説明

セミオートマチック変速機の制御方法

本発明は,商用車におけるセミオートマチック変速機の制御方法を提案する。本発明では,車両を走行させるための各種の走行モードと,車両を操縦するための操縦モードを電子制御ユニットにおける走行スイッチで選択し,操縦モードを選択する際には車両重量も入力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,請求項1の上位概念部分に記載したセミオートマチック変速機の制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えばドイツ特許出願公開第10105749号公報には,シフト操作がセミオートマチックに行われる変速機を有する商用車の操縦を支援するための方法が開示されている。この場合,操縦支援モードでは操縦ペダルの踏み込み量と車両の積載荷重に応じてクラッチと摩擦ブレーキを,車載コンピュータにより自動的に,同時かつ同調的に作動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】ドイツ特許出願公開第10105749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は,上述した形式の制御方法において,車両の操縦特性を更に最適化可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば,上記課題は請求項1に記載した方法により解決されるものである。また,本発明の好適な実施形態は従属請求項に記載したとおりである。
【0006】
本発明は,車両,特に商用車におけるセミオートマチック変速機を制御するにあたり,車両を走行させるための各種の走行モードと,車両を操縦するための少なくとも1つの操縦モードを電子制御ユニットにおける走行スイッチで選択する方法において,操縦モードを選択する際に車両重量も入力することを特徴とする。
【0007】
本発明に係る制御方法によれば,例えば斜面又は坂路において重荷重の商用車を低速で操縦する場合に操縦特性を顕著に向上することができ,その際に電子制御回路に変更を加える必要はない。そのために,走行スイッチ等を使用する既知の態様で操縦モードを選択し,これにより変速機を自動又は手動変速が行われる走行モードから操縦モードに切り替えることができる。次に,操縦モードにおいては走行スイッチにより運転者が実際の車両重量を入力する。これに基づき,入力された車両重量に応じて低下させたパラメータをもって車両を操縦し,又は走行させることができる。その結果,車両の特に精密な移動が可能となるものである。
【0008】
本発明の好適な実施形態において,操縦モードが選択されていることを運転者にディスプレー表示することができる。操縦モードに加えて,入力した車両重量をディスプレー表示することも可能である。
【0009】
本発明の好適な実施形態において,操縦モードが選択されているときに車速及び/又はクラッチ温度をモニタすることができる。操縦モードにおいて,更なるパラメータをモニタすることもできる。例えば,車速が所定のしきい値を超えて操縦速度として評価できなくなる場合や,クラッチ温度が所定のしきい値を超える場合に,操縦モードを無効化して危険な走行状態を回避し,又はクラッチ等に損傷が生じるのを防止することができる。操縦モードの自動的な無効化については,運転者に対して例えばディスプレー表示により視覚的に,又は音響的に注意喚起することができる。
【0010】
本発明に係る操縦モードの制御計画を更に向上するため,操縦モードにおいて走行ペダルを作動させたときに変速が生じるのを阻止し,より低い走行回転数と,より低いクラッチトルクとをもって車両を走行させることができる。
【0011】
本発明に係る制御方法において,操縦モードを運転者による走行スイッチの手動操作で解除する構成とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係るセミオートマチック変速機の制御方法を実行するためのアルゴリズムを示すフローチャートである。
【図2】本発明に係る制御方法における手動による操縦モードの解除方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下,本発明を図示の好適な実施形態に基づいて更に詳述する。
【0014】
図面は,各種走行モードを選択可能とした商用車用のセミオートマチック変速機を制御するために適用される本発明に係る制御方法の一実施形態を示すものである。セミオートマチック変速機は,通常,電子制御回路により制御可能とした電気機械的クラッチ制御手段及び電気機械的変速制御手段を備え,この電子制御回路は車両ネットワークを介してエンジンを制御するための電子制御回路とも接続されている。各種走行モードは,上記の電子制御回路に接続された走行スイッチにより選択されるものである。特に,例えば自動モード,手動走行モード及び操縦モードを選択することが可能である。
【0015】
図1のフローチャートから明らかなとおり,操縦モードの非選択状態において運転者は操縦モードを選択することが可能である。操縦モードが選択されたことは,運転者にディスプレーで表示される。次に,本発明においては車速VFahrzが操縦速度に対応しているか否か,更にはクラッチ温度TKuppが所定のしきい値GVを下回っているか否かを判断する。何れかの条件が満たされない場合には,操縦モードを無効化する。前記条件が満たされている場合には,本発明において,運転者は増減型の入力スイッチで実際の車両重量を入力する。入力した車両重量は,ディスプレーで表示される。
【0016】
次に,本発明に係る方法においては,走行ペダルが操作されているか否かを判断する。操作されていない場合,制御は車速VFahrz及びクラッチ温度TKuppを判断するステップに戻される。他方,走行ペダルが操作されている場合には,操縦モードにおいて変速阻止を有効化して変速段を制限する。その後,低下させたパラメータをもって車両を走行させる。その際,エンジン回転数及びクラッチトルクを,走行負荷及び入力した車両重量に適合させる。
【0017】
一般論として,精密な操縦を可能とするためにはエンジン回転数及びクラッチトルクを低減させる。操縦モードの間,運転者は走行スイッチにより重量入力値を随時に変更可能である。これは,制御が車速VFahrz及びクラッチ温度TKuppを判断するステップに戻されることとしてフローチャートに示すとおりである。
【0018】
図2は,本発明に係る制御方法において,手動による操縦モードの解除方法を示すフローチャートである。この場合には,車速VFahrz又はクラッチ温度TKuppがしきい値を超えることによる自動的な解除とは異なり,運転者が走行スイッチを手動操作してモードを手動で変更し,操縦モードを解除するものである。
【符号の説明】
【0019】
VFahrz 車速
TKupp クラッチ温度
GW しきい値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
商用車におけるセミオートマチック変速機の制御方法であって,車両を走行させるための各種の走行モードと,車両を操縦するための操縦モードを電子制御ユニットにおける走行スイッチで選択する方法において,操縦モードを選択する際に車両重量も入力することを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって,車両を,入力した車両重量に応じて低下させたパラメータをもって走行させることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法であって,実際の車両重量を走行スイッチにより入力することを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一項に記載の方法であって,選択した操縦モードをディスプレーに表示することを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項に記載の方法であって,車速(VFahrz)及び/又はクラッチ温度(TKupp)をモニタすることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって,車速(VFahrz)及び/又はクラッチ温度(TKupp)が所定のしきい値(GW)を超える際に操縦モードを無効化することを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか一項に記載の方法であって,走行ペダルを操作する際にシフト阻止を有効化することを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法であって,シフト阻止を有効化する際に車両をより低い走行回転数及びより低いクラッチトルクで走行させることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1〜8の何れか一項に記載の方法であって,操縦モードを運転者による走行スイッチの手動操作で無効化することを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−501898(P2013−501898A)
【公表日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−524173(P2012−524173)
【出願日】平成22年7月14日(2010.7.14)
【国際出願番号】PCT/EP2010/060101
【国際公開番号】WO2011/018290
【国際公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(500045121)ツェットエフ、フリードリッヒスハーフェン、アクチエンゲゼルシャフト (312)
【氏名又は名称原語表記】ZF FRIEDRICHSHAFEN AG
【Fターム(参考)】