説明

シクロプロパン化の方法

ルイス酸、メタロセンおよび金属カルボニル複合体からなる群から選択された、触媒量の金属化合物の存在下での、2臭化メタンおよびトリ−(C〜C)−アルキルアルミニウム化合物から生成されたカルベノイドとの、アルケンの反応を含む、置換アルケンのシクロプロパン化の方法。前記方法は遷移金属化合物を触媒として有利に用い、2臭化メタンを回収できる。前記方法は、フレーバーおよびフレグランス工業のための材料の製造に対し、特に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシクロプロパン化化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なシクロプロパン化反応は、2ヨウ化メタンおよびZn(Cu)を用いるSimmons-Smith反応である(Simmons, H. E; Cairns, T. L.; Vladuchick, S. A.; Hoiness, C. M. Org. React. (N. Y.) 1973, 20, 1 - 131を参照のこと)。前記反応は、M−CH−X(M=金属、X=ハロゲン化物)型の中間生成物である、カルベノイドの形成を通して起こり、それはシクロプロパン化反応中に生成され、消費される。この反応の改良はFurukawaにより(Furukawa, J.; Kawabata, N.; Nishimura, J. Tetrahedron 1968, 24, 53 - 58)、およびのちにFriedrichらにより紹介され、2ヨウ化メタンを2臭化メタンで置き換えた。
【0003】
後者のカルベノイド前駆体は高価でないばかりでなく、好ましくないヨウ素およびヨウ化物の廃棄物を回避する。しかしながら、2臭化メタンの使用は、この反応において2ヨウ化メタンより反応性が低いという不利を有する。カルベノイドの形成のために亜鉛−銅カップル(zinc-copper couple)を活性化させるために、超音波または添加物、例えばハロゲン化銅およびハロゲン化アセチルなどの添加物の使用が必要である(Friedrich, E. C.; Niyati-Shirkhodaee, F. J. Org. Chem. 1991, 56, 2202 - 2205)。製造が後者の方法を利用する化合物の例は
【化1】

であり、フレグランス成分としてよく商品化されている分子である(EP 0 801 049を参照のこと)。しかしながら、この方法の残りの不利は、環境に不都合な亜鉛および銅を基礎とする廃棄物を生成することである。
【0004】
これらの不利を避ける1つの理論上の可能性は、2臭化メタンおよびトリアルキルアルミニウム化合物の組み合わせである。しかしながら、これは今までは実行可能な選択肢と見なされていなかった。例えば、彼の論文で、J. Org. Chem. 1991, 56, 2202 - 2205において、Friedrichは、「・・・CHBrの使用のみを(シクロプロパン化に対して)亜鉛/銅手順を採用するときに試験した、なぜなら、ZnEtまたはAlEtとともには2臭化メタンは反応すると報告されていなかったからである」と述べた。理論上の可能性はEP 0 801 049で言及されたが、それをどのように達成するかに関しての教示を提供しなかった。
【発明の開示】
【0005】
ある金属化合物を触媒量で添加する場合、シクロプロパン化反応において、2臭化メタンおよびトリアルキルアルミニウム化合物を効率的に利用することができるということが見出された。
【0006】
それゆえ、本発明は置換アルケンのシクロプロパン化のための方法を提供し、トリ−(C〜C)−アルキルアルミニウム化合物類以外のルイス酸類、メタロセン類および金属カルボニル複合体からなる群から選択された金属化合物の触媒量存在下の、2臭化メタンおよびトリ−(C〜C)−アルキルアルミニウム化合物から生成される、カルベノイドとのアルケンの反応を含む。
【0007】
「触媒量」により、1モル当量より多い反応物質とともに、結果として1モル当量より多い生成物が得られる、1モル当量より少ない金属化合物の量を意味する。
【0008】
この方法により、生成物のよい産生を得られるだけでなく、亜鉛および銅含有残留物がなくなる。金属化合物により得られる利点は、シクロプロパン化反応の反応率が増強されることであり、そのため2臭化メタンおよびトリアルキルアルミニウムの使用を少なくさせ、ならびに、著しく反応温度を低下させる。
【0009】
〜Cアルキル部分は、アルカン類、置換アルカン類、シクロアルカン類および置換シクロアルカン類を含んでもよい。(C〜C)アルキルアルミニウム化合物は、好ましくはトリイソブチルアルミニウム(TIBA)である。
【0010】
前記の方法は電子豊富なアルケン類に適用できる。かかるアルケン類の例は、モノ−、ジ−、トリ−またはテトラ−置換アルケン類を含む。置換基類を飽和または不飽和アルキルおよびアリール基類から選択してもよく、それら自体は官能基類、例えば(限定しないが)酸類、エステル類、アルコール類、エーテル類、アリルアルコール類、アリルエーテル類、アミン類、アリルアミン類、イミン類、アルケン類、アルデヒド類、シクロプロパン類およびケトン類などから選択してもよい。本発明が特によく機能するアルケン類は、3〜20の炭素またはヘテロ原子のサイズの環の環構造に組み込まれたアルケンを含む、少なくとも3つの置換基を有するアルケンであり、環自体を、例えば、上述と同様の置換基で置換することができる。
【0011】
同一分子中の反応性アルケン類および非反応性アルケン類の組み合わせを含む、本発明のシクロプロパン化反応を受けるアルケンの例は、以下の構造のものを含む:
【化2】

【0012】
アルケン類はまた、同じ分子中に、電子が豊富でないアルケン部位またはそのアリル基の部位に官能基を含むアルケン類であってもよく、アルキルアルミニウム化合物との複合体形成を受け、例えば、
【化3】

このようにして、アルケンをシクロプロパン化に対して立体的に防御する。これらの非反応性のアルケン類の例は、アリル基のアルコール類、アリル基のアミン類、ならびに共役カルボニル化合物類、共役ニトリル類、共役イミン類および共役オキシム類などの電子防御アルケン類などである。これらの非反応性アルケン類が、電子の豊富な反応性のものと同じ分子内で組合される場合、高い化学選択性で後者のみがシクロプロパン化を受ける。
【0013】
存在が本発明の機能に不可欠な金属化合物類は、トリ−(C〜C)−アルキルアルミニウム化合物類以外のメタロセン類、金属カルボニル複合体およびルイス酸類からなる群から選択される。これらの金属化合物の1つまたは2つ以上を、用いることができる。トリ−(C〜C)−アルキルアルミニウム化合物類は、自体は弱ルイス酸類であるが、それらは単独では本発明の利点をもたらさず、ルイス酸が金属化合物として望ましいとき、これらのトリ−(C〜C)−アルキルアルミニウム類以外のルイス酸類を添加しなければならない。
【0014】
これらの金属化合物の使用によりもたらされる割合の増強は、わずかから非常にわずかまでにわたる。効率的なルイス酸の例は、FeClおよびFeClを含み、アルケンのシクロプロパン化(開始材料)に関し、0.01〜30%、好ましくは1〜10%の濃度で用いる。効率的なメタロセン類の例は、少なくとも1つのシクロペンタジニエル−リガンドであり、例えば、3塩化シクロペンタヂエニルチタンCpTiClまたはシクロペンタヂエニル鉄ジカルボニル二量体[CpFe(CO)であり、これらを上記の濃度で用いる。金属カルボニル複合体の例は、ペンタカルボニル鉄Fe(CO)である。前記の添加は、反応をより少量の2臭化メタン、典型的には30当量の代わりに20モル当量で、およびより低い温度で可能にする利点を有し、85℃を越える反応物質の発熱分解が可能となるため、そのため、安全の限界が増加する。例えば、FeClとともに、この反応は次のように進行する。
【化4】

【0015】
好ましい態様において、剰余の2臭化メタンを回収する。本発明の機能には必須ではないが、かかる回収により費用が少なくなり、前記の方法を工業的に有望なものとする。前記の回収を以下のステップで実行する;
(i) 反応混合物に水性塩基を−10〜0℃の温度で添加する;
(ii) 生成した2つの相の混合物を室温までゆっくりと加温する;
(iii) 相を分離する;
(iv) イソプロパノールを有機相に添加する;および
(v) 共沸で乾燥し、減圧下で2臭化メタンを蒸発させる。
【0016】
典型的な例において、好まれるTIBAを用い、回収を以下のステップにより達成する;
(i) 反応混合物を水性塩基(好ましくは25%NaOH)に−10〜0℃の温度で添加する。イソブタンをイソブチルアルミニウム試薬から切断し、残存物を標的容器内で液化させる。
(ii) 生成した2相混合物をゆっくりと攪拌下で室温まで加温する。このようにして、ガス状のイソブタンの放出が起こり、それを冷却装置内で回収する。
(iii) 相を分離し、イソプロパノールを有機相へ添加したのちに、有機相を共沸で乾燥し、剰余2臭化メタンを減圧下で蒸発させ、最終的に蒸留により精製する。
【0017】
本発明での望ましい方法により、電子豊富なオレフィン類のシクロプロパン化を安価で効率的な方法でできるようにする。アルミニウムおよび鉄含有廃棄物は環境的には相対的に低い懸念事項となり、溶媒2臭化メタンをリサイクルでき、回収イソブタンを他の目的に用いたり燃焼させたりできる。
【0018】
前記の方法は、フレーバーおよびフレグランス成分の相対的に容易で高価でない製造を含む、多くの用途を有する。
今、本発明を以下の非限定の例を参照にしてさらに記載する。
【0019】
例1:
カンフォレンアルコールのシクロプロパン化:trans−2−(1,2,2−トリメチル−ビシクロ[3.1.0]ヘクス−3−イル)−エタノール
【化5】

2臭化メタン(72ml)中のカンフォレンアルコール(EP 0 116 903)(8g、50mmol)を、冷却(10〜20℃)下で純粋なTIBA(6.5 ml,25mmol)とともにシリンジを介して処理した。15分の攪拌後、無水FeCl(0.5g、3mmol)、次いで純粋なTIBA(39ml、0.15mol)を添加した。
【0020】
混合物を3時間、25℃で攪拌し、そののち−10〜0℃に冷却し、二本針を介して、25%NaOHへと−10〜0℃で吸い上げた。攪拌下で、二相混合物を室温までゆっくりと加温した。相を分離した。有機相を4%シュウ酸で、次いで濃縮NaHCOでpHが〜8になるまでずっと洗浄し、MgSO上で乾燥し、ろ過した。減圧下で溶媒を蒸発させたのち、油性残留物をbulb-to-bulb蒸留し(bp 108℃/0.1Torr)、7.3g(85%)の無色油を得た。
【0021】
【化6】

【0022】
例2
trans−[1−メチル−2−(1,2,2,5−テトラメチル−ビシクロ[3.1.0]ヘクス−3−イルメチル)−シクロプロピル]メタノール。
【化7】

(i) 前駆体の製造:trans−[1−メチル−2−(2,2,3,4−テトラメチル−シクロペント−3−エニルメチル)−シクロプロピル]メタノール:
【化8】

trans−[1−メチル−2−(2,2,3−トリメチル−シクロペント−3−エニルメチル)−シクロプロピル]−メタノール(dr=1:1)(Bajgrowicz, J. A.; Frank, I.; Frater, G.; Hennig, M., Helv. Chim. Acta 1998, 81, 1349 - 1358)(10g、48mmol)、ジヒドロピラン(4.3g、51mmol)および数滴の濃HCl(50mg)を4時間、25℃で攪拌した。メチルtert−ブチルエーテルを添加したのち、有機相を濃NaHCOおよび濃NaClでpH=7になるまで洗浄した。MgSO上での乾燥、ろ過そして蒸発により、14g(93%)の粗THP−エーテルを油として得(4異性体、93%純度、およびGC/MSによりM=292)、さらなる精製なしで次のエポキシ化を受けた。
【0023】
このようにして得られた粗THP−エーテル(11.7g、40mmol)をジクロロメタン(20ml)中に溶解した。無水NaCO(5.9g、56mmol)の添加ののちに、混合物を熱して42℃にし、40%過酢酸(10ml、56mmol)を2時間にわたって添加した。前記反応物をさらに1時間、この温度で攪拌した。水(50ml)を注意深く添加し、相を分離した。水相をジクロロメタンで抽出した。有機相を、10%NaOHおよび水でpH=7になるまで洗浄した。MgSO上での乾燥、ろ過そして蒸発により、12.3g(87%)の粗THP保護エポキシドを油として得(4異性体、87%純度およびGC/MSによりM=308)、さらなる精製なしで次のグリニャール添加/除去ステップを受けた。
【0024】
このようにして得られたTHP保護エポキシド(8.6g、28mmol)を、テトラヒドロフラン(94ml、0.28mol)中の3M塩化メチルマグネシウムで処理した。70℃で3日間ののち、溶液をNHCl上に0℃で注ぐ。メチル−tert−ブチルエーテル抽出およびpH=7になるまでの水での有機相の洗浄、MgSO乾燥、ろ過および蒸発により、10gのオレンジ油を得、それをメタノール(10g)およびパラ−トルエンスルホン酸(0.1g)で処理する。25℃で16時間ののち、メタノールを蒸発させ、濃NaHCOおよびメチルtert−ブチルエーテルを添加し、相を分離した。MgSO−乾燥、ろ過および有機相の蒸発により、7gのオレンジ油を得、シリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン/メチルtert−ブチルエーテル)により精製し、溶媒の蒸発およびクーゲルロール(Kugelrohr)蒸留ののち、1.9gのtrans−[1−メチル−2−(2,2,3,4−テトラメチル−シクロペント−3−エニルメチル)−シクロプロピル]−メタノールを無色油として得た(dr=1:1、84% GC−純度)。におい:白檀材、実質的。
【0025】
【化9】

【0026】
(ii) シクロプロパン化反応:trans−[1−メチル−2−(1,2,2,5−テトラメチル−ビシクロ[3.1.0]ヘクス−3−イルメチル)シクロプロピル]メタノールの製造:
【化10】

trans−[1−メチル−2−(2,2,3,4−テトラメチル−シクロペント−3−エニルメチル)−シクロプロピル]−メタノール(0.5g,2.2mmol)、2臭化メタン(3ml、45mmol)、TIBA(2ml、8mmol)およびFeCl(22mg、0.13mmol)から例1に記載のように製造され、bulb to bulb蒸留(bp 128℃/0.2Torr)ののちに、0.46g(85%)の無色油(dr=1:1、91% GC−純度)を得た。におい:白檀材、実質的。
【0027】
【化11】

【0028】
例3
Nor-Radjanolの末端選択的シクロプロパン化:trans−2−メチル−4−(1,2,2−トリメチル−ビシクロ−[3.1.0]ヘクス−3−イル)ブト−2−エン−1−オール
【化12】

2臭化メタン(1.4l、20mol)中のNor-Radjanol (Bajgrowicz, J. A.; Frank, I.; Frater, G.; Hennig, M., Helv. Chim. Acta 1998, 81, 1349 - 1358)(194g、1mol)へ、純TIBA(100g、0.5mol)を冷却下(10〜20℃)で二本針を介して添加した。15分後に、無水FeCl(22mg、0.13mmol)を1部分、次いでTIBA(620g、3.1mol)を二本針を介して添加した。前記混合物を4.5時間、25℃で攪拌し、冷却して−10〜0℃にし、冷却(−10〜0℃)した25%NaOHへと二本針を介して吸い上げた。攪拌下(注意!)で、2相混合物をゆっくりと室温へと加温した。
【0029】
展開したイソブタンを、−78℃での冷却トラップで回収した。相を分離した。有機相を4%シュウ酸で、次いで濃NaHCOでpH〜8になるまで洗浄した。イソプロパノール(110g、1.8mol)を有機相に添加し、水を減圧下で共沸で除去した。それから、残留無水2臭化メタンを減圧下で除去し、続いて残留物(bp160℃/0.1Torr)の蒸留により、190g(93%)の無色油(86% GC−純度、2% Nor-Radjanol 7% bis−シクロプロパン化副生成物)を得、その分析データ(NMR、MS、IR、におい)は文献(Bajgrowicz, J. A.; Frank, I.; Frater, G.; Hennig, M., Helv. Chim. . Acta 1998, 81, 1349 - 1358)で記載されるものと一致した。
【0030】
例4
これは、非金属化合物を用いる比較例である。
溶媒なしのDIBAH還元を介したNor-Radjaldehydeからのtrans−2−メチル−4−(1,2,2−トリメチル−ビシクロ−[3.1.0]ヘクス−3−イル)ブト−2−エン−1−オール
【化13】

【0031】
Nor-Radjaldehyde(US 4,052,341)(192g、1mol)へ、純DIBAH(179ml、1mol)を二本針を介して添加し、攪拌した。溶液を30分間25℃で攪拌した。2臭化メタン(2.1l、30mol)を添加し、溶液を60℃で加熱し、純TIBA(595g、3mol)を2時間にわたって二本針を介して添加した。反応温度を、わずかな外部冷却により、65〜75℃で、さらに2〜4時間の間、完全な変換がGCにより同定されるまで維持した。例3に記載されるワークアップにより、227g(>97%)の粗生成物を、わずかに黄色の油として得、その分析データ(NMR、IR、MS、におい)はこの化合物に関し、文献(Bajgrowicz, J. A.; Frank, I.; Frater, G.; Hennig, M., Helv. Chim. Acta 1998, 81, 1349 - 1358)に記載されるものに一致した。
【0032】
例1と比較して、FeClなしの場合で、より多くのTIBAおよびジブロモエタンを必要とし、より高い反応温度が必要であると分かった。FeClの使用により、より良好で、より経済的な方法を実現した。
【0033】
例5:
リナロールの末端選択的シクロプロパン化:5−(2,2−ジメチル−シクロプロピル)−3−メチル−ペント−1−エン−3−オール
【化14】

例1の記載により、リナロール(31g、0.2mol)、2臭化メタン(280ml)、純TIBA(140g、0.7mol)および無水FeCl(2g、60mmol)より製造した。25℃で6時間の後のワークアップおよび蒸留(bp 55℃/0.05Torr)により、22.5g(67%)のシクロプロパン化生成物を無色油として得、その分析データはWO 01/006853で記載されるものと一致した。におい:シトラス、グリーン、冷感、金属。
【0034】
例6: ゲラニオールの末端選択的シクロプロパン化:E−5−(2,2−ジメチル−シクロプロピル)−3−メチル−ペント−2−エン−1−オール
【化15】

例3の記載により、E−ゲラニオール(154g、1mol)、2臭化メタン(1.4l、20mol)、純TIBA(700g、3.5mol)および無水FeCl(10g、60mmol)より製造した。25℃で7時間後のワークアップにより、175gのシクロプロパン化生成物(81% GC−純度)を、黄色がかった油として得、蒸留(HO除去)に対して、および長時間においては不安定であった。におい:弱いゲラニオール。
【0035】
【化16】

【0036】
例7
6−メチル−ヘプト−5−エン−2−オンの還元/シクロプロパン化:4−(2,2−ジメチル−シクロプロピル)−ブタン−2−オール
【化17】

FeCl(0.5g、mmol)を攪拌下で、2臭化メタン(70ml、1mol)中の6−メチル−ヘプト−5−エン−2−オン(6.3g、50mmol)に10〜20℃で、次いでゆっくりと純TIBA(38ml、0.15mol)をこの温度で添加した。前記混合物を、7時間25℃で攪拌し、それから注意深く25%NaOHに−10〜0℃で注いだ。例1に記載のワークアップおよび蒸留(bp 50℃/0.07Torr)により、4.8g(67%)の無色油(80% GC−純度、dr 〜1:1)を得た。分析データ(NMR、MS、IR)は著作物(Perraud, R; Arnaud, P. Bull. Chem. Soc. Chim. Fr. 1968, 1540 - 1542)に記載のものと一致した。
【0037】
例8
イソユージノールのシクロプロパン化:trans−2−メトキシ−4−(2−メチル−シクロプロピル)フェノール
【化18】

例3に記載のようにして、イソユージノール(100g、0.61mol)、2臭化メタン(850ml、12.2mol)、純TIBA(422g、2.15mol)および無水FeCl(6g、37mmol)より製造した。25℃で7時間ののち(転換 44:56)、混合物を−10〜0℃に冷却し、二本針を介して2M HClに吸い上げ、−10〜0℃に冷却した。攪拌下(注意!)で、二相混合物をゆっくりと室温へと加温した。有機相を分離し、5%クエン酸および水でpH=7にまで洗浄した。MgSOでの乾燥、ろ過、溶媒の蒸発、次いで蒸留(bp 65℃/0.03Torr)により、50.1g(46%)のシクロプロパン化生成物を、無色油(93% GC−純度)として得た。分析データ(NMR、MS、IR、におい)は、EP 1 269 982でこの化合物に対して記載されるものと一致した。
【0038】
例9
ユージノールのシクロプロパン化:4−シクロプロピルメチル−2−メトキシ−フェノール
【化19】

例8で記載のように、ユージノール(50g、0.3mol)、2臭化メタン(425ml、6.1mol)、純TIBA(212g、1.06mol)および無水FeCl(3g、18mmol)より製造した。混合は、例8に記載の25℃で20時間後(57:43 転換)のワークアップであった。75℃/0.03Torrの蒸留により、基質(bp 75℃、0.03Torr)を分離し、21g(41g)の後者の化合物を無色油として得、その分析データ(NMR、MS、IR、におい)はEP 1 269 982に記載のものと一致した。
【0039】
例10
ゲラン酸エチルエステルの末端選択的シクロプロパン化:E−5−(2,2−ジメチル−シクロプロピル)−3−メチル−ペント−2−エノイック酸エチルエステル
【化20】

例7に記載のように、無水FeCl(0.1g、0.7mmol)、ゲラン酸エチルエステル(2.2g、11mmol)、2臭化メタン(31ml、0.44mol)および純TIBA(17ml、66mmol)より製造した。25℃での6時間ののちの、例1に記載のワークアップ、およびクゲルロール蒸留(bp 92℃/0.2Torr)により、1.2g(52%)の無色油を得た。におい:果実味、梨。
【0040】
【化21】

【0041】
例11
E/Z−ゲラニトリル(Geranitrile)のシクロプロパン化:E/Z−5−(2,2−ジメチル−シクロプロピル)−3−メチル−ペント−2−エンニトリル。
【化22】

例7に記載のようにではあるが、2周期で、E/Z−ゲラニトリル(dr=1:1)(77g、0.52mol)、2臭化メタン(2×720ml、10.3mol)、純TIBA(2×358g、1.8mol)および無水FeCl(2×5g、30mmol)より製造した。例1に記載の、25℃で17時間ののちのワークアップ、および蒸留(bp 95℃/0.06Torr)(第2サイクルのあと)により、50g(59g)のシクロプロパン化生成物(71% GC−純度、8%アルデヒド、11%アルコール、dr=1:1)を、無色油として得た。
【0042】
【化23】

におい:ヘスペリジン用、力強い、新鮮、ゲラニトリル
【0043】
例12
E−アンブレットリドのシクロプロパン化:trans−8−オキサ−ビシクロ[15.1.0]オクタデカン−9−オン
【化24】

例7に記載のようにではあるが、2サイクルで、E−アンブレットリド(20g、80mmol)、2臭化メタン(2×110ml、1.6mol)、純TIBA(2×47g、0.24mol)および無水FeCl(2×0.8g、5mmol)より製造した。例1に記載の、25℃で6時間後のワークアップ、および蒸留(bp130℃/0.04Torr)(第2サイクル後)、6.6g(30%)のシクロプロパン化生成物(97% GC−純度)を無色油として得た。
【0044】
【化25】

【0045】
例13
Nirvanolide(登録商標)のシクロプロパン化:cis−3−メチル−6−オキサ−ビシクロ[13.1.0]ヘキサデカン−7−オン。
【化26】

例7に記載のように、Nirvanolide (Frater, G.; Helmlinger, D.; Mueller, U. Givaudan-Roure (International) S.A., 1999, EP 908455)(20g、84mmol)、2臭化メタン(235ml、3.35mol)、純TIBA(100g、0.5mol)および無水FeCl(0.8g、5mmol)より製造した。25℃で5時間後の、例1に記載のワークアップ、および蒸留(bp 100℃/0.03Torr)により、8g(38%)のシクロプロパン化生成物を無色油として得た。におい:麝香様、金属、粉末様。
【0046】
【化27】

【0047】
例14
trans−3−(2−エトキシメチル−2−メチル−シクロプロピルメチル)−1,2,2−トリメチル−ビシクロ−[3.1.0]ヘキサン。
【化28】

(i) 前駆体の製造:E−4−(4−エトキシ−3−メチル−ブト−2−エニル)−1,5,5−トリメチル−シクロペンテン:
【化29】

【0048】
非水性テトラヒドロフラン(400 ml)中のNor-Radjanol (Bajgrowicz, J. A.; Frank, I.; Frater, G.; Hennig, M. Helv. Chim. Acta 1998, 81, 1349 - 1358)(60g、0.3mol)およびヨウ化エチル(73ml、0.47mol)の水溶液を、−50℃に冷却し、50%NaH(20g、0.42mol)を一部分添加する。攪拌下混合物をゆっくりと25℃まで加温し、冷却したで発熱が停止するまで冷却下でこの温度で保つ。メチルtert−ブチルエーテルでの希釈ののち、水を注意深く添加した。有機相を分離し、水でpH=7まで洗浄し、MgSO上で乾燥させた。ろ過および減圧下の溶媒の蒸発により、76gの残留物を得、蒸留(bp 65℃/0.03Torr)により61g(89%)の無色油を得た。におい:土様、田舎風、緑。
【0049】
【化30】

【0050】
(ii) E−4−(4−エトキシ−3−メチル−ブト−2−エニル)−1,5,5−トリメチル−シクロペンテンのシクロプロパン化: trans−3−(2−エトキシメチル−2−メチル−シクロプロピルメチル)−1,2,2−トリメチル−ビシクロ−[3.1.0]ヘキサン。
【化31】

例7に記載のようにして、E−4−(4−エトキシ−3−メチル−ブト−2−エニル)−1,5,5−トリメチル−シクロペンテン、2臭化メタン(28ml、0.4mol)、純TIBA(15ml、60mmol)および無水FeCl(0.2g、1.2mmol)より製造した。25℃で1.5時間ののち、例1に記載のワークアップ、およびクーゲルロール蒸留(bp 100℃/0.07Torr)により、0.9g(52g)のbis−シクロプロパン化生成物を無色油として得た(dr= 1:1)。
【0051】
【化32】

【0052】
例15
Z−シクロドデカンのシクロプロパン化:cis−ビシクロ[10.1.0]トリデカン
【化33】

例7に記載のように、Z−シクロドデカン(E/Z=3:1)(1.66g、10mmol)、2臭化メタン(14ml、0.2mol)、純TIBA(7.5ml、30mmol)および無水FeCl(0.1g、0.6mmol)より製造した。25℃で2時間ののち、例1に記載のワークアップおよびクーゲルロール蒸留(bp.60℃/0.07Torr)により、1.5g(83%)のシクロプロパン化生成物を無色油として得(シス/トランス=3:1)、その分析データ(NMR、MS)は文献(O'Connor, E. J.; Brandt, S.; Helquist, P.; J. Am. Chem. Soc. 1987, 109, 3739 - 3747)に記載のものと一致した.
【0053】
例16:
Nor-Radjanolの[CpFe(CO)−触媒シクロプロパン化:trans−2−メチル−4−(1,2,2−トリメチル−ビシクロ−[3.1.0]ヘクス−3−イル)ブト−2−エン−1−オール。
例3に記載のように、Nor-Radjanol(1.94g、10mmol)、2臭化メタン(14ml、0.2mol)、純TIBA(8.8ml、35mmol)より、および例のFeClの代わりに、シクロペンタジエニル鉄ジカルボニル二量体[CpFe(CO)(100mg、0.3mmol)とともに、製造した。25℃での3時間後のワークアップ、シリカゲルろ過およびbulb-to-bulb蒸留により、1.9g(91%)の無色油(85% GC−純度)を得、その分析データは例3で得られた同じ生成物に対して記載されたものと一致した。
【0054】
例17:
Nor-RadjanolのCpTiCl−触媒シクロプロパン化:trans−2−メチル−4−(1,2,2−トリメチル−ビシクロ−[3.1.0]ヘクス−3−イル)ブト−2−エン−1−オール。
例3に記載のように、Nor-Radjanol(1.94g、10mmol)、2臭化メタン(14ml、0.2mol)、純TIBA(8.8ml、35mmol)より、および例のFeClの代わりに3塩化シクロペンタジエニルチタンCpTiCl(100mg、0.3mmol)とともに、製造した。25℃での3時間ののちのワークアップおよびbulb-to-bulb蒸留により、1.8g(85%)の無色油(77% GC−純度)を得、その分析データは例3で得られた同じ化合物に対して記載されたものと一致した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
置換アルケンのシクロプロパン化の方法であって、触媒量の、トリ−(C〜C)−アルキルアルミニウム化合物以外のルイス酸、メタロセンおよび金属カルボニル複合体からなる群から選択される金属化合物の存在下での、アルケンと2臭化メタンおよびトリ−(C〜C)−アルキルアルミニウム化合物から生成されたカルベノイドとの反応を含む、前記方法。
【請求項2】
トリ−(C〜C)−アルキルアルミニウムがトリイソブチルアルミニウムである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
1〜5モル当量、好ましくは2.5〜3.5当量のトリ−(C〜C)−アルキルアルミニウム試薬を用いる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
5〜100モル当量の、より好ましくは25〜35当量の2臭化メタンを用いる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
金属化合物が、銅ハロゲン化物および鉄ハロゲン化物からなる群から選択されるルイス酸、好ましくはFeClおよびFeClである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
金属化合物が、少なくとも1つのシクロペンタジエニルリガンドを含有するメタロセンである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
アルケンのシクロプロパン化に関し、金属化合物を0.01〜30%、好ましくは1〜10%で用いる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
10〜20モル当量の2臭化メタンを用いる、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
剰余の2臭化メタンをさらなる使用のために回収する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
回収を以下のステップにより実行する、請求項9に記載の方法:
(i) 反応混合物を水性塩基に−10〜0℃の温度で添加する;
(ii) 生成した2相混合物を室温へとゆっくりと加温する;
(iii) 相を分離する;
(iv) イソプロパノールを有機相に添加する;および
(v) 共沸で乾燥し、減圧下で2臭化メタンを蒸散する。
【請求項11】
請求項1に記載の方法によるアルケンのシクロプロパン化を含む、フレーバーまたはフレグランス成分の製造方法。

【公表番号】特表2008−525324(P2008−525324A)
【公表日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−547143(P2007−547143)
【出願日】平成17年12月20日(2005.12.20)
【国際出願番号】PCT/CH2005/000763
【国際公開番号】WO2006/066436
【国際公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(501105842)ジボダン エス エー (158)
【Fターム(参考)】