説明

シリコンウェハのウェット処理方法

【課題】シリコンウェハのウェット処理方法を提供する。
【解決手段】シリコンウェハをウェット処理する方法において、マイクロバブルの存在下で行うことを特徴とする。
【効果】ウェハ表面の有機物成分、パーティクル成分等を効率的に洗浄除去することが可能となる。さらに洗浄におけるエッチング速度を自在に制御することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンウェハのウェット処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近シリコンウェハを用いた半導体LSIの製造技術においては、より大口径のウェハの使用やより微細な加工技術が必要となってきている。さらに工程の複雑化に伴う製品の品質の維持向上、生産コストの低減等の問題の解決もまた必要となってきている。
【0003】
特にシリコンウェハを用いた半導体LSIの製造技術の多くの分野において、種々の溶液による処理を含むいわゆるウェット処理工程が必須の工程となっている。かかるウェット処理工程のうち特に重要な工程は洗浄工程、エッチング工程等である。従来これらのウェット処理工程においては主に溶液の種類、濃度、又は処理温度、時間等の選択の点において改良が重ねられてきている(例えば、服部毅編著「新版シリコンウェハ表面のクリーン化技術」リアライズ社(2000))。しかしながら近年のさらなる微細な加工技術の必要性、工程の複雑化、高清浄化、低コスト化に伴う要求を満たすにはこれら従来技術では十分ではなかった。さらに近年では、環境保護対策の厳格化、廃液処理の低コスト化の要求により、希薄薬液洗浄、薬液レス洗浄などが望まれてきている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、シリコンウェハのウェット処理全般に適用可能な全く新規な方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、シリコンウェハのウェット処理に関する最近の強い要求を満たすことができる新たな処理方法を鋭意研究開発した結果、意外なことに従来のシリコンウェット処理工程を、マイクロバブルの存在下で実施することにより解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、シリコンウェハをウェット処理する方法において、マイクロバブルの存在下で行うことを特徴とする、シリコンウェハのウェット処理方法に関する。
【0007】
また、本発明のシリコンウェハのウェット処理方法は、特に前記ウェット処理がスライス後洗浄処理であることを特徴とする。
【0008】
また、本発明のシリコンウェハのウェット処理方法は、特に前記ウェット処理がシリコンウェハのAPM(アンモニア+過酸化水素)によるパーティクル除去洗浄処理であることを特徴とする。
【0009】
また、本発明のシリコンウェハのウェット処理方法は、特に前記ウェット処理がシリコンウェハの水素水によるパーティクル除去洗浄処理であることを特徴とする。
【0010】
また、本発明のシリコンウェハのウェット処理方法は、特に前記ウェット処理がラッピング処理後の残渣の除去洗浄処理であることを特徴とする。
【0011】
また、本発明のシリコンウェハのウェット処理方法は、特に前記ウェット処理が油性インクの除去洗浄処理であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明のシリコンウェハのウェット処理方法は、特に前記ウェット処理がシリコンのエッチングをともなう洗浄処理であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の方法で、マイクロバブル存在下でシリコンウェハをウェット処理することにより、ウェハ表面の有機物成分、パーティクル成分等を効率的に洗浄除去することが可能となる。さらに本発明の方法で、マイクロバブル存在下でシリコンのエッチングをともなう洗浄処理を行う際に、エッチング速度を自在に制御することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(シリコンウェット処理)
本発明の処理方法の特徴は、シリコンウェハウェット処理において、マイクロバブルの存在下で行うことが特徴である。従って本発明の処理方法を適用可能なシリコンウェハウェット処理の種類については何ら制限はなく、シリコンウェハをウェット処理するための従来公知の種々の処理工程が含まれる。具体的には種々の段階での洗浄工程、また種々の目的、条件を用いたエッチング工程が含まれる。またこれらの工程の条件は、特に変更する必要はない。
【0015】
洗浄工程には、シリコンインゴットからウェハを切り出した後の洗浄工程、ラッピング処理した後の洗浄工程、粗研磨処理の後の洗浄工程、エッジポリッシュ処理後の洗浄工程、エッチング処理工程の後の洗浄工程、仕上げ研磨処理後の洗浄工程、各種アニール処理前後の洗浄工程、エピタキシャル層堆積前後の洗浄工程、出荷前最終洗浄工程、その他各種工程間の洗浄工程が挙げられる。
【0016】
本発明の方法の適用がより好ましい洗浄工程は、前記ウェット処理がスライス後洗浄処理、シリコンウェハのAPM(アンモニア+過酸化水素)によるパーティクル除去洗浄処理、水素水によるパーティクル除去洗浄処理、ラッピング処理後の残渣の除去洗浄処理である。
【0017】
さらにシリコンのエッチングをともなう洗浄処理については、アンモニア、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの各種アルカリを含む洗浄液、フッ化水素酸やフッ化アンモニウムなどのフッ素を含む各種洗浄液を利用する洗浄処理工程が挙げられる。
【0018】
(マイクロバブル)
本発明の処理方法の特徴は、従来のシリコンウェハウェット処理をマイクロバブルの存在下で行うことが特徴である。ここでマイクロバブルとは一般的に、直径がマイクロメータのオーダーである微細な泡を意味し、公知である(例えば上山智嗣、宮本誠著、「マイクロバブルの世界」、工業調査会出版(2006)参照)。特に直径のサイズで10〜数百μmの範囲である。特に、直径60μm以下の気泡は液中での浮上速度が遅く長時間存在する。またこのサイズの気泡では膨張力よりも表面張力のほうが強いため徐々に収縮することが知られており、最終的には液中に溶解してしまうものもある。また、収縮の最終段階では内部が高温高圧になり特殊な化学種が生じたり破裂時に衝撃波が発生したりする可能性も指摘されている。また、本発明は泡のサイズの分布の程度には特に限定されない。ほぼ単一の分布を有する微細な泡、種々のサイズの複数の分布を有する微細な泡をも含む。また処理工程の間に泡のサイズが変動する場合も含む。またマイクロバブル中の気体についても特に限定されない。マイクロバブルの気体は単一の成分でも混合成分の気体でもよい。マイクロバブル発生装置により適宜選択することができる。具体的な気体には、溶液の成分気体、空気、水素、酸素、窒素、二酸化炭素、オゾン、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、アルゴン、ヘリウムが挙げられる。
【0019】
本発明の処理方法で好ましく使用できるマイクロバブルの発生方法、装置についても特に限定はない。上で説明した性質を有するマイクロバブルを発生可能な方法、装置であれば使用可能である。具体的には再公表00−69550に記載された方法及び装置を使用することができる。
【0020】
(超音波処理)
本発明の処理方法の特徴は、従来のシリコンウェハウェット処理をマイクロバブルの存在下で行うことであるが、超音波処理を併用することにより好ましい結果が得られる場合もある。ここで超音波処理の方法及び装置については特に制限はなく、従来シリコンウェハのウェット処理に使用可能な方法及び装置を好ましく使用することができる。具体的には、周波数10kHz〜2MHz、出力100〜1000Wのものが挙げられるが特に制限されるものではなく、設置する振動素子の数量も洗浄装置ごと、洗浄処理の目的ごとに選択されれば良い。
【0021】
(処理方法)
本発明の処理方法は、通常公知のシリコンウェハのウェット処理工程において、マイクロバブル存在下であればよい。マイクロバブルの存在態様については制限はなく、ウェット処理工程の溶液にあらかじめマイクロバブルを存在させておく方法、ウェット処理工程中に溶液中にマイクロバブルを連続的(又は断続的に)導入する方法、ウェット処理工程の溶液にあらかじめマイクロバブルを存在させておくとともにウェット処理工程中にも溶液中にマイクロバブルを連続的(又は断続的に)導入する方法、が可能である。また、洗浄槽とは別にマイクロバブル発生槽を設け、マイクロバブル発生槽で作製したマイクロバブルを含有する洗浄液を配管等により洗浄槽に導入することも可能である。
【0022】
また、洗浄方法については、洗浄槽に洗浄対象のシリコンウェハを浸漬する方法だけでなく、マイクロバブルを含む処理液をスプレーやシャワーにより吹き付けて枚葉処理する方法も可能である。
【0023】
また存在するマイクロバブルの種類、量についても特に制限はなく、処理工程の種類により適宜選択して最適化することができる。具体的には、好ましい種類の気体を含むマイクロバブルを、好ましい時間、好ましい量で存在させることが可能である。
【0024】
また、ウェット処理工程において使用される装置の形状に応じて、マイクロバブルの導入場所を適宜選択することが可能である。装置の形状により、装置内の特定の場所において好ましい種類、量のマイクロバブルが存在するようにすることができる。具体的には、マイクロバブル発生部を装置内の好ましい箇所に、好ましい数設けることが可能である。
【0025】
また本発明の処理方法は、超音波処理を併用することも可能である。超音波処理は従来のウェット処理で使用される態様で好ましく使用可である。例えば超音波発生装置をウェット処理装置の中若しくは外部に設けることができる。また超音波の波長及び出力も適宜選択することができる。ただし、マイクロバブルと超音波処理の併用は、必ずしもプラスの効果を示すとは限らず、洗浄能力を低下させてしまう場合もある。
【0026】
以下本発明の処理方法を、具体的な実施例に基づいてさらに詳しく説明するが、本発明がこれらの例に限定されるものではない。
【実施例】
【0027】
以下で用いたマイクロバブル装置はナノプラネット研究所社製M2−MS型を使用した。またマイクロバブル発生量及びガスの種類は、マイクロバブル装置に供給する気体の種類及び流量により制御した。また、以下の実施例で発生した気泡のサイズは、90%以上が直径60μm以下であり、直径約30μmに頻度ピークを持つものであった。
【0028】
(実施例1)スライス後洗浄
試料:CZ法により製造したシリコンインゴッドを円筒研削して直径200mmにしたものをマルチワイヤーソーを用いてスライスして厚さ約800μmのシリコンウェハを得た。試料表面には汚れとして、シリコンの切り屑(粉)、グリコール、研磨剤(SIC粉末)の混合物がスラリー状で付着していた。
【0029】
洗浄薬液:カストロールNo.200(0.1〜1wt%―KOH+界面活性剤(2〜5wt%−ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)を、超純水にて20倍希釈、および200倍希釈の2水準の濃度で使用した。
【0030】
洗浄方法:洗浄槽内に薬液を6L入れ、マイクロバブル装置(ナノプラネット研究所製M2−MS/SUS型)のマイクロバブル発生部を洗浄槽の底の位置に1個設け、1L/分マイクロバブルを発生させた。バブル用気体は空気を用いた。
【0031】
ウェハを洗浄槽に導入する前に5分間マイクロバブルを発生させ、洗浄中もマイクロバブルを発生させ続けた。
【0032】
ここへ試料を液温20℃にて1分間浸漬した。後試料を取り出し、超純水槽に入れて液温20℃で1分間リンスした。その後試料をドライエアー吹付けで乾燥した。
薬液槽、薬液組成、薬液量、洗浄時間、リンス時間、乾燥方法等を実施例と同様にし、マイクロバブルを発生させない条件を比較例として実施した。
結果:試料表面の汚れの程度を目視若しくは写真により判断した。結果を表1にまとめた。
【0033】
【表1】

【0034】
表1から、マイクロバブルの存在により、表面汚れは著しく除去されることが分かる。
【0035】
(実施例2)APM(アンモニア+過酸化水素)によるパーティクル除去
試料:表面をAPM処理、DHF処理した後スピン乾燥して疎水性表面を有するミラーシリコンウェハ表面に、研磨剤入り溶液(フジミ化学 GLANZOX3900を1000万倍に希釈した液)を10mLスピンコートして研磨剤にて汚染させた。ここでパーティクル汚染量は、0.13μmφ以上のパーティクル数3000〜5000個付着であった。
【0036】
パーティクル数測定:KLA−テンコール社製Surfscan6220を使用した。
【0037】
洗浄液:APM洗浄液(29%アンモニア:31%過酸化水素水:超純水=1:1:5(容量比))。液温60℃。
【0038】
洗浄方法:洗浄槽内に薬液を40L入れ、マイクロバブル装置(ナノプラネット研究所製M2−MS/PTFE型)のノズル部を洗浄槽の底の位置に1個設け、1L/分のマイクロバブルを発生させた。バブル用気体は空気を用いた。
【0039】
ウェハを洗浄槽に導入する前に5分間マイクロバブルを発生させ、洗浄中もマイクロバブルを発生させ続けた。
【0040】
ここへ試料を60℃にて2分間浸漬した。後試料を取り出し、20℃超純水槽に入れて5分間リンスした。その後試料をスピン乾燥した。
薬液槽、薬液組成、薬液量、洗浄時間、リンス時間、乾燥方法等を実施例と同様にし、マイクロバブルを発生させない条件を比較例として実施した。
【0041】
結果:パーティクル除去率は図1に示した。
【0042】
図1からマイクロバブルの存在でパーティクル除去率が著しく改善させることが分かる。
【0043】
(実施例3)水素水によるパーティクル除去
試料:表面をAPM処理した後スピン乾燥して親水性表面を有するミラーシリコンウェハ表面に、研磨剤入り溶液(フジミ化学 GLANZOX3900を1000万倍に希釈した液)を10mLスピンコートして研磨剤にて汚染させた。ここでパーティクル汚染量は、0.13μmφ以上のパーティクル数500〜800個付着であった。
パーティクル数測定:KLA−テンコール社製Surfscan6220を使用した。
【0044】
洗浄液:溶存水素1〜1.4ppm、アンモニア5ppmを含む水素水洗浄液を用いた。
【0045】
洗浄方法:40Lの洗浄槽内に薬液を6L/minで導入し続け、オーバーフローさせた。マイクロバブル装置(ナノプラネット研究所製M2−MS/PTFE型)のノズル部を洗浄槽の底の位置に1個設け、1L/分のマイクロバブルを発生させた。バブル用気体は水素を用いた。ウェハを洗浄槽に導入する前に5分間マイクロバブルを発生させ、洗浄中もマイクロバブルを発生させ続けた。また、洗浄の間中周波数1MHz、出力1kWの超音波を照射した。
【0046】
ここへ試料を液温20℃にて2分間浸漬した。後試料を取り出し、超純水槽に入れて液温20℃で5分間リンスした。その後試料をスピン乾燥した。
薬液槽、薬液組成、薬液流量、洗浄時間、洗浄時の超音波照射条件、リンス時間、乾燥方法等を実施例と同様にし、マイクロバブルを発生させない条件を比較例として実施した。
結果:パーティクル除去率は図2に示した。
【0047】
図2からマイクロバブルの存在でパーティクル除去率が著しく改善させることが分かる。
【0048】
(実施例4)ラッピング処理後の残渣の除去
試料:ラッピング処理して調製した直径200mmシリコンウェハを用いた。ラッピング処理後の残渣を除去する能力を評価するために、ラップオイルの成分を混合した液をウェハ表面に約0.1mlずつ数箇所に滴下して乾燥させた。滴下した液は、水100mLに防錆剤(シュレックECO#500)約1mLと分散剤(シュレック#600A−90)約1mLを添加したものに、研磨剤(フジミFO#1200MR)約100gを懸濁させたものである。
【0049】
洗浄薬液:カストロールNo.200(0.1〜1wt%の水酸化カリウム+界面活性剤(2〜5wt%−ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)を20〜200倍に希釈して使用した。
【0050】
洗浄方法:洗浄槽内に薬液を4L入れ、マイクロバブル装置(ナノプラネット研究所製M2−MS/PTFE型)のノズル部を洗浄槽の底の位置に1個設け、1L/分のマイクロバブルを発生させた。バブル用気体は空気を用いた。ウェハを洗浄槽に導入する前に5分間マイクロバブルを発生させ、洗浄中もマイクロバブルを発生させ続けた。
【0051】
ここへ試料を液温20℃にて5分間浸漬した。後試料を取り出し、20℃超純水槽に入れて10分間リンスした。その後試料にドライエアーを吹き付け乾燥した。
薬液槽、薬液組成、薬液量、洗浄時間、リンス時間、乾燥方法等を実施例と同様にし、マイクロバブルを発生させない条件を比較例として実施した。
結果:ラップオイル残渣の除去を目視、写真により評価した。その結果マイクロバブルの洗浄に対する効果があることが分かった。
【0052】
(実施例5)油性インクの除去
試料:ラッピング処理直後ウェハ、エッチング処理直後ウェハ、ミラーウェハの3種類の直径200mmシリコンウェハを用いた。ウェハ表面に油性インク(青)を塗布して、乾燥させた。
【0053】
洗浄薬液:カストロールNo.200(0.1〜1wt%―KOH+界面活性剤(2〜5wt%−ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)を20〜200倍に希釈して使用した。
【0054】
洗浄方法:洗浄槽内に薬液を4L入れ、マイクロバブル装置(ナノプラネット研究所製M2−MS/PTFE型)のノズル部を洗浄槽の底の位置に1個設け、1L/分のマイクロバブルを発生させた。バブル用気体は空気を用いた。ウェハを洗浄槽に導入する前に5分間マイクロバブルを発生させ、洗浄中もマイクロバブルを発生させ続けた。
【0055】
ここへ試料を液温20℃にて5分間浸漬した。後試料を取り出し、20℃超純水槽に入れて10分間リンスした。その後試料にドライエアーを吹き付け乾燥した。
薬液槽、薬液組成、薬液量、洗浄時間、リンス時間、乾燥方法等を実施例と同様にし、マイクロバブルを発生させない条件を比較例として実施した。
【0056】
結果:油性インクの除去程度を目視、写真により評価した。その結果を表2に示した。マイクロバブルの洗浄に対する効果があることが分かった。特に、表面状態が平滑なミラーウェハではマイクロバブルなしの条件でも除去可能であったが、表面状態が比較的粗いラッピング処理直後ウェハおよびエッチング処理直後ウェハではマイクロバブルなしでは十分に除去できず、マイクロバブルを使用することによって顕著な洗浄効果が現れることがわかった。
【0057】
【表2】

【0058】
表2からマイクロバブルの存在で油性インク除去が著しく改善させることが分かる。
(実施例6)洗浄におけるシリコンウェハエッチング速度
試料:直径200mmシリコンウェハのミラー面に、CVDによりポリシリコン層を厚さ約1μm堆積させて評価用試料を作製した。
【0059】
測定:洗浄処理前後のポリシリコン層の厚さをエリプソメーターで測定した。
【0060】
洗浄液:カストロールNo.200(0.1〜1wt%―KOH+界面活性剤(2〜5wt%−ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)を20〜200倍に希釈して使用した。
【0061】
洗浄方法:洗浄槽内に薬液を80L入れ、マイクロバブル装置(ナノプラネット研究所製M2−MS/PTFE型)のノズル部を洗浄槽の底の位置に1個設け、1L/分のマイクロバブルを発生させた。その中に試料を50℃、12分間浸漬した。また超音波処理を適用した例では、周波数28kHz、出力1kWの条件を使用した。後試料を取り出し、20℃超純水槽に入れて10分間リンスした。その後試料にドライエアーを吹き付け乾燥した。
薬液槽、薬液組成、薬液量、洗浄時間、リンス時間、乾燥方法等を実施例と同様にし、
(1)超音波なし、マイクロバブルなし、
(2)超音波あり、マイクロバブルなし、
(3)超音波なし、マイクロバブルあり、
(4)超音波あり、マイクロバブルあり
の4条件で試験を実施した。
【0062】
結果:洗浄処理前後のポリシリコン層の厚さをエリプソメーターで測定してエッチングレートを求めた。結果を図3に示した。
【0063】
図3からマイクロバブルの存在で洗浄処理の際のエッチングレートを向上できることが分かる。これにより、ウェハ表面の各種汚染(パーティクル、イオン、メタル、有機物等)の除去能力向上が期待できる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明に係るシリコンウェハのウェット処理方法は、全く新規な方法であって、これまでのシリコンウェハのウェット処理全般に適用することができる処理方法である。特に本発明に係る方法は、スライス後の洗浄処理、APMによるパーティクルの除去洗浄処理、水素水を含有する洗浄液を用いたパーティクル除去洗浄処理、ラッピング処理後の残渣洗浄処理、油性インク除去洗浄処理、又はエッチングを伴う洗浄処理において優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】図1は、実施例2の結果を示す図である。
【図2】図2は、実施例3の結果を示す図である。
【図3】図3は、実施例6の結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコンウェハをウェット処理する方法において、マイクロバブルの存在下で行うことを特徴とする、シリコンウェハのウェット処理方法。
【請求項2】
前記ウェット処理がスライス後洗浄処理である、請求項1に記載のシリコンウェハのウェット処理方法。
【請求項3】
前記ウェット処理がシリコンウェハのAPM(アンモニア+過酸化水素)によるパーティクル除去洗浄処理である、請求項1に記載のシリコンウェハのウェット処理方法。
【請求項4】
前記ウェット処理が水素水を含む洗浄液によるパーティクル除去洗浄処理である、請求項1に記載のシリコンウェハのウェット処理方法。
【請求項5】
前記ウェット処理がラッピング処理後の残渣の除去洗浄処理である、請求項1に記載のシリコンウェハのウェット処理方法。
【請求項6】
前記ウェット処理が油性インクの除去洗浄処理である、請求項1に記載のシリコンウェハのウェット処理方法。
【請求項7】
前記ウェット処理がシリコンのエッチングをともなう洗浄処理である、請求項1に記載のシリコンウェハのウェット処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−103701(P2008−103701A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−241474(P2007−241474)
【出願日】平成19年9月18日(2007.9.18)
【出願人】(599119503)ジルトロニック アクチエンゲゼルシャフト (223)
【氏名又は名称原語表記】Siltronic AG
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】