説明

シクロヘキサン誘導体の製造方法

【課題】 VLA−4阻害作用と高い安全性を有する医薬品化合物(A)の効率的な製造方法およびその製造中間体を提供する。
【解決手段】 トランス型4−ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸の1,1−ジ置換エチル エステル(1)を出発原料とし、トランスかつ立体特異的ピロリジン環構築方法で製造した重要中間体(13)を経由し、医薬品化合物(A)を製造する方法を見いだして本発明を完成した。
【化1】


[式中、R1aおよびR1bは、それぞれ独立して低級アルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、または置換基を有していてもよいベンジル基を意味し、R6は低級アルキル基を意味する。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れたVLA−4阻害作用と安全性を有する化合物(A)の製造法に関する。より具体的には製造中間体として重要な化合物の立体選択的製造方法および新規重要中間体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
VLA−4は、単球、リンパ球、好酸球および好塩基球に発現している細胞接着関連分子であり、血管細胞接着分子−1(Vascular cell adhesion molecule−1;VCAM−1)等に対する受容体として働いていることが知られている。
【0003】
近年、VLA−4とVCAM−1によって介在される接着の選択的な阻害が、自己免疫疾患およびアレルギー性炎症疾患治療の解決手段となり得ることが報告されている。
【0004】
例えば、下記の式(A)
【0005】
【化1】

【0006】
(式中、R6は低級アルキル基を意味し、X1およびX2はそれぞれ独立して水素原子、フッ素原子または塩素原子を意味する。)
で表される化合物は、優れたVLA−4阻害作用と高い安全性を有する医薬化合物として期待されている(特許文献1)。
【0007】
上記化合物(A)を製造するには、下記のトランス型シクロヘキサンカルボン酸エステル誘導体(B)が重要な製造中間体となる。
【0008】
【化2】

【0009】
(式中、R11は低級アルキル基を意味し、R6は前記と同義である。)
【0010】
上記重要中間体(B)の従来の製造方法としては、以下の3つの方法が知られている(特許文献1〜3、但し、特許文献3は未公開)。
【0011】
特許文献1の製造方法
【0012】
【化3】

【0013】
特許文献2の製造方法
【0014】
【化4】

【0015】
特許文献3の製造方法
【0016】
【化5】

【0017】
特許文献1および特許文献2の方法では、ベンゼン環の還元反応によりシス型優位なシクロヘキサンカルボン酸エステル誘導体を製造し、金属塩基を用いて異性化・加水分解反応を行って、トランス体の比率を向上させ、引き続き再度エステル体に導いた後、シス型およびトランス型シクロヘキサンカルボン酸エステル誘導体の混合物をクロマトグラフィーで分離精製するか、t−ブトキシカルボニル基を除去して得られるアミン体を光学活性スルホン酸を用いる塩分割で所望のトランス型異性体を得ている。これらの製造法は、ベンゼン環の還元反応、シス・トランスの異性化反応、さらに両異性体の分離が必要であり、また不要なシス体の廃棄も必要である。また、特許文献3の方法は、特許文献1および特許文献2の製造方法に比べ、工程数が少ない利点は有するものの、依然として不要なシス異性体を除去するために高性能なシリカゲルカラムクロマトグラフィー装置を用いた分離精製工程を要するという問題点を有している。
【0018】
特に、上記特許文献1〜3の製造方法は、下記の
【0019】
【化6】

【0020】
シスおよびトランス異性体の混合物の分離精製工程が必須であり、大量かつ工業的に重要中間体(B)を製造する方法としては十分満足できるものではない。
【特許文献1】国際公開第2002/053534号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2004/099136号パンフレット
【特許文献3】特願2004−174457号 明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明の課題はVLA−4阻害作用と高い安全性を有する化合物(A)の効率的な製造方法を提供することにある。より詳細に述べるならば、製造中間体として重要な化合物(B)をトランス特異的に合成する方法を開発し、化合物(A)の効率的な製造方法を提供することにある。
【0022】
【化7】

【0023】
(式中、R6およびR11は前記と同義である。)
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明者は化合物(A)の効率的な製造方法について鋭意研究した結果、トランス型4−ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸をt−ブチル エステル等の1,1−ジ置換エチル エステルとした化合物(1)を出発原料とすることにより、化合物(A)を製造する各工程においてトランス/シス異性化が起こらず、トランス特異的に化合物(A)を製造する方法を見いだして本発明を完成した。
【0025】
すなわち本発明は、
1)一般式(1)
【0026】
【化8】

【0027】
(式中、R1aおよびR1bは、それぞれ独立して低級アルキル基、1または複数個の置換基を有していてもよいフェニル基、あるいは1または複数個の置換基を有していてもよいベンジル基を意味する。)
で表される化合物に塩基の存在下、(S)−(+)−エピハロヒドリンを作用させて、一般式(2)
【0028】
【化9】

【0029】
(式中、R1aおよびR1bは前記と同義である。)
で表される化合物を得、
続いて当該化合物(2)を金属触媒の存在下、下記の一般式(C−1)
【0030】
【化10】

【0031】
(式中、X3はMgCl、MgBr、MgI、またはLiを意味する。)
で表される化合物で処理して、一般式(3)
【0032】
【化11】

【0033】
(式中、R1aおよびR1bは前記と同義である。)
で表される化合物を得、
次に当該化合物(3)を下記の一般式(C−2a)または(C−2b)
【0034】
【化12】

【0035】
(式中、R2a、R2b、R2cおよびR2dは、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、またはニトロ基を意味する。)
で表される環状イミド誘導体との光延反応によって、一般式(4)
【0036】
【化13】

【0037】
(式中、R2eおよびR2fは、一緒になってスクシニル基、あるいは1または複数個の置換基を有していてもよいフタロイル基を形成することを意味し、R1aおよびR1bは前記と同義である。)
で表される化合物を得、
当該化合物(4)をヒドラジン類で処理して、一般式(5)
【0038】
【化14】

【0039】
(式中、R1aおよびR1bは前記と同義である。)
で表される化合物を得、
当該化合物(5)を、下記の一般式(C−3)
【0040】
【化15】

【0041】
(式中、R3は1または複数個の置換基を有していてもよいフェニル基を意味し、Y1は水酸基、または脱離基を意味する。)
で表される化合物と処理して、一般式(6)
【0042】
【化16】

【0043】
(式中、R1a、R1bおよびR3は前記と同義である。)
で表される化合物を得、
当該化合物(6)をヨウ素と処理して、一般式(7)
【0044】
【化17】

【0045】
(式中、R1a、R1bおよびR3は前記と同義である。)
で表される化合物を得、
当該化合物(7)を塩基の存在下に、下記の一般式(C−4)
【0046】
【化18】

【0047】
(式中、R4は1または複数個の置換基を有していてもよいベンジル基、あるいは1または複数個の置換基を有していてもよいベンズヒドリル基を意味し、X4は塩素原子または臭素原子を意味する。)
で表される化合物で処理して、一般式(8)
【0048】
【化19】

【0049】
(式中、R1a、R1b、R3およびR4は前記と同義である。)
で表される化合物を得、
当該化合物(8)を加水分解し、一般式(9)
【0050】
【化20】

【0051】
(式中、R1a、R1bおよびR4は前記と同義である。)
で表される化合物を得、
当該化合物(9)と、下記の一般式(C−5)
【0052】
【化21】

【0053】
(式中、R5は水素原子、低級アルキル基、あるいは1または複数個の置換基を有していてもよいフェニル基を意味する。)
で表される化合物との光延反応で、一般式(10)
【0054】
【化22】

【0055】
(式中、R1a、R1b、R4およびR5は前記と同義である。)
で表される化合物を得、
当該化合物(10)を加水分解して、下記の一般式(11)
【0056】
【化23】

【0057】
(式中、R1a、R1bおよびR4は前記と同義である。)
で表される化合物を得、
当該化合物(11)を塩基の存在下に、下記一般式(C−6)
【0058】
【化24】

【0059】
(式中、X5はハロゲン原子を意味し、R6は低級アルキル基を意味する。)
で表される化合物で処理して、一般式(12)
【0060】
【化25】

【0061】
(式中、R1a、R1b、R4およびR6は前記と同義である。)
で表される化合物を得、
当該化合物(12)を接触還元して、一般式(13)
【0062】
【化26】

【0063】
(式中、R1a、R1bおよびR6は前記と同義である。)
で表される化合物を製造する方法を提供する。
【0064】
2)また、一般式(13)
【0065】
【化27】

【0066】
(式中、R1aおよびR1bは、それぞれ独立して低級アルキル基、1または複数個の置換基を有していてもよいフェニル基、あるいは1または複数個の置換基を有していてもよいベンジル基を意味し、R6は低級アルキル基を意味する。)
で表される化合物を、下記一般式(14)
【0067】
【化28】

【0068】
(式中、X1およびX2は、それぞれ独立して水素原子、フッ素原子、または塩素原子を意味し、Y2は水酸基または脱離基を意味する。)
で表される化合物で処理して、一般式(15)
【0069】
【化29】

【0070】
(式中、X1、X2、R1a、R1bおよびR6は前記と同義である。)
で表される化合物を得、
当該化合物(15)を酸処理して、一般式(A)
【0071】
【化30】

【0072】
(式中、X1、X2およびR6は前記と同義である。)
で表される化合物を製造する方法を提供する。
【0073】
3)また、一般式(13)
【0074】
【化31】

【0075】
(式中、R1aおよびR1bは、それぞれ独立して低級アルキル基、1または複数個の置換基を有していてもよいフェニル基、あるいは1または複数個の置換基を有していてもよいベンジル基を意味し、R6は低級アルキル基を意味する。)
で表される化合物を、下記一般式(16)
【0076】
【化32】

【0077】
(式中、X1およびX2は、それぞれ独立して水素原子、フッ素原子、または塩素原子を意味し、Y3は水酸基または脱離基を意味する。)
で表される化合物で処理して、一般式(17)
【0078】
【化33】

【0079】
(式中、R1aおよびR1bは、それぞれ独立して低級アルキル基、1または複数個の置換基を有していてもよいフェニル基、あるいは1または複数個の置換基を有していてもよいベンジル基を意味し、R6は低級アルキル基を意味し、X1およびX2は、それぞれ独立して水素原子、フッ素原子、または塩素原子を意味する。)
で表される化合物を得、
当該化合物(17)を、下記一般式(18)
【0080】
【化34】

【0081】
(式中、Y4は水酸基又は脱離基を意味する。)
で表される化合物で処理して、一般式(15)
【0082】
【化35】

【0083】
(式中、X1、X2、R1a、R1bおよびR6は前記と同義である。)
で表される化合物を得、
当該化合物(15)を酸処理して、一般式(A)
【0084】
【化36】

【0085】
(式中、X1、X2およびR6は前記と同義である。)
で表される化合物を製造する方法を提供するものである。
【0086】
4)さらに、本発明は、シス/トランス混合物である一般式(1a)
【0087】
【化37】

【0088】
(式中、R10は、低級アルキル基を意味する。)
で表される化合物を塩基の存在下に、下記一般式(C−7)
【0089】
【化38】

【0090】
(式中、X6はハロゲン原子を意味し、R7は1または複数個の置換基を有していてもよいベンジル基、1または複数個の置換基を有していてもよいベンズヒドリル基、あるいは1または複数個の置換基を有していてもよいベンジルオキシメチル基を意味する。)
で表される化合物と反応させて、一般式(19)
【0091】
【化39】

【0092】
(式中、R7およびR10は前記と同義である。)
で表される化合物を得、
当該化合物(19)を塩基処理によりシス/トランスの異性化を行った後、エステルをアルカリ加水分解して、一般式(20)
【0093】
【化40】

【0094】
(式中、R7は前記と同義である。)
で表される化合物を得、
当該化合物(20)を、下記の一般式(C−8a)または(C−8b)
【0095】
【化41】

【0096】
(式中、R1aおよびR1bは、それぞれ独立して低級アルキル基、1または複数個の置換基を有していてもよいフェニル基、あるいは1または複数個の置換基を有していてもよいベンジル基を意味し、R8aおよびR8bは、同一または異なる低級アルキル基を意味する。)
で表される化合物と処理して、一般式(21)
【0097】
【化42】

【0098】
(式中、R1a、R1bおよびR7は前記と同義である。)
で表される化合物を得、
当該化合物(21)を接触還元後、トランス異性体をクロマトグラフィーにて分離精製して、一般式(1)
【0099】
【化43】

【0100】
(式中、R1aおよびR1bは前記と同義である。)
で表される化合物を製造する方法を提供する。
【0101】
5)また、本発明は、一般式(1b)
【0102】
【化44】

【0103】
で表される化合物を、下記の一般式(C−8a)または(C−8b)
【0104】
【化45】

【0105】
(式中、R1aおよびR1bは、それぞれ独立して低級アルキル基、1または複数個の置換基を有していてもよいフェニル基、あるいは1または複数個の置換基を有していてもよいベンジル基を意味し、R8aおよびR8bは、同一または異なる低級アルキル基を意味する。)
で表される化合物と処理して、一般式(22)
【0106】
【化46】

【0107】
(式中、R1aおよびR1bは前記と同義である。)
で表される化合物を得、
当該化合物(22)を下記の一般式(C−9)
【0108】
【化47】

【0109】
(式中、R9は水素原子、低級アルキル基、あるいは1または複数個の置換基を有していてもよいフェニル基を意味する。)
で表される化合物との光延反応で、一般式(23)
【0110】
【化48】

【0111】
(式中、R1a、R1bおよびR9は前記と同義である。)
で表される化合物を得、
当該化合物(23)をアルカリ加水分解して、一般式(1)
【0112】
【化49】

【0113】
(式中、R1aおよびR1bは前記と同義である。)
で表される化合物を製造する方法を提供する。
【0114】
6)また、本発明は、以下の一般式(1)〜(11)
【0115】
【化50】

【0116】
(式中、R1aおよびR1bは、それぞれ独立して低級アルキル基、1または複数個の置換基を有していてもよいフェニル基、あるいは1または複数個の置換基を有していてもよいベンジル基を意味する;
2eおよびR2fは、一緒になってスクシニル基、あるいは1または複数個の置換基を有していてもよいフタロイル基を形成することを意味する;
3は1または複数個の置換基を有していてもよいフェニル基を意味する;
4は1または複数個の置換基を有していてもよいベンジル基、あるいは1または複数個の置換基を有していてもよいベンズヒドリル基を意味する;
5は水素原子、低級アルキル基、あるいは1または複数個の置換基を有していてもよいフェニル基を意味する。)
で表される化合物を提供する。
【0117】
7)さらに、本発明は、一般式(C−2b)のR2a、R2b、R2cおよびR2dが水素原子であり、一般式(4)において、R2eとR2fが一緒になってフタロイル基である、上記1)に記載の製造方法を提供する。
8)また、本発明は、R1aおよびR1bがそれぞれメチル基である上記1)〜5)に記載の製造方法を提供する。
9)さらに、本発明は、R1aおよびR1bがそれぞれメチル基である、上記6)に記載の化合物を提供する。
【発明の効果】
【0118】
本発明の製造方法および中間体は、特許文献1に記載の、優れたVLA−4阻害作用を示し、かつ高い安全性を有する医薬化合物(A)の立体特異的な製造を可能とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0119】
以下に本発明を詳細に説明する。
ハロゲン原子とはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、およびヨウ素原子を意味する。
低級アルキル基とは直鎖状または分枝したC1〜C6のアルキル基を意味し、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、2−ペンチル基、4−メチル−2−ペンチル基等が挙げられる。
【0120】
1または複数個の置換基を有していてもよいフェニル基とは、無置換フェニル基、あるいはベンゼン環上の1または複数個の水素原子が他の置換基に置き換わってもよいフェニル基を意味し、置換基としてはハロゲン原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、メチルチオ基、エチルチオ基、n−プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、メタンスルフォニル基、エタンスルフォニル基、n−プロピルスルフォニル基、イソプロピルスルフォニル基、ニトロ基、アセチル基、プロピオニル基、シアノ基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、フェニル基等が挙げられる。
【0121】
1または複数個の置換基を有していてもよいベンジル基とは、無置換ベンジル基、あるいはベンゼン環上の1または複数個の水素原子が他の置換基に置き換わってもよいベンジル基を意味し、置換基としてはハロゲン原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、メチルチオ基、エチルチオ基、n−プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、メタンスルフォニル基、エタンスルフォニル基、n−プロピルスルフォニル基、イソプロピルスルフォニル基、ニトロ基、アセチル基、プロピオニル基、シアノ基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、フェニル基等が挙げられる。
【0122】
1または複数個の置換基を有していてもよいフタロイル基とは、1または複数個の置換基を有していてもよいオルトフタロイル基を示し、具体例としては、無置換のフタロイル基、4−ニトロフタロイル基、4−ブロモフタロイル基、4−メチルフタロイル基、3−ニトロフタロイル基、3−メチルフタロイル基、3−ブロモフタロイル基、4,5−ジクロロフタロイル基、3,4,5,6−テトラフルオロフタロイル基、3,4,5,6−テトラクロロフタロイル基、3,4,5,6−テトラブロモフタロイル基等が挙げられる。
【0123】
1または複数個の置換基を有していてもよいベンズヒドリル基とは、2個のフェニル基に、それぞれ同一または異なる1または複数個の置換基を有していてもよいジフェニルメチル基を意味し、具体例としては、無置換のベンズヒドリル基、2−メチルベンズヒドリル基、2−トリフルオロベンズヒドリル基、4−メチルベンズヒドリル基、4−メトキシベンズヒドリル基、4−トリフルオロベンズヒドリル基、4−フルオロベンズヒドリル基、3−トリフルオロメチルベンズヒドリル基、3,3’−ビス(トリフルオロメチル)ベンズヒドリル基、3,3’−ジフルオロベンズヒドリル基、3,3’−ジメトキシベンズヒドリル基、4,4’−ジフルオロベンズヒドリル基、4,4’−ジメトキシベンズヒドリル基、4,4’−ジメチルベンズヒドリル基等が挙げられる。
【0124】
1または複数個の置換基を有していてもよいベンジルオキシメチル基の具体例としては、無置換のベンジルオキシメチル基、4−クロロベンジルオキシメチル基等が挙げられる。
【0125】
以下にR1〜R10、X1〜X6およびY1〜Y4について説明する。
1aおよびR1bは、それぞれ独立して低級アルキル基、1または複数個の置換基を有していてもよいフェニル基、あるいは1または複数個の置換基を有していてもよいベンジル基を意味し、具体的にはメチル基、エチル基、イソプロピル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、2−ペンチル基、4−メチル−2−ペンチル基、フェニル基、4−クロロフェニル基、4−メチルフェニル基、4−メトキシフェニル基、ベンジル基、4−クロロベンジル基、4−メチルベンジル基および4−メトキシベンジル基等が挙げられる。これらの中で、メチル基、エチル基、フェニル基、ベンジル基等が好ましく、特にメチル基およびエチル基が好ましい。R1aおよびR1bがそれぞれメチル基であるのがより好ましい。
【0126】
2a、R2b、R2cおよびR2dは、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、またはニトロ基を意味する。好ましい例としては、水素原子、ハロゲン原子、またはニトロ基が挙げられ、特に水素原子が好ましい。さらに、R2a、R2b、R2cおよびR2dがいずれも水素原子であるのが好ましい。
【0127】
2eおよびR2fは、一緒になってスクシニル基、あるいは1または複数個の置換基を有していてもよいフタロイル基を形成することを意味する。好ましい例としては、1または複数個の置換基を有していてもよいフタロイル基が挙げられ、特に無置換のフタロイル基が好ましい。
【0128】
3は1または複数個の置換基を有していてもよいフェニル基を意味し、置換基の具体例としては、ハロゲン原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、メチルチオ基、エチルチオ基、n−プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、メタンスルフォニル基、エタンスルフォニル基、n−プロピルスルフォニル基、イソプロピルスルフォニル基、ニトロ基、アセチル基、プロピオニル基、シアノ基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、フェニル基等が挙げられる。
【0129】
4は1または複数個の置換基を有していてもよいベンジル基、あるいは1または複数個の置換基を有していてもよいベンズヒドリル基を意味する。置換基としては、例えばハロゲン原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、メチルチオ基、エチルチオ基、n−プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、メタンスルフォニル基、エタンスルフォニル基、n−プロピルスルフォニル基、イソプロピルスルフォニル基、ニトロ基、アセチル基、プロピオニル基、シアノ基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、フェニル基等が挙げられる。R4の好ましい例としては、ベンジル基、4−クロロベンジル基、4−ニトロベンジル基、ベンズヒドリル基等を挙げることができる。
【0130】
5は水素原子、低級アルキル基、あるいは1または複数個の置換基を有していてもよいフェニル基を意味し、好ましい例としては、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、フェニル基、4−クロロフェニル基、4−ニトロフェニル基等を挙げることができる。
【0131】
6は低級アルキル基を意味し、メチル基、エチル基またはn−プロピル基が好ましい。
【0132】
7は1または複数個の置換基を有していてもよいベンジル基、1または複数個の置換基を有していてもよいベンズヒドリル基、あるいは1または複数個の置換基を有していてもよいベンジルオキシメチル基を意味し、好ましい例としては無置換のベンジル基、4−メトキシベンジル基、3,4−ジメトキシベンジル基、4−クロロベンジル基、ベンジルオキシメチル基等が挙げられ、特に無置換のベンジルオキシメチル基が好ましい。
【0133】
8aおよびR8bは、同一または異なる低級アルキル基を意味し、好ましい例としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、イソブチル基等が挙げられ、特にメチル基が好ましい。
【0134】
9は水素原子、低級アルキル基あるいは1または複数個の置換基を有していてもよいフェニル基を意味し、好ましい例としては、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、フェニル基、4−クロロフェニル基、4−ニトロフェニル基等を挙げることができる。
【0135】
10は低級アルキル基を意味し、好ましい例としては、メチル基、エチル基等を挙げることができる。
【0136】
1〜Y4は水酸基または脱離基を意味し、脱離基としては例えばハロゲン原子、1−スクシンイミジルオキシ基、1−ベンゾトリアゾリルオキシ基、4−ニトロフェノキシ基、ペンタフルオロフェノキシ基、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、イソブチリルオキシ基、ピバロイルオキシ基、メチルチオ基、フェニルチオ基、4−メチルフェニルチオ基、4−クロロフェニルチオ基、2−ニトロフェニルチオ基等が挙げられる。好ましい例示としてはクロル原子、1−スクシンイミジルオキシ基、1−ベンゾトリアゾリルオキシ基、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、イソブチリルオキシ基、ピバロイルオキシ基が挙げられる。
【0137】
1およびX2は、それぞれ独立して水素原子、フッ素原子または塩素原子を意味する。
【0138】
3はMgCl、MgBr、MgI、またはLi意味し、これらの中でMgCl、MgBrまたはMgIが好ましい。
4はハロゲン原子を意味し、この中で塩素原子または臭素原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。
5はハロゲン原子を意味し、この中で臭素原子またはヨウ素原子が好ましい。
6はハロゲン原子を意味し、この中で臭素原子またはヨウ素原子が好ましい。
【0139】
光延反応に関しては、Mitsunobu O.らの総説(Synthesis,1981,1−28.)等に記載されている。光延反応に使用する試薬としては、3価のトリアルキルホスフィン(III)、あるいはトリアリールホスフィン(III)等のリン試薬、およびアゾジカルボン酸 ジアルキル エステル等のアゾ試薬が挙げられる。3価のリン試薬としてはトリフェニルホスフィンが好ましく、アゾ試薬としてはアゾジカルボン酸 ジエチル エステル、アゾジカルボン酸 ジイソプロピル エステル等が好ましい。
【0140】
また、本発明の製造方法において使用するエステル化反応、エステルの加水分解、イミドの開裂反応、アミノ基のアシル化反応等に関しては、『Protective Groups in Organic Synthesis,eds. by T.W.Greene and P.G.Wuts,John Wiley & Sons,Inc.,New York,1991』を参考とすることができる。
本発明の化合物は遊離または塩のいずれの形態で存在しても良く、例えば無機酸との付加塩としては、塩酸塩、臭化水素酸塩または硫酸塩等が挙げられ、有機酸との塩類の例示としては、酢酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、安息香酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、メタンスルホン酸塩またはベンゼンスルホン酸塩等が挙げられる。また、無機塩基または有機塩基の塩としてはアンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩等が挙げられ、これらの塩の水和物または溶媒和物も本発明に含まれる。
【0141】
また本発明の化合物が分子中に1個またはそれ以上の不斉中心を有するとき、特に明示していない場合は鏡像体、ラセミ体、ジアステレオマーおよびそれらの混合物をも包含するものである。また、本発明の化合物が幾何異性体を含むとき、シス化合物、トランス化合物およびそれらの混合物を包含する。さらに、本発明の化合物が互変異性体を含むときのいずれの互変異性体およびそれらの混合物を包含する。
【0142】
本発明の各工程を以下に説明する。
特許文献1の医薬化合物(A)は重要中間体(13)から、下記〔スキーム1〕に示す2つのルートで製造できる。一つの方法はアミン体(13)とカルボン酸(14)の縮合反応によって化合物(15)を合成して医薬化合物(A)に導く方法であり、もう一つは、化合物(13)を4−アミノフェニル酢酸誘導体(16)と縮合して化合物(17)に変換後、これを化合物(18)と縮合して前駆化合物(15)に誘導し、医薬化合物(A)を製造する方法である。
【0143】
〔スキーム 1〕
【0144】
【化51】

【0145】
(式中、R1aおよびR1bは、それぞれ独立して低級アルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、または置換基を有していてもよいベンジル基を意味し、R6は低級アルキル基を意味し、X1およびX2はそれぞれ独立して水素原子、フッ素原子、または塩素原子を意味し、Y2〜Y4は水酸基または脱離基を意味する。)
【0146】
式(13)で表される化合物は、以下の工程a〜lにより製造することができる。
[工程a ]
【0147】
【化52】

【0148】
(式中、R1aおよびR1bは、それぞれ独立して低級アルキル基、1または複数個の置換基を有していてもよいフェニル基、または1または複数個の置換基を有していてもよいベンジル基を意味し、Halはハロゲン原子を意味する。)
トランス−4−ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸エステル(1)を、塩基および触媒量の相関移動触媒の存在下に、光学活性な(S)−(+)−エピハロヒドリンと処理して化合物(2)を製造する。
(S)−(+)−エピハロヒドリンは、化合物(1)と化学論量的に等量から30倍等量の範囲、好ましくは5倍等量から20倍等量の範囲で使用するのが好ましい。塩基としては、50%水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物が好ましい。相関移動触媒としては臭化テトラブチルアンモニウム、水酸化ベンジルトリエチルアンモニウム、硫酸水素化テトラ−n−ブチルアンモニウム等の4級アンモニウム塩が好ましく、使用量は化合物(1)に対して5%等量から50%等量の範囲、特に5%等量から20%等量の範囲が好ましい。溶媒を使用する場合は、反応を阻害しないものであれば特に制限はないが、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン等の不活性塩素系溶媒が好ましい。反応温度は−10℃から80℃の範囲、特に0℃から室温の範囲が好ましい。反応時間は通常5分から3時間程度で完結する。
【0149】
[ 工程b ]
【0150】
【化53】

【0151】
(式中、X3はMgCl、MgBr、MgI、またはLiを意味し、R1aおよびR1bは前記と同義である。)
金属触媒とビニル化試薬は(C−1)をあらかじめ、反応溶媒中で反応させ、引き続いて化合物(2)を加えて処理することによって、化合物(3)を製造する。
金属触媒としては、銅(Cu)、ホウ素(B)、亜鉛(Zn)、水銀(Hg)またはガリウム(Ga)等の無機または有機塩等が挙げられ、このうち市販の臭化銅(I)・ジメチルスルフィ
ド錯体等の銅(I)触媒等が好ましく、金属触媒の使用量は、ビニル化試薬に対して化学量論的に0.01倍等量から0.1倍等量の範囲を使用でき、0.01倍等量から0.05倍等量の範囲が好ましい。ビニル化試薬(C−1)としては塩化ビニルマグネシウム、臭化ビニルマグネシウム、ヨウ化ビニルマグネシウム、ビニルリチウム等が挙げられ、塩化ビニルマグネシウム、臭化ビニルマグネシウム、ヨウ化ビニルマグネシウムが好ましく、特に臭化ビニルマグネシウムのテトラヒドロフラン溶液が好ましく、ビニル化試薬(C−1)の使用量は、化合物(2)に対して化学量論的に、等量から5.0倍等量の範囲を使用でき、1.2倍等量から3.0倍等量の範囲が好ましい。溶媒は反応を阻害しないものであれば特に制限はないが、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン等の不活性エーテル系溶媒等が好ましい。反応温度は−78℃から室温の範囲、特に−78℃から10℃の範囲が好ましい。反応時間は通常10分から2時間の範囲で完結する。反応終了後、反応混合液に飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて、反応を停止させることが好ましい。また、反応は窒素またはアルゴン等の不活性ガス気流下に実施することが好ましい。
【0152】
[ 工程c ]
【0153】
【化54】

【0154】
(式中、R2a、R2b、R2cおよびR2dは、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、またはニトロ基を意味し、R2eおよびR2fは、一緒になってスクシニル基、あるいは1または複数個の置換基を有していてもよいフタロイル基を形成することを意味し、R1aおよびR1bは前記と同義である。)
化合物(3)および環状イミド誘導体(C−2a)または(C−2b)から、有機リン試薬とアゾ試薬を用いた光延反応で化合物(4)を製造する。
環状イミド誘導体の量は化合物(3)に対し化学論量的に等量から1.2倍等量の範囲、特に等量から1.1倍の範囲が好ましい。アゾ試薬はアゾジカルボン酸 ジイソプロピル エステルが好ましく、使用する量は化合物(3)に対して等量から1.3倍等量を使用するのが好ましい。イミド誘導体としてはフタルイミドが好ましい。また、有機リン試薬としてはトリフェニルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン等が使用できるが、特にトリフェニルホスフィンが好ましい。有機リン試薬の量は、アゾ試薬に対して1%から10%程度の過剰量を用いることが好ましい。反応に使用する溶媒は、反応を阻害しないものであれば特に制限はないが、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン等の不活性エーテル系溶媒が好ましく、特にテトラヒドロフランが好ましい。反応温度は、−5℃から溶媒の沸点の範囲、特に0℃から溶媒の沸点の範囲が好ましい。また、本反応時間は通常1時間から24時間で完結する。さらに、本反応は窒素、アルゴン等の不活性ガス気流下に実施することが好ましい。
【0155】
[ 工程d ]
【0156】
【化55】

【0157】
(式中、R1a、R1b、R2eおよびR2fは前記と同義である。)
環状イミド誘導体(4)をヒドラジン類と処理して化合物(5)を製造する。
ヒドラジン類は、抱水ヒドラジン、メチルヒドラジン、フェニルヒドラジン等が使用可能であり、この中でメチルヒドラジンが好ましい。ヒドラジン類の量は、化合物(4)に対して化学論量的に等量から30倍等量の範囲が好ましい。反応に使用する溶媒は、反応を阻害しないものであれば特に制限はないが、ベンゼン、トルエン等の不活性炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン等の不活性エーテル系溶媒、エタノール等のアルコール系溶媒が好ましく、特にトルエン等の不活性炭化水素系溶媒が好ましい。反応温度は室温から溶媒の沸点の範囲で実施することが好ましい。また、反応時間は30分〜72時間の間で良いが、通常30分から2時間程度で完結する。
【0158】
[ 工程e ]
【0159】
【化56】

【0160】
(式中、R3は1または複数個の置換基を有していてもよいフェニル基を意味し、Y1は水酸基、または脱離基を意味し、R1aおよびR1bは前記と同義である。)
化合物(5)を塩基の存在下に、化合物(C−3)と処理して化合物(6)を製造する。
化合物(C−3)のY1の脱離基としては、例えばハロゲン原子、1−スクシンイミジルオキシ基、1−ベンゾトリアゾリルオキシ基、4−ニトロフェノキシ基、ペンタフルオロフェノキシ基、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、イソブチリルオキシ基、ピバロイルオキシ基、メチルチオ基、フェニルチオ基、4−メチルフェニルチオ基、4−クロロフェニルチオ基、2−ニトロフェニルチオ基、メチルスルホニルオキシ基、フェニルスルホニルオキシ基、4−メチルフェニルスルホニルオキシ基、4−クロロフェニルスルホニルオキシ基、2−ニトロフェニルスルホニルオキシ基等が挙げられる。Y1の好ましい例としては、塩素原子、1−スクシンイミジルオキシ基、1−ベンゾトリアゾリルオキシ基、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、イソブチリルオキシ基、ピバロイルオキシ基が挙げられる。この中で塩素原子が好ましく、化合物(C−3)としてはベンゾイル クロリド、4−クロロベンゾイル クロリドが好ましい。また、Y1が水酸基の場合は、公知の方法で、あらかじめ上記の脱離基に変換するか、前記の保護基に関する文献に従ってカルボン酸誘導体である化合物(C−3)を使用して化合物(6)を製造することができる。
化合物(C−3)は、化合物(5)と化学量論的に等量から1.5倍等量の範囲で用いることが好ましい。塩基としては、トリエチルアミン、エチルジイソプロピルアミン、N−メチルモルホリン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン等の有機アミンが使用可能であり、トリエチルアミン、エチルジイソプロピルアミンが特に好ましい。塩基の使用量は、化合物(5)に対して化学量論的に、等量から5倍等量の範囲を使用でき、1.5倍等量から3.5倍等量の範囲が好ましい。溶媒としては、反応を阻害しないものであれば特に制限はないが、トルエン等の炭化水素系溶媒、或はジエチル エーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン等の不活性ハロゲン化溶媒が好ましく、特に塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン等の不活性ハロゲン化溶媒がより好ましい。反応温度は−20℃から室温の範囲が好ましく、0℃から室温の範囲が好ましい。反応時間は30分から24時間の間で良いが、通常1時間から5時間程度で完結する。
【0161】
[工程f]
【0162】
【化57】

【0163】
(式中、R1a、R1bおよびR3は前記と同義である。)
化合物(6)をヨウ素と処理して化合物(7)を製造する。
使用するヨウ素の量は、化合物(6)に対して化学論量的に等量から5倍等量の範囲が好ましい。溶媒としては、反応を阻害しないものであれば特に制限はないが、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒が好ましく、特にテトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒と水の混合溶媒が好ましい。反応温度は−20℃から室温の範囲が好ましく、0℃から室温の範囲がより好ましい。反応時間は10分から24時間の間で良いが、通常30分から2時間程度で完結する。さらに、反応終了後、過剰のヨウ素を飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液で除去するとよい。
【0164】
[ 工程g ]
【0165】
【化58】

【0166】
(式中、R4は1または複数個の置換基を有していてもよいベンジル基、あるいは1または複数個の置換基を有していてもよいベンズヒドリル基を意味し、X4はハロゲン原子を意味し、R1a、R1bおよびR3は前記と同義である。)
化合物(7)を塩基の存在下に、化合物(C−4)と処理して化合物(8)を製造する。
化合物(C−4)はクロロぎ酸 ベンジル エステルが好ましく、市販のクロロぎ酸 ベンジル エステル(30%トルエン溶液)等の溶媒希釈溶液も使用できる。化合物(C−4)の使用量は、化学量論的に0.9倍等量から1.5倍等量の範囲が好ましい。塩基としては、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム等のアルカリ金属の重炭酸塩が好ましく、特にアルカリ金属の重炭酸塩を水溶液で使用するとよく、飽和重曹水が最も好ましい。塩基の使用量は、化合物(7)に対して化学量論的に、等量から10倍等量の範囲を使用でき、1.5倍等量から5倍等量の範囲が好ましい。溶媒としては、反応を阻害しないものであれば特に制限はないが、ジオキサン、テトラヒドロフラン等の不活性エーテル系溶媒、アセトニトリル等の不活性極性溶媒、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン等の不活性ハロゲン化溶媒および水の混合溶媒が好ましく、特にジオキサン等の不活性エーテル系溶媒および水の混合溶媒が好ましい。反応温度は−10℃から室温の範囲で実施可能であり、0℃から室温の範囲が好ましい。反応時間は10分から24時間の間で良いが、通常20分から2時間程度で完結する。
【0167】
[ 工程h ]
【0168】
【化59】

【0169】
(式中、R1a、R1b、R3およびR4は前記と同義である。)
化合物(8)をアルカリ加水分解して化合物(9)を製造する。
アルカリとしては水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物が好ましく、特に市販の1規定水酸化ナトリウム水溶液が好ましい。アルカリの量は、化合物(8)に対して化学量論的に等量から30倍等量の範囲を使用でき、好ましくは1.5倍等量から10倍等量の範囲が好ましい。溶媒としては、反応を阻害しないものであれば特に制限はないが、ジオキサン、テトラヒドロフラン等の不活性エーテル系溶媒、メタノール、エタノール等のアルコール系溶媒、または不活性エーテル系溶媒とアルコール系溶媒の混合溶媒が好ましく、特にテトラヒドロフランとメタノールの混合溶媒が好ましい。反応温度は−10℃から室温の範囲で実施可能であり、0℃から室温の範囲が好ましい。反応時間は10分から24時間の間で良いが、通常20分から2時間程度で完結する。
【0170】
[工程i]
【0171】
【化60】

【0172】
(式中、R5は水素原子、低級アルキル基、あるいは1または複数個の置換基を有していてもよいフェニル基を意味し、R1a、R1bおよびR4は前記と同義である。)
化合物(9)およびカルボン酸誘導体(C−5)を光延反応条件下に処理して化合物(10)を製造する。
カルボン酸誘導体(C−5)としては安息香酸、4−ニトロ安息香酸、酢酸、プロピオン酸、ギ酸等が好ましい。カルボン酸誘導体(C−5)の使用量は、化合物(9)に対して、化学量論的に等量から1.3倍等量の範囲であるのが好ましい。光延反応に用いるアゾ試薬はアゾジカルボン酸 ジイソプロピル エステルが好ましく、用いる量は化合物(9)に対して等量から1.3倍等量使用するとよい。また、光延反応に用いる有機リン試薬はトリフェニルホスフィンが好ましく、使用する量は、アゾ試薬に対して1%から10%程度の過剰量を用いることが好ましい。溶媒は、反応を阻害しないものであれば特に制限はないが、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン等の不活性エーテル系溶媒が好ましく、特にテトラヒドロフランが好ましい。反応温度は、−5℃から溶媒の沸点の範囲で実施可能であり、0℃から室温の範囲が好ましい。さらに、反応は窒素、アルゴン等の不活性ガス気流下に実施することが好ましい。反応時間は通常1時間から24時間で完結する。
【0173】
[工程j]
【0174】
【化61】

【0175】
(式中、R1a、R1b、R4およびR5は前記と同義である。)
【0176】
化合物(10)をアルカリ加水分解することにより化合物(11)を製造する。
溶媒としてはジオキサン、テトラヒドロフラン等の不活性エーテル系溶媒、メタノール、エタノール等のアルコール系溶媒、不活性エーテル系溶媒とアルコール系溶媒の混合溶媒が好ましく、特にテトラヒドロフランとメタノールの混合溶媒系が好ましい。アルカリとしては水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物が好ましく、特に1規定水酸化ナトリウム水溶液が好ましい。アルカリの量は化合物(10)に対して化学量論的な等量から30倍等量の範囲を使用でき、好ましくは1.5倍等量から10倍等量の範囲が好ましい。反応温度は−10℃から室温の範囲で実施可能であり、0℃から室温の範囲が好ましい。反応時間は10分から24時間の間で良いが、通常30分から5時間程度で完結する。
【0177】
[工程k]
【0178】
【化62】

【0179】
(式中、R6は低級アルキル基を意味し、X5はハロゲン原子を意味し、R1a、R1bおよびR4は前記と同義である。)
化合物(11)を塩基の存在下に、ハロゲン化アルキル(C−6)と処理して化合物(12)を製造する。
ハロゲン化アルキル(C−6)としてはヨウ化メチル、ヨウ化エチル、ヨウ化n−プロピル等のヨウ化物が好ましい。ハロゲン化アルキル(C−6)の量は、化合物(11)に対して1.5倍等量から30倍等量の過剰量を用いるのが好ましく、2等量から20等量の範囲が好ましい。塩基は水素化ナトリウム、水素化リチウム等のアルカリ金属類の水素化物が好ましい。反応温度は−10℃から室温の範囲で実施可能であり、0℃から室温の範囲が好ましい。また、反応時間は10分から24時間の間で良いが、通常30分から2時間程度で完結する。さらに反応は窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で実施することが好ましい。
【0180】
[工程l]
【0181】
【化63】

【0182】
(式中、R1a、R1b、R4およびR6は前記と同義である。)
化合物(12)を接触還元して化合物(13)を製造する。
触媒としては、パラジウム/炭素、水酸化パラジウム、二酸化白金等が使用でき、この中で水酸化パラジウムが好ましい。触媒の量は、化合物(12)に対する重量%(W/W)で3%から200%の範囲が好ましく、特に5%から100%の範囲が好ましい。水素圧としては常圧から5MPaの範囲が好ましい。溶媒としては、反応を阻害しないものであれば特に制限はないが、エタノール、メタノール等のアルコール系溶媒、酢酸エチル等のエステル系溶媒、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒が好ましく、特にアルコール系溶媒が好ましい。反応温度は0℃から80℃の範囲が好ましく、特に室温から50℃程度が好ましい。反応時間は30分から24時間の間で良いが、通常1時間から3時間程度で完結する。
【0183】
[工程m]
【0184】
【化64】

【0185】
(式中、X1およびX2はそれぞれ独立して水素原子、フッ素原子または塩素原子を意味し、Y2は水酸基または脱離基を意味し、R1a、R1bおよびR6は前記と同義である。)
化合物(13)を塩基存在下に、化合物(14)(特許文献1)で処理することにより、化合物(15)を製造する。
化合物(14)の使用量は、化合物(13)に対して化学量論的に、0.95倍等量から1.2倍等量の範囲であるのが好ましい。塩基としてはトリエチルアミン、N−メチルモルホリンまたは4−(N,N−ジメチルアミノ)ピリジン等の有機アミン系塩基を挙げることができ、化合物(13)に対して化学量論的に等量から10倍等量の範囲で、特に等量から5倍等量の範囲で使用するのが好ましい。Y2が水酸基である場合は、公知の方法で、あらかじめ上記の脱離基に変換するか、前記の保護基に関する文献に従ってカルボン酸誘導体である化合物(14)を使用して化合物(15)を製造することができる。また、Y2が水酸基の場合には、縮合剤を用いることができ、縮合剤としては1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、N,N−ジシクロヘキシルカルボジイミド、N,N−カルボニルジイミダゾール、またはそれらの同類物が挙げられ、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、N,N−ジシクロヘキシルカルボジイミドが好ましく、化合物(13)に対して化学量論的に等量から3倍等量の範囲で、特に等量から1.5倍等量の範囲で使用するのが好ましい。この反応は、さらに、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール等の活性エステル化試薬を、化合物(13)に対して0.1等量から2倍等量の範囲、特に0.1等量から1.5倍等量の範囲で使用するのが好ましい。溶媒としては、反応を阻害しないものであれば特に制限はないが、塩化メチレン等の不活性ハロゲン化炭化水素系溶媒、トルエン等の不活性炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン等の不活性エーテル系溶媒、またはN,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン等の不活性極性溶媒が挙げられ、好ましくはN,N−ジメチルホルムアミドが挙げられる。反応温度は、−20℃から溶媒の沸点の範囲、特に0℃から室温の範囲が好ましい。反応時間は1時間から96時間程度で完結する。反応は窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で実施してもよい。
【0186】
[工程n]
【0187】
【化65】

【0188】
(式中、Y3は水酸基または脱離基を意味し、X1、X2、R1a、R1bおよびR6は前記と同義である。)
化合物(13)を化合物(16)(特許文献1または2)で処理することにより、化合物(17)を製造する。
化合物(16)の使用量は、化合物(13)に対して化学量論的に、等量から1.5倍等量の範囲であるのが好ましい。Y3が水酸基である場合は、公知の方法で、あらかじめ上記の脱離基に変換するか、前記の保護基に関する文献に従ってカルボン酸誘導体である化合物(16)を使用して化合物(17)を製造することができる。また、Y3が水酸基の場合には、縮合剤を用いることができ、縮合剤としては1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、N,N−ジシクロヘキシルカルボジイミド、N,N−カルボニルジイミダゾール、またはこれらの同類物が挙げられ、特に1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、N,N−ジシクロヘキシルカルボジイミドが好ましく、化合物(13)に対して化学量論的に等量から3倍等量の範囲、特に化学量論的に等量から1.5倍等量の範囲で使用するのが好ましい。この反応は、トリエチルアミン、N−メチルモルホリンまたは4−(N,N−ジメチルアミノ)ピリジン等の有機アミン系塩基を、化合物(13)に対して化学量論的に等量から10倍等量の範囲で、好ましくは化学量論的に等量から5倍等量の範囲で使用するのが好ましい。さらに、反応を促進するために1−ヒドロキシベンゾトリアゾール等の活性エステル化試薬を、化合物(13)に対して0.1倍等量から2倍等量の範囲で、好ましくは0.1倍等量から1.5倍等量の範囲で使用するとよい。溶媒としては、反応を阻害しないものであれば特に制限はないが、塩化メチレン等の不活性ハロゲン化炭化水素系溶媒、トルエン等の不活性炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン等の不活性エーテル系溶媒、またはN,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン等の不活性極性溶媒が好ましく、特にN,N−ジメチルホルムアミドが好ましい。反応温度は、−20℃から溶媒の沸点の範囲、好ましくは0℃から室温の範囲が好ましい。反応時間は1時間から96時間程度で完結する。反応は窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で実施してもよい。
【0189】
[ 工程o ]
【0190】
【化66】

【0191】
(式中、Y4は水酸基または脱離基を意味し、X1、X2、R1a、R1bおよびR6は前記と同義である。)
化合物(17)を化合物(18)で処理して化合物(15)を製造する。
化合物(18)の使用量は、化合物(17)に対して化学量論的に、等量から1.5倍等量の範囲であるのが好ましい。塩基存在下で処理するのが好ましく、塩基としては、トリエチルアミン、エチルジイソプロピルアミン、N−メチルモルフォリン等が好ましく、トリエチルアミンが最も好ましい。塩基の使用量は、化合物(17)に対して化学量論的に、等量から2.0倍等量の範囲を使用でき、等量から1.5倍等量の範囲が好ましい。溶媒としては、反応を阻害しないものであれば特に制限はないが、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン等の不活性塩素系溶媒、トルエン、ベンゼン等の炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒が好ましい。反応温度は、0℃〜溶媒の沸点の範囲が好ましい。反応は、1,2−ジクロロエタン中で加熱還流することが好ましい。反応時間は2時間から24時間の間で良いが、通常10時間程度で完結する。Y4が水酸基である場合は、公知の方法で、あらかじめ上記の脱離基に変換するか、前記の保護基に関する文献に従ってカルボン酸誘導体である化合物(18)を使用して化合物(15)を製造することができる。すなわち、Y4が水酸基である1−メチルインドール−3−カルボン酸を用いる場合には、1−メチルインドール−3−カルボン酸を塩化チオニルや塩化オキザリル等を用いてハロゲン化アシルとした後、化合物(17)と縮合して化合物(15)を製造することができる。1−メチルインドール−3−カルボン酸(18)からハロゲン化アシルへの反応は、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン等の不活性塩素系溶媒、トルエン、ベンゼン等の炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、好ましくは塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン等の塩素系溶媒中、0℃〜溶媒の沸点の範囲で、塩化オキザリル、塩化チオニル等の塩素化試薬を用いて製造できる。得られたハロゲン化アシルおよび化合物(17)を、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン等の不活性塩素系溶媒、トルエン、ベンゼン等の炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒中、0℃〜溶媒の沸点の範囲、好ましくは1,2−ジクロロエタン中で加熱還流することが好ましい。反応時間は2時間から24時間の間で良いが、通常10時間程度で完結する。
【0192】
[工程p]
【0193】
【化67】

【0194】
(式中、X1、X2、R1a、R1bおよびR6は前記と同義である。)
化合物(15)を酸処理することにより化合物(A)を製造する。
酸としてはトリフルオロ酢酸、4N−塩酸/ジオキサン等が好ましい。酸の使用量は、化合物(15)に対して、5倍等量から50倍等量であるのが好ましい。溶媒を使用する場合は、反応を阻害しないものであれば特に制限はないが、塩化メチレン等の不活性ハロゲン化炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の不活性エーテル系溶媒が好ましい。反応温度は、0℃から溶媒の沸点の範囲、好ましくは0℃から室温の範囲が好ましい。反応時間は1時間から24時間程度で完結する。
【0195】
式(1)で表されるトランス−4−ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸エステルは、以下の工程q〜tにより製造することができる。
[ 工程q ]
【0196】
【化68】

【0197】
(式中、X6はハロゲン原子を意味し、R7は1または複数個の置換基を有していてもよいベンジル基、1または複数個の置換基を有していてもよいベンズヒドリル基、または1または複数個の置換基を有していてもよいベンジルオキシメチル基を意味し、R10は、低級アルキル基を意味する。)
シス/トランスの混合物である化合物(1a)(アルドリッチ社のカタログNO.38,663−4)を塩基の存在下に、化合物(C−7)と処理して、化合物(19)を製造する。
化合物(C−7)としてはベンジルオキシメチル クロリドが好ましい。化合物(C−7)の使用量は、化合物(1a)に対して化学量論的に1.2倍等量から2倍等量の範囲で用いるのが好ましい。塩基としては、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルモルホリンが好ましく、特にジイソプロピルエチルアミンが好ましい。塩基の量は化合物(C−7)に対して1.1倍等量から1.5倍等量の範囲で用いることが好ましい。反応温度は−10℃から室温の範囲が好ましく、0℃から室温の範囲がより好ましい。反応時間は1時間から48時間の間で良いが、通常2時間から15時間程度で完結する。
【0198】
[ 工程r ]
【0199】
【化69】

【0200】
(式中、R7およびR10は前記と同義である。)
化合物(19)(シス>トランスの混合物)を、塩基で処理して異性化した後、アルカリ加水分解して化合物(20)を製造する。
塩基としては、アルカリ金属のアルコラートが好ましく、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシドを化合物(19)に対して1.2倍等量から2.5倍等量の範囲で用いるのが好ましい。溶媒としては、反応を阻害しないものであれば特に制限はないが、メタノールまたはエタノール等のアルコール系溶媒が好ましい。反応温度は室温から溶媒の沸点の範囲が好ましく、特に溶媒の沸点で加熱還流するのが好ましい。反応時間は5時間から48時間の間で良いが、通常24時間程度で完結する。
上記、異性化処理をした後、反応混合液に水のみ、あるいはさらにアルカリ金属水酸化物の水溶液、好ましくは1規定水酸化ナトリウムを0.5倍等量から1.5倍等量の範囲で添加し、さらに加熱還流することが好ましい。反応時間は、通常24時間程度で完結する。さらに、反応完結後、鉱酸、好ましくは1Nから6Nの塩酸を加えて弱酸性として化合物(20)を単離する。
【0201】
[ 工程s ]
【0202】
【化70】

【0203】
(式中、R8aおよびR8bは、同一または異なる低級アルキル基を意味し、R1a、R1bおよびR7は前記と同義である。)
化合物(20)をイソウレア試薬(C−8a)またはジカルボネイト試薬(C−8b)とのエステル化反応で化合物(21)を製造する。
エステル化の試薬としてはイソウレア試薬(C−8a)が好ましく、特にN,N’−ジイソプロピル−O−t−ブチルイソウレアが好ましい。化合物(C−8a)の使用量は化合物(20)に対して2倍等量から5倍等量の範囲が好ましい。また、反応に用いる溶媒は、反応を阻害しないものであれば特に制限はないが、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン等の不活性ハロゲン系溶媒、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒が好ましく、特に1,2−ジクロロエタンが好ましい。反応温度は室温から溶媒の沸点の範囲で好ましく、特に室温から80℃の範囲が好ましい。反応時間は0.5時間から24時間の間でよいが、通常2時間程度で完結する。
【0204】
[ 工程t ]
【0205】
【化71】

【0206】
(式中、R1a、R1bおよびR7は前記と同義である。)
化合物(21)を接触還元し、得られるシスおよびトランス異性体をクロマトグラフィーで分離精製して、化合物(1)を製造する。
触媒としては、パラジウム/炭素、水酸化パラジウム、二酸化白金等が使用でき、この中でパラジウム/炭素の5%(W/W)から10%(W/W)のものが好ましい。触媒の量は、化合物(21)に対して重量%で5%から200%の範囲で使用可能であり、特に10%から30%の範囲が好ましい。水素圧は常圧から5MPaの範囲で実施可能であり、特に常圧から1MPaの範囲が好ましい。溶媒は反応を阻害しないものであれば特に制限はないが、エタノール、メタノール等のアルコール系溶媒、酢酸エチル等のエステル系溶媒、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒が好ましく、特にエタノール等のアルコール系溶媒が好ましい。反応温度は0℃から80℃の範囲で実施可能であり、特に室温から50℃の範囲が好ましい。反応時間は1時間から170時間程度で終了するが、通常1時間から120時間程度で完結する。反応終了後、シスおよびトランス異性体をクロマトグラフィーで分離精製でき、クロマトグラフィーに使用する担体としてはシリカゲルが好ましく、特に中圧分取用カラムクロマトグラフィー装置の使用が好ましい。
【0207】
以下の工程は、式(1)で表されるトランス−4−ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸エステル製造方法の別法であり、その各工程を説明する。
[ 工程u ]
【0208】
【化72】

【0209】
(式中、R1a、R1b、R8aおよびR8bは前記と同義である。)
シス−4−ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸(1b)(東京化成 カタログNo.H0980)を、イソウレア試薬(C−8a)またはジカルボネイト試薬(C−8b)とのエステル化反応で化合物(22)を製造する。
エステル化の試薬としてはイソウレア試薬(C−8a)が好ましく、特にN,N’−ジイソプロピル−O−t−ブチルイソウレアが好ましい。使用量は化合物(1b)に対して2倍等量から5倍等量の範囲が好ましい。溶媒は反応を阻害しないものであれば特に制限はないが、トルエン、ベンゼン等の炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン等の不活性エーテル系溶媒、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン等の不活性ハロゲン化溶媒が挙げられ、この中で塩化メチレンが好ましい。反応温度は室温から溶媒の沸点の範囲が好ましく、溶媒の沸点で加熱還流することが好ましい。反応時間は0.5時間から24時間の間で良いが、通常3時間程度で完結する。
【0210】
[ 工程v ]
【0211】
【化73】

【0212】
(式中、R9は水素原子、低級アルキル基、あるいは1または複数個の置換基を有していてもよいフェニル基を意味し、R1aおよびR1bは前記と同義である。)
化合物(22)およびカルボン酸誘導体(C−9)を、有機リン試薬およびアゾ試薬を用いる光延反応条件下に処理して、化合物(23)を製造する。
カルボン酸誘導体(C−9)は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、安息香酸または4−ニトロ安息香酸等が好ましい。カルボン酸誘導体(C−9)の使用量は、化合物(22)に対して化学量論的に等量から1.7倍等量の範囲であるのが好ましい。また、有機リン試薬はトリフェニルホスフィン、1,2−ビス(ジフェニルフォスフィノ)エタン等が好ましく、使用する量は、アルコール体(22)に対して化学量論的に等量から1.2倍等量の範囲で用いることが好ましい。アゾ試薬はアゾジカルボン酸 ジイソプロピル エステルが好ましく、使用する量は、アルコール体(22)に対して化学量論的に等量から2.0倍等量の範囲で用いることが好ましい。反応溶媒は、反応を阻害しないものであれば特に制限はないが、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン等の不活性エーテル系溶媒、特にテトラヒドロフランが好ましい。反応温度は、−5℃から溶媒の沸点の範囲が好ましく、0℃から室温の範囲で実施することがより好ましい。反応時間は通常1時間から100時間程度で完結する。さらに、反応は窒素気流等の不活性ガス気流下に実施してもよい。
【0213】
[ 工程w ]
【0214】
【化74】

【0215】
(式中、R1a、R1bおよびR9は前記と同義である。)
化合物(23)をアルカリ加水分解して、トランス−4−ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸エステル(1)を製造する。
アルカリとしては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物が好ましく、特に、市販の1規定水酸化ナトリウム水溶液が好ましい。アルカリの量は、化合物(23)に対して化学量論的な等量から3倍等量の範囲が好ましく、特に1.5倍等量から2倍等量の範囲が好ましい。溶媒としては反応を阻害しないものであれば特に制限はないが、ジオキサン、テトラヒドロフラン等の不活性エーテル系溶媒、メタノール、エタノール等のアルコール系溶媒が好ましく、特にテトラヒドロフランが好ましい。反応温度は−10℃から室温の範囲で実施可能であり、室温で実施することが好ましい。反応時間は30分から24時間の間で良いが、通常1時間から5時間程度で完結する。反応終了後、鉱酸、好ましくは1規定から6規定の範囲の塩酸水溶液を弱酸性になるように添加することが好ましい。
【実施例】
【0216】
次に、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
融点はYanagimoto micro融点測定器を用い、値は全て未補正である。赤外スペクトル(IR)は、Hitachi 270−30 spectrometer またはHoriba FT−720(S.T.Japan Durascope(Diamond / KRS−5 )を用い、KBr打錠法あるいはATR法で測定した。元素分析はPerkin−Elmer CHNS/O 24002にて測定を行った。質量分析器はJEOL JMS−AX505W(EI,CI)、JEOL JMS−HX110(FD,FAB)spectrometer、Thermoquest Finning AQA(ESI)あるいはAgilent Thechnologies Agilent1100 series LC/MSDを用いた。核磁気共鳴スペクトル(NMR)はJEOL JNM−EX400を用いて測定し、特に表示のない場合はプロトンNMR(1H−NMR)を意味し、内部標準としてテトラメチルシランを使用した。また、1H−NMRにおける多重度は、s=singlet、d=doublet、t=triplet、q=quintet、およびm=multipletを意味する。カラムクロマトグラフィーに用いたシリカゲルは、E−Merck社のKiesel−gel 60(particle size 0.060−0.200mmまたは0.040−0.063mm)を用いた。また、薄層クロマトグラフィー(TLC)のプレートはE−Merck社製のKieselgel60F254を使用した。HPLCは島津のLC−6AD,10Avpを使用し、以下の条件で測定した。
【0217】
Column:(Waters SymmetryTM C18 4.6x250mm )
Mobile phase:10mM−KH2PO4 Buffer(pH=2.5):MeCN=1:1
Flow rate:1.0mL/min(1.5mL/min)
Column temp.:room temperature
Detection:UV 254nm and radioactivity(flow cell)
Run length:40min
【0218】
また、以下の略語を使用した。
【0219】
【表1】

【0220】
[実施例1]
トランス−4−[(2R)−オキシラン−2−イルメトキシ]シクロヘキサンカルボン酸 t−ブチル エステル
【0221】
【化75】

【0222】
トランス−4−ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸 t−ブチル エステル(1.50g,7.49mmol)および(S)−(+)−エピクロロヒドリン(5.86ml,74.9 mml)を0℃で攪拌下に50%水酸化ナトリウム水溶液(30ml)および硫酸水素テトラ−n−ブチルアンモニウム(254mg,0.749mmol)を加えた。反応液を同温度で5分間攪拌後、反応液を氷水に注ぎ、エーテルにて抽出した。合わせた抽出液を氷水および飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下に濃縮した。得られた残渣を、シリカゲルを用いたカラムクロマトグラフィー〔100g,酢酸エチル/n−ヘキサン(1/4,v/v)〕にて精製して標題物(1.56g,81%)を無色油状物として得た。
1H−NMR(CDCl3)δ:1.12−1.32(2H,m),1.36−1.55(11H,m and s),1.95−2.10(4H,m),2.15(1H,tt,J=11.7 and 3.9Hz),2.60(1H,dd,J=5.1 and 2.7Hz),2.80(1H,t,J=4.2Hz),3.13(1H,m),3.28(1H,dd,J=10.5 and 3.9Hz),3.45(1H,dd,J=11.2 and 5.6Hz),3.72(1H,dd,J=11.5 and 3.4Hz).
MS(ESI)m/z:200(M+−t−Bu).
【0223】
[実施例2]
トランス−4−[(2R)−ヒドロキシペンタ−4−エン−1−イルオキシ]シクロヘキサンカルボン酸 t−ブチル エステル
【0224】
【化76】

【0225】
臭化銅(I)・ジメチルスルフィド錯体(99mg,0.48mmol)をテトラヒドロフラ
ン(30ml)に懸濁し、窒素気流下、0℃で攪拌下に臭化 ビニルマグネシウム(1.0M,テトラヒドロフラン溶液)(14.4ml,14.4mmol)を加えた。反応混合液を同温度で30分攪拌後、反応液を−78℃に冷却し、攪拌下にトランス−4−[(2R)−オキシラン−2−イルメトキシ]シクロヘキサンカルボン酸 t−ブチル エステル(1.23g,4.80mmol)のテトラヒドロフラン(20ml)溶液を滴下した。反応混合液を攪拌下に6時間をかけて−5℃に上昇させた。反応混合液を飽和塩化アンモニウム水溶液に注ぎ、酢酸エチルにて抽出した。合わせた抽出液を氷水、飽和食塩水洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下に濃縮した。得られた残渣を、シリカゲルを用いたフラッシュカラムクロマトグラフィー〔Biotage社フラッシュクロマトシステム,カラムサイズ:内径×カラム長=4x20cm,酢酸エチル/n−ヘキサン(1/4,v/v)〕にて精製して標題物(1.20g,88%)を無色油状物として得た。
1H−NMR(CDCl3)δ:1.21−1.32(2H,m),1.37−1.49(11H,m and s),1.95−2.19(4H,m),2.22−2.27(2H,m),2.32(1H,d,J=3.4Hz),3.21−3.36(2H,m),3.51(1H,dd,J=9.3 and 3.4Hz),3.80(1H,m),5.08−5.14(2H,m),5.79−5.88(1H,m).
MS(ESI)m/z:284(M++1).
【0226】
[実施例3]
トランス−4−[(2S)−フタルイミドペンタ−4−エン−1−イルオキシ]シクロヘキサンカルボン酸 t−ブチル エステル
【0227】
【化77】

【0228】
トランス−4−[(2R)−ヒドロキシペンタ−4−エン−1−イルオキシ]シクロヘキサンカルボン酸 t−ブチル エステル(249mg,0.876mmol)、フタルイミド(129mg,0.876mmol)およびトリフェニルホスフィン(230mg,0.876mmol)をテトラヒドロフラン(10ml)中、室温攪拌下にアゾジカルボン酸 ジイソプロピル エステル(0.17ml,0.876mmol)を滴下した。反応液を50分間攪拌後、さらにフタルイミド(129mg,0.876mmol)、トリフェニルホスフィン(230mg,0.876mmol)およびアゾジカルボン酸 ジイソプロピル エステル(0.17ml,0.876mmol)を加え、室温で20分間撹拌した。反応混合液を減圧下に濃縮して得られた残渣を、シリカゲルを用いたカラムクロマトグラフィー〔200g,クロロホルム/酢酸エチル(5/1,v/v)〕にて精製して標題物(263mg,73%)を無色油状物として得た。
1H−NMR(CDCl3)δ:1.09−1.44(13H,m and s),1.84−2.12(5H,m),2.54 and 2.56(total 1H,each dt,J=7.3,1.5 and 5.6,1.2Hz respectively,mixture of amide isomers),2.72 and 2.74(total 1H,each t,J=8.8 and 8.5Hz respectively,mixture of amide isomers),3.21(1H,tt,J=10.1,4.0Hz),3.75(1H,ddd,J=9.8,5.9 and 1.2Hz),3.96(1H,dt,J=10.0 and 1.2Hz),4.50(1H,m),4.96(1H,d,J=10.0Hz),5.04(1H,d,J=16.8Hz),572(1H,m),7.68−7.72(2H,m),7.78−7.82(2H,m).
MS(LC−ESI)m/z:414(M++1).
【0229】
[実施例4]
トランス−4−[(2S)−アミノペンタ−4−エン−1−イルオキシ]シクロヘキサンカルボン酸 t−ブチル エステル
【0230】
【化78】

【0231】
トランス−4−[(2S)−フタルイミドペンタ−4−エン−1−イルオキシ]シクロヘキサンカルボン酸 t−ブチル エステル(210mg,0.508mmol)をトルエン(10ml)中、室温で攪拌下にメチルヒドラジン(0.27ml,5.08mmol)を加えた。反応液を室温で3時間攪拌後、さらに80℃で1時間撹拌した。さらに反応混合液にメチルヒドラジン(0.54ml,10.16mmol)およびエタノール(10ml)を加えた後、反応混合液を1時間攪拌下に加熱還流した。反応液を室温に冷却し、塩化メチレンにて抽出した。合わせた抽出液を氷水および飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下に濃縮して標題物を油状物として得た。本化合物はこれ以上精製することなく次の反応に用いた。
MS(LC−ESI)m/z:284(M++1).
【0232】
[実施例5]
トランス−4−[(2S)−(ベンゾイルアミノ)ペンタ−4−エン−1−イルオキシ]シクロヘキサンカルボン酸 t−ブチル エステル
【0233】
【化79】

【0234】
トランス−4−[(2S)−アミノペンタ−4−エン−1−イルオキシ]シクロヘキサンカルボン酸 t−ブチル エステル(0.508mmol)を塩化メチレン(10ml)中、室温攪拌下にトリエチルアミン(0.21ml,1.52mmol)および塩化ベンゾイル(59ml,0.508mmol)を加えた。反応液を3時間室温で攪拌後、反応液に飽和重曹水を加えて弱塩基性とした後、塩化メチレンにて抽出した。合わせた抽出液を氷水および飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下に濃縮した。得られた残渣を、シリカゲル薄層板を用いたクロマトグラフィー〔酢酸エチル/n−ヘキサン(1/3,v/v)〕にて精製して標題物〔166mg,84%(2工程)〕を無色油状物として得た。
1H−NMR(CDCl3)δ:1.19−1.31(2H,m),1.33−1.41(11H,m and s),1.89−2.20(5H,m),2.44(2H,t,J=6.3Hz),3.23(1H,tt,J=10.5 and 4.4Hz),3.54(1H,dd,J=9.3 and 3.2Hz),4.29(1H,m),5.09(1H,dd,J=11.0 and 1.0Hz),5.12(1H,dd,J=16.1 and 1.2Hz),5.84(1H,m),6.41(1H,d,J=8.1Hz),7.42(2H,dt,J=7.6 and 1.2Hz),7.49(1H,dt,J=7.6 and 1.2Hz),7.74(2H,dd,J=6.8 and 1.2Hz).
MS(ESI)m/z:388(M++1).
【0235】
[実施例6]
トランス−4−[(4R)−ベンゾイルオキシ−(2S)−ピロリジニルメトキシ]シクロヘキサンカルボン酸 t−ブチル エステル
【0236】
【化80】

【0237】
トランス−4−[(2S)−(ベンゾイルアミノ)ペンタ−4−エン−1−イルオキシ]シクロヘキサンカルボン酸 t−ブチル エステル(166mg,0.428mmol)を テトラヒドロフラン:水(1:1,v/v,6ml)中、室温攪拌下に、ヨウ素(326mg,1.28mmol)を加えた。反応液を室温で1時間攪拌後、飽和重曹水を加えて弱塩基性にした。反応液をエーテルにて抽出した。合わせた抽出液を飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液および飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下に濃縮して標題物を得た。本化合物はこれ以上精製することなく次の反応に用いた。
【0238】
[実施例7]
トランス−4−[1−ベンジルオキシカルボニル−(4R)−ベンゾイルオキシ−(2S)−ピロリジニルメトキシ]シクロヘキサンカルボン酸 t−ブチル エステル
【0239】
【化81】

【0240】
トランス−4−[(4R)−ベンゾイルオキシ−(2S)−ピロリジニルメトキシ]シクロヘキサンカルボン酸 t−ブチル エステル(0.428mmol)をジオキサン:飽和重曹水(1:1,v/v,10ml)中、室温攪拌下にクロロぎ酸 ベンジル エステル(30% トルエン溶液)(0.24ml,0.407 mmol)を加えた。反応液を同温度で40分攪拌後、減圧下に不溶物を濾別し、濾液を酢酸エチルにて抽出した。合わせた抽出液を飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液および飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下に濃縮した。得られた残渣を、シリカゲル薄層板を用いたクロマトグラフィー〔酢酸エチル/n−ヘキサン(1/3,v/v)〕にて精製して標題物(147mg;分離困難な不純物を含む)を無色油状物として得た。
MS(ESI)m/z:538(M+−C48).
【0241】
[実施例8]
トランス−4−[1−ベンジルオキシカルボニル−(4R)−ヒドロキシ−(2S)−ピロリジニルメトキシ]シクロヘキサンカルボン酸 t−ブチル エステル
【0242】
【化82】

【0243】
トランス−4−[1−ベンジルオキシカルボニル−(4R)−ベンゾイルオキシ−(2S)−ピロリジニルメトキシ]シクロヘキサンカルボン酸 t−ブチル エステル(147mg,0.273mmol)をテトラヒドロフラン:メタノール(2:1,v/v,6ml)中、室温攪拌下に1N−NaOH(2ml)を加えた。反応液を室温で1.5時間攪拌後、水を加えて希釈し、エーテルにて抽出した。合わせた抽出液を1N−水酸化ナトリウム水溶液および飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下に濃縮した。得られた残渣を、シリカゲル薄層板を用いたクロマトグラフィー〔酢酸エチル/n−ヘキサン(1/1,v/v)〕にて精製して標題物〔52mg,28%(3工程の収率)〕を無色油状物として得た。
1H−NMR(CDCl3)δ:1.05−1.22(2H,m),1.24−1.48(11H,m and s),1.86−2.21(7H,m),3.01−3.22(1H,m),3.44−3.72(4H,m),4.12(1H,br),5.03−5.26(3H,m),7.31−7.36(5H,m).
MS(LC−ESI)m/z:434(M+−C48).
【0244】
[実施例9]
トランス−4−[1−ベンジルオキシカルボニル−(4S)−ホルミルオキシ−(2S)−ピロリジニルメトキシ]シクロヘキサンカルボン酸 t−ブチル エステル
【0245】
【化83】

【0246】
トランス−4−[1−ベンジルオキシカルボニル−(4R)−ヒドロキシ−(2S)−ピロリジニルメトキシ]シクロヘキサンカルボン酸 t−ブチル エステル(52mg,0.120mmol)、ぎ酸(5.4μl,0.144mmol)およびトリフェニルホスフィン(47mg,0.180mmol)をテトラヒドロフラン(2ml)中、0℃で攪拌下にアゾジカルボン酸 ジイソプロピル エステル(35.7μl,0.180mmol)を滴下した。反応液を同温度で30分攪拌後、さらに順次ぎ酸(5.4μl,0.144mmol)、トリフェニルホスフィン(47mg,0.180mmol)およびアゾジカルボン酸 ジイソプロピル エステル(35.7μl,0.180mmol)を加え、反応混合液を室温で17時間撹拌した。反応混合液を減圧下に濃縮して得られた残渣を、シリカゲルを用いたフラッシュカラムクロマトグラフィー〔Biotage社フラッシュクロマトシステム,カラムサイズ:内径×カラム長=1x20cm,酢酸エチル/n−ヘキサン(1/4,v/v)〕にて精製して標題物(72mg,除去しきれないアゾジカルボン酸 ジイソプロピル エステルの還元体を不純物として含む)を無色油状物として得た。本化合物はこれ以後の精製は行わず次の反応に用いた。
MS(LC−ESI)m/z:462(M++1).
【0247】
[実施例10]
トランス−4−[1−ベンジルオキシカルボニル−(4S)−ヒドロキシ−(2S)−ピロリジニルメトキシ]シクロヘキサンカルボン酸 t−ブチル エステル
【0248】
【化84】

【0249】
トランス−4−[1−ベンジルオキシカルボニル−(4S)−ホルミルオキシ−(2S)−ピロリジニルメトキシ]シクロヘキサンカルボン酸 t−ブチル エステル(72mg,0.12mmol)をテトラヒドロフラン:メタノール(2:1,v/v,3ml)中、室温攪拌下に1N−水酸化ナトリウム水溶液(1ml)を加えた。反応液を室温で3.5時間攪拌後、反応液に水を注ぎ、エーテルにて抽出した。合わせた抽出液を1N−水酸化ナトリウム水溶液および飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下に濃縮した。得られた残渣を、シリカゲル薄層板を用いたクロマトグラフィー〔酢酸エチル/n−ヘキサン(1/1,v/v)〕にて精製して標題物〔37mg,71%(2工程)〕を無色油状物として得た。
1H−NMR(CDCl3)δ:1.13−1.40(4H,m),1.43(9H,s),1.88−2.16(6H,m),2.29−2.41(1H,m),3.20 and 3.24(total 1H,each m,mixture of amide isomers),3.39 and 3.42(total 1H,each d,J=9.7 and 9.5Hz respectively,mixture of amide isomers),3.51−3.62(2H,m and s),3.87 and 4.05(total 1H,each d,J=9.3 and 10.5Hz respectively,mixture of amide isomers),4.11(1H,d,J=9.8Hz),4.24(1H,m),4.86 and 5.04(total 1H,each d,J=11.2 and 11.5Hz respectively,mixture of amide isomers),5.09−5.26(2H,m and s),7.27−7.36(5H,m).
MS(ESI)m/z:434(M++1).
【0250】
[実施例11]
トランス−4−[1−ベンジルオキシカルボニル−(4S)−メトキシ−(2S)−ピロリジニルメトキシ]シクロヘキサンカルボン酸 t−ブチル エステル
【0251】
【化85】

【0252】
トランス−4−[1−ベンジルオキシカルボニル−(4S)−ヒドロキシ−(2S)−ピロリジニルメトキシ]シクロヘキサンカルボン酸 t−ブチル エステル(37mg,85.3μmol)をDMF(2ml)中、窒素気流下、室温攪拌下にヨウ化 メチル(53.1μl,853μmol)を加えた後、水素化ナトリウム(60% in oil dispersion)(5.1mg,128μmol)を徐々に加えた。反応混合液を室温で1時間攪拌後、さらにヨウ化 メチル(53.1μl,853μmol)次いで水素化ナトリウム(60% in oil dispersion)(5.1mg,128μmol)を加え、さらに室温で1時間撹拌した。反応液を氷水に注ぎ、酢酸エチルにて抽出した。合わせた抽出液を飽和食塩水洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下に濃縮した。得られた残渣を、シリカゲル薄層板を用いたクロマトグラフィー〔酢酸エチル/n−ヘキサン(1/2,v/v)〕にて精製して標題物(22mg,58%)を無色油状物として得た。
1H−NMR(CDCl3)δ:1.14−1.49(13H,m and s),1.89−2.28(7H,m),3.13 and 3.23(total 1H,each m,mixture of amide isomers),3.30(3H,s),3.38−3.49(2H,m),3.57−4.08(4H,m),5.08−5.21(2H,m),7.28−7.37(5H,m).
MS(ESI)m/z:448(M++1).
【0253】
[実施例12]
トランス−4−[(4S)−メトキシ−(2S)−ピロリジニルメトキシ]シクロヘキサンカルボン酸 t−ブチル エステル
【0254】
【化86】

【0255】
トランス−4−[1−ベンジルオキシカルボニル−(4S)−メトキシ−(2S)−ピロリジニルメトキシ]シクロヘキサンカルボン酸 t−ブチル エステル(22mg,49.2μmol)および 5% パラジウム/炭素(22mg)をエタノール(1ml)に懸濁し、室温攪拌下に常圧接触水素下を行った。反応液をろ過にて、不溶な触媒を除き、濾液を減圧下に濃縮して標題物(22mg,100 %)を無色油状物として得た。本化合物はこれ以後の精製は行わず次の反応に用いた。
MS(ESI)m/z:314(M++1).
【0256】
[実施例13]
トランス−4−((2S,4S)−1−{2,5−ジクロロ−4−[(1−メチルインドール−3−イル)カルボキサミド]フェニル}アセチル−4−メトキシピロリジン−2−イル)メトキシシクロヘキサンカルボン酸 t−ブチル エステル
【0257】
【化87】

【0258】
2,5−ジクロロ−4−[(1−メチルインドール−3−イル)カルボキサミド]フェニル酢酸(18.6mg,49.2μmol)、トランス−4−[(4S)−メトキシ−(2S)−ピロリジニルメトキシ]シクロヘキサンカルボン酸 t−ブチル エステル(22mg,49.2μmol)、EDC(14mg,73.8μmol)、HOBt(10mg,73.8μmol)およびトリエチルアミン(34.3μl,0.246mmol)をDMF(1ml)中、室温で3日間撹拌した。反応液を氷水に注ぎ酢酸エチルにて抽出する。合わせた抽出液を氷水および飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下に濃縮した。得られた残渣を、シリカゲル薄層板を用いたクロマトグラフィー〔クロロホルム/アセトン(10/1,v/v)〕にて精製して標題物(33mg,100%)を無色油状物として得た。
1H−NMR(CDCl3)δ:1.18−1.31(2H,m),1.33−1.46(11H,m and s),1.91−2.32(9H,m),3.24(1H,m),3.31 and 3.33(total 1H,each,s,mixture of amide isomers),3.46−4.02(10H,m,including 3H,s,at 3.89),4.18−4.31(1H,m),7.30−7.37(2H,m),7.41(2H,d,J=5.6Hz),7.79(1H,d,J=1.2Hz),8.13(1H,m),8.23(1H,d,J=2.7Hz),8.77(1H,d,J=7.6Hz).
MS(ESI)m/z:672(M++1),674(M++3).
【0259】
[実施例14]
トランス−4−((2S,4S)−1−{2,5−ジクロロ−4−[(1−メチルインドール−3−イル)カルボキサミド]フェニル}アセチル−4−メトキシピロリジン−2−イル)メトキシシクロヘキサンカルボン酸
【0260】
【化88】

【0261】
トランス−4−((2S,4S)−1−{2,5−ジクロロ−4−[(1−メチルインドール−3−イル)カルボキサミド]フェニル}アセチル−4−メトキシピロリジン−2−イル)メトキシシクロヘキサンカルボン酸 t−ブチル エステル(33mg,49.1μmol)を4N 塩酸/ジオキサン(2ml)中、室温で19時間撹拌した。反応液を減圧下に濃縮して得られた結晶性粉末をエーテル/酢酸エチル/n−ヘキサンから再結晶して標題物(14mg,46%)を無色結晶性粉末として得た。本化合物の各種スペクトラムデータは、先に参考文献として挙げた特許文献1および2のパンフレットに記載の方法を参考にして合成したもののそれと完全に一致した。
1H−NMR(DMSO−d6)δ:1.14−1.37(total 4H,series of m),1.89−2.14(total 8H,series of m),3.14−3.51(total 6H,series of m),3.58−3.82(total 3H,series of m),3.89 and 3.92(total 3H,each s,amide isomers),3.94−4.26(total 2H,series of m),7.21(1H,t,J=8.0Hz),7.27(1H,t,J=8.0Hz),7.48 and 7.52(total 1H,each s,amide isomers),7.55(1H,d,J=8.0Hz),7.88 and 7.89(total 1H,each s),8.15(1H,d,J=8.0Hz),8.30(1H,m),9.37(1H,s).
IR(ATR)cm-1 :2939,1724,1654,1639.
[α]D24.7:−36.01o(C=0.98,THF).
Anal.Calcd for C3135Cl236・0.25H2O・0.25EtOH:C,59.54;H,5.87;Cl,l,10.79;N,6.37.
Found:C,59.54;H,5.84;Cl,10.79;N,6.37.
【0262】
[実施例15]
4−(ベンジルオキシメトキシ)シクロヘキサンカルボン酸 エチル エステル
【0263】
【化89】

【0264】
4−ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸(Aldrich;カタログNo.38,663−4)(25ml,155.0mmol)およびジイソプロピルエチルアミン(54.0ml,310mmol)を塩化メチレン(500ml)中、室温攪拌下にベンジルオキシメチル クロリド(32.2ml,232.5mmol)を加えた。反応混合液を室温で14時間攪拌後、氷水(500ml)に注ぎ、塩化メチレンにて抽出した。抽出液を飽和食塩水洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下に濃縮した。得られた残渣を、シリカゲル(1kg)を用いたカラムクロマトグラフィーにて精製し、n−ヘキサン/酢酸エチル(4/1,v/v)流分より標題物(46.5g,q.y.)を無色油状物として得た。
1H−NMR(CDCl3)δ:1.24 and 1.26(total 3H,each t,J=7.3 and 7.1Hz respectively,isomers),1.29−2.40(9H,m),3.58 and 3.82(total 1H,each m,isomers),4.11 and 4.13(total 2H,each q,J=7.1 and 7.3Hz,respectively,isomers),6.13 and 6.14(total 2H,each s,isomers),6.80 and 6.81(total 2H,each s,isomers),7.26−7.35(5H,m).
【0265】
[実施例16]
4−(ベンジルオキシメトキシ)シクロヘキサンカルボン酸
【0266】
【化90】

【0267】
4−(ベンジルオキシメトキシ)シクロヘキサンカルボン酸 エチル エステル(46.5g,155.0mmol)をエタノール(500ml)に溶解し、ナトリウム エトキシド(21.1g,310.0mmol)を加え16時間攪拌下に加熱還流した。反応液にさらに1N−NaOH(100ml)を加え、1日間攪拌下に加熱還流した。反応混合液を室温に冷却後、減圧下に濃縮した。得られた残渣に1N−HClを加えて弱酸性にした後、酢酸エチルにて抽出した。抽出液を冷水および飽和食塩水にて洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下に濃縮して、標題物[40.33g,98 %(2工程の収率)]を褐色油状物として得た。本化合物はこれ以後の精製は行わず次の反応に用いた。
【0268】
[実施例17]
4−(ベンジルオキシメトキシ)シクロヘキサンカルボン酸 t−ブチル エステル
【0269】
【化91】

【0270】
4−(ベンジルオキシメトキシ)シクロヘキサンカルボン酸(40.2g,152.6mmol)を1,2−ジクロロエタン(800ml)中、室温攪拌下にN,N’−ジイソプロピル−O−t−ブチルイソウレア(110ml,457.8mmol)(C.S.Richardらの方法;J.Org.Chem., 1994, 59, 2261−2266.またはL.J.Mathianらの方法;Synthesis,1979,561−576.等を参照。)を加えた後、60℃で50分間撹拌した。反応液を室温に冷却後、減圧下に不溶物をろ去して、ろ液を減圧下に濃縮した。得られた残渣を、シリカゲル(500g)を用いたカラムクロマトグラフィーにて精製し、酢酸エチル/n−ヘキサン(1/3,v/v)流分より標題物(25.11g,51%)を淡黄色油状物として得た。(本化合物はHPLC、機器データからトランス/シス=2/1の混合物であった。)
トランス異性体:1H−NMR(CDCl3)δ:1.27−1.49(13H,m and,s),1.94−2.10(4H,m),2.15(1H,tt,J=11.5,3.7Hz),2.57(1H,tt,J=10.5,4.2Hz),4.61(2H,s),4.82(2H,s),7.14−7.54(5H,m).
MS(LC−MS)m/z:320(M++1).
シス異性体:1H−NMR(CDCl3)δ:1.45(9H,s),1.54−1.96(8H,m),2.27(1H,m),3.79(1H,m),4.62(2H,s),4.80(2H,s),7.25−7.53(5H,m).
MS(LC−MS)m/z:320(M++1).
【0271】
[実施例18]
トランス−4−ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸 t−ブチル エステル
【0272】
【化92】

【0273】
4−(ベンジルオキシメトキシ)シクロヘキサンカルボン酸 t−ブチル エステル(25.1mg,78.3mmol)および5% Pd/C(5.0mg)をエタノール(200ml)に懸濁し、1気圧の水素下に5日間撹拌した。反応液の触媒をろ別し、ろ液を減圧下に濃縮した。得られた残渣を、シリカゲル(0.5g)を用いたカラムクロマトグラフィーにて精製し、酢酸エチル/n−ヘキサン(1/5,v/v)流分より標題物(8.03g,51%)を無色油状物として得た。さらに、トランス体を一部含むシス体を(7.88g,49%)を得た。本化合物の機器データは市販のシス−4−ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸からの別途ルートから合成した標品と完全に一致した。さらに、トランス体を一部含むシス体を(7.88g,49%)を得た。本化合物の機器データは市販のシス−4−ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸からの別途ルートから合成した標品と完全に一致した。
【0274】
[実施例19]
シス−4−ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸 t−ブチル エステル
【0275】
【化93】

【0276】
商業的に入手可能なシス−4−ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸(東京化成;カタログNo.H0980)(4.51g,31.3mmol)の塩化メチレン(100ml)溶液に、攪拌下にN,N’−ジイソプロピル−O−t−ブチルイソウレア(45.0ml,large excess)を加え、反応液を3時間加熱還流した。反応液を室温に冷却後、セライトを用いて減圧濾過し、濾液を減圧下に濃縮した。得られた残渣を、シリカゲルを用いたカラムクロマトグラフィーにて精製し、n−ヘキサン/酢酸エチル(3:1,v/v)流分より標題物(6.27g,100%)を無色油状物として得た。
1H−NMR(CDCl3)δ:1.32(1H,m),1.45(9H,s),1.60−1.68(6H,m),1.89−1.95(2H,m),2.27−2.32(1H,m),3.87(1H,m).
【0277】
[実施例20]
トランス−4−(4−ニトロベンゾイルオキシ)シクロヘキサンカルボン酸 t−ブチル エステル
【0278】
【化94】

【0279】
シス−4−ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸 t−ブチル エステル(6.78g,33.9mmol)、4−ニトロ安息香酸(8.49g,50.8mmol)および1,2−ビス(ジフェニルフォスフィノ)エタン(13.5g,33.9mmol)にトルエン(100ml)を加え、室温撹拌下にアゾジカルボン酸 ジイソプロピル エステル(8.50ml,54.0mmol)を滴下する滴下終了後、反応液を4日間室温で撹拌した。反応混合液を減圧下に濃縮し、得られた残渣を、シリカゲルを用いたカラムクロマトグラフィーにて精製し、n−ヘキサン/酢酸エチル(3:1,v/v)流分より標題物(8.55g,72%)を淡黄色固形物として得た。
1H−NMR(CDCl3)δ:1.46(9H,s),1.47−1.68(4H,m),2.06−2.18(4H,m),2.24−2.29(1H,m),4.96−5.03(1H,m),8.18−8.29(4H,m).
【0280】
[実施例21]
トランス−4−ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸 t−ブチル エステル
【0281】
【化95】

【0282】
トランス−4−(4−ニトロベンゾイルオキシ)シクロヘキサンカルボン酸 t−ブチル エステル(8.55g,24.5mmol)を THF(50ml)中、室温攪拌下に1N−NaOH(50ml,50.0mmol)を加え、反応液を4時間室温で撹拌した。反応液を減圧下にろ過し、ろ液に1N−HClを加えて弱酸性にして酢酸エチルにて抽出した。抽出液を飽和食塩水洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下に濃縮した。得られた残渣を、シリカゲルを用いたカラムクロマトグラフィーにて精製し、n−ヘキサン/酢酸エチル(1:1,v/v)流分より標題物(3.00g,61%)を白色固形物として得た。
1H−NMR(CDCl3)δ:1.22−1.32(2H,m),1.40−1.51(total 11H,m,including 9H,s,at δ:1.43),1.89(1H,broad s),1.95−2.05(4H,m),2.09−2.18(1H,m),3.57−3.64(1H,m).

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】

(式中、R1aおよびR1bは、それぞれ独立して低級アルキル基、1または複数個の置換基を有していてもよいフェニル基、あるいは1または複数個の置換基を有していてもよいベンジル基を意味する。)
で表される化合物に塩基の存在下、(S)−(+)−エピハロヒドリンを作用させて、一般式(2)
【化2】

(式中、R1aおよびR1bは前記と同義である。)
で表される化合物を得、
続いて当該化合物(2)を金属触媒の存在下、下記の一般式(C−1)
【化3】

(式中、X3はMgCl、MgBr、MgI、またはLiを意味する。)
で表される化合物で処理して、一般式(3)
【化4】

(式中、R1aおよびR1bは前記と同義である。)
で表される化合物を得、
次に当該化合物(3)を下記の一般式(C−2a)または(C−2b)
【化5】

(式中、R2a、R2b、R2cおよびR2dは、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、またはニトロ基を意味する。)
で表される環状イミド誘導体との光延反応によって、一般式(4)
【化6】

(式中、R2eおよびR2fは、一緒になってスクシニル基、あるいは1または複数個の置換基を有していてもよいフタロイル基を形成することを意味し、R1aおよびR1bは前記と同義である。)
で表される化合物を得、
当該化合物(4)をヒドラジン類で処理して、一般式(5)
【化7】

(式中、R1aおよびR1bは前記と同義である。)
で表される化合物を得、
当該化合物(5)を、下記の一般式(C−3)
【化8】

(式中、R3は1または複数個の置換基を有していてもよいフェニル基を意味し、Y1は水酸基、または脱離基を意味する。)
で表される化合物と処理して、一般式(6)
【化9】

(式中、R1a、R1bおよびR3は前記と同義である。)
で表される化合物を得、
当該化合物(6)をヨウ素と処理して、一般式(7)
【化10】

(式中、R1a、R1bおよびR3は前記と同義である。)
で表される化合物を得、
当該化合物(7)を塩基の存在下に、下記の一般式(C−4)
【化11】

(式中、R4は1または複数個の置換基を有していてもよいベンジル基、あるいは1または複数個の置換基を有していてもよいベンズヒドリル基を意味し、X4はハロゲン原子を意味する。)
で表される化合物で処理して、一般式(8)
【化12】

(式中、R1a、R1b、R3およびR4は前記と同義である。)
で表される化合物を得、
当該化合物(8)を加水分解し、一般式(9)
【化13】

(式中、R1a、R1bおよびR4は前記と同義である。)
で表される化合物を得、
当該化合物(9)と、下記の一般式(C−5)
【化14】

(式中、R5は水素原子、低級アルキル基、あるいは1または複数個の置換基を有していてもよいフェニル基を意味する。)
で表される化合物との光延反応で、一般式(10)
【化15】

(式中、R1a、R1b、R4およびR5は前記と同義である。)
で表される化合物を得、
当該化合物(10)を加水分解して、下記の一般式(11)
【化16】

(式中、R1a、R1bおよびR4は前記と同義である。)
で表される化合物を得、
当該化合物(11)を塩基の存在下に、下記一般式(C−6)
【化17】

(式中、X5はハロゲン原子を意味し、R6は低級アルキル基を意味する。)
で表される化合物で処理して、一般式(12)
【化18】

(式中、R1a、R1b、R4およびR6は前記と同義である。)
で表される化合物を得、
当該化合物(12)を接触還元して、一般式(13)
【化19】

(式中、R1a、R1bおよびR6は前記と同義である。)
で表される化合物を製造する方法。
【請求項2】
一般式(13)
【化20】

(式中、R1aおよびR1bは、それぞれ独立して低級アルキル基、1または複数個の置換基を有していてもよいフェニル基、あるいは1または複数個の置換基を有していてもよいベンジル基を意味し、R6は低級アルキル基を意味する。)
で表される化合物を、下記一般式(14)
【化21】

(式中、X1およびX2は、それぞれ独立して水素原子、フッ素原子、または塩素原子を意味し、Y2は水酸基または脱離基を意味する。)
で表される化合物で処理して、一般式(15)
【化22】

(式中、X1、X2、R1a、R1bおよびR6は前記と同義である。)
で表される化合物を得、
当該化合物(15)を酸処理して、一般式(A)
【化23】

(式中、X1、X2およびR6は前記と同義である。)
で表される化合物を製造する方法。
【請求項3】
一般式(13)
【化24】

(式中、R1aおよびR1bは、それぞれ独立して低級アルキル基、1または複数個の置換基を有していてもよいフェニル基、あるいは1または複数個の置換基を有していてもよいベンジル基を意味し、R6は低級アルキル基を意味する。)
で表される化合物を、下記一般式(16)
【化25】

(式中、X1およびX2は、それぞれ独立して水素原子、フッ素原子、または塩素原子を意味し、Y3は水酸基または脱離基を意味する。)
で表される化合物で処理して、一般式(17)
【化26】

(式中、R1aおよびR1bは、それぞれ独立して低級アルキル基、1または複数個の置換基を有していてもよいフェニル基、あるいは1または複数個の置換基を有していてもよいベンジル基を意味し、R6は低級アルキル基を意味し、X1およびX2は、それぞれ独立して水素原子、フッ素原子、または塩素原子を意味する。)
で表される化合物を得、
当該化合物(17)を、下記一般式(18)
【化27】

(式中、Y4は水酸基または脱離基を意味する。)
で表される化合物で処理して、一般式(15)
【化28】

(式中、X1、X2、R1a、R1bおよびR6は前記と同義である。)
で表される化合物を得、
当該化合物(15)を酸処理して、一般式(A)
【化29】

(式中、X1、X2およびR6は前記と同義である。)
で表される化合物を製造する方法。
【請求項4】
シス/トランス混合物である一般式(1a)
【化30】

(式中、R10は、低級アルキル基を意味する。)
で表される化合物を塩基の存在下に、下記一般式(C−7)
【化31】

(式中、X6はハロゲン原子を意味し、R7は1または複数個の置換基を有していてもよいベンジル基、1または複数個の置換基を有していてもよいベンズヒドリル基、あるいは1または複数個の置換基を有していてもよいベンジルオキシメチル基を意味する。)
で表される化合物と反応させて、一般式(19)
【化32】

(式中、R7およびR10は前記と同義である。)
で表される化合物を得、
当該化合物(19)を塩基処理によりシス/トランスの異性化を行った後、エステルをアルカリ加水分解して、一般式(20)
【化33】

(式中、R7は前記と同義である。)
で表される化合物を得、
当該化合物(20)を、下記の一般式(C−8a)または(C−8b)
【化34】

(式中、R1aおよびR1bは、それぞれ独立して低級アルキル基、1または複数個の置換基を有していてもよいフェニル基、あるいは1または複数個の置換基を有していてもよいベンジル基を意味し、R8aおよびR8bは、同一または異なる低級アルキル基を意味する。)
で表される化合物と処理して、一般式(21)
【化35】

(式中、R1a、R1bおよびR7は前記と同義である。)
で表される化合物を得、
当該化合物(21)を接触還元後、トランス異性体をクロマトグラフィーにて分離精製して、一般式(1)
【化36】

(式中、R1aおよびR1bは前記と同義である。)
で表される化合物を製造する方法。
【請求項5】
一般式(1b)
【化37】

で表される化合物を、下記の一般式(C−8a)または(C−8b)
【化38】

(式中、R1aおよびR1bは、それぞれ独立して低級アルキル基、1または複数個の置換基を有していてもよいフェニル基、あるいは1または複数個の置換基を有していてもよいベンジル基を意味し、R8aおよびR8bは、同一または異なる低級アルキル基を意味する。)
で表される化合物と処理して、一般式(22)
【化39】

(式中、R1aおよびR1bは前記と同義である。)
で表される化合物を得、
当該化合物(22)を下記の一般式(C−9)
【化40】

(式中、R9は水素原子、低級アルキル基、あるいは1または複数個の置換基を有していてもよいフェニル基を意味する。)
で表される化合物との光延反応で、一般式(23)
【化41】

(式中、R1a、R1bおよびR9は前記と同義である。)
で表される化合物を得、
当該化合物(23)をアルカリ加水分解して、一般式(1)
【化42】

(式中、R1aおよびR1bは前記と同義である。)
で表される化合物を製造する方法。
【請求項6】
一般式(1)
【化43】

(式中、R1aおよびR1bは、それぞれ独立して低級アルキル基、1または複数個の置換基を有していてもよいフェニル基、あるいは1または複数個の置換基を有していてもよいベンジル基を意味する。)
で表される化合物。
【請求項7】
一般式(2)
【化44】

(式中、R1aおよびR1bは、それぞれ独立して低級アルキル基、1または複数個の置換基を有していてもよいフェニル基、あるいは1または複数個の置換基を有していてもよいベンジル基を意味する。)
で表される化合物。
【請求項8】
一般式(3)
【化45】

(式中、R1aおよびR1bは、それぞれ独立して低級アルキル基、1または複数個の置換基を有していてもよいフェニル基、あるいは1または複数個の置換基を有していてもよいベンジル基を意味する。)
で表される化合物。
【請求項9】
一般式(4)
【化46】

(式中、R1aおよびR1bは、それぞれ独立して低級アルキル基、1または複数個の置換基を有していてもよいフェニル基、あるいは1または複数個の置換基を有していてもよいベンジル基を意味し、R2eおよびR2fは、一緒になってスクシニル基、あるいは1または複数個の置換基を有していてもよいフタロイル基を形成することを意味する。)
で表される化合物。
【請求項10】
一般式(5)
【化47】

(式中、R1aおよびR1bは、それぞれ独立して低級アルキル基、1または複数個の置換基を有していてもよいフェニル基、あるいは1または複数個の置換基を有していてもよいベンジル基を意味する。)
で表される化合物。
【請求項11】
一般式(6)
【化48】

(式中、R1aおよびR1bは、それぞれ独立して低級アルキル基、1または複数個の置換基を有していてもよいフェニル基、あるいは1または複数個の置換基を有していてもよいベンジル基を意味し、R3は1または複数個の置換基を有していてもよいフェニル基を意味する。)
で表される化合物。
【請求項12】
一般式(7)
【化49】

(式中、R1aおよびR1bは、それぞれ独立して低級アルキル基、1または複数個の置換基を有していてもよいフェニル基、あるいは1または複数個の置換基を有していてもよいベンジル基を意味、R3は1または複数個の置換基を有していてもよいフェニル基を意味する。)
で表される化合物。
【請求項13】
一般式(8)
【化50】

(式中、R1aおよびR1bは、それぞれ独立して低級アルキル基、1または複数個の置換基を有していてもよいフェニル基、あるいは1または複数個の置換基を有していてもよいベンジル基を意味し、R3は1または複数個の置換基を有していてもよいフェニル基を意味し、R4は1または複数個の置換基を有していてもよいベンジル基、あるいは1または複数個の置換基を有していてもよいベンズヒドリル基を意味する。)
で表される化合物。
【請求項14】
一般式(9)
【化51】

(式中、R1aおよびR1bは、それぞれ独立して低級アルキル基、1または複数個の置換基を有していてもよいフェニル基、あるいは1または複数個の置換基を有していてもよいベンジル基を意味し、R4は1または複数個の置換基を有していてもよいベンジル基、あるいは1または複数個の置換基を有していてもよいベンズヒドリル基を意味する。)
で表される化合物。
【請求項15】
一般式(10)
【化52】

(式中、R1aおよびR1bは、それぞれ独立して低級アルキル基、1または複数個の置換基を有していてもよいフェニル基、あるいは1または複数個の置換基を有していてもよいベンジル基を意味し、R4は1または複数個の置換基を有していてもよいベンジル基、あるいは1または複数個の置換基を有していてもよいベンズヒドリル基を意味し、R5は水素原子、低級アルキル基、あるいは1または複数個の置換基を有していてもよいフェニル基を意味する。)
で表される化合物。
【請求項16】
一般式(11)
【化53】

(式中、R1aおよびR1bは、それぞれ独立して低級アルキル基、1または複数個の置換基を有していてもよいフェニル基、あるいは1または複数個の置換基を有していてもよいベンジル基を意味し、R4は1または複数個の置換基を有していてもよいベンジル基、あるいは1または複数個の置換基を有していてもよいベンズヒドリル基を意味する。)
で表される化合物。
【請求項17】
一般式(C−2b)のR2a、R2b、R2cおよびR2dが水素原子であり、一般式(4)において、R2eとR2fが一緒になってフタロイル基である請求項1に記載の製造方法。
【請求項18】
1aおよびR1bがそれぞれメチル基である請求項1から5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項19】
1aおよびR1bがそれぞれメチル基である請求項6から16のいずれか1項に記載の化合物。

【公開番号】特開2007−77032(P2007−77032A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−263466(P2005−263466)
【出願日】平成17年9月12日(2005.9.12)
【出願人】(000002831)第一製薬株式会社 (129)
【Fターム(参考)】