説明

シロキサン系樹脂組成物およびこれを用いた光学デバイス

【課題】1.70以上の高屈折率、可視光高透過率を有する硬化膜を形成しうるシロキサン系樹脂組成物の提供。
【解決手段】アルミニウム、スズ、チタン、ニオブ、ジルコニウムの化合物からなる群より選ばれる1種の金属化合物粒子、式(1)〜(3)のいずれかで表される化合物を含むシラン化合物を加水分解し、該加水分解物の縮合反応により得られるシロキサン化合物、および溶剤を含むシロキサン系樹脂組成物。R2−nSi(OR2(1)(Rは水素、アルキル基、アルケニル基、フェニル基、Rは1価の縮合多環式芳香族基。またはそれらの置換体。)RSi(OR10(2)(Rは1価の縮合多環式芳香族基またはその置換体。)(R11O)3−mSi−R−Si(OR123−l(3)(Rは2価の縮合多環式芳香族基、RおよびRは水素、アルキル基、アルケニル基、アリール基。またはそれらの置換体。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シロキサン系樹脂組成物および光学デバイスに関する。本発明のシロキサン系樹脂組成物は、固体撮像素子、反射防止フィルム、反射防止板、光学フィルター、ディスプレイ等の光学デバイスに好適に用いられる。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルカメラやカメラ付携帯電話等の急速な発展に伴って、固体撮像素子の小型化、高画素化が要求されている。固体撮像素子の小型化は感度低下を招くため、受光部とカラーフィルターの間やカラーフィルター上部に集光レンズを配置することで、光を効率的に集光し感度の低下を防いでいる。この集光レンズの一般的な作製方法としては、CVD法などにより形成した無機膜をドライエッチングで加工する方法や、樹脂を塗布し加工する方法が挙げられる。前者の方法は、レンズに最適な1.70〜1.90の屈折率を得ることが難しいことから、現在後者の方法が注目されている。
【0003】
これまでに、例えば、ポリシロキサン、キノンジアジド化合物、溶剤および熱架橋性化合物を含有する感光性シロキサン組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、反射防止膜等に求められる高い屈折率を有する硬化膜を得ることは困難であった。また、オルガノシラン、シロキサンオリゴマーおよび金属酸化物の微粒子および/またはゾルを含有するコーティング組成物が開示されている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、金属化合物微粒子の凝集に起因する増粘や微小異物の増加などが不可避であるうえ、シロキサンオリゴマーの構造によっては硬化膜が白濁し、可視光透過率が大きく低下する場合もあり、透過率と屈折率を両立した硬化膜を得ることは困難であった。
【0004】
また、近年では、フェノール単位を有するシルセスキオキサンと縮合多環式炭化水素基を有するシリコーン共重合体(例えば、特許文献3参照)や、芳香族炭化水素基を有するシロキサン化合物を含む高屈折率材料(例えば、特許文献4参照)が提案されている。しかしながら、前者の共重合体は硬化時にフェノール骨格が着色するため透明性が低下する課題があり、後者の方法では、1.70以上の高い屈折率を得ることが困難であった。また、金属酸化物粒子とアルコキシシランとを共重合したシロキサン系樹脂組成物が開示されているが(例えば、特許文献5参照)、さらに高屈折率の硬化膜を得ることのできる材料が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−293337号公報
【特許文献2】特開2001−81404号公報
【特許文献3】特開2006−312717号公報
【特許文献4】特開2008−24832号公報
【特許文献5】特開2007−246877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、1.70以上の高屈折率を有し、可視光透過率が高い硬化膜を形成しうるシロキサン系樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、(a)アルミニウム化合物粒子、スズ化合物粒子、チタン化合物粒子、ニオブ化合物粒子およびジルコニウム化合物粒子からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属化合物粒子、(b1)一般式(1)〜(3)のいずれかで表されるシラン化合物を含むシラン化合物を加水分解し、該加水分解物を縮合反応させることにより得られるシロキサン化合物、および(c)溶剤を含むことを特徴とするシロキサン系樹脂組成物である。
2−nSi(OR2 (1)
(Rは水素、アルキル基、アルケニル基、フェニル基またはそれらの置換体を表す。Rは1価の縮合多環式芳香族基またはその置換体を表す。Rは水素、メチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基を表し、同一でも異なっていてもよい。nは1または2である。nが2の場合、複数のRは同一でも異なっていてもよい。)
Si(OR10 (2)
(Rは1価の縮合多環式芳香族基またはその置換体を表す。R10は水素、メチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基を表し、同一でも異なっていてもよい。)
(R11O)3−mSi−R−Si(OR123−l (3)
(Rは2価の縮合多環式芳香族基またはその置換体を表す。RおよびRは水素、アルキル基、アルケニル基、アリール基またはそれらの置換体を表し、それぞれ同一でも異なっていてもよい。R11およびR12は水素、メチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基を表し、それぞれ同一でも異なっていてもよい。mおよびlはそれぞれ独立に1〜3の整数である。)
【発明の効果】
【0008】
本発明のシロキサン系樹脂組成物によれば、高屈折率で可視光透過率が高い硬化膜を形成することができる。得られた硬化膜は、反射防止フィルムや反射防止板などのハードコート層や、固体撮像素子のマイクロレンズ等に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本発明について具体的に説明する。
【0010】
本発明のシロキサン系樹脂組成物は、(a)アルミニウム化合物粒子、スズ化合物粒子、チタン化合物粒子、ニオブ化合物粒子およびジルコニウム化合物粒子からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属化合物粒子、(b1)前記一般式(1)〜(3)のいずれかで表されるシラン化合物を含むシラン化合物を加水分解し、該加水分解物を縮合反応させることにより得られるシロキサン化合物、および(c)溶剤を含むことを特徴とするシロキサン系樹脂組成物である。また、本発明のシロキサン系樹脂組成物は、(b2)前記金属化合物粒子の存在下、前記一般式(1)〜(3)のいずれかで表されるシラン化合物を含むシラン化合物を加水分解し、該加水分解物を縮合反応させることにより得られる金属化合物含有シロキサン化合物、および(c)溶剤を含有することを特徴とするシロキサン系樹脂組成物である。このようなシロキサン系樹脂組成物を硬化すると、マトリックス樹脂中の高いπ電子密度をもつ縮合多環式芳香族基の存在、および高い屈折率を有する金属化合物粒子により、高屈折率の硬化膜を得ることができる。さらに、驚いたことに、耐薬品性を悪化させると推測される嵩高い縮合多環式芳香族基を導入しても、本発明のシロキサン系樹脂組成物から形成される硬化膜は、耐薬品性が損なわれることなく、十分な耐クラック性や高い可視光透過率を有する。
【0011】
本発明に用いられる(a)金属化合物粒子は、アルミニウム化合物粒子、スズ化合物粒子、チタン化合物粒子、ニオブ化合物粒子およびジルコニウム化合物粒子からなる群より選ばれる少なくとも1種である。金属化合物粒子としては、アルミニウム、スズ、チタン、ニオブまたはジルコニウムの酸化物、硫化物、水酸化物等が挙げられる。
【0012】
塗膜、硬化膜の屈折率をより高めるためには、金属化合物粒子の屈折率はより高いことが好ましく、酸化チタン粒子、酸化ニオブ粒子、酸化ジルコニウム粒子が好ましい。これらの中でも酸化チタン粒子がより好ましく、ルチル型酸化チタン粒子がより好ましい。ルチル型酸化チタン粒子は屈折率がより高いことに加え、高温プロセスで作製される安定型結晶系であるため、本発明のシロキサン系樹脂組成物の焼成時における金属化合物粒子の収縮量がマトリックス樹脂より小さく、収縮応力が緩和されるため、厚膜形成時のクラックの発生を抑制する効果がある。一方、ルチル型酸化チタンは可視光領域に吸収を有するため、可視光領域に吸収のない金属化合物粒子と併用することが、高い屈折率と高い可視光透過率を両立する観点から好ましい。全金属化合物粒子中のルチル型チタン酸化物粒子の含有量は、屈折率をより向上させる観点から10重量%以上が好ましく、20重量%以上がより好ましい。一方、可視光透過率をより向上させる観点から95重量%以下が好ましく、85重量%以下がより好ましい。また、ルチル型酸化チタンとの親和性の観点から、アナターゼ型酸化チタンと組み合わせることが好ましい。
【0013】
また、マトリックスのシロキサン化合物と反応しやすくするため、金属化合物粒子は、表面に水酸基等シロキサン化合物と反応し得る反応基を有することが好ましい。
【0014】
金属化合物粒子の例としては、酸化スズ−酸化チタン複合粒子の“オプトレイク(登録商標)”TR−502、“オプトレイク”TR−504、酸化ケイ素−酸化チタン(アナターゼ型)複合粒子の“オプトレイク”TR−503、“オプトレイク”TR−513、“オプトレイク”TR−520、“オプトレイク”TR−521、“オプトレイク”TR−527、“オプトレイク”TR−528、“オプトレイク”TR−529、酸化チタン粒子(アナターゼ型)の“オプトレイク”TR−505(以上、商品名、日揮触媒化成工業(株)製)、“タイノック(登録商標)”A−6、“タイノック”M−6、“タイノック”AM−15(以上、商品名、多木化学(株)製)、酸化チタン(アナターゼ型/ルチル型複合)粒子の“nSol(登録商標)”101−20I、“nSol”101−20L、“nSol”101−20BL、“nSol”107−20I(以上、商品名、ナノグラム(株)製)、酸化チタン(ルチル型)粒子のTTO−51(A)、TTO−51(B)、TTO−55(A)、TTO−55(B)、TTO−55(C)、TTO−55(D)、TTO−V−4、TTO−W−5(以上、商品名、石原産業(株)製)、RTTAP15WT%−E10、RTTDNB15WT%−E11、RTTDNB15WT%−E12、RTTDNB15WT%−E13、RTTIBA15WT%−E6、RTIPA15WT%−NO8、RTIPA15WT%−NO9、RTIPA20WT%−N11、RTIPA20WT%−N13、RTIPA20WT%−N14、RTIPA20WT%−N16(以上、商品名、シーアイ化成(株)製)、酸化ジルコニウム粒子((株)高純度化学研究所製)、酸化スズ−酸化ジルコニウム複合粒子(日揮触媒化成工業(株)製)、酸化スズ粒子((株)高純度化学研究所製)、“セラメース(登録商標)”S−8、“セラメース”S−10(以上、商品名、多木化学(株)製)、酸化ニオブ粒子の“バイラール(登録商標)”Nb−X10(商品名、多木化学(株)製)等が挙げられる。これらの金属化合物粒子は表面に水酸基を有しており、マトリックスのシロキサン化合物との反応性が良好である。
【0015】
金属化合物粒子の数平均粒子径は、1nm〜200nmが好ましい。数平均粒子径を1nm以上とすることで、厚膜形成時にクラックが発生しにくくなる。また数平均粒子径200nm以下とすることで、可視光に対してより透明な膜が得られる。これらをより高いレベルで両立するためには、数平均粒子径1nm〜70nmであることがより好ましい。ここで、金属化合物粒子の数平均粒子径は、ガス吸着法や動的光散乱法、X線小角散乱法、透過型電子顕微鏡や走査型電子顕微鏡により粒子径を直接測定する方法等により測定することができる。本発明における数平均粒子径は、動的光散乱法により測定した値をいう。
【0016】
本発明のシロキサン系樹脂組成物における金属化合物粒子の含有量は、組成物中溶剤を除く固形分全量に対して5重量%以上が好ましく、20重量%以上がより好ましく、40重量%がより好ましい。また、80重量%以下が好ましく、70重量%以下がより好ましく、60重量%以下がより好ましい。この範囲内であれば、より良好な可視光透過率と耐クラック性を有する硬化膜を得ることができる。なお、金属化合物粒子の含有量は、(a)成分の金属化合物粒子と、(b2)成分の金属化合物含有シロキサン化合物に含まれる金属化合物粒子の総量をさす。
【0017】
本発明のシロキサン系樹脂組成物に用いられる(b1)シロキサン化合物および(b2)金属化合物含有シロキサン化合物は、縮合多環式芳香族基を有する。以下、(b1)および(b2)をあわせて(b)シロキサン化合物という。(b)シロキサン化合物は、必要により前記金属化合物粒子存在下、下記一般式(1)〜(3)のいずれかで表されるシラン化合物を含むシラン化合物を、好ましくは溶剤中、酸または塩基触媒により加水分解することによって、シラノール化合物を生成した後、該シラノール化合物を縮合反応させることによって得ることができる。一般式(1)〜(3)のいずれかで表されるシラン化合物を2種以上用いてもよいし、さらに後述する一般式(4)〜(6)のいずれかで表されるシラン化合物を用いてもよい。
【0018】
2−nSi(OR2 (1)
は水素、アルキル基、アルケニル基、フェニル基またはそれらの置換体を表す。アルキル基およびアルケニル基の炭素数は1〜20が好ましい。置換体の置換基の好ましい例として、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、エポキシ基、グリシジル基、オキセタニル基、フェノキシ基、アクリロキシ基、メタクリロキシ基等が挙げられ、以下同じとする。Rは1価の縮合多環式芳香族基またはその置換体を表す。Rは水素、メチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基を表し、同一でも異なっていてもよい。nは1または2である。nが2の場合、複数のRは同一でも異なっていてもよい。なお、プロピル基やブチル基等のアルキル基は、直鎖状でも分岐状でもよく、以下同じとする。
【0019】
の好ましい例として、水素、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ビニル基、アリル基、フェニル基等が挙げられる。
【0020】
縮合多環式芳香族基は、芳香族環が2個以上縮合した炭化水素基を示す。縮合多環式芳香族炭化水素化合物やその置換体の好ましい例として、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、テトラセン、ベンズ(a)アントラセン、ベンゾ(c)フェナントレン、ペンタセン、ピレン、フルオレン、フルオレノン、インデン、アズレン、アセナフテン、アセナフチレン、カルバゾール等が挙げられる。硬化膜の耐熱性と透明性の点から、ナフタレン、フェナントレン、ピレン、フルオレン、フルオレノン、インデン、アセナフテン、アセナフチレンが好ましい。
【0021】
一般式(1)で表されるシラン化合物の好ましい具体例としてジ(1−ナフチル)ジメトキシシラン、ジ(1−ナフチル)ジエトキシシラン、ジ(1−ナフチル)ジ−n−プロポキシシラン、ジ(1−ナフチル)ジ−n−ブトキシシラン、ジ(2−ナフチル)ジメトキシシラン、1−ナフチルメチルジメトキシシラン、1−ナフチルエチルジメトキシシラン、ジ(1−アントラセニル)ジメトキシシラン、ジ(9−アントラセニル)ジメトキシシラン等が挙げられる。
【0022】
Si(OR10 (2)
は1価の縮合多環式芳香族基またはその置換体を表す。R10は水素、メチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基を表し、同一でも異なっていてもよい。縮合多環式芳香族基やその置換体の好ましい例は、上記(1)における例と同じである。
【0023】
一般式(2)で表されるシラン化合物の好ましい具体例として、1−ナフチルトリメトキシシラン、1−ナフチルトリエトキシシラン、1−ナフチルトリ−n−プロポキシシラン、2−ナフチルトリメトキシシラン、1−アントラセニルトリメトキシシラン、9−アントラセニルトリメトキシシラン、9−フェナントレニルトリメトキシシラン、9−フルオレニルトリメトキシシラン、2−フルオレニルトリメトキシシラン、2−フルオレノンイルトリメトシキシラン、1−ピレニルトリメトキシシラン、2−インデニルトリメトキシシラン、5−アセナフテニルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0024】
(R11O)3−mSi−R−Si(OR123−l (3)
は2価の縮合多環式芳香族基またはその置換体を表す。RおよびRは、水素、アルキル基、アルケニル基、アリール基またはそれらの置換体を表し、それぞれ同一でも異なっていてもよい。アルキル基およびアルケニル基の炭素数は1〜20が好ましい。R11およびR12は水素、メチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基を表し、それぞれ同一でも異なっていてもよい。mおよびlはそれぞれ独立に1〜3の整数である。縮合多環式芳香族基やその置換体の好ましい例は、上記(1)における例と同じである。
【0025】
一般式(3)で表されるシラン化合物の好ましい具体例を下記に示す。
【0026】
【化1】

【0027】
本発明において、(b)シロキサン化合物は、前記一般式(1)〜(3)のいずれかで表される少なくとも1種のシラン化合物とともに、下記一般式(4)〜(6)のいずれかで表される少なくとも1種のシラン化合物を加水分解し、該加水分解物を縮合反応させることにより得られるものであることが好ましい。一般式(4)〜(6)のいずれかで表されるシラン化合物を2種以上用いてもよい。
【0028】
Si(OR13 (4)
は水素、アルキル基、アルケニル基、フェニル基またはそれらの置換体を表す。アルキル基およびアルケニル基の炭素数は1〜20が好ましい。置換体の置換基の好ましい例は、上記(1)における例と同じである。R13は、水素、メチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基を表し、同一でも異なっていてもよい。
【0029】
Si(OR14 (5)
およびRはそれぞれ独立に、水素、アルキル基、アルケニル基、フェニル基またはそれらの置換体を表す。アルキル基およびアルケニル基の炭素数は1〜20が好ましい。置換体の置換基の好ましい例は、上記(1)における例と同じである。R14は水素、メチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基を表し、同一でも異なっていてもよい。
【0030】
Si(OR15 (6)
15はメチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基を表し、同一でも異なっていてもよい。
【0031】
一般式(4)で表される3官能性シラン化合物としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ(メトキシエトキシ)シラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリイソプロポキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−(N,N−ジグリシジル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、β−シアノエチルトリエトキシシラン、グリシドキシメチルトリメトキシシラン、グリシドキシメチルトリエトキシシラン、α−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、α−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、β−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、β−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、α−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、α−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリプロポキシシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリイソプロポキシシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリブトキシシラン、α−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、α−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、β−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、β−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、δ−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、δ−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリメトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリプロポキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリブトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリメトキシシラン、3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリエトキシシラン、4−(3,4−エポキシシクロヘキシル)ブチルトリメトキシシラン、4−(3,4−エポキシシクロヘキシル)ブチルトリエトキシシラン、トリフルオロメチルトリメトキシシラン、トリフルオロメチルトリエトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、パーフルオロプロピルエチルトリメトキシシラン、パーフルオロプロピルエチルトリエトキシシラン、パーフルオロペンチルエチルトリメトキシシラン、パーフルオロペンチルエチルトリエトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリプロポキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリイソプロポキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリエトキシシラン等が挙げられる。これらのうち、得られる塗膜のクラック耐性の観点から、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、およびフェニルトリエトキシシランが好ましい。
【0032】
一般式(5)で表される2官能性シラン化合物としては、例えば、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、メチルビニルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、グリシドキシメチルジメトキシシラン、グリシドキシメチルメチルジエトキシシラン、α−グリシドキシエチルメチルジメトキシシラン、α−グリシドキシエチルメチルジエトキシシラン、β−グリシドキシエチルメチルジメトキシシラン、β−グリシドキシエチルメチルジエトキシシラン、α−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、α−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルビニルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルビニルジエトキシシラン、トリフルオロプロピルメチルジメトキシシラン、トリフルオロプロピルメチルジエトキシシラン、トリフルオロプロピルエチルジメトキシシラン、トリフルオロプロピルエチルジエトキシシラン、トリフルオロプロピルビニルジメトキシシラン、トリフルオロプロピルビニルジエトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、オクタデシルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。これらのうち、得られる塗膜に可とう性を付与させる目的には、ジメチルジアルコキシシラン、ジフェニルジアルコキシシランが好ましく用いられる。
【0033】
一般式(6)で表される4官能性シラン化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等が挙げられる。
【0034】
本発明における(b)シロキサン化合物は、(b2)成分の金属化合物含有シロキサン化合物であることが好ましい。(b2)成分の金属化合物含有シロキサン化合物を含有するシロキサン系樹脂組成物は、金属化合物粒子の分散安定性に非常に優れ、硬化膜の可視光透過性がより向上する。さらに、耐クラック性および耐薬品性が向上する。これは、シロキサン化合物と金属化合物粒子が結合しているためと考えられる。この結合した状態は、走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡で金属化合物粒子とシロキサン化合物との境界部分を観察することによって知ることができる。両者が結合している場合には、両者界面が不明瞭である。これに対し、(b1)成分のシロキサン化合物と(a)成分の金属化合物粒子を混合したシロキサン系樹脂組成物の場合、シロキサン化合物と金属化合物粒子が結合していないため、明瞭に両者の界面が見られる。
【0035】
(b)シロキサン化合物中の全シラン原子数100モル%中、一般式(1)〜(3)のいずれかで表される1種以上のシラン化合物に由来するシラン原子は、硬化膜の屈折率をより向上させるために、20モル%以上が好ましく、30モル%以上がより好ましい。また、硬化膜の耐薬品性の観点から、90モル%以下が好ましく、85モル%以下がより好ましい。
【0036】
本発明のシロキサン系樹脂組成物における(b)シロキサン化合物の含有量(金属化合物粒子分を除く)は、溶剤を除く固形分全量に対して10重量%以上が好ましく、20重量%以上がより好ましい。また、90重量%以下が好ましく、80重量%以下がより好ましい。この範囲で(b)シロキサン化合物を含有することにより、塗膜の透過率と耐クラック性をより高めることができる。
【0037】
(b)シロキサン化合物は、必要により前記金属化合物粒子の存在下、前記一般式(1)〜(3)のいずれかで表される少なくとも1種のシラン化合物、さらに必要により一般式(4)〜(6)のいずれかで表される少なくとも1種のシラン化合物を、好ましくは溶剤中、酸または塩基触媒により加水分解することによって、シラノール化合物を生成した後、該シラノール化合物を縮合反応させることによって得ることができる。
【0038】
加水分解反応は、溶剤中、シラン化合物に酸触媒または塩基触媒および水を1〜180分間かけて添加した後、室温〜110℃で1〜180分間行うことが好ましい。このような条件で加水分解反応を行うことにより、急激な反応を抑制することができる。反応温度は、より好ましくは40〜105℃である。
【0039】
加水分解反応によりシラノール化合物を得た後、反応液を50℃以上、溶剤の沸点以下で1〜100時間加熱し、縮合反応を行うことが好ましい。シロキサン化合物の重合度を上げるために、再加熱もしくは触媒の再添加を行うことも可能である。また、シラン化合物の部分縮合物を得た後に、(4)〜(6)のいずれかで表されるシラン化合物を混合してもよい。
【0040】
加水分解における各種条件は、反応スケール、反応容器の大きさ、形状等を考慮して、例えば、触媒濃度、反応温度、反応時間等を設定することによって、目的とする用途に適した物性を得ることができる。
【0041】
加水分解反応に用いる酸触媒としては、塩酸、酢酸、蟻酸、硝酸、蓚酸、硫酸、リン酸、ポリリン酸、多価カルボン酸あるいはその無水物、イオン交換樹脂等の酸触媒が挙げられる。特に蟻酸、酢酸またはリン酸を用いた酸性水溶液が好ましい。また、塩基触媒としては、無機アルカリである水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等や有機塩基化合物であるトリエチルアミン、ジエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アンモニア水、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、アミノ基を有するアルコキシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられるが、アルカリ金属は、電子デバイス等で誤作動を引き起こすため、塩基触媒としては有機塩基が好ましい。
【0042】
これら触媒の好ましい含有量は、加水分解反応時に使用される全シラン化合物100重量部に対して好ましくは0.1重量部以上であり、また、好ましくは5重量部以下である。ここで、全シラン化合物量とは、シラン化合物、その加水分解物およびその縮合物の全てを含んだ量のことを言い、以下同じとする。
【0043】
加水分解反応に用いられる溶剤は特に限定されないが、アルコール類、グリコール類、エーテル類、ケトン類、アミド類、アセテート類、芳香族あるいは脂肪族炭化水素、γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド等を挙げることができる。これらを2種以上用いてもよい。好ましくは、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、γ−ブチロラクトンである。また、加水分解反応終了後に、さらに溶剤を添加することにより、樹脂組成物として適切な濃度に調整することも好ましい。また、加水分解後に加熱および/または減圧下により生成アルコール等の全量あるいは一部を留出、除去し、その後好適な溶剤を添加してもよい。
【0044】
加水分解反応時に使用される溶剤の量は、全シラン化合物100重量部に対して、好ましくは80重量部以上であり、また、好ましくは200重量部以下である。また、加水分解反応に用いる水は、イオン交換水が好ましい。水の量は任意に選択可能であるが、シラン化合物1モルに対して、1.0〜4.0モルの範囲で用いることが好ましい。
【0045】
本発明のシロキサン系樹脂組成物は、(c)溶剤を含有する。溶剤により、固形分濃度を適当な範囲に調整することができる。溶剤は、シロキサン系樹脂組成物の安定性、塗れ性、揮発性等を考慮して適宜選択することができ、2種以上用いてもよい。具体的には、加水分解に用いられる溶剤として先に示した溶剤を好適に用いることができる。
【0046】
本発明のシロキサン系樹脂組成物における(c)溶剤の含有量は、(b)シロキサン化合物100重量部に対して、100重量部〜9900重量部が好ましく、より好ましくは100重量部〜5000重量部である。
【0047】
本発明のシロキサン系樹脂組成物は、さらに(d)下記一般式(7)で表される熱架橋性基を有する熱硬化剤を含有してもよい。
【0048】
−CHOR16 (7)
上記一般式(7)中、R16は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示す。樹脂組成物の経時安定性と熱硬化剤の反応性の観点から、メチル基またはエチル基が好ましい。
【0049】
本発明のシロキサン系樹脂組成物は、(d)熱硬化剤を含有することにより、高いヒートサイクル耐性が得られ、繰り返し熱負荷後の耐クラック性に優れた硬化膜を形成することができる。本発明における(d)熱硬化剤は、前記一般式(7)で表される熱架橋性基を有すれば特に限定されないが、可視光透過率をより向上させることができる点で、下記一般式(8)で表される熱架橋性基を有するものがより好ましい。
【0050】
【化2】

【0051】
一般式(8)中、R17は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示す。樹脂組成物の経時安定性と熱硬化剤の反応性の観点から、メチル基またはエチル基が好ましい。
【0052】
また、上記(d)熱硬化剤は、硬化膜の可視光透過率をより向上させるため、フェノール性水酸基を含まないものが好ましい。
【0053】
(d)熱硬化剤の具体例を以下に示す。
【0054】
【化3】

【0055】
上記の中でも、一般式(8)で表される熱架橋性基を有する“NIKALAC(登録商標)”MX−290,“NIKALAC”MX−280,“NIKALAC”MX−270(以上、商品名、(株)三和ケミカル製)は、硬化膜の可視光透過率をより向上させることができ好ましい。
【0056】
本発明において、(d)熱硬化剤の含有量は、シロキサン系樹脂組成物中の固形分中0.1重量%以上が好ましく、0.5重量%以上がより好ましい。また、30重量%以下が好ましく、20重量%以下がより好ましい。
【0057】
また、本発明のシロキサン系樹脂組成物に感光性を付与するため、各種感光剤を含有してもよい。例えば、(e)光酸発生剤や、光硬化剤を含有することにより、ネガ型感光性を付与することができる。一方、キノンジアジド系感光剤等を含有する場合、露光部をテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液等のアルカリ水溶液で溶解することにより、ポジ型のレリーフパターンを得ることができる。
【0058】
(e)光酸発生剤としては、オニウム塩化合物、ハロゲン含有化合物、ジアゾケトン化合物、ジアゾメタン化合物、スルホン化合物、スルホン酸エステル化合物、スルホンイミド化合物等を挙げることができる。これら光酸発生剤の具体例としては、特開2007−246877号公報に例示した化合物を挙げることができ、光酸発生剤を2種以上含有してもよい。光酸発生剤の含有量は、(b)シロキサン化合物の総量100重量部に対して0.01〜20重量部が一般的である。
【0059】
キノンジアジド系感光剤としては、フェノール性水酸基を有する化合物にナフトキノンジアジドのスルホン酸がエステルで結合した化合物が好ましい。ここで用いられるフェノール性水酸基を有する化合物としては、例えば、Bis−Z、TekP−4HBPA(テトラキスP−DO−BPA)、TrisP−HAP、TrisP−PA、BisRS−2P、BisRS−3P(以上、商品名、本州化学工業(株)製)、BIR−PC、BIR−PTBP、BIR−BIPC−F(以上、商品名、旭有機材工業(株)製)、4,4’−スルホニルジフェノール、BPFL(商品名、JFEケミカル(株)製)が好ましい。これらフェノール性水酸基を有する化合物に、4−ナフトキノンジアジドスルホン酸あるいは5−ナフトキノンジアジドスルホン酸をエステル結合で導入したキノンジアジド系感光剤が好ましい。また、キノンジアジド系感光剤の分子量は350以上800以下が好ましい。
【0060】
キノンジアジド系感光剤の含有量は、(b)シロキサン化合物の総量100重量部に対して2〜10重量部が好ましい。
【0061】
キノンジアジド系感光剤を含有する場合、未露光部に未反応の感光剤が残留し、加熱硬化後に膜の着色が生じることがある。可視光透過率のより高い硬化膜を得るためには、現像後の膜全面に紫外線を照射してキノンジアジド系感光剤を分解し、その後に加熱硬化を行うことが好ましい。
【0062】
本発明のシロキサン系樹脂組成物には、シロキサン系樹脂組成物の硬化を促進させる、あるいは硬化を容易ならしめる、(d)成分以外の架橋剤や硬化剤、硬化助剤を含有しても良い。具体例としては、シリコーン樹脂硬化剤、各種金属アルコレート、各種金属キレート化合物、イソシアネート化合物およびその重合体、多官能アクリル樹脂、熱により強酸を発生する熱酸発生剤等を挙げることができる。これらを2種以上含有してもよい。なかでも熱酸発生剤が好ましい。熱酸発生剤としては、例えば、“サンエイド(登録商標)”SI−200、SI−210、SI−220、SI−300(以上、商品名、三新化学(株)製)等が挙げられる。
【0063】
本発明のシロキサン系樹脂組成物には、塗布時におけるフロー性や膜厚の均一性向上のために、各種界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤の種類に特に制限はなく、例えば、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、ポリアルキレンオキシド系界面活性剤、ポリ(メタ)アクリレート系界面活性剤等を挙げることができる。これらのうち、フロー性や膜厚均一性の観点から、フッ素系界面活性剤が特に好ましい。界面活性剤の具体例としては、特開2007−246877号公報に例示したものを挙げることができ、これらを2種以上含有してもよい。界面活性剤の含有量は、(b)シロキサン化合物の総量100重量部に対して、通常0.001〜10重量部である。
【0064】
本発明のシロキサン系樹脂組成物には、必要に応じて、粘度調整剤、安定化剤、着色剤、ガラス質形成剤等を含有することができる。
【0065】
本発明のシロキサン系樹脂組成物は、(b)シロキサン化合物と、必要により(a)金属化合物粒子、(d)熱硬化剤、(e)光酸発生剤およびその他の成分を混合することで得られる。この際、任意の溶剤で希釈してもよい。混合温度に特に制限はないが、操作の簡便さから5〜50℃の範囲が好ましい。
【0066】
本発明のシロキサン系樹脂組成物は、基材上に塗布して塗布膜を得、これを加熱により乾燥、硬化させることにより硬化膜を形成することができる。塗布膜および硬化膜の膜厚に特に制限はないが、ともに0.001〜100μmの範囲が一般的である。
【0067】
塗布方法としては、マイクログラビアコーティング、スピンコーティング、ディップコーティング、カーテンフローコーティング、ロールコーティング、スプレーコーティング、流し塗り法等を好ましく用いることができる。加熱乾燥および硬化条件は、適用される基材、および樹脂組成物に応じて適宜選択されるが、通常は室温以上400℃以下の温度で、0.5分間から240分間加熱することが好ましい。特に好ましい硬化温度は100〜400℃であり、さらに好ましくは150〜400℃である。
【0068】
本発明のシロキサン系樹脂組成物を硬化させてなる硬化膜は、波長633nmにおける屈折率が1.70以上であることが好ましい。本発明における屈折率は、プリズムカプラー法により測定した値を指す。また、膜厚1μm当たりの硬化膜の波長400nmにおける透過率が85%以上であることが好ましく、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは93%以上である。本発明における透過率は、紫外−可視分光光度計を用いて測定した値を指す。自立膜を作製することが困難な場合、ガラス基板等の透明基板に塗膜を形成して測定することができる。このような特性を有する硬化膜により、固体撮像素子の感度を向上させることができる。例えば、硬化膜の屈折率は、シロキサン化合物に電子分極の大きい置換基を導入することや、金属化合物粒子として酸化物粒子を用いることにより、容易に高くすることができる。また、硬化膜の可視光透過率は、シロキサン化合物に透明性の高い置換基を導入すること、金属化合物粒子の微粒子化、シロキサン化合物と金属化合物粒子の相溶化により、容易に高くすることができる。より具体的には、一般式(1)〜(3)におけるR〜Rとして、ナフチル基またはナフチレン基を用いることにより、上記特性を有する硬化膜を容易に形成することができる。
【0069】
本発明のシロキサン系樹脂組成物により形成された塗膜および硬化膜は、固体撮像素子、反射防止フィルム、反射防止板、光学フィルター、ディスプレイ等の光学デバイスに好適に用いられる。具体的な使用例としては、固体撮像素子等に形成される集光用マイクロレンズや、反射防止フィルムや反射防止板に用いられるハードコート層、ディスプレイ用TFT基板の平坦化材、液晶ディスプレイやカラーフィルターの保護膜、光導波路、位相シフターなどが挙げられる。高い可視光透過率と高い屈折率を両立できることから、固体撮像素子上に形成されるマイクロレンズや反射防止膜に使われるハードコート層として特に好適に用いられる。また、半導体装置のバッファーコート、層間絶縁膜や、各種保護膜として用いることもできる。
【実施例】
【0070】
以下実施例および技術をあげて本発明を説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。なお、実施例中のシロキサン系樹脂組成物の評価は以下の方法により行った。
【0071】
硬化膜の作製
6インチシリコンウエハ上または40mm角ガラス基板上に、シロキサン系樹脂組成物を塗布し、ついでホットプレート(大日本スクリーン製造(株)製SCW−636)を用いて、空気雰囲気下で120℃で3分間プリベークすることにより、塗布膜を得た。この塗布膜を、空気雰囲気下のホットプレート上で、250℃で5分間加熱した後、300℃で5分間加熱して硬化膜を得た。
【0072】
屈折率および膜厚の測定
6インチシリコンウエハまたは40mm角ガラス基板上に作製した硬化膜について、プリズムカプラーMODEL2010(Metricon(株)製)を用いて、22℃での633nm(He−Neレーザー使用)における膜面に対して垂直方向の屈折率(TE)および膜厚を測定した。
【0073】
透過率の測定
50mm角ガラス基板(コーニング社製、品番テンパックス、波長400nmでの屈折率1.50)上に作製した膜厚1.0μmの硬化膜について、紫外−可視分光光度計UV−260(島津製作所(株)製)を用いて、400nmの透過率を測定した。ガラス基板のみの透過率を100%として、塗膜の透過率を算出した。
【0074】
熱負荷後の耐クラック性の評価
6インチシリコンウエハ上に作製した硬化膜について、以下の温度履歴でヒートサイクル試験を行い、光学顕微鏡でクラックが発生する温度を確認した。加熱は空気雰囲気下のホットプレート上で行った。なお、硬化膜作製にてクラックが発生したものについてはクラック発生温度220℃とした。
ヒートサイクル試験の温度履歴
250℃5分→室温(23℃)→280℃5分→室温(23℃)→300℃5分→室温(23℃)5分→320℃5分→室温(23℃)5分→340℃5分→室温(23℃)5分→360℃5分→室温(23℃)5分→380℃5分→室温(23℃)5分→400℃5分→室温(23℃)5分。
【0075】
耐薬品性試験
得られた硬化膜をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに1時間浸し、ついで、その硬化膜を120℃のホットプレートで1分間加熱処理した。浸漬後加熱処理した硬化膜の膜厚(yμm)と浸漬前の硬化膜の膜厚(zμm)を測定し、膜厚変化(膜厚変化=z−yμm)が0.01μm以下であれば耐薬品性良好とした。
【0076】
樹脂組成物の固形分濃度
各実施例・比較例におけるポリマー溶液A〜Sの固形分濃度(シロキサン化合物と金属化合物粒子を含む総固形分濃度)は、前記溶液をアルミカップに1g入れ、120℃から250℃へと昇温工程を含み30分間、デジタルホットプレート(井内社製“Dataplate”)上で加熱して揮発成分を除去し、その残留固形分xgから算出した。(固形分濃度=x×100重量%)
合成例1 キノンジアジド化合物の合成
乾燥窒素気流下、TrisP−PA(商品名、本州化学工業(株)製)21.22g(0.05モル)と5−ナフトキノンジアジドスルホン酸クロリド(東洋合成(株)製、NAC−5)26.8g(0.1モル)を1,4−ジオキサン450gに溶解させ、室温にした。ここに、1,4−ジオキサン50gと混合したトリエチルアミン12.65gを、系内が35℃以上にならないように滴下した。滴下後40℃で2時間撹拌した。トリエチルアミン塩を濾過し、濾液を水に投入した。その後、析出した沈殿を濾過で集め、さらに1%重量%塩酸水1Lで洗浄した。その後、さらに水2Lで2回洗浄した。この沈殿を真空乾燥機で乾燥し、キノンジアジド化合物を得た。
【0077】
実施例1
メチルトリメトキシシラン27.2g(0.20mol)、9−フェナントレニルトリメトキシシラン89.5g(0.30mol)、γ−ブチロラクトン89.2gを反応容器に入れ、この溶液に、水27.0gおよびリン酸0.58gを、撹拌しながら、反応温度が40℃を越えないように滴下した。滴下後、反応容器に蒸留装置を取り付け、得られた溶液をバス温80℃で1.5時間加熱撹拌して、加水分解により生成したメタノールを留去しつつ反応させた。その後、溶液をバス温130℃でさらに1時間加熱撹拌した後、室温まで冷却し、完全縮合した場合のシロキサン化合物重量(82.2g)と粒子の総重量100重量%に対して47重量%となるように、数平均粒子径15nmの“オプトレイク”TR−520(商品名、触媒化成工業(株)製 組成:酸化ケイ素−酸化チタン(アナターゼ型)複合粒子30重量%、γ−ブチロラクトン70重量%)243gを添加し、ポリマー溶液A(粒子添加系、固形分濃度:37重量%)を得た。
【0078】
得られたポリマー溶液A10gに、γ−ブチロラクトン10gを加えて溶解し、シロキサン系樹脂組成物1を得た。得られたシロキサン系樹脂組成物1を用い、前記のようにガラス基板およびシリコンウエハ上に硬化膜を作製し、屈折率、透過率、熱負荷後の耐クラック性、耐薬品性について評価を行った。
【0079】
実施例2
メチルトリメトキシシラン27.2g(0.20mol)、9−フェナントレニルトリメトキシシラン89.5g(0.30mol)、γ−ブチロラクトン89.2gおよび“オプトレイク”TR−520 243gを反応容器に入れ、この溶液に、水27.0gおよびリン酸0.58gを、撹拌しながら、反応温度が40℃を越えないように滴下した。滴下後、反応容器に蒸留装置を取り付け、得られた溶液をバス温80℃で1.5時間加熱撹拌して、加水分解により生成したメタノールを留去しつつ反応させた。その後、溶液をバス温110℃でさらに1時間加熱撹拌した後、室温まで冷却し、ポリマー溶液B(粒子共重合系、固形分濃度:36重量%)を得た。
【0080】
得られたポリマー溶液B10gに、γ−ブチロラクトン10gを加えて溶解し、シロキサン系樹脂組成物2を得た。得られたシロキサン系樹脂組成物2を用いて硬化膜を作製し、実施例1と同様に評価を行った。
【0081】
実施例3
メチルトリメトキシシランの添加量を27.2g(0.20mol)から20.4g(0.15mol)に変更し、9−フェナントレニルトリメトキシシラン89.5g(0.30mol)を1−ナフチルトリメトキシシラン86.9g(0.35mol)に変更した以外は実施例2と同様の操作を行い、ポリマー溶液C(固形分36重量%)を得た。
【0082】
得られたポリマー溶液C10gにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート10gを加えて溶解し、シロキサン系樹脂組成物3を得た。得られたシロキサン系樹脂組成物3を用いて硬化膜を作製し、実施例1と同様に評価を行った。
【0083】
実施例4
実施例3で得られたポリマー溶液C10gにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート10gおよび熱架橋性化合物“ニカラック”MX−270(商品名、三和ケミカル製)0.108g(シロキサン系樹脂組成物の固形分中、3重量%)を加えて溶解し、シロキサン系樹脂組成物4を得た。得られたシロキサン系樹脂組成物4を用いて硬化膜を作製し、実施例1と同様に評価を行った。
【0084】
実施例5
メチルトリメトキシシラン20.4g(0.15mol)、1−ナフチルトリメトキシシラン86.9g(0.35mol)、γ−ブチロラクトン79.8gおよび数平均粒子径15nmの“オプトレイク”TR−521(商品名、触媒化成工業(株)製 組成:酸化ケイ素−酸化チタン(アナターゼ型)複合粒子30重量%、ジアセトンアルコール70重量%)263gを反応容器に入れ、この溶液に、水27.0gおよびリン酸0.58gを、撹拌しながら、反応温度が40℃を越えないように滴下した。滴下後、実施例2と同条件で反応させてポリマー溶液E(粒子共重合系、固形分濃度:37重量%)を得た。
【0085】
得られたポリマー溶液E10gに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート10gおよび熱架橋性化合物“ニカラック”MX−280(商品名、三和ケミカル製)0.185g(シロキサン系樹脂組成物の固形分中、5重量%)、熱酸発生剤“サンエイド”SI−200(商品名、三新化学(株)製)0.018g(シロキサン系樹脂組成物の固形分中、1重量%)を加えて溶解し、シロキサン系樹脂組成物5を得た。得られたシロキサン系樹脂組成物5を用いて硬化膜を作製し、実施例1と同様に評価を行った。
【0086】
実施例6
メチルトリメトキシシラン2.72g(0.02mol)、1,4−ビス(トリメトキシシリル)ナフタレン66.3g(0.18mol)、γ−ブチロラクトン57.9gおよび“オプトレイク”TR−521 185gを反応容器に入れ、この溶液に、水10.8gおよびリン酸0.34gを、撹拌しながら、反応温度が40℃を越えないように滴下した。滴下後、実施例2と同条件で反応させてポリマー溶液F(粒子共重合系、固形分濃度:37重量%)を得た。
【0087】
得られたポリマー溶液F10gに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート10gを加えて溶解し、シロキサン系樹脂組成物6を得た。得られたシロキサン系樹脂組成物6を用いて硬化膜を作製し、実施例1と同様に評価を行った。
【0088】
実施例7
メチルトリメトキシシラン 4.1g(0.03mol)、9−アントラセニルトリメトキシシリル47.7g(0.16mol)、テトラメトキシシラン1.5g(0.01mol)、γ−ブチロラクトン42.1gおよび酸化ジルコニウム粒子(数平均粒子径30nm)のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート分散液(酸化ジルコニウム30重量%、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート70重量%)136.4gを反応容器に入れ、この溶液に、水11.0gおよびリン酸0.27gを、撹拌しながら、反応温度が40℃を越えないように滴下した。滴下後、実施例2と同条件で反応させてポリマー溶液G(粒子共重合系、固形分濃度:37重量%)を得た。
【0089】
得られたポリマー溶液G10gに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート10gを加えて溶解し、シロキサン系樹脂組成物7を得た。得られたシロキサン系樹脂組成物7を用いて硬化膜を作製し、実施例1と同様に評価を行った。
【0090】
実施例8
実施例3で得られたポリマー溶液C10gに光酸発生剤PAI−101 0.072g((b)シロキサン化合物100重量部に対し、2重量部)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート10gを加えて溶解し、シロキサン系樹脂組成物8を得た。
【0091】
つぎに、以下の手順でシロキサン系樹脂組成物8のネガ型感光特性の評価を行った。シロキサン系樹脂組成物8を6インチシリコンウエハ上に回転塗布し、次いで、110℃のホットプレート(Mark−7)で2分間ベークし、厚さ1μmのプリベーク膜を作製した。この膜をi線ステッパー(GCA製DSW−8000)を用いて0〜200mJ/cmの露光量にて20mJ/cmステップで露光し、その後、ポストエクスポージャーベークを110℃のホットプレート(Mark−7)で1分間行い、2.38重量%のテトラメチルアンモニウム(TMAH)水溶液(三菱ガス化学(株)製、ELM−D)で60秒間現像し、ついで純水でリンスした。光学顕微鏡で観察したところ、80mJ/cmの露光量で幅5μmのネガパターンが解像していた。
【0092】
6インチシリコンウエハ上および40mm角ガラス基板上に、得られたシロキサン系樹脂組成物8を塗布し、ついでホットプレート(大日本スクリーン製造(株)製SCW−636)を用いて、空気雰囲気下で120℃で3分間プリベークすることにより、塗布膜を得た。この塗布膜に、露光機(キャノン(株)社製コンタクトアライナーPLA501F)を用いて紫外線強度約5mW/cm(波長365nm換算)で1分間紫外線全波長全面露光(ブリーチング露光 主用波長:365nm、405nm、436nm)を行い、光酸発生剤を露光したのち、空気雰囲気下のホットプレート上で、300℃で5分間加熱して硬化膜を得た。得られた硬化膜の屈折率、透過率、熱負荷後の耐クラック性について、前記方法で評価した。
【0093】
実施例9
メチルトリメトキシシラン8.2g(0.06mol)、1−ナフチルトリメトキシシラン14.9g(0.06mol)、フェニルトリメトキシシラン15.9g(0.08mol)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート100.0gおよび数平均粒子径15nmの“オプトレイク”TR−527(商品名、触媒化成工業(株)製 組成:酸化ケイ素−酸化チタン(アナターゼ型)複合粒子20重量%、メタノール80重量%)153.6gを反応容器に入れ、この溶液に、水10.8gおよびリン酸0.08gを、撹拌しながら、反応温度が40℃を越えないように滴下した。滴下後、反応容器に蒸留装置を取り付け、得られた溶液をバス温80℃で1.5時間加熱撹拌して、加水分解により生成したメタノールなどを留去しつつ反応させた。その後、溶液をバス温110℃でさらに1時間加熱撹拌した後、室温まで冷却し、ポリマー溶液H(粒子共重合系、固形分濃度:41重量%)を得た。
【0094】
得られたポリマー溶液H10gに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート12gおよび合成例1で合成したナフトキノンジアジド0.43g(シロキサン系樹脂組成物の固形分中、10重量%)を加えて溶解し、シロキサン系樹脂組成物9を得た。
【0095】
つぎに、以下の手順でシロキサン系樹脂組成物9のポジ型感光特性の評価を行った。シロキサン系樹脂組成物9を6インチシリコンウエハ上に回転塗布し、次いで、110℃のホットプレート(Mark−7)で2分間ベークし、厚さ1μmのプリベーク膜を作製した。この膜をi線ステッパー(GCA製DSW−8000)を用いて0〜200mJ/cmの露光量にて20mJ/cmステップで露光し、その後、2.38重量%のテトラメチルアンモニウム(TMAH)水溶液(三菱ガス化学(株)製、ELM−D)で60秒間現像し、ついで純水でリンスした。光学顕微鏡で観察したところ、150mJ/cmの露光量で幅10μmのポジパターンが解像していた。
【0096】
6インチシリコンウエハ上および40mm角ガラス基板上に、得られたシロキサン系樹脂組成物9を塗布し、ついでホットプレート(大日本スクリーン製造(株)製SCW−636)を用いて、空気雰囲気下で120℃で3分間プリベークすることにより、塗布膜を得た。この塗布膜に、露光機(キャノン(株)社製コンタクトアライナーPLA501F)を用いて紫外線強度約5mW/cm(波長365nm換算)で1分間紫外線全波長全面露光(ブリーチング露光 主用波長:365nm、405nm、436nm)を行い、空気雰囲気下のホットプレート上で、300℃で5分間加熱して硬化膜を得た。得られた硬化膜の屈折率、透過率、熱負荷後の耐クラック性について、前記方法で評価した。
【0097】
実施例10
メチルトリメトキシシラン 4.1g(0.03mol)、1−ナフチルトリメトキシシラン17.4g(0.07mol)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート50gおよび数平均粒子径30nmの“nSol”101−20I(商品名、ナノグラム(株)製 組成:アナターゼ型/ルチル型複合(=30重量%/70重量%)酸化チタン粒子20重量%、イソプロパノール80重量%)64.6gを反応容器に入れ、この溶液に、水5.4gおよびリン酸0.04gを、撹拌しながら、反応温度が40℃を越えないように滴下した。滴下後、実施例2と同条件で反応させてポリマー溶液I(粒子共重合系、固形分濃度:40重量%)を得た。
【0098】
得られたポリマー溶液I10gに、γ−ブチロラクトン10gを加えて溶解し、シロキサン系樹脂組成物10を得た。得られたシロキサン系樹脂組成物10を用いて硬化膜を作製し、実施例1と同様に評価を行った。
【0099】
実施例11
メチルトリメトキシシラン4.1g(0.03mol)、1−ナフチルトリメトキシシラン17.4g(0.07mol)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート60gおよび数平均粒子径30nmの“nSol”101−20I 110gを反応容器に入れ、この溶液に、水5.4gおよびリン酸0.08gを、撹拌しながら、反応温度が40℃を越えないように滴下した。滴下後、実施例2と同条件で反応させてポリマー溶液J(粒子共重合系、固形分濃度:36重量%)を得た。
【0100】
得られたポリマー溶液J10gに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート10gを加えて溶解し、シロキサン系樹脂組成物11を得た。得られたシロキサン系樹脂組成物11を用いて硬化膜を作製し、実施例1と同様に評価を行った。
【0101】
実施例12
メチルトリメトキシシラン6.8g(0.05mol)、1−ナフチルトリメトキシシラン12.4g(0.05mol)、ジアセトンアルコール60gおよび数平均粒子径7nmの“タイノック”AM−15(商品名、多木化学(株)製 組成:酸化チタン粒子(アナターゼ型)15.3重量%、水溶液)80.6gを反応容器に入れ、この溶液に、水5.4gおよびリン酸0.08gを、撹拌しながら、反応温度が40℃を越えないように滴下した。滴下後、実施例2と同条件で反応させてポリマー溶液K(粒子共重合系、固形分濃度:39重量%)を得た。
【0102】
得られたポリマー溶液K10gに、ジアセトンアルコール10gを加えて溶解し、シロキサン系樹脂組成物12を得た。得られたシロキサン系樹脂組成物12を用いて硬化膜を作製し、実施例1と同様に評価を行った。
【0103】
実施例13
メチルトリメトキシシラン6.8g(0.05mol)、1−ナフチルトリメトキシシラン12.4g(0.05mol)、ジアセトンアルコール50gおよび数平均粒子径50nmのRTIPA15WT%−NO8(商品名、シーアイ化成(株)製 組成:酸化チタン粒子(ルチル型)15重量%、イソプロパノール85重量%)82.2gを反応容器に入れ、この溶液に、水5.4gおよびリン酸0.08gを、撹拌しながら、反応温度が40℃を越えないように滴下した。滴下後、反応容器に蒸留装置を取り付け、窒素気流下にて、得られた溶液をバス温80℃で1.5時間加熱撹拌して、加水分解により生成したメタノールなどを留去しつつ反応させた。その後、溶液をバス温130℃でさらに1時間加熱撹拌した後、室温まで冷却し、ポリマー溶液L(粒子共重合系、固形分濃度:40重量%)を得た。
【0104】
得られたポリマー溶液L10gに、ジアセトンアルコール10gを加えて溶解し、シロキサン系樹脂組成物13を得た。得られたシロキサン系樹脂組成物13を用いて硬化膜を作製し、実施例1と同様に評価を行った。
【0105】
実施例14
メチルトリメトキシシラン4.1g(0.03mol)、1−ナフチルトリメトキシシラン17.4g(0.07mol)、ジアセトンアルコール50gおよび数平均粒子径15nmの“バイラール”Nb−X10(商品名、多木化学(株)製 組成:酸化ニオブ粒子10重量%水溶液)145.7gを反応容器に入れ、この溶液に、水5.4gおよびリン酸0.05gを、撹拌しながら、反応温度が40℃を越えないように滴下した。滴下後、実施例13と同条件で反応させてポリマー溶液M(粒子共重合系、固形分濃度:41重量%)を得た。
【0106】
得られたポリマー溶液M10gに、ジアセトンアルコール10gを加えて溶解し、シロキサン系樹脂組成物14を得た。得られたシロキサン系樹脂組成物14を用いて硬化膜を作製し、実施例1と同様に評価を行った。
【0107】
実施例15
メチルトリメトキシシラン2.7g(0.02mol)、1−ナフチルトリメトキシシラン19.9g(0.08mol)、ジアセトンアルコール50gおよび数平均粒子径60nmの酸化アルミニウム粒子23.5gを反応容器に入れ、この溶液に、水5.4gおよびリン酸0.05gを、撹拌しながら、反応温度が40℃を越えないように滴下した。滴下後、実施例13と同条件で反応させてポリマー溶液N(粒子共重合系、固形分濃度:45重量%)を得た。
【0108】
得られたポリマー溶液N10gに、ジアセトンアルコール10gを加えて溶解し、シロキサン系樹脂組成物15を得た。得られたシロキサン系樹脂組成物15を用いて硬化膜を作製し、実施例1と同様に評価を行った。
【0109】
実施例16
メチルトリメトキシシラン4.1g(0.03mol)、1,4−ビス(トリメトキシシリル)ナフタレン25.8g(0.07mol)に、γ−ブチロラクトン20.0gおよび“オプトレイク”TR−521 75gを反応容器に入れ、この溶液に、水5.4gおよびリン酸0.15gを、撹拌しながら、反応温度が40℃を越えないように滴下した。滴下後、実施例2と同条件で反応させてポリマー溶液O(粒子共重合系、固形分濃度:37重量%)を得た。
【0110】
得られたポリマー溶液O10gに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート10gを加えて溶解し、シロキサン系樹脂組成物16を得た。得られたシロキサン系樹脂組成物16を用いて硬化膜を作製し、実施例1と同様に評価を行った。
【0111】
実施例17
メチルトリメトキシシラン4.1g(0.03mol)、1−ナフチルトリメトキシシラン14.6g(0.07mol)、γ−ブチロラクトン50.0gおよび“オプトレイク”TR−520 43gを反応容器に入れ、この溶液に、水5.4gおよびリン酸0.11gを、撹拌しながら、反応温度が40℃を越えないように滴下した。滴下後、実施例2と同条件で反応させてポリマー溶液P(粒子共重合系、固形分濃度:37重量%)を得た。
【0112】
得られたポリマー溶液P10gにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート10gを加えて溶解し、シロキサン系樹脂組成物17を得た。得られたシロキサン系樹脂組成物17を用いて硬化膜を作製し、実施例1と同様に評価を行った。
【0113】
実施例18
メチルトリメトキシシラン4.1g(0.03mol)、9−アントラセニルトリメトキシシリル47.7g(0.16mol)、テトラメトキシシラン1.5g(0.01mol)、γ−ブチロラクトン42.1gおよび“オプトレイク”TR−521 136.4gを反応容器に入れ、この溶液に、水11.0gおよびリン酸0.27gを、撹拌しながら、反応温度が40℃を越えないように滴下した。滴下後、実施例2と同条件で反応させてポリマー溶液Q(粒子共重合系、固形分濃度:37重量%)を得た。
【0114】
得られたポリマー溶液Q10gに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート10gを加えて溶解し、シロキサン系樹脂組成物18を得た。得られたシロキサン系樹脂組成物18を用いて硬化膜を作製し、実施例1と同様に評価を行った。
【0115】
比較例1
メチルトリメトキシシランの添加量を27.2g(0.20mol)から20.4g(0.15mol)に変更し、9−フェナントレニルトリメトキシシラン89.5g(0.30mol)をフェニルトリメトキシシラン69.4g(0.35mol)に変更し、“オプトレイク”TR−520の添加量を243gから164gに変更した以外は実施例2と同様の操作を行い、ポリマー溶液R(粒子共重合系、固形分濃度:39重量%)を得た。
【0116】
得られたポリマー溶液R10gにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート10gを加えて溶解し、シロキサン系樹脂組成物19を得た。得られたシロキサン系樹脂組成物19を用いて硬化膜を作製し、実施例1と同様に評価を行った。
【0117】
比較例2
9−フェナントレニルトリメトキシシラン104.4g(0.35mol)、p−ヒドロキシベンジルトリメトキシシラン31.48g(0.15mol)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート117.6gを反応容器に入れ、この溶液に、水18.0gおよびリン酸0.68gを、撹拌しながら、反応温度が40℃を越えないように滴下した。滴下後、実施例2と同条件で反応させてポリマー溶液S(固形分濃度:45重量%)を得た。
【0118】
得られたポリマー溶液S10gに、γ−ブチロラクトン15gを加えて溶解し、シロキサン系樹脂組成物20を得た。得られたシロキサン系樹脂組成物20を用いて硬化膜を作製し、実施例1と同様に評価を行った。
【0119】
実施例1〜18および比較例1〜2の結果を表1〜3に示す。
【0120】
【表1】

【0121】
【表2】

【0122】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0123】
本発明のシロキサン系樹脂組成物により形成された硬化膜は、固体撮像素子、反射防止フィルム、反射防止板、光学フィルター、ディスプレイ等の光学デバイスに好適に用いられる。また、バッファーコート、層間絶縁膜、各種保護膜として用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)アルミニウム化合物粒子、スズ化合物粒子、チタン化合物粒子、ニオブ化合物粒子およびジルコニウム化合物粒子からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属化合物粒子、(b1)一般式(1)〜(3)のいずれかで表されるシラン化合物を含むシラン化合物を加水分解し、該加水分解物を縮合反応させることにより得られるシロキサン化合物、および(c)溶剤を含むことを特徴とするシロキサン系樹脂組成物。
2−nSi(OR2 (1)
(Rは水素、アルキル基、アルケニル基、フェニル基またはそれらの置換体を表す。Rは1価の縮合多環式芳香族基またはその置換体を表す。Rは水素、メチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基を表し、同一でも異なっていてもよい。nは1または2である。nが2の場合、複数のRは同一でも異なっていてもよい。)
Si(OR10 (2)
(Rは1価の縮合多環式芳香族基またはその置換体を表す。R10は水素、メチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基を表し、同一でも異なっていてもよい。)
(R11O)3−mSi−R−Si(OR123−l (3)
(Rは2価の縮合多環式芳香族基またはその置換体を表す。RおよびRは水素、アルキル基、アルケニル基、アリール基またはそれらの置換体を表し、それぞれ同一でも異なっていてもよい。R11およびR12は水素、メチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基を表し、それぞれ同一でも異なっていてもよい。mおよびlはそれぞれ独立に1〜3の整数である。)
【請求項2】
(b2)アルミニウム化合物粒子、スズ化合物粒子、チタン化合物粒子、ニオブ化合物粒子およびジルコニウム化合物粒子からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属化合物粒子の存在下、一般式(1)〜(3)のいずれかで表されるシラン化合物を含むシラン化合物を加水分解し、該加水分解物を縮合反応させることにより得られる金属化合物含有シロキサン化合物、および(c)溶剤を含有することを特徴とするシロキサン系樹脂組成物。
2−nSi(OR2 (1)
(Rは水素、アルキル基、アルケニル基、フェニル基またはそれらの置換体を表す。Rは1価の縮合多環式芳香族基またはその置換体を表す。Rは水素、メチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基を表し、同一でも異なっていてもよい。nは1または2である。nが2の場合、複数のRは同一でも異なっていてもよい。)
Si(OR10 (2)
(Rは1価の縮合多環式芳香族基またはその置換体を表す。R10は水素、メチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基を表し、同一でも異なっていてもよい。)
(R11O)3−mSi−R−Si(OR123−l (3)
(Rは2価の縮合多環式芳香族基またはその置換体を表す。RおよびRは水素、アルキル基、アルケニル基、アリール基またはそれらの置換体を表し、それぞれ同一でも異なっていてもよい。R11およびR12は水素、メチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基を表し、それぞれ同一でも異なっていてもよい。mおよびlはそれぞれ独立に1〜3の整数である。)
【請求項3】
前記一般式(1)〜(3)のいずれかで表される少なくとも1種のシラン化合物と、下記一般式(4)〜(6)のいずれかで表される少なくとも1種のシラン化合物とを加水分解し、該加水分解物を縮合反応させることにより得られるシロキサン化合物または金属化合物含有シロキサン化合物を含有することを特徴とする請求項1または2に記載のシロキサン系樹脂組成物。
Si(OR13 (4)
(Rは水素、アルキル基、アルケニル基、フェニル基またはそれらの置換体を表す。R13は水素、メチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基を表し、同一でも異なっていてもよい。)
Si(OR14 (5)
(RおよびRはそれぞれ独立に、水素、アルキル基、アルケニル基、フェニル基またはそれらの置換体を表す。R14は水素、メチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基を表し、同一でも異なっていてもよい。)
Si(OR15 (6)
(R15はメチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基を表し、同一でも異なっていてもよい。)
【請求項4】
前記金属化合物粒子がルチル型チタン酸化物粒子を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のシロキサン系樹脂組成物。
【請求項5】
ルチル型チタン酸化物粒子を全金属化合物粒子中10重量%以上95重量%以下含むことを特徴とする請求項4に記載のシロキサン系樹脂組成物。
【請求項6】
さらに(d)一般式(7)で表される熱架橋性基を有する熱硬化剤を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のシロキサン系樹脂組成物。
−CHOR16 (7)
(R16は水素または炭素数1〜4のアルキル基を表す。)
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のシロキサン系樹脂組成物を硬化させてなる硬化膜。
【請求項8】
波長633nmにおける屈折率が1.70以上であることを特徴とする請求項7に記載の硬化膜。
【請求項9】
膜厚1μm当たりの波長400nmにおける透過率が85%以上であることを特徴とする請求項7に記載の硬化膜。
【請求項10】
請求項7〜9のいずれかに記載の硬化膜を有する光学デバイス。

【公開番号】特開2010−7057(P2010−7057A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−126195(P2009−126195)
【出願日】平成21年5月26日(2009.5.26)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】