説明

タイヤ接地形状測定方法及び装置

【課題】常に精度良くタイヤの接地面形状を測定することが可能なタイヤ接地形状測定方法及び装置を提供する。
【解決手段】裏面31側から孔33を介して路面体3の表面29に接地するタイヤ1までの距離を距離センサー5により測定し、距離センサー5で検出した距離信号の値が所定の閾値の範囲aとなる場合、タイヤ1が路面体3に接地した接地面1Eのデータであると判定し、その接地面1Eであると判定したデータ群からタイヤ1の接地面形状を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤの接地面の形状を測定する方法と装置に関し、更に詳しくは、常に精度良くタイヤの接地面の形状を測定することができるタイヤ接地形状測定方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空気入りタイヤの接地面の形状を測定する方法や装置として、平板状の透明な路面体上に接地したタイヤの接地面をカメラなどの画像読み取り装置により読み取るようにしたものが提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。側部から光を透明な路面体内に照射し、透明な路面体に接地したタイヤの接地面を接地側とは反対側から視認可能となるようにし、それを画像読み取り装置により読み取るものである。
【0003】
しかしながら、側部から光を透明な路面体内に照射する設定が極めて難しく、僅かな設定の差に対しても視認状態に差が発生し、設定状態によって測定精度が大きく左右される。そのため、常に精度良くタイヤの接地面形状を測定することが難しいという問題があった。
【特許文献1】特開平3−146809号公報
【特許文献2】特開2001−221716号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、常に精度良くタイヤ接地面の形状を測定することが可能なタイヤ接地形状測定方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成する本発明のタイヤ接地形状測定方法は、裏面側から孔を介して路面体の表面に接地するタイヤまでの距離を距離センサーにより測定し、該距離センサーで検出した距離信号の値が所定の閾値の範囲となる場合、タイヤが路面体に接地した接地面のデータであると判定し、接地面であると判定したデータ群からタイヤの接地面形状を求めることを特徴とする。
【0006】
本発明のタイヤ接地形状測定装置は、タイヤを接地させる表面から裏面に貫通する孔を備えた路面体と、裏面側から孔を介して路面体に接地するタイヤまでの距離を測定する距離センサーと、該距離センサーで検出した距離信号の値が所定の閾値の範囲となる場合、タイヤが路面体に接地した接地面のデータであると判定し、接地面であると判定したデータ群からタイヤの接地面形状を求める処理手段とを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
上述した本発明によれば、裏面側から孔を介して路面体の表面に接地するタイヤまでの距離を距離センサーにより測定し、その検出した距離信号の値から判定した接地面のデータ群からタイヤの接地面形状を求めるため、側部から光を透明な路面体内に照射する設定のような測定精度を大きく左右する要因を排除し、距離センサーと孔を備えた路面体とにより容易に測定可能になるので、常に精度の高いタイヤの接地面形状を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。なお、添付の図面において、同一構成要素は同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0009】
図1は本発明のタイヤ接地形状測定装置の一実施形態を示し、1は接地形状を測定するタイヤ、3はタイヤ1を接地させる路面体、5は距離を測定する距離センサーである。
【0010】
タイヤ1は、不図示のホイールのリムに組付けられ、そのホイールが、図2に示す支持手段7に着脱自在に取り付けられるようになっている。支持手段7は、固定フレーム9にスライド体11が上下動自在に配設されている。スライド体11には、タイヤ1のキャンバー角とスリップ角を調整自在とする揺動アーム手段13が突設され、揺動アーム手段13の先端部の荷重支持部には三分力荷重センサー15が設置されている。この三分力荷重センサー15により、接地して回転するタイヤ1の前後力、横力、及び負荷荷重を測定できるようになっている。
【0011】
第1油圧シリンダ17によりスライド体11を上下動させることで、タイヤ1に加える負荷荷重を調整し、第2油圧シリンダ19によりタイヤ1のキャンバー角、第3油圧シリンダ21によりスリップ角を調整できるようにしている。
【0012】
路面体3は、回転自在に支持された左右のプーリ23,25に掛け回された非透明な無端ベルト27から構成されている。一方のプーリ23に連結された駆動モータ29によりプーリ23を回転させることで、無端ベルト27が周方向(長手方向)に沿って回転移動する。
【0013】
無端ベルト27には、タイヤ1を接地させる表面29から裏面31に貫通する複数の孔33を設けられている。複数の孔33は、無端ベルト27の幅方向に接地するタイヤ1の接地面1E(図3参照)を横断するように配置され、かつベルト剛性を確保するため長手方向に所定の間隔でずらして、無端ベルト27の1周にわたって設けられている。また、無端ベルト27が1回転することにより、複数の孔33が接地するタイヤ1の接地面1E全領域を含む領域全体に位置をずらしながら対面して通過するようになっている。
【0014】
距離センサー5は、レーザ変位センサーなどの非接触式センサーから構成され、無端ベルト27の内側に配置されている。無端ベルト27の裏面31側から孔33を介して無端ベルト27の表面29に接地するタイヤ1までの距離を測定するものであり、不図示の移動装置により矢印で示す幅方向及び長手方向に移動可能になっている。
【0015】
距離センサー5に処理手段35が接続されている。この処理手段35は、距離センサー5で検出した距離信号の値を算出し、その値が図3に示すように第1閾値xとそれより高い第2閾値yとの間の範囲(所定の閾値の範囲)aになるか否か判定する。範囲aになると判定した場合には、タイヤ1が無端ベルト27の表面29に接地した接地面1Eのデータであると判定する。判定した各データはメモリ37に蓄積され、接地面1Eであると判定したデータ群から処理手段35がタイヤ1の接地面形状を求めるようになっている。得られた接地面形状Aは処理手段35に接続された表示手段39に図4に示すように表示される。
【0016】
また、処理手段35では、検出した距離信号の値が第1閾値x以上か否かあるいは後述するエラー信号であるか否か判定する。算出した値が第1閾値x以上あるいはエラー信号であると判定すると、距離センサー5を所定の距離だけ幅方向に移動させる信号を移動装置の制御手段(不図示)に出力する。
【0017】
以下、上述した装置によりタイヤ1の接地面1Eの形状を測定する方法を説明する。距離センサー5としては、レーザ変位センサーを使用した場合を例にとる。
【0018】
先ず、揺動アーム手段13にリム組したタイヤ1を取り付け、第1油圧シリンダ17、第2油圧シリンダ19、第3油圧シリンダ21により、負荷荷重、キャンバー角、スリップ角を適宜設定して、回転する無端ベルト27の表面29にタイヤ1を接地させる。
【0019】
無端ベルト27上を回転するタイヤ1が所定の試験速度に達すると、無端ベルト27の幅方向一端側で、かつ接地面1Eの周方向一方側(接地面1Eから周方向一方側に外れた位置)に待機するレーザ変位センサーが検出を開始する。レーザ変位センサーにより検出された信号は、無端ベルト27の裏面31でレーザ光が反射した検出信号(裏面31まの距離を測定)と、レーザ光が裏面31側から孔33を通過して、タイヤ1に反射した検出信号(タイヤ1までの距離を測定)、タイヤ1に当たらずに反射がない或いはタイヤ1に当たっても所定量の反射がない信号(エラー信号)となる。これらの検出信号が処理手段35に逐次入力される。
【0020】
処理手段35では、検出した距離信号の値を算出し、その値が第1閾値x以上か否かあるいはエラー信号であるか否か判定する。この判定は、孔33の位置における検出信号を見つけるためのものである。算出した値が第1閾値x以上と判定した場合、所定の閾値の範囲aとなるか否か判定する。所定の閾値の範囲aと判定した場合、タイヤ1が無端ベルト27に接地した接地面1Eのデータであると判定する。エラー信号の場合には、所定の閾値の範囲aではないと判定する。孔33の位置で判定したデータが、メモリ37に蓄積される。
【0021】
他方、算出した値が第1閾値x以上あるいはエラー信号であると判定、即ち孔33がレーザ変位センサーの照射位置を通過すると、レーザ変位センサーが所定の距離だけ、幅方向他方側に移動する。移動後、上記と同様の動作を行う。以降、レーザ変位センサーが無端ベルト27の幅方向他端側に移動するまで、上記動作を繰り返し行う。
【0022】
レーザ変位センサーが無端ベルト27の幅方向他端側まで測定動作を終了すると、無端ベルト27の長手方向他方側に所定の距離だけ移動し、無端ベルト27の幅方向他端側から上述した動作を繰り返し行う。接地面1Eの周方向他方側(接地面1Eから周方向他方側に外れた位置)まで、同様の動作を行い、メモリ37に蓄積された判定データ群からタイヤ1の接地面形状を求める。得られたタイヤ1の接地面形状Aは表示手段39に表示される。なお、接地面形状Aはトレッド面に溝がないスリックタイヤの接地面形状を示している。
【0023】
上述した本発明によれば、孔33を備えた路面体3と距離センサー5を用いてタイヤ1の接地面形状を得ることにより、側部から光を透明な路面体内に照射する設定のような測定精度を大きく左右する要因を排除して容易に測定することが可能になる。従って、常に精度良くタイヤ1の接地面形状を測定することができる。
【0024】
また、従来の透明な路面体は、材料が制約されるため、高いグリップ力を得ることができず、それにより所望のスリップ角を与えた状態でのタイヤの接地面形状を正確に測定することができないという問題があったが、路面体3に非透明なものを使うことができるので、材料の制約がなく、路面体3を高いグリップ力が得られる材料から作ることができ、従って、所望のスリップ角を与えた状態でのタイヤ1の接地面形状を正確に測定することができる。
【0025】
更に、路面体3を無端ベルト27から構成することで、タイヤ1の高速回転時における接地面形状の測定が可能になり、低速から高速までカバーすることができる。
【0026】
上記孔33の寸法としては、タイヤ1の接地特性に影響を与えない範囲であればいずれの寸法であってもよく、例えば、孔33が正方形の場合には一辺が、円形の場合には直径が2〜10mmの範囲となるようにするのがよい。下限値が2mmより小さくなると、ゴム製の無端ベルト27では撓みにより孔33が塞がれることがあるため、好ましくない。上限値が10mmを超えると、タイヤ1の接地特性に悪影響を及ぼし易くなる。好ましくは、4〜6mmにするのがよい。
【0027】
図5は、本発明のタイヤ接地面形状測定装置の他の実施形態を示し、この実施形態では、路面体3が回転可能に支持された非透明なドラム41から構成されている。ドラム41は、立設した左右の支持部材43間に回転自在に横設した回転軸45に取り付けられている。不図示のモータにより回転軸45が回転し、それによりドラム41が回転可能になっている。
【0028】
ドラム41は、回転軸45に固定されたディスク部47とこのディスク部47の外周端に固設された筒状のドラム本体49とから構成されている。ドラム本体49には、タイヤ1を接地させる表面51から裏面53に貫通する1本のスリット状の孔54が設けられている。スリット状の孔54は、ドラム本体49の幅方向にストレート状に延在すると共に、接地するタイヤ1の接地面1E(図6参照)を横断している。
【0029】
ホイール55のリムに組付けられたタイヤ1が支持手段59に着脱自在に取り付けられるようになっている。支持手段59は、ドラム41の上方まで立設したフレーム体61の横設部材63に一対の昇降可能な支持アーム65が垂設され、その一対の支持アーム65の下端部にタイヤ1を装着したホイール55を回転自在に取り付けるようにしている。
【0030】
支持アーム65を昇降させる不図示の油圧シリンダによりタイヤ1に負荷荷重を付与することができ、また図示せぬ機構により、タイヤ1のキャンバー角、スリップ角を調整できるようになっている。また、支持アーム65の下端部に取り付けた不図示の三分力荷重センサーにより、接地して回転するタイヤ1の前後力、横力、及び負荷荷重を測定できるようになっている。
【0031】
距離センサー5は、上記と同様に、レーザ変位センサーなどの非接触式センサーから構成され、ドラム本体49の内側に配置されている。ドラム本体49の裏面53側からスリット状の孔54を介してドラム本体49の表面51に接地するタイヤ1までの距離を測定するものであり、不図示の移動装置により矢印で示す幅方向(スリット状の孔54が延在する方向)及びドラム本体49の長手方向(周方向)に沿って移動可能になっている。
【0032】
距離センサー5に上記と同様の処理手段71が接続されている。即ち、処理手段71は、距離センサー5で検出した距離信号の値を算出し、その値が図3に示すように第1閾値xとそれより高い第2閾値yとの間の範囲(所定の閾値の範囲)aになるか否か判定する。範囲aになると判定した場合には、タイヤ1がドラム本体49の表面51に接地した接地面1Eのデータであると判定する。判定した各データはメモリ73に蓄積され、接地面1Eであると判定したデータ群から処理手段71がタイヤ1の接地面形状を求めるようになっている。得られた接地面形状Bは処理手段71に接続された表示手段75に図7に示すように表示される。
【0033】
また、処理手段71では、検出した距離信号の値が第1閾値x以上か否かあるいはエラー信号であるか否か判定する。算出した値が第1閾値x以上あるいはエラー信号であると判定すると、距離センサー5を所定の距離だけドラム本体49の幅方向に移動させる信号を移動装置の制御手段(不図示)に出力する。
【0034】
このタイヤ接地面形状測定装置では、負荷荷重、キャンバー角、スリップ角が適宜設定され、ドラム本体49上を回転するタイヤ1が所定の試験速度に達すると、ドラム本体49の幅方向一端側(スリット状の孔54の一端側)で、かつ接地面1Eの周方向一方側(接地面1Eから周方向一方側に外れた位置)に待機するレーザ変位センサーが検出を開始する。レーザ変位センサーにより検出された信号は、ドラム本体49の裏面53でレーザ光が反射した検出信号(裏面53まの距離を測定)と、レーザ光が裏面53側からスリット状の孔54を通過して、タイヤ1に反射した検出信号(タイヤ1までの距離を測定)、タイヤ1に当たらずに反射がない或いはタイヤ1に当たっても所定量の反射がない信号(エラー信号)となる。これらの検出信号が処理手段71に逐次入力される。
【0035】
処理手段71では、上述した処理手段35と同様の処理を行う。即ち、検出した距離信号の値を算出し、その値が第1閾値x以上か否かあるいはエラー信号であるか否か判定する。この判定は、スリット状の孔54の位置における検出信号を見つけるためのものである。算出した値が第1閾値x以上と判定した場合、所定の閾値の範囲aとなるか否か判定する。所定の閾値の範囲aと判定した場合、タイヤ1がドラム本体49の表面51に接地した接地面1Eのデータであると判定する。エラー信号の場合には、所定の閾値の範囲aではないと判定する。孔54の位置で判定したデータが、メモリ73に蓄積される。
【0036】
他方、算出した値が第1閾値x以上あるいはエラー信号であると判定、即ち孔54がレーザ変位センサーの照射位置を通過すると、レーザ変位センサーが所定の距離だけ、幅方向他方側に移動する。移動後、上記と同様の動作を行い、以降、レーザ変位センサーがドラム本体49の幅方向他端側に移動するまで、上記動作を繰り返し行う。
【0037】
レーザ変位センサーがドラム本体49の幅方向他端側まで測定動作を終了すると、ドラム本体49の周方向他方側に所定の距離だけ移動し、ドラム本体49の幅方向他端側から上述した動作を繰り返し行う。接地面1Eの周方向他方側(接地面1Eから周方向他方側に外れた位置)まで、同様の動作を行い、メモリ73に蓄積された判定データ群からタイヤ1の接地面形状を求める。得られたタイヤ1の接地面形状Bは表示手段75に表示される。
【0038】
このようにスリット状の孔54を備えたドラム41と距離センサー5を用いてタイヤ1の接地面形状を得るようにしても、上記と同様の効果を得ることができる。
【0039】
図8は、ドラム本体49の長手方向に所定の間隔でスリット状の孔54を複数本設けたものである。図示する例では、3本のスリット状の孔54を近くに配置しているが、好ましくは、周上に略等間隔、3本の場合には略120°間隔で設けるのがよい。1本のスリット状の孔54がレーザ変位センサーの照射位置を通過すると、処理手段71からレーザ変位センサーを所定の距離だけ移動させる信号を出力するので、複数本設けることにより、レーザ変位センサーの移動を速めることができ、測定効率を高めることができる。
【0040】
図9は、ドラム本体49の長手方向に延在する1本のスリット状の孔56を接地するタイヤ1の接地面1Eを横断するように設けたものである。この場合は、支持手段59によりタイヤ1をドラム本体49の幅方向に移動可能となるようにする一方、距離センサー5はスリット状の孔56に対面する位置でドラム本体49の長手方向にのみ移動可能であればよい。当然のことながら、ドラム本体49の長手方向及び幅方向に移動可能であってもよい。
【0041】
このドラム本体49の長手方向に延在する1本のスリット状の孔56を設けたタイヤ接地面形状測定装置では、ドラム本体49上を回転するタイヤ1が所定の試験速度に達すると、ドラム本体49の長手方向一方側で待機するレーザ変位センサーが検出を開始し、検出信号を処理手段71に逐次入力する。
【0042】
処理手段71で上記と同様に検出信号の値を算出し、算出した値が第1閾値x以上あるいはエラー信号であると判定、即ちスリット状の孔56がレーザ変位センサーの照射位置を通過すると、レーザ変位センサーが所定の距離だけ、ドラム本体49の長手方向他方側に移動する。
【0043】
移動後、上記と同様の動作をタイヤ接地面1Eから外れる長手方向他方側の位置まで順次行う。接地面1Eから外れた他方側の位置までレーザ変位センサーが到達し、それを検出すると、支持手段59の作動によりタイヤ1がドラム本体49の幅方向に所定距離だけずれて接地回転する。この状態で、再び、上述と同様の動作をタイヤ接地面1Eから外れる長手方向一方側の位置まで順次行う。以降、タイヤ1がドラム本体49の幅方向に所定距離毎ずれて、スリット状の孔56から外れるまで、レーザ変位センサーにより検出する。このようにしてドラム本体49の長手方向に延在するスリット状の孔56を備えたドラム41と距離センサー5を用いてタイヤ1の接地面形状を測定するようにしても、上記と同様の効果を得ることができる。
【0044】
図10は、ドラム本体49の長手方向に延在するスリット状の孔56をドラム本体49の幅方向及び長手方向に所定の間隔でずらして複数設けたものである。このようにスリット状の孔56を複数本設けた場合、距離センサー5として、ドラム本体49の幅方向に検知可能な2次元のレーザ変位センサーを使用し、ドラム本体49の幅方向及び長手方向に移動可能に構成する。支持手段59は上記と同様にタイヤ1をドラム本体49の幅方向に移動可能な構成とする。
【0045】
この実施形態では、2次元のレーザ変位センサにより複数のスリット状の孔56を介して、ドラム1回転で図9の場合よりも多くの幅方向のデータを取得することができるので、測定効率を高めることができる。
【0046】
複数のスリット状の孔56は、好ましくは、接地するタイヤ1の接地面1Eに対して異なる位置で、かつドラム41が1回転した時にタイヤ接地面全領域を含む領域全体に位置をずらしながら対面するように配置するのがよい。このように接地面1Eの全幅にわたってスリット状の孔56を設けることで、支持手段59によりタイヤ1をドラム本体49の幅方向に移動させることなく、距離センサー5をドラム本体49の長手方向に移動させるだけで、タイヤ1の接地面1Eの形状測定が可能になる。
【0047】
上記スリット状の孔54,56の幅としては、金属製のドラム本体49にタイヤ1を接地させた時の接地特性に影響を与えない範囲であればいずれの寸法であってもよい。好ましくは10mm以下、より好ましくは5mm以下、望ましくは2mm以下がよい。下限値としては、レーザ変位センサーを使用し、低速で測定する場合、0.1mm程度にすることができる。
【0048】
ドラム本体49には、スリット状の孔54,56に代えて、図1に示すような孔33を設けるようにしてもよい。孔33を図1に示すように複数配置するのが好ましいが、支持手段59によりタイヤ1をドラム本体49の幅方向に移動可能に構成した場合には、孔33は少なくとも1つあればよい。
【0049】
上記実施形態では、距離センサー5を1台設置した例を示したが、各測定する位置にそれぞれ距離センサー5を設置するようにしてもよい。各測定する位置に応じて多数の距離センサー5を配置することで、距離センサー5を移動させる構成にする必要がなく、かつタイヤ接地面1Eを迅速に測定することができる。また、低速で測定する場合には、路面体3を平板状の路面体から構成してもよい。
【0050】
距離センサー5に使用するレーザ変位センサーは、孔33の場合にはスポット的に検出する1次元のレーザ変位センサーが使用されるが、スリット状の孔54,56の場合には、1次元のレーザ変位センサーであっても、2次元のレーザ変位センサーであってもよい。好ましくは、2次元のレーザ変位センサーが測定効率を高める上でよい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明のタイヤ接地形状測定装置の一実施形態を示す概略説明図である。
【図2】タイヤを支持する支持手段の一例を示す説明図である。
【図3】(a)はレーザ変位センサーにより検出される3つの例を示す説明図、(b)はその検出信号を示す説明図である。
【図4】表示手段に表示されたタイヤの接地面形状の例を示す説明図である。
【図5】本発明のタイヤ接地形状測定装置の他の実施形態を示す斜視説明図である。
【図6】図5の要部説明図である。
【図7】表示手段に表示されたタイヤの接地面形状の例を示す説明図である。
【図8】幅方向に延在するスリット状の孔をドラム本体に複数設けた例を示す要部斜視図である。
【図9】長手方向に延在するスリット状の孔をドラム本体に設けた例を示す要部斜視図である。
【図10】長手方向に延在するスリット状の孔をドラム本体に複数設けた例を示す要部斜視図である。
【符号の説明】
【0052】
1 タイヤ
1E 接地面
3 路面体
5 距離センサー
27 無端ベルト
29 表面
31 裏面
33 孔
35 処理手段
41 ドラム
49 ドラム本体
51 表面
53 裏面
54,56 スリット状の孔
71 処理手段
a 範囲

【特許請求の範囲】
【請求項1】
裏面側から孔を介して路面体の表面に接地するタイヤまでの距離を距離センサーにより測定し、該距離センサーで検出した距離信号の値が所定の閾値の範囲となる場合、タイヤが路面体に接地した接地面のデータであると判定し、接地面であると判定したデータ群からタイヤの接地面形状を求めるタイヤ接地面形状測定方法。
【請求項2】
タイヤを接地させる表面から裏面に貫通する孔を備えた路面体と、裏面側から孔を介して路面体に接地するタイヤまでの距離を測定する距離センサーと、該距離センサーで検出した距離信号の値が所定の閾値の範囲となる場合、タイヤが路面体に接地した接地面のデータであると判定し、接地面であると判定したデータ群からタイヤの接地面形状を求める処理手段とを具備するタイヤ接地面形状測定装置。
【請求項3】
路面体が回転可能に支持されたドラムまたは無端ベルトである請求項2に記載のタイヤ接地面形状測定装置。
【請求項4】
路面体の幅方向に接地するタイヤの接地面を横断するように複数の孔を配置した請求項3に記載のタイヤ接地面形状測定装置。
【請求項5】
各孔を路面体の長手方向にずらして配置した請求項4に記載のタイヤ接地面形状測定装置。
【請求項6】
路面体の幅方向に延在するスリット状の孔を接地するタイヤの接地面を横断するように設けた請求項3に記載のタイヤ接地面形状測定装置。
【請求項7】
前記スリット状の孔を路面体の長手方向に所定の間隔で複数設けた請求項6に記載のタイヤ接地面形状測定装置。
【請求項8】
路面体の長手方向に延在するスリット状の孔を接地するタイヤの接地面を横断するように設けた請求項3に記載のタイヤ接地面形状測定装置。
【請求項9】
前記スリット状の孔を路面体の幅方向及び長手方向に所定の間隔でずらして複数設けた請求項8に記載のタイヤ接地面形状測定装置。
【請求項10】
路面体に接地させるタイヤを支持する支持手段を有し、該支持手段によりタイヤを路面体の幅方向に移動可能にした請求項8または9に記載のタイヤ接地面形状測定装置。
【請求項11】
前記スリット状の孔を接地するタイヤの接地面に対して異なる位置で、かつ路面体が1回転した時にタイヤ接地面全領域を含む領域全体に位置をずらしながら対面するように配置した請求項9に記載のタイヤ接地面形状測定装置。
【請求項12】
距離センサーを路面体の幅方向及び長手方向に移動可能にした請求項2乃至11のいずれかに記載のタイヤ接地面形状測定装置。
【請求項13】
路面体が非透明な路面体である請求項2乃至12のいずれかに記載のタイヤ接地面形状測定装置。
【請求項14】
距離センサーがレーザ変位センサーである請求項13に記載のタイヤ接地面形状測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−133015(P2006−133015A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−320623(P2004−320623)
【出願日】平成16年11月4日(2004.11.4)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】