ジョセフソン接合及びジョセフソンデバイス
【課題】絶縁バリア層の形成を不要とする、新規なジョセフソン接合及びジョセフソン接合デバイスを提供する。
【解決手段】ジョセフソン接合1は、超伝導体層2と超伝導体層2の中央部2C上に積層した強磁性層3とを備える。強磁性層3は導電性又は絶縁性の強磁性層とすることができ、絶縁層を介して積層される導電性強磁性層としてもよい。超伝導体層2を高温超伝導体層とすれば、大きなIcRN積を有するジョセフソン接合1とすることができる。このジョセフソン接合1は、各種のジョセフソンデバイスの接合として使用することができる。
【解決手段】ジョセフソン接合1は、超伝導体層2と超伝導体層2の中央部2C上に積層した強磁性層3とを備える。強磁性層3は導電性又は絶縁性の強磁性層とすることができ、絶縁層を介して積層される導電性強磁性層としてもよい。超伝導体層2を高温超伝導体層とすれば、大きなIcRN積を有するジョセフソン接合1とすることができる。このジョセフソン接合1は、各種のジョセフソンデバイスの接合として使用することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は超伝導体、特に高温超伝導体を用いた新規なジョセフソン接合及びジョセフソンデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、超伝導トンネル接合、すなわちジョセフソン接合として、酸化膜(I)の両側に超伝導体層(S)を挟み込んだSIS型ジョセフソン接合を作製する場合、超伝導体層と絶縁バリア層と超伝導体層との3層を順に積層するために、最低でも3回の成膜工程が必要であった(例えば、非特許文献1参照)。超伝導トンネル接合の特性は、いわゆるIcRN積によって特徴づけられ、この値が大きいほど良好な接合となる。
【0003】
単一磁束量子デバイス(Single Flux Quantum Device、以下、適宜にSFQ素子と称する。)は、ジョセフソン接合を用いた論理回路である(非特許文献2参照)。このSFQ素子においては、磁束量子一本がジョセフソン接合を横切るときに発生するパルス状の電圧を利用して論理回路を構成する。この場合のスイッチング速度は、IcRN積に逆比例する。従って、IcRN積が大きい程、高速で動作する。IcRN積は、大凡、ジョセフソン接合に用いる超伝導体の臨界温度(Tc)に比例して大きくなる。
【0004】
【非特許文献1】Gomez Espinoza Luis Beltran、博士号学位論文、米国、Cincinnati大学、2003年5月30日提出
【非特許文献2】萬 伸一、「単一磁束量子デバイス」、固体物理、第40巻、No.10,p.807、2005年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
高温超伝導体層を用いたジョセフソン接合によれば、そのTcが従来のNbなどの超伝導体よりも大きいので、IcRN積が大きくなることが予測されている。しかしながら、現状の高温超伝導体においては、IcRN積が理論的に期待される値の10%程度の値をもつジョセフソン接合しか得られず、IcRN積が高くできないという課題がある。
【0006】
特に、高温超伝導体においては、絶縁バリア層作製の制御性や再現性を高めることが非常に困難であるために、良質の超伝導SIS型トンネル接合の作製ができていないという課題がある。
【0007】
本発明は上記課題に鑑み、超伝導体、特に高温超伝導体によるSIS型ジョセフソン接合において、良好な絶縁バリア層が得られないという技術的困難を克服するために、絶縁バリア層の形成を不要とする新規なジョセフソン接合及びジョセフソン接合デバイスを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明のジョセフソン接合は、超伝導体層と超伝導体層の中央部上に積層される強磁性層とを備えることを特徴とする。
上記構成において、強磁性層は導電性強磁性層又は絶縁性強磁性層の何れかからなっていてよい。
本発明のジョセフソン接合は、超伝導体層と超伝導体層の中央部上に絶縁層を介して積層される導電性強磁性層とを備えることを特徴とする。
上記構成において、超伝導体層の中央部の幅は、好ましくは超伝導体層のコヒーレント長と同程度である。
超伝導体層の中央部及び中央部の両側の超伝導体層の幅は、好ましくは超伝導体層のコヒーレント長と同程度の細線からなる。
【0009】
上記構成によれば、超伝導体層の中央部上に被覆された強磁性層、又は、絶縁層を介して積層される導電性強磁性層は、磁性体であるので、超伝導を抑制する働きがあり、超伝導体層を抑制する作用を発揮する。特に高温超伝導体層に対しては、超伝導体(以下、適宜Sとも呼ぶ)から絶縁体(以下、適宜Iとも呼ぶ)への転移を引き起こすので、バリア作用、即ち障壁となる。従って、本発明のジョセフソン接合は、所謂SIS型又はSNS型(Super-Normal-Super)のジョセフソン接合として動作する。
本発明のジョセフソン接合は、従来のSIS型又はSNS型ジョセフソン接合よりも構造が簡単である。このため、その製造に必要なプロセス数を従来のSIS型又はSNS型ジョセフソン接合よりも減らすことができる。
従って、本発明のジョセフソン接合は、高温超伝導体を用いたSIS型ジョセフソン接合で深刻な問題になっていた絶縁バリア層の作製というプロセスを使用しないので、電気特性の再現性及び制御性を飛躍的に改善することができる。これにより、高温超伝導体を用いたジョセフソン接合のIcRN積を大きくすることが可能になる。
【0010】
本発明のジョセフソン接合を用いたジョセフソンデバイスは、超伝導体層と超伝導体層の中央部上に積層される強磁性層とを備えることを特徴とする。
上記構成において、強磁性層は導電性強磁性層又は絶縁性強磁性層の何れかでなっていてよい。
本発明のジョセフソン接合を用いたジョセフソンデバイスは、超伝導体層と超伝導体層の中央部上に絶縁層を介して積層される導電性強磁性層とを備えることを特徴とする。
【0011】
上記構成によれば、超伝導体層の中央部に、強磁性層又は絶縁層を介して積層される導電性強磁性層により障壁が形成され、SIS型ジョセフソン接合を用いたジョセフソンデバイスが得られる。このジョセフソン接合は構造が簡単で、従来のトンネル酸化膜を必要としない。このため、高温超伝導体層を用いた場合には、ジョセフソン接合のIcRN積を大きくすることができるので、ジョセフソン接合が高速で動作する。本発明のジョセフソンデバイスは、構造が簡単であることから集積化が容易であり、ジョセフソン接合を用いた各種のジョセフソンデバイスの性能を向上させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、強磁性層からなるバリア層を用いた、新規なSIS型ジョセフソン接合及びジョセフソンデバイスを提供することができる。このジョセフソン接合によれば、特にTcの大きい高温超伝導体層によるSIS型ジョセフソン接合において大きなIcRN積を得ることが可能である。このジョセフソン接合を用いたジョセフソンデバイスによれば、各ジョセフソン接合のIcRN積が大きいので、高速の論理回路を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。各図において同一又は対応する部材には同一符号を用いる。
最初に、本発明による第1の実施形態に係るジョセフソン接合について説明する。図1は、本発明による第1の実施形態に係るジョセフソン接合1を模式的に説明するもので、それぞれ、(A)は平面図、(B)は(A)のX−X方向に沿う断面図、(C)は(A)のY−Y方向に沿う断面図である。
図1(A)に示すように、本発明による第1の実施形態に係るジョセフソン接合1は、基板6上に形成された超伝導体からなる薄層(以下、超伝導体層と呼ぶ)2上の狭窄部2Cに、絶縁性の強磁性層3(以下、絶縁性強磁性層と呼ぶ)が被覆された構造を有している。
ここで、超伝導体層2を構成する超伝導体としては、ニオブ、窒化ニオブ、アルミニウム、鉛や銅酸化物超伝導体などの高温超伝導体などからなる材料を使用することができ、超伝導体であればその種類を問わない。銅酸化物超伝導体としては、La,Sr,Cu及びOからなる化合物(LSCO)、Y,Ba,Cu及びOからなる化合物(YBCO)、Bi,Sr,Ca,Cu及びOからなる化合物(BSCCO)などが挙げられる。特に、Tcの大きい高温超伝導体層を用いれば、ジョセフソン接合のIcRN積を大きくすることができる。以下の説明においては、超伝導体層2は高温超伝導体層として説明する。
【0014】
この絶縁性強磁性層3が被覆される高温超伝導体層2Cの幅W2は、その両側の電極となる高温超伝導体層2A,2Bの幅W1よりも狭くした狭窄構造、所謂、ブリッジ構造としている。
【0015】
高温超伝導体層2Cの幅W2は、5μm程度までとしてもよいが、高温超伝導体層2のコヒーレンス長と同程度としてもよい。例えば、W2は、30nmから50nm程度とすればよい。図示の場合には、高温超伝導体層の中央部2Cだけを狭窄構造としているが、中央部2Cに接続する両側の高温超伝導体層2A,2Bの幅も狭くして細線構造としてもよい。例えば、高温超伝導体層2全体の幅をW2としてもよい。高温超伝導体層2Cの幅W2は、電流分布が一様である必要がある。一様でない場合には、ジョセフソン磁束が生じてしまい、動作に支障をきたす。そのためには、高温超伝導体層2Cの幅W2はジョセフソン侵入長程度以下でなければならない。ジョセフソン侵入長は臨界電流に反比例するので、温度を変化させることによってジョセフソン接合をこの条件を満たすようにすればよい。
【0016】
高温超伝導体層2における厚さtsの唯一の制約は、超伝導特性が発現するための必要最小限の値以上になっていることである。その具体的値は、超伝導体の材料として何を用いるかに依存する。例えば、後述する実施例の銅酸化物超伝導体の場合、過去の文献では、数nmで比較的良好な超伝導特性が発現している例がある。
【0017】
図1(B)及び(C)に示すように、ジョセフソン接合1の狭窄構造部1Aは、高温超伝導体層2Cが、絶縁性強磁性層3で被覆される領域である。絶縁性強磁性層3のX方向の幅Lは、高温超伝導体層2Cを覆う長さであればよい。例えば、絶縁性強磁性層3の幅Lは、理論的には、超伝導体のコヒーレンス長程度でないとジョセフソン効果は起こらないが、未解明の機構などによりそれより長距離でジョセフソン効果が生起する可能性もある。この場合には、寸法上の制約はなくなる。具体的には、30nmから1000nm程度とすればよい。絶縁性強磁性層3の積層方向の厚さtは、下部にある高温超伝導体層2の超伝導特性を抑制してジョセフソン特性が出現しさえすればよいので、厚くする分には特に寸法上の制約はない。例えば、10nm以上(t>10nm)とすればよい。厚さtが大凡10nm以下では、後述する高温超伝導体層2Cへのバリア作用が果たせなくなるので好ましくない。
【0018】
上記の構造を有する本発明のジョセフソン接合1によれば、高温超伝導体層2Cの上に被覆された絶縁性強磁性層3は磁性体であるので、高温超伝導体層2Cの超伝導を抑制する作用を発揮する。特に高温超伝導体層2Cに対しては、超伝導体(S)から絶縁体(I)への転移を引き起こすので、バリア作用、即ち障壁となる。従って、本発明のジョセフソン接合1は、所謂、SIS型のジョセフソン接合として動作する。絶縁性強磁性層3の寸法、厚み、下部の高温超伝導体層2Cの大きさなどを適宜に設定することで、ジョセフソン接合1における結合の強さを自由自在に制御することが可能である。このジョセフソン接合1は、後述するように、半導体集積回路と同様の加工プロセスが適用できるため、大規模な超伝導集積回路を形成するのに適している。
【0019】
図1においては、高温超伝導体層の狭窄部2Cを絶縁性強磁性層3で被覆する構造を示したが、高温超伝導体層の狭窄部2Cを絶縁性強磁性層3の上に形成して、SIS型のジョセフソン接合1を形成してもよい。
【0020】
次に、本発明による第2の実施形態に係るジョセフソン接合8について説明する。
図2は本発明による第2の実施形態に係るジョセフソン接合8を模式的に説明するもので、それぞれ、(A)は斜視図、(B)は(A)のX−X方向に沿う断面図、(C)は(A)のY−Y方向に沿う断面図である。図2に示すように、ジョセフソン接合8が、図1に示したジョセフソン接合1と異なるのは、超伝導体層2の幅をW2とし、絶縁性強磁性層3を、厚さがtfの導電性強磁性層12とした点にある。他の構成はジョセフソン接合1と同じであるので説明は省略する。
【0021】
本発明の第2の実施形態に係るジョセフソン接合8においては、高温超伝導体層2の上に被覆された導電性強磁性層12が、高温超伝導体層を抑制するように作用する。特に、高温超伝導体層2に対しては、超伝導体から絶縁体への転移を引き起こすので、バリア作用、即ち障壁となるが、強磁性層12は導電性を有しているので、SIS型ではなくSNS型として作用する。従って、本発明の第2の実施形態に係るジョセフソン接合8は、第1の実施形態のジョセフソン接合10とは異なり、SNS型のジョセフソン接合として動作する。
【0022】
図3は本発明による第2の実施形態に係るジョセフソン接合の変形例を模式的に斜視図である。図3に示すように、ジョセフソン接合8Aが、図2に示したジョセフソン接合8と異なるのは、厚さtの導電性強磁性層12の幅W3を高温超伝導体層2の幅W2と同じにした点にある。他の構成はジョセフソン接合8と同じであるので説明は省略する。このジョセフソン接合8Aも第2の実施形態のジョセフソン接合8と同様にSNS型のジョセフソン接合として動作する。ここで、導電性強磁性層12の幅W3はその磁場が高温超伝導体層2に作用する限り、高温超伝導体層2の幅W2よりも狭くしてもよい。
【0023】
次に、本発明による第3の実施形態に係るジョセフソン接合10について説明する。
図4は本発明による第3の実施形態に係るジョセフソン接合10を模式的に説明するもので、それぞれ、(A)は平面図、(B)は(A)のX−X方向に沿う断面図、(C)は(A)のY−Y方向に沿う断面図である。図4に示すように、ジョセフソン接合10が、図1に示したジョセフソン接合1と異なるのは、高温超伝導体層2Cに被覆する強磁性層を導電性強磁性層12とした点と、この導電性強磁性層12と高温超伝導体層2との間に絶縁層14を挿入した点にある。他の構成はジョセフソン接合1と同じであるので説明は省略する。
【0024】
絶縁層14は、導電性強磁性層12と高温超伝導体層2Cとを絶縁するために挿入した層である。この絶縁層14は、トンネル層となる絶縁層ではなく、単に絶縁機能を果たせば何でもよい。絶縁層14の厚さは、例えば10nmとすることができる。このような絶縁膜として、Si3N4膜やSiO2膜を用いることができる。
【0025】
図4においては、高温超伝導体層の狭窄部2Cを、絶縁層14を介して導電性強磁性層12で被覆する構造を示したが、高温超伝導体層2を導電性強磁性層12及び絶縁層14を積層した表面に形成して、SIS型のジョセフソン接合10を形成してもよい。
【0026】
本発明の第3の実施形態に係るジョセフソン接合10においては、高温超伝導体層2Cの上に被覆された導電性強磁性層12が、高温超伝導体層2Cを抑制するように作用する。特に、高温超伝導体層に対しては、超伝導体から絶縁体への転移を引き起こすので、バリア作用、即ち障壁となる。従って、本発明のジョセフソン接合も、第1の実施形態のジョセフソン接合と同様にSIS型のジョセフソン接合として動作する。
【0027】
次に、図5を参照して本発明のジョセフソン接合1,8,8Aの製造方法について説明する。図5(A)〜(C)は、本発明による第1の実施形態に係るジョセフソン接合の製造工程を表すもので、図1(A)のX−X方向に沿う断面図を示している。
最初に、図5(A)に示すように、基板6上に高温超伝導体層2を成膜する。基板6と高温超伝導体層2との間には、図示を省略するが、必要に応じてバッファ層を挿入してもよい。基板としては、酸化マグネシウム(MgO)、サファイア(Al2O3)、LaとAlと酸素とからなるLaAlO3基板、SrとAlと酸素とからなるSrAlO3基板等を用いることができる。
次に、図5(B)に示すように、マスクなどを用いたリソグラフィ工程及びエッチング工程により高温超伝導体層2にジョセフソン接合の所定のパターンを形成する。
そして、図5(C)に示すように、高温超伝導体層2上に、絶縁性強磁性層3を成膜する。次に、絶縁性強磁性層3を、マスクなどを用いたリソグラフィ工程及びエッチング工程により絶縁性強磁性層3を所定のパターンとすることで、ジョセフソン接合1を製造することができる。絶縁性強磁性層3の材料としては、Fe3O4等の各種のフェライトを用いることができる。
ここで、上記の絶縁性強磁性層3を導電性強磁性層12にすれば、ジョセフソン接合8,8Aを製造することができる。絶縁性強磁性層3の材料としては、鉄(Fe),ニッケル(Ni),マンガン(Mn),クロム(Cr)などを用いることができる。
【0028】
従来のSIS型のジョセフソン接合の場合には、超伝導体層、トンネル層となる酸化膜層、超伝導体層、の最低3層の成膜工程が必要であったのに対して、本発明のジョセフソン接合1,8,8Aの製造方法によれば、高温超伝導体層2及び絶縁性強磁性層3の2層を形成することで製造することができる。このため、トンネル層となる酸化膜層の形成が不要となり、工程数を減らすことができる。特に、従来の銅酸化物による高温超伝導体絶縁障壁層を積層する時にせっかく形成された清浄表面が必ず破壊されてしまっていたが、そのような損傷を生じさせないで、ジョセフソン接合1,8,8Aを製造することができる。このように、本発明によるジョセフソン接合1の製造方法の特徴は、従来のトンネル層となる酸化物層の成膜工程を必要としないことである。
本発明の方法によりジョセフソン接合1,8,8Aを製造すれば、ジョセフソン接合1,8,8Aの電気特性の制御性や再現性を飛躍的に向上させることができる。
【0029】
次に、本発明による第4の実施形態に係るジョセフソン接合10の製造方法について説明する。
図6(A)〜(D)は、本発明による第4の実施形態に係るジョセフソン接合10の製造工程を示すもので、図2(A)のX−X方向に沿う断面図を示している。
本発明による第4の実施形態に係るジョセフソン接合10を製造する場合には、上記したジョセフソン接合1の製造方法と同様に、高温超伝導体層2のパターンを形成した後に(図6(A)及び(B)参照)、さらに、図6(C)に示すように、所定の形状の絶縁層14を形成する工程を追加する。次に、図6(D)に示すように、絶縁層14上に、絶縁性強磁性層3の代わりに導電性強磁性層12を所定の形状にして形成すればよい。ここで、導電性強磁性層12として、鉄(Fe),ニッケル(Ni),マンガン(Mn),クロム(Cr)などの材料を用いることができる。
【0030】
本発明のジョセフソン接合10の製造方法によれば、絶縁層14はトンネル層ではなく、導電性強磁性層12と高温超伝導体層2とを絶縁するだけの働きであるので、絶縁層14の形成時に高温超伝導体層2に損傷を与えることが無い。これにより、本発明のジョセフソン接合10の製造方法によれば、ジョセフソン接合10の電気特性の制御性や再現性を飛躍的に向上させることができる。
【0031】
上記の高温超伝導体層2、絶縁性強磁性層3、導電性強磁性層12、絶縁層14の成膜には、スパッタ法、蒸着法、レーザアブレーション法、CVD法、MBE法などの通常の薄膜成膜法を用いることができる。また、所定の形状のパターン形成には、光露光、電子ビーム露光を用いるマスク工程やドライエッチング工程などを用いることができる。
【0032】
次に、本発明のジョセフソン接合1,8,8A,10を用いたジョセフソンデバイスについて説明する。なお、ジョセフソン接合は図1に示す構造として説明する。
図7は、本発明のジョセフソン接合1を用いた超伝導量子干渉素子(以下、適宜SQUIDと呼ぶ)の構造を模式的に示すもので、(A)は斜視図、(B)は(A)のX−X方向に沿う断面図である。図7に示すように、超伝導量子干渉素子20は、超伝導体層2からなる四角形リングの一辺の中央部に絶縁性強磁性層3が被覆されて、ジョセフソン接合1が形成されており、所謂RF−SQUIDとなる。四角形リングにおいて、X−X方向に直交するY−Y方向の両辺の中央部には、電流端子20A,20Bが設けられている。電流端子20A,20Bに電流を流すと、ある閾値を越えたときに超伝導量子干渉素子20にはゼロではない電圧が発生するが、この閾値を臨界電流と称する。臨界電流が磁束の関数となることを利用すると、臨界電流の測定により磁束を高感度で検出することができる。図7においては、ジョセフソン接合1を用いたが、絶縁性強磁性層3の代わりに超伝導体層2上に絶縁層14及び導電性強磁性層12を被覆したジョセフソン接合8,8A,10としてもよい。
【0033】
図8は、本発明のジョセフソン接合1を用いた別の超伝導量子干渉素子の構造を模式的に示し、(A)は斜視図、(B)は(A)のX−X方向に沿う断面図である。
図8に示すように、超伝導量子干渉素子25には、超伝導体層2からなる四角形リングのX−X方向の対向する二辺の中央部に絶縁性強磁性層3が被覆されて、ジョセフソン接合1が2個形成されており、所謂、DC−SQUIDとなる。四角形リングにおいて、X−X方向に直交するY−Y方向の両辺の中央部には、電流端子25A,25Bが設けられている。図8においては、ジョセフソン接合1を用いたがジョセフソン接合8,8A,10としてもよい。DC−SQUIDにおいても臨界電流の測定により磁束を高感度で検出することができる。
【0034】
本発明のジョセフソン接合1,8,8A,10を用いた単一磁束量子デバイスについて説明する。
図9は、本発明のジョセフソン接合1を用いた単一磁束量子デバイスの構造を模式的に示し、(A)は部分斜視図、(B)は(A)のX−X方向に沿う断面図である。図9に示すように、単一磁束量子デバイス30においては、接地体となる層31及びこの接地体層の表面上に形成される絶縁層32上に、超伝導体層33からなる四角形リングが形成され、この一辺の中央部に絶縁性強磁性層34が被覆されてジョセフソン接合1が形成され、図7で示すRF−SQUIDが構成されている。超伝導体層33の図示する一端部33Aは接地体層31と接続されている。他端部33Bは、図示しない他のRF−SQUIDと超伝導体層からなる配線層で連結接続されている。
【0035】
このように、単一磁束量子デバイス30においては、多数のRF−SQUIDが集積されて、単一磁束量子デバイス30による集積回路、即ちSFQ回路を構成することができる。RF−SQUIDにおいては、量子化された磁束が1個のときと0のときとを、それぞれ、情報の1と0に対応させて論理演算を行なう。図9に示す単一磁束量子デバイス30のRF−SQUIDにおいては、ジョセフソン接合1を用いたが、絶縁性強磁性層3の代わりに超伝導体層2上に絶縁層14及び導電性強磁性層12を被覆したジョセフソン接合8,8A,10としてもよい。単一磁束量子デバイス30は、RF−SQUIDの代わりにジョセフソン接合1を2個用いたDC−SQUIDとしてもよい。
【0036】
本発明のジョセフソン接合1,8,8A,10を用いた単一磁束量子デバイスによれば、集積回路の作製も可能になり、半導体CMOSデバイスのパフォーマンスを上回る、超高速で超省電力の集積回路を実現することができる。
【0037】
本発明のジョセフソン接合1,8,8A,10を用いたアレイについて説明する。図10〜13はジョセフソン接合1を用いたアレイの構造を模式的に示す平面図である。図10に示すように、ジョセフソン接合1を用いたアレイ40においては、超伝導体層が多角形からなる領域41及び狭窄部42が連結し、X−Y方向に格子状に配列されている。格子の交点となる狭窄部42が絶縁性強磁性層43で被覆され、ジョセフソン接合1を形成している。したがって、格子の各交点に、多数のジョセフソン接合1が配置されてアレイを構成している。
【0038】
図11に示すジョセフソン接合1を用いたアレイ45の場合には、線状の超伝導体層46がX方向に列状に配置され、線状の超伝導体層46を連結する超伝導体層の狭窄部47がY方向に所定の間隔で配置され、X−Y方向に格子状に配列されている。格子の交点となる狭窄部46が絶縁性強磁性層43で被覆され、ジョセフソン接合1を形成している。したがって、格子の各交点に、多数のジョセフソン接合1が配置されてアレイを構成している。
【0039】
図12及び図13に示すジョセフソン接合1を用いたアレイ50では、超伝導体層の構造は図11のアレイ45と同様であり、狭窄部47が線状の絶縁性強磁性層53で被覆されている点が異なる。図12のアレイでは、絶縁性強磁性層53の幅W1を狭窄部47よりも狭くしている。図13のアレイでは、絶縁性強磁性層53の幅W2を狭窄部47よりも広くしている。
上記アレイ40,45,50,55においてはジョセフソン接合1を用いたが、絶縁性強磁性層43,53,57の代わりに超伝導体層41,46上に絶縁層14及び導電性強磁性層12を被覆したジョセフソン接合8,8A,10としてもよい。
【0040】
本発明のジョセフソン接合1を用いたアレイ40,45,50,55によれば、ミリ波から遠赤外までの広ダイナミックレンジのフォトンジェネレータ及びディテクタとして利用することができる。
【0041】
なお、本発明において、ジョセフソンデバイスとは、ジョセフソン接合単体によるミリ波から遠赤外までの広ダイナミックレンジのフォトンジェネレータ及びディテクタ、ジョセフソン接合を用いた超伝導量子干渉素子、ジョセフソン接合を用いたSFQ回路などの各種集積回路などを含む概念で用いている。
【0042】
上記製造方法で述べたように、本発明のジョセフソン接合1,8,8A,10はその構造が簡単で製造も容易である。従って、ジョセフソン接合1,8,8A,10を複数用いるアレイや集積回路を歩留まりよく製造することができる。製造方法が簡単であるので、アレイや集積回路を構成する各ジョセフソン接合1,8,8A,10の電気特性のばらつきを無くすことができる。このため、各ジョセフソン接合1,8,8A,10のIcRN積を揃えて製造することができる。
【実施例】
【0043】
以下、本発明によるジョセフソン接合の実施例について詳細に説明する。
図14(A)〜(K)は、実施例のジョセフソン接合8を製作する際の製作工程を模式的に示す断面図である。
図14(A)に示すように、LaSrAlO4(LSAO)基板6上に、後述するパルスレーザを用いたアブレーション法(PLD法)によって膜厚が約40〜80nmのLa2−xSrxCuO4からなる超伝導体層2を堆積し、図14(B)に示すようにLa2−xSrxCuO4超伝導体層上にポジ型の電子ビーム露光用レジスト61(Shipley社製、型番1813)を塗布し、図14(C)に示すように電子ビーム露光62を行ない、現像を行なうことによって強磁性層12が配置されるべき領域が開口されたレジストパターン63を形成した(図14(D)参照)。
【0044】
図14(E)に示すようにレジストパターン63を形成した基板6の表面全面に強磁性層12となる鉄を、厚さが50〜150nmとなるように抵抗加熱による蒸着法(真空度は約4×10−6Torr)により堆積し、レジストパターン63をエッチングで除去する、所謂リフトオフ工程により余分な強磁性層が除去されて強磁性層12のパターンが超伝導体層2上に形成される(図14(F)参照)。
【0045】
以下の工程は余分な超伝導体層2をエッチングにより除去する工程である。
図14(G)に示すように電子ビーム露光用レジスト61が塗布され、図14(H)に示すように電子ビーム露光用レジスト61が露光され、図14(I)に示すように電子ビーム露光用レジストが現像されて超伝導体層2をエッチングするパターン65が形成される。次に、図14(J)に示すようにエッチングパターン65をマスクとして余分な超伝導体層がエッチングされ、最後にエッチングパターンとして用いた電子ビーム露光用レジスト65を除去して実施例のジョセフソン接合を製作した。なお、上記ジョセフソン接合8の作製で用いたパターンには、ジョセフソン接合8の電気抵抗特性評価のための四端子法パターン等も含んでいる。
【0046】
図15はパルスレーザアブレーション法に用いた装置を示す模式図である。図15に示すように、パルスレーザアブレーション装置70は、真空容器71と、真空容器71内部に配置される超伝導体材料を含むターゲット72及び基板73を保持する基板保持部74と、真空計75と、真空容器71の排気部76と、真空容器71への酸素ガス導入部77と、真空容器71の外部に配置されるパルスレーザ78と、を主要部として備えている。パルスレーザ78からの光は、レンズ79を介して真空容器71に設けられた石英ガラスなどからなる窓部71Aからターゲット72に照射される。ターゲット72を回転させるターゲット回転部81をさらに備えていてもよい。
【0047】
パルスレーザアブレーション装置70は、基板保持部74に基板73が載置され、所定の真空度に到達した後に、パルスレーザ78がターゲット72に照射されると共に、超伝導体層の原料となる酸素ガスも供給される。パルスレーザ78の加熱によりターゲット72から蒸発した材料及び酸素により基板73上に超伝導体層が堆積する。パルスレーザ78としては、波長が248nmのKrFエキシマレーザを用いた。
【0048】
上記のパルスレーザアブレーション装置70で、La2−xSrxCuO4の組成xの異なる膜を得た。xが0.15及び0.2の超伝導体層の結晶特性及び超伝導特性について説明する。
図16は、実施例においてパルスレーザアブレーション法で堆積したLa2−xSrxCuO4膜のX線回折パターンを示す図であり、(A)がSrの組成xが0.15の場合を、(B)がSrの組成が0.2の場合を示している。図16の縦軸は回折X線強度(任意目盛り)を示し、横軸は角度2θ(°)、すなわちX線の原子面への入射角θの2倍に相当する角度である。
図16から明らかなように、作製したLa2−xSrxCuO4(x=0.15及び0.2)、つまり、La1.85Sr0.15CuO4(図16(A)参照)及びLa1.8Sr0.2CuO4(図16(B)参照)においては、何れも回折X線強度の鋭いピークが観測され、結晶性の良好な超伝導体の相が得られていることが分かった。
【0049】
図17は、実施例において、パルスレーザアブレーション法で堆積したLa2−xSrxCuO4(x=0.15及び0.2)膜の抵抗率の温度依存性を調べた結果を示す図である。図17の縦軸は抵抗率(mΩ・cm)であり、横軸は絶対温度(K)である。
図17から明らかなように、組成xが0.15のLa1.85Sr0.15CuO4からなる超伝導体層の臨界温度は約30Kであり、組成xが0.2のLa1.8Sr0.2CuO4からなる超伝導体層の臨界温度は約25Kであることが分かった。
【0050】
(比較例)
実施例に対する比較例として、強磁性層を設けないものを製作し、これ以外は実施例と同様にして製作した。この比較例は、超伝導体層の細線から構成されている。
【0051】
図18は、(A)が実施例のジョセフソン接合を観察した走査電子顕微鏡像を示す図であり、(B)が(A)の説明図である。電子線の加速電圧は15kVであり、倍率は2万3千倍である。図18から明らかように、超伝導体層2の幅が2μmであり、超伝導体層2上に形成された導電性強磁性層12の幅が400nm(0.4μm)であることが分かる。
【0052】
実施例で作製したジョセフソン接合8の電気的特性について説明する。製作したジョセフソン接合8の電気抵抗特性は、直流四端子法を用いて測定した。以下の測定は全て液体ヘリウムクライオスタット中で行った。
図19は、実施例のジョセフソン接合8における電気抵抗の温度依存性を測定した結果を示す図である。図19の縦軸は抵抗(Ω)、横軸は絶対温度(K)であり、比較例も併せて示している。超伝導体層2は、La1.85Sr0.15CuO4を用いた。
図19から明らかなように、比較例の超伝導体層が29.7Kで零となるのに対して、実施例のジョセフソン接合8の電気抵抗は27.7Kで零となり、超伝導が生じる温度、すなわち、臨界温度が低下したことが分かった。これは、実施例のジョセフソン接合8が導電性強磁性層12を備えていることにより、導電性強磁性層12の下部にある超伝導体層2の臨界温度が低下することに起因している。
【0053】
図20は、実施例のジョセフソン接合8に流れる電流の温度依存性を測定した結果を示す図である。図20の縦軸は電流(μA)、横軸は絶対温度(K)である。図20から明らかなように、実施例のジョセフソン接合8に流れる臨界電流は、温度の低下と共に直線的に増加し、低温では一定値に漸近するというジョセフソン接合特有の性質を示していることが分かった。
【0054】
実施例のジョセフソン接合8が真のジョセフソン接合であることをさらに明確に検証するために、外部からマイクロ波を照射してその直流の電圧電流特性を測定した。マイクロ波は同軸ケーブルを用いて、液体ヘリウムクライオスタット内のジョセフソン接合の極く近傍まで導入して照射した。照射電力は1mW(0dBm)であり、測定温度は8.7Kである。
図21は、実施例のジョセフソン接合8において10GHzのマイクロ波を照射したときの電流電圧特性及び微分抵抗を測定した結果を示す図である。図21の横軸はジョセフソン接合への印加電圧(V)であり、右縦軸が電流(μA)を、左縦軸が微分抵抗(dV/dI、任意目盛り)を示している。図21から明らかなように、実施例のジョセフソン接合8に流れる電流は、その微分抵抗においてなだらかなキンクが20μVおきに観察された。
【0055】
ジョセフソン接合が示す干渉効果であるシャッピーロ・ステップは、下記式(1)で表わされる。
V=hf/(2e)=Φf (1)
ここで、Vはシャッピーロ・ステップの間隔電圧(V)、hはプランク定数(6.626×10−34J・s)、eは電子の単位電荷(1.602×10−19C)、Φ(=h/(2e))は磁束量子である。10GHzのマイクロ波を照射したときのシャッピーロ・ステップの間隔は、式(1)から20μVと計算される。したがって、実施例で観察されたキンクのステップ間隔は、式(1)を満足し、ジョセフソン接合8が示す干渉効果であるシャッピーロ・ステップが観察されていることが判明した。
【0056】
上記実施例において、超伝導体層2の一部に強磁性層を配置するという所謂ブリッジ構造のジョセフソン接合が簡単な製造工程で実現できることが分かった。
【0057】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々の変形が可能である。例えば、強磁性層3,12や超伝導体層2の寸法は所望のIcRN積が得られるように適宜設計することができ、それらも本発明の範囲内に含まれることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明による第1の実施形態に係るジョセフソン接合を模式的に説明するもので、それぞれ、(A)が平面図、(B)が(A)のX−X方向に沿う断面図、(C)が(A)のY−Y方向に沿う断面図を示す図である。
【図2】本発明による第2の実施形態に係るジョセフソン接合を模式的に説明するもので、それぞれ、(A)が斜視図、(B)が(A)のX−X方向に沿う断面図、(C)が(A)のY−Y方向に沿う断面図である。
【図3】本発明による第2の実施形態に係るジョセフソン接合の変形例を模式的に示す斜視図である。
【図4】本発明による第2の実施形態に係るジョセフソン接合を模式的に説明するもので、それぞれ、(A)が平面図、(B)が(A)のX−X方向に沿う断面図、(C)が(A)のY−Y方向に沿う断面図を示す図である。
【図5】(A)〜(C)は、本発明による第1の実施形態に係るジョセフソン接合の製造工程を示す図である。
【図6】(A)〜(D)は、本発明による第2の実施形態に係るジョセフソン接合の製造工程を示す図である。
【図7】本発明のジョセフソン接合を用いた超伝導量子干渉素子(SQUID)の構造を模式的に示すもので、(A)は斜視図、(B)は(A)のX−X方向に沿う断面図である。
【図8】本発明のジョセフソン接合を用いた別の超伝導量子干渉素子の構造を模式的に示すもので、(A)は斜視図、(B)は(A)のX−X方向に沿う断面図である。
【図9】本発明のジョセフソン接合を用いた単一磁束量子デバイスの構造を模式的に示すもので、(A)は部分斜視図、(B)は(A)のX−X方向に沿う断面図である。
【図10】ジョセフソン接合を用いたアレイの構造の一例を模式的に示す平面図である。
【図11】ジョセフソン接合を用いたアレイの構造の他の例を模式的に示す平面図である。
【図12】ジョセフソン接合を用いたアレイの構造の他の例を模式的に示す平面図である。
【図13】ジョセフソン接合を用いたアレイの構造のさらに他の例を模式的に示す平面図である。
【図14】実施例のジョセフソン接合を製作する際の製作工程を模式的に示す断面図である。
【図15】パルスレーザアブレーション法に用いた装置を示す模式図である。
【図16】実施例においてパルスレーザアブレーション法で堆積したLa2−xSrxCuO4膜のX線回折パターンを示す図であり、(A)がSrの組成xが0.15の場合を、(B)がSrの組成が0.2の場合を示している。
【図17】実施例において、パルスレーザアブレーション法で堆積したLa2−xSrxCuO4(x=0.15及び0.2)膜の抵抗率の温度依存性を調べた結果を示す図である。
【図18】(A)は実施例のジョセフソン接合を観察した走査電子顕微鏡像を示す図であり、(B)は(A)の説明図である。
【図19】実施例のジョセフソン接合における電気抵抗の温度依存性を測定した結果を示す図である。
【図20】実施例のジョセフソン接合に流れる電流の温度依存性を測定した結果を示す図である。
【図21】実施例のジョセフソン接合において、10GHzのマイクロ波を照射したときの電流電圧特性及び微分抵抗を測定した結果を示す図である。
【符号の説明】
【0059】
1,8,8A,10:ジョセフソン接合
2,33,41,46:超伝導体層(高温超伝導体層)
2A,2B:電極
2C,42,47:狭窄部
3,34,43,53,57:絶縁性強磁性層
6:基板
12,64:導電性強磁性層
14:絶縁層
20:超伝導量子干渉素子(RF−SQUID)
20A,20B:電流端子
25:超伝導量子干渉素子(DC−SQUID)
25A,25B:電流端子
30:単一磁束量子デバイス
31:接地体層
32:絶縁層
33A,33B:端部
40,45,55,60:ジョセフソン接合を用いたアレイ
61:電子ビーム露光用レジスト
62:電子ビーム露光
63,65:レジストパターン
70:パルスレーザアブレーション装置
71:真空容器
71A:窓部
72:ターゲット
73:基板
74:基板保持部
75:真空計
76:排気部
77:酸素ガス導入部
78:パルスレーザ
79:レンズ
81:ターゲット回転部
【技術分野】
【0001】
本発明は超伝導体、特に高温超伝導体を用いた新規なジョセフソン接合及びジョセフソンデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、超伝導トンネル接合、すなわちジョセフソン接合として、酸化膜(I)の両側に超伝導体層(S)を挟み込んだSIS型ジョセフソン接合を作製する場合、超伝導体層と絶縁バリア層と超伝導体層との3層を順に積層するために、最低でも3回の成膜工程が必要であった(例えば、非特許文献1参照)。超伝導トンネル接合の特性は、いわゆるIcRN積によって特徴づけられ、この値が大きいほど良好な接合となる。
【0003】
単一磁束量子デバイス(Single Flux Quantum Device、以下、適宜にSFQ素子と称する。)は、ジョセフソン接合を用いた論理回路である(非特許文献2参照)。このSFQ素子においては、磁束量子一本がジョセフソン接合を横切るときに発生するパルス状の電圧を利用して論理回路を構成する。この場合のスイッチング速度は、IcRN積に逆比例する。従って、IcRN積が大きい程、高速で動作する。IcRN積は、大凡、ジョセフソン接合に用いる超伝導体の臨界温度(Tc)に比例して大きくなる。
【0004】
【非特許文献1】Gomez Espinoza Luis Beltran、博士号学位論文、米国、Cincinnati大学、2003年5月30日提出
【非特許文献2】萬 伸一、「単一磁束量子デバイス」、固体物理、第40巻、No.10,p.807、2005年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
高温超伝導体層を用いたジョセフソン接合によれば、そのTcが従来のNbなどの超伝導体よりも大きいので、IcRN積が大きくなることが予測されている。しかしながら、現状の高温超伝導体においては、IcRN積が理論的に期待される値の10%程度の値をもつジョセフソン接合しか得られず、IcRN積が高くできないという課題がある。
【0006】
特に、高温超伝導体においては、絶縁バリア層作製の制御性や再現性を高めることが非常に困難であるために、良質の超伝導SIS型トンネル接合の作製ができていないという課題がある。
【0007】
本発明は上記課題に鑑み、超伝導体、特に高温超伝導体によるSIS型ジョセフソン接合において、良好な絶縁バリア層が得られないという技術的困難を克服するために、絶縁バリア層の形成を不要とする新規なジョセフソン接合及びジョセフソン接合デバイスを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明のジョセフソン接合は、超伝導体層と超伝導体層の中央部上に積層される強磁性層とを備えることを特徴とする。
上記構成において、強磁性層は導電性強磁性層又は絶縁性強磁性層の何れかからなっていてよい。
本発明のジョセフソン接合は、超伝導体層と超伝導体層の中央部上に絶縁層を介して積層される導電性強磁性層とを備えることを特徴とする。
上記構成において、超伝導体層の中央部の幅は、好ましくは超伝導体層のコヒーレント長と同程度である。
超伝導体層の中央部及び中央部の両側の超伝導体層の幅は、好ましくは超伝導体層のコヒーレント長と同程度の細線からなる。
【0009】
上記構成によれば、超伝導体層の中央部上に被覆された強磁性層、又は、絶縁層を介して積層される導電性強磁性層は、磁性体であるので、超伝導を抑制する働きがあり、超伝導体層を抑制する作用を発揮する。特に高温超伝導体層に対しては、超伝導体(以下、適宜Sとも呼ぶ)から絶縁体(以下、適宜Iとも呼ぶ)への転移を引き起こすので、バリア作用、即ち障壁となる。従って、本発明のジョセフソン接合は、所謂SIS型又はSNS型(Super-Normal-Super)のジョセフソン接合として動作する。
本発明のジョセフソン接合は、従来のSIS型又はSNS型ジョセフソン接合よりも構造が簡単である。このため、その製造に必要なプロセス数を従来のSIS型又はSNS型ジョセフソン接合よりも減らすことができる。
従って、本発明のジョセフソン接合は、高温超伝導体を用いたSIS型ジョセフソン接合で深刻な問題になっていた絶縁バリア層の作製というプロセスを使用しないので、電気特性の再現性及び制御性を飛躍的に改善することができる。これにより、高温超伝導体を用いたジョセフソン接合のIcRN積を大きくすることが可能になる。
【0010】
本発明のジョセフソン接合を用いたジョセフソンデバイスは、超伝導体層と超伝導体層の中央部上に積層される強磁性層とを備えることを特徴とする。
上記構成において、強磁性層は導電性強磁性層又は絶縁性強磁性層の何れかでなっていてよい。
本発明のジョセフソン接合を用いたジョセフソンデバイスは、超伝導体層と超伝導体層の中央部上に絶縁層を介して積層される導電性強磁性層とを備えることを特徴とする。
【0011】
上記構成によれば、超伝導体層の中央部に、強磁性層又は絶縁層を介して積層される導電性強磁性層により障壁が形成され、SIS型ジョセフソン接合を用いたジョセフソンデバイスが得られる。このジョセフソン接合は構造が簡単で、従来のトンネル酸化膜を必要としない。このため、高温超伝導体層を用いた場合には、ジョセフソン接合のIcRN積を大きくすることができるので、ジョセフソン接合が高速で動作する。本発明のジョセフソンデバイスは、構造が簡単であることから集積化が容易であり、ジョセフソン接合を用いた各種のジョセフソンデバイスの性能を向上させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、強磁性層からなるバリア層を用いた、新規なSIS型ジョセフソン接合及びジョセフソンデバイスを提供することができる。このジョセフソン接合によれば、特にTcの大きい高温超伝導体層によるSIS型ジョセフソン接合において大きなIcRN積を得ることが可能である。このジョセフソン接合を用いたジョセフソンデバイスによれば、各ジョセフソン接合のIcRN積が大きいので、高速の論理回路を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。各図において同一又は対応する部材には同一符号を用いる。
最初に、本発明による第1の実施形態に係るジョセフソン接合について説明する。図1は、本発明による第1の実施形態に係るジョセフソン接合1を模式的に説明するもので、それぞれ、(A)は平面図、(B)は(A)のX−X方向に沿う断面図、(C)は(A)のY−Y方向に沿う断面図である。
図1(A)に示すように、本発明による第1の実施形態に係るジョセフソン接合1は、基板6上に形成された超伝導体からなる薄層(以下、超伝導体層と呼ぶ)2上の狭窄部2Cに、絶縁性の強磁性層3(以下、絶縁性強磁性層と呼ぶ)が被覆された構造を有している。
ここで、超伝導体層2を構成する超伝導体としては、ニオブ、窒化ニオブ、アルミニウム、鉛や銅酸化物超伝導体などの高温超伝導体などからなる材料を使用することができ、超伝導体であればその種類を問わない。銅酸化物超伝導体としては、La,Sr,Cu及びOからなる化合物(LSCO)、Y,Ba,Cu及びOからなる化合物(YBCO)、Bi,Sr,Ca,Cu及びOからなる化合物(BSCCO)などが挙げられる。特に、Tcの大きい高温超伝導体層を用いれば、ジョセフソン接合のIcRN積を大きくすることができる。以下の説明においては、超伝導体層2は高温超伝導体層として説明する。
【0014】
この絶縁性強磁性層3が被覆される高温超伝導体層2Cの幅W2は、その両側の電極となる高温超伝導体層2A,2Bの幅W1よりも狭くした狭窄構造、所謂、ブリッジ構造としている。
【0015】
高温超伝導体層2Cの幅W2は、5μm程度までとしてもよいが、高温超伝導体層2のコヒーレンス長と同程度としてもよい。例えば、W2は、30nmから50nm程度とすればよい。図示の場合には、高温超伝導体層の中央部2Cだけを狭窄構造としているが、中央部2Cに接続する両側の高温超伝導体層2A,2Bの幅も狭くして細線構造としてもよい。例えば、高温超伝導体層2全体の幅をW2としてもよい。高温超伝導体層2Cの幅W2は、電流分布が一様である必要がある。一様でない場合には、ジョセフソン磁束が生じてしまい、動作に支障をきたす。そのためには、高温超伝導体層2Cの幅W2はジョセフソン侵入長程度以下でなければならない。ジョセフソン侵入長は臨界電流に反比例するので、温度を変化させることによってジョセフソン接合をこの条件を満たすようにすればよい。
【0016】
高温超伝導体層2における厚さtsの唯一の制約は、超伝導特性が発現するための必要最小限の値以上になっていることである。その具体的値は、超伝導体の材料として何を用いるかに依存する。例えば、後述する実施例の銅酸化物超伝導体の場合、過去の文献では、数nmで比較的良好な超伝導特性が発現している例がある。
【0017】
図1(B)及び(C)に示すように、ジョセフソン接合1の狭窄構造部1Aは、高温超伝導体層2Cが、絶縁性強磁性層3で被覆される領域である。絶縁性強磁性層3のX方向の幅Lは、高温超伝導体層2Cを覆う長さであればよい。例えば、絶縁性強磁性層3の幅Lは、理論的には、超伝導体のコヒーレンス長程度でないとジョセフソン効果は起こらないが、未解明の機構などによりそれより長距離でジョセフソン効果が生起する可能性もある。この場合には、寸法上の制約はなくなる。具体的には、30nmから1000nm程度とすればよい。絶縁性強磁性層3の積層方向の厚さtは、下部にある高温超伝導体層2の超伝導特性を抑制してジョセフソン特性が出現しさえすればよいので、厚くする分には特に寸法上の制約はない。例えば、10nm以上(t>10nm)とすればよい。厚さtが大凡10nm以下では、後述する高温超伝導体層2Cへのバリア作用が果たせなくなるので好ましくない。
【0018】
上記の構造を有する本発明のジョセフソン接合1によれば、高温超伝導体層2Cの上に被覆された絶縁性強磁性層3は磁性体であるので、高温超伝導体層2Cの超伝導を抑制する作用を発揮する。特に高温超伝導体層2Cに対しては、超伝導体(S)から絶縁体(I)への転移を引き起こすので、バリア作用、即ち障壁となる。従って、本発明のジョセフソン接合1は、所謂、SIS型のジョセフソン接合として動作する。絶縁性強磁性層3の寸法、厚み、下部の高温超伝導体層2Cの大きさなどを適宜に設定することで、ジョセフソン接合1における結合の強さを自由自在に制御することが可能である。このジョセフソン接合1は、後述するように、半導体集積回路と同様の加工プロセスが適用できるため、大規模な超伝導集積回路を形成するのに適している。
【0019】
図1においては、高温超伝導体層の狭窄部2Cを絶縁性強磁性層3で被覆する構造を示したが、高温超伝導体層の狭窄部2Cを絶縁性強磁性層3の上に形成して、SIS型のジョセフソン接合1を形成してもよい。
【0020】
次に、本発明による第2の実施形態に係るジョセフソン接合8について説明する。
図2は本発明による第2の実施形態に係るジョセフソン接合8を模式的に説明するもので、それぞれ、(A)は斜視図、(B)は(A)のX−X方向に沿う断面図、(C)は(A)のY−Y方向に沿う断面図である。図2に示すように、ジョセフソン接合8が、図1に示したジョセフソン接合1と異なるのは、超伝導体層2の幅をW2とし、絶縁性強磁性層3を、厚さがtfの導電性強磁性層12とした点にある。他の構成はジョセフソン接合1と同じであるので説明は省略する。
【0021】
本発明の第2の実施形態に係るジョセフソン接合8においては、高温超伝導体層2の上に被覆された導電性強磁性層12が、高温超伝導体層を抑制するように作用する。特に、高温超伝導体層2に対しては、超伝導体から絶縁体への転移を引き起こすので、バリア作用、即ち障壁となるが、強磁性層12は導電性を有しているので、SIS型ではなくSNS型として作用する。従って、本発明の第2の実施形態に係るジョセフソン接合8は、第1の実施形態のジョセフソン接合10とは異なり、SNS型のジョセフソン接合として動作する。
【0022】
図3は本発明による第2の実施形態に係るジョセフソン接合の変形例を模式的に斜視図である。図3に示すように、ジョセフソン接合8Aが、図2に示したジョセフソン接合8と異なるのは、厚さtの導電性強磁性層12の幅W3を高温超伝導体層2の幅W2と同じにした点にある。他の構成はジョセフソン接合8と同じであるので説明は省略する。このジョセフソン接合8Aも第2の実施形態のジョセフソン接合8と同様にSNS型のジョセフソン接合として動作する。ここで、導電性強磁性層12の幅W3はその磁場が高温超伝導体層2に作用する限り、高温超伝導体層2の幅W2よりも狭くしてもよい。
【0023】
次に、本発明による第3の実施形態に係るジョセフソン接合10について説明する。
図4は本発明による第3の実施形態に係るジョセフソン接合10を模式的に説明するもので、それぞれ、(A)は平面図、(B)は(A)のX−X方向に沿う断面図、(C)は(A)のY−Y方向に沿う断面図である。図4に示すように、ジョセフソン接合10が、図1に示したジョセフソン接合1と異なるのは、高温超伝導体層2Cに被覆する強磁性層を導電性強磁性層12とした点と、この導電性強磁性層12と高温超伝導体層2との間に絶縁層14を挿入した点にある。他の構成はジョセフソン接合1と同じであるので説明は省略する。
【0024】
絶縁層14は、導電性強磁性層12と高温超伝導体層2Cとを絶縁するために挿入した層である。この絶縁層14は、トンネル層となる絶縁層ではなく、単に絶縁機能を果たせば何でもよい。絶縁層14の厚さは、例えば10nmとすることができる。このような絶縁膜として、Si3N4膜やSiO2膜を用いることができる。
【0025】
図4においては、高温超伝導体層の狭窄部2Cを、絶縁層14を介して導電性強磁性層12で被覆する構造を示したが、高温超伝導体層2を導電性強磁性層12及び絶縁層14を積層した表面に形成して、SIS型のジョセフソン接合10を形成してもよい。
【0026】
本発明の第3の実施形態に係るジョセフソン接合10においては、高温超伝導体層2Cの上に被覆された導電性強磁性層12が、高温超伝導体層2Cを抑制するように作用する。特に、高温超伝導体層に対しては、超伝導体から絶縁体への転移を引き起こすので、バリア作用、即ち障壁となる。従って、本発明のジョセフソン接合も、第1の実施形態のジョセフソン接合と同様にSIS型のジョセフソン接合として動作する。
【0027】
次に、図5を参照して本発明のジョセフソン接合1,8,8Aの製造方法について説明する。図5(A)〜(C)は、本発明による第1の実施形態に係るジョセフソン接合の製造工程を表すもので、図1(A)のX−X方向に沿う断面図を示している。
最初に、図5(A)に示すように、基板6上に高温超伝導体層2を成膜する。基板6と高温超伝導体層2との間には、図示を省略するが、必要に応じてバッファ層を挿入してもよい。基板としては、酸化マグネシウム(MgO)、サファイア(Al2O3)、LaとAlと酸素とからなるLaAlO3基板、SrとAlと酸素とからなるSrAlO3基板等を用いることができる。
次に、図5(B)に示すように、マスクなどを用いたリソグラフィ工程及びエッチング工程により高温超伝導体層2にジョセフソン接合の所定のパターンを形成する。
そして、図5(C)に示すように、高温超伝導体層2上に、絶縁性強磁性層3を成膜する。次に、絶縁性強磁性層3を、マスクなどを用いたリソグラフィ工程及びエッチング工程により絶縁性強磁性層3を所定のパターンとすることで、ジョセフソン接合1を製造することができる。絶縁性強磁性層3の材料としては、Fe3O4等の各種のフェライトを用いることができる。
ここで、上記の絶縁性強磁性層3を導電性強磁性層12にすれば、ジョセフソン接合8,8Aを製造することができる。絶縁性強磁性層3の材料としては、鉄(Fe),ニッケル(Ni),マンガン(Mn),クロム(Cr)などを用いることができる。
【0028】
従来のSIS型のジョセフソン接合の場合には、超伝導体層、トンネル層となる酸化膜層、超伝導体層、の最低3層の成膜工程が必要であったのに対して、本発明のジョセフソン接合1,8,8Aの製造方法によれば、高温超伝導体層2及び絶縁性強磁性層3の2層を形成することで製造することができる。このため、トンネル層となる酸化膜層の形成が不要となり、工程数を減らすことができる。特に、従来の銅酸化物による高温超伝導体絶縁障壁層を積層する時にせっかく形成された清浄表面が必ず破壊されてしまっていたが、そのような損傷を生じさせないで、ジョセフソン接合1,8,8Aを製造することができる。このように、本発明によるジョセフソン接合1の製造方法の特徴は、従来のトンネル層となる酸化物層の成膜工程を必要としないことである。
本発明の方法によりジョセフソン接合1,8,8Aを製造すれば、ジョセフソン接合1,8,8Aの電気特性の制御性や再現性を飛躍的に向上させることができる。
【0029】
次に、本発明による第4の実施形態に係るジョセフソン接合10の製造方法について説明する。
図6(A)〜(D)は、本発明による第4の実施形態に係るジョセフソン接合10の製造工程を示すもので、図2(A)のX−X方向に沿う断面図を示している。
本発明による第4の実施形態に係るジョセフソン接合10を製造する場合には、上記したジョセフソン接合1の製造方法と同様に、高温超伝導体層2のパターンを形成した後に(図6(A)及び(B)参照)、さらに、図6(C)に示すように、所定の形状の絶縁層14を形成する工程を追加する。次に、図6(D)に示すように、絶縁層14上に、絶縁性強磁性層3の代わりに導電性強磁性層12を所定の形状にして形成すればよい。ここで、導電性強磁性層12として、鉄(Fe),ニッケル(Ni),マンガン(Mn),クロム(Cr)などの材料を用いることができる。
【0030】
本発明のジョセフソン接合10の製造方法によれば、絶縁層14はトンネル層ではなく、導電性強磁性層12と高温超伝導体層2とを絶縁するだけの働きであるので、絶縁層14の形成時に高温超伝導体層2に損傷を与えることが無い。これにより、本発明のジョセフソン接合10の製造方法によれば、ジョセフソン接合10の電気特性の制御性や再現性を飛躍的に向上させることができる。
【0031】
上記の高温超伝導体層2、絶縁性強磁性層3、導電性強磁性層12、絶縁層14の成膜には、スパッタ法、蒸着法、レーザアブレーション法、CVD法、MBE法などの通常の薄膜成膜法を用いることができる。また、所定の形状のパターン形成には、光露光、電子ビーム露光を用いるマスク工程やドライエッチング工程などを用いることができる。
【0032】
次に、本発明のジョセフソン接合1,8,8A,10を用いたジョセフソンデバイスについて説明する。なお、ジョセフソン接合は図1に示す構造として説明する。
図7は、本発明のジョセフソン接合1を用いた超伝導量子干渉素子(以下、適宜SQUIDと呼ぶ)の構造を模式的に示すもので、(A)は斜視図、(B)は(A)のX−X方向に沿う断面図である。図7に示すように、超伝導量子干渉素子20は、超伝導体層2からなる四角形リングの一辺の中央部に絶縁性強磁性層3が被覆されて、ジョセフソン接合1が形成されており、所謂RF−SQUIDとなる。四角形リングにおいて、X−X方向に直交するY−Y方向の両辺の中央部には、電流端子20A,20Bが設けられている。電流端子20A,20Bに電流を流すと、ある閾値を越えたときに超伝導量子干渉素子20にはゼロではない電圧が発生するが、この閾値を臨界電流と称する。臨界電流が磁束の関数となることを利用すると、臨界電流の測定により磁束を高感度で検出することができる。図7においては、ジョセフソン接合1を用いたが、絶縁性強磁性層3の代わりに超伝導体層2上に絶縁層14及び導電性強磁性層12を被覆したジョセフソン接合8,8A,10としてもよい。
【0033】
図8は、本発明のジョセフソン接合1を用いた別の超伝導量子干渉素子の構造を模式的に示し、(A)は斜視図、(B)は(A)のX−X方向に沿う断面図である。
図8に示すように、超伝導量子干渉素子25には、超伝導体層2からなる四角形リングのX−X方向の対向する二辺の中央部に絶縁性強磁性層3が被覆されて、ジョセフソン接合1が2個形成されており、所謂、DC−SQUIDとなる。四角形リングにおいて、X−X方向に直交するY−Y方向の両辺の中央部には、電流端子25A,25Bが設けられている。図8においては、ジョセフソン接合1を用いたがジョセフソン接合8,8A,10としてもよい。DC−SQUIDにおいても臨界電流の測定により磁束を高感度で検出することができる。
【0034】
本発明のジョセフソン接合1,8,8A,10を用いた単一磁束量子デバイスについて説明する。
図9は、本発明のジョセフソン接合1を用いた単一磁束量子デバイスの構造を模式的に示し、(A)は部分斜視図、(B)は(A)のX−X方向に沿う断面図である。図9に示すように、単一磁束量子デバイス30においては、接地体となる層31及びこの接地体層の表面上に形成される絶縁層32上に、超伝導体層33からなる四角形リングが形成され、この一辺の中央部に絶縁性強磁性層34が被覆されてジョセフソン接合1が形成され、図7で示すRF−SQUIDが構成されている。超伝導体層33の図示する一端部33Aは接地体層31と接続されている。他端部33Bは、図示しない他のRF−SQUIDと超伝導体層からなる配線層で連結接続されている。
【0035】
このように、単一磁束量子デバイス30においては、多数のRF−SQUIDが集積されて、単一磁束量子デバイス30による集積回路、即ちSFQ回路を構成することができる。RF−SQUIDにおいては、量子化された磁束が1個のときと0のときとを、それぞれ、情報の1と0に対応させて論理演算を行なう。図9に示す単一磁束量子デバイス30のRF−SQUIDにおいては、ジョセフソン接合1を用いたが、絶縁性強磁性層3の代わりに超伝導体層2上に絶縁層14及び導電性強磁性層12を被覆したジョセフソン接合8,8A,10としてもよい。単一磁束量子デバイス30は、RF−SQUIDの代わりにジョセフソン接合1を2個用いたDC−SQUIDとしてもよい。
【0036】
本発明のジョセフソン接合1,8,8A,10を用いた単一磁束量子デバイスによれば、集積回路の作製も可能になり、半導体CMOSデバイスのパフォーマンスを上回る、超高速で超省電力の集積回路を実現することができる。
【0037】
本発明のジョセフソン接合1,8,8A,10を用いたアレイについて説明する。図10〜13はジョセフソン接合1を用いたアレイの構造を模式的に示す平面図である。図10に示すように、ジョセフソン接合1を用いたアレイ40においては、超伝導体層が多角形からなる領域41及び狭窄部42が連結し、X−Y方向に格子状に配列されている。格子の交点となる狭窄部42が絶縁性強磁性層43で被覆され、ジョセフソン接合1を形成している。したがって、格子の各交点に、多数のジョセフソン接合1が配置されてアレイを構成している。
【0038】
図11に示すジョセフソン接合1を用いたアレイ45の場合には、線状の超伝導体層46がX方向に列状に配置され、線状の超伝導体層46を連結する超伝導体層の狭窄部47がY方向に所定の間隔で配置され、X−Y方向に格子状に配列されている。格子の交点となる狭窄部46が絶縁性強磁性層43で被覆され、ジョセフソン接合1を形成している。したがって、格子の各交点に、多数のジョセフソン接合1が配置されてアレイを構成している。
【0039】
図12及び図13に示すジョセフソン接合1を用いたアレイ50では、超伝導体層の構造は図11のアレイ45と同様であり、狭窄部47が線状の絶縁性強磁性層53で被覆されている点が異なる。図12のアレイでは、絶縁性強磁性層53の幅W1を狭窄部47よりも狭くしている。図13のアレイでは、絶縁性強磁性層53の幅W2を狭窄部47よりも広くしている。
上記アレイ40,45,50,55においてはジョセフソン接合1を用いたが、絶縁性強磁性層43,53,57の代わりに超伝導体層41,46上に絶縁層14及び導電性強磁性層12を被覆したジョセフソン接合8,8A,10としてもよい。
【0040】
本発明のジョセフソン接合1を用いたアレイ40,45,50,55によれば、ミリ波から遠赤外までの広ダイナミックレンジのフォトンジェネレータ及びディテクタとして利用することができる。
【0041】
なお、本発明において、ジョセフソンデバイスとは、ジョセフソン接合単体によるミリ波から遠赤外までの広ダイナミックレンジのフォトンジェネレータ及びディテクタ、ジョセフソン接合を用いた超伝導量子干渉素子、ジョセフソン接合を用いたSFQ回路などの各種集積回路などを含む概念で用いている。
【0042】
上記製造方法で述べたように、本発明のジョセフソン接合1,8,8A,10はその構造が簡単で製造も容易である。従って、ジョセフソン接合1,8,8A,10を複数用いるアレイや集積回路を歩留まりよく製造することができる。製造方法が簡単であるので、アレイや集積回路を構成する各ジョセフソン接合1,8,8A,10の電気特性のばらつきを無くすことができる。このため、各ジョセフソン接合1,8,8A,10のIcRN積を揃えて製造することができる。
【実施例】
【0043】
以下、本発明によるジョセフソン接合の実施例について詳細に説明する。
図14(A)〜(K)は、実施例のジョセフソン接合8を製作する際の製作工程を模式的に示す断面図である。
図14(A)に示すように、LaSrAlO4(LSAO)基板6上に、後述するパルスレーザを用いたアブレーション法(PLD法)によって膜厚が約40〜80nmのLa2−xSrxCuO4からなる超伝導体層2を堆積し、図14(B)に示すようにLa2−xSrxCuO4超伝導体層上にポジ型の電子ビーム露光用レジスト61(Shipley社製、型番1813)を塗布し、図14(C)に示すように電子ビーム露光62を行ない、現像を行なうことによって強磁性層12が配置されるべき領域が開口されたレジストパターン63を形成した(図14(D)参照)。
【0044】
図14(E)に示すようにレジストパターン63を形成した基板6の表面全面に強磁性層12となる鉄を、厚さが50〜150nmとなるように抵抗加熱による蒸着法(真空度は約4×10−6Torr)により堆積し、レジストパターン63をエッチングで除去する、所謂リフトオフ工程により余分な強磁性層が除去されて強磁性層12のパターンが超伝導体層2上に形成される(図14(F)参照)。
【0045】
以下の工程は余分な超伝導体層2をエッチングにより除去する工程である。
図14(G)に示すように電子ビーム露光用レジスト61が塗布され、図14(H)に示すように電子ビーム露光用レジスト61が露光され、図14(I)に示すように電子ビーム露光用レジストが現像されて超伝導体層2をエッチングするパターン65が形成される。次に、図14(J)に示すようにエッチングパターン65をマスクとして余分な超伝導体層がエッチングされ、最後にエッチングパターンとして用いた電子ビーム露光用レジスト65を除去して実施例のジョセフソン接合を製作した。なお、上記ジョセフソン接合8の作製で用いたパターンには、ジョセフソン接合8の電気抵抗特性評価のための四端子法パターン等も含んでいる。
【0046】
図15はパルスレーザアブレーション法に用いた装置を示す模式図である。図15に示すように、パルスレーザアブレーション装置70は、真空容器71と、真空容器71内部に配置される超伝導体材料を含むターゲット72及び基板73を保持する基板保持部74と、真空計75と、真空容器71の排気部76と、真空容器71への酸素ガス導入部77と、真空容器71の外部に配置されるパルスレーザ78と、を主要部として備えている。パルスレーザ78からの光は、レンズ79を介して真空容器71に設けられた石英ガラスなどからなる窓部71Aからターゲット72に照射される。ターゲット72を回転させるターゲット回転部81をさらに備えていてもよい。
【0047】
パルスレーザアブレーション装置70は、基板保持部74に基板73が載置され、所定の真空度に到達した後に、パルスレーザ78がターゲット72に照射されると共に、超伝導体層の原料となる酸素ガスも供給される。パルスレーザ78の加熱によりターゲット72から蒸発した材料及び酸素により基板73上に超伝導体層が堆積する。パルスレーザ78としては、波長が248nmのKrFエキシマレーザを用いた。
【0048】
上記のパルスレーザアブレーション装置70で、La2−xSrxCuO4の組成xの異なる膜を得た。xが0.15及び0.2の超伝導体層の結晶特性及び超伝導特性について説明する。
図16は、実施例においてパルスレーザアブレーション法で堆積したLa2−xSrxCuO4膜のX線回折パターンを示す図であり、(A)がSrの組成xが0.15の場合を、(B)がSrの組成が0.2の場合を示している。図16の縦軸は回折X線強度(任意目盛り)を示し、横軸は角度2θ(°)、すなわちX線の原子面への入射角θの2倍に相当する角度である。
図16から明らかなように、作製したLa2−xSrxCuO4(x=0.15及び0.2)、つまり、La1.85Sr0.15CuO4(図16(A)参照)及びLa1.8Sr0.2CuO4(図16(B)参照)においては、何れも回折X線強度の鋭いピークが観測され、結晶性の良好な超伝導体の相が得られていることが分かった。
【0049】
図17は、実施例において、パルスレーザアブレーション法で堆積したLa2−xSrxCuO4(x=0.15及び0.2)膜の抵抗率の温度依存性を調べた結果を示す図である。図17の縦軸は抵抗率(mΩ・cm)であり、横軸は絶対温度(K)である。
図17から明らかなように、組成xが0.15のLa1.85Sr0.15CuO4からなる超伝導体層の臨界温度は約30Kであり、組成xが0.2のLa1.8Sr0.2CuO4からなる超伝導体層の臨界温度は約25Kであることが分かった。
【0050】
(比較例)
実施例に対する比較例として、強磁性層を設けないものを製作し、これ以外は実施例と同様にして製作した。この比較例は、超伝導体層の細線から構成されている。
【0051】
図18は、(A)が実施例のジョセフソン接合を観察した走査電子顕微鏡像を示す図であり、(B)が(A)の説明図である。電子線の加速電圧は15kVであり、倍率は2万3千倍である。図18から明らかように、超伝導体層2の幅が2μmであり、超伝導体層2上に形成された導電性強磁性層12の幅が400nm(0.4μm)であることが分かる。
【0052】
実施例で作製したジョセフソン接合8の電気的特性について説明する。製作したジョセフソン接合8の電気抵抗特性は、直流四端子法を用いて測定した。以下の測定は全て液体ヘリウムクライオスタット中で行った。
図19は、実施例のジョセフソン接合8における電気抵抗の温度依存性を測定した結果を示す図である。図19の縦軸は抵抗(Ω)、横軸は絶対温度(K)であり、比較例も併せて示している。超伝導体層2は、La1.85Sr0.15CuO4を用いた。
図19から明らかなように、比較例の超伝導体層が29.7Kで零となるのに対して、実施例のジョセフソン接合8の電気抵抗は27.7Kで零となり、超伝導が生じる温度、すなわち、臨界温度が低下したことが分かった。これは、実施例のジョセフソン接合8が導電性強磁性層12を備えていることにより、導電性強磁性層12の下部にある超伝導体層2の臨界温度が低下することに起因している。
【0053】
図20は、実施例のジョセフソン接合8に流れる電流の温度依存性を測定した結果を示す図である。図20の縦軸は電流(μA)、横軸は絶対温度(K)である。図20から明らかなように、実施例のジョセフソン接合8に流れる臨界電流は、温度の低下と共に直線的に増加し、低温では一定値に漸近するというジョセフソン接合特有の性質を示していることが分かった。
【0054】
実施例のジョセフソン接合8が真のジョセフソン接合であることをさらに明確に検証するために、外部からマイクロ波を照射してその直流の電圧電流特性を測定した。マイクロ波は同軸ケーブルを用いて、液体ヘリウムクライオスタット内のジョセフソン接合の極く近傍まで導入して照射した。照射電力は1mW(0dBm)であり、測定温度は8.7Kである。
図21は、実施例のジョセフソン接合8において10GHzのマイクロ波を照射したときの電流電圧特性及び微分抵抗を測定した結果を示す図である。図21の横軸はジョセフソン接合への印加電圧(V)であり、右縦軸が電流(μA)を、左縦軸が微分抵抗(dV/dI、任意目盛り)を示している。図21から明らかなように、実施例のジョセフソン接合8に流れる電流は、その微分抵抗においてなだらかなキンクが20μVおきに観察された。
【0055】
ジョセフソン接合が示す干渉効果であるシャッピーロ・ステップは、下記式(1)で表わされる。
V=hf/(2e)=Φf (1)
ここで、Vはシャッピーロ・ステップの間隔電圧(V)、hはプランク定数(6.626×10−34J・s)、eは電子の単位電荷(1.602×10−19C)、Φ(=h/(2e))は磁束量子である。10GHzのマイクロ波を照射したときのシャッピーロ・ステップの間隔は、式(1)から20μVと計算される。したがって、実施例で観察されたキンクのステップ間隔は、式(1)を満足し、ジョセフソン接合8が示す干渉効果であるシャッピーロ・ステップが観察されていることが判明した。
【0056】
上記実施例において、超伝導体層2の一部に強磁性層を配置するという所謂ブリッジ構造のジョセフソン接合が簡単な製造工程で実現できることが分かった。
【0057】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々の変形が可能である。例えば、強磁性層3,12や超伝導体層2の寸法は所望のIcRN積が得られるように適宜設計することができ、それらも本発明の範囲内に含まれることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明による第1の実施形態に係るジョセフソン接合を模式的に説明するもので、それぞれ、(A)が平面図、(B)が(A)のX−X方向に沿う断面図、(C)が(A)のY−Y方向に沿う断面図を示す図である。
【図2】本発明による第2の実施形態に係るジョセフソン接合を模式的に説明するもので、それぞれ、(A)が斜視図、(B)が(A)のX−X方向に沿う断面図、(C)が(A)のY−Y方向に沿う断面図である。
【図3】本発明による第2の実施形態に係るジョセフソン接合の変形例を模式的に示す斜視図である。
【図4】本発明による第2の実施形態に係るジョセフソン接合を模式的に説明するもので、それぞれ、(A)が平面図、(B)が(A)のX−X方向に沿う断面図、(C)が(A)のY−Y方向に沿う断面図を示す図である。
【図5】(A)〜(C)は、本発明による第1の実施形態に係るジョセフソン接合の製造工程を示す図である。
【図6】(A)〜(D)は、本発明による第2の実施形態に係るジョセフソン接合の製造工程を示す図である。
【図7】本発明のジョセフソン接合を用いた超伝導量子干渉素子(SQUID)の構造を模式的に示すもので、(A)は斜視図、(B)は(A)のX−X方向に沿う断面図である。
【図8】本発明のジョセフソン接合を用いた別の超伝導量子干渉素子の構造を模式的に示すもので、(A)は斜視図、(B)は(A)のX−X方向に沿う断面図である。
【図9】本発明のジョセフソン接合を用いた単一磁束量子デバイスの構造を模式的に示すもので、(A)は部分斜視図、(B)は(A)のX−X方向に沿う断面図である。
【図10】ジョセフソン接合を用いたアレイの構造の一例を模式的に示す平面図である。
【図11】ジョセフソン接合を用いたアレイの構造の他の例を模式的に示す平面図である。
【図12】ジョセフソン接合を用いたアレイの構造の他の例を模式的に示す平面図である。
【図13】ジョセフソン接合を用いたアレイの構造のさらに他の例を模式的に示す平面図である。
【図14】実施例のジョセフソン接合を製作する際の製作工程を模式的に示す断面図である。
【図15】パルスレーザアブレーション法に用いた装置を示す模式図である。
【図16】実施例においてパルスレーザアブレーション法で堆積したLa2−xSrxCuO4膜のX線回折パターンを示す図であり、(A)がSrの組成xが0.15の場合を、(B)がSrの組成が0.2の場合を示している。
【図17】実施例において、パルスレーザアブレーション法で堆積したLa2−xSrxCuO4(x=0.15及び0.2)膜の抵抗率の温度依存性を調べた結果を示す図である。
【図18】(A)は実施例のジョセフソン接合を観察した走査電子顕微鏡像を示す図であり、(B)は(A)の説明図である。
【図19】実施例のジョセフソン接合における電気抵抗の温度依存性を測定した結果を示す図である。
【図20】実施例のジョセフソン接合に流れる電流の温度依存性を測定した結果を示す図である。
【図21】実施例のジョセフソン接合において、10GHzのマイクロ波を照射したときの電流電圧特性及び微分抵抗を測定した結果を示す図である。
【符号の説明】
【0059】
1,8,8A,10:ジョセフソン接合
2,33,41,46:超伝導体層(高温超伝導体層)
2A,2B:電極
2C,42,47:狭窄部
3,34,43,53,57:絶縁性強磁性層
6:基板
12,64:導電性強磁性層
14:絶縁層
20:超伝導量子干渉素子(RF−SQUID)
20A,20B:電流端子
25:超伝導量子干渉素子(DC−SQUID)
25A,25B:電流端子
30:単一磁束量子デバイス
31:接地体層
32:絶縁層
33A,33B:端部
40,45,55,60:ジョセフソン接合を用いたアレイ
61:電子ビーム露光用レジスト
62:電子ビーム露光
63,65:レジストパターン
70:パルスレーザアブレーション装置
71:真空容器
71A:窓部
72:ターゲット
73:基板
74:基板保持部
75:真空計
76:排気部
77:酸素ガス導入部
78:パルスレーザ
79:レンズ
81:ターゲット回転部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超伝導体層と該超伝導体層の中央部上に積層される強磁性層とを備えることを特徴とする、ジョセフソン接合。
【請求項2】
前記強磁性層が、導電性強磁性層又は絶縁性強磁性層の何れかからなることを特徴とする、請求項1に記載のジョセフソン接合。
【請求項3】
超伝導体層と該超伝導体層の中央部上に絶縁層を介して積層される導電性強磁性層とを備えることを特徴とする、ジョセフソン接合。
【請求項4】
前記超伝導体層の中央部の幅が、上記超伝導体層のコヒーレント長と同程度であることを特徴とする、請求項1又は3に記載のジョセフソン接合。
【請求項5】
前記超伝導体層の中央部及び該中央部の両側の超伝導体層の幅が、上記超伝導体層のコヒーレント長と同程度の細線からなることを特徴とする、請求項1又は2に記載のジョセフソン接合。
【請求項6】
ジョセフソン接合を用いたジョセフソンデバイスであって、超伝導体層と該超伝導体層の中央部上に積層される強磁性層とを備えることを特徴とする、ジョセフソンデバイス。
【請求項7】
前記強磁性層が、導電性強磁性層又は絶縁性強磁性層の何れかからなることを特徴とする、請求項6に記載のジョセフソンデバイス。
【請求項8】
ジョセフソン接合を用いたジョセフソンデバイスであって、超伝導体層と該超伝導体層の中央部上に絶縁層を介して積層される導電性強磁性層とを備えることを特徴とする、ジョセフソンデバイス。
【請求項1】
超伝導体層と該超伝導体層の中央部上に積層される強磁性層とを備えることを特徴とする、ジョセフソン接合。
【請求項2】
前記強磁性層が、導電性強磁性層又は絶縁性強磁性層の何れかからなることを特徴とする、請求項1に記載のジョセフソン接合。
【請求項3】
超伝導体層と該超伝導体層の中央部上に絶縁層を介して積層される導電性強磁性層とを備えることを特徴とする、ジョセフソン接合。
【請求項4】
前記超伝導体層の中央部の幅が、上記超伝導体層のコヒーレント長と同程度であることを特徴とする、請求項1又は3に記載のジョセフソン接合。
【請求項5】
前記超伝導体層の中央部及び該中央部の両側の超伝導体層の幅が、上記超伝導体層のコヒーレント長と同程度の細線からなることを特徴とする、請求項1又は2に記載のジョセフソン接合。
【請求項6】
ジョセフソン接合を用いたジョセフソンデバイスであって、超伝導体層と該超伝導体層の中央部上に積層される強磁性層とを備えることを特徴とする、ジョセフソンデバイス。
【請求項7】
前記強磁性層が、導電性強磁性層又は絶縁性強磁性層の何れかからなることを特徴とする、請求項6に記載のジョセフソンデバイス。
【請求項8】
ジョセフソン接合を用いたジョセフソンデバイスであって、超伝導体層と該超伝導体層の中央部上に絶縁層を介して積層される導電性強磁性層とを備えることを特徴とする、ジョセフソンデバイス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2008−47852(P2008−47852A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−332346(P2006−332346)
【出願日】平成18年12月8日(2006.12.8)
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月8日(2006.12.8)
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【Fターム(参考)】
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