説明

ゴム支承体の製造方法

【課題】作業スペースが限られている場所での設置が容易であって、かつ製造コストを低減したゴム支承体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】下部プレート5の表面に環状に側壁6を立設し、その側壁6の内部に未加硫のゴム板8と鋼板1とを交互に複数積層してなる積層体3を形成し、積層体3を上部プレート4を用いて上方から押圧しつつ下部プレート5及び側壁6を加熱して積層体3を加硫する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はゴム支承体の製造方法に関し、更に詳しくは、設置が容易であって、かつ製造コストを低減したゴム支承体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物や橋梁などの構造物の免震装置又は支持装置として、鋼板とゴム板とを複数積層した積層体又はゴム体の上下に金属製のプレートを取り付けたゴム支承体が用いられている(例えば、特許文献1を参照)。このゴム支承体の製造においては、あらかじめ積層体のゴム板又はゴム体を金型で加硫成形してから、ゴム支承体を組み立てるようにしている。そのため、製作工数が増えることとなり、ゴム支承体の製造コストを増加させることになっていた。
【0003】
一方、ゴム支承体が設置される場所、特に橋梁のゴム支承体を取り替えるような場所では、作業スペースが限られているため、設置が容易なゴム支承体が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−291676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、作業スペースが限られている場所での設置が容易であって、かつ製造コストを低減したゴム支承体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成する本発明のゴム支承体の製造方法は、下部プレートの表面に環状に側壁を立設し、該側壁の内部に未加硫のゴム板と鋼板とを交互に複数積層してなる積層体又はゴム体を形成し、該積層体又はゴム体を上部プレートを用いて上方から押圧しつつ前記下部プレート及び側壁を加熱して前記積層体又はゴム体を加硫する工程を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明のゴム支承体の製造方法によれば、ゴム支承体の構成部材である上部プレート、下部プレート及び側壁を金型とした加硫成形によりゴム支承体を製造するようにしたので、積層体のゴム板の加硫と、加硫成型後の積層体と構成部材の組み立てとを一度に行うことができるため、ゴム支承体の製造コストを低減することができる。
【0008】
また、構成部材を金型とすることで、取り扱いが容易な小型で密閉型のゴム支承体を一体的に製造することができるため、作業スペースが限られている場所でのゴム支承体の設置を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態からなるゴム支承体の製造方法により製造したゴム支承体の断面図である。
【図2】本発明の実施形態からなるゴム支承体の製造方法における最初の工程を説明する断面図である。
【図3】図2の次の工程を説明する断面図である。
【図4】最後の次の工程を説明する断面図である。
【図5】ゴム支承体の設置方法を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0011】
図1は、本発明の実施形態からなるゴム支承体の製造方法により製造したゴム支承体を示す。
【0012】
このゴム支承体は、鋼板1とゴム板2とを上下方向に交互に複数積層して構成した積層体3の上下端に、それぞれ上部プレート4と下部プレート5とを取り付けたものである。下部プレート5上には、積層体3の側面に密着するように金属製の側壁6が環状に立設されている。また、上部プレート4の底面には、側壁6の開口部に嵌合する突部であるせん断キー7が形成されており、そのせん断キー7を介して積層体4の上面に接している。このように、いわゆる密閉型のゴム支承体を構成している。
【0013】
このゴム支承体の製造方法を、図2〜図5を用いて以下に説明する。
【0014】
まず、下部プレート5上に環状に側壁6を立設する(図2)。ここで「環状」とは、水平方向の断面形状に関わらず、始端と終端が一致する閉じた形状のことを意味する。なお、この環状の側壁6の水平方向の断面形状としては、円形状又は矩形状としたものが例示される。
【0015】
次に、その側壁6内に未加硫のゴム板8と鋼板1とを交互に複数積層する(図3)。このとき、積層体3の高さは側壁6の高さよりも低くなるようにする。なお、それら未加硫のゴム板8と鋼板1との接合面の少なくとも一部に、接着剤を塗布して接着層を形成するようにしてもよい。
【0016】
そして、上部プレート4によりせん断キー7を介して積層体3を上方から押圧しつつ、熱盤9などにより下部プレート5及び側壁6を加熱して加硫成形を行う(図4)。なお、このとき上部プレート4も加熱するようにしてもよい。
【0017】
このように、ゴム支承体の構成部材である上部プレート4、下部プレート5及び側壁6を金型とした加硫成形によりゴム支承体を製造するようにしたので、積層体3のゴム板2の加硫と、加硫成型後のゴム支承体の組み立てとを一度に行うことができるため、ゴム支承体の製造コストを低減することができる。
【0018】
また、構成部材を金型とすることで、小型で取り扱いが容易な密閉型のゴム支承体を一体的に製造することができるため、作業スペースが限られている場所でのゴム支承体の設置を容易にすることができる。例えば、図5に示すような、橋梁10と橋台11との間の間隔が狭く、かつジャッキアップが困難な場所においては、ゴム支承体を一体として取り扱い易いため、単に水平移動させるだけで設置することができる。
【0019】
更には、積層体3を金型内から取り出す必要がなく、金属からなる構成部材の余熱を利用して加硫を進行させることができるため、加硫時間を短縮することができる。また、ゴム支承体ごとに製造仕様、例えばゴム板2の厚さ、断面形状や接着剤の塗布箇所などを容易に変更することが可能であるため、製造コストを増大させることなく多種類のゴム支承体を製造できるようになる。
【0020】
なお、上記の図5のように、高面圧に耐える性能を要求されるゴム支承体の場合には、積層体3の代わりに鋼板1のないゴム体を用いることもあるが、その場合でも上記の製造方法が適用できることはいうまでもない。
【0021】
本発明のゴム支承体の製造方法の用途は、特に限定するものではないが、上記の図5に示すような現場に既設されているゴム支承体の取替用ゴム支承体の製造に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0022】
1 鋼板
2 ゴム板
3 積層体
4 上部プレート
5 下部プレート
6 側壁
7 せん断キー
8 未加硫のゴム板
9 熱盤
10 橋梁
11 橋台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部プレートの表面に環状に側壁を立設し、該側壁の内部に未加硫のゴム板と鋼板とを交互に複数積層してなる積層体又はゴム体を形成し、該積層体又はゴム体を上部プレートを用いて上方から押圧しつつ前記下部プレート及び側壁を加熱して前記積層体又はゴム体を加硫する工程を有することを特徴とするゴム支承体の製造方法。
【請求項2】
前記上部プレートの底面に前記側壁の開口部に嵌合する突部を形成し、該突部を介して前記積層体又はゴム体を上方から押圧するようにした請求項1に記載のゴム支承体の製造方法。
【請求項3】
前記ゴム板と前記鋼板の接合面の少なくとも一部に接着剤を塗布するようにした請求項1又は2に記載のゴム支承体の製造方法。
【請求項4】
前記ゴム支承体が、橋梁の取替用ゴム支承体である請求項1〜3のいずれかに記載のゴム支承体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−226600(P2011−226600A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−98252(P2010−98252)
【出願日】平成22年4月21日(2010.4.21)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】