説明

シームレスベルトの製造方法

【課題】体積抵抗が均一で、且つ、表面の平滑な電子写真用の円筒状エンドレスベルトの製造方法を提供すること。
【解決手段】ポリエーテルエーテルケトンと導電性無機フィラーとを含有する熱可塑性樹脂組成物から押出成形により中空円筒状チューブを取得し、該チューブの表面温度が該熱可塑性樹脂組成物の融点(Tm)−55℃以上の状態で引落率2.5以上50以下となるように該チューブを引き取って薄膜化し、該薄膜化チューブの表面温度がTm−55℃以上の状態で所定時間内にガラス転移温度(Tg)以下に冷却して薄膜化チューブを固化し、該固化させた薄膜化チューブを内型と外型とで挟圧した状態で所定の昇温速度でTgを超えTm未満の結晶化開始温度以下の温度に加熱することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子写真画像形成装置の中間転写ベルトや転写搬送ベルト等に用いることのできるシームレスベルトの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フルカラー画像の複写や印刷が可能な電子写真画像形成装置において、転写方式としては、感光体などの像担持体上に形成された画像を中間転写体上に順次重ねて転写し、転写されたトナー像を一括して、紙などの転写材に転写する中間転写方式がとられている。ここで、中間転写体として、円筒状のシームレスベルト(以降「中間転写ベルト」ともいう)が用いられることがある。中間転写ベルトは、電子写真画像形成装置の内部において、2本以上のローラに懸架され、長期にわたりテンションをかけられた状態で駆動される。特許文献1には、ポリエーテルエーテルケトン(以降「PEEK」と略)を用いた、上記したような機械的特性に優れた電子写真用シームレスベルトが開示されている。ところで、PEEKを用いた中間転写ベルトに導電性を付与するためには導電剤の添加が必要となる。しかし、PEEKの溶融温度は345℃以上と高いため、一般的に耐熱性が低いイオン導電剤を使用することが困難である。そこで、導電材料としては、導電性カーボンブラック(以降「CB」と略)に代表される導電性の無機フィラーを用いることが現実的である。しかし、このような導電性の無機フィラーを配合したPEEKを押出成形法で成形した場合、成形物の表面平滑性が悪化することがあった。その理由は明らかでないが、本発明者等は、無機フィラーを含むPEEKを熔融させた際に、異物の発生する事に起因するものと考えている。表面平滑性の悪いベルトを電子写真画像形成装置に使用した場合、電子写真画像形成装置内では、ベルトの表面をブレードでクリーニングする方式がとられているが、トナーのすり抜けが生じることがある。そのため、PEEK及び無機導電フィラーを含む材料を押出成形によって製造したベルトの表面性を改善する必要があることを本発明者らは認識した。特許文献2、および特許文献3には、チューブまたはシートを、表面性制御された内外金型で押圧しつつ、融点(以降「Tm」と略)以上で二次加工を施す方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−112942号公報
【特許文献2】特開2006−341485号公報
【特許文献3】特開2003−066662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、PEEKと導電性無機フィラーとを含む熱可塑性樹脂組成物を押出成形したチューブをTm以上に加熱すると、PEEKの溶融に伴って、PEEK中に分散してなる導電性の無機フィラーが凝集してしまい、電気抵抗の不均一化が生じることがあった。そこで、本発明の目的は、体積抵抗が均一で、且つ、表面の平滑な電子写真用の円筒状エンドレスベルトの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の目的に鑑み、種々検討を重ねた。その結果、PEEKと導電性無機フィラーとを含む熱可塑性樹脂組成物の非晶質の成形体は、図1に実線で示したように、当該熱可塑性樹脂組成物のTg以上、Tm未満の温度領域において粘度の極小値を有することを見出した。一方、結晶化の進んだ成形体は、図1に破線で示したようにTm未満の温度では粘度低下を生じなかった。そして、上記非晶質の成形体に見られる、Tg以上、Tm未満の温度領域での粘度低下を利用することで、Tm以上にベルトを加熱することなく、つまり、PEEKの溶融を避けつつ、表面形状の制御が可能であることを見出した。本発明は、このような新たな知見に基きなされたものである。
【0006】
即ち、本発明に係る電子写真用の円筒状シームレスベルトの製造方法は、結着樹脂としてのポリエーテルエーテルケトンと、該結着樹脂に分散されている導電性無機フィラーとを含有している電子写真用の円筒状シームレスベルトの製造方法であって、(1)ポリエーテルエーテルケトンと導電性無機フィラーとを含有する導電性の熱可塑性樹脂組成物を円筒状に押出成形し、中空円筒状のチューブを得る工程と、(2)該チューブの表面温度が該熱可塑性樹脂組成物の融点(Tm)−55℃以上にある状態において、引落率2.5以上50以下となるように該チューブを引き取って該チューブを薄膜化して薄膜化チューブを得る工程と、(3)該薄膜化チューブの表面温度がTm−55℃以上にある状態で、該薄膜化チューブを冷却マンドレル周面に接触させ、該接触から0.5秒以下の時間内に該薄膜化チューブの表面温度を該熱可塑性樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)以下となるように冷却して該薄膜化チューブを固化させる工程と、(4)該工程(3)で固化させた薄膜化チューブを内型と外型とで挟圧した状態で、該薄膜化チューブを、10℃/分以上の昇温速度で、Tgを超えTm未満の結晶化開始温度に加熱する工程を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、電気抵抗の均一性と、表面形状の制御性の双方を高いレベルで両立した電子写真用の円筒状のシームレスベルトを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】非晶PEEKの動的粘弾性曲線。
【図2】一次加工(押出成形)でのPEEKチューブ表面の冷却曲線(実施例1)。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る実施する最良の形態を説明する。
【0010】
本発明に係る電子写真画像形成装置に用いる円筒状のシームレスベルトは、結着樹脂としてのポリエーテルエーテルケトンと、該結着樹脂に分散されている導電性無機フィラーとを含有している。そして、本発明に係る当該シームレスベルトの製造方法は、下記(1)から(4)の工程を有する。
(1)ポリエーテルエーテルケトンと導電性無機フィラーとを含有する導電性の熱可塑性樹脂組成物を円筒状に押出成形し、中空円筒状のチューブを得る工程。
(2)該チューブの表面温度が該熱可塑性樹脂組成物の融点(Tm)−55℃以上にある状態において、引落率2.5以上50以下となるように該チューブを引き取って該チューブを薄膜化して薄膜化チューブを得る工程。
(3)該薄膜化チューブの表面温度がTm−55℃以上にある状態で、該薄膜化チューブを冷却マンドレル周面に接触させ、該接触から0.5秒以下の時間内に該薄膜化チューブの表面温度を該熱可塑性樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)以下となるように冷却して該薄膜化チューブを固化させる工程。
(4)該工程(3)で固化させた薄膜化チューブを内型と外型とで挟圧した状態で、該薄膜化チューブを、10℃/分以上の昇温速度で、Tgを超えTm未満の結晶化開始温度以下の温度に加熱する工程。
【0011】
上記工程(1)〜(3)は、PEEKと導電性無機フィラーとを含む熱可塑性樹脂組成物からなる非晶質の薄膜化チューブを得るための工程である。そして、上記工程(4)は、工程(1)〜(3)によって得られた非晶質の薄膜化チューブの表面形状を制御する工程である。
【0012】
<工程(1)>
まず工程(1)は、PEEKと導電性無機フィラーとを含む熱可塑性樹脂組成物の熔融体を、環状ダイスなどから押出して中空円筒状のチューブを成形する。
【0013】
<<PEEK>>
PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)としては、ビクトレックス(Victrex)社製の商品名「ビクトレックスPEEK」シリーズを用いることができる。
【0014】
<<導電性無機フィラー>>
導電性無機フィラーの具体例としては、導電性カーボンブラック(以降「導電性CB」)が挙げられる。
【0015】
導電性CBとしては、たとえば、アセチレンブラック、オイルファーネスブラック、サーマルブラック、チャネルブラックなどが挙げられる。導電性CBの割合は、使用する種類によっても異なるが、ベルト全体の質量を基準として、5〜25wt%、好ましくは10〜20wt%である。このような範囲であれば、体積抵抗率が低くなりすぎたり、機械特性が低下することが避けられる。
【0016】
<<第三成分>>
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、PEEKなどの熱可塑性樹脂と導電性無機フィラー以外にも、機能を付与するなどの目的で物質を含んでもよい。
【0017】
<工程(2)(3)>
次いで、このチューブの表面温度がTm(約345℃)−55℃(=290℃)以上の温度範囲にある状態において、引き落とし率2.5以上50以下となるように、該チューブを引取って該チューブを薄膜化して薄膜化チューブを得る。ここで引き落とし率とは、環状ダイスのリップ幅を、得ようとする薄膜化チューブの厚さで除した値である。
【0018】
一次加工工程では、上記の導電性CBを配合したPEEK組成物を、環状ダイスを介して押出した中空円筒状チューブを下方に引取、薄膜にする。その後、冷却マンドレルの外周に担持させて冷却することにより、薄膜化したチューブ状に成形する。また、ダイス出口から押出された樹脂の外周辺を、カバー部材、もしくはダイスと一体化しているカバー部で覆う構成でも良い。
【0019】
以上のような構成の下、PEEKの融点(345℃)以上に加熱保持設定されるダイス出口(幅0.5〜2mm)から押出され、冷却マンドレル下方に位置する引取装置により薄膜化される。このとき、好ましい引落率としては、2.5以上50以下(ダイス出口幅÷最終チューブ膜厚)で、好ましい膜厚としては、40〜200μmである。
【0020】
薄膜化する工程でのチューブを構成する熱可塑性樹脂組成物の表面温度は、該熱可塑性樹脂組成物の融点−55℃以上の温度範囲であることが望ましい。薄膜化した後、薄膜化された中空円筒状チューブ(以下、中空円筒状薄膜化チューブともいう)を冷却マンドレルに外勘合接触させる。外勘合接触後から0.5秒以下の時間内に該熱可塑性樹脂組成物の表面温度をガラス転移温度未満に冷却固化することが好ましい。ここで、冷却マンドレルと接触する位置でのチューブ表面温度が、290℃(融点−55℃)未満にならないように、かつ、最終チューブ膜厚に薄膜化されたチューブを、冷却マンドレル最上端に接触させる。そして接触から0.5秒以内に、150℃(Tg:ガラス転移温度)未満まで、冷却するように、冷却マンドレルの温度とダイスからの距離を設定する。上記方法により得られるチューブを広角X線回折法(XRD)により結晶化度測定を行い、結晶化度が10%以下のものを非晶と定義した。非晶のPEEK樹脂組成物からなる薄膜化されたチューブは上記のようにチューブ表面温度を冷却することで得ることができる。チューブの厚みは、40〜200μm、好ましくは50〜100μmの範囲内である。この範囲内とすることで、厚みを均一にすることが容易となり、また、柔軟性に富み、転写性能がより良好なものとなる。
【0021】
<工程(4)>
工程(1)乃至(3)によって得られた非晶質の薄膜化チューブは、チューブと接触する面を、ブレードクリーニング性能が出せるように粗さ制御された外勘合する内型と内勘合する外型で空気圧または、金型の熱膨張差で押圧する。そして、非晶質の薄膜化チューブを、ガラス転移温度(Tg)を超え、結晶化開始温度以下の温度領域の温度に10℃/分以上の昇温速度で加熱する。
【0022】
ここで、Tgを超え、結晶化開始温度以下の温度領域の温度は、動的粘弾性測定(DMA)より特定できる。図1に示すPEEKの動的粘弾性測定(DMA)では、ガラス転移温度はグラフ(縦軸;粘度、横軸;温度)中粘度が低下し始める温度である。また、結晶化開始温度は、粘度を示すプロファイルの極小値の温度と定義する。そして、熱処理を施す薄膜化チューブの結晶化度が進んでいるほど、DMAにおける粘度低下が小さくなる。また、DMAにおける粘度低下は、加熱速度が速いほど、大きくなる。10℃/min以上の昇温速度で目的とする加熱温度に到達するように加熱することが必要である。加熱速度が遅い場合、より低温で再結晶化の割合が大きくなり、粘度低下を生じにくくなる。そのため工程(4)が目的としている薄膜化チューブの表面性の制御が困難となる。加圧力は、熱面転写が行われば良く、特に限定するものではないが、10kg/cm2以上、好ましくは、20kg/cm2である。これにより、良好な面転写性能を得られる。
【0023】
本発明での外型の内面は、中間転写ベルトに求められる表面性を得るために、表面制御されている。求められる表面性は、ブレードクリーニング性能を考慮し、表面粗さ測定(十点平均粗さ;Rz)で、0.1〜1μmが好ましい。この範囲とすることで、ブレードのびびり・めくれを有効に抑制することができる。また、トナーのすり抜けも有効に抑制できる。
【0024】
本発明の中間転写ベルトの体積抵抗率の平均値は、1.0×10E7〜1.0×10E14Ωcmである。好ましくは、1×10E8〜1.0×10E13Ωcmである。中間転写ベルト1本あたりの体積抵抗率および表面抵抗率の面内抵抗ムラは、1桁以内、好ましくは、0.5桁以内である。また、表面抵抗率/体積抵抗率は、10倍以下が好ましい。
【実施例】
【0025】
(実施例1)
以上、発明を実施するための最良の形態に基づき、以下の実施例を示す。
【0026】
導電フィラーとして、カーボンブラック(アセチレンブラック)を配合したPEEK樹脂組成物を380℃のダイス出口から4kg/hで押出した例を示す。PEEKとしては、下記式(I)で示される化学構造を構成単位として有するものを用いた。
【0027】
【化1】

【0028】
カーボンブラックの配合量は、15wt%である。100℃に温調された冷却マンドレルは、ダイス下端から20mm位置に配置した。ダイス出口幅2mmから押出した中空円筒状のチューブは、冷却マンドレル下方に位置する引取装置により、引落率50(ダイス出口幅÷最終チューブ膜厚)で、40μmに薄膜化した薄膜化チューブを得た。このとき、図2に示すように、380℃の表面温度でダイス出口から押し出されたPEEK樹脂組成物は、冷却マンドレル上端でのPEEK樹脂組成物の表面温度(図2変曲点)が、350℃であった。また、最終膜厚40μmに薄膜化された薄膜化チューブを、冷却マンドレル最上端に接触させてから150℃(ガラス転移温度)未満にまで冷却するのに要した時間は0.35秒であった。固化させた薄膜化チューブの結晶化度は4%で、抵抗ムラは、小さかった。
【0029】
次いで、固化させた薄膜化チューブを、内型と外型とで面圧が10kg/cm2となるように挟圧しつつ、10℃/分の昇温速度で、160℃にまで加熱した。冷却後、型から取り出した薄膜化チューブは、表面抵抗の均一性、および表面平滑性に優れたものであった。
【0030】
(実施例2)
導電フィラーとして、カーボンブラック(アセチレンブラック)を配合したPEEK樹脂組成物を380℃のダイス出口から4kg/hで押出した例を示す。PEEK樹脂としては、上記式(I)で示すような、オキシ−1,4−フェニレン−オキシ−フェニレン−カルボニル−1,4−フェニレンの構成単位からなる物質を使用した。カーボンブラックの配合量は15wt%である。120℃に温調された冷却マンドレルは、ダイス下端から30mm位置に配置される。ダイス出口幅2mmから押出されるPEEK樹脂組成物は、冷却マンドレル下方に位置する引取装置により、引落率50(ダイス出口幅÷最終チューブ膜厚)で、40μmに薄膜化される。このとき、冷却マンドレル上端でのPEEK樹脂組成物表面温度(図2変曲点)が、290℃であった。また、最終膜厚40μに薄膜化されたPEEK樹脂組成物を、冷却マンドレル最上端に接触させ、150℃(ガラス転移温度)未満までの急冷時間は0.35secであった。作成されたベルトの結晶化度は6%で、抵抗ムラは、小さかった。
【0031】
押出成形で得られたこのチューブ、外勘合する内型と内勘合する外型で面圧10kg/cm2で、挟持押圧しつつ、チューブに250℃で、加熱処理を施す二次加工を行った。得られたベルトの抵抗は、均一でかつ、異物のない表面平滑性のある(面転性の良い)チューブを得ることができた。
【0032】
(実施例3)
導電フィラーとして、カーボンブラック(アセチレンブラック)を配合したPEEK樹脂組成物を380℃のダイス出口から4kg/hで押出した例を示す。PEEK樹脂としては、上記式(I)で示すような、オキシ−1,4−フェニレン−オキシ−フェニレン−カルボニル−1,4−フェニレンの構成単位からなる物質を使用した。カーボンブラックの配合量は15wt%である。120℃に温調された冷却マンドレルは、ダイス下端から20mm位置に配置される。ダイス出口幅2mmから押出されるPEEK樹脂組成物は、冷却マンドレル下方に位置する引取装置により、引落率50(ダイス出口幅÷最終チューブ膜厚)で、40μmに薄膜化される。このとき、冷却マンドレル上端でのPEEK樹脂組成物表面温度が、300℃であった。また、最終膜厚40μに薄膜化されたPEEK樹脂組成物を、冷却マンドレル最上端に接触させ、150℃(ガラス転移温度)未満までの急冷時間は0.45secであった。作成されたベルトの結晶化度は8%で、抵抗ムラは、小さかった。
【0033】
押出成形で得られたこのチューブ、外勘合する内型と内勘合する外型で面圧10kg/cm2で、挟持押圧しつつ、チューブに330℃で、加熱処理を施す二次加工を行った。得られたベルトの抵抗は、均一でかつ、異物のない表面平滑性のある(面転性の良い)チューブを得ることができた。
【0034】
(実施例4)
導電フィラーとして、カーボンブラック(アセチレンブラック)を配合したPEEK樹脂組成物を380℃のダイス出口から4kg/hで押出した例を示す。PEEK樹脂としては、上記式(I)で示すような、オキシ−1,4−フェニレン−オキシ−フェニレン−カルボニル−1,4−フェニレンの構成単位からなる物質を使用した。カーボンブラックの配合量は15wt%である。50℃に温調された冷却マンドレルは、ダイス下端から10mm位置に配置される。ダイス出口幅0.5mmから押出されるPEEK樹脂組成物は、冷却マンドレル下方に位置する引取装置により、引落率2.5(ダイス出口幅÷最終チューブ膜厚)で、200μmに薄膜化される。このとき、冷却マンドレル上端でのPEEK樹脂組成物表面温度が、350℃であった。また、最終膜厚200μmに薄膜化されたPEEK樹脂組成物を、冷却マンドレル最上端に接触させ、150℃(ガラス転移温度)未満までの急冷時間は0.45secであった。作成されたベルトの結晶化度は8%で、抵抗ムラは、小さかった。
【0035】
押出成形で得られたこのチューブ、外勘合する内型と内勘合する外型で面圧10kg/cm2で、挟持押圧しつつ、チューブに160℃で、加熱処理を施す二次加工を行った。得られたベルトの抵抗は、均一でかつ、異物のない表面平滑性のある(面転性の良い)チューブを得ることができた。
【0036】
(実施例5)
導電フィラーとして、カーボンブラック(アセチレンブラック)を配合したPEEK樹脂組成物を380℃のダイス出口から4kg/hで押出した例を示す。PEEK樹脂としては、上記式(I)で示すような、オキシ−1,4−フェニレン−オキシ−フェニレン−カルボニル−1,4−フェニレンの構成単位からなる物質を使用した。カーボンブラックの配合量は15wt%である。80℃に温調された冷却マンドレルは、ダイス下端から10mm位置に配置される。ダイス出口幅0.5mmから押出されるPEEK樹脂組成物は、冷却マンドレル下方に位置する引取装置により、引落率2.5(ダイス出口幅÷最終チューブ膜厚)で、200μmに薄膜化される。このとき、冷却マンドレル上端でのPEEK樹脂組成物表面温度が、290℃であった。また、最終膜厚200μmに薄膜化されたPEEK樹脂組成物を、冷却マンドレル最上端に接触させ、150℃(ガラス転移温度)未満までの急冷時間は0.45secであった。作成されたベルトの結晶化度は8%で、抵抗ムラは、小さかった。
【0037】
押出成形で得られたこのチューブ、外勘合する内型と内勘合する外型で面圧10kg/cm2で、挟持押圧しつつ、チューブに250℃で、加熱処理を施す二次加工を行った。得られたベルトの抵抗は、均一でかつ、異物のない表面平滑性のある(面転性の良い)チューブを得ることができた。
【0038】
(実施例6)
導電フィラーとして、カーボンブラック(アセチレンブラック)を配合したPEEK樹脂組成物を380℃のダイス出口から4kg/hで押出した例を示す。PEEK樹脂としては、上記式(I)で示すような、オキシ−1,4−フェニレン−オキシ−フェニレン−カルボニル−1,4−フェニレンの構成単位からなる物質を使用した。カーボンブラックの配合量は15wt%である。80℃に温調された冷却マンドレルは、ダイス下端から10mm位置に配置される。ダイス出口幅0.5mmから押出されるPEEK樹脂組成物は、冷却マンドレル下方に位置する引取装置により、引落率2.5(ダイス出口幅÷最終チューブ膜厚)で、200μmに薄膜化される。このとき、冷却マンドレル上端でのPEEK樹脂組成物表面温度が、300℃であった。また、最終膜厚200μmに薄膜化されたPEEK樹脂組成物を、冷却マンドレル最上端に接触させ、150℃(ガラス転移温度)未満までの急冷時間は0.5secであった。作成されたベルトの結晶化度は10%で、抵抗ムラは、小さかった。
【0039】
押出成形で得られたこのチューブ、外勘合する内型と内勘合する外型で面圧10kg/cm2で、挟持押圧しつつ、チューブに330℃で、加熱処理を施す二次加工を行った。得られたベルトの抵抗は、均一でかつ、異物のない表面平滑性のある(面転性の良い)チューブを得ることができた。
【0040】
(比較例1)
導電フィラーとして、カーボンブラック(アセチレンブラック)を配合したPEEK樹脂組成物を380℃のダイス出口から4kg/hで押出した例を示す。PEEK樹脂としては、上記式(I)で示すような、オキシ−1,4−フェニレン−オキシ−フェニレン−カルボニル−1,4−フェニレンの構成単位からなる物質を使用した。カーボンブラックの配合量は15wt%である。120℃に温調された冷却マンドレルは、ダイス下端から20mm位置に配置される。ダイス出口幅2mmから押出されるPEEK樹脂組成物は、冷却マンドレル下方に位置する引取装置により、引落率50(ダイス出口幅÷最終チューブ膜厚)で、40μmに薄膜化される。このとき、図2に示すように、380℃で押し出されたPEEK樹脂組成物は、冷却マンドレル上端でのPEEK樹脂組成物表面温度が、275℃であった。また、最終膜厚40μに薄膜化されたPEEK樹脂組成物を、冷却マンドレル最上端に接触させ、150℃(ガラス転移温度)未満までの急冷時間は0.55secであった。作成されたベルトの結晶化度は12%で、抵抗ムラは、小さかった。
【0041】
押出成形で得られたこのチューブ、外勘合する内型と内勘合する外型で面圧10kg/cm2で、挟持押圧しつつ、チューブに160℃で、加熱処理を施す二次加工を行った。得られたベルトの抵抗は、均一だが、異物が消えず、表面平滑性のない(面転性の悪い)チューブになった。
【0042】
(比較例2)
導電フィラーとして、カーボンブラック(アセチレンブラック)を配合したPEEK樹脂組成物を380℃のダイス出口から4kg/hで押出した例を示す。PEEK樹脂としては、上記式(I)で示すような、オキシ−1,4−フェニレン−オキシ−フェニレン−カルボニル−1,4−フェニレンの構成単位からなる物質を使用した。カーボンブラックの配合量は15wt%である。120℃に温調された冷却マンドレルは、ダイス下端から32mm位置に配置される。ダイス出口幅2mmから押出されるPEEK樹脂組成物は、冷却マンドレル下方に位置する引取装置により、引落率50(ダイス出口幅÷最終チューブ膜厚)で、40μmに薄膜化される。このとき、図2に示すように、冷却マンドレル上端でのPEEK樹脂組成物表面温度が、280℃であった。また、最終膜厚40μmに薄膜化されたPEEK樹脂組成物を、冷却マンドレル最上端に接触させ、150℃(ガラス転移温度)未満までの急冷時間は0.34secであった。作成されたベルトの結晶化度は12%で、抵抗ムラは、小さかった。
【0043】
押出成形で得られたこのチューブ、外勘合する内型と内勘合する外型で面圧10kg/cm2で、挟持押圧しつつ、チューブに250℃で、加熱処理を施す二次加工を行った。得られたベルトの抵抗は、均一だが、異物が消えず、表面平滑性のない(面転性の悪い)チューブになった。
【0044】
(比較例3)
導電フィラーとして、カーボンブラック(アセチレンブラック)を配合したPEEK樹脂組成物を380℃のダイス出口から4kg/hで押出した例を示す。PEEK樹脂としては、上記式(I)で示すような、オキシ−1,4−フェニレン−オキシ−フェニレン−カルボニル−1,4−フェニレンの構成単位からなる物質を使用した。カーボンブラックの配合量は15wt%である。145℃に温調された冷却マンドレルは、ダイス下端から20mm位置に配置される。ダイス出口幅2mmから押出されるPEEK樹脂組成物は、冷却マンドレル下方に位置する引取装置により、引落率50(ダイス出口幅÷最終チューブ膜厚)で、40μmに薄膜化される。このとき、380℃で押し出されたPEEK樹脂組成物は、冷却マンドレル上端でのPEEK樹脂組成物表面温度が、300℃であった。また、最終膜厚40μmに薄膜化されたPEEK樹脂組成物を、冷却マンドレル最上端に接触させ、150℃(ガラス転移温度)未満までの急冷時間は0.65secであった。作成されたベルトの結晶化度は18%で、抵抗ムラは、小さかった。
【0045】
押出成形で得られたこのチューブ、外勘合する内型と内勘合する外型で面圧10kg/cm2で、挟持押圧しつつ、チューブに330℃で、加熱処理を施す二次加工を行った。得られたベルトの抵抗は、均一だが、異物が消えず、表面平滑性のない(面転性の悪い)チューブになった。
【0046】
(比較例4)
導電フィラーとして、カーボンブラック(アセチレンブラック)を配合したPEEK樹脂組成物を380℃のダイス出口から4kg/hで押出した例を示す。PEEK樹脂としては、上記式(I)で示すような、オキシ−1,4−フェニレン−オキシ−フェニレン−カルボニル−1,4−フェニレンの構成単位からなる物質を使用した。カーボンブラックの配合量は、15wt%である。100℃に温調された冷却マンドレルは、ダイス下端から20mm位置に配置される。ダイス出口幅2mmから押出されるPEEK樹脂組成物は、冷却マンドレル下方に位置する引取装置により、引落率50(ダイス出口幅÷最終チューブ膜厚)で、40μmに薄膜化される。このとき、380℃の表面温度でダイス出口から押し出されたPEEK樹脂組成物は、冷却マンドレル上端でのPEEK樹脂組成物表面温度が、350℃であった。また、最終膜厚40μmに薄膜化されたPEEK樹脂組成物を、冷却マンドレル最上端に接触させてから150℃(ガラス転移温度)未満までの急冷時間は0.35secであった。作成されたベルトの結晶化度は4%で、抵抗ムラは、小さかった。
【0047】
押出成形で得られたこのチューブ、外勘合する内型と内勘合する外型で面圧10Kg/cm2で、挟持押圧しつつ、チューブに350℃で、加熱処理を施す二次加工を行った。得られたベルトは、異物のない表面平滑性のある(面転性の良い)チューブを得ることができた。しかし、抵抗は、不均一となった。
【0048】
(比較例5)
導電フィラーとして、カーボンブラック(アセチレンブラック)を配合したPEEK樹脂組成物を380℃のダイス出口から4kg/hで押出した例を示す。PEEK樹脂としては、上記式(I)で示すような、オキシ−1,4−フェニレン−オキシ−フェニレン−カルボニル−1,4−フェニレンの構成単位からなる物質を使用した。カーボンブラックの配合量は15wt%である。50℃に温調された冷却マンドレルは、ダイス下端から10mm位置に配置される。ダイス出口幅0.5mmから押出されるPEEK樹脂組成物は、冷却マンドレル下方に位置する引取装置により、引落率2.5(ダイス出口幅÷最終チューブ膜厚)で、200μmに薄膜化される。このとき、冷却マンドレル上端でのPEEK樹脂組成物表面温度が、350℃であった。また、最終膜厚200μmに薄膜化されたPEEK樹脂組成物を、冷却マンドレル最上端に接触させ、150℃(ガラス転移温度)未満までの急冷時間は0.45secであった。作成されたベルトの結晶化度は8%で、抵抗ムラは、小さかった。
【0049】
押出成形で得られたこのチューブ、外勘合する内型と内勘合する外型で面圧10kg/cm2で、挟持押圧しつつ、チューブに350℃で、加熱処理を施す二次加工を行った。得られたベルトは、異物のない表面平滑性のある(面転性の良い)チューブを得ることができた。しかし、抵抗は、不均一となった。
【0050】
(比較例6)
導電フィラーとして、カーボンブラック(アセチレンブラック)を配合したPEEK樹脂組成物を380℃のダイス出口から4kg/hで押出した例を示す。PEEK樹脂としては、上記式(I)で示すような、オキシ−1,4−フェニレン−オキシ−フェニレン−カルボニル−1,4−フェニレンの構成単位からなる物質を使用した。カーボンブラックの配合量は15wt%である。145℃に温調された冷却マンドレルは、ダイス下端から20mm位置に配置される。ダイス出口幅2mmから押出されるPEEK樹脂組成物は、冷却マンドレル下方に位置する引取装置により、引落率50(ダイス出口幅÷最終チューブ膜厚)で、40μmに薄膜化される。このとき、380℃で押し出されたPEEK樹脂組成物は、冷却マンドレル上端でのPEEK樹脂組成物表面温度が、300℃であった。また、最終膜厚40μmに薄膜化されたPEEK樹脂組成物を、冷却マンドレル最上端に接触させ、150℃(ガラス転移温度)未満までの急冷時間は0.65secであった。作成されたベルトの結晶化度は18%で、抵抗ムラは、小さかった。
【0051】
押出成形で得られたこのチューブ、外勘合する内型と内勘合する外型で面圧10kg/cm2で、挟持押圧しつつ、チューブに350℃で、加熱処理を施す二次加工を行った。得られたベルトは、異物のない表面平滑性のある(面転性の良い)チューブを得ることができた。しかし、抵抗は、不均一となった。
【0052】
【表1】

【0053】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂としてのポリエーテルエーテルケトンと、該結着樹脂に分散されている導電性無機フィラーとを含有しているシームレスベルトの製造方法であって、
(1)ポリエーテルエーテルケトンと導電性無機フィラーとを含有する導電性の熱可塑性樹脂組成物を円筒状に押出成形し、中空円筒状のチューブを得る工程と、
(2)該チューブの表面温度が該熱可塑性樹脂組成物の融点(Tm)−55℃以上にある状態において、引落率2.5以上50以下となるように該チューブを引き取って該チューブを薄膜化して薄膜化チューブを得る工程と、
(3)該薄膜化チューブの表面温度がTm−55℃以上にある状態で、該薄膜化チューブを冷却マンドレル周面に接触させ、該接触から0.5秒以下の時間内に該薄膜化チューブの表面温度を該熱可塑性樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)以下となるように冷却して該薄膜化チューブを固化させる工程と、
(4)該工程(3)で固化させた薄膜化チューブを内型と外型とで挟圧した状態で、該薄膜化チューブを、10℃/分以上の昇温速度で、Tgを超えTm未満の結晶化開始温度以下の温度にまで加熱する工程を有することを特徴とするシームレスベルトの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2010−214694(P2010−214694A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−62573(P2009−62573)
【出願日】平成21年3月16日(2009.3.16)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】