説明

シールリング及びその製造方法

【課題】簡単な構造でありながら、強靭で且つ通気性を有する新規なシールリングと製造コストの高騰を来たさない簡易なシールリングの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】回転側部材3と固定側部材4との間に介装されて、該二部材3、4間の内部と外部とを密封するシールリングAであって、網状体からなる芯材6と、一部が網目空間内に浸透した状態で該芯材6に固着一体とされた弾性材からなる弾性シール部材7と、該シール部材7の一部が除去されて上記芯材6の一部が露出された露出部分6aとよりなり、前記二部材3、4間に介装された状態では、該露出部分6aがその網目空間を通して前記内部及び外部間で通気性を保有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、密封型転がり軸受や軸受ユニットのように、固定側部材と回転側部材との間に配された転動体(ボール等)の転動を円滑にする為に充填される潤滑剤(グリス等)の漏出或いは外部からの異物の侵入を防止する為に固定側部材と回転側部材との間に介装されるシールリングに関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような密封型転がり軸受等においては、転動体の転動に伴う摩擦熱や潤滑剤の攪拌熱により、潤滑剤が充填された密封室(転動体の軌道部)の温度が上昇し、密封室の内圧を高める結果、更に密封室の温度が上昇して転動体の焼付き等の不具合を生じることがある。特許文献1には、密封室内の温度及び気圧の上昇を防止する為に、ゴム等の弾性材からなるシール環(弾性シール部材)に通気栓を設け、密封室内の空気を通気栓を通して流通させ、密封室内の気圧を大気圧に保つようにした接触形シール環が提案されている。
【0003】
また、特許文献2には、油漬けにされた軸に使用されるオイル潤滑型転がり軸受であって、合成ゴム等のシール体(弾性シール部材)を結合一体とした芯金に窓を開設し、この窓に金網等からなるオイルフィルターを固着し、このオイルフィルターを通して清浄なオイル(潤滑剤)を軸受内部に供給するようにしたオイル潤滑型転がり軸受が開示されている。
【特許文献1】実開昭48−43058号公報
【特許文献2】実公昭43−24167号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示された接触形シール環における通気栓は多孔質の焼結体からなり、シール環に形成された貫通穴に装着されている。この通気栓は、シール環の補強をなす芯金とは別体であって、これ自体がシール環を補強する機能はなく、従って、芯金によって補強を必要とするシール部材に適用する場合には、芯金とは別に上記のような通気栓を準備する必要がある。そして、通気栓の装着部位では、その離脱が生じないような構造上の加工も必要とされる。
【0005】
また、特許文献2に開示されたオイル潤滑型転がり軸受は、油漬けにされた軸に使用されるものであって、該軸受の遮板(シールリング)に装着される上記オイルフィルターは、軸受外部から内部に流入するオイルを濾過して清浄化する機能はあっても、軸受内外の空気の流通を促すことを意図したものではない。しかも、芯金に窓を開設し、これに芯金とは別部材のオイルフィルターを装着すると言った煩わしい加工工程を要し、また部品点数も多くなり、これらは製品コストの高騰を来たす大きな原因となることは容易に想定されるところであった。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、簡単な構造でありながら、強靭で且つ通気性を有する新規なシールリングと製造コストの高騰を来たさない簡易なシールリングの製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明に係るシールリングは、回転側部材と固定側部材との間に介装されて、該二部材間の内部と外部とを密封するシールリングであって、網状体からなる芯材と、一部が網目空間内に浸透した状態で該芯材に固着一体とされた弾性材からなる弾性シール部材と、該シール部材の一部が除去されて上記芯材の一部が露出された露出部分とよりなり、前記二部材間に介装された状態では、該露出部分がその網目空間を通して前記内部及び外部間で通気性を保有することを特徴とする。網状体としては、請求項5の発明のように、金属製網状体が望ましいが、カーボン繊維からなる網状体或いは樹脂繊維からなる網状体も採用される。金属製網状体としては、金属細線による織物、編物或いは金属繊維による不織布状物等が採用される。
【0008】
本発明においては、請求項2の発明のように、前記弾性材は、ゴム材からなるものとすることが望ましい。また、請求項3の発明のように、前記弾性シール部材が、固定側部材に固着される固定部と、回転側部材に弾性摺接するシールリップ部とを備えているものや、請求項4の発明のように、前記露出部分の周辺部に隆起堰部を備えているものとすることも可能である。更に、請求項6の発明のように、前記芯材の少なくとも露出部分は、撥水処理が施されていることが望ましい。
【0009】
請求項7の発明は、請求項1乃至6のいずれかに記載のシールリングの製造方法であって、所望形状のキャビティーを備えた成型型の該キャビティー内に、前記網状体を円環状に裁断加工した芯材を配置し、更に、該キャビティー内に弾性材の原料を装填して成型し、上記弾性材による弾性シール部材がその一部が網目空間内に浸透した状態で芯材に固着一体とされた成型体を得、その後、該成型体の弾性シール部材の一部を除去して、上記芯材の一部が露出された露出部分を形成することを特徴とする。
【0010】
請求項7の発明に係るシールリングの製造方法においては、請求項8の発明のように、前記弾性シール部材の一部の除去を、レーザー加工機によって行うことができるが、これ以外にウォータージェット加工、ショットピーニング加工、放電加工等が採用可能である。また、請求項9の発明のように、前記露出部分を形成した後、この露出部分に更に撥水処理を施すことが望ましい。この撥水処理としては、テフロン(登録商標)によるスプレイコーティング等が望ましく採用される。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明に係るシールリングを、前記のような転がり軸受に適用した場合、回転側部材の回転による転動体の転動等に伴い軸受内部(転動室内)の温度が上昇するとその内部気圧も高くなるが、前記露出部分がその網目空間を通して前記内部及び外部間で通気性を保有するから、内部空気がこの露出部分を通して外部に流出し、内部気圧は常に大気圧に保持される。従って、軸受内部の温度上昇が抑えられ、転動体の焼付きや軸受の毀損等の発生が未然に防止される。また、上記回転が停止して、軸受内部の温度が低下してゆく場合でも、内部気圧は常に大気圧に保持されるから、負圧状態になることによるシール部材の食いつき現象も回避することができる。そして、弾性シール部材は網状体からなる芯材によって補強されるから、回転側部材及び固定側部材間に安定的に介装され、そのシール機能が長く持続される。更に、網状体の網目空間を微細なものとすれば、通気性を維持したまま、水や潤滑剤(グリス等)の透過を阻止するようにすることもでき、このようにすれば露出部分から潤滑剤が漏出したり、外部からの水が軸受内部に浸入したりするようなこともない。芯材として、請求項5の発明のように金属製網状体を用いれば、弾性シール部材の補強機能が向上すると共に、多様な金属製網状体が市販されており、その設計選択自由度も向上する。
【0012】
また、請求項2の発明のように、弾性材をゴム材からなるものとすれば、弾性シール部材はゴム特有の弾性により優れたシール性が発現される。また、ゴム材の加硫成型と同時に網状体からなる芯材との固着一体化を行うことができ、これによれば、ゴム材の一部が網目空間に浸透し易く、弾性シール部材は、接着剤を用いなくても芯材と強固に一体化したものとされ、芯材の補強機能と相乗してシール性の持続性がより向上する。また、請求項3の発明によれば、前記弾性シール部材が、固定部をして固定側部材に固着保持されると共に、シールリップ部が回転側部材に弾性摺接するから、固定側部材及び回転側部材相互の回転によっても優れたシール性が得られる。
【0013】
更に、請求項4の発明のように、前記露出部分の周辺部に隆起堰部を備えるようにすれば、飛散する水がこの隆起堰部で堰き止められ露出部分から内部への水の浸入を阻止するのに有効である。そして、請求項6の発明のように、前記芯材の少なくとも露出部分に、撥水処理が施されておれば、露出部分に水が飛散しても、露出している芯材表面で撥じかれて付着せず、軸受の内部(転動室)に浸透することがない。
【0014】
請求項7の発明によれば、弾性シール部材と芯材とを成型一体化した後、弾性シール部材の一部を除去して通気性を有する芯材の露出部分を形成するようにしているから、通気性を有する部分の為の別部材を準備する必要がなく、またその保持の為の加工を施す必要もないから、部品点数少なく且つ加工の煩わしさを伴わず、製造コストの高騰を来たすことなく簡易にシールリングを製することができる。
【0015】
請求項8の発明のように、弾性シール部材の一部の除去をレーザー加工機によって行うようにすれば、その除去が極めて簡単であり、しかもその除去部分(露出部分)の形状も任意に選択し得るから、最適な通気性を得る為の除去部分の大きさや形状或いは位置等の設定が極めて簡易になされる。従って、この除去部分を社章或いは品番等を兼ねるよう形成することも可能であり、このようにすれば、従来のように打刻や成型型で社章或いは品番等を形成する場合に比べて、製造コストの大幅な削減が可能となる。更に、請求項8の発明のように、前記露出部分に更に撥水処理を施すようにすれば、形成された露出部では飛散水の撥水機能が発現され、しかも、露出部分のみの撥水処理であるから、撥水処理によってコストが大幅にアップする懸念もない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に本発明の最良の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図1は本発明の1実施例のシールリングが組み込まれた軸受ユニットの例を示す縦断面図、図2は図1におけるX部の拡大図、図3は同シールリングの平面図、図4(a)(b)(c)(d)は同シールリングの製造方法の概略的工程図である。
【実施例1】
【0017】
図1は、自動車の車輪をシャフト1に対して転がり軸受ユニット2により支持する構造の一例を示すものであり、内輪(回転側部材)3を構成するハブ輪3aにボルト3bによりタイヤホイール(不図示)が固定される。また、3cはハブ輪3aに形成されたスプライン孔であり、このスプライン孔3cには駆動シャフト1がスプライン嵌合され且つハブ輪3aに一体固定されて、該駆動シャフト1の回転駆動力がハブ輪3aを介してタイヤホイールに駆動伝達される。3dは内輪部材であり、上記ハブ輪3aと共に内輪3が構成される。
【0018】
4は外輪(固定側部材)であり、車体の懸架装置(不図示)に取付固定される。この外輪4と上記内輪3(ハブ3a及び内輪部材3d)との間に2列の転動体(玉)5…がリテーナ5aで保持された状態で介装されている。A、A’は上記転動体5…の転動部に充填される潤滑剤(グリス等)の漏出を防止し、或いは外部からの泥水や塵埃等の浸入を防止するためのシールリングであって、本発明のシールリングに相当し、外輪4と内輪3との間に圧入される。両側のシールリングA、A’と内輪3及び外輪4とにより囲まれた部位が被密封部位(転動室)Sとされる。
【0019】
図2は、図1のX部の拡大図を示し、車体側のシールリングAは、金属製網状体からなる芯材6と、一部が網目空間内に浸透した状態で該芯材6に固着一体とされたゴム等の弾性材からなる弾性シール部材7と、該シール部材7の一部が除去7aされて上記芯材6の一部が露出された露出部分6aとよりなる。弾性シール部材7は、外輪4の内周に固着される固定部7bと、内輪3の外周部に弾性摺接するシールリップ部7cとを備えている。また、弾性シール部材7の除去部7a、即ち、芯材6の露出部分6aの遠心方向周縁部分には隆起堰部7dが形成されている。図例では、上記除去部7a、露出部分6a及び隆起堰部7dは、夫々円弧形状とされ、周方向に等間隔で4個形成した例が示されているが、これに限定されず、形状、個数等は任意に設定される。特に、形状は社章や品番等を表すものとすれば、商品の識別表示や製品管理等に有効である。また、隆起堰部7dは露出部分6aの全周に亘り形成することも可能である。
【0020】
図2に示す固定部7b及びシールリップ部7cにおける想像線部分は原形を示し、図2に示すように弾性変形した状態で内輪3及び外輪4間に介装される。上記転動室Sには不図示の潤滑剤(グリス等)が充填され、転動体5…の円滑な転動がなされる。上記芯材6の露出部分6aはその網目空間を通して通気性を保有しており、転動室Sと外部との間に大気の流通がなされる。
【0021】
芯材6を構成する金属製網状体としては、ステンレス鋼(SUS301、SUS304、SUS316、SUS430、SUS430JIL、SUS434、SUS404、L)等の金属線材を、編成或いは織成した金網が望ましく採用されるが、金属繊維による不織布状物も採用可能である。金属線材(繊維)としては、上記の他に、鉄線、鋼線、亜鉛めっき鉄線、亜鉛めっき鋼線、ニッケルメッキ鋼線、アルミニウム線、銅線、リン青銅線、ニッケル線、モネルメタル線が望ましく採用される。また、上記金網の形態としては、上記金属線材による、平織、綾織、畳織、筵織、簾織等の織物、或いは結節網、無結節網、本目網、蛙叉網、ラッセル網、綟子網、織網等の編物が採用される。これら金属製網状体は、テフロン(登録商標)コーティング等の撥水処理が事前に施されたものや、後記するように露出部分6aのみに同撥水処理が施されたものが望ましく採用される。
【0022】
弾性シール部材7を構成する弾性材としては、合成ゴム材或いは弾性樹脂材が採用可能であり、特に、NBR、H−NBR、ACM、AEM、FKM、PTFE等から選ばれたいずれかのゴム材に適宜添加剤等を添加した合成ゴム材が望ましく採用される。尚、PTFEは芯材が金属板等である場合には接着性は余り良くないが、本発明では芯材が金属製の網状体であるから、その網目による担持力によって芯材に強固に一体とされ、その摺動性の良さにより、シールリングとしての適性が増大する。
【0023】
図1における車輪側シールリングA’も、車体側シールリングAと同様の構成にし得ることは当然であり、図1に示すようにシールリングA、A’が内輪3及び外輪4間に装着された状態で、駆動シャフト1及び内輪3が軸回転すると、転動体5…が内輪3及び外輪4の夫々の軌道面を転動する。被密封部位S、即ち転動室にはグリス等の潤滑剤が充填されているから、その潤滑作用を受けて転動体5…の転動が円滑になされ、駆動シャフト1及び内輪3の軸回転も円滑になされる。この時、潤滑剤が不足気味になっていたり、潤滑剤の粘度が高くなって所謂潤滑剤回りが悪くなっていたりすると、転動体5の転動に伴う摩擦熱により転動室S内の温度が高くなることがある。また、長時間の稼動に伴う潤滑剤の攪拌熱により同様に転動室S内の温度が高くなる。このように、転動室S内の温度が上昇すると、転動室S内の気圧も高くなるが、芯材6の露出部6aが通気性を保有するから、図2の矢示Yのように、転動室S内から外部へ空気が流出し、転動室S内が常に大気圧に保たれ、内部温度の上昇も抑えられる。一方、内輪3の軸回転が停止し、転動室S内の温度が低下して負圧になるが、この時は、矢示Yとは逆方向に空気の流れが生じ、同様に転動室S内が常に大気圧に保たれる。
【0024】
芯材6を構成する金属製網状体は前記のように各種市販されており、その適宜選択的使用により、露出部6aにおいて通気性を維持しながらも水や潤滑剤の透過を阻止するようになすことができる。このように、通気性を維持しながらも水や潤滑剤の透過を阻止し得るような金属製網状体としては、線径0.05〜0.8mmで、30〜400メッシュの金網が望ましく採用される。このような金属製網状体の選択的使用により、露出部6aからの潤滑剤の漏出や、外部飛散水の露出部6aから転動室S内への流入も阻止すことができ、転動室S内を転動体の円滑な転動がなされる正常な状態に維持することができる。また、芯材6として撥水処理が事前に施された金属製網状体、或いは、露出部6aに爾後的に撥水処理を施した金属製網状体を用いるようにすれば、露出部6aに飛散水が付着することもなく、更に、隆起堰部7dによる庇状の作用によって、飛散水の除去部7aへの流入も抑えられる。そして、芯材6の補強機能と、形状保持機能とにより、シールリングAの安定保持がなされ、そのシール機能が長く持続される。
【0025】
次に図4(a)(b)(c)(d)を参照して上記シールリングAの製造方法を説明する。図4(a)(b)(c)は上下の分割金型8、9による加圧・加硫成型の要領を示す。先ず、図4(a)において、所望形状に形成された下金型9のキャビティー9a内の所定位置に、図のような形状に打抜・成形された金網からなる円環状芯材6を配置し、次いで、図4(b)において、加硫剤を含む未加硫のゴム材Rをキャビティー9a内に装填する。更に、図4(c)において、所望形状に形成されたキャビティー8aを備えた上金型8を所定位置に配置して加圧・加硫成型を行う。この加圧・加硫成型時にゴム材Rの一部が芯材6の網目空間内に浸透し、そのまま加硫硬化してゴム材Rが芯材6に担持された状態で両者が強固に固着一体とされる。このような固着一体化は接着剤を用いずなされるもので、材料コストの低減と製造工数の削減に寄与することになる。尚、分割金型は、上下二分割の金型8、9であるとしたが、目的のシールリングの形状によっては、更に中子をこれに組合せることもあり得ることは当然である。また、接着剤を用いなくともゴム材Rと芯材6との強固な固着一体化はなされるが、必要によって接着剤の使用も除外するものではない。
【0026】
上記加圧・加硫成型が完了すると、分割金型8、9を脱型し、図4(d)に示すような成型体A0を得る。そして、レーザー加工機10のレーザービームを弾性シール部材7の外面(反芯材6側)から作用させ、弾性シール部材7の加硫硬化した一部ゴム材を除去7aし、芯材6の一部を露出6aさせる。このレーザービームによる除去は、露出部分6aの網目空間に浸透したゴム材をも除去するから、露出部分6aでの網目空間を通した通気性が得られる。レーザー加工機10は、NC制御装置によって、事前にインプットされたパターンに基づき、レーザービームを走査するものであるから、上記除去部7aの形状は任意に設定することができる。従って、露出部分6aの形状、大きさ等は所望の性状に応じて適宜設定され、また、社章や品番等も兼ねるような形状にすることも極めて簡易になされる。爾後、この露出部分6aにテフロン(登録商標)のスプレイコーティングにより撥水処理がなされる。尚、レーザービームを弾性シール部材7の両面から作用させることも可能である。また、芯材6として事前に撥水処理がなされた金網を用いることも可能である。
【0027】
尚、上記実施例では、内輪3が回転側部材、外輪4が固定側部材としたが、これらが逆であっても良く、また、自動車の車輪シャフトを支持する軸受ユニットに適用した例を述べたが、オイルシール等、他の密封を必要とされる機構にも適用され得ることは当然である。更に、シールリングの形状は、図例のものに限定されず、他の形状も採用可能であることは言うまでもない。図例のような軸受ユニットにおけるシールリングA、A’の内、少なくとも一方に本発明のものを採用するようにすれば、上記効果を十分に奏するので、他方のシールリングではその選択範囲が広がり、内圧のアップ・ダウンを考慮せず、シール設計(嵌合部、摺動リップ部)の自由度が向上する。シールリングの製造方法における成型工程では、加圧・加硫成型を例に述べたが、射出成型でも同様の成型がなし得ることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の1実施形態のシールリングが組み込まれた軸受ユニットの例を示す断面図である。
【図2】図1におけるX部の拡大図である。
【図3】同シールリングの平面図である。
【図4】(a)(b)(c)(d)は同シールリングの製造方法の概略的工程図であり、(a)は下金型に芯材を配置する工程を、(b)はゴム材を装填する工程を、(c)は上金型を配置して加圧・加硫成型する工程を、(d)はレーザー加工機によりゴム材の一部を除去する工程を、夫々示す。
【符号の説明】
【0029】
3 内輪(回転側部材)
4 外輪(固定側部材)
6 芯材
6a 露出部分
7 弾性シール部材
7a 除去部
7b 固定部
7c シールリップ部
7d 隆起堰部
8 上金型(成型型)
8a キャビティー
9 下金型(成型型)
9a キャビティー
10 レーザー加工機
A、A’ シールリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転側部材と固定側部材との間に介装されて、該二部材間の内部と外部とを密封するシールリングであって、
網状体からなる芯材と、一部が網目空間内に浸透した状態で該芯材に固着一体とされた弾性材からなる弾性シール部材と、該シール部材の一部が除去されて上記芯材の一部が露出された露出部分とよりなり、前記二部材間に介装された状態では、該露出部分がその網目空間を通して前記内部及び外部間で通気性を保有することを特徴とするシールリング。
【請求項2】
請求項1に記載のシールリングにおいて、
前記弾性材が、ゴム材からなることを特徴とするシールリング。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のシールリングにおいて、
前記弾性シール部材が、固定側部材に固着される固定部と、回転側部材に弾性摺接するシールリップ部とを備えていることを特徴とするシールリング。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載のシールリングにおいて、
前記弾性シール部材が、前記露出部分の周辺部に隆起堰部を備えていることを特徴とするシールリング。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載のシールリングにおいて、
前記芯材が金属製網状体からなることを特徴とするシールリング。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載のシールリングにおいて、
前記芯材の少なくとも露出部分は、撥水処理が施されていることを特徴とするシールリング。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載のシールリングの製造方法であって、
所望形状のキャビティーを備えた成型型の該キャビティー内に、前記網状体を円環状に裁断加工した芯材を配置し、更に、該キャビティー内に弾性材の原料を装填して成型し、上記弾性材による弾性シール部材がその一部が網目空間内に浸透した状態で芯材に固着一体とされた成型体を得、その後、該成型体の弾性シール部材の一部を除去して、上記芯材の一部が露出された露出部分を形成することを特徴とするシールリングの製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載のシールリングの製造方法において、
前記弾性シール部材の一部の除去が、レーザー加工機によってなされることを特徴とするシールリングの製造方法。
【請求項9】
請求項7又は8に記載のシールリングの製造方法において、
前記露出部分を形成した後、この露出部分に更に撥水処理を施すことを特徴とするシールリングの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2006−322538(P2006−322538A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−146275(P2005−146275)
【出願日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【出願人】(000225359)内山工業株式会社 (204)
【Fターム(参考)】