説明

ステージ装置およびステージ装置の制御方法

【課題】走査型電子顕微鏡で表示された観察画面に設けられた仮想点を中心に試料を回転させるローテーションユーセントリック動作において、回転誤差を補正し、画面上の回転中心の位置変動を低減させるステージ装置を実現する。
【解決手段】試料もしくは試料ホルダもしくは回転テーブルに位置と方向が測定可能なマーカーを設け、所定の動作パターンに従ってステージの回転・並進移動を行いそのときのマーカーの位置と方向とを測定し、その結果から回転テーブルの回転中心を同定し、かつ、回転誤差を補正する回転角補正量と回転中心の位置変動を補正する並進補正量とを求め回転角に対する補正量テーブルを作成し、入力された回転角指令値もしくは実回転角に対応した補正量を補正量テーブルから取得して入力された回転・並進指令値もしくは検出された回転角・並進位置を補正してステージを制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走査電子顕微鏡などの荷電粒子線装置において、観察試料を搭載し並進・回転移動を行って観察視野を移動させるステージ装置およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
代表的な荷電粒子線装置である走査電子顕微鏡(SEM)は、観察試料の表面へ電子ビーム(一次電子線)を二次元状に走査しながら照射し、試料から二次的に発生する二次電子の強度を一次電子線の走査と同期して走査生成される画像の輝度変調入力とすることで、試料表面のSEM画像を取得する。このとき、観察対象となる試料表面の選択は試料を搭載するステージの移動により行われる。通常、操作者はSEM画像を見ながらトラックボールなどの操作入力手段を操作して、目的とする試料表面部分がSEM画像として得られまでステージを移動させる。SEMは半導体パターンの欠陥や不良の観察等に用いられるが、近年、半導体プロセスの微細化に伴い、SEMにはより高い倍率での観察が要求されている。このため、SEMに使用するステージにも、より微細で高精度な動作が求められている。
【0003】
ところで、半導体ウェハのように同じような微細なパターン(セル)が連続している試料を観察する場合、所定の方向に一定速度で試料を走査して、目視もしくは画像処理によりSEM画面上を通過するセルの数を計測することで観察位置を特定する。これはセルカウントと呼ばれ、これを行うためには試料の走査方向にステージの並進移動方向を合わせるための回転(ローテーション)が必要になる。また、試料の形状が立体的な場合には、観察方向を変化させて三次元的に試料を観察できることが望まれており、このためにも回転動作が必要になっている。
【0004】
ステージの操作はSEM画像を見ながら行うため、試料を回転させるときには視野が移動しないようにSEM画像上に設定する仮想点を中心に回転できることが望ましい。この動作機能はローテーションユーセントリック(rotation eucentric)と呼ばれている。従来のステージでは、回転軸の偏芯や振れ回り、あるいはアクチュエータや伝達機構のガタやバックラッシュにより、SEM画像上での回転中心の位置変動が大きく、特に高倍率観察時に回転中心をSEM画像内に留めておくことは困難であった。そのため、試料を回転させるときは、一旦観察倍率を低くして回転を行い、その後並進移動で位置を調整しながら倍率を再び高くするといった手順を踏む必要があり操作が煩雑であった。また試料を回転させながら連続して観察を行う事は困難であった。このような回転中心の位置変動を補正する技術は、例えば特許文献1に開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、走査型電子顕微鏡において、ステージ以外に設けられた基準マーク画像によりビーム走査領域を補正する技術が開示されている。また、特許文献3には、荷電粒子装置用資料台において、資料台に目印を形成する構成が開示されている。さらに、特許文献4には、荷電粒子装置の試料固定台において、試料固定台上にマーキングが設けられ外部イメージング装置で位置ずれを検出する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4515179号公報
【特許文献2】特開2000−260379号公報
【特許文献3】特開2007−18944号公報
【特許文献4】特開2008−146990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示されている技術では、回転ステージを回転させつつ基板上の回転中心付近にビームEBを照射し、基板上に全体がSEM等で拡大観察可能な小径の測定円を描画し、測定円の計測により偏芯量を求めて補正を行う。しかし、この方法では描画された測定円の輪郭から位置ずれ量を求めているのみで回転角の誤差を測定し補正することは行っておらず、回転角誤差に起因する位置ずれは補正されない。その他の特許文献でも同様に上記の問題は解決されていない。
【0008】
本発明はこのような問題に鑑みてなされるものであり、本発明の目的は位置ずれ量に加え回転誤差も補正して、高精度なローテーションユーセントリック動作が可能なステージ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を達成するために本発明は、試料を搭載し回転および並進移動を行うステージ装置において、試料もしくは試料を取り付けた試料ホルダを載置する回転テーブルと、
回転テーブルを回転させる回転機構と、回転テーブルを並進移動させる並進機構と、外部から入力された指令値に従って回転機構と並進機構とを制御するステージ制御手段とを有するステージ装置であって、試料もしくは試料ホルダもしくは回転テーブルに位置および方向を測定可能なマーカーを設け、回転機構と並進機構とを所定の動作パターンに従って動作させたときのマーカーの位置と方向を測定し、この測定の結果から回転テーブルの回転中心位置を同定し、さらに、回転テーブルの回転誤差を補正するための回転角補正量と回転テーブルの回転中心の位置変動を補正するための並進補正量とを回転角に対する補正量テーブルとして作成し、入力された回転角指令値もしくは実回転角に対応した回転角補正量および並進補正量を補正量テーブルから取得し、取得した補正量を用いて回転機構および並進機構を制御するステージ装置を提供する。
【0010】
この補正量テーブルを作成するために、回転機構のみを回転させたときのマーカーの位置と方向を測定し、その結果から回転テーブルの回転中心と回転誤差を補正するための回転角補正量を求め、さらに、マーカーを仮想回転中心として回転するように回転機構と並進機構を移動させたときのマーカーの少なくとも位置、望ましくは位置と方向を測定し、その結果から回転テーブルの回転中心の位置変動を補正する並進補正量を求め、これから回転角に対する補正量テーブルを作成する。
【0011】
また、補正量テーブルを用いて制御する方法として、入力された回転角指令値に対する回転角補正量と並進補正量を補正量テーブルから取得し、取得した補正量を入力された指令値に加算した補正指令値を求めて、それを新しい指令値として制御する。
【0012】
別の方法としては、回転角を検出する回転角検出手段と、並進位置を検出する並進位置検出手段とを備え、これらから実回転角と実並進位置を取得し、実回転角に対する回転角補正量と並進補正量を補正量テーブルから取得し、実回転角と実並進位置から補正量を減算した値をフィードバック量として制御する。
【0013】
また、本発明に使用しているマーカーは位置と方向が特定できるものであり、少なくとも2つ以上の特徴点、もしくは、対象軸が1本以下の輪郭形状をもつものを設定する。また、マーカーはSEM画像を見ながら操作者が選択できる。
【0014】
本発明のステージ装置は、駆動手段および動力伝達機構にガタやバックラッシュが小さいものを用いるのが望ましく、例えばピエゾモータを用いるのが望ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ステージ装置において、試料等に設けた位置および方向を測定可能なマーカーと、回転機構と並進機構とを所定の動作パターンに従って動作させたときのマーカーの位置と方向を測定するマーカー位置方向測定手段と、測定の結果から回転テーブルの回転中心位置を同定する回転中心同定手段と、回転テーブルの回転誤差を補正する回転角補正量と回転テーブルの回転中心の位置変動を補正する並進補正量とを回転角に対する補正量として作成する補正量テーブル作成手段と、回転角補正量と並進補正量を記録する補正量テーブルと、入力された回転角指令値もしくは実回転角に対応した回転角補正量および並進補正量を補正量テーブルから取得し取得した補正量を用いて回転機構を制御する回転機構制御手段および並進機構を制御する並進機構制御手段を有することにより、回転角補正量と並進補正量を補正して、高精度なローテーションユーセントリック動作が可能なステージ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例1のステージ装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施例1のステージ装置を用いるSEMを示す模式図である。
【図3】本発明の実施例1のステージ装置の正面図である。
【図4】本発明の実施例1のマーカーを示す模式図である。
【図5】本発明の実施例1のマーカーの応用例を示す模式図である。
【図6】本発明の実施例1の回転中心と回転角補正量および並進補正量とを求める処理のフローチャートである。
【図7】本発明の実施例1の回転中心と回転角補正量を求める動作パターンを示す模式図である。
【図8】本発明の実施例1の並進補正量を求める動作パターンを示す模式図である。
【図9】本発明の実施例1のマーカー位置と方向を測定する操作画面の説明図である。
【図10】本発明の実施例1のマーカーを設定する操作画面の説明図である。
【図11】本発明の実施例1の応用例のマーカー位置と方向を測定する操作画面の説明図である。
【図12】本発明の実施例2のステージ装置を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の実施例を図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0018】
〔SEMの構成〕
本発明の実施例1において、ステージ装置を用いるSEMの構成を図2を用いて説明する。実施例1において、SEM1は電子光学系を備えた鏡筒2、試料室3、ステージ11から構成される。電子銃4から発生した一次電子線5は収束レンズ6、対物レンズ7を通して試料12に照射され、試料12から発生した二次電子9は二次電子検出器10により検出される。一次電子線5は走査偏光器8により観察する試料12の表面を二次元状に走査する。電子光学系制御手段13は走査偏光器8による一次電子線5の走査を制御するとともに、二次電子検出器10により検出される二次電子9の強度を一次電子線の走査と同期して走査生成される画像の輝度変調入力とすることで試料表面の観察画像(SEM画像)を生成する。
【0019】
生成されたSEM画像は表示装置14に表示される。観察対象となる試料12は、試料室3内に置かれたステージ11に搭載される。ステージ11は試料12を並進・回転移動させるものであり、水平方向(XY方向)、上下方向(Z方向)、回転(Z軸回りの回転)、傾斜(X軸周りの回転)などの自由度を持つ。ステージ制御手段15は、例えばトラックボールやジョイスティックなどのステージ操作入力手段16からの入力に従いステージ11を制御する。ステージ操作入力手段16としてネットワークやシリアルなどで接続されたPCを用いてもよい。実施例1が対象とする回転操作は、まず表示装置14に表示されているSEM画像上での仮想回転中心を設定し、操作入力手段16で回転角を入力することで行う。
〔ステージ装置〕
実施例1のステージ装置の具体的構成の一例を、図3を用いて説明する。ステージ11は、試料を直接もしくは試料ホルダを介して搭載する回転テーブル210と、回転テーブル210を回転させる回転機構200と、回転テーブル210を並進移動させる並進機構100から構成される。
【0020】
並進機構100と回転機構200を動かすことにより試料を並進・回転移動し、さらに、並進機構100と回転機構200とを協調して動かすことにより、回転テーブル210の回転軸と異なった位置に設けた仮想点を中心とした回転動作、すなわちローテーションユーセントリック動作を実現する。
【0021】
並進機構100は、例えば、ベース101にリニアガイド102を取り付けて、それに沿って可動テーブル103を移動させる。可動テーブル103を駆動する並進機構駆動手段としてリニアモータを用いる。ベースにリニアモータのシャフト104を、可動テーブルにモータ本体105を取り付け、シャフト104に沿ってモータ本体105を動かすことにより可動テーブル103を動かす。
【0022】
可動テーブル103の位置を検出する並進位置検出手段としてはリニアスケールを用いればよい。ベース101に取り付けたリニアスケール106には一定間隔毎にスリットが付けられており、その上を可動テーブル103に取り付けたセンサヘッド107を移動させる。センサヘッド107がスリットを通過するたびにパルスが発生し、そのパルスをカウントすることでベース101に対する可動テーブル103の位置を得る。2自由度の並進移動を実現させるには、図3に示すように並進機構を2段重ねにすればよい。
【0023】
回転機構200は、並進機構100の最上段の可動テーブル103bに回転モータ205を取り付け、回転モータ205のシャフトに回転テーブル210を取り付ける。回転テーブル210の回転角を検出する回転角検出手段としてはロータリースケール206を用いる。リニアスケールと同様に、回転テーブル210に取り付けたロータリースケール206には一定角度間隔にスリットが付けてあり、そのスリットを可動テーブル103bに取り付けたセンサヘッド207で読み取ることで可動テーブル103bに対する回転テーブル210の回転角を取得する。
【0024】
なお、実施例1で対象としているステージ機構は試料を回転させる回転機構と並進移動させる並進機構を備えていれば良く、本発明は実施例1の回転機構および並進機構に限定されるものではない。
〔マーカーの設定〕
本発明では、試料、試料ホルダもしくは回転テーブルに、位置と方向を測定するためのマーカーを設け、回転機構と並進機構を所定パターンに従って動かした時のマーカー位置と方向を測定し、その測定結果から回転テーブルの回転中心および回転誤差および回転中心の位置変動を補正する補正量を求める。
【0025】
本発明で使用するマーカーはSEM画像上で特定でき、かつ位置と方向を同時に測定できる特徴的な図形を使用する。例えば、図4に示すような三角形400を用い、三角形400の各頂点401、402、403を特徴点として設定する。
【0026】
このような複数の特徴点を持つマーカーを用いる場合には、マーカーの代表位置として特徴点401、402、403の重心位置、マーカーの方向として特徴点のうちの2点を結ぶ線分(最も距離の長い2点を結ぶ線分を用いるのが望ましい)、あるいは重心位置から1つの特徴点に向かうベクトル404を用いればよい。複数の特徴点を持つマーカーを用いる場合には、特徴点は少なくとも2点あればマーカーとして使用できる。
【0027】
また、マーカーの応用例として、図5に示すように特徴的な図形の輪郭形状そのものを用いる事ができる。これは画像処理装置を用いる場合に有効であり、特徴的な図形400を含む領域405を選択し、その領域に対してエッジ強調処理を行って特徴的な輪郭形状400を抽出する。マーカーの代表位置としては輪郭パターン400の重心を用い、マーカーの方向をパターンの幅が最も長い部分を用いればよい。ただし、輪郭形状を利用する場合には、対称軸が複数あると方向が一義に決まらないため、そのような図形(円や正多角形など)は使用できない。
〔回転テーブルの補正量の導出〕
実施例1では、所定のパターンに従って回転機構200および並進機構100を動かし、そのときのマーカーの位置および方向を測定して、回転テーブルの回転中心の同定および回転誤差を補正する回転角補正量、回転中心の位置変動を補正する並進補正量を求める。以下に、その導出方法を図6〜8を用いて説明する。
【0028】
始めに、図6のフローチャートを用いて回転中心および回転角補正量、並進補正量の導出を説明する。まず、前述の方法によりマーカーを試料等に設定する(ステップS1000)。
【0029】
次に、回転機構200のみを回転させてマーカーの位置と方向を測定する(S1001)。これは、例えば図7に示すように、回転機構200のみを一定角度刻みで動かしてそのときのマーカーの位置および方向を測定する。図7は90度ずつ回転させたときのマーカー位置を示す。回転角指令値は少なくとも3個であればよく、また厳密に一定角度刻みである必要はない。その結果、例えばn回、回転機構を動かして測定したとき、回転機構への回転角指令値、そのとき測定されたマーカーの位置、マーカーの方向を
回転角指令値:θri(i=1、・・・、n)
マーカーの位置:(Xi、Yi)(i=1、・・・、n)
マーカーの方向:θi(i=1、・・・、n)
とする。
【0030】
次に回転テーブルの回転中心を同定する(S1002)。回転中心を(Xc、Yc)、回転半径をRとすると、以下の関係式が成り立つ。
〔数1〕
(Xi−Xc)^2+(Yi−Yc)^2=R^2 ・・・(1)
この関係式に対して最小二乗法を適用すれば、もっとも誤差の小さい(Xc、Yc)およびRを同定することができる。
【0031】
次に、回転テーブルの回転誤差を補正するための回転角補正量を求める(S1003)。回転誤差Δθi(i=1、・・・、n)は回転角指令値とマーカーの方向θiから次のように求められる。
〔数2〕
Δθi=(θi−θoffset)−θri ・・・(2)
ここで、θoffsetは回転テーブルの回転角に対するマーカーの方向のオフセット値である。このΔθiを用いて回転誤差を補正することが可能であり、これを回転角補正量として利用すればよい。
【0032】
なお、S1002およびS1003では実施例1で行う同定・演算方法の一例を示しているが、マーカーの位置と方向を組み合わせてより精度な演算を行うものでもよい。
【0033】
次にマーカーを中心とするように回転機構200、並進機構100を動かしてマーカーの位置変化量、望ましくは位置と方向、を測定する(S1004)。単純に回転機構のみを動かして回転角をθriとすると、マーカーの理想位置座標は以下のようになる。
(Xc+Rcos(θri+θ0)、Yc+Rsin(θri+θ0))
ここで、θ0は回転テーブル角度原点からのマーカー初期位置の角度である。そこで、回転機構を回転させたときに上記のマーカー位置の変動分だけ並進機構を移動させればマーカーを仮想中心とした回転が実現できる(これは幾何学的な関係から回転中心位置の補正を行う処理であり、幾何学的回転補正と呼ぶ)。このときは、S1003にて求めた回転角補正と上記の幾何学的回転補正を行いながら、図8に示すように回転角をθri(i=1、・・・、n)と変えていったときのマーカーの位置と方向を測定する。図8は90度ずつ回転させたときの様子を示す。
【0034】
次に回転中心の位置変動を補正する並進補正量を求める(S1005)。S1004でのマーカーの位置および方向の測定結果を、それぞれ以下のようにする。
マーカーの位置:(X2i、Y2i)(i=1、・・・、n)、
マーカーの方向:θ2i(i=1、・・・、n)
回転軸の単純な偏芯、回転軸の傾きである場合には、上記の幾何学的回転補正により回転中心の位置変動を補正することはできるが、非線形的な変動が発生している場合にはこの計測によりマーカーの位置変動が発生する。このマーカーの位置変動量が回転中心の位置変動に相当するので、マーカーの位置変動量を並進補正量とすればよい。
【0035】
なお、ここではマーカーの位置を用いて並進補正量を求めているが、マーカーの位置と方向とを用いてより高精度に求められる演算を行うようにしてもよい。
【0036】
以上の測定・演算により求められた回転角補正量および並進補正量は、回転角をインデックスとする補正量テーブルとして保存しておく(S1006)。任意の回転角が与えられたときに補正量テーブルから補正値を取得する。
〔特徴点マーカーによる補正操作〕
次にマーカーの設定および測定方法を図9〜11を用いて説明する。図9〜11は、図4に示すマーカーが特徴的な図形の特徴点を持つ場合の、測定時の表示装置14におけるSEM画像の操作画面を示す。図9において、まず必要に応じて並進機構を移動させ、マーカー400をSEM画像500に表示させる。このときは特徴点401〜403を用いてマーカーの代表位置および方向を測定するので、画面上のxカーソル508およびyカーソル509を移動させて、位置を測定する特徴点に合わせる。合わせられたらSetボタン504を押すと、その特徴点の位置が確定され、特徴点位置表示欄501にその座標が表示される。505はCancellボタンである。
【0037】
この作業をすべての特徴点に対して行い、完了したらAllSetボタン506を押す。これによりマーカーの代表位置および方向が計算され、その結果がマーカー位置・方向表示欄502に表示されるとともに、SEM画像上にもそのベクトル404が表示される。
【0038】
回転角指令値を変えて測定を続け、すべての回転角に対して測定が終了するとFinishボタン507を押し、これにより回転中心の同定や補正量の計算が行われる。画面500上にはインデックス表示503が設けられているが、これにより測定点数の確認ができる。
〔輪郭形状マーカーによる補正操作〕
図10および図11を用いて、図5に示す輪郭形状パターンをマーカーとして用いる場合の補正を説明する。形状パターンを用いる際にはまずパターンの登録を行う。図10はその登録画面の例である。並進機構を動かして登録したい形状パターン400をSEM画像上に表示させる。次にカーソルを用いて形状パターンを含む領域405を設定しPatternSetボタン510を押す。これにより、エッジ強調、2値化などの画像処理が行われ、形状パターン400がマーカーとして登録される。511はNextボタンである。
【0039】
マーカー位置と方向を測定する時の操作方法の例を図11に示す。必要に応じて並進機構を移動させ登録した形状パターンをSEM画面500上に表示させる。必要に応じて領域405を設定してOKボタン512を押すと、エッジ強調、2値化、パターンマッチングなどの画像処理が行われ、形状パターン400が抽出され、その代表位置および方向が求められ、マーカー位置・方向表示欄502に表示されるとともに、SEM画像上にもそのベクトル404を表示される。
【0040】
特徴点マーカーと同様に回転角指令値を変えて測定を続け、すべての回転角に対して測定が終了するとFinishボタン507を押し、これにより回転中心の同定や補正量の計算が行われる。
〔ステージ装置の制御〕
次に、図1を用いて実施例1のステージ装置の制御方法を説明する。実施例1のステージ装置は、並進機構100と、回転機構200と、外部から与えられた指令値により並進機構100および回転機構200を制御するステージ制御手段300とから構成される。
【0041】
ステージ制御手段300は、回転機構を制御する回転機構制御手段301と、並進機構を制御する並進機構制御手段302と、仮想中心点回りの回転を行う際に幾何学的から回転中心の位置変動を補正する幾何学的回転補正手段303、および回転角補正量および並進補正量とを保存する補正量テーブル304を持つ。
【0042】
また、S1002の処理を行い回転中心を同定する回転中心同定手段305、および、S1003、S1005、S1006を行い回転角補正量および並進補正量を求めて補正量テーブル303を作成する補正量テーブル作成手段306、マーカー位置・方向測定手段307を持つ。これらはステージ制御手段300に備えられていてもよい。また、ロータリースケールおよびセンサヘッドを有する回転角検出手段208、リニアスケールおよびセンサヘッドを有する並進位置検出手段108を備えている。
【0043】
ステージ装置の動作は次のように行われる。まず、動作開始前に、幾何学的回転補正手段303のパラメータとして回転中心を同定し、また補正量テーブル304の作成を行う。外部から回転角指令値および並進位置指令値が与えられた時、与えられた回転角指令値に対応した回転角補正量および並進補正量を補正量テーブル304から取得する。補正量テーブル304は回転角をインデックスとして参照するが、与えられた回転角指令値が前後するインデックスの中間にある場合は内挿補間を行い補正量を取得する。
【0044】
取得した回転角補正量および並進補正量は、与えられた回転角指令値および並進位置補正値に加算され、それに従って回転機構制御手段301および並進機構制御手段302を制御して、ステージを移動させる。
【0045】
従来技術では回転誤差に回転軸から仮想中心までの距離を乗じた分だけ仮想回転中心位置の変動が発生する。実施例1では回転誤差に対する補正を行っているため、回転角の補正を行うことでその変動を補正することできる。また、回転角に対してテーブルとして補正量を求めておくことで、単純な回転中心の偏差として補正することができなかった非線形的な変動に対してもこれを補正でき、高精度なローテーションユーセントリック動作が実現できる。
【0046】
なお、実施例1のステージ装置の並進機構100および回転機構200が、アクチュエータや伝達機構にガタやバックラッシュがないことが望ましい。そこで、並進機構100および回転機構200の駆動手段としてピエゾモータを用いれば、ガタやバックラッシュの低減を図ることができる。これにより、回転角に非依存な変動や非線形な変動を低減することが可能となり、より高精度なローテーションユーセントリック動作が実現できる。
【実施例2】
【0047】
次に、図12を用いて本発明の実施例2を説明する。回転中心の同定および補正量テーブルの作成は、実施例1と同じである。実施例2でのステージ装置は、並進機構100、並進位置検出手段108、回転機構200、回転角検出手段208、ステージ制御手段300から構成され、さらにステージ制御手段300には回転機構制御手段301、並進機構制御手段302、幾何学的回転補正手段303、補正量テーブル304を備えている。また図示していないが、回転中心同定手段や補正量テーブル作成手段を、ステージ制御手段300の内部もしくは外部に備えている。
【0048】
実施例2のステージ装置においては、回転位置検出手段208により検出された回転角に対応した回転角補正量および並進補正量とを取得する。回転角が補正量テーブルの前後するインデックスの中間にある場合は内挿補間を行い補正量を取得する。
【0049】
取得した回転角補正量および並進補正量は、回転角検出手段208から検出された回転角および並進位置検出手段108から検出される並進位置からそれぞれ減算し、その値を回転機構制御手段301および並進機構制御手段302へのフィードバック量として制御を行う。
【0050】
以上のような構成を用いても、回転誤差を補正し、非線形的な変動も補説することが可能となり、高精度なローテーションユーセントリック動作が実現できる。
【符号の説明】
【0051】
1 走査電子顕微鏡
11 ステージ
12 試料
13 電子光学系制御手段
14 表示装置
15 ステージ制御手段
16 ステージ操作入力手段
100 並進機構
101 並進機構ベース
102 リニアガイド
103 並進機構可動テーブル
104 リニアモータシャフト
105 リニアモータ本体
106 リニアスケール
107 センサヘッド
108 並進位置偏出手段
200 回転機構
205 回転モータ
208 回転角検出手段
210 回転テーブル
300 ステージ制御手段
301 回転機構制御手段
302 並進機構制御手段
303 幾何学的回転補正手段
304 補正量テーブル
305 回転中心同定手段
306 補正量テーブル作成手順
400 マーカーとなる図形
401〜403 特徴点
404 マーカーの代表位置・方向を示すベクトル
405 画像処理領域
500 SEM画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を直接または試料ホルダを介して載置する回転テーブルと、前記回転テーブルを回転させる回転機構と、前記回転テーブルを並進移動させる並進機構と、外部から入力された指令値に従って前記回転機構と前記並進機構とを制御するステージ制御手段とを有するステージ装置において、
前記試料もしくは前記試料ホルダもしくは前記回転テーブルに設けた位置および方向を測定可能なマーカーと、
前記回転機構と前記並進機構とを所定の動作パターンに従って動作させたときの前記マーカーの位置と方向を測定するマーカー位置方向測定手段と、
前記測定の結果から前記回転テーブルの回転中心位置を同定する回転中心同定手段と、
前記回転テーブルの回転誤差を補正する回転角補正量と前記回転テーブルの回転中心の位置変動を補正する並進補正量とを回転角に対する補正量として作成する補正量テーブル作成手段と、
前記回転角補正量と並進補正量を記録する補正量テーブルと、
入力された回転角指令値もしくは実回転角に対応した回転角補正量および並進補正量を前記補正量テーブルから取得し取得した補正量を用いて前記回転機構を制御する回転機構制御手段および前記並進機構を制御する並進機構制御手段を有することを特徴とするステージ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のステージ装置において、前記補正量テーブル作成手段は、前記回転機構のみを回転させたときの前記マーカーの位置と方向を測定し、その結果から前記回転テーブルの回転中心と、回転誤差を補正する回転角補正量とを求め、
さらに前記補正量テーブル作成手段は、得られた前記回転テーブルの回転中心と回転角補正量とを用いて前記マーカーを仮想回転中心として回転させるように前記回転機構と前記並進機構とを移動させたときの前記マーカーの位置を測定し、その結果から前記回転テーブルの回転中心の位置変動を補正する並進補正量を求め、求められた回転角補正量と並進補正量とから回転角に対する補正量テーブルを作成することを特徴とするステージ装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のステージ装置において、前記ステージ制御手段は、入力された回転角指令値に対応した回転角補正量と並進補正量を前記補正量テーブルから取得し、入力された回転角指令値と並進位置指令値に取得した回転角補正量と並進補正量を加算した補正指令値を求め、補正指令値に対して前記回転機構制御手段と前記並進機構制御手段を介して前記回転機構および前記並進機構を制御することを特徴とするステージ装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載のステージ装置において、前記回転テーブルの回転角を検出する回転角検出手段と、前記回転テーブルの並進位置を検出する並進位置検出手段とを備え、前記回転角検出手段および前記並進位置検出手段から実回転角および実並進位置を検出し、前記実回転角に対応した回転角補正量および並進補正量を前記補正量テーブルから取得し、前記実回転角および前記並進位置に対して前記回転角補正量および前記並進補正量を減算して補正回転角および補正並進位置を求め、前記補正回転角および補正並進位置をフィードバック量として用いて前記回転機構および前記並進機構とを制御することを特徴とするステージ装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載のステージ装置において、前記マーカーは、SEM画像のなかで少なくとも2つの特徴点を有するパターン、もしくは対象軸が1本以下の輪郭形状を有するパターンとして判定できるマーカーを用いることを特徴とするステージ装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載のステージ装置において、操作者がSEM画像を見ながらマーカーを選択するマーカー選択手段を有することを特徴とするステージ装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載のステージ装置において、前記回転機構および前記並進機構を駆動する駆動手段としてピエゾモータを用いることを特徴とするステージ装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載のステージ装置は、荷電粒子線装置に使用されることを特徴とするステージ装置。
【請求項9】
試料を直接または試料ホルダを介して載置する回転テーブルと、前記回転テーブルを回転させる回転機構と、前記回転テーブルを並進移動させる並進機構と、外部から入力された指令値に従って前記回転機構と前記並進機構とを制御するステージ制御手段とを有するステージ装置の制御方法において、
前記試料もしくは前記試料ホルダもしくは前記回転テーブルに位置および方向を測定可能なマーカーを設け、
前記回転機構と前記並進機構とを所定の動作パターンに従って動作させたときの前記マーカーの位置と方向を測定し、
前記測定の結果から前記回転テーブルの回転中心位置を同定し、
さらに、前記回転テーブルの回転誤差を補正するための回転角補正量と前記回転テーブルの回転中心の位置変動を補正するための並進補正量とを回転角に対する補正量テーブルとして作成し、
入力された回転角指令値もしくは実回転角に対応した回転角補正量および並進補正量を前記補正量テーブルから取得し、
取得した補正量を用いて前記回転機構および前記並進機構を制御することを特徴とするステージ装置の制御方法。
【請求項10】
請求項9に記載のステージ装置の制御方法において、前記補正量テーブルの作成は、前記回転機構のみを回転させたときの前記マーカーの位置と方向を測定し、
その結果から前記回転テーブルの回転中心と前記回転テーブルの回転誤差を補正するための回転角補正量とを求め、
前記得られた回転テーブルの回転中心と回転角補正量とを用いて前記マーカーを仮想回転中心として回転させるように前記回転機構と前記並進機構とを移動させたときの前記マーカーの少なくとも位置を測定し、
その結果から前記回転テーブルの回転中心の位置変動を補正するための並進補正量を求め、
求められた回転角補正量と並進補正量とから回転角に対する補正量テーブルを作成することを特徴とするステージ装置の制御方法。
【請求項11】
請求項9または10に記載のステージ装置の制御方法において、
入力された回転角指令値に対応した回転角補正量と並進補正量を前記補正量テーブルから取得し、
入力された回転角指令値と並進位置指令値に取得した回転角補正量と並進補正量を加算した補正指令値を求め、
補正指令値に対して前記回転機構および前記並進機構とを制御する
ことを特徴とするステージ装置の制御方法。
【請求項12】
請求項9乃至11のいずれかに記載のステージ装置の制御方法において、
回転角検出手段および並進位置検出手段から実回転角および実並進位置を検出し、
前記実回転角に対応した回転角補正量および並進補正量を前記補正量テーブルから取得し、
前記実回転角および前記並進位置に対して前記回転角補正量および前記並進補正量を減算して補正回転角および補正並進位置を求め、
前記補正回転角および補正並進位置をフィードバック量として用いて前記回転機構および前記並進機構とを制御する
ことを特徴とするステージ装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−256516(P2012−256516A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−128897(P2011−128897)
【出願日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】