程として、合金基材80の表面上に、不織布層31で被覆された筒状回転電極21を転がしながら、直流電源40を用い定電流で電解して、合金基材80の表面に分散めっきを行う。電解は、回転電極装置10の筒状回転電極21が陽極、合金基材80が陰極になるようにする。
【0078】
分散めっきは、AイオンおよびMCrAlY粉末94の供給源として、回転電極装置10の不織布層31と合金基材80との間に存在する分散液97と、不織布層31の第2の液噴出孔35から噴出される分散液97とを用いる。
【0079】
分散めっきにより、合金基材80の表面に複合被膜層92が形成され、合金基材80と複合被膜層92とからなる被覆層形成製品80Aが作製される。
【0080】
回転電極装置10の筒状回転電極21は、ドラム操作部材13に接続されたロボットアーム50によるドラム操作部材13の前後左右等への移動により合金基材80の表面を転がるようになっている。ロボットアーム50の動きは、制御装置60に予め入力された、タービンブレードの動翼等の合金基材80の三次元形状のデータに基づき、制御装置60で制御される。
【0081】
電解時の電流密度は、通常10A/dm〜30A/dm、好ましくは10A/dm〜25A/dmである。電解時の電流密度がこの範囲内にあると、合金基材80表面の保護に十分な膜厚の複合被膜層を作製したときに、気孔率が小さい複合被膜層を短時間で作製可能であるため好ましい。
【0082】
電解時の電流密度が10A/dm未満であると、合金基材80表面の保護に十分な膜厚の複合被膜層を作製する時間が長くなるおそれがある。また、電解時の電流密度が30A/dmを超えると、合金基材80表面の保護に十分な膜厚の複合被膜層を作製したときに、複合被膜層の気孔率が大きくなるおそれがある。
【0083】
被覆層形成製品80Aについて、図面を参照して説明する。図7は、被覆層形成製品80Aの外観を示す図である。図8は、図7のD−D線に沿う断面図である。
【0084】
図7に示すように、合金基材80の表面に複合被膜層が形成されたタービンブレードの動翼(被覆層形成製品)80Aは、基部81Aと、基部81Aから立設される翼部82Aとからなる。
【0085】
基部81Aは、分散めっきにより、図5に示した合金基材80の基部81の表面全体に複合被膜層92が形成されたものになっている。翼部82Aは、分散めっきにより、合金基材80の翼部82の表面のうち先端部83以外の部分に複合被膜層92が形成されたものになっている。
【0086】
図8に示すように、翼部82Aは、略三日月状の合金基材相91の表面に複合被膜層92が形成される。合金基材相91中の空気冷却孔85の内壁は電流が回りこみにくいため、複合被膜層92は通常形成されないが、形成されてもよい。
【0087】
複合被膜層92について、図面を参照して説明する。図9は、図8の部分Eを拡大して模式的に示す図である。
【0088】
図9に示すように、合金基材相91の表面に形成された複合被膜層92は、金属Aのマトリクス相93中にMCrAlY粉末94が略均一に分散している。
【0089】
複合被膜層が形成されたタービンブレードの動翼(被覆層形成製品)80Aは、必要により、加熱処理を行ってもよい。加熱処理は、超合金の種類によって異なる。好ましくは、用いる超合金の溶体化処理温度や時効処理温度で行う。加熱処理は、たとえば、800℃〜1200℃で60分〜300分加熱する。
【0090】
この加熱処理を行うと、複合被膜層92中の金属Aのマトリクス相93とMCrAlY粉末94とが合金化して金属間化合物を形成するため好ましい。
【0091】
金属Aのマトリクス相93とMCrAlY粉末94との結合は、マトリクス相93の金属Aと、MCrAlY粉末94のMとが相互に拡散して、Ni−Al、Co−Alの金属間化合物を生成することにより強固になる。
【0092】
また、複合被膜層92と合金基材80との結合は、MCrAlY粉末94のMと、合金基材80のNi、Co、Cr等とが相互に元素移動して金属間化合物を生成することにより強固になる。
【0093】
電解装置1を用いるコーティング方法によれば、めっきの際に回転電極装置10の移動がロボットアーム50で制御されるため、合金基材80の表面に空隙が少なく厚さが均一な複合被膜層92が得られる。
【0094】
[第2の実施形態]
次に、本発明で用いられる電解装置の第2実施形態1Aについて、図面を参照して説明する。第2の実施形態に示される電解装置1Aは、第1の実施形態に示された電解装置1において、回転電極装置10に代えて回転電極装置10Aを用いるとともに、吸込側ホースの吸込口46aにMCrAlY粉末94を捕捉する図示しないフィルターを設けたものである。
【0095】
回転電極装置10Aは、回転電極装置10において、不織布層31に代えて不織布層31Aを用いたものである。回転電極装置10Aと回転電極装置10とは、不織布層31と不織布層31Aとの相違点以外は、同じであるため、同一構成に同一符号を付し、構成および作用の説明を省略または簡略化する。
【0096】
電解装置1Aの外観構成は、電解装置1と同様であるため、電解装置1と同じ図1に示す。また、回転電極装置10Aの外観構成は、回転電極装置10と同様であるため、回転電極装置10と同じ図2に示す。
【0097】
図1および図2に示すように、回転電極装置10Aは、回転電極装置10において、不織布層31に代えて不織布層31Aを用いたものである。
【0098】
図10は、回転電極装置10Aにおける図2のB−B線に沿う断面を模式的に示す断面図である。
【0099】
図10に示すように、不織布層31Aには、不織布層31と異なり、第2の液噴出孔35が設けられない。このため、不織布層31Aは、分散液97中の電解液のみが通過し、MCrAlY粉末94が通過しないようになっている。
【0100】
電解装置1Aの吸込側ホースの吸込口46aには、MCrAlY粉末94を捕捉する図示しないフィルターが設けられる。MCrAlY粉末94を捕捉するフィルターとしては、たとえば不織布層31Aと同じ材質の不織布が用いられる。これにより、分散液供給ポンプ45は、回転電極装置10Aに電解液のみを供給する。
【0101】
次に、電極装置1Aの作用を説明する。電極装置1Aの作用は、電極装置1の作用に対して、分散液の供給工程に代えて電解液の供給工程を行う点、および分散めっき工程の内容の点で異なり、他の工程は同じである。このため、電解液の供給工程および分散めっき工程について説明し、他の工程については説明を省略する。
【0102】
(電解液の供給工程)
電極装置1Aを用いるコーティング方法は、分散液の撹拌工程の後に、電解液の供給工程を行う。電解液の供給工程は、吸込側ホースの吸込口46aにMCrAlY粉末94を捕捉するフィルターが設けられた分散液供給ポンプ45を稼動することにより、電解槽70に貯留された分散液97中の電解液のみを回転電極装置10Aの回転ドラム部11の中空部27内に供給する工程である。
【0103】
回転ドラム部11の中空部27内に供給された電解液は、分散液供給ポンプ45の吐出圧により、回転ドラム部11の第1の液噴出孔25を通過し不織布層31Aから浸出する。
【0104】
(分散めっき工程)
電解液の供給工程の後は、分散めっき工程として、合金基材80の表面上に不織布層31Aで被覆された筒状回転電極21を転がしながら、直流電源40を用い定電流で電解して、合金基材80の表面に分散めっきを行う。
【0105】
電解は、回転電極装置10Aの筒状回転電極21が陽極、合金基材80が陰極になるようにして行う。分散めっきは、AイオンおよびMCrAlY粉末94の供給源として、回転電極装置10Aの不織布層31Aと合金基材80との間に存在する分散液97と、不織布層31A全体から浸出する電解液とを用いる。
【0106】
分散めっきにより、合金基材80の表面に複合被膜層92が形成され、合金基材80と複合被膜層92とからなる被覆層形成製品80Aが作製される。電解時の電流密度は、電解装置1で電解する場合と同じである。
【0107】
電解装置1Aを用いるコーティング方法によれば、めっきの際に回転電極装置10Aの移動がロボットアーム50で制御されるため、合金基材80の表面に空隙が少なく厚さが均一な複合被膜層92が得られる。
【0108】
また、電解装置1Aを用いるコーティング方法によれば、不織布層31Aに孔明け加工をする必要がなく、回転電極装置10Aの製造コストが低くなる。
【0109】
さらに、電解装置1Aを用いるコーティング方法によれば、回転ドラム部11の中空部27内や回転ドラム部11の第1の液噴出孔25にMCrAlY粉末が詰まることがないため、電解装置1Aのメンテナンス性が電解装置1よりもよい。
【0110】
[第3の実施形態]
次に、本発明で用いられる電解装置の第3実施形態1Bについて、図面を参照して説明する。第3の実施形態に示される電解装置1Bは、第1の実施形態に示された電解装置1において、回転電極装置10に代えて回転電極装置10Bを用いるとともに、分散液供給ポンプ45を備えない構成にしたものである。
【0111】
回転電極装置10Bは、回転電極装置10において、回転ドラム部11に代えて回転ドラム部11Aを用いるとともに、不織布層31に代えて不織布層31Aを用いたものである。
【0112】
回転電極装置10Bと回転電極装置10とは、回転ドラム部11と回転ドラム部11Aとの相違点、および不織布層31と不織布層31Aとの相違点以外は同じであるため、同一構成に同一符号を付し、構成および作用の説明を省略または簡略化する。
【0113】
図11は、電解装置1Bの全体構成を示す図である。図12は、回転電極装置10Bを示す斜視図である。図13は、図12のF−F線に沿う断面図である。
【0114】
図11に示すように、電解装置1Bは、回転電極装置10Bと、直流電源40と、ロボットアーム50と、制御装置60と、電解槽70と、攪拌器75とを備える。
【0115】
図12に示すように、回転電極装置10Bは、筒状回転電極21Aを有する回転ドラム部11Aと、回転ドラム部11Aの両側面の側面部材22、22を軸支する軸支部材12と、軸支部材12に連接されるドラム操作部材13と、筒状回転電極21Aの表面を被覆する不織布層31Aとを備える。
【0116】
回転電極装置10Bは、分散液供給ポンプ45、吸込側ホース46および吐出側ホース47を有さず、ドラム操作部材13には吐出側ホース47は接続されない。
【0117】
図12および図13に示すように、回転ドラム部11Aの筒状回転電極21Aには、第1の液噴出孔25が設けられず、中空部27が筒状回転電極21Aの外部に連通していない。このため、筒状回転電極21Aの表面からは分散液97や電解液は噴出されない。
【0118】
また、中空部27は軸支部材12およびドラム操作部材13に連通するが、ドラム操作部材13には吐出側ホース47が接続されないため、分散液97や電解液は貯留されない。
【0119】
次に、電極装置1Bの作用を説明する。電極装置1Bの作用は、電極装置1の作用に対して、分散液の供給工程を行わない点、および分散めっき工程の内容の点で異なり、他の工程は同じである。このため、分散めっき工程にのみついて説明し、他の工程については説明を省略する。
【0120】
(分散めっき工程)
分散液の撹拌工程の後は、分散液や電解液の供給工程を行わずに、分散めっき工程を行う。分散めっき工程は、合金基材80の表面上に不織布層31Aで被覆された筒状回転電極21Aを転がしながら、直流電源40を用い定電流で電解して、合金基材80の表面に分散めっきを行うものである。
【0121】
電解は、回転電極装置10Bの筒状回転電極21Aが陽極、合金基材80が陰極になるようにして行う。分散めっきは、AイオンおよびMCrAlY粉末の供給源として、回転電極装置10Bの不織布層31Aと合金基材80との間に存在する分散液97のみを用いる。
【0122】
分散めっきにより、合金基材80の表面に複合被膜層92が形成され、合金基材80と複合被膜層92とからなる被覆層形成製品80Aが作製される。電解時の電流密度は、電解装置1で電解する場合と同じである。
【0123】
電解装置1Bを用いるコーティング方法によれば、めっきの際に回転電極装置10の移動がロボットアーム50で制御されるため、合金基材80の表面に空隙が少なく厚さが均一な複合被膜層92が得られる。
【0124】
また、電解装置1Bを用いるコーティング方法によれば、筒状回転電極21Aおよび不織布層31Aに孔明け加工をする必要がなく、回転電極装置10Bの製造コストが低くなる。
【0125】
さらに、電解装置1Bを用いるコーティング方法によれば、回転ドラム部11の中空部27内や回転ドラム部11の第1の液噴出孔25にMCrAlY粉末が詰まることがないため、電解装置1Bのメンテナンス性が電解装置1よりもよい。
【0126】
なお、電解装置1〜電解装置1Bにおいて、回転ドラム部11または回転ドラム部11Aは軸方向の長い一本の円筒状の部材で構成されるが、回転ドラム部として軸方向の短い扁平円柱状の部材を複数個軸方向に連接した構成としてもよい。すなわち、回転ドラム部である扁平円柱状部材を複数個軸方向が一致するように配置し、隣接する扁平円柱状部材の軸孔同士を図示しないゴムホース等の可撓性チューブで連接する構成にしてもよい。
【0127】
このような構成にすると、複雑な表面形状の合金基材80への回転ドラム部の追従性がよくなるため、回転ドラム部11または回転ドラム部11Aでは角度を変えて何回も転がす必要があるような場合でも、より少ない回数を転がすだけで厚さの均一な複合被膜層92を形成することができる。
【実施例】
【0128】
以下に実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されて解釈されるものではない。
【0129】
[実施例1]
図1に示す電極装置1の電解槽70内に下記分散液97を貯留し、撹拌器75で分散液97を撹拌した。この状態で、分散液97中に、図5に示す形状の61Ni−16Cr−8.5Co−1.7Mo−2.6W−残部他金属成分製タービンブレードの動翼80を浸漬し、動翼80の表面に、不織布層31で被覆された筒状回転電極21を転がしながら、下記電解条件で電解した。電解は、ロボットアーム50で筒状回転電極21の転がり具合を制御して、動翼80の表面に供給される電気量がどの場所でも均等になるようにして行った。
【0130】
動翼80の表面に作製された複合被膜層92について、膜厚と気孔率を測定した。膜厚は、平均値を用いた。気孔率は、下記方法により測定した。
【0131】
また、膜厚と気孔率に基づいて、複合被膜層92の総合評価を行った。評価は、電解時間である30分で作製される複合被膜層92が、膜厚300μm以上、かつ、気孔率2.0%以下であるものを合格とし、これ以外のものを不合格とした。この基準は、プラズマ溶射でNi基合金上にCoCrAlY被膜を膜厚300μm程度堆積させた場合に、CoCrAlY被膜の気孔率の合格基準が一般的に2.0%であることによるものである。なお、プラズマ溶射でCoCrAlY被膜を膜厚300μm程度堆積させるには、通常60分程度の長時間を要す。
【0132】
結果を表2に示す。
【0133】
(分散液)
分散液として、下記電解液に下記MCrAlY粉末を、分散液中の配合量が20g/lになるように分散させたものを用いた。
【0134】
(電解液)
電解液(スルファミン酸液)の条件を以下に示す。
【0135】
・Ni(NHSO・4HO:450g/l
・NiCl・6HO:10g/l
・HBO:40g/l
・HPO:20g/l
・pH:1.4
(MCrAlY粉末)
MCrAlY粉末の組成を表1に示す。表中のBal.は残部を意味する。
【0136】
MCrAlY粉末は、島津製作所株式会社製レーザ回折式粒度分布測定装置SALD−200Aを用いて測定した積算重量が50%時点の粒径である平均粒径D50が10μm超15μm未満のものを用いた。
【0137】
(電解条件)
分散液の液温:50℃
電流密度:20A/dm
電解時間:30分
【0138】
(気孔率の測定方法)
複合被膜層92の断面写真を撮影し、この断面写真で観察される複合被膜層92の全面積に対する空隙の面積の比率(%)を気孔率とした。
【0139】
[実施例2〜4、比較例1〜9]
MCrAlY粉末の粒径を表2に示すように変えた以外は、実施例1と同様にして、複合被膜層92を作製し、評価を行った。結果を表2に示す。
【0140】
[実施例5]
MCrAlY粉末の粒径を20μmとし、かつ電流密度を10A/dmに変えた以外は、実施例1と同様にして、複合被膜層92を作製し、評価を行った。結果を表3に示す。
【0141】
[実施例6〜9、比較例10〜17]
電流密度を表3に示すように変えた以外は、実施例5と同様にして、複合被膜層92を作製し、評価を行った。結果を表3に示す。
【0142】
[実施例10]
分散液中のMCrAlY粉末の配合量を10g/lとした以外は、実施例7と同様にして、複合被膜層92を作製し、評価を行った。結果を表4に示す。
【0143】
[実施例11〜13、比較例18〜25]
分散液中のMCrAlY粉末の配合量を表4に示すように変えた以外は、実施例10と同様にして、複合被膜層92を作製し、評価を行った。結果を表4に示す。
【表1】

【0144】
【表2】

【0145】
【表3】

【0146】
【表4】

【図面の簡単な説明】
【0147】
【図1】本発明で用いられる電解装置の全体構成を示す図。
【図2】電解装置を構成する回転電極装置を示す斜視図。
【図3】図2のA−A線に沿う断面の一部を模式的に示す断面図。
【図4】図2のB−B線に沿う断面を模式的に示す断面図。
【図5】合金基材の一例の外観を示す図。
【図6】図5のC−C線に沿う断面図。
【図7】複合被膜層が形成された合金基材(被覆層形成製品)の一例の外観を示す図。
【図8】図7のD−D線に沿う断面図。
【図9】図8の部分Eを拡大して模式的に示す図。
【図10】他の回転電極装置における図2のB−B線に沿う断面を模式的に示す断面図。
【図11】本発明で用いられる他の電解装置の全体構成を示す図。
【図12】他の回転電極装置を示す斜視図。
【図13】図12のF−F線に沿う断面図。
【符号の説明】
【0148】
1 電解装置
10 回転電極装置
11 回転ドラム部
12 軸支部材
12a、12e 軸支部材の先端部
12b、12d 軸支部材の中間部
12c 軸支部材の基部
13 ドラム操作部材
17 軸受
21、21A 筒状回転電極
22 側面部材
23 軸孔
25 第1の液噴出孔
27 回転ドラム部の中空部
28 軸支部材の中空部
31、31A 不織布層
35 第2の液噴出孔
40 直流電源
41、42 導線
45 分散液供給ポンプ
46 吸込側ホース
46a 吸込側ホースの先端部
47 吐出側ホース
50 ロボットアーム
51 ロボットアームの基部
52、54、56 ロボットアームの関節部
53 ロボットアームの基部アーム
55 ロボットアームの中間アーム
57 ロボットアームの先端アーム
60 制御装置
70 電解槽
75 撹拌器
80 複合被膜層形成前のタービンブレードの動翼(合金基材)
80A 複合被膜層形成後のタービンブレードの動翼(被覆層形成製品)
81 複合被膜層形成前のタービンブレードの動翼の基部(合金基材)
81A 複合被膜層形成後のタービンブレードの動翼の基部(被覆層形成製品)
82 複合被膜層形成前の翼部(合金基材)
82A 複合被膜層形成後の翼部(被覆層形成製品)
83 複合被膜層形成前のタービンブレードの動翼(合金基材)の先端部
85 空気冷却孔
91 合金基材相
92 複合被膜層
93 マトリクス相
94 MCrAlY粉末
97 分散液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Aイオン(Aは、CoまたはNiを示す。)を含む電解液中にMCrAlY粉末(式中、Mは、NiおよびCoから選択される少なくとも1種の元素を示し、かつ、前記AがCoであるときに少なくともNiを含み、前記AがNiであるときに少なくともCoを含む。)を分散させて得られた分散液中に、合金基材を浸漬し、回動可能な筒状回転電極とこの筒状回転電極の表面を被覆する不織布層とを有する回転電極装置を用い、前記合金基材の表面が前記不織布層で被覆された筒状回転電極を転がしながら電解して、前記合金基材表面上に複合被膜層を形成することを特徴とするコーティング方法。
【請求項2】
前記複合被膜層は、前記Aからなるマトリクス相中に前記MCrAlY粉末が分散されたものであることを特徴とする請求項1に記載のコーティング方法。
【請求項3】
前記回転電極装置は、
筒状回転電極とこの筒状回転電極の軸方向の両端面を閉塞し軸孔が設けられた側面部材とからなる回転ドラム部と、
この回転ドラム部の軸孔を軸支する軸支部材と、
この軸支部材に連接されるドラム操作部材と、
前記筒状回転電極の表面を被覆する不織布層と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載のコーティング方法。
【請求項4】
前記回転電極装置は、
前記回転ドラム部の内部に中空部が形成されるともに、前記筒状回転電極に前記中空部に連通する複数個の第1の液噴出孔が設けられ、
前記軸支部材およびドラム操作部材は、それぞれパイプ状になっていることを特徴とする請求項3に記載のコーティング方法。
【請求項5】
前記回転電極装置の中空部に前記電解液を供給する分散液供給ポンプをさらに備えることを特徴とする請求項4に記載のコーティング方法。
【請求項6】
前記第1の液噴出孔は、直径が0.1mm〜0.5mmの範囲内にあることを特徴とする請求項4に記載のコーティング方法。
【請求項7】
前記回転電極装置の不織布層は、この不織布層を貫通する複数個の第2の液噴出孔が設けられたことを特徴とする請求項3に記載のコーティング方法。
【請求項8】
前記第2の液噴出孔は、直径が0.1mm〜0.5mmの範囲内にあることを特徴とする請求項7に記載のコーティング方法。
【請求項9】
前記回転電極装置の筒状回転電極は、鉛基材の表面に金および白金を順次めっきしてなる複合電極であることを特徴とする請求項1に記載のコーティング方法。
【請求項10】
前記回転電極装置のドラム操作部材に接続されるロボットアームと、
このロボットアームの動きを制御する制御装置と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のコーティング方法。
【請求項11】
前記制御装置は、予め入力された前記合金基材の三次元形状のデータに基づき、前記ロボットアームの動きを制御することを特徴とする請求項10に記載のコーティング方法。
【請求項12】
前記分散液に含まれる前記MCrAlY粉末は、粒径が10μmを超え30μm以下であることを特徴とする請求項1に記載のコーティング方法。
【請求項13】
前記分散液は、前記MCrAlY粉末を10g/l〜30g/l含むことを特徴とする請求項1に記載のコーティング方法。
【請求項14】
電解時の電流密度は、10A/dm〜30A/dmであることを特徴とする請求項1に記載のコーティング方法。
【請求項15】
電解時の前記分散液の温度は、40℃〜60℃であることを特徴とする請求項1に記載のコーティング方法。
【請求項16】
前記分散液は、前記電解液がスルファミン酸ニッケル水溶液であり、前記MCrAlY粉末がCoCrAlY粉末であることを特徴とする請求項1に記載のコーティング方法。
【請求項17】
前記分散液は、前記電解液がスルファミン酸コバルト水溶液であり、前記MCrAlY粉末がNiCrAlY粉末であることを特徴とする請求項1に記載のコーティング方法。
【請求項18】
前記合金基材は、Ni、CoおよびFeから選択される少なくとも1種の元素を主成分として含む超合金からなることを特徴とする請求項1に記載のコーティング方法。
【請求項19】
前記合金基材および複合被膜層を800℃〜1200℃で60分〜300分加熱することを特徴とする請求項1に記載のコーティング方法。
【請求項20】
前記合金基材は、ガスタービン用部品であることを特徴とする請求項1に記載のコーティング方法。
【請求項21】
前記ガスタービン用部品は、タービンブレードであることを特徴とする請求項20に記載のコーティング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−228121(P2009−228121A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−78832(P2008−78832)
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】