説明

スクリーン印刷装置

【課題】マスクプレートからの版離れ時に基板に静電気が発生するのを防止できるスクリーン印刷装置を提供することを目的とする。
【解決手段】基板1の下受けピン25が立設される配設板20上に除電ブラシ部60を設ける。下受けピン25で基板1の下面を支持するために配設板20を基板1に対して上昇させると、除電ブラシ部60に立設された導電性を有するブラシ毛62の毛先は基板1の下面に当接する。マスクプレート41上でのスキージ51のスキージングが終了し、マスクプレート41から版離れさせるために基板1を下降させる際に基板1に発生する静電気は、除電ブラシ部60により直ちに除電される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板にクリーム半田や導電性ペーストなどのペーストを印刷するスクリーン印刷装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子部品を基板に実装する電子部品実装工程において、基板にクリーム半田や導電性ペーストなどのペーストを塗布する装置として、スクリーン印刷装置が用いられている。スクリーン印刷装置は、印刷対象部位に応じてパターン孔が形成されたマスクプレートの下面に基板の上面を当接させ、その状態でマスクプレート上をスキージを摺動(スキージング)させることにより、パターン孔を介して基板にペーストを印刷するものである。
【0003】
上記のようにマスクプレート上をスキージを摺動させると、マスクプレートには静電気が発生しやすい。この静電気は、基板の下面に実装済の電子部品や、後工程で実装される電子部品にその電撃によりダメージを与えるおそれがある。このために、マスクプレートの除電を行うことが知られている(特許文献1)。この特許文献1のものは、マスクプレートに除電ブロアを吹き付けることにより、帯電を中和するものである。この特許文献1の技術によれば、スキージの摺動によってマスクプレートに生じた静電気は除電できる。また勿論、ステンレス鋼板などの導電性材料により作られたマスクプレートの場合は、これを導電線を介してアース部に接続することによっても除電できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−17511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
マスクプレート上でのスキージの摺動(スキージング)が終了したならば、基板をマスクプレートから相対的に下降させる版離れ動作が行われる。この版離れ動作によって、スキージングによりパターン孔に充填されたペーストは、基板に転写される。
【0006】
ところが、基板の上面がマスクプレートの下面から版離れする際に、基板(一般にガラエポ等の絶縁材から成っている)の表面(上面と下面)に静電気が発生しやすい。この静電気は、基板の下面に実装済の電子部品や後工程で実装される電子部品にダメージを与えるおそれがある。しかしながら、このように版離れ時に基板に発生する静電気は、特許文献1の技術によっては除電することはできない。
【0007】
そこで本発明は、マスクプレートからの版離れ時に基板に静電気が発生するのを防止できるスクリーン印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のスクリーン印刷装置は、パターン孔が形成されたマスクプレートを保持するマスクホルダと、マスクプレートの下方において基板を位置決めする基板位置決め部と、基板位置決め部上にあって基板を昇降させる第1の昇降部と、この第1の昇降部上にあって基板の下受けピンが立設されて基板に対して昇降する第2の昇降部と、前記第1の昇降部と前記第2の昇降部を上昇させて基板をマスクプレートの下面に当接させて前記下受けピンで基板の下面を支持した状態でマスクプレート上を摺動することにより、マスクプレート上のペーストを前記パターン孔を介して基板に印刷するスキージとを備え、前記第2の昇降部にアース部に接続された除電ブラシ部を設け、前記第2の昇降部を上昇させた状態において、前記除電ブラシ部に備えられた除電ブラシの毛先が基板の下面に当接する。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、基板の下受けピンが立設される第2の昇降部にアース部に接続された除電ブラシ部を設け、第2の昇降部を上昇させて下受けピンで基板の下面を支持した状態において、除電ブラシ部に備えられた除電ブラシの毛先が基板の下面に当接するので、版離れ時に基板の表面に生じる静電気は除電ブラシを通して直ちに除電され、したがって版離れ時に基板が帯電するのを防止することができる。しかも、基板の下受けピンが立設される第2の昇降部を除電ブラシ部の配設部として利用するので、既設のスクリーン印刷装置にも簡単に除電ブラシ部を設けて基板の帯電を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態1におけるスクリーン印刷装置の側面図
【図2】本発明の実施の形態1におけるスクリーン印刷装置の部分斜視図
【図3】本発明の実施の形態1におけるスクリーン印刷装置の部分側面図
【図4】本発明の実施の形態1におけるスクリーン印刷装置に位置決めされた基板の平面図
【図5】本発明の実施の形態1におけるスクリーン印刷装置の動作の説明図
【図6】本発明の実施の形態2におけるスクリーン印刷装置に位置決めされた基板の平面図
【図7】本発明の実施の形態2におけるスクリーン印刷装置の部分側面図
【図8】本発明の実施の形態3におけるスクリーン印刷装置の要部斜視図
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施の形態1)
以下、図面を参照して本発明の実施の形態1を説明する。図1において、基板1をマスクプレート(後述)の下方に位置決めする基板位置決め部10は、Y軸テーブル11、X軸テーブル12、θテーブル13を段積みして構成されている。θテーブル13上には台板14が設けられている。台板14上には第1の昇降部としての昇降台15が設けられている。昇降台15の四隅には垂直な送りねじ16が螺着されている。台板14の側部に装着された第1のモータ17が駆動すると、ベルト18を介して送りねじ16は回転し、昇降台15は昇降する。
【0012】
昇降台15の上方には、第2の昇降部としての配設板20が配設されている。後述するように、配設板20には、基板1の下受けピンと除電ブラシ部が配設される。配設板20の四隅には、垂直な送りねじ21が螺着されている。昇降台15上に配設された第2のモータ22が駆動すると、ベルト23を介して送りねじ21は回転し、配設板20は基板1に対して昇降する。
【0013】
図2は配設板20を示すものであって、孔部24がマトリクス状に多数(複数)形成されている。孔部24には、基板1の下面を支持する下受けピン25が立設される。多数の孔部24のうち、当該基板の下受けに必要な孔部24のみにピン25は挿着して立設される。なお、各図において、ピン25は適宜省略している。
【0014】
図1において、第1の昇降部15上には左右一対のフレーム30が設けられている。フレーム30は配設板20の上方まで延出しており、その上端部には基板1の左右一対の搬送部31が設けられている。基板1は搬送部31によりX方向に搬送される。搬送部31上には左右一対のクランパ32が設けられている。クランパ32は、搬送部31で搬送されてきた基板1を、左右からクランプして所定の印刷位置に固定する。
【0015】
基板位置決め部10の上方には、マスクホルダ40に保持されたマスクプレート41が配設されている。マスクプレート41にはパターン孔42が開孔されている。またマスクプレート41上にはペースト43が供給されている。マスクプレート41は、アース線44を介してアース部45に接続されている。上記のように昇降台15が昇降すると、昇降台15上のフレーム30やフレーム30上の基板1等はマスクプレート41に対して昇降する。
【0016】
マスクプレート41の上方にはスキージユニット50が設けられている。スキージユニット50は左右一対のスキージ51を有している。2つのスキージ51は、アクチュエータ52によって互いに独立して昇降する。何れか一方のスキージ51がマスクプレート41上に着地した状態で、スキージユニット50はマスクプレート41上をY方向に水平移動する。これにより、スキージ51はマスクプレート41の上面を摺動(スキージング)し、パターン孔42を介して基板1にペーストを印刷する。マスクプレート41は導電性を有するステンレス鋼板により形成されており、上記スキージングによって発生した静電気は、アース線44を通してアース部45に除電される。
【0017】
次に、マスクプレート41からの版離れ時に、基板1に静電気が発生するのを防止する除電手段について説明する。図2において、配設板20上には除電ブラシ部60が設けられている。除電ブラシ部60は、基部61に導電性を有するブラシ毛62を立設して成っている。この除電ブラシ部60は、下受けピン25の立設の邪魔にならない位置に配設される。ブラシ毛62の上端は、下受けピン25の上端よりも上方へ伸出している。
【0018】
図1において、ブラシ毛62は、アース線63を介してアース部64に接続されている。図1は、昇降台15と配設板20を下降させて基板1をマスクプレート41から離版させた状態を示しており、この状態において、ブラシ毛62の上端部は基板1の下面から離れている。下受けピン25で基板1の下面を支持するためにモータ22を駆動して配設板20を上昇させると、図3に示すように、ブラシ毛62の上端部は基板1の下面に当接し、基板1との接触面積を稼ぐために大きく屈曲する。図3、図4において、Aはブラシ毛62が基板1の下面に当接する範囲を示している。なお、下受けピン25の邪魔にならない範囲で、除電ブラシ部はなるべく広範囲に配設し、そのブラシ毛の毛先をなるべく広範囲に基板の下面に接触させることが静電気発生防止効果をあげるうえで好ましい。そのためには、配設板20上に複数個の除電ブラシ部を設けてもよい。
【0019】
このスクリーン印刷装置は上記のような構成より成り、次にスクリーン印刷方法を図5(a)〜(d)を参照して説明する。図5(a)〜(d)は、静電気発生防止(除電)のメカニズムを図解的に示すものである。
【0020】
図5(a)は、配設板20を上昇させ、クランパ32でクランプされた基板1の下面を下受けピン25(不図示)で支持するとともに、ブラシ毛62の毛先を基板1の下面に当接させた状態を示している(図3も参照)。この状態で、基板1とマスクプレート41は共にアース線44、63によりアース部45、64に接続されているので、これらの表面には正負の電荷が存在しており、電気的に中正である。
【0021】
次に図5(b)に示すように昇降台15を上昇させて基板1を上昇させ、その上面をマスクプレート41の下面に当接させる。この状態でも基板1とマスクプレート41の表面には正負の電荷が存在しており、電気的に中正である。次いでマスクプレート41上をスキージ51を摺動(スキージング)させる。すると、その摩擦によりマスクプレート41及び基板1には図5(c)に示すように正または負の静電気が発生するが、この静電気はアース線44、63を通してアース部45、64に直ちに除電される。
【0022】
次いで図5(d)に示すように、配設板20と昇降台15を下降させ、これにより基板1を下降させてマスクプレート41から離版させると、基板1の表面(上面と下面)には静電気が発生するが、この静電気はアース線63を介して直ちにアース部64に除電される。
【0023】
以上のように本実施の形態1によれば、下受けピンを立設する配設板上に除電ブラシ部を設置することにより、マスクプレートからの版離れ時に基板に静電気が生じて帯電するのを効果的に防止することができる。
【0024】
(実施の形態2)
図6は、本発明の実施の形態2の基板位置決め部に位置決めされた基板の平面図、図7は同側面図である。基板2は多数個取り基板であって、本例では略十字形のスリット3により4枚の小基板2aに区切られており、後工程でこのスリット3から破断して4枚の小基板2aを得るようになっている。
【0025】
図6、図7で、Bは除電ブラシ部のブラシ毛の毛先が当接する範囲を示している。除電ブラシ部70は、4個(複数個)の小基板2aの下面にそれぞれ独立して当接できるように、配設板20上に4個(複数個)配設されている。この除電ブラシ部70は、基部71にブラシ毛72を立設して成っている。除電メカニズムは、実施の形態1と同じであるから、その説明は省略する。この実施の形態2からも明らかなように、除電ブラシ部は、下受けピンの邪魔にならない範囲で、なるべく多く、また広範囲に設けることが望ましい。
【0026】
(実施の形態3)
図8は、本発明の実施の形態3におけるスクリーン印刷装置の要部斜視図である。本実施の形態3は、スクリーン印刷位置だけでなく、スクリーン印刷装置の搬送部31の搬出部(出口)にも除電ブラシ部80を設けている。この除電ブラシ部80も、基部81にブラシ毛82を立設して成っており、ブラシ毛82はアース線83によりアース部84に接続されている。これ以外の構成は、実施の形態1と同じである。勿論、実施の形態2にも、この除電ブラシ部80を設けてもよい。
【0027】
図8において、スクリーン印刷が終了した基板1は、搬送部31によってX方向へ搬出されるが、その際、ブラシ毛82の毛先を搬出される基板1の下面に接触させれば、実施の形態1、2の除電ブラシ部60、70で除電しきれずに残存する静電気を除電することができ、これにより後工程で実装される電子部品にダメージを与えるのをより確実に防止することができる。この場合、図8に示すように、ブラシ毛82は基板1の搬出方向と直交する方向に細長く立設することが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明によれば、版離れ時に基板の表面に生じる静電気は除電ブラシを通して直ちに除電されるので、版離れ時に基板が帯電するのを防止でき、特にスクリーン印刷装置の下流に電子部品実装装置を備える電子部品実装ラインにおける基板の除電手段として有用である。
【符号の説明】
【0029】
1、2 基板
10 基板位置決め部
15 昇降台(第1の昇降部)
20 配設板(第2の昇降部)
25 下受けピン
40 マスクホルダ
41 マスクプレート
42 パターン孔
43 ペースト
50 スキージユニット
51 スキージ
60、70、80 除電ブラシ部
62、72、82 ブラシ毛
63、83 アース線
64、84 アース部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パターン孔が形成されたマスクプレートを保持するマスクホルダと、マスクプレートの下方において基板を位置決めする基板位置決め部と、基板位置決め部上にあって基板を昇降させる第1の昇降部と、この第1の昇降部上にあって基板の下受けピンが立設されて基板に対して昇降する第2の昇降部と、前記第1の昇降部と前記第2の昇降部を上昇させて基板をマスクプレートの下面に当接させて前記下受けピンで基板の下面を支持した状態でマスクプレート上を摺動することにより、マスクプレート上のペーストを前記パターン孔を介して基板に印刷するスキージとを備え、
前記第2の昇降部にアース部に接続された除電ブラシ部を設け、前記第2の昇降部を上昇させた状態において、前記除電ブラシ部に備えられた除電ブラシの毛先が基板の下面に当接することを特徴とするスクリーン印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−116027(P2012−116027A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−266156(P2010−266156)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】