説明

スイッチング素子駆動回路

【課題】スイッチング素子駆動回路において、スイッチング素子のスイッチング損失を抑制する。
【解決手段】 ゲート電圧検出回路201は、スイッチング素子11のゲート電圧Vgsを検出し、このゲート電圧がスイッチング素子11の閾値電圧未満に設定された所定電圧未満のとき、Hレベルの昇圧指示信号を出力する。電圧制御回路103は、前記昇圧指示信号がLレベルの間は、制御電源102の所定電圧V1をそのまま出力し、前記昇圧指示信号がHレベルの間は、前記所定電圧V1を昇圧した電圧V2を出力する。駆動信号出力回路104は、PWMパルス出力回路111から出力されるPWMパルスの電圧を電圧制御回路103から出力される電圧に増幅する。従って、駆動信号出力回路104からスイッチング素子11への駆動信号は、前記PWMパルスがHレベルになった時に、先ず昇圧された電圧V2となり、スイッチング素子11のゲート電圧Vgsが所定電圧にまで上昇すると、所定電圧V1となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大電力をスイッチングするIGBTやMOSFETなどのスイッチング素子を駆動するスイッチング素子駆動回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、モータは、電車だけでなく自動車にも搭載され、動力源として用いられるようになっている。例えば、排気ガスを軽減でき環境汚染を防止できるものとして注目され、実用化されているハイブリッド車は、ガソリンエンジンとモータとを動力源として走行するものである。前記のような自動車のモータに供給される電圧は、従前では200〜300V程度であった。しかし、近年では、自動車の加速力の向上を目指して、供給電圧は高電圧に移行しており、今後は500V〜1000V程度の非常に高い供給電圧が主流となると思われる。
【0003】
前記供給電圧と同じ電圧を電池に発生させるとすると、相当多くの単位電池を直列接続する必要があり、電池全体の大型化を招く。そこで、例えば、電圧変換装置等に昇圧チョッパ回路を設けて、電池から得られる直流電圧を昇圧する技術が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
前記昇圧チョッパ回路は、リアクトルL、コンデンサC、及び絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)等の大電力をスイッチングできるスイッチング素子を備えて構成されている。前記スイッチング素子は、パルス信号に基づいてスイッチング素子駆動回路から出力される例えば20kHz以下程度の駆動信号によって駆動され、前記パルス信号のパルス幅(デューティ比)によって、昇圧電圧が制御されるようになっている。
【0005】
また、昇圧チョッパ回路を用いる場合に、モータの起動時等に過電流保護を容易にするために、スイッチング素子のゲート抵抗を大きくしたりゲート電圧を低くしたりして、スイッチング素子に緩やかなスイッチング動作をさせる技術も知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
また、スイッチング素子を駆動する技術においても、スイッチング素子の動作状態を検出して、それに応じて制御することなどを検討している例もある。以下に、それらの例についても、特許文献3及び特許文献4を用いて説明する。
【0007】
パルス信号に基づいてスイッチング動作する(一般的に、PWM駆動といわれる)スイッチング素子と呼ばれるものには、電界効果形トランジスタ(以後、MOSFETと呼ぶ)や、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(以後、IGBTと呼ぶ)等がある。これらのスイッチング素子は、比較的にスイッチング動作の速度が速いことが特徴であり、高周波のインバータ及びコンバータを実現するために、広く用いられる。近年、これらのスイッチング素子は高電圧化や、大電流化、高速化の進歩が顕著であるが、その反面、高周波及び高速のスイッチング動作が原因で、サージ電圧によるスイッチング素子の破壊やノイズによる他の電子機器への妨害が重大な課題となっている。
【0008】
ここで、図20に、一般的なスイッチング素子駆動回路の構成を示す。同図において、PWM信号回路3の出力は、スイッチング素子駆動回路200の入力に接続され、スイッチング素子駆動回路200の出力は、電圧駆動形スイッチング素子1の制御端子に接続されている。また、スイッチング素子駆動回路200は、駆動信号出力回路400と、オン用制御電圧回路500と、オフ用制御回路600と、制御抵抗700とにより構成されている。オン用制御電圧回路500及びオフ用制御電圧回路600は、電圧駆動形スイッチング素子1をオン及びオフさせるのに十分な一定電圧を各々出力する。駆動信号出力回路400は、PWM信号回路3から出力されるPWM信号に同期し、且つ電力増幅された信号を制御抵抗700を介して、電圧駆動形スイッチング素子1の制御端子に出力する。
【0009】
次に、図21を用いて、図20に示すスイッチング素子駆動回路200及び電圧駆動形スイッチング素子1における動作波形を示す。同図において、PWM信号、駆動信号、オン用制御電圧、オフ用制御電圧、ドレイン電流、ドレイン電圧は、各々PWM信号回路3の出力信号、スイッチング素子駆動回路200の出力信号、オン用制御電圧回路500の出力電圧、オフ用制御電圧回路600の出力電圧、電圧駆動形スイッチング素子1のドレイン電圧及びドレイン電流である。
【0010】
先ず、PWM信号回路3が電圧駆動形スイッチング素子1をオン/オフさせるためのPWM信号を出力する。PWM信号は、図中の時刻t1でLowレベルからHighレベルに瞬時に切り替わり、時刻t5でHighレベルからLowレベルに瞬時に切り替わる。次に、スイッチング素子駆動回路200により、PWM信号の電力増幅がなされ、電圧形スイッチング素子1の制御端子に駆動信号として入力される。この駆動信号は、PWM信号に同期して動作する。
【0011】
電圧駆動形スイッチング素子1のターンオン動作において、詳細に説明する。時刻t1でPWM信号はHighレベルとなるが、スイッチング制御回路200内の回路による遅延や制御抵抗による電流制限の影響で、駆動信号の立上がりは、時刻t2まで遅延する。時刻t2から、電圧駆動形スイッチング素子1のゲート・ソース間容量(図示しない。)に充電が開始され、駆動信号(すなわち、制御端子の電圧)は徐々に上昇する。時刻t3に、電圧駆動型スイッチング素子1の閾値電圧に達し、電圧駆動形スイッチング素子1がオンすることにより、スイッチング素子1のゲート・ソース間容量に加えてドレイン・ゲート容量(図示しない。)にも充電を開始する。この動作により、駆動信号は閾値電圧の近傍でクランプされ(この動作をターンオン時におけるミラー効果という。図中の時刻t3からt4の間である)、充電がほぼ完了すると、時刻t4から再び徐々に上昇し、オン用制御電圧回路500が出力するオン用制御電圧に達し、ターンオン動作を終了する。電圧形スイッチング素子1は、時刻t3からドレイン電流が流れ始め、時刻t4には所望のドレイン電流が流れる。
【0012】
続いて、電圧駆動形スイッチング素子1のターンオフ動作において、詳細に説明する。時刻t5でPWM信号はLowレベルとなるが、ターンオン動作同様に、スイッチング制御回路200内の回路による遅延や制御抵抗による電流制限の影響で、駆動信号の立下りは、時刻t6まで遅延する。時刻t6から、電圧駆動形スイッチング素子1のゲート・ソース間容量とドレイン・ゲート間容量から放電が開始され、駆動信号(すなわち、制御端子の電圧)は徐々に下降する。時刻t7に、電圧駆動型スイッチング素子1の閾値電圧に達し、電圧駆動形スイッチング素子1がオフして、ゲート・ソース間容量のみでそのまま放電し続ける。この動作により、これもターンオン動作同様に、駆動信号は閾値電圧の近傍でクランプされ(この動作をターンオフ時におけるミラー効果という。図中の時刻t7からt8の間である)、放電がほぼ完了すると、時刻t8から再び徐々に下降し、オフ用制御電圧回路600が出力するオフ用制御電圧に達し、ターンオフ動作を終了する。電圧形スイッチング素子1は、時刻t7からドレイン電圧が上昇し始め、時刻t8には所望のドレイン電圧になる。
【0013】
ここで、ドレイン電流の変化率(di/dt)及びドレイン電圧の変化率(dv/dt)が急峻な場合には、図中に示したA部、B部のようなサージ電流、サージ電圧が発生し、スイッチング素子の破壊やノイズによる他の電子機器への妨害が重要な課題となる。
【0014】
このような課題の対策として、スイッチング素子の動作状態に応じて、スイッチング素子の制御端子へ流入及び流出する電流量を変化させることにより、スイッチング素子の動作速度を緩やかにすることが、従来、検討されている。
【0015】
特許文献3では、IGBTに主コレクタ電流を流す主エミッタ端子と、主コレクタ電流に比例した小さな補助エミッタ電流を取り出す補助エミッタ端子とを設け、主エミッタ端子と補助エミッタ端子との間にインダクタンスを接続することにより、主コレクタ電流の立上がり開始時点を検出し、主コレクタ電流が流れ出すまでと流れ出した後とで、スイッチング素子の制御端子に流入する電流量が減少するように変化させる。そうすることにより、主コレクタ電流の電流変化率(di/dt)を緩やかにすることができる。主コレクタ電流の電流変化率(di/dt)の低減により、主コレクタ電圧の電圧変化率(dv/dt)も低減される。よって、サージ電圧の抑制とスイッチングにより発生するノイズの抑制を実施できる。
【0016】
また、特許文献4では、インバータを構成するスイッチング素子の制御回路において、インバータに印加される直流電源の電圧を検出する電圧検出手段を備え、検出された電圧に応じて、スイッチング素子の動作速度を変化させるように、スイッチング素子の制御端子に流入する電流量を変化させる。そうすることにより、直流電源の電圧が低い場合には、直流電源の電圧に応じてスイッチング動作によるサージ電圧の値も低くなるので、スイッチング素子の動作速度を上げることが可能となる。よって、直流電源の電圧が低い場合には、過大なサージ電圧を発生させることがなく、スイッチング動作により生じるスイッチング損失を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2005−354763号公報
【特許文献2】特開2001−268926号公報
【特許文献3】特開平10−32976号公報
【特許文献4】特開平9−23664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかしながら、従来のスイッチング素子駆動回路を用いる場合には、駆動されるスイッチング素子を備える電圧変換装置等の小型化やコスト削減が困難であるという問題点を有していた。すなわち、例えばスイッチング素子を駆動する駆動信号の周波数を高くすれば、昇圧チョッパ回路を構成するリアクトルLやコンデンサCを小型化することができるが、一方、スイッチング素子のスイッチング損失が増大するため、スイッチング素子を冷却する冷却器等の大型化を引き起こすことになり、必ずしも電圧変換装置等を小型化することができない。
【0019】
また、スイッチング素子のゲート抵抗を大きくしたりゲート電圧を低くしたりして、スイッチング素子に緩やかなスイッチング動作をさせる場合にも、スイッチング損失の増大や電圧変換装置等の大型化を招くことになる。
【0020】
更に、特許文献3記載の技術では、IGBTの主コレクタ電流の立上がり開始時点を検出するために、主エミッタ端子と補助エミッタ端子との間にインダクタンスを必要とする。このインダクタンスは、主コレクタ電流を検出するように接続されているため、主コレクタ電流に影響を及ぼさないように、更には、主コレクタ電流の立上がり開始時点を正確に検出するために、IGBTの電気仕様及びIGBTの動作条件毎に、インダクタンスの容量を決定する必要があり、設計自由度に乏しい。更に、主コレクタ電流の変化率(di/dt)及び主コレクタ電圧の変化率(dv/dt)を、単純に低減するだけであるので、大幅なスイッチング損失の増加につながる。主コレクタ電流の変化率(di/dt)及び主コレクタ電圧の変化率(dv/dt)を変化させる手段においても、ゲート電源に接続される抵抗値を切り替えるだけであるので、変化させることができる動作範囲に制限がある。
【0021】
加えて、特許文献4の技術では、直流電源の電圧が低い場合には、スイッチング素子の動作速度を上げて、過大なサージ電圧を発生させることなくスイッチング損失を低減させることが可能であるが、直流電源の電圧が高い場合には、効果を全く発揮することができない。
【0022】
本発明は、前記従来の欠点に鑑みてなされたものであり、その目的は、特許文献3のようなインダクタンスなどの部品の追加を行うことなく、また、特許文献4のようにインバータの直流電源の電圧値に拘わらず、スイッチング素子を駆動する際のスイッチング損失を有効に抑制し、これにより、スイッチング素子を高周波動作させて電圧変換装置等の小型化やコスト削減を図ることにある。
【0023】
本発明の更なる目的は、前記目的に加えて、必要な時にはスイッチング素子に緩やかなスイッチング動作をさせて、サージ電圧をも有効に抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0024】
以上の目的を達成するため、本発明では、スイッチング素子のターンオン時やターンオフ時には、所定電圧をスイッチング素子に常時固定的に印加するのではなく、そのターンオン時やターンオフ時の一部の期間では例えばその所定電圧よりも高電圧を印加し、これにより、短期間でスイッチング動作を終了させて、スイッチング損失を有効に軽減することとする。
【0025】
更に、前記の通り、一部の期間でスイッチング素子に高電圧を印加する場合には、サージ電圧が発生し易くなるが、この高電圧を印加する期間を特定することにより、この一部の期間以外の期間ではスイッチング素子を緩やかにスイッチング動作をさせて、サージ電圧を有効に抑制することとする。
【0026】
すなわち、具体的に、請求項1記載の発明のスイッチング素子駆動回路は、パルス信号を受け、このパルス信号に応じた所定期間、電力変換回路に備えるスイッチング素子の制御端子に駆動信号を出力するスイッチング素子駆動回路であって、前記スイッチング素子の制御端子に与える駆動信号として印加する電圧又は流す電流を、所定電圧又は所定電流とは異なる電圧又は電流に変更する制御回路と、前記スイッチング素子の制御端子の電圧を検出する制御電圧検出回路とを有し、前記制御回路は、前記制御電圧検出回路の電圧検出信号を受け、前記スイッチング素子の制御端子の電圧値に応じて、前記パルス信号に応じた所定期間の一部の期間として、前記スイッチング素子のターンオン時におけるミラー効果期間の一部を含む一定期間において、前記スイッチング素子の制御端子に与える駆動信号として印加する電圧又は流す電流を前記所定電圧又は所定電流よりも大値の電圧又は電流に変更し、かつ前記パルス信号に応じた所定期間の一部の期間として、前記スイッチング素子のターンオフ時におけるミラー効果期間の一部を含む一定期間において、前記スイッチング素子の制御端子に与える駆動信号として印加する電圧又は流す電流を前記所定電圧又は所定電流よりも小値の電圧又は電流に変更するように構成されたことを特徴とする。
【0027】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のスイッチング素子駆動回路において、前記制御回路は、前記パルス信号に応じた所定期間の一部の期間として、この所定期間の開始時から前記スイッチング素子のターンオン時におけるミラー効果期間の終了時までの期間において、前記スイッチング素子の制御端子に与える駆動信号として印加する電圧又は流す電流を変更することを特徴とする。
【0028】
請求項3記載の発明は、請求項2記載のスイッチング素子駆動回路において、前記制御回路は、前記スイッチング素子のターンオン時にその制御端子に与える駆動信号の電圧をターンオン用の所定電圧よりも高い電圧に変更するオン用制御電圧回路を有し、前記制御電圧検出回路は、前記スイッチング素子の制御端子の電圧として、前記スイッチング素子の閾値電圧よりも所定電圧高い電圧値を検出し、この所定電圧高い電圧値の検出時に前記電圧検出信号を前記制御回路のオン用制御電圧回路に出力し、前記オン用制御電圧回路は、前記パルス信号に応じた所定期間の開始時に前記スイッチング素子の制御端子に与える駆動信号として印加する電圧を前記ターンオン用の所定電圧よりも高い電圧に変更し、前記制御電圧検出回路の前記電圧検出信号を受けた時に前記高電圧への変更を停止することを特徴とする。
【0029】
請求項4記載の発明は、請求項1記載のスイッチング素子駆動回路において、前記制御回路は、前記スイッチング素子のターンオフ時にその制御端子に与える駆動信号として印加する電圧をターンオフ用の所定電圧よりも低い電圧に変更するオフ用制御電圧回路を有し、前記制御電圧検出回路は、前記スイッチング素子の制御端子の電圧として、前記スイッチング素子の閾値電圧よりも所定電圧低い電圧値を検出し、この所定電圧低い電圧値の検出時に前記電圧検出信号を前記制御回路のオフ用制御電圧回路に出力し、前記オフ用制御電圧回路は、前記パルス信号を受けなくなった時点で前記スイッチング素子の制御端子に与える駆動信号として印加する電圧を前記ターンオフ用の所定電圧よりも低い電圧に変更し、前記制御電圧検出回路の前記電圧検出信号を受けた時に前記低電圧への変更を停止することを特徴とする。
【0030】
請求項5記載の発明は、請求項1記載のスイッチング素子駆動回路において、前記制御回路は、前記パルス信号に応じた所定期間の一部の期間として、前記スイッチング素子のミラー効果期間の全てを含む期間において、前記スイッチング素子の制御端子に与えている駆動信号として印加する電圧又は流す電流を変更することを特徴とする。
【0031】
請求項6記載の発明は、請求項1記載のスイッチング素子駆動回路において、前記制御回路は、前記パルス信号に応じた所定期間の一部の期間として、この所定期間の開始時から前記スイッチング素子のターンオン時におけるミラー効果期間の途中までの期間において、前記スイッチング素子の制御端子に与える駆動信号として印加する電圧又は流す電流を変更することを特徴とする。
【0032】
請求項7記載の発明は、請求項6記載のスイッチング素子駆動回路において、前記制御回路は、前記スイッチング素子のターンオン時にその制御端子に与える駆動信号として印加する電圧をターンオン用の所定電圧よりも高い電圧に変更するオン用制御電圧回路を有し、前記制御電圧検出回路は、前記スイッチング素子の制御端子の電圧として、前記スイッチング素子の閾値電圧を検出し、この閾値電圧の検出後、予め定めた設定時間の経過時に前記電圧検出信号を前記制御回路のオン用制御電圧回路に出力し、前記オン用制御電圧回路は、前記パルス信号に応じた所定期間の開始時に前記スイッチング素子の制御端子に与える駆動信号として印加する電圧を前記ターンオン用の所定電圧よりも高い電圧に変更し、前記制御電圧検出回路の前記電圧検出信号を受けた時に前記高電圧への変更を停止することを特徴とする。
【0033】
請求項8記載の発明は、請求項1記載のスイッチング素子駆動回路において、前記制御回路は、前記パルス信号に応じた所定期間の一部の期間として、前記パルス信号を受けなくなった時点から前記スイッチング素子のターンオフ時におけるミラー効果期間の途中までの期間において、前記スイッチング素子の制御端子に与える駆動信号として印加する電圧又は流す電流を変更することを特徴とする。
【0034】
請求項9記載の発明は、請求項8記載のスイッチング素子駆動回路において、前記制御回路は、前記スイッチング素子のターンオフ時にその制御端子に与える駆動信号として印加する電圧をターンオフ用の所定電圧よりも低い電圧に変更するオフ用制御電圧回路を有し、前記制御電圧検出回路は、前記スイッチング素子の制御端子の電圧として、前記スイッチング素子の閾値電圧未満の所定電圧値を検出し、この所定電圧値の検出後、予め定めた設定時間の経過時に前記電圧検出信号を前記制御回路のオフ用制御電圧回路に出力し、前記オフ用制御電圧回路は、前記パルス信号を受けなくなった時点で前記スイッチング素子の制御端子に与える駆動信号として印加する電圧を前記ターンオフ用の所定電圧よりも低い電圧に変更し、前記制御電圧検出回路の前記電圧検出信号を受けた時に前記低電圧への変更を停止することを特徴とする。
【0035】
請求項10記載の発明は、請求項1、3、4、7及び9の何れか1項に記載のスイッチング素子駆動回路において、前記制御電圧検出回路におけるスイッチング素子の閾値電圧は、温度補正されることを特徴とする。
【0036】
請求項11記載の発明は、請求項10記載のスイッチング素子駆動回路において、前記制御電圧検出回路におけるスイッチング素子の閾値電圧は、前記スイッチング素子の温度が低くなるほど高く補正され、前記スイッチング素子の温度が高くなるほど低く補正されることを特徴とする。
【0037】
請求項12記載の発明は、請求項1記載のスイッチング素子駆動回路において、前記スイッチング素子の制御端子に接続される制御抵抗を更に備え、前記制御電圧検出回路は、前記制御抵抗の両端の電圧を検出することを特徴とする。
【0038】
請求項13記載の発明は、前記請求項1〜12の何れか1項に記載のスイッチング素子駆動回路において、前記スイッチング素子は、SiC又はGaNを含むワイドバンドギャップ半導体により構成されることを特徴とする。
【0039】
請求項14記載の発明は、請求項1記載のスイッチング素子駆動回路において、前記制御回路は、前記所定電圧を昇圧又は降圧する昇降圧回路を有し、前記昇降圧回路は、前記制御電圧検出回路の電圧検出信号を受け、前記スイッチング素子の制御端子に与える駆動信号として印加する電圧又は流す電流を前記所定電圧又は所定電流よりも大値又は小値の電圧又は電流に変更するように構成されたことを特徴とする。
【0040】
以上により、請求項1〜14記載の発明では、スイッチング素子のターンオン時やターンオフ時には、そのスイッチング素子に印加する電圧値や流す電流値を固定せずに、そのターンオン時やターンオフ時の一部の期間で、そのスイッチング素子の制御電圧に応じて、その印加する電圧値や流す電流値を変更したので、インダクタンスなどの部品を追加することなく、スイッチング素子の動作状態に応じてスイッチング動作を任意に変化させて、必要に応じて例えばスイッチング素子の制御端子に高電圧を印加するので、スイッチング動作を速めて、スイッチング損失を軽減できる。
【0041】
しかも、スイッチング素子のターンオン時やターンオフ時には、前記スイッチング素子の制御端子に高電圧を印加する期間以外の期間では、その高電圧よりも低い通常電圧が印加されるので、スイッチング動作が緩やかになって、サージ電圧の発生が抑制される。
【発明の効果】
【0042】
以上説明したように、請求項1〜14記載の発明のスイッチング素子駆動回路によれば、スイッチング素子のターンオン時やターンオフ時には、スイッチング素子の制御電圧として印加する電圧や流す電流を固定せず、その一部の期間で変更したので、スイッチング動作を速めてスイッチング損失を有効に軽減できる。
【0043】
しかも、サージ電圧が発生する状況では、前記スイッチング素子の制御電圧として印加する電圧や流す電流を大値に変更せず、通常の電圧値又は電流値に設定したので、サージ電圧の発生をも抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の第1の実施形態のスイッチング素子駆動回路の概略構成を示すブロック図である。
【図2】同スイッチング素子駆動回路に備える駆動信号出力回路の内部構成を示す図である。
【図3】同スイッチング素子駆動回路の要部の信号を示すタイミングチャート図である。
【図4】同スイッチング素子駆動回路に備える昇圧指示信号出力回路としてゲート電圧検出回路を備えた構成を示す図である。
【図5】同ゲート電圧検出回路を備えたスイッチング素子駆動回路の要部の信号を示すタイミングチャート図である。
【図6】同スイッチング素子駆動回路の変形例を示す図である。
【図7】(a)は同スイッチング素子駆動回路の駆動信号出力回路から出力する駆動電圧の一例を示す波形図、同図(b)は同駆動電圧の他の一例を示す波形図、同図(c)は同駆動電圧の更に他の一例を示す波形図である。
【図8】同スイッチング素子駆動回路の他の変形例を示す図である。
【図9】本発明の第2の実施形態のスイッチング素子駆動回路の概略構成を示すブロック図である。
【図10】同スイッチング素子駆動回路に備えるオン用制御電圧回路の内部構成を示す図である。
【図11】同スイッチング素子駆動回路に備えるオフ用制御電圧回路の内部構成を示す図である。
【図12】同スイッチング素子駆動回路に備える第1の制御電圧検出回路の内部構成を示す図である。
【図13】同スイッチング素子駆動回路に備える駆動信号出力回路から出力する駆動電圧の波形を示すタイミングチャート図である。
【図14】同スイッチング素子駆動回路の要部の信号を示すタイミングチャート図である。
【図15】同スイッチング素子駆動回路に備えるオン用制御電圧回路及びオフ用制御電圧回路を変形した場合における要部の信号を示すタイミングチャート図である。
【図16】本発明の第3の実施形態のスイッチング素子駆動回路に備える第1の制御電圧検出回路の内部構成を示すブロック図である。
【図17】同スイッチング素子駆動回路の要部の信号を示すタイミングチャート図である。
【図18】本発明のスイッチング素子駆動回路が駆動するスイッチング素子の閾値電圧の温度特性を示す図である。
【図19】本発明の第4の実施形態のスイッチング素子駆動回路の概略構成を示すブロック図である。
【図20】従来のスイッチング素子駆動回路の概略構成を示すブロック図である。
【図21】従来のスイッチング素子駆動回路の要部の信号を示すタイミングチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0046】
(第1の実施形態)
図1は本発明の第1の実施形態のスイッチング素子駆動回路の全体概略構成を示す。
【0047】
同図において、スイッチング素子駆動回路100は、昇圧指示信号出力回路101と、制御電源102と、電圧制御回路103と、駆動信号出力回路104とを備え、駆動するスイッチング素子11の制御端子(ゲート)に駆動信号(駆動パルス、ゲート駆動電圧)を出力するようになっている。
【0048】
前記駆動されるスイッチング素子11は、特に限定されないが、チョッパ回路や、インバータなどの電力変換回路に設けられたものである(尚、図1においては、模式的に電源21から供給される電力や電圧、電流を制御する回路を示し、電力等が供給される負荷は説明簡素化のために省略している)。
【0049】
昇圧指示信号出力回路101は、図3に示すように、PWMパルス出力回路111から出力されるPWMパルスがL(Low)レベルからH(High)レベルになるタイミングに同期して、所定の期間t1だけHレベルになる昇圧指示信号を出力するようになっている。
【0050】
制御電源102は、後述する所定の電圧V1を出力するようになっている。尚、前記電圧V1がスイッチング素子駆動回路100の外部から供給されるようにしても良い。
【0051】
電圧制御回路(制御回路)103は、前記昇圧指示信号がLレベルの間は、制御電源102から出力される所定電圧V1をそのまま出力し、昇圧指示信号がHレベルの間は、前記電圧V1を昇圧した昇圧電圧V2を出力するようになっている。
【0052】
ここで、期間t1及び電圧V1、昇圧電圧V2は、例えば次のように設定される。すなわち、昇圧電圧V2は、駆動するスイッチング素子11のゲートに印加できる最高電圧、又はゲートに印加される電圧に依存する寿命などから設定される電圧にすることが望ましい。また、所定電圧V1は、定常的に印加される電圧として、許容される最高電圧、又は昇圧電圧V2と同様に寿命などから設定される電圧にすることが望ましい。また、期間t1は、駆動するスイッチング素子11に応じて、例えば設定される許容スイッチング損失が満足される時間内にスイッチング素子11がオンになるのに十分な時間に設定される。また、昇圧電圧V2は、厳密には、配線抵抗等を考慮した場合には必ずしも定常時の所定電圧V1より高くなくても、例えば無負荷時や一定負荷時の場合に電圧制御回路103から出力される電圧が定常時よりも高いなど、ゲートへの電荷の充電等によるゲート電圧の立ち上がりが速やかに行われるようになっていれば良い。
【0053】
駆動信号出力回路104は、例えば図2に示すように、上下アーム接続されたスイッチング素子104a、104bを備え、PWMパルス出力回路111から出力されるPWMパルスの電圧を電圧制御回路103から出力される電圧に増幅(電力も増幅)するバッファ回路として機能するようになっている。すなわち、PWMパルスがHレベルの時に、電圧制御回路103から出力される所定電圧V1又は昇圧電圧V2が駆動信号(電圧Vdv)として出力される。
【0054】
前記のように構成されたスイッチング素子駆動回路100の動作を図3に基づいて説明する。PWMパルス出力回路111から出力されるPWMパルスがHレベルになると、昇圧指示信号出力回路101は、期間t1の間、Hレベルの昇圧指示信号を出力する。電圧制御回路103は、前記期間t1の間、所定の周波数の昇圧パルスを出力し、これに応じてスイッチング素子103bがオン/オフを繰り返すことにより、制御電源102から供給される所定電圧V1が昇圧電圧V2に昇圧されて出力される。
【0055】
駆動信号出力回路104は、PWMパルス出力回路111から出力されるPWMパルスがHレベルになるのに応じてスイッチング素子104aがオンになり、出力される駆動信号の電圧Vdvは、期間t1の間、電圧制御回路103によって昇圧された昇圧電圧V2になり、期間t1経過後、所定電圧V1に戻る。そこで、スイッチング素子11のゲートと負電源等との間の静電容量に電荷が速やかに充電され、前記ゲート電圧Vgsが速やかに上昇して、スイッチング動作が開始される。すなわち、図3に併せて破線で示すように駆動信号の電圧が期間t1に昇圧されない場合に比べて、短期間にスイッチング動作が行われる。
【0056】
尚、詳しくは、その後の期間tmはスイッチング素子11の寄生容量の変化(一般的に、ミラー効果と呼ばれる)により、ゲート電圧Vgsはほぼ一定のある電圧になり、ミラー効果が完了した後に、駆動信号出力回路104から供給される電圧V1まで上昇する。
【0057】
前記ゲート電圧Vgsの速やかな変化に応じたスイッチング動作によって、スイッチング素子11のソース/ドレイン間の電圧Vdsは急激に低下し、電流Idsは急激に上昇する。従って、図3に示すように、スイッチング損失(Vds×Idsで囲まれた面積)が、昇圧されない場合のスイッチング損失Dに比べてスイッチング損失D’と小さく抑えられる。
【0058】
前記のように、本実施形態では、図3から判るように、スイッチング素子11をターンオンする際には、PWMパルス出力回路111から出力されるPWMパルスのHレベルへの遷移時からスイッチング素子11のゲート電圧が所定電圧Vgstに上昇するまでの初期期間t1だけ、定常的にゲートに印加する所定電圧V1よりも高い昇圧電圧V2を印加することによって、スイッチング素子11のゲートに常に過大な電圧を印加することなくスイッチング動作を速くすることが可能となる。よって、スイッチング素子11のゲートに余分なストレスをかけることなく、遅延時間を短くし、且つスイッチング損失を低減することができる。
【0059】
(昇圧指示信号出力回路の具体例)
前記昇圧指示信号出力回路101は、具体的には、図4に示すように、ゲート電圧検出回路201で具体化される。
【0060】
前記ゲート電圧検出回路(制御電圧検出回路)201は、スイッチング素子11のゲート電圧(制御電圧)を検出し、その検出したゲート電圧(電圧検出信号)が図5に示すように所定電圧Vgstよりも低い場合にHレベルの昇圧指示信号を出力し、前記所定電圧Vgstを越えると、その出力した昇圧指示信号をLレベルに戻す。前記所定電圧Vgstは例えばスイッチング素子11の閾値電圧以下の電圧値であって、望ましくはスイッチング素子11の閾値電圧である。
【0061】
前記のように構成されたスイッチング素子駆動回路200の動作を図5に基づいて説明する。
【0062】
PWMパルス出力回路111から出力されるPWMパルスがLレベルの間は、駆動信号出力回路104は電圧制御回路103の所定電圧V1を出力し、スイッチング素子11のゲート電圧Vgsも前記所定電圧V1になる。このゲート電圧Vgsは閾値電圧Vgstよりも低いので、ゲート電圧検出回路201から出力される昇圧指示信号はHレベルになる。そこで、電圧制御回路103は所定の周波数の昇圧パルスを出力し、電圧制御回路103は制御電源102からの所定電圧V1を昇圧電圧V2に昇圧する。但し、前記のようにPWMパルスがLレベルの間は前記昇圧電圧V2は駆動信号出力回路104から出力されない。
【0063】
この状態でPWMパルスがHレベルになると、駆動信号出力回路104から出力される駆動電圧Vdvは、前記昇圧電圧V2になり、スイッチング素子11のゲート電圧Vgsが速やかに上昇する。
【0064】
やがて、ゲート電圧Vgsが閾値電圧Vgstを超えると、ゲート電圧検出回路201から出力される昇圧指示信号はLレベルになる。そこで、電圧制御回路103は昇圧を停止して所定電圧V1を出力し、駆動信号出力回路104から出力される駆動電圧Vdvも所定電圧V1になる。
【0065】
すなわち、スイッチング素子11を速やかにオン状態にするために必要十分な時間だけ、昇圧電圧V2がゲートに印加される。また、ゲート電圧Vgsに応じて、駆動信号出力回路104から出力される駆動電圧Vdvが制御されることにより、昇圧電圧V2が印加され続けることによる発振動作などの異常現象が抑制されるので、常に安定した高速なスイッチング動作を行わせることが容易にできる。
(第1の実施形態の変形例)
次に、前記第1の実施形態の変形例を説明する。
【0066】
スイッチング素子を駆動するスイッチング素子駆動回路においては、駆動回路の簡略化及び低コスト化などの点から単電源が望ましい。しかし、スイッチング素子がオン動作する閾値電圧が低い場合や、ノーマリオンのスイッチング素子(閾値電圧が負電圧であるもの)を駆動する場合においては、確実にオフ動作をさせるために負電源を用いる必要がある。そのようなスイッチング素子駆動回路の例を説明する。
【0067】
スイッチング素子駆動回路の変形例について図6を用いて説明する。スイッチング素子駆動回路800は、図6に示すように、図1のスイッチング素子駆動回路100に加えて、昇圧指示信号出力回路801、制御電源102、及び電圧制御回路103が設けられている。前記昇圧指示信号出力回路801、制御電源102、及び電圧制御回路103は、各々昇圧指示信号出力回路101、制御電源102、及び電圧制御回路103と同様の構成を有し、但し、逆極性の電圧で動作するようになっている。これにより、正負の両電源を必要とするスイッチング素子の駆動などにも対応できる。また、スイッチング素子のターンオン動作用とターンオフ動作用に、個別に制御回路を構成できるので、どちらか一方のみ、高速及び低速にスイッチング動作することも可能である。よって、電力変換器、更には電力変換器を用いたシステムに適したスイッチング動作を実現できる。
【0068】
前記の例では、パルス信号に応じた間欠的な所定の期間内で駆動電圧を変化させる例として、スイッチング素子11をオン状態にする際に駆動電圧を上昇させる例を示したが、これに限らず、例えば図7(a)に示すように、オフ状態にする際に駆動電圧をより低くして、速やかにオフ状態にすることにより、オフになる時のスイッチング損失も低減し得るようにしても良いし、更に、これらを組み合わせて、オン状態にする際に駆動電圧を上昇させるとともにオフ状態にする際により低くするようにしても良い。
【0069】
また、逆に、例えば図7(b)、(c)に示すように、オン時及びオフ時の一方で、又は両方で、駆動電圧を中間の電圧にして、積極的にサージ電圧及びサージ電流の低減等を図るようにしても良い。
【0070】
(駆動信号出力回路の変形例)
前記図1及び図4に示したスイッチング素子駆動回路では、駆動信号出力回路104から出力する駆動信号として印加する電圧を、電圧制御回路103により所定電圧V1と昇圧電圧V2とに変更したが、本変形例では、駆動信号出力回路は、スイッチング素子11へ出力する駆動信号の電圧の変更に代えて、その駆動信号に印加する電圧は固定値とし、スイッチング素子11へ出力する駆動信号として流す電流を大小変更するものである。
【0071】
図8に示したスイッチング素子駆動回路では、駆動信号出力回路204は、上下アーム接続されたスイッチング素子204a、204bと、抵抗204dと、この抵抗204dと並列接続されたスイッチング素子204cとを備えている。
【0072】
図8に示したスイッチング素子駆動回路では、更に、電流増大指示信号出力回路701と、制御電源102とを備えている。電流増大指示信号出力回路701は、スイッチング素子11をオン状態にする際に、例えば実施形態1で説明した期間t1に相当する間、電流増大指示信号を断続的にHレベルにして、スイッチング素子204cを間欠的にオン状態にするようになっている。前記駆動信号出力回路204のスイッチング素子204cは、前記電流増大指示信号がHレベルになったときにオン状態になるようになっている。尚、スイッチング素子11がオン状態になった後には、スイッチング素子704cは、例えばオフにされる。
【0073】
前記のように構成されていることにより、PWMパルスがLレベルからHレベルになる際に、制御電源102からスイッチング素子204aを介して流れる電流は、スイッチング素子204cがオフの間は抵抗204dを介してスイッチング素子11のゲートに流れる一方、スイッチング素子204cがオンの間はスイッチング素子204cを介して流れる。そこで、抵抗204dを介さないで流れる場合に比べて安定度を高く保ちつつ、抵抗204dだけを介して流れる場合に比べて、スイッチング素子11のゲートに電荷が速やかに充電され、スイッチングが高速に行われて、スイッチング損失を小さく抑えられる。
【0074】
ここで、スイッチング素子11をオフする際には、スイッチング素子204cがオフ状態でも、スイッチング素子24cの寄生ダイオードにより、オフ時間を短縮させることができるが、寄生ダイオードと並列に高速動作可能なショットキーダイオードを接続することによって、前記オフ時間をより短縮することが容易にできる。
【0075】
(第2の実施形態)
図9は、本発明の第2の実施形態に係るスイッチング素子駆動回路の回路構成図を示す。
【0076】
同図において、スイッチング素子駆動回路2は、PWMパルス出力回路3のPWM信号に応じて、電圧駆動形スイッチング素子1をスイッチング動作する駆動信号を出力する。ここで、駆動信号は、PWM信号に同期している。スイッチング素子駆動回路2は、駆動信号出力回路4と、オン用制御電圧回路5、オフ用制御電圧回路6と、第1の制御電圧検出回路7とを備えている。
【0077】
前記PWMパルス出力回路3の出力は、スイッチング素子駆動回路2の入力に接続され、スイッチング素子駆動回路2の出力は、電圧駆動形スイッチング素子1の制御端子(ゲート端子)に接続されている。また、スイッチング素子駆動回路2は、駆動信号出力回路4と、オン用制御電圧回路5と、オフ用制御回路6とにより構成されている。オン用制御電圧回路5及びオフ用制御電圧回路6の少なくとも1つは、制御電圧検出回路7で検出且つ出力された電圧検出信号により、出力する電圧を変化させることが可能である。
【0078】
前記駆動信号出力回路4は、PWMパルス出力回路3から出力されるPWM信号に同期し、且つ電力増幅された信号を電圧駆動形スイッチング素子1の制御端子に出力する。
【0079】
次に、オン用制御電圧回路5及びオフ用制御電圧回路6、制御電圧検出回路7について、具体的な回路例を用いて説明する。
【0080】
図10及び図11は、オン用制御電圧回路5、オフ用制御電圧回路6の回路図の一例である。
【0081】
図10において、オン用制御電圧回路5は、電圧切換回路51と、電圧可変回路52とにより構成されている。電圧可変回路52は、3端子レギュレータ500、2個の抵抗R1、R2、2個のコンデンサC1、C2を備え、コンデンサC1に基準電圧源505の電圧をターンオン用の所定電圧V1として与え、3端子レギュレータ(昇圧回路)500によりコンデンサC2に前記ターンオン用の所定電圧V1を1.5〜2倍程度に可変(昇圧)した昇圧電圧V2を発生させる。電圧切換回路51は、ロジック回路と電圧可変回路52の入力電圧と出力電圧を切り替えるトランジスタ501、502とにより構成されている。
【0082】
また、電圧切換回路51には、PWM信号と電圧検出信号とが入力され、その各々がHihgレベルとLowレベルである場合のみトランジスタ502をオン、トランジスタ501をオフし、それ以外の場合はトランジスタ502をオフ、トランジスタ503をオンしている。
【0083】
図14の動作波形より、PWM信号がHighレベル且つ検出信号がLowレベルである場合は、時刻t1’からt4’までの期間であることが判る。
【0084】
前記オフ用制御電圧回路6は、図11において、電圧切換回路61と、電圧可変回路62とにより構成されている。前記オン用制御電圧回路5との違いは、電圧切換回路51及び電圧可変回路52を、電圧切換回路61及び電圧可変回路62に変更した点である。電圧切換回路61により、PWM信号と検出信号とが各々LowレベルとHighレベルである場合のみトランジスタ502をオン、トランジスタ501をオフし、それ以外の場合はトランジスタ502をオフ、トランジスタ501をオンしている。また、電圧可変回路62は、3端子レギュレータ600、2個の抵抗R5、R6、2個のコンデンサC5、C6を備え、コンデンサC5に電圧源605の電圧をターンオフ用の所定電圧V3として与え、3端子レギュレータ(降圧回路)600によりコンデンサC6に前記ターンオフ用の所定電圧V3を1.5〜2倍程度に可変(降圧)した降圧電圧V4を発生させる。図14の動作波形より、PWM信号がLowレベル且つ検出信号がHighレベルである場合は、時刻t5’からt8’までの期間であることが判る。基本的な動作は同じなので、説明は省略する。
【0085】
図12は、第1の制御電圧検出回路7の回路図の一例である。図12において、第1の制御電圧検出回路7は、分圧回路71と、第1の判定回路72と、第2の判定回路73と、アンド回路74とにより構成される。電圧駆動形スイッチング素子1の制御端子に印加される電圧は、分圧回路71により検出される。ここで、分圧回路71に用いられる抵抗は十分大きく、分圧比は1:10以上であることが望ましい。第1の判定回路72及び第2の判定回路73は、各々、第1の基準電圧703及び第2の基準電圧704により、分圧回路71で検出された制御電圧を判定(基準電圧よりも大きいか小さいかを判定)し、その結果を出力する。ここで、第1の基準電圧703と第2の基準電圧704は、電圧駆動形スイッチング素子1の閾値電圧よりも、一方が低い電圧であり、他方は高い電圧となるように設定する。望ましくは、閾値電圧の±10%以内で設定するのが良い。
【0086】
次に、図13を用いて、詳細な検出タイミングを説明する。図13は、駆動信号と、制御電圧検出回路7により検出された検出信号との動作波形を示す。
【0087】
電圧駆動形スイッチング素子1の閾値電圧をVthとし、制御電圧検出回路7における第1の基準電圧及び第2の基準電圧を、各々V10とV20とすると、閾値電圧Vthと第1の基準電圧V10及び第2の基準電圧V20は、図中のようになる。そうすると、電圧駆動形スイッチング素子1のターンオン時に、第1の判定回路72及び第2の判定回路73の出力は、各々電圧V10と電圧V20に達した時点で、LowレベルからHighレベルに瞬時に切り替わり、ターンオフ時には、第1の判定回路72及び第2の判定回路73の出力は、各々、電圧V10と電圧V20に達した時点で、HighレベルからLowレベルに瞬時に切り替わる。よって、制御電圧検出回路7の出力する検出信号は、図中にあるようになり、ターンオン時及びターンオフ時ともに、ミラー効果が終了した時点で出力レベルが切り替わる。故に、PWM信号の入力からミラー効果が終了するまでの間、制御電圧検出回路7の出力する電圧は、遅延時間を短縮するように、又はスイッチング損失を低減するように、可変する。
【0088】
このように、制御電圧を抵抗分圧により検出し、2つの基準電圧を用いた判定回路により検出信号を出力することで、ターンオン動作とターンオフ動作におけるミラー効果が終了した時点を、容易に且つ確実に検出することができる。
【0089】
次に、図14を用いて、図9に示したスイッチング素子駆動回路2及び電圧駆動形スイッチング素子1における動作波形を示す。同図において、PWM信号、駆動信号、ドレイン電流、ドレイン電圧、検出信号、オン用制御電圧、オフ用制御電圧は、各々PWMパルス出力回路3の出力信号、スイッチング素子駆動回路2の出力信号、電圧駆動形スイッチング素子1のドレイン電圧、ドレイン電流、第1の制御電圧検出回路7の出力信号、オフ用制御電圧回路5の出力電圧、オフ用制御電圧回路6の出力電圧である。
【0090】
同図から判るように、PWMパルス出力回路3が電圧駆動形スイッチング素子1をオン/オフさせるためのHレベルのPWM信号を出力スルのに対応して、駆動信号出力回路4から出力される駆動信号は、前記PWM信号がHレベルに遷移し始めた時点から、このPWM信号がLレベルに遷移し、その後、この駆動信号が基の電圧値に戻るまでの所定期間だけ出力される。ここで、PWM信号がHレベルに遷移した時点から駆動信号の電圧が実際に上昇し始めるまでの時間は、駆動信号出力回路4の動作の遅延時間である。以下、詳細に説明する。
【0091】
先ず、PWMパルス出力回路3が電圧駆動形スイッチング素子1をオン/オフさせるためのPWM信号を出力する。PWM信号は、図中の時刻t1’でLowレベルからHighレベルに瞬時に切り替わり、時刻t5’でHighレベルからLowレベルに瞬時に切り替わる。次に、スイッチング素子駆動回路2により、PWM信号の電力増幅がなされ、電圧形スイッチング素子1の制御端子に駆動信号として入力される。駆動信号は、PWM信号に同期して動作する。
【0092】
電圧駆動形スイッチング素子1のターンオン動作において、詳細に説明する。時刻t1’でPWM信号はHighレベルとなり、オン用制御電圧回路5は定常時の所定電圧V1よりも高い電圧V2を出力する。スイッチング制御回路2内の回路による遅延や制御抵抗による電流制限の影響で、駆動信号の立上がりは、時刻t2’まで遅延する。しかしながら、オン用制御電圧回路5から出力される昇圧電圧V2が定常時の所定電圧V1よりも高いので、電圧駆動形スイッチング素子1の制御端子に流入する電流を大きくできる。故に、時刻t1’から遅延するt2’までのターンオン遅延時間を短縮することができる。
【0093】
時刻t2’から、電圧駆動形スイッチング素子1のゲート・ソース間容量(図示しない。)に充電が開始され、駆動信号(すなわち、制御端子の電圧)は徐々に上昇する。時刻t3’に、電圧駆動型スイッチング素子1の閾値電圧に達し、電圧駆動形スイッチング素子1がオンすることにより、ゲート・ソース間容量に加えてドレイン・ゲート容量(図示しない。)にも充電を開始する。充電がほぼ完了する時刻t4’までの間、駆動信号は閾値電圧の近傍でクランプされる。この充電動作においても、オン用制御電圧回路5が定常時の所定電圧V1よりも高い昇圧電圧V2を出力しているので、速やかに充電動作が完了し、駆動信号が閾値電圧の近傍でクランプされる時間が短縮される。時刻t4’を過ぎた時点で、第1の制御電圧検出回路7から出力される検出信号がLowレベルからHighレベルに瞬時に切り替わり、それに応じて、オン用制御電圧回路5の出力電圧を昇圧電圧V2から定常時の所定電圧V1に戻す。駆動信号の電圧は徐々に上昇し、オン用制御電圧回路5が出力する定常時の所定電圧V1に達し、ターンオン動作を終了する。電圧形スイッチング素子1は、時刻t3’からドレイン電流が流れ始め、時刻t4’には所望のドレイン電流が流れ、ドレイン電圧は定常状態になる。上述したように、時刻t3’からt4’までの間は短縮されるので、ドレイン電流及びドレイン電圧の動作時間も短縮される。
【0094】
続いて、電圧駆動形スイッチング素子1のターンオフ動作、即ち、PWM信号がLowレベルに遷移した以降の所定期間の終期について、詳細に説明する。時刻t5’でPWM信号はLowレベルとなり、オフ用制御電圧回路6は定常時の所定電圧V3より低い降圧電圧V4を出力する。ターンオン動作同様に、スイッチング制御回路2内の回路による遅延や制御抵抗による電流制限の影響で、駆動信号の立下りは、時刻t6’まで遅延する。しかしながら、オフ用制御電圧回路6から出力される降圧電圧V4が定常時の所定電圧V3よりも低いので、電圧駆動形スイッチング素子1の制御端子から流出する電流を大きくできる。故に、時刻t1’から遅延するt2’までのターンオフ遅延時間を短縮することができる。
【0095】
時刻t6’から、電圧駆動形スイッチング素子1のゲート・ソース間容量とドレイン・ゲート間容量から放電が開始され、駆動信号(すなわち、制御端子の電圧)は徐々に下降する。時刻t7’に、電圧駆動型スイッチング素子1の閾値電圧に達し、電圧駆動形スイッチング素子1がオフして、ゲート・ソース間容量のみでそのまま放電し続ける。この動作により、これもターンオン動作同様に、放電がほぼ完了される時刻t8’までの間、駆動信号は閾値電圧の近傍でクランプされる。この放電動作においても、オフ用制御電圧回路6が定常時の所定電圧V3よりも低い降圧電圧V4を出力しているので、速やかに放電動作が完了し、駆動信号が閾値電圧の近傍でクランプされる時間が短縮される。時刻t8’を過ぎた時点で、第1の制御電圧検出回路7から出力される検出信号がHighレベルからLowレベルに瞬時に切り替わり、それに応じて、オフ用制御電圧回路6の出力電圧を降圧電圧V4定常時の所定電圧V3に戻す。時刻t8’から徐々に下降し、オフ用制御電圧回路6が出力するオフ用制御電圧に達し、ターンオフ動作を終了する。電圧形スイッチング素子1は、時刻t7’からドレイン電流が流れ始め、時刻t8’には所望のドレイン電流が流れ、ドレイン電圧は定常状態になる。上述したように、時刻t7’からt8’までの間は短縮されるので、ドレイン電流及びドレイン電圧の動作時間も短縮される。
【0096】
よって、ミラー効果が開始するまでの間、オン用制御電圧(オフ用制御電圧)を、定常時の電圧よりも高く(低く)した場合、ターンオン(ターンオフ)動作時の遅延時間を大幅に短縮することができる。これは、インバータ及びコンバータのような電力変換器において、上下アーム(電源に対して、スイッチング素子を直列接続したもの)ともにオフするデッドタイム(休止期間もいう)を大幅に短縮し、デッドタイムの影響で発生する電流歪などを抑制できる。
【0097】
更に、ミラー効果が終了するまでの間、オン用制御電圧(オフ用制御電圧)を、定常時の電圧よりも高く(低く)した場合、ターンオン(ターンオフ)動作時のスイッチング動作を高速にし、スイッチング損失を低減することができる。
【0098】
尚、オン用制御電圧回路5及びオフ用制御電圧回路6で出力される電圧範囲は、定常時の出力電圧の1.5〜2倍程度が望ましい。オン用制御電圧回路5とオフ用制御電圧回路6との間で、出力される電圧範囲が異なっても良い。どちらか一方のみが、制御電圧に応じて出力電圧を変化させても良い。また、出力電圧は、瞬時又は徐々に変化させても良く、また複数回に分けて階段状に変化させても良い。更には、定常時の電圧と、高周波で交互に切り替えても良い。
【0099】
(オン用制御電圧発生回路及びオフ用制御電圧発生回路の変形例)
次に、図9に示したスイッチング素子駆動回路において、オン用制御電圧発生回路5及びオフ用制御電圧発生回路6の別の動作について、図15を用いて説明する。
【0100】
図15は、同じく、図9に示すスイッチング素子駆動回路2及び電圧駆動形スイッチング素子1における動作波形を示す。
【0101】
図14の動作波形においては、PWM信号が入力されてから、ミラー効果が終了するまでの間、制御電圧を変化させる実施形態を説明した。それに対して、本変形例では、ミラー効果の期間中のみ、制御電圧を変化させる。具体的には、図15で示すように、ターンオン動作時では時刻t3’からt4’の間のみ、オン用制御電圧回路5で出力する制御電圧を所定電圧V5から降圧電圧V6に低くする。また、ターンオフ動作時では、時刻t7’からt8’の間のみ、オフ用制御電圧回路6で出力する制御電圧を所定電圧V7から昇圧電圧V8に高くする。
【0102】
こうすることにより、ターンオン動作及びターンオフ動作において、遅延時間を延ばすことなく、スイッチング速度を緩やかにすることができる。故に、遅延時間による電流歪を抑制して、サージ電圧及びノイズの低減を図ることができる。
【0103】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態を説明する。
【0104】
本実施形態では、スイッチング素子駆動回路の全体構成は図9と同一である。異なる点は、第1の制御電圧検出回路7の構成が異なる。この第1の制御電圧検出回路の構成及び本実施形態のスイッチング素子駆動回路の動作について、図16及び図17を用いて説明する。
【0105】
図16は、第1の制御電圧検出回路7aの回路の一例であり、図17は、スイッチング素子駆動回路2に、制御電圧検出回路7aを用いた場合の動作波形図である。
【0106】
図16において、制御電圧検出回路7aは、分圧回路71と、第3の判定回路74と、遅延回路75と、アンド回路76とにより構成されている。
【0107】
第3の判定回路74は、分圧回路71で分圧、そして検出された駆動信号を、第3の基準電圧605と比較して判定出力する。ここで、第3の基準電圧605は、電圧駆動形スイッチング素子1の閾値電圧であることが望ましい。遅延回路75は、第3の判定回路74の出力信号を設定時間t0だけ遅延させた信号を出力する。この遅延時間t0は、遅延回路を構成する抵抗とコンデンサで決定され、ミラー効果期間中であることが望ましい。
【0108】
次に、図17を用いて、図16に示す制御電圧検出回路7aを電圧駆動形スイッチング素子1の駆動で用いた場合の動作波形を示す。同図において、PWM信号、駆動信号、ドレイン電流、ドレイン電圧、検出信号、オン用制御電圧、オフ用制御電圧は、各々、PWMパルス出力回路3の出力信号、スイッチング素子駆動回路2の出力信号、電圧駆動形スイッチング素子1のドレイン電圧、ドレイン電流、第1の制御電圧検出回路7aの出力信号、オフ用制御電圧回路5の出力電圧、オフ用制御電圧回路6の出力電圧である。
【0109】
主要な動作については、図14の説明で示したものと同じである。異なる点は、検出信号の動作タイミングが、PWM信号から駆動信号のミラー効果期間中であることである。
【0110】
図17に示したように、ターンオン動作においては、ミラー期間内である時刻t2’とt3’間にある時刻taで、オン用制御電圧が昇圧電圧V2から所定電圧V1に戻るので、その時点からは、ドレイン電流及びドレイン電圧の変化率が緩やかになり、結果として、スイッチング動作時に発生するサージ電流及びノイズの低減が図れる。また、ターンオフ動作においても、ミラー期間内である時刻t6’とt7’間にある時刻tbにおいて、オフ用制御電圧が降圧電圧V4から所定電圧V3に戻るので、その時点からドレイン電流及びドレイン電圧の変化率が緩やかになり、結果として、スイッチング動作時に発生するサージ電圧及びノイズの低減が図れる。
【0111】
(制御電圧検出回路の変形例)
更に、制御電圧検出回路の別変形例について説明する。
【0112】
図18は、電圧駆動形スイッチング素子1の閾値電圧Vthの温度特性を示す図である。
【0113】
電圧駆動形スイッチング素子1の閾値電圧Vthは、通常2〜5〔V〕になるように設計されているが、温度に応じて変化することが知られている。常温(図中のTa領域)では、通常2〜5〔V〕であり、低温(図中のTc領域)では、常温よりも高い電圧値となり、高温(図中のTh領域)では、常温より低い電圧値となる。また、温度に応じてリニア特性となる。よって、常温での閾値電圧Vth_aを基に、第1の基準電圧、第2の基準電圧、第3の基準電圧を設定した場合には、低温及び高温時に、所望のスイッチング動作をするように制御することが難しくなるため、電圧駆動形スイッチング素子1の温度に応じて、第1の基準電圧、第2の基準電圧、第3の基準電圧を各々選択し、設定することが望ましい。本変形例では、図16の第1の制御電圧検出回路7aに備える第3の判定回路74において、電圧駆動形スイッチング素子1の閾値電圧を設定する第3の基準電圧605について、前記のように温度に応じて選択、設定する。
【0114】
そうすることにより、電圧駆動形スイッチング素子1の温度状態に応じた最適な制御電圧を制御することができ、より一層にサージ電圧及びノイズの低減を図ることができる。
【0115】
(第4の実施形態)
続いて、本発明の第4の実施形態のスイッチング素子駆動回路について、図19を用いて説明する。
【0116】
図19は、本実施形態に係るスイッチング素子駆動回路の回路構成図を示す。
【0117】
同図において、スイッチング素子駆動回路2aは、PWMパルス出力回路3のPWM信号に応じて、電圧駆動形スイッチング素子1をスイッチング動作する駆動信号を出力する。ここで、駆動信号は、PWM信号に同期している。スイッチング素子駆動回路2aは、駆動信号出力回路4と、オン用制御電圧回路5、オフ用制御電圧回路6と、制御抵抗106と、第2の制御電圧検出回路8とを備えている。
【0118】
本実施形態では、図9とは、第1の制御電圧検出回路が第2の制御電圧検出回路8に変更されたことと、制御抵抗106が追加されている点が異なる。
【0119】
図19では、PWMパルス出力回路3の出力は、スイッチング素子駆動回路2aの入力に接続され、スイッチング素子駆動回路2aの出力は、電圧駆動形スイッチング素子1の制御端子に接続されている。また、スイッチング素子駆動回路2aは、駆動信号出力回路4と、オン用制御電圧回路5と、オフ用制御回路6と、制御抵抗106で構成されている。駆動信号出力回路4は、PWMパルス出力回路3から出力されるPWM信号に同期し、且つ電力増幅された信号を制御抵抗106を介して、電圧駆動形スイッチング素子1の制御端子に出力する。
【0120】
制御電圧検出回路8は、前記制限抵抗106の両端で検出された第1の制御電圧(スイッチング素子の制御端子に近い側)と、第2の制御電圧(スイッチング素子の制御端子と他方の側)との電圧差に応じて、電圧検出信号を出力する。
【0121】
前記制御抵抗106の電圧差を検出することは、電圧駆動形スイッチング素子1の制御端子に流入する制御電流を検出することと同じである。ここでは、図示しないが、制御電流は、制御電圧と共に変化し、ミラー効果が終了する時刻には、制御電流もほとんど流れなくなる。よって、第1の制御電圧と第2の制御電圧との電圧差(つまり、制御電流)を検出することにより、以上で説明した実施形態同様な効果が得られる。故に、スイッチング動作時に発生するサージ電圧及びノイズの低減が図れる。
【0122】
また、インバータ及びコンバータなどの電力変換器において、SiC及びGaNを含むスイッチング素子を用いる場合には、従来のSi系のスイッチング素子よりも高耐圧且つ高破壊耐量なスイッチング素子となるので、更に高速なスイッチング動作を実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0123】
以上説明したように、本発明は、スイッチング素子のスイッチング損失を抑制したり、電圧変換装置等の小型化やコスト削減が可能であるので、大電力をスイッチングするIGBTやMOSFETなどのスイッチング素子を駆動するスイッチング素子駆動回路等として有用である。
【符号の説明】
【0124】
1 電圧形スイッチング素子
2、2a スイッチング素子駆動回路
3 PWMパルス出力回路
4 駆動信号出力回路
5 オン用制御電圧回路
6 オフ用制御電圧回路
7、7a 第1の制御電圧検出回路
8 第2の制御電圧検出回路
51、61 電圧切換回路
52、62 電圧可変回路
71 分圧回路
72 第1の判定回路
73 第2の判定回路
74 第3の判定回路
75 遅延回路
603 第1の基準電圧
604 第2の基準電圧
605 第3の基準電圧
606 制御抵抗
500 3端子レギュレータ
501、502、503 トランジスタ
11 スイッチング素子
21 電源
100 スイッチング素子駆動回路
101 昇圧指示信号出力回路
102 制御電源
103 電圧制御回路(制御回路)
104 駆動信号出力回路
104a スイッチング素子
104b スイッチング素子
111 PWMパルス出力回路
200 スイッチング素子駆動回路
201 ゲート電圧検出回路(制御電圧検出回路)
800 スイッチング素子駆動回路
801 昇圧指示信号出力回路
802 制御電源
803 電圧制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルス信号を受け、このパルス信号に応じた所定期間、電力変換回路に備えるスイッチング素子の制御端子に駆動信号を出力するスイッチング素子駆動回路であって、
前記スイッチング素子の制御端子に与える駆動信号として印加する電圧又は流す電流を、所定電圧又は所定電流とは異なる電圧又は電流に変更する制御回路と、
前記スイッチング素子の制御端子の電圧を検出する制御電圧検出回路とを有し、
前記制御回路は、
前記制御電圧検出回路の電圧検出信号を受け、前記スイッチング素子の制御端子の電圧値に応じて、前記パルス信号に応じた所定期間の一部の期間として、前記スイッチング素子のターンオン時におけるミラー効果期間の一部を含む一定期間において、前記スイッチング素子の制御端子に与える駆動信号として印加する電圧又は流す電流を前記所定電圧又は所定電流よりも大値の電圧又は電流に変更し、かつ前記パルス信号に応じた所定期間の一部の期間として、前記スイッチング素子のターンオフ時におけるミラー効果期間の一部を含む一定期間において、前記スイッチング素子の制御端子に与える駆動信号として印加する電圧又は流す電流を前記所定電圧又は所定電流よりも小値の電圧又は電流に変更するように構成された
ことを特徴とするスイッチング素子駆動回路。
【請求項2】
請求項1記載のスイッチング素子駆動回路において、
前記制御回路は、
前記パルス信号に応じた所定期間の一部の期間として、この所定期間の開始時から前記スイッチング素子のターンオン時におけるミラー効果期間の終了時までの期間において、前記スイッチング素子の制御端子に与える駆動信号として印加する電圧又は流す電流を変更する
ことを特徴とするスイッチング素子駆動回路。
【請求項3】
請求項2記載のスイッチング素子駆動回路において、
前記制御回路は、
前記スイッチング素子のターンオン時にその制御端子に与える駆動信号の電圧をターンオン用の所定電圧よりも高い電圧に変更するオン用制御電圧回路を有し、
前記制御電圧検出回路は、
前記スイッチング素子の制御端子の電圧として、前記スイッチング素子の閾値電圧よりも所定電圧高い電圧値を検出し、この所定電圧高い電圧値の検出時に前記電圧検出信号を前記制御回路のオン用制御電圧回路に出力し、
前記オン用制御電圧回路は、
前記パルス信号に応じた所定期間の開始時に前記スイッチング素子の制御端子に与える駆動信号として印加する電圧を前記ターンオン用の所定電圧よりも高い電圧に変更し、前記制御電圧検出回路の前記電圧検出信号を受けた時に前記高電圧への変更を停止する
ことを特徴とするスイッチング素子駆動回路。
【請求項4】
請求項1記載のスイッチング素子駆動回路において、
前記制御回路は、
前記スイッチング素子のターンオフ時にその制御端子に与える駆動信号として印加する電圧をターンオフ用の所定電圧よりも低い電圧に変更するオフ用制御電圧回路を有し、
前記制御電圧検出回路は、
前記スイッチング素子の制御端子の電圧として、前記スイッチング素子の閾値電圧よりも所定電圧低い電圧値を検出し、この所定電圧低い電圧値の検出時に前記電圧検出信号を前記制御回路のオフ用制御電圧回路に出力し、
前記オフ用制御電圧回路は、
前記パルス信号を受けなくなった時点で前記スイッチング素子の制御端子に与える駆動信号として印加する電圧を前記ターンオフ用の所定電圧よりも低い電圧に変更し、前記制御電圧検出回路の前記電圧検出信号を受けた時に前記低電圧への変更を停止する
ことを特徴とするスイッチング素子駆動回路。
【請求項5】
請求項1記載のスイッチング素子駆動回路において、
前記制御回路は、
前記パルス信号に応じた所定期間の一部の期間として、前記スイッチング素子のミラー効果期間の全てを含む期間において、前記スイッチング素子の制御端子に与えている駆動信号として印加する電圧又は流す電流を変更する
ことを特徴とするスイッチング素子駆動回路。
【請求項6】
請求項1記載のスイッチング素子駆動回路において、
前記制御回路は、
前記パルス信号に応じた所定期間の一部の期間として、この所定期間の開始時から前記スイッチング素子のターンオン時におけるミラー効果期間の途中までの期間において、前記スイッチング素子の制御端子に与える駆動信号として印加する電圧又は流す電流を変更する
ことを特徴とするスイッチング素子駆動回路。
【請求項7】
請求項6記載のスイッチング素子駆動回路において、
前記制御回路は、
前記スイッチング素子のターンオン時にその制御端子に与える駆動信号として印加する電圧をターンオン用の所定電圧よりも高い電圧に変更するオン用制御電圧回路を有し、
前記制御電圧検出回路は、
前記スイッチング素子の制御端子の電圧として、前記スイッチング素子の閾値電圧を検出し、この閾値電圧の検出後、予め定めた設定時間の経過時に前記電圧検出信号を前記制御回路のオン用制御電圧回路に出力し、
前記オン用制御電圧回路は、
前記パルス信号に応じた所定期間の開始時に前記スイッチング素子の制御端子に与える駆動信号として印加する電圧を前記ターンオン用の所定電圧よりも高い電圧に変更し、前記制御電圧検出回路の前記電圧検出信号を受けた時に前記高電圧への変更を停止する
ことを特徴とするスイッチング素子駆動回路。
【請求項8】
請求項1記載のスイッチング素子駆動回路において、
前記制御回路は、
前記パルス信号に応じた所定期間の一部の期間として、前記パルス信号を受けなくなった時点から前記スイッチング素子のターンオフ時におけるミラー効果期間の途中までの期間において、前記スイッチング素子の制御端子に与える駆動信号として印加する電圧又は流す電流を変更する
ことを特徴とするスイッチング素子駆動回路。
【請求項9】
請求項8記載のスイッチング素子駆動回路において、
前記制御回路は、
前記スイッチング素子のターンオフ時にその制御端子に与える駆動信号として印加する電圧をターンオフ用の所定電圧よりも低い電圧に変更するオフ用制御電圧回路を有し、
前記制御電圧検出回路は、
前記スイッチング素子の制御端子の電圧として、前記スイッチング素子の閾値電圧未満の所定電圧値を検出し、この所定電圧値の検出後、予め定めた設定時間の経過時に前記電圧検出信号を前記制御回路のオフ用制御電圧回路に出力し、
前記オフ用制御電圧回路は、
前記パルス信号を受けなくなった時点で前記スイッチング素子の制御端子に与える駆動信号として印加する電圧を前記ターンオフ用の所定電圧よりも低い電圧に変更し、前記制御電圧検出回路の前記電圧検出信号を受けた時に前記低電圧への変更を停止する
ことを特徴とするスイッチング素子駆動回路。
【請求項10】
請求項1、3、4、7及び9の何れか1項に記載のスイッチング素子駆動回路において、
前記制御電圧検出回路におけるスイッチング素子の閾値電圧は、温度補正される
ことを特徴とするスイッチング素子駆動回路。
【請求項11】
請求項10記載のスイッチング素子駆動回路において、
前記制御電圧検出回路におけるスイッチング素子の閾値電圧は、
前記スイッチング素子の温度が低くなるほど高く補正され、前記スイッチング素子の温度が高くなるほど低く補正される
ことを特徴とするスイッチング素子駆動回路。
【請求項12】
請求項1記載のスイッチング素子駆動回路において、
前記スイッチング素子の制御端子に接続される制御抵抗を更に備え、
前記制御電圧検出回路は、前記制御抵抗の両端の電圧を検出する
ことを特徴とするスイッチング素子駆動回路。
【請求項13】
前記請求項1〜12の何れか1項に記載のスイッチング素子駆動回路において、
前記スイッチング素子は、
SiC又はGaNを含むワイドバンドギャップ半導体により構成される
ことを特徴とするスイッチング素子駆動回路。
【請求項14】
請求項1記載のスイッチング素子駆動回路において、
前記制御回路は、
前記所定電圧を昇圧又は降圧する昇降圧回路を有し、
前記昇降圧回路は、前記制御電圧検出回路の電圧検出信号を受け、前記スイッチング素子の制御端子に与える駆動信号として印加する電圧又は流す電流を前記所定電圧又は所定電流よりも大値又は小値の電圧又は電流に変更するように構成された
ことを特徴とするスイッチング素子駆動回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2012−147492(P2012−147492A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−96238(P2012−96238)
【出願日】平成24年4月20日(2012.4.20)
【分割の表示】特願2008−557532(P2008−557532)の分割
【原出願日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】