説明

スキャナー、電気光学パネル、電気光学表示装置及び電子機器

【課題】双方向転送機能を有したスキャナーで信号数を削減するとともに出力電位を安定化させる。
【解決手段】同一導電型のトランジスターで構成された複数の単位回路510からなる双方向転送可能なスキャナーであって、前記スキャナーを構成する前記単位回路510は、外部から与えられる信号を選択的に出力端子に出力する出力トランジスターを有し、前記出力トランジスターのゲート電極は第1の方向スイッチを介して他の単位回路510の出力端子である第1の端子に電気的に接続され、前記出力トランジスターのゲート電極は第2の方向スイッチを介してさらに他の単位回路510の出力端子である第2の端子にも電気的に接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スキャナー、電気光学パネル、当該電気光学パネルを備える電気光学表示装置、及び当該電気光学表示装置を備える電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
アクティブマトリクス装置を用いた電気光学パネルを低コスト化する手法として、アクティブマトリクス装置と同一基板上に駆動回路を内蔵する技術が知られている。特に駆動回路をn型もしくはp型どちらかの同一導電型のトランジスターのみで回路構成すればコスト削減効果は高い。この場合、駆動回路の出力信号の電位振幅を十分得るためにブートストラップを用いたスキャナーを走査線駆動回路として用いる構成が一般的であり、数多くの回路構成が提案されている(例えば特許文献1)。
【0003】
ここで走査線駆動回路にはスキャン方向を反転する双方向機能が要求されることがある。例えば表示装置に用いる場合、走査線のスキャン方向を反転すれば表示も容易かつ低コストで反転表示が可能となる。
【0004】
このような双方向機能つき走査線駆動回路を同一導電型のトランジスターのみで回路構成した提案として特許文献2などがあげられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3658349号公報
【特許文献2】特許第3858136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2で提案されているような回路構成では外部から供給する必要のあるタイミング信号の数が多くなり、駆動するICのコストや電気光学パネルのサイズ、消費電力において不利となる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、同一導電型のトランジスターで構成された複数の単位回路からなる双方向転送可能なスキャナーであって、前記スキャナーを構成する前記単位回路は、外部から与えられる信号を選択的に出力端子に出力する出力トランジスターを有し、前記出力トランジスターのゲート電極は第1の方向スイッチを介して他の単位回路の出力端子である第1の端子に電気的に接続され、前記出力トランジスターのゲート電極は第2の方向スイッチを介してさらに他の単位回路の出力端子である第2の端子にも電気的に接続され、前記第1の方向スイッチはトランジスターであって、そのゲート電極は第1の方向信号が供給され、前記第2の方向スイッチはトランジスターであって、そのゲート電極は第2の方向信号が供給されることを特徴とするスキャナーである。
【0008】
このように構成することで、双方向転送を可能としつつ、消費電力も低減することができる。
【0009】
また、さらに本発明では、前記第1の方向信号は同一方向に転送中に一定の電位を保つ信号であり、前記第2の方向信号は前記第1の方向信号の電位とは異なる一定電位を同一に方向転送中に保つ信号であることを提案する。
【0010】
このように構成することで、双方向転送を可能としつつ、外部より入力する駆動信号の数を減らすことができ、消費電力も低減することができる。
【0011】
また、さらに本発明では、第1の整流素子が前記第1の方向スイッチと前記第1の端子との間に配置され、第2の整流素子が前記第2の方向スイッチと前記第2の端子との間に配置されることも提案する。
【0012】
このように構成することで、出力トランジスターのゲート電極のブートストラップされた電位が前段又は次段の出力端子に逆流することを防止でき、また前記第1の方向信号または前記第2の方向信号に印加する電位を高くせずとも、前記出力トランジスターのゲート電極にかかる電位を高くすることができる。このため、スキャナーからの出力信号の駆動能力を容易に高めることができ、またトランジスター特性の変動に対して強いため、特にポリシリコン薄膜やアモルファスシリコン薄膜を用いたトランジスターで回路を構成する場合に歩留まりが高く、信頼性に優れる。
【0013】
また、さらに第1の整流素子はトランジスターであって、その一端とゲート電極とが短絡されて前記第1の端子に電気的に接続され、第2の整流素子はトランジスターであって、その一端とゲート電極とが短絡されて前記第2の端子に電気的に接続されることも提案する。
【0014】
このように構成することで、方向スイッチと端子との間に配置される整流素子を容易に形成できる。
【0015】
また、さらに本発明はこれらのスキャナーを走査線駆動回路として基板上に形成した電気光学パネルとそれを用いた電気光学表示装置および電子機器を提案する。表示等を容易に反転する機能を有しつつ、コストやサイズを抑えた電気光学表示装置および電子機器が実現可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例に係る液晶表示装置910の斜視図。
【図2】本発明の実施例に係るアクティブマトリクス基板101の構成図。
【図3】本発明の実施例に係るアクティブマトリクス基板101の画素回路図。
【図4】本発明の電子機器1000の実施例を示すブロック図。
【図5】本発明の走査線駆動回路301の実施例を示すブロック図。
【図6】本発明の単位走査線駆動回路510−nの実施例を示す回路図。
【図7】本発明の変形例に関わる単位走査線駆動回路510’−nの回路図。
【図8】本発明の実施例に関わる走査線駆動回路301の順方向動作を説明するためのタイミングチャート。
【図9】本発明の実施例に関わる走査線駆動回路301の逆方向動作を説明するためのタイミングチャート。
【図10】本発明のデータ線駆動回路302の実施例を示す回路図。
【図11】本発明の実施例に関わるデータ線駆動回路302の動作を説明するためのタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に基づいて説明する。
【0018】
[実施の形態]
【0019】
図1は本実施形態に係る電気光学パネルとしての液晶表示装置910の斜視構成図(一部断面図)である。液晶表示装置910は、アクティブマトリクス装置としてのアクティブマトリクス基板101と対向基板912とをシール材923により一定の間隔で貼り合わせ、ネマティック相液晶材料922を挟持してなる。アクティブマトリクス基板101上には、図示しないが、ポリイミドなどからなる配向材料が塗布されラビング処理されて配向膜が形成されている。また、対向基板912は、図示しないが、画素に対応したカラーフィルターと、光抜けを防止してコントラストを向上させるための低反射・低透過率樹脂よりなるブラックマトリクスとが形成される。ネマティック相液晶材料922と接触する面には、ポリイミドなどからなる配向材料が塗布され、アクティブマトリクス基板101の配向膜ラビング処理方向と平行かつ逆向きにラビング処理されている。
【0020】
さらに対向基板912の外側には、上偏光板924を、アクティブマトリクス基板101の外側には、下偏光板925を各々配置し、互いの偏光方向が直交するよう(クロスニコル状)に配置する。さらに下偏光板925下には、バックライトユニット926と導光板927が配置され、バックライトユニット926から導光板927に向かって光が照射され、導光板927はバックライトユニット926からの光をアクティブマトリクス基板101に向かって垂直かつ均一な面光源となるように光を反射屈折させることで液晶表示装置910の光源として機能する。バックライトユニット926は、本実施形態ではLEDユニットであるが、冷陰極管(CCFL)であってもよい。バックライトユニット926はコネクター929を通じて電子機器本体に接続され、電源を供給される。図示しないが、さらに必要に応じて、周囲を外殻で覆っても良いし、あるいは上偏光板924のさらに上に保護用のガラスやアクリル板を取り付けても良いし、視野角改善のため光学補償フィルムを貼っても良い。
【0021】
また、アクティブマトリクス基板101は、対向基板912から張り出す張り出し部110が設けられ、その張り出し部110には、可撓性基板としてのFPC928及び駆動IC921が実装され張り出し部110上に設けられた信号入力端子320(図2参照)を通じて電気的に接続されている。駆動IC921はアクティブマトリクス基板101の駆動に必要な信号と電源を供給し、FPC928は電子機器1000を構成する外部電源回路784及び映像処理回路780(図4参照)から必要な信号と電源を駆動IC921及びアクティブマトリクス基板101に供給する。なお、本実施形態では、張り出し部110に駆動IC921を実装するCOG(Chip On Glass)実装としたが、張り出し部110にはFPC928のみを実装し、駆動IC921はFPC928に実装するCOF(Chip On Film)実装としてもよい。
【0022】
図2はアクティブマトリクス基板101の構成図である。アクティブマトリクス基板101上には480本の複数の走査線201(201−1〜201−480)と1920本の複数のデータ線202(202−1〜202−1920)が直交して形成されている。走査線201−1〜201−480は走査線駆動回路301に接続されて駆動される。また、データ線202(202−1〜202−1920)はデータ線駆動回路302に接続されて駆動される。ここで走査線駆動回路301、データ線駆動回路302を構成する薄膜トランジスターは後述する画素スイッチング素子401(401−n−m)と同一の製造工程で製造された、いわゆる駆動回路内蔵型のアクティブマトリクス基板である。
【0023】
図3は表示領域310におけるm番目のデータ線202−mとn番目の走査線201−nの交差部付近の回路図である。電気光学パネルとしての液晶表示装置910は複数の走査線に接続されてマトリクス状に配置される複数の画素スイッチング素子を備えてなる。走査線201−nとデータ線202−mの各交点にはnチャネル型電界効果ポリシリコン薄膜トランジスターよりなる画素スイッチング素子401−n−mが形成されており、そのゲート電極は走査線201−nに、ソース・ドレイン電極はそれぞれデータ線202−mと画素電極402(402−n−m)に接続されている。画素電極402−n−mは共通電極(COM)930と誘電体をはさんで補助容量コンデンサーを形成し、また液晶表示装置として組み立てられた際には液晶素子をはさんで共通電極(COM)930とやはりコンデンサーを形成する。ここで共通電極(COM)930はアクティブマトリクス基板101上の表示領域310全体に配置された透明な共通電極であって、各画素電極402−n−mとアクティブマトリクス基板101上でコンデンサーを形成し、電界がアクティブマトリクス基板101と平行な方向に印加されるいわゆるIPS(In Plane Switching)モードの液晶表示装置となるように構成されている。共通電極(COM)930は本実施形態では一定周期で反転するAC駆動を行なわれるが、常に一定電位を保つDC駆動であっても差し支えない。
【0024】
図4は本実施例での電子機器1000の具体的な構成を示すブロック図である。液晶表示装置910は図1で説明した電気光学パネルとしての液晶表示装置910であって、外部電源回路784、映像処理回路780が可撓性基板としてのFPC928およびコネクター929を通じて必要な信号と電源を液晶表示装置910に供給する。中央演算回路781は外部I/F回路782を介して入出力機器783からの入力データを取得する。ここで入出力機器783とは例えばキーボード、マウス、トラックボール、LED、スピーカー、アンテナなどである。中央演算回路781は外部からのデータをもとに各種演算処理を行い、結果をコマンドとして映像処理回路780あるいは外部I/F回路782へ転送する。映像処理回路780は中央演算回路781からのコマンドに基づき映像情報を更新し、液晶表示装置910への信号を変更することで、液晶表示装置910の表示映像が変化する。ここで電子機器1000とは具体的にはモニター、TV、ノートパソコン、PDA、デジタルカメラ、ビデオカメラ、携帯電話、フォトビューワー、ビデオプレイヤー、DVDプレイヤー、オーディオプレイヤーなどである。また、本実施形態は、電気光学パネルとしての液晶表示装置910を用いた種々の電気光学表示装置にも同様に適用することができる。更に、本発明は本発明の電気光学パネルとしての液晶表示装置910を含む他の電子機器にも適用することができる。
【0025】
図5は第1の実施例におけるスキャナーとしての走査線駆動回路301のブロック図である。走査線駆動回路301は同一導電型のトランジスターで構成された480個の単位回路としての単位走査線駆動回路510−1〜510−480よりなり、各単位走査線駆動回路510−nの複数の単位回路の出力端子は各走査線201−nに接続される(n=1〜480)。また、単位走査線駆動回路510−nは走査線201−n−1及び走査線201−n−1にも接続される。ただし、単位走査線駆動回路510−1及び単位走査線駆動回路510−480は信号GSPに接続される。スキャナーとしての走査線駆動回路301を構成する複数の単位回路としての単位走査線駆動回路510−1〜510−480は、外部から与えられる信号を選択的に複数の単位回路の出力端子に出力する出力トランジスターとしての第1のトランジスター411−nを備えている。
【0026】
図6はn番目(n=1〜480)の単位走査線駆動回路510−nの回路図である。n番目の走査線201−nには出力トランジスターとしての第1のトランジスター411−nの一端と第2のトランジスター412−nの一端と、第1のコンデンサー441−nの一端が接続される。出力トランジスターとしての第1のトランジスター411−nの他端は信号GEN1(nが奇数の場合)または信号GEN2(nが偶数の場合)に接続される。出力トランジスターとしての第1のトランジスター411−nのゲート電極はブートストラップノード521−nに接続され、第1のコンデンサー441−nの他端と、第2のコンデンサー442−nの一端と、第1の方向スイッチ431−nの一端と、第2の方向スイッチ432−nの一端と、第5のトランジスター415−nの一端が接続される。第2のトランジスター412−nのゲート電極は第3のコンデンサー443−nの一端と、リセットスイッチとしての画素スイッチング素子401−nの一端と、第3のトランジスター413−nの一端と、第4のトランジスター414−nの一端と、第5のトランジスター415−nのゲート電極に接続され、第4のトランジスター414−nのゲート電極は第3の方向スイッチ433−nの一端と第4の方向スイッチ434−nの一端に接続される。第1の方向スイッチ431−nと第3の方向スイッチ433−nのゲート電極は同一方向に転送中に一定の電位を保つ信号である第1の方向信号UDに接続され、第2の方向スイッチ432−nと第4の方向スイッチ434−nのゲート電極は第1の方向信号の電位とは異なる一定電位を同一方向転送中に保つ信号である第2の方向信号XUDが接続され、第1の方向スイッチ431−nの他端は第1の整流素子421−nの一端に接続され、第2の方向スイッチ432−nの他端は第2の整流素子422−nの一端に接続され、第1の整流素子421−nの他端およびゲート電極と第3の方向スイッチ433−nの他端は第1の端子としての前段の単位回路の出力端子もしくは信号GSP(n=1の場合)に接続され、第2の整流素子422−nの他端とゲート電極と第4の方向スイッチ434−nの他端は第2の端子としての次段の単位回路の出力端子もしくは信号GSP(n=480の場合)に接続される。第1の端子としての前段の出力端子は、走査線201−n−1(n=2〜480の場合)に接続し、第2の端子としての次段の出力端子は、走査線201−n+1(n=1〜479の場合)に接続している。第2のトランジスター412−nと第4のトランジスター414−nと第5のトランジスター415−nと第2のコンデンサー442−nと第3のコンデンサー443−nの各他端は電位VGLに接続され、リセットスイッチとしての画素スイッチング素子401−nの他端とゲート電極は信号RSTに接続され、第3のトランジスター413−nの他端とゲート電極は信号GEN2(nが奇数の場合)もしくは信号GEN1(nが偶数の場合)に接続される。
要するに、第1の整流素子421−nはトランジスターであって、その一端とゲート電極とが短絡されて第1の端子としての前段の出力端子に電気的に接続され、第2の整流素子422−nはトランジスターであって、その一端とゲート電極とが短絡されて第2の端子としての次段の出力端子に電気的に接続されている。
【0027】
ここで信号GEN1、信号GEN2、信号GSP、信号RSTは駆動IC921から信号入力端子320を介して0V/+15V振幅で供給されるタイミング信号であり、電位VGLは駆動IC921から信号入力端子320を介して0Vで供給されるDC電源である。また第1の方向信号UDならびに第2の方向信号XUDは駆動IC921から信号入力端子320を介して入力される電位であって、転送(スキャン)方向に応じて15Vもしくは0VのDC電位に設定される(後述)。また、第1のトランジスター411−n、第2のトランジスター412−n、第3のトランジスター413−n、第4のトランジスター414−n、第5のトランジスター415−n、第1の方向スイッチ431−n、第2の方向スイッチ432−n、第3の方向スイッチ433−n、第4の方向スイッチ434−n、第1の整流素子421−n、第2の整流素子422−n、リセットスイッチとしての画素スイッチング素子401−nはいずれもnチャネル型電界効果ポリシリコン薄膜トランジスターよりなり、画素スイッチング素子401−n−mと同一工程でアクティブマトリクス基板101上に形成される。これらのトランジスターは同一工程で製造されているので、概略同じ特性を有し、本実施例ではその閾値電圧Vthは+4Vであった。また本実施例では第1のコンデンサー441−nと第2のコンデンサー442−nは安定した素子耐圧を超えないブートストラップ電圧を得るために設けているが、トランジスターの設計パラメーターによっては不要である。
【0028】
図7は図6との変形例として示す単位走査線駆動回路510’−nの回路図である。変形例は第1の方向スイッチ431−n、第2の方向スイッチ432−n、第3の方向スイッチ433−n、第4の方向スイッチ434−n、第1の整流素子421−n、第2の整流素子422−nにかわって第3の整流素子423−nの一端がブートストラップノード521−nに接続され、第3の整流素子423−nの他端とゲート電極は第5の方向スイッチ435−nの一端と第6の方向スイッチ436−nの一端と第4のトランジスター414−nのゲート電極に接続される。第5の方向スイッチ435−nのゲート電極は第1の方向信号UDに供給され、第6の方向スイッチ436−nのゲート電極は第2の方向信号XUDが供給され、第5の方向スイッチ435−nの他端は前段の走査線201−n−1(n=2〜480の場合)もしくは信号GSP(n=1の場合)に接続され、第6の方向スイッチ436−nの他端は前段の走査線201−n+1(n=1〜479の場合)もしくは信号GSP(n=480の場合)に接続される。その他の構成は図6と同じであるので、同じ番号を付与することで説明を省略する。
【0029】
図8は走査線駆動回路301の順方向動作時のタイミングチャートである。なお、順方向動作か逆方向動作かは図4の中央演算回路781によって判断され、映像処理回路780と可撓性基板としてのFPC928を介して駆動IC921に設定コマンドを送ることで決定されるものであり、順方向動作時は第1の方向信号UDは15V、第2の方向信号XUDは0VのDC電位が駆動IC921より与えられる。このため第1の方向スイッチ431−nと第3の方向スイッチ433−nは常時導通状態であり、第2の方向スイッチ432−nと第4の方向スイッチ434−nは常時非導通状態である。信号RSTは電源立ち上げ後、最初の信号GSPがHigh(15V)になる前に一回だけ40μ秒間High(15V)このため第1の方向スイッチ431−nと第3の方向スイッチ433−nは常時導通状態であり、第2の方向スイッチ432−nと第4の方向スイッチ434−nは常時非導通状態である。となるリセット信号であり、信号GSPは16.667m秒周期(フレーム周期)で一回、28μ秒間Highとなる信号であり、信号GEN1は信号GSPがHighになってから34.6μ秒後にHigh(15V)となって、以下69.2μ秒毎に28μ秒間High(15V)となるのを240回繰り返す信号であり、信号GEN2は信号GEN1と同様で34.6μ秒位相が遅れた信号である。
【0030】
最初に信号RSTが一定期間(本実施例では40μ秒)High(=15V)になると、全段のリセットスイッチとしての画素スイッチング素子401−nがONし、第3のコンデンサー443−nに充電が行われて第5のトランジスター415−nと第2のトランジスター412−nがONし、全走査線201−1〜201−480とブートストラップノード521−1〜521−480は全て電位VGL(=0V)にリセットされる。なお、本実施例では前記リセット動作は電源投入直後の一回だけ行っているが、各垂直ブランク期間に毎回行ってもよい。
【0031】
次に信号GSPがHigh(=15V)になると、初段(n=1)の第1の整流素子421−1はONし、第1の方向スイッチ431−1を介してブートストラップノード521−1に充電が行われる。このとき、第1の整流素子421−1から第1の方向スイッチ431−1に印加される電位は閾値電圧Vth(Vth=4V)分低下して11Vとなる。ここで、第1の方向スイッチ431−1のゲート電位は15V(第1の方向信号UDの電位)であるので、ゲート電位は印加された電位(11V)+閾値電圧(4V)ちょうどとなって第1の方向スイッチ431−1による電位低下はほぼ生じず、ブートストラップノード521−1の電位はVA1=11Vとなって出力トランジスターとしての第1のトランジスター411−1は導通状態となる。同時に第4のトランジスター414−1のゲート電極も第3の方向スイッチ433−1を介して充電されて11Vになり、第4のトランジスター414−1は導通状態となって、第3のコンデンサー443−nは電位VGLになり第2のトランジスター412−1は非導通状態になる。
【0032】
次に信号GSPがLow(=0V)になると第1の整流素子421−1はOFFするからブートストラップノード521−1は11Vを保つ。次に信号GEN1がHigh(=15V)に反転すると、第1のコンデンサー441−1と第1のトランジスター411−1のゲート容量の結合により、ブートストラップノード521−1の電位は上昇する(ブートストラップ)。ストラップされる電位量は第1のコンデンサー441−1の容量値と第1のトランジスター411−1のゲート容量値と第2のコンデンサー442−1の容量値によって決まるが本実施例では11Vであり、ブートストラップノード521−1の電位はVA2=22Vにストラップされる。ブートストラップノード521−1の電位VA2はこのときの信号GEN1の電位(15V)+第1のトランジスター411−nの閾値電圧Vth(Vth=4V)より高くなるから、出力トランジスターとしての第1のトランジスター411−nによる電位低下は生じず、走査線201−1には15Vが書き込まれ、28μ秒後に信号GEN1がLow(=0V)になると走査線201−1も0Vに戻り、ブートストラップノード521−1の電位もVA1(=13V)に戻る。
【0033】
次段(n=2)は前段の走査線201−1が15Vとなるタイミングで、第1の整流素子421−2がONし、第1の方向スイッチ431−2を介してブートストラップノード521−2にVA1=11Vの充電が行われる。34.6μ秒後に信号GEN2がHigh(=15V)に反転すると、ブートストラップノード521−2はVA2=22Vにストラップされて走査線201−2には15Vが書き込まれる。
【0034】
このとき、1段目(n=1)の第3のトランジスター413−1も導通状態となって第2のトランジスター412−1のゲート電極、第5のトランジスター415−1のゲート電極および第3のコンデンサー443−nの一端には高電位が書き込まれ、第2のトランジスター412−1がONするとともに第1のトランジスター411−1はOFFし、以降、次のフレームまで信号GEN1と走査線201−1の間は遮蔽される。以下同様にして走査線201−nがn=1,2,3,4,5…の順に順次選択されることになる。
【0035】
図9は走査線駆動回路301の逆方向動作時のタイミングチャートである。逆方向動作時は、第1の方向信号UDは0V、第2の方向信号XUDは15VのDC電位が与えられる。このため第1の方向スイッチ431−nと第3の方向スイッチ433−nは常時非導通状態であり、第2の方向スイッチ432−nと第4の方向スイッチ434−nは常時導通状態である。信号GEN2と信号GEN1は図8と比較して入れ替わっており、信号GEN1は信号GEN2より34.6μ秒位相が遅れた信号となっているが、それ以外は図8と同様のタイミング信号が入力される。信号GSPがHigh(=15V)になると終段(n=480)の第1の整流素子421−480がONし、第1の方向スイッチ431−480を介してブートストラップノード521−480に充電が行われ、次に信号GEN2がHigh(=15V)に反転すると、ブートストラップノード521−480の電位はVA2=22Vとなって走査線201−480には15Vが書き込まれる。このとき、前段(n=479)の第1の整流素子421−479がONし、第1の方向スイッチ431−479を介してブートストラップノード521−479にVA1=13Vの充電が行われ、以下同様にして走査線201−nがn=480,479,478,477,476…の順に順次選択されることになる。以上のように逆方向に順次選択される他は図8の順方向スキャンと全く同様の動作である。
【0036】
一方、変形例である図7の構成では信号GSPあるいは前段の走査線201−n−1信号はまず第5の方向スイッチ435−nに入力される。第5の方向スイッチ435−nのゲート電位は15V(第1の方向信号UDの電位)であるから、閾値電圧Vth(Vth=4V)分低下して11Vが第3の整流素子423−nの一端およびゲート電極に印加され、第3の整流素子423−nの閾値電圧Vth(Vth=4V)分低下してブートストラップノード521−nに印加される電位VA1は7Vとなる。ここで第1のコンデンサー441−1の容量値と第1のトランジスター411−1のゲート容量値と第2のコンデンサー442−1の容量値は図6の実施例と同じであるとすれば、次に信号GEN1がHighになってブートストラップノード521−nがストラップされる電位VA2=18Vとなる。これは信号GEN1のHigh電位(15V)+閾値電圧Vth(Vth=4V)より低くなるから、出力トランジスターとしての第1のトランジスター411−nは14Vまで走査線201−nに書き込んだところで非導通状態になってしまい、走査線駆動回路301から走査線201−nに出力される電位振幅は14Vとなってしまうため、図6の実施例に比べ画素スイッチング素子401−n−mのON抵抗が高くなり、充電不足が生じやすい。
【0037】
以上のように、図6で示した実施例では図7の変形例に対し、ブートストラップノード521−nで最終的に印加される電位VA2がトランジスターの閾値電圧Vth分高くなる。これにより、閾値電圧Vthが大きいプロセスであってもより高い電位振幅で走査線駆動回路301から走査線201−1〜201−480に出力が可能である。また、プロセス上の問題でトランジスターの閾値電圧Vthがばらつく場合、図7の変形例ではブートストラップノード521−nの到達電位(VA2)が閾値電圧Vthばらつきの2倍ばらついてしまうが、図6の本発明では閾値電圧Vthばらつきの1倍に抑えられる。従って、マージンが確保しやすく、歩留まり・信頼性に優れたスキャナーを製造できる。
【0038】
なお、本発明は図6で示す回路構成に限定されるものではなく、前段もしくは次段の出力で出力トランジスターのゲート電極を方向スイッチを介して充電した後、ブートストラップを用いて電位をストラップする回路構成の双方向スキャナーであれば適用可能である。
【0039】
図10はデータ線駆動回路302の回路図であり、1:3のデマルチプレクサー回路構成となっている。1920本のデータ線202−1〜202−1920にnチャネル型トランジスターであるデータ線スイッチ451−1〜451−1920のドレイン電極がそれぞれ接続される。データ線スイッチ451−1〜451−3のソース電極は信号VIDEO1に接続され、データ線スイッチ451−4〜451−6のソース電極は信号VIDEO2に接続され、以下同様にデータ線スイッチ451−(n×3−2)〜451−(n×3)のソース電極は信号VIDEOnに接続される(n=1〜640)。またデータ線スイッチ451−1,451−4,451−7,…,451−1918のゲート電極は信号RENBに、データ線スイッチ451−2,451−5,451−8,…,451−1919のゲート電極は信号GENBに、データ線スイッチ451−3,451−6,451−9,…,451−1920のゲート電極は信号BENBに、それぞれ接続される。
【0040】
図11はデータ線駆動回路302の動作を説明するためのタイミングチャートである。信号RENBは、各走査線201−n(n=1〜480)が選択された(High:+15Vになった)タイミングから2μ秒後にHigh(+15V)になり、7μ秒後にLow(0V)に戻る信号である。信号GENBは信号RENBから9μ秒、信号BENBは信号RENBから18μ秒、それぞれ位相がずれている他は信号RENBと同一の信号である。ここで信号RENB、信号GENB、信号BENBは、いずれも駆動IC921から信号入力端子320を介して0V/+15V振幅で供給され、信号VIDEO1〜VIDEO640は駆動IC921から信号入力端子320を介して供給される5V〜9Vのアナログ電位信号であり、信号RENB、信号GENB、信号BENBに同期したタイミングで画像に対応した適切な電位が供給される。
【0041】
なお、本発明におけるデータ線駆動回路は本実施形態の回路構成に限定されるものではなく、例えばアナログ順次駆動回路やDAC内蔵駆動回路など既知のあらゆるデータ線駆動回路を用いてもよいことはもちろんであるし、データ線駆動回路は内蔵せず、駆動ICから直接データ線を駆動しても良い。
【0042】
本発明のスキャナーは双方向転送機能を可能としつつ、方向スイッチ素子に印加する方向信号(第1の方向信号UDと第2の方向信号XUD)がDC電位でよいため、タイミング信号系は3系統(信号GSP、信号GEN1、信号GEN2)のみとなり駆動IC921のタイミング回路と出力端子面積を小さくすることができるのでより安価に製造できる。また、タイミング信号が少ないので信号配線の充放電による消費電力も少ない。また、前段の信号を入力する際に整流素子を先に、方向スイッチ素子を後段にしているため、出力トランジスターとしての第1のトランジスター411−nのゲート電極に十分な、かつ安定した電位を印加することができる。このため、信頼性に優れたスキャナーを歩留まりがよく安価に製造できる。
【0043】
また、本実施例はnチャネル型トランジスターを用いたスキャナーで構成したが、極性を反転させてpチャネル型トランジスターで同様の回路を構成しても良いことはもちろんである。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は実施例の形態に限定されるものではなく、TNモードや垂直配向モード(VAモード)などの液晶表示装置に利用しても構わない。また、全透過型のみならず全反射型、反射透過兼用型であっても構わない。また、液晶表示装置のみならず、OLEDなどのアクティブマトリクス型表示装置全般に応用可能であるし、画像撮像素子、メモリー回路、カウンター回路などのスキャナーとしても利用可能である。
【符号の説明】
【0045】
101…アクティブマトリクス基板、201…走査線、202…データ線、301…走査線駆動回路、302…データ線駆動回路、401…画素スイッチング素子、402…画素電極、910…液晶表示装置、921…駆動IC、928…可撓性基板としてのFPC。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一導電型のトランジスターで構成された複数の単位回路からなる双方向転送可能なスキャナーであって、
前記スキャナーを構成する前記単位回路は、
外部から与えられる信号を選択的に出力端子に出力する出力トランジスターを有し、
前記出力トランジスターのゲート電極は第1の方向スイッチを介して他の単位回路の出力端子である第1の端子に電気的に接続され、
前記出力トランジスターのゲート電極は第2の方向スイッチを介してさらに他の単位回路の出力端子である第2の端子にも電気的に接続される
ことを特徴とするスキャナー。
【請求項2】
前記第1の方向スイッチはトランジスターであって、そのゲート電極は第1の方向信号が供給され、
前記第2の方向スイッチはトランジスターであって、そのゲート電極は第2の方向信号が供給され、
前記第1の方向信号は同一方向に転送中に一定の電位を保つ信号であり、
前記第2の方向信号は前記第1の方向信号の電位とは異なる一定電位を同一方向転送中に保つ信号である
ことを特徴とする請求項1に記載のスキャナー。
【請求項3】
第1の整流素子が前記第1の方向スイッチと前記第1の端子との間に配置され、
第2の整流素子が前記第2の方向スイッチと前記第2の端子との間に配置される
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のスキャナー。
【請求項4】
第1の整流素子はトランジスターであって、その一端とゲート電極とが短絡されて前記第1の端子に電気的に接続され、
第2の整流素子はトランジスターであって、その一端とゲート電極とが短絡されて前記第2の端子に電気的に接続される
ことを特徴とする請求項3に記載のスキャナー。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のスキャナーと、
複数の走査線と、
前記複数の走査線に接続されてマトリクス状に配置される複数の画素スイッチング素子と、を備えてなる電気光学パネルであって、
前記スキャナーを構成する前記複数の単位回路の出力端子は前記複数の走査線に接続されてなることを特徴とする電気光学パネル。
【請求項6】
請求項5に記載の電気光学パネルを用いたことを特徴とする電気光学表示装置。
【請求項7】
請求項6に記載の電気光学表示装置を用いたことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−206750(P2010−206750A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−53030(P2009−53030)
【出願日】平成21年3月6日(2009.3.6)
【出願人】(304053854)エプソンイメージングデバイス株式会社 (2,386)
【Fターム(参考)】