説明

ステアバイワイヤ式操舵装置

【課題】 トー角制御用モータの小型化を図り消費電力の増加を抑え、また車両の停止時に、トー角を制御するとき運転者に違和感を与えないステアバイワイヤ式操舵装置を提供する。
【解決手段】 ステアリング制御手段8aは、車両の停車時に、トー角を変える指令信号を出力する場合にトー角を変える回転分割軸6B側の操舵輪3を、この操舵輪3が接地する地面に対して方向が変化しないように、トー角調整用モータ13と転舵用モータ11とを協調して制御する協調制御部8adを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、転舵用の転舵軸と機械的に連結されていないステアリングホイールで操舵を行うようにしたステアバイワイヤ式操舵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のステアバイワイヤ式操舵装置に関し、トー角制御可能な操舵装置が提案されている(特許文献1)。また、ステアリングホイールに付与する操舵反力の生成法に関して、転舵モータで検出されるトルクから転舵反力を推定し、この転舵反力に応じて操舵反力を生成する方法が知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−84178号公報
【特許文献2】特開2005−88610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1で提案されているトー角制御可能な操舵装置では、車両の停車時にトー角制御する場合、トー角制御用モータのみ駆動すると、このトー角制御用モータの回転によってトー角を変える軸側のタイヤが転舵(トー角変化)される。このトー角を変える軸側のタイヤの転舵に伴って、トー角制御用モータに大きな負荷がかかる。この場合、トー角制御用モータを大型化する必要がある。
また、車両の走行時にはトー角制御機構に荷重がかかり、定位置制御のために常に電力が必要となる。トー角制御用ねじのがたや弾性変形により目標値から微小に変位した場合にも、定位置制御のために常に電力が必要となる。このように消費電力が増加する。さらに、トー角制御用モータが失陥した場合、トー角が固定されなかったり、左右のトー角が異なったりすると、車両の走行に支障をきたす可能性がある。
【0005】
特許文献2のステアリングホイールに付与する操舵反力の生成法では、トー角を制御する際には転舵用モータも協調して制御する必要がある。このとき、運転者はステアリングホイールを操舵していなくても、転舵用モータのトルクに起因する操舵反力が前記ステアリングホイールに発生し、このステアリングホイールを握る運転者に違和感を与える可能性がある。
【0006】
この発明の目的は、トー角制御用モータの小型化を図り消費電力の増加を抑え、また車両の停止時に、トー角を制御するとき運転者に違和感を与えないステアバイワイヤ式操舵装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明のステアバイワイヤ式操舵装置は、左右両端にタイロッドが設けられた転舵軸と、この転舵軸に機械的に連結されていないステアリングホイールと、このステアリングホイールの操舵角を検出する操舵角センサと、転舵用モータと、この転舵用モータの回転を前記転舵軸に軸方向移動として伝える転舵動力伝達機構と、トー角調整用モータと、このトー角調整用モータの回転によりトー角を調整させるトー角調整動力伝達機構と、ステアリング制御手段とを備える。
前記転舵軸は、非回転分割軸と回転分割軸とに軸方向に2分割され、これら両分割軸を軸中心と同心のねじ結合部で互いに結合した軸であって、前記転舵動力伝達機構は、非回転分割軸および回転分割軸を一体に軸方向移動させることで操舵輪を転舵させるものとし、前記トー角調整動力伝達機構は、非回転分割軸に対して回転分割軸を回転させて、前記ねじ結合部の螺合長さを調整することで、前記左右のタイロッド間距離を変更して操舵輪のトー角を変えるものとする。
前記ステアリング制御手段は、操舵角センサの検出する操舵角を基に、「他のセンサ類」からの車両の運転状態を検出する運転状態検出信号と合わせて、「定められた規則」に従い転舵角の指令信号を生成して転舵用モータを制御すると共に、操舵角センサの検出する操舵角および他のセンサ類からの前記運転状態検出信号を基に、「定められた規則」に従いトー角の指令信号を生成してトー角調整用モータを制御するものであり、
前記ステアリング制御手段は、車両の停車時に、トー角を変える指令信号を出力する場合に、前記トー角調整用モータの駆動による非回転分割軸に対する前記回転分割軸の移動と前記転舵用モータの駆動による非回転分割軸の移動とが相殺されて、前記回転分割軸側の操舵輪を、この操舵輪が接地する地面に対して方向が変化しないように、トー角調整用モータと転舵用モータとを協調して制御する協調制御部を有することを特徴とする。
前記「他のセンサ類」とは、例えば、ヨーレイトセンサを含む。前記ヨーレイトセンサに代えて、横力検出用センサを用いても良い。
前記転舵角の指令信号を生成する際の「定められた規則」、および前記トー角の指令信号を生成する際の「定められた規則」は、それぞれ任意の内容で良く、また計算式として定められたものであっても、テーブル等として定められたものであっても良い。例えば、トー角の指令信号を生成する際の「定められた規則」は、操舵される旋回内外輪に作用するコーナリング力の差が設定値以下になるようにトー角調整を行わせる規則とされる。
【0008】
この構成によると、転舵用モータの回転により、転舵動力伝達機構を介して、転舵軸の非回転分割軸および回転分割軸を、一体に軸方向移動させることで、左右のタイロッドを同方向に同距離移動させて操舵輪を転舵させる。トー角調整用モータの回転により、トー角調整動力伝達機構を介して、転舵軸の非回転分割軸に対し回転分割軸を回転させることで、ねじ結合部の螺合長さを調整し、左右のタイロッド間距離を変更して、操舵輪のトー角を変える。このときトー角調整用モータのみを駆動すると、回転分割軸側のみが伸縮するため、例えば、左右の操舵輪のトー角を等しく変更する際には、ステアリング制御手段によりトー角調整用モータと転舵用モータとを協調して制御する。これらトー角調整用モータおよび転舵用モータの制御により、トー角調整動力伝達機構および転舵動力伝達機構は、左右の転舵輪の転舵角が目標値に一致するように互いに協調して動作させられる。
【0009】
例えば、起動直後に自動で僅かにモータを動かし動作確認をする場合や、何らかの原因で前回停車時のトー角がニュートラルでなかった場合など車両の停車時にトー角制御を行う場合には、協調制御部は、トー角調整用モータと転舵用モータとを協調して制御して、トー角を変える回転分割軸側の操舵輪を地面に対して方向が変化しないようにする。すなわち回転分割軸と非回転分割軸との軸方向変位を相殺させ、回転分割軸側の操舵輪を地面に対して方向が変化しないようにすることができる。このとき転舵用モータの制御により、転舵軸を軸方向移動させることで、非回転分割軸側の操舵輪の転舵角のみ変化させる。
ここで、トー角制御用モータに最も負荷がかかるのは、車両の停車時にトー角制御を行うときである。この構成では、前述のように、車両の停車時にトー角制御を行う場合には、協調制御部が、トー角調整用モータと転舵用モータとを協調して制御して、回転分割軸側の操舵輪を地面に対して方向が変化しないようにする。これにより、操舵輪の摩擦力に抗するトー角調整用モータの必要最大トルクを抑えることができ、したがってトー角調整用モータの小型化を図ることが可能となる。モータの小型化を図ることで、ステアバイワイヤ式操舵装置のコンパクト化およびコスト低減を図ることができる。
【0010】
前記ステアリング制御手段は、操舵角センサの検出する操舵角および他のセンサ類からの前記運転状態検出信号を用いて、トー角を変える回転分割軸側の操舵輪の方向が目標値に一致するように、トー角調整用モータをフィードバック制御するフィードバック制御部を有するものであっても良い。この場合、回転分割軸側の操舵輪の方向を精度良く位置決めすることができる。
【0011】
前記フィードバック制御部における車両の停車時のゲインを、車両走行時のゲインよりも低く設定しても良い。この場合、回転分割軸側の操舵輪の方向を、目標値に安定して収束させることができる。
前記フィードバック制御部は、前記目標値が一定時間変化しない場合は、前記フィードバック制御部のゲインを、トー角変更時におけるゲインよりも低く設定するものとしても良い。この場合、回転分割軸側の操舵輪の方向をさらに精度良く位置決めすることができる。
【0012】
前記フィードバック制御部は、前記目標値が一定時間変化しない場合は、前記フィードバック制御部における位置の積分項を無くし、トー角変更時にはフィードバック制御部における位置の積分項を追加するものとしても良い。トー角制御の目標値が一定時間変化しない場合は、フィードバック制御部における位置の積分項を無くすことで、例えば、トー角制御用のねじ結合部のがたや弾性変形により、目標値から微小に変位した場合にも、定位置制御のための消費電力の増加を防ぐことができる。トー角変更時にはフィードバック制御部における位置の積分項を追加することで、トー角を精度良く位置決めすることができる。
【0013】
前記ステアリング制御手段は、前記目標値が一定時間変化しない場合は、トー角調整用モータへの通電を停止するものとしても良い。この場合、ステアリング制御手段は、トー角調整用モータを回転駆動する必要がないと判断し、このトー角調整用モータへの通電を停止する。これにより消費電力の増加を防ぐことができる。
【0014】
前記ステアリング制御手段は、転舵用モータのトルクを検出し、このトルクを、ステアリングホイールの操舵に伴う転舵量で重み付けし、トー角を変える制御に伴う成分を除去した転舵用モータのトルクを、転舵反力の生成に用いるものとしても良い。前記トー角を変える制御に伴う成分を除去した転舵用モータのトルクを、転舵反力の生成に用いることで、トー角制御に伴う操舵反力の変化を抑え、ステアリングホイールを握る運転者に違和感を与えることを防ぐことができる。
前記ステアリングホイールの操舵に伴う転舵量Δθを、ステアリングホイールの操舵に伴う転舵量Δθにトー角を変える制御に伴う転舵量Δθを加えた値(Δθ+Δθ)で除し、この値Δθ/(Δθ+Δθ)に、転舵用モータで検出されたトルクTを乗じることで、前記転舵反力の生成に用いる転舵用モータのトルクT´を得るものとしても良い。
【0015】
前記回転分割軸にスプライン軸部を設け、このスプライン軸部に軸方向に相対移動自在に噛み合うスプラインナットを回転自在に設け、前記トー角調整動力伝達機構は、トー角調整用モータで前記スプラインナットを回転させることにより、回転分割軸を回転させて、前記ねじ結合部の螺合長さを調整するものであり、前記ねじ結合部のリード角を、ねじ結合部の摩擦により、前記回転分割軸が自己保持可能な角度に設定しても良い。ねじ結合部のリード角を、ねじ結合部の摩擦により、回転分割軸が自己保持可能な角度に設定することで、回転分割軸に軸方向の外力が作用しても、回転分割軸が回転不能に保持されてねじ結合部の螺合長さが変化しないため、位置決めしたトー角の位置を、精度良くかつ容易に保持することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
この発明のステアバイワイヤ式操舵装置は、左右両端にタイロッドが設けられた転舵軸と、この転舵軸に機械的に連結されていないステアリングホイールと、このステアリングホイールの操舵角を検出する操舵角センサと、転舵用モータと、この転舵用モータの回転を前記転舵軸に軸方向移動として伝える転舵動力伝達機構と、トー角調整用モータと、このトー角調整用モータの回転によりトー角を調整させるトー角調整動力伝達機構と、ステアリング制御手段とを備え、
前記転舵軸は、非回転分割軸と回転分割軸とに軸方向に2分割され、これら両分割軸を軸中心と同心のねじ結合部で互いに結合した軸であって、前記転舵動力伝達機構は、非回転分割軸および回転分割軸を一体に軸方向移動させることで操舵輪を転舵させるものとし、前記トー角調整動力伝達機構は、非回転分割軸に対して回転分割軸を回転させて、前記ねじ結合部の螺合長さを調整することで、前記左右のタイロッド間距離を変更して操舵輪のトー角を変えるものとし、
前記ステアリング制御手段は、操舵角センサの検出する操舵角を基に、他のセンサ類からの車両の運転状態を検出する運転状態検出信号と合わせて、定められた規則に従い転舵角の指令信号を生成して転舵用モータを制御すると共に、操舵角センサの検出する操舵角および他のセンサ類からの前記運転状態検出信号を基に、定められた規則に従いトー角の指令信号を生成してトー角調整用モータを制御するものであり、前記ステアリング制御手段は、車両の停車時に、トー角を変える指令信号を出力する場合に、前記トー角調整用モータの駆動による非回転分割軸に対する前記回転分割軸の移動と前記転舵用モータの駆動による非回転分割軸の移動とが相殺されて、前記回転分割軸側の操舵輪を、この操舵輪が接地する地面に対して方向が変化しないように、トー角調整用モータと転舵用モータとを協調して制御する協調制御部を有する。このため、トー角制御用モータの小型化を図り消費電力の増加を抑え、また車両の停止時に、トー角を制御するとき運転者に違和感を与えないステアバイワイヤ式操舵装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明の第1の実施形態に係るステアバイワイヤ式操舵装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】同ステアバイワイヤ式操舵装置の転舵動力伝達機構およびトー角調整動力伝達機構を概略示す図である。
【図3】(A)、(B)はステアバイワイヤ式操舵装置の制御系のブロック図である。
【図4】目標操舵反力を演算するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
この発明の第1の実施形態を図1ないし図4と共に説明する。このステアバイワイヤ式操舵装置は、図1に概略図で示すように、運転者が操舵するステアリングホイール1と、操舵機構2と、左右の操舵輪3,3にナックルアーム4およびタイロッド5を介して連結された転舵用の軸方向移動自在な転舵軸6と、この転舵軸6を駆動する転舵及びトー角駆動機構7と、ECU(電気制御ユニット)8とを備える。操舵機構2は、操舵反力を生成する操舵反力モータ9と、操舵角度を検出する操舵角センサ10と、操舵トルクセンサSaとを有する。なお操舵トルクセンサSaは無くても良い。ECU8はステアリング制御手段8aを含み、マイクロコンピュータおよびその制御プログラムを含む電子回路等により構成される。
【0019】
ステアリングホイール1は、転舵用の転舵軸6と機械的に連結されていない。ステアリングホイール1に対して、操舵角センサ10が設けられ、操舵反力モータ9が接続されている。操舵角センサ10は、ステアリングホイール1の操舵角を検出するセンサであり、操舵反力モータ9は、ステアリングホイール1に反力トルクを付与するモータである。
【0020】
図2に示すように、転舵及びトー角駆動機構7は、転舵機構7Aと、トー角調整機構7Bとを有する。転舵機構7Aは、転舵用モータ11と、この転舵用モータ11の回転を転舵軸6に軸方向移動として伝える転舵動力伝達機構12とを有する。トー角調整機構7Bは、トー角調整用モータ13と、このトー角調整用モータ13の回転によりトー角を調整させるトー角調整動力伝達機構14とを有する。
前記転舵軸6は、非回転分割軸6Aと回転分割軸6Bとに軸方向に2分割され、これら両分割軸6A,6Bを軸中心と同心のねじ結合部6Cで互いに伸縮可能に結合した軸である。ねじ結合部6Cは、滑りねじまたはボールねじにより構成される。転舵及びトー角駆動機構7のハウジング15から突出した非回転分割軸6Aおよび回転分割軸6Bの先端部に、左右のタイロッド5(図1)がそれぞれ連結されている。
【0021】
ねじ結合部6Cは、非回転分割軸6Aに設けられた雄ねじ16と、回転分割軸6Bに設けられ雄ねじ16に噛合う雌ねじ17とを有する。これら雄ねじ16,雌ねじ17のリード角αは、ねじ結合部6Cの摩擦によって、回転分割軸6Bが自己保持可能な角度に設定されている。すなわち、リード角αは、軸方向の外力により滑りを生じる摩擦角未満とする。回転分割軸6Bが前記「自己保持可能」とは、トー角調整用モータ13による駆動が停止されている状態において、回転分割軸6Bが、軸方向の外力が作用しても回転不能に保持されてねじ結合部6Cの螺合長さが変化しないことを言う。雄ねじ16は、非回転分割軸6Aのボールねじ軸部6aから回転分割軸6B側に突出する嵌合軸部の先端に設けられている。
回転分割軸6Bは、筒状部18と、この筒状部18内に一部が嵌合して転舵軸先端側へ延びる軸部材18aとを有する。筒状部18の内周に前記雌ねじ17が形成され、この雌ねじ17に、非回転分割軸6Aの雄ねじ16が噛合している。回転分割軸6Bは、前記筒状部18の軸方向の一部が外周面にスプラインが形成されたスプライン軸部6Baとされ、このスプライン軸部6Baの軸方向一端に、軸部材18aが固定されている。この軸部材18aが図示外の連結手段によりタイロッド5(図1)に連結される。
【0022】
ハウジング15内にはボールねじ機構BKが設けられ、このボールねじ機構BKは、ボールねじ軸部6aと、このボールねじ軸部6aに螺合するボールナット19とを有する。ボールナット19がハウジング15に軸受20で回転自在に設置されている。このボールナット19は、例えば、ボールの循環方式がこま式のものを用いる。但し、こま式の循環方式に限定されるものではない。
非回転分割軸6Aは、前記ボールねじ軸部6aと、このボールねじ軸部6aの軸方向一端に固定され軸方向に延びる軸部材6abとを有する。この軸部材6abが図示外の連結手段によりタイロッド5(図1)に連結される。また非回転分割軸6Aは、図示外の回り止め手段により、ハウジング15に対して軸方向に進退自在かつ軸回りに回転不能とされている。前記回り止め手段は、例えば、非回転分割軸6Aにおけるボールねじ軸部6aの軸方向外側に続く部分である非同心円部と、ハウジング15に固定して設けられ、前記非同心円部が軸方向に摺動自在に嵌合する滑り軸受とを有する。ハウジング15に固定された滑り軸受に、ボールねじ軸部6aの非同心円部が嵌合することで、非回転分割軸6Aは、ハウジング15に対して軸方向に進退自在かつ軸回りに回転不能とされる。
【0023】
転舵軸6の全体は、以下のようにハウジング15に支持されている。先ず、非回転分割軸6Aの支持構造については、ハウジング15の内周に、複列アンギュラ玉軸受等の転がり軸受20および前記滑り軸受が嵌合され、転がり軸受20にボールナット19が回転自在に設置される。これらボールナット19および前記滑り軸受に非回転分割軸6Aが支持される。回転分割軸6Bの支持構造については、ハウジング15の内周に、転がり軸受22が嵌合され、この転がり軸受22にスプラインナット21が回転自在に設置される。スプラインナット21の内周に、スプライン軸部6Baの外周がスプライン嵌合することで、回転分割軸6Bが支持される。なお、スプライン軸部6Baとスプラインナット21とは、両者が滑り接触していても良いし、図示外のボールを介して互いに転がり接触していても良い。
転舵動力伝達機構12は、転舵軸6の非回転分割軸6Aおよび回転分割軸6Bを一体に軸方向に移動させて操舵輪3(図1)の転舵を行うものとしている。
【0024】
転舵用モータ11は、このモータ軸が転舵軸6と平行となるように、ハウジング15に取付けられている。
転舵動力伝達機構12は、転舵用モータ11の前記モータ軸と、出力ギヤ23と、この出力ギヤ23と図示外のカウンタギヤを介して噛み合う入力ギヤ24と、この入力ギヤ24に固定され前記ボールねじ軸部6aに螺合するボールナット19とを有する。転舵用モータ11の回転駆動力が各ギヤ23,24およびボールナット19に伝達され、ボールナット19が回転することで、非回転分割軸6Aおよび回転分割軸6Bを一体に軸方向移動させる。これにより操舵輪3,3を転舵可能としている。
【0025】
トー角調整用モータ13は、ハウジング15に取付けられている。
トー角調整動力伝達機構14は、トー角調整用モータ13のモータ軸に固定された出力ギヤ25と、この出力ギヤ25に図示外の中間ギヤを介して噛み合う入力ギヤ26と、この入力ギヤ26に固定された前記スプラインナット21とを有する。またスプラインナット21に、スプライン軸部6Baがスプライン嵌合している。トー角調整用モータ13の回転駆動力が各ギヤ25,26およびスプラインナット21に伝達され、このスプラインナット21と共にスプライン軸部6Baを回転することで、ねじ結合部6Cの螺合長さを調整し得る。
【0026】
トー角調整動力伝達機構14は、非回転分割軸6Aに対し回転分割軸6Bを回転させることで、ねじ結合部6Cの螺合長さを調整して、転舵軸6を伸縮させる。これにより、左右のタイロッド間距離を変更して、操舵輪3(図1)のトー角を変える。このトー角を調整するとき、トー角調整用モータ13のみを駆動すると、回転分割軸6B側のみが伸縮するため、例えば、車両走行時において、図1に示す左右の操舵輪3,3のトー角を等しく変更する際には、ステアリング制御手段8aによりトー角調整用モータ13と転舵用モータ11とを協調して制御する。
【0027】
具体的にトー角調整用モータ13を一方向に回転させて、トー角調整動力伝達機構14により、図1左側の操舵輪3をトー角を変える。これと共に図1右側の操舵輪3をトー角を変えるため、転舵用モータ11を回転させて転舵動力伝達機構12により、図1左右の操舵輪3のトー角を変える。このとき転舵動力伝達機構12は、転舵軸6の全体を軸方向に移動するため、左側の操舵輪3がトー角が相殺される。このトー角の相殺分を補うべくトー角調整用モータ13の回転量を増やすことで、左右の操舵輪3,3のトー角を等しく変更し得る。このようにトー角調整用モータ13および転舵用モータ11を協調して制御することにより、トー角調整動力伝達機構14および転舵動力伝達機構12は、左右の転舵輪3,3の転舵角が目標値に一致するように互いに協調して動作させられる。
【0028】
図3(A)に示すように、ECU8のステアリング制御手段8aは、操舵反力制御部8aaと、転舵制御部8abと、トー角制御部8acと、協調制御部8adとを有する。操舵反力制御部8aaは、目標操舵反力を生成する目標値生成部29と、フィードバック制御部30とを有する。目標値生成部29は、操舵角センサ10(図1)の検出する操舵角の信号、車速センサ27の検出する操舵輪回転速度の信号、および運転状態を検出する各種センサ28の信号に基づいて目標操舵反力を生成する。フィードバック制御部30は、実際の操舵反力トルクが目標操舵反力に一致するように操舵トルクセンサSa(図1)の検出する操舵トルクの信号をフィードバックして、操舵反力モータ9を制御する。このように操舵トルクセンサSaがあれば、トルクのフィードバック制御で、より正確なトルクを出力することができる。但し、トルクとモータ電流は略比例するので、操舵トルクセンサSaが無くても、この使用例においては許容できる範囲内の誤差でトルクを出力できる。なおサーボモータでは、モータ電流は電流センサを用いてフィードバック制御している。
【0029】
転舵制御部8abは、目標転舵角(目標値)の指令信号を生成する目標値生成部31と、フィードバック制御部32とを有する。目標値生成部31は、操舵角センサ10の検出する操舵角を基に、他のセンサ類28からの車両の運転状態を検出する運転状態検出信号と合わせて、定められた規則に従い目標転舵角の指令信号を生成する。フィードバック制御部32は、転舵用モータ11の回転角度から得られる転舵角が、前記目標転舵角に一致するようにフィードバック制御する。
【0030】
トー角制御部8acは、目標トー角(目標値)の指令信号を生成する目標値生成部33と、フィードバック制御部34とを有する。目標値生成部33は、操舵角センサ10の検出する操舵角を基に、他のセンサ類28からの車両の運転状態を検出する運転状態検出信号と合わせて、定められた規則に従い目標トー角の指令信号を生成する。フィードバック制御部34は、トー角調整用モータ13の回転角度、および、転舵用モータ11の回転角度から得られるトー角が、前記目標トー角に一致するようにフィードバック制御する。
各目標値を生成する際の「定められた規則」は、それぞれ任意の内容で良く、また計算式として定められたものであっても、テーブル等として定められたものであっても良い。例えば、目標トー角を生成する際の「定められた規則」は、操舵される旋回内外輪に作用するコーナリング力の差が設定値以下になるようにトー角調整を行わせる規則とされる。
【0031】
フィードバック制御部34について、トー角変更時には、制御対象であるトー角調整用モータ13または転舵用モータ11の入出力間の伝達関数G(s)は、図3(B)上段の概略図のようにゲインK1および積分項1/sを用いて表される。このようにトー角変更時に積分項1/sを追加することで、トー角を精度良く位置決めすることができる。
トー角制御部8acにおけるフィードバック制御部34は、積分項を含む図3(B)上段のフィードバック制御を行うが、目標値を常時監視しておき、目標値が一定時間変化しない場合は、積分項を無くしたフィードバック制御を行う。
すなわち目標値が一定時間変化しない場合は、制御対象であるトー角調整用モータ13または転舵用モータ11の入出力間の伝達関数G(s)は、図3(B)下段の概略図のように積分項を無くしゲインK2を用いて表される。トー角制御の目標値が一定時間変化しない場合に積分項を無くすことで、例えば、トー角制御用のねじ結合部6C(図2)のがたや弾性変形により、目標値から微小に変位した場合にも、定位置制御のための消費電力の増加を防ぐことができる。この場合のゲインK2を、トー角変更時におけるゲインK1よりも低く設定しても良い。この場合、トー角の位置を安定して保持することができ、回転分割軸6B側の操舵輪3の方向をさらに精度良く位置決めすることができる。
【0032】
協調制御部8adは、転舵制御部8abと、トー角制御部8acとを協調してトー角制御を行うものである。なお転舵制御のみを行う場合、転舵制御部8abのみ実行させる。協調制御部8adは、走行時制御部35と、停止時制御部36とを有する。走行時制御部35は、車両走行時に、転舵制御部8abとトー角制御部8acとを協調して制御し、停止時制御部36は、車両停止時に、転舵制御部8abとトー角制御部8acとを協調して制御する。
車両走行時において、走行時制御部35は、得られた転舵角およびトー角が、それぞれの目標値に一致するように、転舵用モータ11およびトー角調整用モータ13を駆動制御する。これにより、転舵動力伝達機構12およびトー角調整動力伝達機構14を互いに協調して動作させるようになっている。
【0033】
例えば、車両走行時において、走行時制御部35は、トー角制御部8acを実行させ、得られるトー角が目標値に一致するように、トー角調整用モータ13を回転させて、トー角調整動力伝達機構14により、図1左側の操舵輪3のトー角を変える。これと共に走行時制御部36は、転舵制御部8abを実行させ、転舵用モータ11の回転角度から得られる図1右側の操舵輪3のトー角が、目標値に一致するように、転舵用モータ11を回転させてる。したがって、転舵動力伝達機構12により、図1右側の操舵輪3のトー角を変える。このとき転舵動力伝達機構12は、転舵軸6の全体を軸方向に移動するため、左側の操舵輪3のトー角が相殺される。協調制御部8adの走行時制御部35は、このトー角の相殺分を補うべくトー角調整用モータ13の回転量を増やすように、トー角制御部8acを制御する。これにより、左右の操舵輪3,3のトー角を等しく変更し得る。このようにトー角調整用モータ13および転舵用モータ11を協調して制御することにより、トー角調整動力伝達機構14および転舵動力伝達機構12は、左右の転舵輪3,3の転舵角が目標値に一致するように互いに協調して動作させられる。
【0034】
車両停止時において、停止時制御部36は、得られた転舵角およびトー角が、それぞれの目標値に一致するように、転舵用モータ11およびトー角調整用モータ13を駆動制御する。これにより、転舵動力伝達機構12およびトー角調整動力伝達機構14を互いに協調して動作させる。
例えば、車両停止時にトー角制御を行うとき、停止時制御部36は、転舵制御部8abを実行させ、転舵用モータ11の回転角度から得られる図1右側の操舵輪3のトー角が、目標値に一致するように、転舵用モータ11を回転させる。これにより転舵軸6の全体が軸方向に移動して、図1右側の操舵輪3の転舵角を変化させる。これと共に、停止時制御部36は、トー角制御部8acを実行させ、転舵軸6の全体の軸方向移動と回転分割軸6Bの軸方向移動とが互いに相殺するように、トー角調整用モータ13を回転させる。これにより回転分割軸側6Bの操舵輪3を、この操舵輪3が接地する地面に対して方向が変化しないようにできる。
【0035】
ステアリング制御手段8aのトー角制御部8acは、前記目標値が一定時間変化しない場合は、トー角調整用モータ13への通電を停止するものとしても良い。この場合、ステアリング制御手段8aは、トー角調整用モータ13を回転駆動する必要がないと判断し、このトー角調整用モータ13への通電を停止する。これにより消費電力の増加を防ぐことができる。トー角調整用モータ13への通電を停止した状態で、回転分割軸6Bに軸方向の外力が作用しても、前述のように、ねじ結合部6Cのリード角αが、ねじ結合部6Cの摩擦によって、回転分割軸6Bが自己保持可能な角度に設定されているため、回転分割軸6Bが回転不能に保持されねじ結合部6Cの螺合長さは不所望に変化しない。
また、この例では、フィードバック制御部34における車両の停車時のゲインを、車両走行時のゲインよりも低く設定している。この場合、回転分割軸6B側の操舵輪3の方向を、目標値に安定して収束させることができる。
【0036】
ステアリング制御手段8aは、転舵用モータ11のトルクを検出し、このトルクを、ステアリングホイール1の操舵に伴う操舵量で重み付けし、トー角を変える制御に伴う成分を除去した転舵用モータ11のトルクを、転舵反力の生成に用いる。
図4は、目標操舵反力を演算するフローチャートである。ステアリング制御手段8aは、演算開始後、転舵用モータ11から検出される信号を読み込み(ステップS1)、運転者の操舵による転舵用モータ11のトルクT´を算出する(ステップS2)。トルクT´は、転舵反力の生成に用いるトルクであって、ステップS2において、ステアリングホイール1の操舵に伴う転舵量Δθを、ステアリングホイール1の操舵に伴う転舵量Δθにトー角を変える制御に伴う転舵量Δθを加えた値(Δθ+Δθ)で除し、この値Δθ/(Δθ+Δθ)に、転舵用モータ11で検出されたトルクTを乗じることでトルクT´を得る。
したがって転舵反力の生成に用いるトルクT´は以下の式により表される。
【0037】
【数1】

【0038】
次に、転舵用モータ11のトルクT´から転舵反力を推定する(ステップS3)。転舵反力推定値をFとすると転舵反力推定値をFは以下の式により表される。
【数2】

【0039】
ステップS3にて上記式により転舵反力推定値を演算した後、転舵反力に応じた操舵反力の目標値を演算する(ステップS4)。操舵反力をPとすると、操舵反力Pは以下の式により表される。この操舵反力目標値を演算した後、ステップS1に戻る。
【数3】

【0040】
前述のようにトー角調整の際には、転舵用モータ11も協調して制御する必要があり、このとき運転者は、ステアリングホイール1を操舵していなくても転舵用モータ11のトルクTが発生する。転舵用モータ11のトルクTは、トー角制御に伴う成分と、運転者の操舵に伴うステアリングホイール1からの入力による成分の両方を含むため、前記トルクTを、ステアリングホイール1の操舵に伴う操舵量で重み付けし、トー角制御に伴う成分を除去したT´を転舵反力の生成に用いる。このようにトー角制御に伴う成分を除去することで、トー角制御に伴う操舵反力の変化を抑え、ステアリングホイール1を握る運転者に違和感を与えることを防ぐことができる。
【0041】
以上説明したステアバイワイヤ式操舵装置によると、転舵用モータ11の回転により、転舵動力伝達機構12を介して、転舵軸6の非回転分割軸6Aおよび回転分割軸6Bを、一体に軸方向移動させることで、左右のタイロッド5,5を同方向に同距離移動させて操舵輪3を転舵させる。トー角調整用モータ13の回転により、トー角調整動力伝達機構14を介して、転舵軸6の非回転分割軸6Aに対し回転分割軸6Bを回転させることで、ねじ結合部6Cの螺合長さを調整し、左右のタイロッド間距離を変更して、操舵輪3のトー角を変える。このときトー角調整用モータ13のみを駆動すると、回転分割軸6B側のみが伸縮するため、左右の操舵輪3,3のトー角を等しく変更する際には、ステアリング制御手段8aによりトー角調整用モータ13と転舵用モータ11とを協調して制御する。これらトー角調整用モータ13および転舵用モータ11の制御により、トー角調整動力伝達機構14および転舵動力伝達機構12は、左右の転舵輪3,3の転舵角が目標値に一致するように互いに協調して動作させられる。
【0042】
車両の停車時にトー角制御を行う場合には、協調制御部8adは、トー角調整用モータ13と転舵用モータ11とを協調して制御して、トー角を変える回転分割軸6B側の操舵輪3を地面に対して方向が変化しないようにする。すなわち回転分割軸6Bと非回転分割軸6Aとの軸方向変位を相殺させ、回転分割軸6B側の操舵輪3を地面に対して方向が変化しないようにすることができる。このとき転舵用モータ11の制御により、転舵軸6を軸方向移動させることで、非回転分割軸6A側の操舵輪3の転舵角のみ変化させる。
【0043】
ここで、トー角制御用モータ13に最も負荷がかかるのは、車両の停車時にトー角制御を行うときである。この構成では、前述のように、車両の停車時にトー角制御を行う場合には、協調制御部8adが、トー角調整用モータ13と転舵用モータ11とを協調して制御して、回転分割軸6B側の操舵輪3を地面に対して方向が変化しないようにする。これにより、操舵輪3の摩擦力に抗するトー角調整用モータ13の必要最大トルクを抑えることができ、したがってトー角調整用モータ13の小型化を図ることが可能となる。モータ13の小型化を図ることで、ステアバイワイヤ式操舵装置のコンパクト化およびコスト低減を図ることができる。
ねじ結合部6Cのリード角αを、回転分割軸6Bが自己保持可能な角度に設定することで、トー角調整用モータ13による駆動が停止されている状態において、回転分割軸6Bが、軸方向の外力が作用しても回転不能に保持されてねじ結合部6Cの螺合長さが変化しない。したがって、位置決めしたトー角の位置を、精度良くかつ容易に保持することが可能となる。
【符号の説明】
【0044】
1…ステアリングホイール
3…転舵輪
5…タイロッド
6…転舵軸
6A…非回転分割軸
6B…回転分割軸
6Ba…スプライン軸部
6C…ねじ結合部
8a…ステアリング制御手段
8ad…協調制御部
10…操舵角センサ
11…転舵用モータ
12…転舵動力伝達機構
13…トー角調整用モータ
14…トー角調整動力伝達機構
21…スプラインナット
28…他のセンサ類
34…フィードバック制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右両端にタイロッドが設けられた転舵軸と、この転舵軸に機械的に連結されていないステアリングホイールと、このステアリングホイールの操舵角を検出する操舵角センサと、転舵用モータと、この転舵用モータの回転を前記転舵軸に軸方向移動として伝える転舵動力伝達機構と、トー角調整用モータと、このトー角調整用モータの回転によりトー角を調整させるトー角調整動力伝達機構と、ステアリング制御手段とを備え、
前記転舵軸は、非回転分割軸と回転分割軸とに軸方向に2分割され、これら両分割軸を軸中心と同心のねじ結合部で互いに結合した軸であって、前記転舵動力伝達機構は、非回転分割軸および回転分割軸を一体に軸方向移動させることで操舵輪を転舵させるものとし、前記トー角調整動力伝達機構は、非回転分割軸に対して回転分割軸を回転させて、前記ねじ結合部の螺合長さを調整することで、前記左右のタイロッド間距離を変更して操舵輪のトー角を変えるものとし、
前記ステアリング制御手段は、操舵角センサの検出する操舵角を基に、他のセンサ類からの車両の運転状態を検出する運転状態検出信号と合わせて、定められた規則に従い転舵角の指令信号を生成して転舵用モータを制御すると共に、操舵角センサの検出する操舵角および他のセンサ類からの前記運転状態検出信号を基に、定められた規則に従いトー角の指令信号を生成してトー角調整用モータを制御するものであり、
前記ステアリング制御手段は、車両の停車時に、トー角を変える指令信号を出力する場合に、前記トー角調整用モータの駆動による非回転分割軸に対する前記回転分割軸の移動と前記転舵用モータの駆動による非回転分割軸の移動とが相殺されて、前記回転分割軸側の操舵輪を、この操舵輪が接地する地面に対して方向が変化しないように、トー角調整用モータと転舵用モータとを協調して制御する協調制御部を有することを特徴とするステアバイワイヤ式操舵装置。
【請求項2】
請求項1において、前記ステアリング制御手段は、操舵角センサの検出する操舵角および他のセンサ類からの前記運転状態検出信号を用いて、トー角を変える回転分割軸側の操舵輪の方向が目標値に一致するように、トー角調整用モータをフィードバック制御するフィードバック制御部を有するステアバイワイヤ式操舵装置。
【請求項3】
請求項2において、前記フィードバック制御部における車両の停車時のゲインを、車両走行時のゲインよりも低く設定したステアバイワイヤ式操舵装置。
【請求項4】
請求項2において、前記フィードバック制御部は、前記目標値が一定時間変化しない場合は、前記フィードバック制御部のゲインを、トー角変更時におけるゲインよりも低く設定するステアバイワイヤ式操舵装置。
【請求項5】
請求項2において、前記フィードバック制御部は、前記目標値が一定時間変化しない場合は、前記フィードバック制御部における位置の積分項を無くし、トー角変更時にはフィードバック制御部における位置の積分項を追加するステアバイワイヤ式操舵装置。
【請求項6】
請求項2において、前記ステアリング制御手段は、前記目標値が一定時間変化しない場合は、トー角調整用モータへの通電を停止するステアバイワイヤ式操舵装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか1項において、前記ステアリング制御手段は、転舵用モータのトルクを検出し、このトルクを、ステアリングホイールの操舵に伴う転舵量で重み付けし、トー角を変える制御に伴う成分を除去した転舵用モータのトルクを、転舵反力の生成に用いるステアバイワイヤ式操舵装置。
【請求項8】
請求項7において、前記ステアリングホイールの操舵に伴う転舵量Δθを、ステアリングホイールの操舵に伴う転舵量Δθにトー角を変える制御に伴う転舵量Δθを加えた値(Δθ+Δθ)で除し、この値Δθ/(Δθ+Δθ)に、転舵用モータで検出されたトルクTを乗じることで、前記転舵反力の生成に用いる転舵用モータのトルクT´を得るステアバイワイヤ式操舵装置。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のいずれか1項において、前記回転分割軸にスプライン軸部を設け、このスプライン軸部に軸方向に相対移動自在に噛み合うスプラインナットを回転自在に設け、前記トー角調整動力伝達機構は、トー角調整用モータで前記スプラインナットを回転させることにより、回転分割軸を回転させて、前記ねじ結合部の螺合長さを調整するものであり、前記ねじ結合部のリード角を、ねじ結合部の摩擦により、前記回転分割軸が自己保持可能な角度に設定したステアバイワイヤ式操舵装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−23167(P2013−23167A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162810(P2011−162810)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】