説明

シートの製造方法

【課題】 従来の洗浄方法では問題であった洗浄中の機械部分との接触による金属薄膜のキズの問題を回避し、美麗な金属薄膜部分を有するシートの製造方法を提示する。
【解決手段】 基材シート上に水溶性塗膜を形成し、その上に金属薄膜を形成した積層シートを、水洗して、水溶性塗膜を除去するシートの製造方法であって、基材シート単位面積単位時間当たりの水の使用量W(ml/(分・cm))と水洗の時間T(分)の積(WT)が、0.02(ml/cm)以上であり、基材シート単位面積単位時間当たりの水の使用量W(ml/(分・cm))が、5ml/(分・cm)以上、100ml/(分・cm)以下であり、水洗後のシートが、金属薄膜を部分的に有するシートであるシートの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートの製造方法に関し、より具体的には、基材シート上に水溶性塗膜を形成し、その上に金属薄膜を形成した積層シートを、水洗して、水溶性塗膜を除去するシートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
テレビ、オーディオ、ビデオ等の家電製品や、携帯電話、個人情報端末などの情報通信機器、自動車内の情報通信機器などの筐体に優れた美麗感を与えるために、表面に金属光沢を付与することが従来から行われている。
【0003】
この目的のため、真空蒸着法による金属薄膜を転写材料に形成し、美麗感を必要とする基材に転写する方法が行われており、このための金属薄膜として、静電破壊を防ぐ目的でSnやPbなどの絶縁性金属薄膜を使用することが提唱されている(特許文献1、2参照。)。
【0004】
一方でデザインの多様性を目的に、部分的に金属光沢を有する模様付金属蒸着フィルムの開示があり、水溶性塗料により所望の図柄のコーティング層を設け、さらに該フィルム面上全面に金属蒸着層を設け、これを水洗してコーティング層上の金属蒸着層およびコーティング層を溶解除去する方法が提案されている(特許文献3参照)。
【0005】
上記方法を絶縁性金属薄膜に適用した場合、絶縁性金属薄膜にキズが発生し、美麗な金属光沢を得ることができないため、絶縁性金属薄膜の上から0.05〜1.0μmの水不溶性塗料を塗布し、これを水洗することで水不溶性塗料で絶縁性金属薄膜表面を保護し、キズの発生を防ぐ試みがなされている(特許文献4参照。)。さらには、水洗工程の生産性の悪さ、水溶性塗剤パターンの不鮮明さを改善する目的で、特定の有機溶剤に可溶の塗剤を水溶性塗剤の代わりに使用することも提案されている(特許文献5参照。)。
【特許文献1】特公平3−25353号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開平10−324093号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開昭49−24255号公報(特許請求の範囲)
【特許文献4】特公平7−37111号公報(特許請求の範囲)
【特許文献5】特開昭61−270186号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これら絶縁性金属薄膜を部分的に有するシートの製造方法において、絶縁性金属薄膜表面に水不溶性塗料を塗布する工程を省略したいという要求がある。
【0007】
また、全面に塗工された水不要塗剤が水溶性塗料への水浸透の遮蔽層となり、水溶性塗剤の溶解のための水との接触時間が長めに必要であり、水不溶性樹脂が原因となってバリが発生しやすく、バフ研磨、ブラシ研磨、超音波といった補助的な手段を併用することによりバリを除去することが一般的であった。
【0008】
本発明は、水不溶性塗料を金属薄膜に塗布することなく、従来の洗浄方法では問題であった洗浄中の機械部分との接触による金属薄膜のキズの問題を回避し、美麗な金属薄膜部分を有するシートの製造方法を提示する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明はかかる課題を解決するため、以下の構成とした。
【0010】
すなわち、基材シート上に水溶性塗膜を形成し、その上に金属薄膜を形成した積層シートを、水洗して、水溶性塗膜を除去するシートの製造方法であって、基材シート単位面積単位時間当たりの水の使用量W(ml/(分・cm))と水洗の時間T(分)の積(WT)が、0.02(ml/cm)以上であり、基材シート単位面積単位時間当たりの水の使用量W(ml/(分・cm))が、5ml/(分・cm)以上、100ml/(分・cm)以下であり、水洗後のシートが、金属薄膜を部分的に有するシートであるシートの製造方法である。
【0011】
また、本発明は、好ましくは、水洗後に基材シート上に残った水滴を高圧エアにより吹き飛ばした後、乾燥させることを特徴とする上記に記載のシートの製造方法である。
さらには、本発明は、好ましくは、金属薄膜が、Sn、In、Sb、Zn、Pb、Biよりなる群から選ばれた1種あるいは2種からなる絶縁性金属薄膜であり、基材シートには少なくとも1層の離型層が形成されてなる金属薄膜転写材料であることを特徴とする上記に記載のシートの製造方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、金属薄膜に水不溶性塗料を塗布する工程を省くことができ、水不溶性塗料を塗布することなく、直接水洗することで水洗に必要な水の量を少なくし、直接水洗時には問題であった金属薄膜のキズの発生を抑制することができる。本発明により、金属薄膜にキズなどの欠点を生じることなく、少ない水の量で効率良く、不要部分の金属薄膜を洗浄除去できる。
【0013】
本発明は、好ましくは、金属薄膜がSn、In、Sb、Znなどからなる絶縁性金属薄膜である場合に、これら絶縁性金属薄膜が微細な島状構造を取るために平面内の結合力が弱く、非常に傷付きやすいのに対してキズ発生を抑えることができ、水洗後も金属部分が美麗である金属薄膜を部分的に有するシートを容易に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、基材シート上に水溶性塗膜を形成し、その上に金属薄膜を形成した積層シートを、水洗して、水溶性塗膜を除去するシートの製造方法であって、基材シート単位面積単位時間当たりの水の使用量W(ml/(分・cm))と水洗の時間T(分)の積(WT)が、0.02(ml/cm)以上であり、基材シート単位面積単位時間当たりの水の使用量W(ml/(分・cm))が、5ml/(分・cm)以上、100ml/(分・cm)以下であり、水洗後のシートが、金属薄膜を部分的に有するシートであるシートの製造方法である。
【0015】
本発明では、基材シートは特に限定されるものでなく、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂などからなるフィルム、シートが用いられる。基材シートは、未延伸シートであっても、延伸されたフィルムであっても良いが、金属薄膜転写材料としてインモールド成形に用いられる用途においては、共重合成分を配合したポリエステル系樹脂の延伸フィルムが好ましく用いられる。
【0016】
基材シートは、金属薄膜転写材料として設計された場合には、好ましくは、少なくとも1層の離型層が形成されており、必要に応じ、その上に保護樹脂層、金属薄膜層、接着層を順次形成してなる金属薄膜転写材料とする。
【0017】
この基材シート上に、水溶性塗膜を目的とするパターンとして塗布する。すなわち、金属薄膜を残す部分には水溶性塗膜を塗布せず、金属薄膜を除去する部分には水溶性塗膜を塗布する。水溶性塗膜は、好ましくは、基材シート上に部分的に形成される。
【0018】
本発明では、水溶性塗剤としては、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、でんぷん、カゼイン、ニカワ、ゼラチン、ポリアクリルアミド、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ビニルメチルエーテル−無水マレイン酸共重合体、アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステルなどを主成分としたものがあげられる。これら塗剤を水で溶解し、グラビア印刷、シルクスクリーン印刷などの方法で目的とするパターンに印刷する。水に対する溶解性を向上させるために水塗剤塗料固形分に対し、シリカ、アルミナ、酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウムといった粒子を5〜30wt%混合させても良い。水溶性塗膜の厚みは、好ましくは、0.2〜2μm程度で選択される。水溶性塗膜の厚みを0.2μm未満とすると、印刷のカスレによりパターン化が不鮮明になりやすく、2μm以上ではフィルムの段差が大きくなりやすく、目的とするパターン化に必要十分な厚みとして、通常、2μm程度が上限として選択される。
【0019】
基材シート上に上述のごとく水溶性塗膜を形成し、その上に金属薄膜を形成する。金属薄膜は、好ましくは、水溶性塗膜の上に全面に形成される。
【0020】
金属薄膜を形成する方法としては、一般的な真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング、化学気相蒸着法などを用いることができるが、真空蒸着法が、生産性の点からより好ましく用いられる。これら金属薄膜層の厚みは、美麗な金属光沢を得るため、好ましくは、10〜100nm程度であり、金属種、目的に応じ適宜厚みが選択される。金属薄膜の光線透過率は、目的に応じ、好ましくは、1%以上かつ10%未満の範囲で選択される。
【0021】
本発明では、金属薄膜は、Sn、In、Sb、Zn、Pb、Biよりなる群から選ばれた1種あるいは2種からなる絶縁性金属薄膜であることが好ましい。
【0022】
金属薄膜層を、Sn、In、Sb、Zn、Pb、Biよりなる群から選ばれた金属とすることで金属薄膜を絶縁性とすることができ、本シートを例えば金属薄膜転写箔として電子機器の筐体の一部として使用した際、内部の電子機器の高電圧部からスパークを受けて電子機器が破壊するといった現象を防ぐことができ、また電波を通すことで筐体内外部間の通信に支障をきたさないという機能を付与することができる。このための金属薄膜の表面抵抗値は、10Ω/□以上であることが好ましく、より好ましくは1010Ω/□以上である。
【0023】
本発明では、次に、水洗により水溶性塗膜を除去する。水洗により水溶性塗膜を除去することで、水溶性塗膜と共に金属薄膜を除去し、水溶性塗膜を形成していない部分の金属薄膜を部分的に残したシートを製造する。水洗により水溶性塗膜を除去する時、好ましくは、水溶性塗膜は溶解除去される。
【0024】
水洗により水溶性塗膜を除去する条件が、本発明の重要な要件である。
【0025】
すなわち、基材シート単位面積単位時間当たりの水の使用量W(ml/(分・cm))と水洗の時間T(分)の積(WT)が、0.02(ml/cm)以上であり、基材シート単位面積単位時間当たりの水の使用量W(ml/(分・cm))が、5ml/(分・cm)以上、100ml/(分・cm)以下である。
【0026】
基材シート単位面積単位時間当たりの水の使用量W(ml/分/cm)は、5ml/(分・cm)以上、100ml/(分・cm)以下である。Wが5ml/(分・cm)未満であれば、水溶性塗膜の除去が不十分となる。Wが100ml/(分・cm)より大きいと、水の勢いが強すぎ、必要な金属薄膜部分を剥ぎ取り、美麗な金属光沢を阻害する。基材シート単位面積単位時間当たりの水の使用量W(ml/分/cm)は、好ましくは、10(ml/(分・cm))<W<50(ml/(分・cm))である。
【0027】
さらに、水洗の時間をT(分)とした場合、基材シート単位面積単位時間当たりの水の使用量W(ml/(分・cm))と水洗の時間T(分)の積(WT)が、0.02(ml/cm)以上満足する必要がある。WTが、0.02未満では、洗浄不十分である。WTの上限は特にないが、WTが大きすぎると使用する水の量が膨大となり、排水処理設備に大きな負荷がかかることがあるため、WT<1であることが好ましい。
【0028】
水は、霧状であることが好ましい。水を高圧スプレーあるいはシャワー状ではなく、霧状とすることで面に均等に一定の打力(N/cm)で水を入射させることができ、効率よく水溶性塗膜を溶解させることができる。霧を発生させるための方法としては、水と空気を混合させて吹き出させるいわゆる2流体ノズル方式が一般的であるが、これ以外の方法でもよい。
【0029】
霧の径は20〜500μmの範囲が好ましく、20μm以下では溶解の能力が低い場合があり、500μm以上では処理に必要な水の量が多くなりすぎる場合がある。
【0030】
霧の打力は、0.02〜0.5N/cmの範囲が好ましい。0.02N/cm以下では溶解洗浄能力が低い場合があり、0.5N/cm以上では勢いが強すぎ、必要な金属薄膜部分も剥ぎ取るケースがあり、特に下に離型層を設けた金属薄膜転写シートでは離型層から剥がれてしまうことが発生するため好ましくない。
【0031】
本発明において、基材シートが長手方向に連続的に水洗処理される場合に、水洗から乾燥されるまでの工程中、基材が水で濡れた状態において、金属薄膜面に、機械部分との接触がないことが好ましい。従来の方法では、水洗浴を使用する場合は、シートを水中に長く浸漬するために、ロールを介してフィルムパスを水中にジグザグに折り畳むことが行われていたが、フィルムとロールに介在する水によりフィルム、ロール間が滑りやすくなり、金属薄膜面に接触するロールとの周速差により金属面が傷付くという問題があった。また、従来技術では、水不溶性塗料を金属薄膜上に設けたために、水の浸透が阻害されるため、洗浄効果を高めるために、スポンジやバフにより洗浄面を擦るということが行われていた。
【0032】
本発明においては、濡れた状態で、金属薄膜面に機械部分との接触がないことが好ましく、金属薄膜面にキズを発生させることなく、美麗なシートを得ることができ、より好ましい。
【0033】
本発明によれば、水洗後に基材シート上に残った水滴を高圧エアにより吹き飛ばした後、乾燥させることが好ましい。水滴が付いたまま乾燥させるとシミになり金属光沢を損なう場合があり、また乾燥のための熱負荷が大きくなる。高圧エアはスリット状の吹き出し口からエアをシート状に吹き出して水切りを行う方式が一般に用いられる。水滴を吹き飛ばすのはシート両面を同時に行うことが、裏面に水滴が回り込むのを防ぐために、より好ましい。
【0034】
本発明では、水洗後のシートが、金属薄膜を部分的に有するシートである。本発明では、金属薄膜にキズなどの欠点を生じることなく、少ない水の量で効率良く、不要部分の金属薄膜を洗浄除去することができる。
【0035】
本発明では、基材シートには、少なくとも1層の離型層が形成されてなる金属薄膜転写材料であることが好ましい。離型層としては.リン脂質(レシチン)、酢酸セルロース、ワックス、脂肪酸、脂肪酸アミド、脂肪酸エステル、ロジン、アクリル樹脂、シリコーン、フッ素樹脂等が、その剥離の容易性の程度に応じて、適宜選択されて使用される。これら離型層は、好ましくは、0.01〜2μmの厚さであり、より好ましくは、0.5〜1μmの厚さで使用される。
【0036】
本発明では、離型層の上に、必要に応じ、転写後の金属薄膜層を保護するために保護樹脂層が設けられる。かかる保護樹脂層の樹脂としては、離型層および金属薄膜層のいずれにも接着性のよい熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂または紫外線などの光硬化性樹脂が使われる。具体的には、保護樹脂層は、蒸着金属の種類、用途による必要諸性能(機械的特性、耐熱性、耐溶剤性、光学的特性、耐候性など)により適宜選択することができ、例えば、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、セルロース系、ポリ塩化ビニル系等から選ばれた一種または二種以上を使用することができる。一般に、その厚さは、0.2〜5μm程度が好ましく、より好ましくは1〜3μmである。これらの樹脂は、好ましくは、透明性のよいものが使用されるが、染料、顔料または艶消し剤を入れて着色することもできる。また保護樹脂層の表面にホログラム加工を施すことによって、虹彩色もしくはホログラム効果を付与することもできる。
【0037】
本発明のシートの製造方法で製造されたシートは、金属薄膜転写材料として、好適に使用される。
【0038】
金属薄膜転写材料として使用する場合は、水洗後、樹脂成形体に接着するための接着層を塗布することがある。接着層は、例えば、金属薄膜層および転写すべき樹脂成形体のいずれにも接着性の良い樹脂系接着剤が使用できる。接着層は、例えば、アクリル酸エステル系、ポリエステル系、合成ゴム系、エポキシ系、ポリウレタン系、エチレン−酢酸ビニル系、ポリアミド系、ポリ塩化ビニル、ハロゲン化ポリオレフィン、ニトロセルロースおよびこれらの共重合体などが一般的に使用できる。金属薄膜転写材料の用途によっては、加熱によって接着可能な公知の種々の接着剤あるいはホットメルトシートを使用することができる。ホットメルトシートとしては、ポリウレタン、ポリアミド、ポリ塩化ビニル系のものが好ましく用いられる。接着層の厚さは、接着剤の場合は、好ましくは、2〜100μm、より好ましくは、5〜30μm、ホットメルトシートでは、好ましくは、20〜200μm、より好ましくは、50〜100μmの範囲でそれぞれ選ばれる。
【0039】
本発明のシートの製造方法で製造されたシートは、テレビ、オーディオ、ビデオ等の家電製品や、携帯電話、個人情報端末などの情報通信機器、自動車内の情報通信機器などの筐体に優れた美麗感を与えるために、好適に使用される。特に、本発明のシートの製造方法で製造されたシートの金属薄膜は、家電製品、情報通信機器の筐体に好適に使用され、本発明のシートの製造方法で製造されたシートの金属薄膜は、金属薄膜転写材料用シートとして、好適に使用される。
【実施例】
【0040】
本発明の様態を実施例で具体的に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0041】
以下に、本発明の評価に用いた評価法の説明を行う。
【0042】
(1)シート単位面積単位時間当たりの水の使用量W(ml/分/cm
開口部径の判っている試薬瓶を、基材シートの水洗の位置の口部で水を直角に受け、1分間に溜まった水の量(ml)を開口部面積(cm)で割って、Wを求めた。
【0043】
(2)水の入射に曝される時間T(分)
フィルムのライン速度と霧が吹き付けられているフィルム長手方向の幅からフィルムの通過時間を計算した。
【0044】
(3)WT(ml/cm
上記WとTを掛け合わせてWTを計算した。
【0045】
(4)金属薄膜の抜けの状態
目視で良否を判定した。
【0046】
(5)金属薄膜のキズの状態
目視で、キズの状態を確認し、良否を判定した。
【0047】
(実施例1)
厚さ25μm、幅500mmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムに、離型層(酢酸セルロース樹脂、厚さ0.5μm)をグラビアコーターを用いて塗布、乾燥をおこなった。ついで該離型層の上に、メタクリル酸、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸nブチル、メラミン樹脂を含有するトルエン溶液を前記コーターを用いて塗布、乾燥、樹脂硬化をおこない、厚さ1μmの保護樹脂層を得た。引き続いて、該保護樹脂層の上面にポリビニルアルコールの水溶性樹脂層を0.5μmの厚みでグラビア印刷法によりパターン印刷した。
【0048】
次に、半連続巻取り式真空蒸着装置を用いてSn金属の蒸着を、真空度:2×10−4Torr、クーリングキャンの温度:−10℃の条件下で行い、全光線透過率5%のSn蒸着シートを得た。
【0049】
上記シートを、図1に示すロール配置を有する連続処理装置において、50mm間隔に11個並べた2流体ノズルの2セットからフィルム、ノズル間距離を5cmとして霧を金属薄膜蒸着面に吹き付け、高圧エアを吹き付けて水切りを行い、オーブンで乾燥後巻き取った。シートの速度は10m/分であった。
【0050】
この際の水の圧力は、0.13MPa、エアの圧力は0.12MPaであり、霧の入射する部分の面積は1セット当たり50(シート幅)×2=100cm、Wは、25、WTは、0.10であった。
【0051】
Sn薄膜の抜けの状態を目視でチェックし、キズのないこと、良好な抜け状態であることを確認した。
【0052】
(実施例2)
実施例1と同じSn蒸着シートを用い、水の圧力を0.25MPa、エアの圧力を0.2MPaとし、ライン速度を20m/minとして水洗処理を行った。Wは、60であり、WTは、0.12であった。
【0053】
Sn薄膜の抜けの状態を目視でチェックし、キズのないこと、良好な抜け状態であることを確認した。
【0054】
(比較例1)
実施例1と同じSn蒸着シートを用い、水の圧力を0.03MPa、エアの圧力を0.05MPaとし、ライン速度を10m/minとして水洗処理を行った。Wは、3.5であり、WTは、0.015であった。Sn薄膜の抜けの状態を目視でチェックした。抜けのこりが多く、良好なパターンとならなかった。
【0055】
(比較例2)
実施例1と同じSn蒸着シートを用い、水の圧力を0.5MPa、エアの圧力を0.4MPaとし、ライン速度を10m/minとして水洗処理を行った。Wは、130であり、WTは、0.5であった。離型層から剥離が発生し、使用に耐えない物となった。
【0056】
(比較例3)
実施例1と同じSn蒸着シートを用い、水の圧力を0.13MPa、エアの圧力を0.12MPaとし、ライン速度を100m/minとして水洗処理を行った。Wは、25であり、WTは、0.01であった。Sn薄膜の抜けの状態を目視でチェックした。抜けのこりが多く、良好なパターンとならなかった。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】基材シートに水を霧状に入射させて洗浄する装置の一例を示す。
【符号の説明】
【0058】
1 基材シート
2 霧発生ノズル
3 霧
4 水
5 圧縮空気
6 圧力ゲージ
7 圧力ゲージ
8 廃液パン
9 エアノズル
10圧縮空気
11乾燥オーブンへ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シート上に水溶性塗膜を形成し、その上に金属薄膜を形成した積層シートを、水洗して、水溶性塗膜を除去するシートの製造方法であって、基材シート単位面積単位時間当たりの水の使用量W(ml/(分・cm))と水洗の時間T(分)の積(WT)が、0.02(ml/cm)以上であり、基材シート単位面積単位時間当たりの水の使用量W(ml/(分・cm))が、5ml/(分・cm)以上、100ml/(分・cm)以下であり、水洗後のシートが、金属薄膜を部分的に有するシートであるシートの製造方法。
【請求項2】
水洗後に基材シート上に残った水滴を高圧エアにより吹き飛ばした後、乾燥させることを特徴とする請求項1に記載のシートの製造方法。
【請求項3】
金属薄膜が、Sn、In、Sb、Zn、Pb、Biよりなる群から選ばれた1種あるいは2種からなる絶縁性金属薄膜であり、基材シートには少なくとも1層の離型層が形成されてなる金属薄膜転写材料であることを特徴とする請求項1あるいは2に記載のシートの製造方法。
【請求項4】
請求項1から3に記載の金属薄膜が、家電製品、情報通信機器の筐体に用いられる金属薄膜転写材料用シートの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−18649(P2008−18649A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−193544(P2006−193544)
【出願日】平成18年7月14日(2006.7.14)
【出願人】(000222462)東レフィルム加工株式会社 (142)
【Fターム(参考)】