説明

ゴム製筒体の製造方法

【課題】ゴム製筒体の生産性、外観及び寸法精度を高めることができるゴム製筒体(ゴムホース)の製造方法の提供。
【解決手段】筒状の内型4の外周側に未加硫ゴム筒7を配置する。内型4の外周面を円錐台の側面から構成する。内型4をシャフト6に中心軸方向にスライド自在に外嵌する。筒状の外型5の大径側に内型4の小径側を挿入する。外型5の内周面を円錐台の側面から構成する。内型4を外型5に小径側に向けて押し込む。内型4の大径側端部の中心軸方向の移動を外型5に対して規制する。加硫成形用の熱によって内型4を小径側に熱膨張させる。内型4が外周側の未加硫ゴム筒7を外型5の内周面に押圧する。これによる加圧と加熱により未加硫ゴム筒7をゴムホース1に加硫成形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両端の内径及び外径が異なる円錐台状のゴムホースなどを製造するためのゴム製筒体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ゴム製筒体は、未加硫ゴム筒を内外から押圧しながら加熱することにより加硫成形して製造されている。ゴム製筒体のうち、内径に対する長さの比が比較的に小さいタイヤや空気ばねなどの製造には、未加硫ゴム筒の内側にバッグを挿入し、そのバッグの圧力で未加硫ゴム筒を外金型に押し付けるバッグ方式の加硫成形を採用することが多い(例えば特許文献1)。
【0003】
ただ、ゴムホースなどの長尺ゴム製筒体の製造にバッグ方式の加硫成形を採用しようとしても、バッグの挿入及び引き抜きが難しく、生産性が極端に低下する。さらに、柔らかいバッグを押し付けられるゴム製筒体の内周面に寸法変動や凹凸、段差を生じやすく、ゴム製筒体として、内部を流体が流れるゴムホースを製造する場合、特に、内部を摩耗性流体が流れるスラリーホースを製造する場合には、その製品に不具合を生じさせるおそれがある。
【0004】
そのため、ゴムホースなどの長尺ゴム製筒体の製造には、マンドレルに未加硫ゴム及び補強繊維を積層し、その外周を布締めして直接蒸気加硫する布巻き方式の加硫成形が採用されている。
【特許文献1】特開平6−23864
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、布巻き方式の加硫成形を採用する場合、ゴム製筒体の生産性が低く、製品の外観上の見栄えも悪くなりやすく、さらに製品の寸法精度も劣りやすい。
【0006】
本発明は、ゴム製筒体の生産性、外観及び寸法精度を高めることができるゴム製筒体の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る製造方法は、両端の内径及び外径が異なる円錐台状のゴム製筒体を製造するものである。その手順を説明すると、まず、円錐台の側面からなる外周面を有する筒状の内型の外周側に未加硫ゴム筒を配置して、内型を内型支持用のシャフトに外嵌する。次いで、円錐台の側面からなる内周面を有する外型に、この外型と大径側及び小径側の向きを合わせて内型を挿入する。その後、内型の大径側端部の外型に対する中心軸方向の移動を規制して、加硫成形用の熱によって内型を小径側に熱膨張させることにより、内型の外周側に配置した未加硫ゴム筒を外型の内周面に押圧して加硫成形する。
【0008】
この構成によれば、加硫成形する際、熱膨張して小径側に伸びる内型の外周面が外型の内周面に徐々に近接するので、未加硫ゴムを均一に流動させながら強く加圧することができる。これにより、ゴム製筒体の形状及び寸法を安定させると共に、残留空気を十分に排除してゴム製筒体の物性を安定させることができる。さらに、未加硫ゴム筒を加圧する内型及び外型に十分な剛性があるので、バッグ方式や布巻き方式のような寸法変動や凹凸、段差を生じさせることなく、ゴム製筒体を極めて安定した形状及び寸法に成形することができる。
【0009】
また、内型の外周面及び外型の内周面が円錐台の側面からなるので、内型及び外型を着脱する際の抵抗を小さくして、その着脱を極めて容易にすることができる。つまり、加硫成形前に内型を外型に挿入する際は、内型が所定の位置に達するまで、内型の外周側に配置した未加硫ゴム筒と外型の内周面との間にクリアランスがあり、加硫成形後に内型を引き抜く際は、その引き抜き始めとほぼ同時にゴム製筒体が内型又は外型と離間する。
【0010】
また、内型を自由に膨張させることによる中心軸方向の移動を利用して、中心軸方向に対して傾斜する内型の外周面と外型の内周面とを近接させるので、内型の両端を拘束して径方向にのみ膨張させる手法のように、内型、外型及びシャフトの強度を極端に大きく設定する必要がない。なお、シャフトは、軸状の部材であり、中実の軸状部材及びパイプ状の軸状部材を含む概念である。
【0011】
内型を熱膨張させてその外周面を外型の内周面に近接させるには、内型を樹脂製とし、外型を内型よりも熱膨張率の小さい鋼製とし、両者の熱膨張率の差によって内型を小径側に膨張させることにより、内型で未加硫ゴム筒を外型に押圧する手法を採用することができる。樹脂製の内型は、鋼製の外型よりも熱膨張率が十分に大きく、これらを組み合わせることにより、未加硫ゴム筒を強く加圧することができる。なお、あらかじめ外型だけを加熱しておき、外型に内型を押し込んだ後、内型だけを熱膨張させることにより、内型の外周面を外型の内周面に近接させる手法も採用可能である。
【0012】
内型をマンドレルとして利用することにより、内型の周りに未加硫ゴム筒を形成すれば、あらかじめ未加硫ゴム筒を形成してその未加硫ゴム筒を内型に装着する工程を省略することができる。
【0013】
また、本発明は、上記の製造方法によって円錐台状に製造されるゴム製筒体を提供する。このゴム製筒体は、ゴムのみから構成されるものであってもよいが、例えば内面ゴムと外面ゴムとの間にスチールコードのような補強繊維を配することにより、補強繊維を埋設してなる補強繊維層を設けることもできる。上記の製造方法は、加硫成形する際、未加硫ゴム筒をその全体に渡ってほぼ均一に加圧することができるので、未加硫ゴムの不均一な流動を生じさせにくく、補強繊維を埋設した構造であってもその補強繊維のずれをなくすことができる。
【0014】
大径側端の内径(D)に対する中心軸方向長さ(L)の比(L/D)が8〜40に設定されるゴム製筒体は、バッグ方式の加硫成形を採用しにくい長尺のゴム製筒体であり、上記の製造方法によって製造するのが好ましい。さらに、(L/D)が10〜20に設定されるゴム製筒体や、Dが50mm〜300mmに設定されるゴム製筒体、特にその中でもDが80mm〜200mmに設定されるゴム製筒体は、上記の製造方法によって製造するのがより好ましい。
【0015】
また、本発明は、未加硫ゴム筒を両端の内径及び外径が異なる円錐台状のゴム製筒体に加硫成形するための加硫成形型を提供する。
【0016】
具体的には、円錐台の側面からなる外周面を有し、外周側に未加硫ゴム筒を配置される筒状の樹脂製の内型と、この内型を支持するシャフトと、円錐台の側面からなる内周面を有し、内型よりも熱膨張率の小さい鋼製の外型とを備えた加硫成形型であり、その内型は、シャフトに外嵌されて外型に大径側及び小径側の向きを合わせて挿入されると共に、大径側端部の外型に対する中心軸方向の移動を規制され、加硫成形用の熱による外型との熱膨張率の差によって小径側に膨張することにより、未加硫ゴム筒を外型の内周面に押圧して加硫成形する。
【0017】
内型をシャフトの表面を直接に滑らせるようにしてもよいが、内型とシャフトとの間に鋼管などのパイプ状のスライド部材を介在させてもよい。シャフトに対して内型をより確実に滑らせることにより、内型の伸びを拘束する摩擦力の発生を確実に阻止することができる。
【0018】
外型に未加硫ゴム筒の外周面の全面を接触させるので、未加硫ゴム筒を加熱する加熱手段を外型に設けることにより、外型から未加硫ゴム筒に直接に熱を伝導させて効率よく加熱することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上のとおり、本発明によると、円錐台の側面からなる外周面を有する内型を円錐台の側面からなる外周面を有する外型に挿入し、その内型を熱膨張させて小径側に伸ばすことにより、内型の外周面と外型の内周面とで未加硫ゴム筒を加圧して加硫成形するようにしている。これにより、十分な剛性のある内型及び外型で未加硫ゴム筒を徐々にかつ強く加圧して加硫成形することができ、形状、寸法及び物性の極めて安定したゴム製筒体を製造することができる。また、内型及び外型の着脱を容易にすることができ、ゴム製筒体の生産性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明に係るゴム製筒体の製造方法を実施するための最良の形態について、図面を用いて説明する。図1は本発明に係る製造方法によって製造するゴムホースを示す図であり、下半分は側面図、上半分は断面図である。
【0021】
ゴムホース1は、一端の内径(D1)が他端の内径(D2)よりも大きく、肉厚(t)が全周及び全長に渡って一定の円錐台状のゴム製筒体とされ、内面ゴム1aと外面ゴム1bとの間に、補強繊維としてのスチールコードを埋設してなる補強繊維層2が設けられている。ゴムホース1の寸法は、例えば内径(D)が50mm〜300mm、中心軸方向長さ(L)が1000mm〜5000mm、一端(大径側端)の内径(D1)に対する中心軸方向長さ(L)の比(L/D1)が8〜40、肉厚(t)が10mm〜30mmに設定される。
【0022】
次に、ゴムホース1の製造方法を説明する。まず、ゴムホース1に加硫成形するための加硫成形型について説明する。図2はゴムホースの加硫成形に使用する加硫成形型の断面図である。
【0023】
加硫成形型3は、外周面でゴムホース1の内面を形成する筒状の内型4と、内周面でゴムホース1の外面を形成する筒状の外型5と、内型4を支持するシャフト6とを備え、内型4の外周面と外型5の内周面とで未加硫ゴム筒7を加圧して加硫成形するようになっている。
【0024】
内型4は、例えばポリプロピレン(PP)などの合成樹脂からなり、一端及び他端の外径がゴムホース1の一端(大径側端)の内径(D1)及び他端(小径側端)の内径(D2)とそれぞれ等しく設定され、外周面が円錐台の側面を構成している。内型4の内径は、中心軸方向に一定かつシャフト6の外径よりもわずかに大きく設定され、内型4がシャフト6に外嵌される。
【0025】
外型5は、その全周に熱媒体を注入する空洞8が形成された鋼製の筒体とされ、注入口9から空洞8にシリコンオイルやグリセリンなどの熱媒体を低圧給入するようになっている。外型5の一端及び他端の内径は、ゴムホース1の一端(大径側端)の外径(D1+t)及び他端(小径側端)の外径(D2+t)とそれぞれ等しく設定され、外型5の内周面が円錐台の側面を構成している。外型5の外径は、中心軸方向に一定に設定されている。なお、図2に示す外型5は、3つの分割体5a、5b、5cを中心軸方向にボルト10で連結して構成されている。
【0026】
シャフト6は、その外径が中心軸方向に一定で中心軸方向長さが内型4及び外型5よりも長く設定された鋼管とされ、その一端付近に、軸直角方向に突出するフランジ11が溶接固定されている。フランジ11は、外型5の一端(大径側端)をボルト締結されると共に、内型4の一端側(大径側)への移動を規制するようになっている。
【0027】
次に、加硫成形型3を使用してゴムホース1を製造する手順を説明する。図3はゴムホースの加硫成形を示す模式図で、(a)は加硫成形前の状態を示し、(b)は加硫成形後の状態を示す。なお、図3における加硫成形型3は、図2に示した加硫成形型3を簡略して示したものであり、外型5は、その外径を中心軸方向に変化させて一定の肉厚で示し、フランジ11は、シャフト6の一端に一体に示している。
【0028】
まず、内型4の外側に内面未加硫ゴムを巻き付けて、その外側に2層のスチールコードをそのバイアス方向を互いに交差させて配置し、その外側に外面未加硫ゴムを巻き付けることにより、内型4の外周側に未加硫ゴム筒7を形成する。この未加硫ゴム筒7を保持させたまま、内型4をシャフト6に外嵌して、内型4の一端(大径側端)をシャフト6のフランジ11に当接させる。
【0029】
次いで、シャフト6に外嵌したまま内型4を一端側から外型5に挿入し、中心軸方向に対して傾斜する内型4の外周面及び外型5の内周面を近接させ、内型4及び外型5に未加硫ゴム筒7を密着させる。すなわち、内型4を外型5にその大径側及び小径側の向きを合わせて挿入して、内型4の外周側の未加硫ゴム筒7を外型5の内周面に押し付ける。
【0030】
このとき、内型4の一端(大径側端)は、シャフト6のフランジ11によって一端側(大径側)への移動が規制されている。さらに、フランジ11に外型5の一端(大径側端)をボルト締結することにより、外型5に対する内型4の一端(大径側端)の中心軸方向の移動を規制し、図3(a)の状態を得る。
【0031】
その後、注入口9から空洞8にシリコンオイルやグリセリンなどの熱媒体を低圧給入し、その熱媒体をヒーターで加熱しながら循環させて、外型5を加熱する。なお、熱媒体は、高圧水蒸気などどのようなものであってもよく、熱媒体を用いることなく、外型5を伝熱ヒーターで直接加熱するようにすることもできる。
【0032】
外型5の熱が未加硫ゴム筒7を介して内型4に伝わり、この内型4を熱膨張させることにより、一端(大径側端)の移動を規制された内型4が他端側(小径側)に伸び、その他端が外型5の他端付近の平行部13に沿って他端側(小径側)に移動する。なお、外型5も熱膨張するが、内型4を構成する樹脂と外型5を構成する鋼材との熱膨張率の差により、外型5に対して相対的に内型4が他端側(小径側)に熱膨張する。
【0033】
図3(b)に示すように、内型4が熱膨張して他端側(小径側)に伸びることによって、中心軸方向に対して傾斜する内型4の外周面が外型5の内周面に近接し、これに伴って、未加硫ゴム筒7を矢印14の方向に押し付けて加圧する力が発生する。内型4の外周面は、スチールコードのずれを生じさせることなく未加硫ゴムを十分に流動させて残留空気を排除しながら、未加硫ゴム筒7を強く安定した力で均一かつ徐々に加圧する。
【0034】
このように、内型4及び外型5間で未加硫ゴム筒7を加圧しつつ、未加硫ゴム筒7を加熱することにより、内面未加硫ゴム及び外面未加硫ゴムを加硫成形する。
【0035】
加硫成形の完了後、内型4及びシャフト6を一端側(大径側)に引き抜き離型する。このとき、内型4及びゴムホース1が熱膨張しているが、内型4及び外型5が円錐台であることにより、外型5との間に離反応力が作用しているため、内型4及びシャフト6を冷却することなく容易に離型することができる。以上の製造方法により、内外面が滑らかでかつ高精度のゴム特性と寸法特性のゴムホース1を得る。
【0036】
次に、本発明に係る製造方法と従来の製造方法とを比較する。表1は本発明に係る製造方法と従来の3種類の製造方法との比較を示す表である。
【0037】
【表1】

【0038】
従来の製造方法のうち、Aは、布巻き方式の加硫成形(布巻き加硫)を用いた製造方法であり、マンドレルに内面未加硫ゴム、スチールコード及び外面未加硫ゴムを積層して未加硫ゴム筒を形成し、その外周側を布締めして直接蒸気加硫する製造方法である。
【0039】
Bは、バッグ方式の加硫成形(内バッグ外金型加硫)を用いた製造方法であり、成形ドラムから外した未加硫ゴム筒にバッグを挿入し、二つ割りの長尺外金型にセットしてプレス加硫する製造方法である。
【0040】
Cは、Bのバッグと金型の内外を逆転(マンドレル外バッグ加硫)した製造方法であり、マンドレルの周りに未加硫ゴム筒を形成して、これを加硫缶の内部に装着したバッグに挿入し、バッグに外圧を掛けて外側から加圧加硫する方法である。
【0041】
これらの製造方法によって製造するゴムホース1の寸法は、中心軸方向長さが3000mm、大径側端の内径がφ136、小径側端の内径がφ115、大径側端の外径がφ188、小径側端の外径がφ167である。内面ゴム1a及び外面ゴム1bは、天然ゴム55度の耐摩耗性ゴムであり、補強繊維層2に、互いに交差する2層のスチールコードを55°のバイアス角度で埋設している。本発明及び従来の製造方法における加硫条件は、全て160℃×70分である。
【0042】
表1が示すように、設備投資としては、従来の製造方法(A、B、C)が加硫缶を要し、さらに、製造方法Bが二つ割りの高価な金型及び加硫プレス(バッグ)を要し、製造方法Cが専用バッグ加硫設備(バッグ付の加硫缶)を要するのに対して、本発明は、安価な内型(円錐台円筒)及び外金型によって加硫成形することができる。
【0043】
また、製造したゴムホース1の品質を比較すると、内径精度、外径精度、見栄え(外観)、生産性、繊維角度(スチールコードのずれ)、エアー残留の6つの項目のうち、内径精度又は外径精度のいずれかが同程度の品質であることを除いて、本発明が従来の製造方法(A、B、C)よりも優れていることがわかる。
【0044】
上記構成によれば、未加硫ゴム筒7を十分な剛性のある内型4と外型5とで加圧して加硫成形するので、大型で非常に高価なバッグを不要にすると共に、バッグ方式や布巻き方式の加硫成形と比較して、ゴムホース1の寸法を極めて安定させることができる。特に、スラリー流体を圧送する耐摩耗ホースを製造する場合にも、スラリー流体の閉塞や異常流速を発生させる寸法変動を防止することができる。
【0045】
合成樹脂製の内型4と鋼製の外型5とを用いるので、両者を加熱しても熱膨張率の差を利用して、内型4で未加硫ゴム筒7を外型5に押圧することができる。具体的には、鋼材の線膨張率は、11〜16×10−6/℃、合成樹脂(ポリプロピレン、PP)の線膨張率は、8〜11×10−5/℃であり、合成樹脂の線膨張率は、鋼材の線膨張率の7〜10倍である。
【0046】
全長3000mmのゴムホース1を製造する際、加硫成形型3への組み込み温度を20℃、加硫温度を160℃に設定すると、内型4の中心軸方向の伸び量が8×10−5/℃×3000×(160−20)=33.6mmで、外型5の中心軸方向の伸び量が11×10−6/℃×3000×(160−20)=4.6mmであるため、相対的に内型4が29mm伸びることになる。
【0047】
内型4は、温度上昇に伴って徐々に熱膨張するので、内型4及び外型5とゴムとの離反や補強繊維のずれを生じさせることなく、未加硫ゴムを均一かつ十分に流動させて補強繊維層2との積層体に生じやすい残留空気を排除することができる。
【0048】
ゴムホース1の特定断面の面積を加硫前後で比較すると、例えば、未加硫ゴムが内型4及び外型5間に行き渡りつつ強く加圧されることにより、加硫前の13000mmが、加硫中に12459mmになる。これにより、加硫中に元の体積の96%まで圧縮されることになり、4%の圧縮量によって水分及び空気を十分に排除することができる。
【0049】
つまり、通常の未加硫ゴムには、水分及び空気が合計で1.5%〜2%残留しており、これを加硫成形中に排出する必要がある。また、外型5に挿入しやすいように、未加硫ゴム筒7を内型4及び外型5間の空間よりも少なくとも1%程度小さく設定しておくので、加硫成形時の未加硫ゴムの圧縮量を合計3%以上に設定する必要がある。これに対して、圧縮量が4%であるので、水分及び空気を十分に排除することができる。
【0050】
なお、圧縮量が5%を大きく上回ると、補強繊維層2を有する構造では、補強繊維の配置に不規則な変動を生じて、耐圧力の低下あるいは加圧時の異常変形を生じ、補強繊維層2のないゴムのみの構造では、余分なゴムが加硫成形型の隙間あるいはベントホールから排出される。
【0051】
内型4の外周面と外型5の内周面とを円錐台の側面から構成して中心軸方向に対して傾斜させるので、内型4の外型5への着脱が簡単であり、長尺なゴムホース1をも容易に製造することができる。さらに、内型4及びシャフト6を冷却する必要がない分、生産サイクルを早くし、エネルギー効率を高めることができる。なお、内型4を構成するポリプロピレンやナイロンは、ゴムと融着せず、離型剤などを用いずに簡単に脱型することができる。
【0052】
また、内型4が安価な樹脂製であり、外型5を二つ割り構造にする必要もないので、加硫成形型3の費用を安くすると共に、その組立解体を不要にすることができる。外型5は、加硫缶と比較すると非常に薄肉であり、軽量で安価な製造設備にすることができる。
【0053】
外型5の空洞8にシリコンオイルあるいはグリセリンなどの熱媒体を注入して加熱するので、加硫缶のような高圧蒸気圧力設備を不要にすることができる。その際、熱媒体は、単に外型5を加熱する熱エネルギーがあればよく、高圧である必要がないので、低圧給入することができる。また、未加硫ゴム筒7の外周面の全面が外型5に直接接触して熱伝導を受けるので、未加硫ゴム筒7を効率よく加熱することができる。樹脂製の内型4は、直接蒸気と接することがないので、その分、劣化しにくい。
【0054】
なお、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内において、適宜変更を加えることができる。例えば、内型4とシャフト6との間にパイプ状のスライド部材を介在させて、シャフト6に対して内型4をより確実に滑らせるようにしてもよい。また、内型4の内径とシャフト6の外径とを調節することで、内型4の熱膨張量を調節することもできる。
【0055】
内型4の材質は、ポリプロピレンに限らず、ナイロン66やその他の加硫温度に耐える材質を使用でき、シリコンゴムなどの耐熱ゴムの使用も可能である。さらに、内型4の材質を変更することで、熱膨張率を変えることもできる。
【0056】
未加硫ゴム筒7を加熱する手段としては、外型5に熱媒体を注入する代わりに、内型4に熱媒体を注入したり、加硫成形型3の全体を加硫缶に入れて加熱したりしてもよい。また、本発明に係る製造方法で製造するゴム製筒体は、ゴムホース1に限らず、円錐台状の筒体であれば、あらゆるゴム製品を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明に係る製造方法によって製造するゴムホースを示す図
【図2】ゴムホースの加硫成形に使用する加硫成形型の断面図
【図3】ゴムホースの加硫成形を示す模式図
【符号の説明】
【0058】
1 ゴムホース
2 補強繊維層
3 加硫成形型
4 内型
5 外型
6 シャフト
7 未加硫ゴム筒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端の内径及び外径が異なる円錐台状のゴム製筒体を製造する製造方法であって、円錐台の側面からなる外周面を有する筒状の内型の外周側に未加硫ゴム筒を配置して、前記内型を内型支持用のシャフトに外嵌し、次いで、円錐台の側面からなる内周面を有する外型に、該外型と大径側及び小径側の向きを合わせて前記内型を挿入し、その後、内型の大径側端部の外型に対する中心軸方向の移動を規制して、加硫成形用の熱によって内型を小径側に熱膨張させることにより、内型の外周側に配置した前記未加硫ゴム筒を外型の内周面に押圧して加硫成形することを特徴とするゴム製筒体の製造方法。
【請求項2】
前記内型を樹脂製とし、前記外型を前記内型よりも熱膨張率の小さい鋼製とし、両者の熱膨張率の差によって内型を小径側に膨張させることにより、内型で前記未加硫ゴム筒を外型に押圧することを特徴とする請求項1に記載のゴム製筒体の製造方法。
【請求項3】
前記内型をマンドレルとして利用することにより、前記内型の周りに前記未加硫ゴム筒を形成することを特徴とする請求項1又は2に記載のゴム製筒体の製造方法。
【請求項4】
請求項1、2又は3の製造方法によって円錐台状に製造されたことを特徴とするゴム製筒体。
【請求項5】
補強繊維を埋設してなる補強繊維層が設けられたことを特徴とする請求項4に記載のゴム製筒体。
【請求項6】
大径側端の内径(D)に対する中心軸方向長さ(L)の比(L/D)が8〜40に設定されたことを特徴とする請求項4又は5に記載のゴム製筒体。
【請求項7】
未加硫ゴム筒を両端の内径及び外径が異なる円錐台状のゴム製筒体に加硫成形するための加硫成形型であって、円錐台の側面からなる外周面を有し、外周側に前記未加硫ゴム筒を配置される筒状の樹脂製の内型と、該内型を支持するシャフトと、円錐台の側面からなる内周面を有し、前記内型よりも熱膨張率の小さい鋼製の外型とを備え、
前記内型は、前記シャフトに外嵌されて前記外型に大径側及び小径側の向きを合わせて挿入されると共に、大径側端部の外型に対する中心軸方向の移動を規制され、加硫成形用の熱による外型との熱膨張率の差によって小径側に膨張することにより、前記未加硫ゴム筒を外型の内周面に押圧して加硫成形することを特徴とする加硫成形型。
【請求項8】
前記内型とシャフトとの間にパイプ状のスライド部材が介在されたことを特徴とする請求項7に記載の加硫成形型。
【請求項9】
前記外型に、前記未加硫ゴム筒を加熱する加熱手段が設けられたことを特徴とする請求項7又は8に記載の加硫成形型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−30270(P2007−30270A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−214888(P2005−214888)
【出願日】平成17年7月25日(2005.7.25)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】