説明

タクシー利用者抽出装置及びタクシー利用者抽出方法

【課題】ユーザが携帯する携帯端末を用いて、タクシーを利用するユーザを抽出することが可能なタクシー利用者抽出装置及びタクシー利用者抽出方法を提供する。
【解決手段】タクシー利用者抽出装置10は、ユーザ位置情報蓄積部11に蓄積された複数の携帯端末1から送信されてくる位置、時刻、携帯端末1の識別子を含むポイントデータを用いる。自動車移動抽出部12は、ユーザごとにラインデータを生成し、その中から自動車による移動を示す第1ラインデータを抽出する。非通勤移動抽出部13は、第1ラインデータの中から通勤経路と同一の経路のデータを排除して第2ラインデータを抽出する。非重複軌跡抽出部14は、第2ラインデータの中から、同一時刻、同一経路のデータを排除して第3ラインデータを抽出する。タクシー利用ユーザ抽出部15は、第3ラインデータを形成した携帯端末1の識別子を抽出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯端末から送信される情報を利用してタクシーを利用するユーザを抽出する、タクシー利用者抽出装置及びタクシー利用者抽出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話の普及に伴い、ユーザが携帯する携帯電話からの位置情報を収集、蓄積し、これらの情報を利用した様々なサービスが提供されている。そして、ユーザが携帯する携帯電話から収集することができる位置情報を利用して、ユーザの移動軌跡や移動手段を解析する技術が開示されている。
【0003】
例えば、特許文献1及び特許文献2では、ユーザの移動軌跡、移動速度、鉄道線路および道路の位置情報から、ユーザの移動手段を推定する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−283256号公報
【特許文献2】特開平10−111877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1及び特許文献2における移動手段の推定にあたっては、徒歩、自動車、電車のいずれで移動していることしか推定することができず、携帯電話を使用してタクシーによる移動を抽出することはできない。このため、タクシー事業者等が効率的な配車を計画するにあたって必要な、タクシーを比較的よく利用する人(タクシー利用者)の分布状況等のデータを作成することができなかった。
【0006】
本発明は、係る状況を鑑み、ユーザが携帯する携帯端末から送信される情報を用いて、タクシーを利用するユーザを抽出することが可能なタクシー利用者抽出装置及びタクシー利用者抽出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明のタクシー利用者抽出装置は、複数の携帯端末から送信される情報を用いて、タクシーを利用するユーザを抽出するタクシー利用者抽出装置であって、携帯端末から一定周期で送信される位置と時刻と携帯端末の識別子とを含むユーザ位置情報を蓄積するユーザ位置情報蓄積手段と、ユーザ位置情報蓄積手段に蓄積された位置及び時刻から算出される移動速度に基づいて、ユーザが自動車を利用して移動した軌跡を抽出する自動車移動抽出手段と、ユーザ位置情報蓄積手段に蓄積されたユーザ位置情報に基づいて、同一ユーザが所定期間に所定回数以上移動し、かつ、所定の通勤時間帯に移動した通勤移動軌跡を抽出し、自動車移動抽出手段によって抽出された自動車移動軌跡の中から、通勤移動軌跡に一致しない軌跡を抽出する非通勤移動抽出手段と、非通勤移動抽出手段によって抽出された非通勤移動軌跡の中から、同一時刻、同一経路の数が所定値以下である軌跡を抽出する非重複軌跡抽出手段と、非重複軌跡抽出手段によって抽出された非重複軌跡を形成した携帯端末の識別子を抽出するタクシー利用ユーザ抽出手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明のタクシー利用者抽出方法は、複数の携帯端末から送信される情報を用いて、タクシーを利用するユーザを抽出するタクシー利用者抽出方法であって、携帯端末から一定周期で送信される位置と時刻と携帯端末の識別子とを含むユーザ位置情報が蓄積されるユーザ位置情報蓄積ステップと、ユーザ位置情報蓄積ステップにおいて蓄積された位置及び時刻から算出される移動速度に基づいて、ユーザが自動車を利用して移動した軌跡が抽出される自動車移動抽出ステップと、ユーザ位置情報蓄積ステップにおいて蓄積されたユーザ位置情報に基づいて、同一ユーザが所定期間に所定回数以上移動し、かつ、所定の通勤時間帯に移動した通勤移動軌跡が抽出され、自動車移動抽出ステップにおいて抽出された自動車移動軌跡の中から、通勤移動軌跡に一致しない軌跡が抽出される非通勤移動抽出ステップと、非通勤移動抽出ステップにおいて抽出された非通勤移動軌跡の中から、同一時刻、同一経路の数が所定値以下である軌跡が抽出される非重複軌跡抽出ステップと、非重複軌跡抽出ステップにおいて抽出された非重複軌跡を形成した携帯端末の識別子が抽出されるタクシー利用ユーザ抽出ステップと、を備えることを特徴とする。
【0009】
このようなタクシー利用者抽出装置及びタクシー利用者抽出方法によれば、ユーザ位置情報蓄積手段に蓄積され、複数の携帯端末から一定周期ごとに送信されてくる位置、時刻、携帯端末の識別子を含むユーザ位置情報を用いる。自動車抽出手段は、ユーザごとの軌跡の母集団を作成し、その中から自動車による移動を示す自動車移動軌跡を抽出する。非通勤移動抽出手段は、通勤移動による軌跡を排除して非通勤軌跡を抽出する。非重複移動手段は、同一時刻、同一経路のデータを排除して非重複軌跡を抽出する。タクシー利用ユーザ抽出手段は、このようにして抽出された非重複軌跡を形成した携帯端末の識別子を抽出する。これにより、タクシー利用者抽出装置及びタクシー利用者抽出方法は、タクシーを利用したユーザを特定することができる。
【0010】
なお、本発明のタクシー利用者抽出装置及びタクシー利用者抽出方法では、非通勤軌跡を抽出するにあたって、「非通勤時間帯の移動」という条件だけでなく、「同一経路の繰り返し移動」という条件も考慮している。これにより、同一経路を反復して移動するという通勤経路の特性を加味して、非通勤軌跡を抽出することができる。この結果、通勤軌跡を排除する精度を高めることが可能となる。また、本発明のタクシー利用者抽出装置及びタクシー利用者抽出方法では、非重複軌跡を抽出するにあたって、バスや知人の車に乗って移動したときに発生する事象、すなわち、同一時刻に、異なるユーザによって同一経路が複数形成されるという事象を加味している。これにより、自動車抽出手段で排除できなかった、経路の決まっていないバスや、送迎等に使用されるマイクロバス等による移動、また、知人の自動車による移動等を排除することができる。
【0011】
また、本発明のタクシー利用者抽出装置では、非通勤移動抽出手段は、通勤移動軌跡と自動車移動軌跡との距離を算出し、距離が所定値以下である場合、自動車移動軌跡は通勤移動軌跡に一致すると判定してもよい。ここで、軌跡どうしの距離とは、一方の軌跡から他方の軌跡に対する垂線の長さをいう。すなわち、軌跡どうしの距離が所定値以下とは、この垂線の最大長さが所定値以下であることをいう。これにより、軌跡の一致を容易に判定することができる。
【0012】
また、本発明のタクシー利用者抽出装置では、非通勤移動抽出手段は、自動車移動軌跡の始点及び終点の少なくとも一方における時刻が所定の通勤時間帯の場合、自動車移動軌跡は所定の通勤時間帯に移動したと軌跡であると判定してもよい。これにより、抽出された軌跡が通勤時間帯のものでないことを容易に判定することができる。
【0013】
また、本発明のタクシー利用者抽出装置では、非重複軌跡抽出手段は、非通勤移動軌跡どうしの始点及び終点における時刻がそれぞれ所定時間内にある場合、かつ、非通勤移動軌跡どうしの軌跡の距離を算出し、距離が所定値以下である場合、同一時刻、同一経路の軌跡と判定してもよい。ここで、軌跡どうしの距離とは、一方の軌跡から他方の軌跡に対する垂線の長さをいう。すなわち、軌跡どうしの距離が所定値以下とは、この垂線の最大長さが所定値以下であることをいう。これにより、同一時刻、同一経路の軌跡を容易に判定することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ユーザが携帯する携帯端末から送信される情報を用いて、タクシーを利用するユーザを抽出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の好適な実施形態にかかるタクシー利用者抽出装置の機能構成を示すブロック図である。
【図2】図1のタクシー利用者抽出装置のハードウェア構成を示す図である。
【図3】(a)は、ポイントデータ、(b)は、ラインデータのテーブル構成を示す図である。
【図4】(a)は、第1ラインデータ、(b)は、第2ラインデータ、(c)は、第3ラインデータのテーブル構成を示す図である。
【図5】軌跡の一致を説明する図である。
【図6】軌跡の一致を説明する図である。
【図7】図1のタクシー利用者抽出装置における動作を示すフローチャートである。
【図8】図1のタクシー利用者抽出装置における動作を示すフローチャートである。
【図9】本発明の好適なその他の実施形態における通勤経路ラインデータの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の好適な一実施形態に係るタクシー利用者抽出装置10について、図1〜図8を用いて説明する。なお、図面の説明においては、同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に係るタクシー利用者抽出装置10の機能構成を示すブロック図である。
【0018】
タクシー利用者抽出装置10は、複数の携帯端末1から一定周期で送信される位置と時刻と携帯端末の識別子とを主に含むユーザ位置情報を用いて、携帯端末1を所有するユーザの中からタクシー利用者の抽出を行う装置である。携帯端末1とタクシー利用者抽出装置10とは、移動体通信網、インターネット及びイントラネット等によって構成される通信ネットワークNWを介して、データ通信可能な状態で接続されている。
【0019】
タクシー利用者抽出装置10は、図1に示すように、ユーザ位置情報蓄積部(ユーザ位置情報蓄積手段)11と、自動車移動抽出部(自動車移動抽出手段)12と、非通勤移動抽出部(非通勤移動抽出手段)13と、非重複軌跡抽出部(非重複軌跡抽出手段)14と、タクシー利用ユーザ抽出部(タクシー利用ユーザ抽出手段)15とを含んで構成されている。
【0020】
ここで、図2は、タクシー利用者抽出装置10のハードウェア構成図である。このように、タクシー利用者抽出装置10は、物理的には、同図に示すように、CPU21、主記憶装置であるRAM22及びROM23、入力デバイスである入力キー、マイク等の入力装置24、スピーカ、ディスプレイ等の出力装置25、ハードディスク装置、メモリカード等の補助記憶装置26、NWとの間でのデータの送受信を司る通信モジュール27等を含む情報処理装置として構成されている。タクシー利用者抽出装置10によって実現される機能は、図2に示すCPU21、RAM22等のハードウェア上に所定のプログラムを読み込ませることにより、CPU21の制御のもとで通信モジュール27、入力装置24、出力装置25を動作させるとともに、RAM22や補助記憶装置26におけるデータの読み出し及び書き込みを行うことで実現される。
【0021】
以下、図1を用いて、タクシー利用者抽出装置10の機能について説明する。
【0022】
ユーザ位置情報蓄積部11は、携帯端末1から一定周期で送信される位置と時刻と携帯端末1の識別子とを主に含むポイントデータ(ユーザ位置情報)を蓄積する部分である。なお、ユーザ位置情報蓄積部11は、常時、複数の携帯端末から送信されてくるポイントデータを一定期間保存する。そして、ユーザ位置情報蓄積部11は、例えば、図3(a)に示すような、ポイント識別子、識別子、緯度(位置)、経度(位置)、タイムスタンプ(時刻)を主に含んで形成されるポイントデータテーブルTA1に従ってポイントデータを格納する。なお、ここでいうポイント識別子とは、ユーザ位置情報のIDをいい、識別子とは、それぞれの携帯端末1に付与されているIDをいう。
【0023】
図1に示す、自動車移動抽出部12は、ユーザ位置情報蓄積部11に蓄積された緯度、経度、タイムスタンプといった情報から算出される移動速度に基づいて、自動車を利用して移動したユーザの軌跡を示す第1ラインデータ(自動車移動軌跡)を抽出する。具体的に説明すると、自動車移動抽出部12は、ユーザ位置情報に含まれるポイント識別子(位置)をユーザごとに時系列順に並べ、それらのポイントを直線で結線することによって第1ラインデータを生成する。このとき、ポイント間の速度を、ユーザ位置情報に含まれるタイムスタンプから計算し、移動速度を計算する。次に、移動速度に基づいて徒歩あるいは自転車による移動か否かを判定する。次に、電車路線あるいはバス路線と比較して、バスあるいは電車による移動か否かを判定する。そして、徒歩、自転車、電車、バスのいずれの移動にも該当しないと判定された場合、その移動を自動車による移動と判定する。このように、自動車移動抽出部12は、例えば、図3(b)に示すような、移動状態判定完了時刻、ライン識別子、識別子、移動状態、始点(ポイント識別子)、終点(ポイント識別子)を主に含んで形成されるラインデータテーブルTA2に従って格納されたラインデータから、移動状態が「01」のデータのみを抽出する。なお、図3(a)の項目の一つである移動状態判定完了時刻は、各ラインデータが生成された時刻を示す。また、図3(b)の移動状態の項目に表示されている「01」は自動車による移動を表すコード、「02」は電車による移動を表すコード、「03」は徒歩による移動を表すコードである。そして、自動車移動抽出部12は、図4(a)に示すような、移動状態判定完了時刻、ライン識別子、識別子、移動状態、始点(ポイント識別子)、終点(ポイント識別子)を主に含んで形成される第1ラインデータテーブルTA3に従って第1ラインデータを格納する。なお、図4(a)の項目の一つである移動状態判定完了時刻は、各第1ラインデータが生成された時刻を示す。また、図4(a)の移動状態の項目に表示されている「01」は、自動車による移動を表すコードである。また、ここでいうライン識別子とは、第1ラインデータのIDをいう。
【0024】
図1に示す、非通勤移動抽出部13は、ユーザ位置情報蓄積部11に蓄積されたポイントデータに基づいて、同一ユーザが所定期間(例えば、1ヶ月)に所定回数(例えば、15回)以上移動し、かつ、所定の通勤時間帯(例えば、7:00〜9:00、17:00〜20:00)に移動した軌跡を示す通勤ラインデータ(通勤移動軌跡)を抽出する。そして、自動車移動抽出部12によって抽出された第1ラインデータの中から、通勤ラインデータと経路が一致しないデータ(第2ラインデータ(非通勤移動軌跡))を抽出する。なお、自動車移動抽出部12によって抽出された第2ラインデータは、例えば、図4(b)に示すように、移動状態判定完了時刻、ライン識別子、識別子、移動状態、始点(ポイント識別子)、終点(ポイント識別子)を主に含んで形成される第2ラインデータテーブルTA4に従って格納される。なお、ここでいうライン識別子とは、第2ラインデータのIDをいう。
【0025】
ここで、図1に示す、非通勤移動抽出部13は、非通勤経路を抽出するにあたって、「非通勤時間帯の移動」という条件だけでなく、「同一経路の繰り返し移動」という条件も考慮する。これにより、同一経路を反復して移動するという通勤経路の特性を加味して、通勤ラインデータを抽出することができる。この結果、通勤経路を排除する精度を高めることが可能となる。
【0026】
ここで、非通勤移動抽出部13が、第1ラインデータと通勤ラインデータとを比較して、同一経路と判定する方法の一例について、図5,図6を用いて説明する。
【0027】
非通勤移動抽出部13は、第1ラインデータと通勤ラインデータとの距離を算出し、その距離が所定値以下である場合、第1ラインデータは通勤ラインデータに一致すると判定する。図5に示すように、通勤ラインデータL1があるとする。次に、図6に示すように、通勤ラインデータL1の始点及び終点から所定の距離に存在するポイント(PB1、PB2、PE1、PE2)を有する第1ラインデータL2,L3を抽出する。次に、図6に示すように、通勤ラインデータL1を中心に距離がbのバッファエリアAを生成させる。このとき、そのバッファエリアAに含まれる第1ラインデータL3が通勤ラインデータL1と同一経路であると判定する。
【0028】
また、非通勤移動抽出部13が、第1ラインデータが通勤時間帯に移動したデータであることを判定する方法の一例について説明する。非通勤移動抽出部13は、第1ラインデータの始点及び終点の少なくとも一方における時刻が所定の通勤時間帯(例えば、7:00〜9:00、17:00〜20:00)の場合、その第1ラインデータは通勤時間帯に移動したとデータであると判定することができる。本実施形態においては、始点の時刻(第1ラインデータの始点ポイント識別子に対応するタイムスタンプ)をキーに抽出する。
【0029】
図1に示す、非重複軌跡抽出部14は、非通勤移動抽出部13によって抽出された第2ラインデータの中から、異なるユーザによって形成される同一経路、同一時刻のデータの数を算出する。これにより、多くの人が同時に移動したことを示すデータを抽出することができる。そして、非重複軌跡抽出部14は、第2ラインデータの中から異なるユーザによって形成される同一経路、同一時刻のデータの数が所定値より多いデータを排除(所定値以下であるデータを抽出)して、第3ラインデータ(非重複軌跡)を抽出する。なお、第3ラインデータは、例えば、図4(c)に示すように、移動状態判定完了時刻、ライン識別子、識別子、移動状態、始点(ポイント識別子)、終点(ポイント識別子)を主に含んで形成される第3ラインデータテーブルTA5に従って格納される。なお、ここでいうライン識別子とは、第3ラインデータのIDをいう。
【0030】
これにより、バスによって移動したときに発生する事象、すなわち、同一時刻、同一経路を形成するユーザが複数発生するという事象を加味することができるので、バスによる移動や、知人の車に同乗しての移動を排除することができる。この結果、バスによる移動を排除できることは、自動車移動抽出部12において排除できなかった、例えば、バス路線が未知のバスを利用した移動や、経路の決まっていないバス(送迎バス等)を利用した移動を排除することができる。
【0031】
ここで、第2ラインデータどうしを比較して、同一経路と判定する方法の一例について、図5,図6を用いて説明する。非重複軌跡抽出部14は、第2ラインデータどうしの始点及び終点における時刻がそれぞれ所定時間内にある場合、かつ、第2ラインデータどうしの距離を算出し、その距離が所定値以下である場合、同一時刻、同一経路と判定する。図5に示すように、一方の第2ラインデータL1があるとする。次に、図6に示すように、第2ラインデータL1の始点及び終点から所定の距離に存在するポイント(PB1、PB2、PE1、PE2)を有する第2ラインデータL2,L3を抽出する。次に、図6に示すように、第2ラインデータL1を中心に距離がbのバッファエリアAを生成させる。このとき、そのバッファエリアAに含まれる第2ラインデータL3を第2ラインデータL1と同一経路と判定する。また、第2ラインデータL1の始点PBにおける時刻(移動状態判定完了時刻)と第2ラインデータL2の始点PB1における時刻(移動状態判定完了時刻)とが所定時間内(例えば、1分)以下である場合、同一時刻と判定する。
【0032】
図1に戻り、タクシー利用ユーザ抽出部15は、非重複軌跡抽出部14によって抽出された第3ラインデータ(非重複軌跡)を形成した携帯端末1の識別子を特定する。具体的には、図4(c)に示すようなテーブル構造に格納されているデータから識別子をキーとして抽出する。これにより、その識別子から特定される携帯端末のユーザを特定することができる。この結果、利用頻度(例えば、第3ラインデータテーブルに格納されているレコード数)等を考慮することにより、タクシー利用頻度の高いユーザを特定することが可能となる。
【0033】
以下、図7、図8を用いて、タクシー利用者抽出装置10においてタクシーによる移動を判定する手順について説明する。
【0034】
図7に示すように、最初に、タクシー利用者抽出装置10は、ユーザの移動軌跡を示すデータを生成する(ステップS01)。具体的には、自動車移動抽出部12が、ユーザ位置情報蓄積部11に蓄積されている位置と時刻と携帯端末1の識別子とが含まれる、図3(a)に示すようなテーブルに従って格納されたポイントデータ(ユーザ位置情報)に基づいて、ユーザごとのラインデータを生成する。なお、ラインデータは、図3(b)に示すような、移動状態判定完了時刻、ライン識別子、識別子、移動状態、始点(ポイント識別子)、終点(ポイント識別子)を主に含んで形成されるラインデータテーブルTA2に従ってラインデータを格納する。なお、図3(b)の項目の一つである移動状態判定完了時刻は、各ラインデータが生成された時刻を示す。また、図3(b)の移動状態の項目に表示されている、「01」は自動車による移動を表すコード、「02」は電車による移動を表すコード、「03」は徒歩による移動を表すコードである。また、ここでいうライン識別子とは、ラインデータのIDをいう。
【0035】
次に、図7に示すように、タクシー利用者抽出装置10は、ステップS01において生成されたラインデータの移動状態が自動車によるものかどうかを判定する(ステップS02)。具体的には、自動車移動抽出部12が、図8に示すフローチャートに従って、ステップS02における判定を実行する。
【0036】
すなわち、ステップS01において生成されたラインデータについて、時系列的に連続するポイント間の速度の計算を行う(ステップS11)。
【0037】
次に、ステップS11で計算された速度から、その間の移動が徒歩かどうかを判定する(ステップS12)。例えば、時速3km〜時速5kmの場合、徒歩による移動と判定する。ここで、徒歩による移動と判定された場合には、徒歩による移動であることをラインデータに付与する(ステップS13)。例えば、徒歩による移動である場合(ステップS12:YES)には、図3(b)に示すように、移動状態の項目に徒歩のコードである「03」を付与する。
【0038】
次に、ステップS12において、その移動方法が徒歩によるものではないと判定された場合(ステップS12:NO)には、その移動が自転車によるものかどうかを判定する(ステップS14)。例えば、時速5km〜時速20kmの場合、自転車による移動と判定する。ここで、自転車による移動と判定された場合(ステップS14:YES)には、自転車による移動であることをラインデータに付与する(ステップS13)。
【0039】
次に、ステップS14において、その移動方法が自転車によるものではない判定された場合(ステップS14:NO)には、その移動が電車によるものかどうかを判定する(ステップS15)。例えば、電車路線と比較し、ラインデータと重なっていれば電車による移動と判定する。ここで、電車による移動と判定された場合(ステップS15:YES)には、電車による移動であることをラインデータに付与する(ステップS13)。
【0040】
次に、ステップS15において、その移動方法が電車によるものではない判定された場合(ステップS15:NO)には、その移動がバスによるものかどうかを判定する(ステップS16)。例えば、バス路線と比較し、ラインデータと重なっていればバスによる移動と判定する。ここで、バスによる移動と判定された場合(ステップS16:YES)には、バスによる移動であることをラインデータに付与する(ステップS13)。
【0041】
次に、ステップS16において、その移動方法がバスによるものではない判定された場合(ステップS16:NO)、その移動が自動車によるものであると判定し(ステップS17)、自動車による移動であることをラインデータに付与する(ステップS13)。
【0042】
以上、ステップS11〜ステップS17によって、自動車による移動を判定することができる。タクシー利用者抽出装置10は、図7に示すように、自動車以外による移動であると判定された場合(ステップS02:自動車以外)には、タクシーによる移動ではないと判定(ステップS03)して処理を終了する。一方、自動車による移動であると判定された場合(ステップS02:自動車)には、図4(a)に示すようなテーブルに従ってデータ(第1ラインデータ)を格納する(ステップS04)。なお、自動車移動抽出部12は、図3(b)に示すようなデータの中から移動状態が「01」のデータを抽出し、図4(a)に示すように移動状態が「01」のデータのみを格納する。
【0043】
次に、図7に示すように、タクシー利用者抽出装置10は、ステップS04において格納された第1ラインデータの中から、通勤経路と異なるデータを抽出する(ステップS05)。具体的には、非通勤移動抽出部13は、ユーザ位置情報蓄積部11に蓄積されたユーザ位置情報に基づいて、ユーザごとに、自動車で過去数ヶ月(例えば、1ヶ月)で閾値回数(例えば、15回)以上移動したラインデータk(k=1,2,3,・・・,N)を抽出し、さらに、ラインデータkの中から通勤時間帯(例えば、7:00〜9:00、17:00〜20:00)に移動したラインデータsを抽出する。そして、非通勤移動抽出部13は、ラインデータs(s=1,2,3,・・・,N)を通勤ラインデータとして記憶する。次に、自動車移動抽出部12によって抽出された第1ラインデータの中から、通勤ラインデータと経路が一致するデータを排除して第2ラインデータを抽出する。
【0044】
ここで、第1ラインデータの中から通勤経路と一致すると判定された(ステップS05:通勤経路)データは、タクシーによる移動ではないと判定(ステップS03)され処理を終了する。一方、通勤経路でないと判定された(ステップS05:通勤経路以外)データは、図4(b)に示すようなテーブルに従って第2ラインデータとして格納される(ステップS06)。なお、非通勤移動抽出部13は、図4(a)に示すようなデータの中から、ラインデータs(例えば、1ヶ月に15回、通勤時間帯に移動した経路)と一致するデータを排除した、図4(b)に示すようなデータのみを格納する。
【0045】
次に、図7に示すように、ステップS06において格納された第2ラインデータの中から、異なるユーザによる重複経路を排除する(ステップS07)。具体的には、非重複軌跡抽出部14が、例えば、第2ラインデータの中から、同一時刻、同一経路の軌跡の数が所定の閾値(例えば、2データ)より大きいデータを排除して第3ラインデータを抽出する。ここで、閾値以上と判定された(ステップS07:YES)データは、タクシーによる移動ではないと判定(ステップS03)される。一方、閾値より小さいと判定された(ステップS07:NO)データは、図4(c)に示すようなテーブルに従ってデータ(第3ラインデータ)を格納される(ステップS08)。なお、非重複軌跡抽出部14は、図4(b)に示すようなデータの中から、例えば、ライン識別子「007」のデータが重複していると判定された場合には、そのデータを排除した図4(c)に示すようなデータのみを格納する。
【0046】
次に、図7に示すように、第3ラインデータとして格納されたデータをタクシーによる移動と判定し、第3ラインデータに含まれる携帯端末1の識別子を抽出し、その携帯端末1のユーザを特定する(ステップS09)。
【0047】
以上、ステップS01〜ステップS09を実行することによって、ユーザ位置情報蓄積部11に蓄積されたデータ、すなわち、携帯端末1から送信されてくるデータを利用して、タクシー利用ユーザを特定することが可能となる。この結果、利用頻度等を考慮することにより、タクシー利用頻度の高いユーザを特定することが可能となる。
【0048】
本実施形態のタクシー利用者抽出装置10では、ユーザ位置情報蓄積部11に蓄積された複数の携帯端末1から一定周期ごとに送信されてくる位置、時刻、携帯端末1の識別子を含むポイントデータを用いる。自動車移動抽出部12は、ユーザごとにラインデータを生成し、その中から自動車による移動を示す第1ラインデータを抽出する。非通勤移動抽出部13は、第1ラインデータの中から通勤経路と同一の経路のデータを排除して第2ラインデータを抽出する。非重複軌跡抽出部14は、第2ラインデータの中から、同一時刻、同一経路のデータを排除して第3ラインデータを抽出する。タクシー利用ユーザ抽出部15は、このようにして抽出された第3ラインデータを形成した携帯端末1の識別子を抽出する。これにより、タクシー利用者抽出装置10は、タクシーを利用したユーザを特定することができる。
【0049】
なお、本実施形態のタクシー利用者抽出装置10では、第2ラインデータを抽出するにあたって、「非通勤時間帯の移動」という条件だけでなく、「同一経路の繰り返し移動」という条件も考慮している。これにより、同一経路を反復して移動するという通勤経路の特性を加味して、第2ラインデータを抽出することができる。この結果、通勤軌跡を排除する精度を高めることが可能となる。また、本実施形態のタクシー利用者抽出装置10では、第3ラインデータを抽出するにあたって、バスや知人の車に乗って移動したときに発生する事象、すなわち、同一時刻に、異なるユーザによって同一経路が複数形成されるという事象を加味している。これにより、自動車移動抽出部12で排除できなかった、経路の決まっていないバスや、送迎等に使用されるマイクロバス等による移動、また、知人の自動車による移動等を排除することができる。
【0050】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0051】
上記実施形態のタクシー利用者抽出装置10では、ステップS05において、非通勤移動抽出部13は、ユーザ位置情報蓄積部11に蓄積されたユーザ位置情報に基づいて、ユーザごとに、自動車で過去数ヶ月(例えば、1ヶ月)で閾値回数(例えば、15回)以上移動したラインデータk(k=1,2,3,・・・,N)を抽出し、さらに、ラインデータkの中から通勤時間帯(例えば、7:00〜9:00、17:00〜20:00)に移動したラインデータsを抽出する例を挙げて説明したが、これに限られるものではない。
【0052】
例えば、タクシー利用者抽出装置10では、ステップS05において、非通勤移動抽出部13は、ユーザ位置情報蓄積部11に蓄積されたユーザ位置情報に基づいて、ユーザごとに、自動車で過去数ヶ月(例えば、1ヶ月)で閾値回数(例えば、15回)以上移動したラインデータk(k=1,2,3,・・・,N)を抽出し、さらに、ラインデータkを同じ経路を利用するグループに分け、そのグループ毎に平均通勤時間帯を算出し、算出された平均時間帯に基づいてラインデータsを抽出してもよい。すなわち、非通勤移動抽出部13は、個人あるいは通勤経路によって異なるそれぞれの通勤時間帯を算出し、算出されたそれぞれの通勤時間帯に移動したと判定されたとき、そのデータを通勤時間帯の経路として抽出する。
【0053】
なお、個人あるいは通勤経路によって異なるそれぞれの通勤時間帯(移動開始時間、移動終了時刻)は、統計処理を行い、例えば、80%の信頼区間とする。そして、抽出されたラインデータsは、図9に示すような、通勤経路ライン識別子、識別子、始点緯度、始点経度、終点緯度、終点経度、移動開始時間帯、移動終了時間帯、を主に含んで形成される通勤ラインデータテーブルTA6に従って格納される。なお、図9に示すテーブルの項目の1つである通勤経路ライン識別子とは通勤ラインデータのIDをいい、識別子とは、それぞれの携帯端末1に付与されているIDをいう。
【0054】
そして、自動車移動抽出部12によって抽出された第1ラインデータの中から、通勤ラインデータテーブルTA6に従って格納された通勤ラインデータと経路が一致するデータを排除して第2ラインデータを抽出する。これにより、通勤時間帯に移動したラインデータsを抽出する精度を高めることができる。
【符号の説明】
【0055】
1…携帯端末、10…タクシー利用者抽出装置、11…ユーザ位置情報蓄積部、12…自動車移動抽出部、13…非通勤移動抽出部、14…非重複軌跡抽出部、15…タクシー利用ユーザ抽出部、21…CPU、22…RAM、23…ROM、24…入力装置、25…出力装置、26…補助記憶装置、27…通信モジュール、NW…通信ネットワーク、L1,L2,L3…ラインデータ、PB,PB1,PB2…始点、PE,PE1,PE2…終点、TA1…ポイントデータテーブル、TA2…ラインデータテーブル、TA3…第1ラインデータテーブル、TA4…第2ラインデータテーブル,TA5…第3ラインデータテーブル、TA6…通勤ラインデータテーブル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の携帯端末から送信される情報を用いて、タクシーを利用するユーザを抽出するタクシー利用者抽出装置であって、
前記携帯端末から一定周期で送信される位置と時刻と前記携帯端末の識別子とを含むユーザ位置情報を蓄積するユーザ位置情報蓄積手段と、
前記ユーザ位置情報蓄積手段に蓄積された位置及び時刻から算出される移動速度に基づいて、ユーザが自動車を利用して移動した軌跡を抽出する自動車移動抽出手段と、
前記ユーザ位置情報蓄積手段に蓄積された前記ユーザ位置情報に基づいて、同一ユーザが所定期間に所定回数以上移動し、かつ、所定の通勤時間帯に移動した通勤移動軌跡を抽出し、前記自動車移動抽出手段によって抽出された自動車移動軌跡の中から、前記通勤移動軌跡に一致しない軌跡を抽出する非通勤移動抽出手段と、
前記非通勤移動抽出手段によって抽出された非通勤移動軌跡の中から、同一時刻、同一経路の数が所定値以下である軌跡を抽出する非重複軌跡抽出手段と、
前記非重複軌跡抽出手段によって抽出された非重複軌跡を形成した前記携帯端末の識別子を抽出するタクシー利用ユーザ抽出手段と、
を備えることを特徴とする、タクシー利用者抽出装置。
【請求項2】
前記非通勤移動抽出手段は、前記通勤移動軌跡と前記自動車移動軌跡との距離を算出し、前記距離が所定値以下である場合、前記自動車移動軌跡は前記通勤移動軌跡に一致すると判定する、
請求項1に記載のタクシー利用者抽出装置。
【請求項3】
前記非通勤移動抽出手段は、前記自動車移動軌跡の始点及び終点の少なくとも一方における前記時刻が所定の通勤時間帯の場合、前記自動車移動軌跡は前記所定の通勤時間帯に移動した軌跡であると判定する、
請求項1または2に記載のタクシー利用者抽出装置。
【請求項4】
前記非重複軌跡抽出手段は、前記非通勤移動軌跡どうしの始点及び終点における前記時刻がそれぞれ所定時間内にある場合、かつ、非通勤移動軌跡どうしの軌跡の距離を算出し、前記距離が所定値以下である場合、同一時刻、同一経路の軌跡と判定する、
請求項1から3のいずれか1項に記載のタクシー利用者抽出装置。
【請求項5】
複数の携帯端末から送信される情報を用いて、タクシーを利用するユーザを抽出するタクシー利用者抽出方法であって、
前記携帯端末から一定周期で送信される位置と時刻と前記携帯端末の識別子とを含むユーザ位置情報が蓄積されるユーザ位置情報蓄積ステップと、
前記ユーザ位置情報蓄積ステップにおいて蓄積された位置及び時刻から算出される移動速度に基づいて、ユーザが自動車を利用して移動した軌跡が抽出される自動車移動抽出ステップと、
前記ユーザ位置情報蓄積ステップにおいて蓄積された前記ユーザ位置情報に基づいて、同一ユーザが所定期間に所定回数以上移動し、かつ、所定の通勤時間帯に移動した通勤移動軌跡が抽出され、前記自動車移動抽出ステップにおいて抽出された自動車移動軌跡の中から、前記通勤移動軌跡に一致しない軌跡が抽出される非通勤移動抽出ステップと、
前記非通勤移動抽出ステップにおいて抽出された非通勤移動軌跡の中から、同一時刻、同一経路の数が所定値以下である軌跡が抽出される非重複軌跡抽出ステップと、
前記非重複軌跡抽出ステップにおいて抽出された非重複軌跡を形成した前記携帯端末の識別子が抽出されるタクシー利用ユーザ抽出ステップと、
を備えることを特徴とする、タクシー利用者抽出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−250673(P2010−250673A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−100893(P2009−100893)
【出願日】平成21年4月17日(2009.4.17)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】