ズームレンズ
【課題】倍率色収差の発生を低減し、更には、倍率色収差と軸上色収差との同時補正を可能とするズームレンズを提供する。
【解決手段】ズームレンズ100は、絞り103の物体側に配置される第1の屈折力可変面101bと、該第1の屈折力可変面101bと同符号の倍率色収差を生じさせ、絞り103の像面側に配置される第2の屈折力可変面105bと、第1、第2の屈折力可変面101a、105bと異符号の倍率色収差を生じさせる第3の屈折力可変面105aとを含む。第3の屈折力可変面105aが、絞り103の物体側に配置されている場合は、第1の屈折力可変面101bの広角端における倍率色収差、又は、絞り103の像面側に配置されている場合は、第2の屈折力可変面105bの広角端における倍率色収差をLAT1とし、第3の屈折力可変面105aの広角端における倍率色収差をLAT2としたとき、
│LAT1│<│LAT2│
なる条件を満足する。
【解決手段】ズームレンズ100は、絞り103の物体側に配置される第1の屈折力可変面101bと、該第1の屈折力可変面101bと同符号の倍率色収差を生じさせ、絞り103の像面側に配置される第2の屈折力可変面105bと、第1、第2の屈折力可変面101a、105bと異符号の倍率色収差を生じさせる第3の屈折力可変面105aとを含む。第3の屈折力可変面105aが、絞り103の物体側に配置されている場合は、第1の屈折力可変面101bの広角端における倍率色収差、又は、絞り103の像面側に配置されている場合は、第2の屈折力可変面105bの広角端における倍率色収差をLAT1とし、第3の屈折力可変面105aの広角端における倍率色収差をLAT2としたとき、
│LAT1│<│LAT2│
なる条件を満足する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屈折力可変素子を備えるズームレンズに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液体の界面の形状を制御することにより屈折力を変化させることができる屈折力可変素子(可変焦点素子)が知られている。例えば、特許文献1は、屈折率が互いに異なる導電性液体と絶縁性液体との接触面(界面)を変形可能な可変焦点レンズを開示している。特許文献2は、2つの屈折力可変素子を利用し、レンズの相対移動がないズームレンズを開示している。一方、通常、屈折力可変素子を用いてズーミングを行うと、色収差やペッツバール和の補正条件が崩れ、色収差や像面湾曲が増大する可能性がある。そこで、特許文献3は、複数の屈折力可変素子(液体レンズ)を組み合わせることで、色収差又は像面湾曲の補正を行う光学系を開示している。更に、特許文献4は、屈折率が略等しく、分散だけが異なる屈折力可変素子を用いて、軸上色収差と倍率色収差とを個別に補正する光学系を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−178469号公報
【特許文献2】特表2008−541184号公報
【特許文献3】国際公開第2006/103290号公報
【特許文献4】特昭62−78521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献2に開示されたズームレンズでは、屈折力可変素子により発生する色収差をその前後に配置された屈折力可変素子で調整することで色収差を補正する。しかしながら、このズームレンズは、軸上色収差又は倍率色収差のいずれかについては補正できるが、両方の色収差を同時に補正することが難しい。また、特許文献3では、色収差とペッツバール和とに基づいた記載、特に、色収差補正では軸上色収差の補正のための数式が記載されている。しかしながら、色収差補正に関する具体的な構成については記載されておらず、特に、倍率色収差の補正については記載がない。更に、特許文献4では、倍率色収差と軸上色収差とを補正可能な構成が開示されているものの、どのような補正をどのような場所で行うべきか、その方向性が示されていない。また、この光学系で補正する色収差は、ズームレンズの移動により発生するものであり、屈折力可変素子のように、屈折力そのものが変動して発生する色収差を補正する具体的な構成についての記載がない。
【0005】
本発明は、このような状況を鑑みてなされたものであり、倍率色収差の発生を低減し、更には、倍率色収差と軸上色収差との同時補正を可能とする、屈折力可変素子を備えたズームレンズを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、絞りの物体側に配置される第1の屈折力可変面と、該第1の屈折力可変面と同符号の倍率色収差を生じさせ、絞りの像面側に配置される第2の屈折力可変面と、第1、第2の屈折力可変面と異符号の倍率色収差を生じさせる第3の屈折力可変面とを含むズームレンズであって、第3の屈折力可変面が絞りの物体側に配置されている場合は、第1の屈折力可変面の広角端における倍率色収差、又は、第3の屈折力可変面が絞りの像面側に配置されている場合は、第2の屈折力可変面の広角端における倍率色収差をLAT1とし、一方、第3の屈折力可変面の広角端における倍率色収差をLAT2としたとき、
│LAT1│<│LAT2│
なる条件を満足することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、倍率色収差の発生を低減し、更には、倍率色収差と軸上色収差との同時補正を可能とするズームレンズを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1実施形態に係るズームレンズのレンズ概略図である。
【図2】第1実施形態に係る屈折率可変素子の構成を示す概略図である。
【図3】第1実施形態に係るズームレンズの概念図である。
【図4】第1実施形態に係るズームレンズの各面番号を示す図である。
【図5】第1実施形態に係るズームレンズの効果を示す縦収差図である。
【図6】第1実施形態に係るズームレンズの効果を示す横収差図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係るズームレンズのレンズ概略図である。
【図8】第2実施形態に係るズームレンズの各面番号を示す図である。
【図9】第2実施形態に係るズームレンズの効果を示す縦収差図である。
【図10】第2実施形態に係るズームレンズの効果を示す横収差図である。
【図11】本発明の第3実施形態に係るズームレンズのレンズ概略図である。
【図12】第3実施形態に係るズームレンズの各面番号を示す図である。
【図13】第3実施形態に係るズームレンズの効果を示す縦収差図である。
【図14】第3実施形態に係るズームレンズの効果を示す横収差図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態について図面等を参照して説明する。
【0010】
(第1実施形態)
まず、本発明の第1実施形態に係るズームレンズについて説明する。図1は、本実施形態に係るズームレンズのレンズ断面図である。図1(a)は、広角端(Wide)におけるズームレンズ100のレンズ断面図を示し、図1(b)は、望遠端(Tele)におけるズームレンズ100のレンズ断面図を示している。このズームレンズ100は、物体(被写体)側から順に、第1屈折力可変素子101と、第1固体レンズ102と、絞り103と、第2固体レンズ104と、第2屈折力可変素子105と、第3固体レンズ106とを備える。図1に示すように、本実施形態のズームレンズは、第1及び第2の屈折力可変素子101、105の屈折力を変化させることにより、各種レンズの位置を光軸方向に移動させることなく焦点距離を変化させることのできる無移動ズームレンズである。以下、屈折力(光学的パワー)は、焦点距離の逆数に対応したレンズの特性値として用いる。
【0011】
図2は、第1及び第2屈折力可変素子101、105の構成を示す概略断面図である。本実施形態のズームレンズ100に採用する屈折力可変素子101(105)は、3種類の液体を使用し、該3種類の液体で形成された2つの界面をエレクトロウェッティング方式にて制御する3層型の屈折力可変素子である。以下、このように液体の界面の形状を変化させることによって屈折力を変化させることができる屈折力可変素子を、単に「液体レンズ」と表記する。液体レンズ101(105)は、略円筒形の筐体200を有し、該筐体200の内部に、光入射側から順に、第1液体201、第2液体202、及び第3液体203の3種類の液体を光軸方向に3層配置する。この3種類の液体としては、第1液体201と第2液体202、また、第2液体202と第3液体203とで形成される2箇所の界面において、互いに混ざり合わずに、かつ、異なる屈折率を有する物質を採用する。例えば、第1液体201、第3液体203として、水や電解水溶液を採用し、第2液体202として、油等を採用する。以下、第1液体201と第2液体202とで形成される界面を第1界面204と表記し、一方、第2液体202と第3液体203とで形成される界面を第2界面205と表記する。更に、液体レンズ101は、2箇所の電極206、207と、電極分離部208と、カバーガラス209、210とを備える。電極206、207は、外部からの電圧供給に基づいて、第1界面204及び第2界面205をそれぞれ独立に制御するための電極である。この電極206、207は、それぞれ金属電極層と絶縁層との2層で構成された平板を円環とした形状を有する。電極206、207は、図2に示すように、印加された電圧により各界面と電極との接触角を制御することで各界面の面形状を変化させ、液体レンズ101の全体の屈折力を変化させる。電極分離部208は、電極206と電極207との相対する位置に配置されており、各電極206、207を独立に電圧制御可能とする絶縁部材で構成されている。カバーガラス209、210は、一方が液体レンズ101の光入射側に、他方が光出射側に配置され、各液体201〜203を液体レンズ101内に封止するガラス板である。
【0012】
次に、ズームレンズ100による色収差補正の作用について従来のズームレンズと比較して説明する。図3は、ズームレンズにおける色収差補正の作用を説明するための概念図である。特に、図3(a)は、結像面304に対して、第1及び第2の屈折力可変面(屈折面)301、302と、絞り303とを有する従来の光学系900の構成要素と、光の3原色(R、G、B)の各光路を示す。この光学系900を有するズームレンズでは、不図示の制御部は、第1及び第2屈折面301、302の各屈折力φ1、φ2を変化させることで、各種レンズの位置を動かすことなく焦点距離を変化させる。具体的には、制御部は、図3(a)に示すように、絞り303よりも物体側にある第1屈折面301を負の屈折力から正の屈折力に変化させる。同時に、制御部は、絞り303よりも像面側にある第2屈折面302の屈折力を第1屈折面301とは逆の方向に変化させる。これにより、光学系900は、広角端では負―正のレトロフォーカスタイプに、一方、望遠端では正―負のテレフォトタイプとなり、焦点距離の可変範囲を大きくすることができる。このとき、広角端における倍率色収差(LAT)を示す式は、(数1)で表される。
【0013】
【数1】
【0014】
ここで、hは、ある屈折面における軸上光束の周辺光線高さ、h_barは、ある屈折面における最軸外主光線の光線高さ、φは、ある屈折面の屈折力、更に、νは、ある屈折面のアッベ数である。
【0015】
更に、本実施形態のように、屈折面301、302が液体レンズの可変面(界面)である場合は、φ及びνは、それぞれ(数2)及び(数3)で表される。
【0016】
【数2】
【0017】
【数3】
【0018】
ここで、nd1、nF1、nC1は、液体レンズにおける一方の液体のd線、F線、C線の各屈折率を示し、nd2、nF2、nC2は、前記一方の液体に隣接する他方の液体のd線、F線、C線の各屈折率を示す。また、Rは、前記一方の液体と他方の液体とで形成される界面の曲率半径である。
【0019】
一般に、通常の液体では、高屈折率のものほど分散(屈折率の差)が大きく、低屈折率のものほど分散が小さい。これを踏まえて(数1)を見ると、倍率色収差は、レトロフォーカス及びテレフォト共に2つの液体レンズで同じ方向に現れる。即ち、通常のズームレンズでは、ズーム群毎に色収差補正を行い、倍率色収差の変動を抑える。しかしながら、屈折力そのものが変化する場合は、屈折力が固定されたレンズを組み合わせても、ズーム位置毎に変化する倍率色収差を補正することは困難である。そこで、本実施形態では、図3(b)に示すように、新たに1つの第3屈折面305を追加する。
【0020】
この第3屈折面305は、第1及び第2屈折面301、302とは逆の倍率色収差を発生させる面である。このとき、第3屈折面305は、絞り303の像面側に配置する。但し、第3屈折面は、同様に絞り303の像面側にある第2屈折面302に対して、第1屈折面301の分まで色収差補正を行う必要がある。即ち、本実施形態における倍率色収差の式は、(数1)を用いると、(数4)で表される。
【0021】
【数4】
【0022】
ここで、(数4)の左辺における第1〜3項は、それぞれ、第1屈折面301、第2屈折面302、及び第3屈折面305によるそれぞれの倍率色収差の発生を示す。この場合、3つの各屈折面で発生する倍率色収差を合成した色収差の発生量がゼロであり、かつ、第1屈折面301と第2屈折面302とに対応した第1及び第2項は、同符号であるので、第3屈折面305に対応した第3項は、異符号となる。したがって、(数4)は、(数5)で表される。
【0023】
【数5】
【0024】
また、各屈折面における色収差の発生量の絶対値がゼロとなる条件は、一般的に、第2屈折面302と第3屈折面305との関係で示すと、(数6)で表される。
【0025】
【数6】
【0026】
ここで、(数6)は、第2屈折面302の広角端における倍率色収差をLAT1とし、一方、第3屈折面305の広角端における倍率色収差をLAT2とおくと、
│LAT1│<│LAT2│
で表される。即ち、第3屈折面305の補正量の絶対値は、第2屈折面302の色収差発生量よりも大きくする必要がある。なお、(数6)では、色収差補正に用いる第3屈折面305を1つの面で表しているが、例えば、色収差補正を複数の面(屈折面)で行い、その合計値が第2屈折面302の絶対値よりも大きくなるように調整してもよい。
【0027】
本実施形態では、第1屈折面(第1の屈折力可変面)301は、3層型の第1液体レンズ101における2つの屈折面101a、101bのうち、像面側の屈折面101bに相当する。これに対して、第3屈折面(第3の屈折力可変面)305は、第2の屈折面(第2の屈折力可変面)302と同じパッケージに封入、即ち、第2液体レンズ105として1つの構成要素に備わる。具体的には、3層型の第2液体レンズ105において、物体側の屈折面105a(図2の第1界面204)が第3屈折面305となり、一方、像面側の屈折面105b(図2の第2界面205)が第2屈折面302となる。これにより、ズームレンズ100全体を小型化することができる。なお、倍率色収差の補正に用いる第3屈折面305の配置方法は、これに限定するものではなく、第2及び第3屈折面302、305の間に別途固体レンズを配置したり、2種の液体レンズをそれぞれ並べて配置したりしてもよい。例えば、第3屈折面305が絞り303(103)の物体側に配置されている場合は、その第3屈折面305を有する液体レンズの広角端における倍率色収差を、(数6)における左辺(=|LAT1|)とすればよい。
【0028】
更に、本実施形態では、図1に示すように、第1液体レンズ101と絞り103との間に、第1固体レンズ102を配置する。これにより、コマ収差の発生を低減することができる。また、図1に示すように、絞り103と第2液体レンズ105との間に、正の第2固体レンズ104を配置する。これにより、ズームレンズ100全体の小型化に加え、像面湾曲の発生を低減することができる。
【0029】
次に、ズームレンズ100に上記の各条件を適用し、具体的に数値を代入して本実施形態の効果を説明する。(表1)は、図4に示すズームレンズ100の各構成要素の面に付した各面番号601〜620における各種数値を示す表である。ここで、図4では、光源(被写体)の位置を絶対座標系の基準として3次元の座標軸(Z軸、Y軸、X軸)を取る。このとき、Z軸は、第0面の中心から第1液体レンズ101の第1面の中心(絶対座標の原点)を通り、この方向を正とする軸である。また、Y軸は、第1面の中心を通り、Z軸に対して反時計回りに90度を成す軸であり、X軸は、原点を通り、Z軸及びY軸に垂直となる軸である。また、(表1)において、各面番号(No.)に対して、レンズの種類(Type)、曲率半径(R)、レンズ面間の厚さ(D)、d線の屈折率(Nd)、及びアッベ数(νd)のそれぞれの数値を記載している。また、第1〜第3固体レンズ102、104、106では、回転対称非球面を有する光学素子を用いており、その面形状は、(数7)で表される。
【0030】
【数7】
【0031】
ここで、kは、コーニック係数であり、cは、曲率(曲率半径Rの逆数)である。この(数7)に適用する各係数k、A〜Dの値を(表2)に示す。なお、(表1)において、面の形状が球面である場合は、空欄とし、回転対称非球面である場合は、ALと記載する。同様に、各液体レンズ101、105に該当する面については、可変する値をVariableと記載し、各ズーム位置(Position1、Position2)に対応した値を(表3)に示す。更に、OBJは、無限遠に物体があることを示し、INFとSTOとは、それぞれ無限大と、絞り面とを示す。また、反射面以降では座標が反転するため、曲率半径R、及び各係数A〜Dの符号は、全て反転する。更に、(表4)は、第1及び第2液体レンズ101、105における各界面(屈折面)での各種値を示す表である。(表4)において、特に、Sur.は、各界面の作用の種類を示しており、倍率色収差の補正を行う面には、Cor.と表記し、一方、ズーミングに必要な屈折力を持つ面には、Pow.と表記する。
【0032】
ここで、本実施形態の条件として、画角は、全画角で34.35〜63.44degの2倍ズームで、FNo.は、2.8〜3.5である。特に、Position1では、f=5.78、FNo.は、2.8であり、一方、Position2では、f=11.55、FNo.は、3.5である。そして、この場合の第2屈折面302と第3屈折面305とにおける倍率色収差の値は、それぞれLAT1(面615)=0.0129、LAT2(面614)=0.0258となり、(数6)の条件を満たす。
【0033】
なお、参考として、図5に、本実施形態に係る縦収差図(球面収差、像面収差、歪曲)を示す。特に、図5(a)は、広角端における縦収差図であり、図5(b)は、望遠端における縦収差図である。図5において、縦軸は、光線がズームレンズ100に入射する光線高さであり、横軸は、光線が光軸と交わる位置である。加えて、図6は、本実施形態に係る横収差図であり、特に、図6(a)は、広角端における横収差図であり、図6(b)は、望遠端における横収差図である。図6において、縦軸は、収差量であり、横軸は、入射瞳座標である。また、各図では、C線(656.3nm)、D線(589.2nm)、及びF線(486.1nm)の波長を有する各光線について記載している。
【0034】
【表1】
【0035】
【表2】
【0036】
【表3】
【0037】
【表4】
【0038】
以上のように、本実施形態のズームレンズ100は、2つの3層型の液体レンズを利用する。このとき、絞り103の物体側に配置される第1液体レンズ101における界面を第1屈折面301とし、絞り103の像面側に配置される第2液体レンズ105における像面側の界面を第2屈折面302、一方、物体側の界面を第3屈折面305とする。このズームレンズ100では、第2屈折面302及び第3屈折面305は、該各屈折面における倍率色収差の関係が(数6)の条件を満足するように調整されるので、ズーム位置毎に変化する倍率色収差の発生を低減することができる。更に、このような構成により、ズームレンズ100全体を小型化することができる。
【0039】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係るズームレンズについて説明する。本実施形態のズームレンズは、第1実施形態に係るズームレンズ100が液体レンズを2つ利用するのに対し、液体レンズを3つ利用する。図7は、本実施形態に係るズームレンズのレンズ断面図である。このズームレンズ300は、物体側から結像面308に向けて順に、第1液体レンズ301と、第1固体レンズ302と、絞り303と、第2液体レンズ304と、第2固体レンズ305と、第3液体レンズ306と、第3固体レンズ307とを備える。図7において、特に、図7(a)は、広角端(Wide)におけるズームレンズ300のレンズ断面図を示す。図7(b)は、中間のズーム位置(Middle)におけるズームレンズ300のレンズ断面図を示す。また、図7(c)は、望遠端(Tele)におけるズームレンズ300のレンズ断面図を示す。ここで、第1及び第3液体レンズ301、306の構成は、第1実施形態に係る3層型の液体レンズの構成と略同一であるため説明を省略する。このズームレンズ300では、第1液体レンズ301と第3液体レンズ306とが主に屈折力を変化させる作用を有する。特に、第1液体レンズ301は、屈折力を負から正に、一方、第3液体レンズ306は、屈折力を正から負に変化することで大きく焦点距離の変化を与える。この場合、焦点距離の可変面として機能する屈折面は、第1液体レンズ301を形成する第1及び第2界面301a、301bのうちの第2界面301bと、第3液体レンズ306を形成する第1及び第2界面306a、306bのうちの第2界面306bである。一方、第1実施形態と同様に、倍率色収差の補正面として機能する屈折面は、第3液体レンズ306の第1界面306aである。
【0040】
なお、本実施形態では、倍率色収差の補正面として機能する屈折面を、第3液体レンズ306の第1界面306aとしているが、倍率色収差の補正面は、これに限定するものではない。倍率色収差は、(数1)に示すように、各面における周辺光線高さhと、主光線高さh_barとの積に比例する。したがって、屈折面のうち、このh×(h_bar)が最大となる光学面を倍率色収差の補正面とすれば、倍率色収差をより低減することができる。一方、倍率色収差の補正面を主光線高さh_barが最大となる面とした場合は、軸上色収差とは独立させて倍率色収差の補正を行うことができる。なお、本実施形態では、h×(h_bar)が最大となる面(第3液体レンズ306の第1界面306a)を倍率色収差の補正面としているので、倍率色収差を効果的に低減する。
【0041】
また、本実施形態では、倍率色収差の補正面を、絞り303に対して像面側にある1つの面で構成しているが、例えば、同様に絞り303の像面側で、複数の面を配置させる構成としてもよい。この場合、補正面の倍率色収差LATは、(数8)に示すように、補正のためのN個の屈折面があるとして、屈折面の補正量の合計が過補正となればよい。
【0042】
【数8】
【0043】
また、本実施形態では、第1実施形態とは異なり、2層型の液体レンズで構成される第2液体レンズ304を新たに追加することで、軸上色収差の補正を行う。軸上色収差の補正の式は、(数9)で表される。
【0044】
【数9】
【0045】
ここで、第1液体レンズ301及び第2液体レンズ306のみで考慮すると、それぞれの屈折力φは、広角端では負―正であり、一方、望遠端では正―負である。また、周辺光線高さhは、中間結像しない系であるために常に正である。したがって、この場合のズームレンズにおける軸上色収差は、常に補正方向となる。しかしながら、実際には他の収差の影響、特に望遠端での影響があるため、どのズームポジションにおいても常に軸上色収差が補正された状態を維持するのは難しい。そこで、本実施形態では、絞り303の隣(物体側、又は像面側)に第2液体レンズ304を配置することで、ズームポジション毎の軸上色収差の補正を可能にする。このとき、第2液体レンズ304を絞り303の隣に配置するのは、(数1)における主光線高さh_barがゼロに近くなるので、倍率色収差とは独立して軸上色収差の補正を行うことができるためである。ここで、絞り303の隣とは、図7(c)に示すように、絞り303から第2液体レンズ304内の界面(第4の屈折力可変面)304aまでの望遠端における間隔をSとし、ズームレンズ300の全長をLとしたとき、S/L<0.2が成り立つ範囲である。この場合、S/Lが0.2を超えると、軸上色収差の補正を独立で行うことが困難となり色収差が増大する可能性がある。
【0046】
次に、ズームレンズ300に上記の各条件を適用し、具体的に数値を代入して本実施形態の効果を説明する。(表5)は、図8に示すズームレンズ300の各構成要素の面に付した各面番号901〜924における各種数値を示す表である。また、上記(数7)に適用する各係数を(表6)に示す。また、(表5)において、各ズーム位置(Position1、Position2、及びPosition3)に対応した値を(表7)に示す。これらの(表5)〜(表7)は、それぞれ第1実施形態に係る(表1)〜(表3)に対応している。ここで、本実施形態の条件として、画角は、全画角で23.29〜63.44degの3倍ズームであり、FNo.は、2.8〜5.0である。特に、Position1では、f=5.78、FNo.は、2.8であり、また、Position2では、f=9.08、FNo.は、3.5であり、更に、Position3では、f=17.33、FNo.は、5.0である。そして、第3液体レンズ306における第1界面306aと第2界面306bとにおける倍率色収差の値は、それぞれLAT1(面919)=0.0073、LAT2(面918)=0.0097((h×h_bar)が最大)となり、(数6)の条件を満たす。また、この場合、L=29.2642、S=0.02541であるので、S/L=0.025となり、上記S/L<0.2の条件を満たす。なお、参考として、図9及び図10に、本実施形態に係る広角端及び望遠端における縦収差図(球面収差、像面収差、歪曲)及び横収差図を示す。この図9及び図10は、第1実施形態に係る図5及び図6に対応しており、特に、両図において、(a)は、広角端(Wide)、(b)は、中間のズーム位置(Middle)、また、(c)は、望遠端(Tele)に対応する。これにより、本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果に加え、ズームポジション毎の軸上色収差を低減することができる。
【0047】
【表5】
【0048】
【表6】
【0049】
【表7】
【0050】
【表8】
【0051】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係るズームレンズについて説明する。本実施形態のズームレンズは、液体レンズを4つ利用し、かつ、光路中に直角プリズムを配置することで、薄型化を図るものである。図11は、本実施形態に係るズームレンズのレンズ断面図である。このズームレンズ400は、物体側から結像面410に向けて順に、第1液体レンズ401と、直角プリズム(ガラスプリズム)402と、第2液体レンズ403と、第1固体レンズ404と、絞り405と、第3液体レンズ406とを備える。続けて、ズームレンズ300は、第2固体レンズ407と、第4液体レンズ408と、第3固体レンズ409とを備える。図11において、特に、図11(a)は、広角端(Wide)におけるズームレンズ400のレンズ断面図を示す。図11(b)は、中間のズーム位置(Middle)におけるズームレンズ400のレンズ断面図を示す。また、図11(c)は、望遠端(Tele)におけるズームレンズ400のレンズ断面図を示す。ズームレンズ400において、第1、第2及び第3液体レンズ401、403、406は、2種の液体を用いた2層型の液体レンズである。この場合、第1液体レンズ401と第2液体レンズ403とは、その間に直角プリズム402を配置することで、結果的に、第2実施形態に係るズームレンズ300の3層型の液体レンズを2つの2層型の液体レンズで構成したことと同一である。また、第4液体レンズ408の構成は、第1実施形態に係る3層型の液体レンズの構成と略同一である。このズームレンズ400では、第1液体レンズ401と第2液体レンズ403とが、主に屈折力を変化させる作用を有する。特に、第1液体レンズ401は、屈折力を負から正に、一方、第2液体レンズ403は、屈折力を正から負に変化することで大きく焦点距離の変化を与える。一方、第1実施形態と同様に、倍率色収差の補正面として機能する屈折面は、第4液体レンズ408の第1界面408aである。これに対して、第4液体レンズ408の第2界面408bは、ズームレンズ400の焦点距離の変化時に、結像面410の位置を移動させないように屈折力を変化させる作用を有する。また、第3液体レンズ406は、第2実施形態における第2液体レンズ304と同様に、絞り405の隣に配置され、他の液体レンズの変化により生じた軸上色収差を低減する作用を有する。
【0052】
次に、ズームレンズ400に上記の各条件を適用し、具体的に数値を代入して本実施形態の効果を説明する。(表9)は、図12に示すズームレンズ400の各構成要素の面に付した各面番号1201〜1228における各種数値を示す表である。また、上記(数7)に適用する各係数を(表10)に示す。また、(表9)において、各ズーム位置(Position1、Position2、及びPosition3)に対応した値を(表11)に示す。これらの(表9)〜(表11)は、それぞれ第1実施形態に係る(表1)〜(表3)に対応している。ここで、本実施形態の条件として、画角は、全画角で23.29〜63.44degの3倍ズームであり、FNo.は、2.8〜5.0である。特に、Position1では、f=5.78、FNo.は、2.8であり、また、Position2では、f=9.08、FNo.は、3.5であり、更に、Position3では、f=17.33、FNo.は、5.0である。そして、第4液体レンズ408における第1界面408aと第2界面408bとにおける倍率色収差の値は、それぞれLAT1(面1223)=0.0035、LAT2(面1222)=−0.0126((h×h_bar)が最大)となり、(数6)の条件を満たす。また、この場合、L=40.0(図11(c)に示すA+B)、S=0.0366であるので、S/L=0.0009となり、上記S/L<0.2の条件を満たす。なお、参考として、図13及び図14に、本実施形態に係る広角端及び望遠端における縦収差図(球面収差、像面収差、歪曲)及び横収差図を示す。この図13及び図14は、第2実施形態に係る図9及び図10に対応している。これにより、本実施形態によれば、第2実施形態と同様の効果に加え、ズームレンズ全体の形状を薄型化することができる。
【0053】
【表9】
【0054】
【表10】
【0055】
【表11】
【0056】
【表12】
【0057】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、これらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【0058】
例えば、上記実施形態では、屈折面と、倍率色収差の補正面とを1つの3層型の液体レンズで構成するものとしているが、本発明はこれに限定されない。例えば、2層型の複数の液体レンズを組み合わせても良いし、又は、液晶素子等を用いた液体レンズでズーミングを行い、倍率色収差の補正面として液体界面を追加した構成としてもよい。
【0059】
また、上記実施形態では、倍率色収差の補正面を、絞りと像面側の屈折面との間に配置しているが、本発明はこれに限定されない。この場合、倍率色収差を補正できる位置であればどの場所に配置してもよい。但し、倍率色収差を効率的に補正できる場所、即ち、h×(h_bar)が最大となる位置、又は主光線高さ(h_bar)が最大となる位置のいずれかであることが望ましい。
【符号の説明】
【0060】
100 ズームレンズ
101 第1液体レンズ
101b 第1屈折面
103 絞り
105 第2液体レンズ
105a 第3屈折面
105b 第2屈折面
【技術分野】
【0001】
本発明は、屈折力可変素子を備えるズームレンズに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液体の界面の形状を制御することにより屈折力を変化させることができる屈折力可変素子(可変焦点素子)が知られている。例えば、特許文献1は、屈折率が互いに異なる導電性液体と絶縁性液体との接触面(界面)を変形可能な可変焦点レンズを開示している。特許文献2は、2つの屈折力可変素子を利用し、レンズの相対移動がないズームレンズを開示している。一方、通常、屈折力可変素子を用いてズーミングを行うと、色収差やペッツバール和の補正条件が崩れ、色収差や像面湾曲が増大する可能性がある。そこで、特許文献3は、複数の屈折力可変素子(液体レンズ)を組み合わせることで、色収差又は像面湾曲の補正を行う光学系を開示している。更に、特許文献4は、屈折率が略等しく、分散だけが異なる屈折力可変素子を用いて、軸上色収差と倍率色収差とを個別に補正する光学系を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−178469号公報
【特許文献2】特表2008−541184号公報
【特許文献3】国際公開第2006/103290号公報
【特許文献4】特昭62−78521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献2に開示されたズームレンズでは、屈折力可変素子により発生する色収差をその前後に配置された屈折力可変素子で調整することで色収差を補正する。しかしながら、このズームレンズは、軸上色収差又は倍率色収差のいずれかについては補正できるが、両方の色収差を同時に補正することが難しい。また、特許文献3では、色収差とペッツバール和とに基づいた記載、特に、色収差補正では軸上色収差の補正のための数式が記載されている。しかしながら、色収差補正に関する具体的な構成については記載されておらず、特に、倍率色収差の補正については記載がない。更に、特許文献4では、倍率色収差と軸上色収差とを補正可能な構成が開示されているものの、どのような補正をどのような場所で行うべきか、その方向性が示されていない。また、この光学系で補正する色収差は、ズームレンズの移動により発生するものであり、屈折力可変素子のように、屈折力そのものが変動して発生する色収差を補正する具体的な構成についての記載がない。
【0005】
本発明は、このような状況を鑑みてなされたものであり、倍率色収差の発生を低減し、更には、倍率色収差と軸上色収差との同時補正を可能とする、屈折力可変素子を備えたズームレンズを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、絞りの物体側に配置される第1の屈折力可変面と、該第1の屈折力可変面と同符号の倍率色収差を生じさせ、絞りの像面側に配置される第2の屈折力可変面と、第1、第2の屈折力可変面と異符号の倍率色収差を生じさせる第3の屈折力可変面とを含むズームレンズであって、第3の屈折力可変面が絞りの物体側に配置されている場合は、第1の屈折力可変面の広角端における倍率色収差、又は、第3の屈折力可変面が絞りの像面側に配置されている場合は、第2の屈折力可変面の広角端における倍率色収差をLAT1とし、一方、第3の屈折力可変面の広角端における倍率色収差をLAT2としたとき、
│LAT1│<│LAT2│
なる条件を満足することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、倍率色収差の発生を低減し、更には、倍率色収差と軸上色収差との同時補正を可能とするズームレンズを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1実施形態に係るズームレンズのレンズ概略図である。
【図2】第1実施形態に係る屈折率可変素子の構成を示す概略図である。
【図3】第1実施形態に係るズームレンズの概念図である。
【図4】第1実施形態に係るズームレンズの各面番号を示す図である。
【図5】第1実施形態に係るズームレンズの効果を示す縦収差図である。
【図6】第1実施形態に係るズームレンズの効果を示す横収差図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係るズームレンズのレンズ概略図である。
【図8】第2実施形態に係るズームレンズの各面番号を示す図である。
【図9】第2実施形態に係るズームレンズの効果を示す縦収差図である。
【図10】第2実施形態に係るズームレンズの効果を示す横収差図である。
【図11】本発明の第3実施形態に係るズームレンズのレンズ概略図である。
【図12】第3実施形態に係るズームレンズの各面番号を示す図である。
【図13】第3実施形態に係るズームレンズの効果を示す縦収差図である。
【図14】第3実施形態に係るズームレンズの効果を示す横収差図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態について図面等を参照して説明する。
【0010】
(第1実施形態)
まず、本発明の第1実施形態に係るズームレンズについて説明する。図1は、本実施形態に係るズームレンズのレンズ断面図である。図1(a)は、広角端(Wide)におけるズームレンズ100のレンズ断面図を示し、図1(b)は、望遠端(Tele)におけるズームレンズ100のレンズ断面図を示している。このズームレンズ100は、物体(被写体)側から順に、第1屈折力可変素子101と、第1固体レンズ102と、絞り103と、第2固体レンズ104と、第2屈折力可変素子105と、第3固体レンズ106とを備える。図1に示すように、本実施形態のズームレンズは、第1及び第2の屈折力可変素子101、105の屈折力を変化させることにより、各種レンズの位置を光軸方向に移動させることなく焦点距離を変化させることのできる無移動ズームレンズである。以下、屈折力(光学的パワー)は、焦点距離の逆数に対応したレンズの特性値として用いる。
【0011】
図2は、第1及び第2屈折力可変素子101、105の構成を示す概略断面図である。本実施形態のズームレンズ100に採用する屈折力可変素子101(105)は、3種類の液体を使用し、該3種類の液体で形成された2つの界面をエレクトロウェッティング方式にて制御する3層型の屈折力可変素子である。以下、このように液体の界面の形状を変化させることによって屈折力を変化させることができる屈折力可変素子を、単に「液体レンズ」と表記する。液体レンズ101(105)は、略円筒形の筐体200を有し、該筐体200の内部に、光入射側から順に、第1液体201、第2液体202、及び第3液体203の3種類の液体を光軸方向に3層配置する。この3種類の液体としては、第1液体201と第2液体202、また、第2液体202と第3液体203とで形成される2箇所の界面において、互いに混ざり合わずに、かつ、異なる屈折率を有する物質を採用する。例えば、第1液体201、第3液体203として、水や電解水溶液を採用し、第2液体202として、油等を採用する。以下、第1液体201と第2液体202とで形成される界面を第1界面204と表記し、一方、第2液体202と第3液体203とで形成される界面を第2界面205と表記する。更に、液体レンズ101は、2箇所の電極206、207と、電極分離部208と、カバーガラス209、210とを備える。電極206、207は、外部からの電圧供給に基づいて、第1界面204及び第2界面205をそれぞれ独立に制御するための電極である。この電極206、207は、それぞれ金属電極層と絶縁層との2層で構成された平板を円環とした形状を有する。電極206、207は、図2に示すように、印加された電圧により各界面と電極との接触角を制御することで各界面の面形状を変化させ、液体レンズ101の全体の屈折力を変化させる。電極分離部208は、電極206と電極207との相対する位置に配置されており、各電極206、207を独立に電圧制御可能とする絶縁部材で構成されている。カバーガラス209、210は、一方が液体レンズ101の光入射側に、他方が光出射側に配置され、各液体201〜203を液体レンズ101内に封止するガラス板である。
【0012】
次に、ズームレンズ100による色収差補正の作用について従来のズームレンズと比較して説明する。図3は、ズームレンズにおける色収差補正の作用を説明するための概念図である。特に、図3(a)は、結像面304に対して、第1及び第2の屈折力可変面(屈折面)301、302と、絞り303とを有する従来の光学系900の構成要素と、光の3原色(R、G、B)の各光路を示す。この光学系900を有するズームレンズでは、不図示の制御部は、第1及び第2屈折面301、302の各屈折力φ1、φ2を変化させることで、各種レンズの位置を動かすことなく焦点距離を変化させる。具体的には、制御部は、図3(a)に示すように、絞り303よりも物体側にある第1屈折面301を負の屈折力から正の屈折力に変化させる。同時に、制御部は、絞り303よりも像面側にある第2屈折面302の屈折力を第1屈折面301とは逆の方向に変化させる。これにより、光学系900は、広角端では負―正のレトロフォーカスタイプに、一方、望遠端では正―負のテレフォトタイプとなり、焦点距離の可変範囲を大きくすることができる。このとき、広角端における倍率色収差(LAT)を示す式は、(数1)で表される。
【0013】
【数1】
【0014】
ここで、hは、ある屈折面における軸上光束の周辺光線高さ、h_barは、ある屈折面における最軸外主光線の光線高さ、φは、ある屈折面の屈折力、更に、νは、ある屈折面のアッベ数である。
【0015】
更に、本実施形態のように、屈折面301、302が液体レンズの可変面(界面)である場合は、φ及びνは、それぞれ(数2)及び(数3)で表される。
【0016】
【数2】
【0017】
【数3】
【0018】
ここで、nd1、nF1、nC1は、液体レンズにおける一方の液体のd線、F線、C線の各屈折率を示し、nd2、nF2、nC2は、前記一方の液体に隣接する他方の液体のd線、F線、C線の各屈折率を示す。また、Rは、前記一方の液体と他方の液体とで形成される界面の曲率半径である。
【0019】
一般に、通常の液体では、高屈折率のものほど分散(屈折率の差)が大きく、低屈折率のものほど分散が小さい。これを踏まえて(数1)を見ると、倍率色収差は、レトロフォーカス及びテレフォト共に2つの液体レンズで同じ方向に現れる。即ち、通常のズームレンズでは、ズーム群毎に色収差補正を行い、倍率色収差の変動を抑える。しかしながら、屈折力そのものが変化する場合は、屈折力が固定されたレンズを組み合わせても、ズーム位置毎に変化する倍率色収差を補正することは困難である。そこで、本実施形態では、図3(b)に示すように、新たに1つの第3屈折面305を追加する。
【0020】
この第3屈折面305は、第1及び第2屈折面301、302とは逆の倍率色収差を発生させる面である。このとき、第3屈折面305は、絞り303の像面側に配置する。但し、第3屈折面は、同様に絞り303の像面側にある第2屈折面302に対して、第1屈折面301の分まで色収差補正を行う必要がある。即ち、本実施形態における倍率色収差の式は、(数1)を用いると、(数4)で表される。
【0021】
【数4】
【0022】
ここで、(数4)の左辺における第1〜3項は、それぞれ、第1屈折面301、第2屈折面302、及び第3屈折面305によるそれぞれの倍率色収差の発生を示す。この場合、3つの各屈折面で発生する倍率色収差を合成した色収差の発生量がゼロであり、かつ、第1屈折面301と第2屈折面302とに対応した第1及び第2項は、同符号であるので、第3屈折面305に対応した第3項は、異符号となる。したがって、(数4)は、(数5)で表される。
【0023】
【数5】
【0024】
また、各屈折面における色収差の発生量の絶対値がゼロとなる条件は、一般的に、第2屈折面302と第3屈折面305との関係で示すと、(数6)で表される。
【0025】
【数6】
【0026】
ここで、(数6)は、第2屈折面302の広角端における倍率色収差をLAT1とし、一方、第3屈折面305の広角端における倍率色収差をLAT2とおくと、
│LAT1│<│LAT2│
で表される。即ち、第3屈折面305の補正量の絶対値は、第2屈折面302の色収差発生量よりも大きくする必要がある。なお、(数6)では、色収差補正に用いる第3屈折面305を1つの面で表しているが、例えば、色収差補正を複数の面(屈折面)で行い、その合計値が第2屈折面302の絶対値よりも大きくなるように調整してもよい。
【0027】
本実施形態では、第1屈折面(第1の屈折力可変面)301は、3層型の第1液体レンズ101における2つの屈折面101a、101bのうち、像面側の屈折面101bに相当する。これに対して、第3屈折面(第3の屈折力可変面)305は、第2の屈折面(第2の屈折力可変面)302と同じパッケージに封入、即ち、第2液体レンズ105として1つの構成要素に備わる。具体的には、3層型の第2液体レンズ105において、物体側の屈折面105a(図2の第1界面204)が第3屈折面305となり、一方、像面側の屈折面105b(図2の第2界面205)が第2屈折面302となる。これにより、ズームレンズ100全体を小型化することができる。なお、倍率色収差の補正に用いる第3屈折面305の配置方法は、これに限定するものではなく、第2及び第3屈折面302、305の間に別途固体レンズを配置したり、2種の液体レンズをそれぞれ並べて配置したりしてもよい。例えば、第3屈折面305が絞り303(103)の物体側に配置されている場合は、その第3屈折面305を有する液体レンズの広角端における倍率色収差を、(数6)における左辺(=|LAT1|)とすればよい。
【0028】
更に、本実施形態では、図1に示すように、第1液体レンズ101と絞り103との間に、第1固体レンズ102を配置する。これにより、コマ収差の発生を低減することができる。また、図1に示すように、絞り103と第2液体レンズ105との間に、正の第2固体レンズ104を配置する。これにより、ズームレンズ100全体の小型化に加え、像面湾曲の発生を低減することができる。
【0029】
次に、ズームレンズ100に上記の各条件を適用し、具体的に数値を代入して本実施形態の効果を説明する。(表1)は、図4に示すズームレンズ100の各構成要素の面に付した各面番号601〜620における各種数値を示す表である。ここで、図4では、光源(被写体)の位置を絶対座標系の基準として3次元の座標軸(Z軸、Y軸、X軸)を取る。このとき、Z軸は、第0面の中心から第1液体レンズ101の第1面の中心(絶対座標の原点)を通り、この方向を正とする軸である。また、Y軸は、第1面の中心を通り、Z軸に対して反時計回りに90度を成す軸であり、X軸は、原点を通り、Z軸及びY軸に垂直となる軸である。また、(表1)において、各面番号(No.)に対して、レンズの種類(Type)、曲率半径(R)、レンズ面間の厚さ(D)、d線の屈折率(Nd)、及びアッベ数(νd)のそれぞれの数値を記載している。また、第1〜第3固体レンズ102、104、106では、回転対称非球面を有する光学素子を用いており、その面形状は、(数7)で表される。
【0030】
【数7】
【0031】
ここで、kは、コーニック係数であり、cは、曲率(曲率半径Rの逆数)である。この(数7)に適用する各係数k、A〜Dの値を(表2)に示す。なお、(表1)において、面の形状が球面である場合は、空欄とし、回転対称非球面である場合は、ALと記載する。同様に、各液体レンズ101、105に該当する面については、可変する値をVariableと記載し、各ズーム位置(Position1、Position2)に対応した値を(表3)に示す。更に、OBJは、無限遠に物体があることを示し、INFとSTOとは、それぞれ無限大と、絞り面とを示す。また、反射面以降では座標が反転するため、曲率半径R、及び各係数A〜Dの符号は、全て反転する。更に、(表4)は、第1及び第2液体レンズ101、105における各界面(屈折面)での各種値を示す表である。(表4)において、特に、Sur.は、各界面の作用の種類を示しており、倍率色収差の補正を行う面には、Cor.と表記し、一方、ズーミングに必要な屈折力を持つ面には、Pow.と表記する。
【0032】
ここで、本実施形態の条件として、画角は、全画角で34.35〜63.44degの2倍ズームで、FNo.は、2.8〜3.5である。特に、Position1では、f=5.78、FNo.は、2.8であり、一方、Position2では、f=11.55、FNo.は、3.5である。そして、この場合の第2屈折面302と第3屈折面305とにおける倍率色収差の値は、それぞれLAT1(面615)=0.0129、LAT2(面614)=0.0258となり、(数6)の条件を満たす。
【0033】
なお、参考として、図5に、本実施形態に係る縦収差図(球面収差、像面収差、歪曲)を示す。特に、図5(a)は、広角端における縦収差図であり、図5(b)は、望遠端における縦収差図である。図5において、縦軸は、光線がズームレンズ100に入射する光線高さであり、横軸は、光線が光軸と交わる位置である。加えて、図6は、本実施形態に係る横収差図であり、特に、図6(a)は、広角端における横収差図であり、図6(b)は、望遠端における横収差図である。図6において、縦軸は、収差量であり、横軸は、入射瞳座標である。また、各図では、C線(656.3nm)、D線(589.2nm)、及びF線(486.1nm)の波長を有する各光線について記載している。
【0034】
【表1】
【0035】
【表2】
【0036】
【表3】
【0037】
【表4】
【0038】
以上のように、本実施形態のズームレンズ100は、2つの3層型の液体レンズを利用する。このとき、絞り103の物体側に配置される第1液体レンズ101における界面を第1屈折面301とし、絞り103の像面側に配置される第2液体レンズ105における像面側の界面を第2屈折面302、一方、物体側の界面を第3屈折面305とする。このズームレンズ100では、第2屈折面302及び第3屈折面305は、該各屈折面における倍率色収差の関係が(数6)の条件を満足するように調整されるので、ズーム位置毎に変化する倍率色収差の発生を低減することができる。更に、このような構成により、ズームレンズ100全体を小型化することができる。
【0039】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係るズームレンズについて説明する。本実施形態のズームレンズは、第1実施形態に係るズームレンズ100が液体レンズを2つ利用するのに対し、液体レンズを3つ利用する。図7は、本実施形態に係るズームレンズのレンズ断面図である。このズームレンズ300は、物体側から結像面308に向けて順に、第1液体レンズ301と、第1固体レンズ302と、絞り303と、第2液体レンズ304と、第2固体レンズ305と、第3液体レンズ306と、第3固体レンズ307とを備える。図7において、特に、図7(a)は、広角端(Wide)におけるズームレンズ300のレンズ断面図を示す。図7(b)は、中間のズーム位置(Middle)におけるズームレンズ300のレンズ断面図を示す。また、図7(c)は、望遠端(Tele)におけるズームレンズ300のレンズ断面図を示す。ここで、第1及び第3液体レンズ301、306の構成は、第1実施形態に係る3層型の液体レンズの構成と略同一であるため説明を省略する。このズームレンズ300では、第1液体レンズ301と第3液体レンズ306とが主に屈折力を変化させる作用を有する。特に、第1液体レンズ301は、屈折力を負から正に、一方、第3液体レンズ306は、屈折力を正から負に変化することで大きく焦点距離の変化を与える。この場合、焦点距離の可変面として機能する屈折面は、第1液体レンズ301を形成する第1及び第2界面301a、301bのうちの第2界面301bと、第3液体レンズ306を形成する第1及び第2界面306a、306bのうちの第2界面306bである。一方、第1実施形態と同様に、倍率色収差の補正面として機能する屈折面は、第3液体レンズ306の第1界面306aである。
【0040】
なお、本実施形態では、倍率色収差の補正面として機能する屈折面を、第3液体レンズ306の第1界面306aとしているが、倍率色収差の補正面は、これに限定するものではない。倍率色収差は、(数1)に示すように、各面における周辺光線高さhと、主光線高さh_barとの積に比例する。したがって、屈折面のうち、このh×(h_bar)が最大となる光学面を倍率色収差の補正面とすれば、倍率色収差をより低減することができる。一方、倍率色収差の補正面を主光線高さh_barが最大となる面とした場合は、軸上色収差とは独立させて倍率色収差の補正を行うことができる。なお、本実施形態では、h×(h_bar)が最大となる面(第3液体レンズ306の第1界面306a)を倍率色収差の補正面としているので、倍率色収差を効果的に低減する。
【0041】
また、本実施形態では、倍率色収差の補正面を、絞り303に対して像面側にある1つの面で構成しているが、例えば、同様に絞り303の像面側で、複数の面を配置させる構成としてもよい。この場合、補正面の倍率色収差LATは、(数8)に示すように、補正のためのN個の屈折面があるとして、屈折面の補正量の合計が過補正となればよい。
【0042】
【数8】
【0043】
また、本実施形態では、第1実施形態とは異なり、2層型の液体レンズで構成される第2液体レンズ304を新たに追加することで、軸上色収差の補正を行う。軸上色収差の補正の式は、(数9)で表される。
【0044】
【数9】
【0045】
ここで、第1液体レンズ301及び第2液体レンズ306のみで考慮すると、それぞれの屈折力φは、広角端では負―正であり、一方、望遠端では正―負である。また、周辺光線高さhは、中間結像しない系であるために常に正である。したがって、この場合のズームレンズにおける軸上色収差は、常に補正方向となる。しかしながら、実際には他の収差の影響、特に望遠端での影響があるため、どのズームポジションにおいても常に軸上色収差が補正された状態を維持するのは難しい。そこで、本実施形態では、絞り303の隣(物体側、又は像面側)に第2液体レンズ304を配置することで、ズームポジション毎の軸上色収差の補正を可能にする。このとき、第2液体レンズ304を絞り303の隣に配置するのは、(数1)における主光線高さh_barがゼロに近くなるので、倍率色収差とは独立して軸上色収差の補正を行うことができるためである。ここで、絞り303の隣とは、図7(c)に示すように、絞り303から第2液体レンズ304内の界面(第4の屈折力可変面)304aまでの望遠端における間隔をSとし、ズームレンズ300の全長をLとしたとき、S/L<0.2が成り立つ範囲である。この場合、S/Lが0.2を超えると、軸上色収差の補正を独立で行うことが困難となり色収差が増大する可能性がある。
【0046】
次に、ズームレンズ300に上記の各条件を適用し、具体的に数値を代入して本実施形態の効果を説明する。(表5)は、図8に示すズームレンズ300の各構成要素の面に付した各面番号901〜924における各種数値を示す表である。また、上記(数7)に適用する各係数を(表6)に示す。また、(表5)において、各ズーム位置(Position1、Position2、及びPosition3)に対応した値を(表7)に示す。これらの(表5)〜(表7)は、それぞれ第1実施形態に係る(表1)〜(表3)に対応している。ここで、本実施形態の条件として、画角は、全画角で23.29〜63.44degの3倍ズームであり、FNo.は、2.8〜5.0である。特に、Position1では、f=5.78、FNo.は、2.8であり、また、Position2では、f=9.08、FNo.は、3.5であり、更に、Position3では、f=17.33、FNo.は、5.0である。そして、第3液体レンズ306における第1界面306aと第2界面306bとにおける倍率色収差の値は、それぞれLAT1(面919)=0.0073、LAT2(面918)=0.0097((h×h_bar)が最大)となり、(数6)の条件を満たす。また、この場合、L=29.2642、S=0.02541であるので、S/L=0.025となり、上記S/L<0.2の条件を満たす。なお、参考として、図9及び図10に、本実施形態に係る広角端及び望遠端における縦収差図(球面収差、像面収差、歪曲)及び横収差図を示す。この図9及び図10は、第1実施形態に係る図5及び図6に対応しており、特に、両図において、(a)は、広角端(Wide)、(b)は、中間のズーム位置(Middle)、また、(c)は、望遠端(Tele)に対応する。これにより、本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果に加え、ズームポジション毎の軸上色収差を低減することができる。
【0047】
【表5】
【0048】
【表6】
【0049】
【表7】
【0050】
【表8】
【0051】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係るズームレンズについて説明する。本実施形態のズームレンズは、液体レンズを4つ利用し、かつ、光路中に直角プリズムを配置することで、薄型化を図るものである。図11は、本実施形態に係るズームレンズのレンズ断面図である。このズームレンズ400は、物体側から結像面410に向けて順に、第1液体レンズ401と、直角プリズム(ガラスプリズム)402と、第2液体レンズ403と、第1固体レンズ404と、絞り405と、第3液体レンズ406とを備える。続けて、ズームレンズ300は、第2固体レンズ407と、第4液体レンズ408と、第3固体レンズ409とを備える。図11において、特に、図11(a)は、広角端(Wide)におけるズームレンズ400のレンズ断面図を示す。図11(b)は、中間のズーム位置(Middle)におけるズームレンズ400のレンズ断面図を示す。また、図11(c)は、望遠端(Tele)におけるズームレンズ400のレンズ断面図を示す。ズームレンズ400において、第1、第2及び第3液体レンズ401、403、406は、2種の液体を用いた2層型の液体レンズである。この場合、第1液体レンズ401と第2液体レンズ403とは、その間に直角プリズム402を配置することで、結果的に、第2実施形態に係るズームレンズ300の3層型の液体レンズを2つの2層型の液体レンズで構成したことと同一である。また、第4液体レンズ408の構成は、第1実施形態に係る3層型の液体レンズの構成と略同一である。このズームレンズ400では、第1液体レンズ401と第2液体レンズ403とが、主に屈折力を変化させる作用を有する。特に、第1液体レンズ401は、屈折力を負から正に、一方、第2液体レンズ403は、屈折力を正から負に変化することで大きく焦点距離の変化を与える。一方、第1実施形態と同様に、倍率色収差の補正面として機能する屈折面は、第4液体レンズ408の第1界面408aである。これに対して、第4液体レンズ408の第2界面408bは、ズームレンズ400の焦点距離の変化時に、結像面410の位置を移動させないように屈折力を変化させる作用を有する。また、第3液体レンズ406は、第2実施形態における第2液体レンズ304と同様に、絞り405の隣に配置され、他の液体レンズの変化により生じた軸上色収差を低減する作用を有する。
【0052】
次に、ズームレンズ400に上記の各条件を適用し、具体的に数値を代入して本実施形態の効果を説明する。(表9)は、図12に示すズームレンズ400の各構成要素の面に付した各面番号1201〜1228における各種数値を示す表である。また、上記(数7)に適用する各係数を(表10)に示す。また、(表9)において、各ズーム位置(Position1、Position2、及びPosition3)に対応した値を(表11)に示す。これらの(表9)〜(表11)は、それぞれ第1実施形態に係る(表1)〜(表3)に対応している。ここで、本実施形態の条件として、画角は、全画角で23.29〜63.44degの3倍ズームであり、FNo.は、2.8〜5.0である。特に、Position1では、f=5.78、FNo.は、2.8であり、また、Position2では、f=9.08、FNo.は、3.5であり、更に、Position3では、f=17.33、FNo.は、5.0である。そして、第4液体レンズ408における第1界面408aと第2界面408bとにおける倍率色収差の値は、それぞれLAT1(面1223)=0.0035、LAT2(面1222)=−0.0126((h×h_bar)が最大)となり、(数6)の条件を満たす。また、この場合、L=40.0(図11(c)に示すA+B)、S=0.0366であるので、S/L=0.0009となり、上記S/L<0.2の条件を満たす。なお、参考として、図13及び図14に、本実施形態に係る広角端及び望遠端における縦収差図(球面収差、像面収差、歪曲)及び横収差図を示す。この図13及び図14は、第2実施形態に係る図9及び図10に対応している。これにより、本実施形態によれば、第2実施形態と同様の効果に加え、ズームレンズ全体の形状を薄型化することができる。
【0053】
【表9】
【0054】
【表10】
【0055】
【表11】
【0056】
【表12】
【0057】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、これらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【0058】
例えば、上記実施形態では、屈折面と、倍率色収差の補正面とを1つの3層型の液体レンズで構成するものとしているが、本発明はこれに限定されない。例えば、2層型の複数の液体レンズを組み合わせても良いし、又は、液晶素子等を用いた液体レンズでズーミングを行い、倍率色収差の補正面として液体界面を追加した構成としてもよい。
【0059】
また、上記実施形態では、倍率色収差の補正面を、絞りと像面側の屈折面との間に配置しているが、本発明はこれに限定されない。この場合、倍率色収差を補正できる位置であればどの場所に配置してもよい。但し、倍率色収差を効率的に補正できる場所、即ち、h×(h_bar)が最大となる位置、又は主光線高さ(h_bar)が最大となる位置のいずれかであることが望ましい。
【符号の説明】
【0060】
100 ズームレンズ
101 第1液体レンズ
101b 第1屈折面
103 絞り
105 第2液体レンズ
105a 第3屈折面
105b 第2屈折面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絞りの物体側に配置される第1の屈折力可変面と、該第1の屈折力可変面と同符号の倍率色収差を生じさせ、前記絞りの像面側に配置される第2の屈折力可変面と、前記第1、第2の屈折力可変面と異符号の倍率色収差を生じさせる第3の屈折力可変面とを含むズームレンズであって、
前記第3の屈折力可変面が前記絞りの物体側に配置されている場合は、前記第1の屈折力可変面の広角端における倍率色収差をLAT1、又は、前記第3の屈折力可変面が前記絞りの像面側に配置されている場合は、前記第2の屈折力可変面の広角端における倍率色収差をLAT1とし、前記第3の屈折力可変面の広角端における倍率色収差をLAT2としたとき、
│LAT1│<│LAT2│
なる条件を満足することを特徴とするズームレンズ。
【請求項2】
前記第3の屈折力可変面は、広角端において、最軸外主光線の光線高さと、軸上光束の周辺光線高さの積が最大となる光学面に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項3】
前記第3の屈折力可変面は、広角端において、最軸外主光線の光線高さが最大となる光学面に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項4】
前記第3の屈折力可変面は、前記第1の屈折力可変面、又は前記第2の屈折力可変面と同じパッケージに封入された3層型の液体レンズを構成する1面であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のズームレンズ。
【請求項5】
前記絞りの物体側、又は像面側の隣に、第4の屈折力可変面を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のズームレンズ。
【請求項6】
前記第4の屈折力可変面と前記絞りとの間隔をS、前記ズームレンズの全長をLとしたとき、
S/L<0.2
なる条件を満足することを特徴とする請求項5に記載のズームレンズ。
【請求項7】
前記絞りと前記第1の屈折力可変面との間に、固体レンズが配置されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のズームレンズ。
【請求項8】
前記絞りと前記第2の屈折力可変面との間に、固体レンズが配置されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のズームレンズ。
【請求項1】
絞りの物体側に配置される第1の屈折力可変面と、該第1の屈折力可変面と同符号の倍率色収差を生じさせ、前記絞りの像面側に配置される第2の屈折力可変面と、前記第1、第2の屈折力可変面と異符号の倍率色収差を生じさせる第3の屈折力可変面とを含むズームレンズであって、
前記第3の屈折力可変面が前記絞りの物体側に配置されている場合は、前記第1の屈折力可変面の広角端における倍率色収差をLAT1、又は、前記第3の屈折力可変面が前記絞りの像面側に配置されている場合は、前記第2の屈折力可変面の広角端における倍率色収差をLAT1とし、前記第3の屈折力可変面の広角端における倍率色収差をLAT2としたとき、
│LAT1│<│LAT2│
なる条件を満足することを特徴とするズームレンズ。
【請求項2】
前記第3の屈折力可変面は、広角端において、最軸外主光線の光線高さと、軸上光束の周辺光線高さの積が最大となる光学面に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項3】
前記第3の屈折力可変面は、広角端において、最軸外主光線の光線高さが最大となる光学面に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項4】
前記第3の屈折力可変面は、前記第1の屈折力可変面、又は前記第2の屈折力可変面と同じパッケージに封入された3層型の液体レンズを構成する1面であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のズームレンズ。
【請求項5】
前記絞りの物体側、又は像面側の隣に、第4の屈折力可変面を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のズームレンズ。
【請求項6】
前記第4の屈折力可変面と前記絞りとの間隔をS、前記ズームレンズの全長をLとしたとき、
S/L<0.2
なる条件を満足することを特徴とする請求項5に記載のズームレンズ。
【請求項7】
前記絞りと前記第1の屈折力可変面との間に、固体レンズが配置されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のズームレンズ。
【請求項8】
前記絞りと前記第2の屈折力可変面との間に、固体レンズが配置されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のズームレンズ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−103626(P2012−103626A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−254178(P2010−254178)
【出願日】平成22年11月12日(2010.11.12)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月12日(2010.11.12)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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