説明

タービン又はコンプレッサ装置内の支持構造部及びその構造部の組み立て方法

本発明は、ステータ部材(1)内にロータ部材(2)を回転可能に支持するための、タービン又はコンプレッサエンジン内の支持構造部及びその構造部の組み立て方法に関する。支持構造部は、内側リングと、外側リングと、内側リング及び外側リング間に半径方向に延在する複数のストラット(15)とを備える。内側リングは、ストラットの方向に突出してストラット用の端部接続部を形成する一体型部分を有する。内側リングの一体型端部接続部分(19)はリングと共に、最初に対応のストラットの断面寸法より大きめの断面寸法を有する金属合金を鋳造し、少なくとも1つの横表面の材料除去加工を施す。各対応のストラット(15)の断面寸法及び適正位置に一致するための最終寸法及び位置を達成することを目的とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文に従ったタービン又はコンプレッサ装置内の支持構造部に関する。
【0002】
本発明はさらに、請求項4の前文に従った、そのような支持構造部の組み立て方法に関する。
【0003】
タービン装置という用語は、流動する流体(ガス、蒸気又は液体)内に存在するエネルギーをブレード又はベーンによって回転エネルギーに変換する装置を意味するものとする。コンプレッサ装置という用語は、逆の機能を有する、すなわち回転エネルギーをブレード又はベーンによって流体内の運動エネルギーに変換する装置を意味するものとする。装置は、互いに相互作用するロータ及びステータを備える。
【0004】
以下の説明では、装置はタービン装置を有し、これはガスタービンの一部を形成している。これは好適であるが、決して本発明の制限的な用途ではない。ガスタービンという用語は、少なくともタービンホイール及びそれによって駆動されるコンプレッサホイールを燃焼室と共に有するユニットを意味するものとする。ガスタービンは、たとえば車両及び航空機のエンジンとして、船用の原動機として、また発電所で発電するために使用される。
【0005】
ロータは、半径方向ロータ及び軸方向ロータの両方の形をとることができる。
【0006】
本明細書において細長いロータ部材という用語は、ロータ軸と、ロータ軸を中心にして回転するようにした、軸受けや軸受け及び歯車間のスペーサなどのさらなる構成部品を意味するものとする。
【背景技術】
【0007】
タービン又はコンプレッサ内のステータ部材内にロータ部材を支持すると共に、エンジン内を通るガスの必要な高速流を可能にするために、支持構造部は、多数の半径方向内側及び外側支持リングを備え、内側及び外側リングは、半径方向に延びたストラットによって相互連結されている。たとえば特許文献1に示されているように、ストラットの少なくとも一部の下流側に、フラップエーロフォイルが配置されており、ストラット及び対応のフラップ間の相互関係には、ストラットの完全な位置決めが必要である。さまざまな理由から、内側及び外側支持リングは、金属合金の鋳造によって個別部品として製造されることが好ましい。ストラットは、金属合金押し出し成形により、又は個別部品として板金から形成し、それらを各端部で内側リング及び外側リングと溶接又はろう付けすることによって組み立てることにより製造されることができる。しかしながら、鋳造には通常、大きい許容誤差や、フラップエーロフォイルに対するストラットの正確な位置決めに関する問題が伴う。
【特許文献1】米国特許第6619916号明細書
【発明の開示】
【0008】
本発明の目的は、内側及び外側リング間にストラットを正確に位置決めすることができる支持構造部を提供することである。
【0009】
この目的は、請求項1の特徴部分に従った支持構造部によって達成される。
【0010】
この目的はさらに、請求項4の特徴部分に従った支持構造部の組み立て方法によって達成される。
【0011】
内側及び/又は外側リングの大きめの一体型突出部分を形成し、各ストラットの正確な位置を決定し、その後、突出部分をその位置及び寸法に関して、各突出部分の一部の材料除去加工によって最終的に決定することができる。
【0012】
添付の図面に示されているような実施形態を参照しながら、本発明をより詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は、ステータ1と、ステータ内に回転可能に軸支されたロータ2とを有するガスタービンを示す。ステータは、多数のファンからなるファンユニット3、多数のコンプレッサ段落からなるコンプレッサユニット4、燃焼室5、及び多数のタービンからなるタービンユニット6などの、本質的に既知のさまざまなユニットからなり、かつそれらを包囲している。ステータは、入口端部8及び出口端部9を有する管状ハウジング7を備える。ステータはさらに、ロータ2を支持するための支持構造部10、11を備える。たとえば、支持構造部は、入口端部に入口部分10を形成し、出口端部9に出口部分11を形成することができる。2つの支持構造部10、11は、さらなる支持構造部と組み合わされて、すべての支持構造部が、ロータの回転軸12用の軸受けを支持する。
【0014】
さらに図2及び図3を参照すると、本発明による支持構造部であって、図示の実施形態の入口部分10を形成している支持構造部が描かれており、主に半径方向内側支持リング13及び半径方向外側支持リング14を複数の半径方向延出ストラット15によって相互連結して構成されている。内側リング13、外側リング14及び各ストラット15は、単一ユニットとして個別に製造される。図3は、貫通穴17を包囲し、ロータの回転軸12用の軸受け(図示せず)のための支持部を形成する内周面16を有する個別の内側リング13を示す。内側リング13はさらに、好ましくは円錐形マントル面の形状を有する外周面18を有し、それから複数のスタブ端部19が、各ストラット15に対して1つずつ、半径方向外向きに突出している。スタブ端部は、内側リング13の、さらに外側リング14の一体型突出部分を形成している。
【0015】
入口部分10が、内部ダクト又はチャネル20、21、22、23を形成する中空構造を有することは、図面から明かである。外側リング内で、ダクト20が、図1に示されているように、ステータ1の管状部分23に当てて取り付けた状態で閉鎖される環状ダクトとして形成される。同様に、内側リング13は、軸受けの外周部分と接してダクト23を形成する。ストラット15と内側リング13及び外側リング14から突出しているスタブ端部19とによって、閉鎖ダクト21、22が形成されている。ダクトの目的は、加熱空気がストラット及び内側リングを通って流れ、それにより、ノーズコーン24、ストラット15、及び内側リング13によって形成されたハブ上の着氷を防止できるようにすることである。また、図8に示されている可動フラップエーロフォイル25上に着氷する危険性も防止されるであろう。熱エネルギーの差の結果として、外側リング14は入口部分の残り部分より高温であり、ストラットや内側リングなどの入口部分のその他の部分と比べて膨張し、その結果、構造部のすべての部分が耐えなければならない応力が発生する。内側及び外側リング13、14の一体型部分を形成するスタブ端部19を設けることにより、十分に高い抗張力を有する溶接結合部が得られるであろう。
【0016】
内側リング13は好ましくは、入口部分10のストラット15を位置決めするための前提条件の高い要求を満たさない許容誤差を通常伴う金属合金の鋳造物として形成される。さらに、スタブ端部19とストラットとの間の連続的かつ段差なしの移行が、空気力学上の持続的な高い要求にとって非常に重要である。また、軽量であることも、非常に重要である。
【0017】
上記要求を満たすために、本発明によれば、スタブ端部は、図4及び図5に破線で示されているように、スタブ端部19の横方向寸法、すなわちストラット15の長手方向を横切る寸法に関して、最初は大きめの寸法を有するように鋳造することによって製造される。スタブ端部及びストラットが中空構造であることにより、上記部分は、壁部分26、27、28、29、すなわち包囲壁部分と、図示の例では、ダクト21、22を分離する横方向仕切壁部分30とによって構成される。仕切壁部分はスタブ端部内に示されているが、各ストラット15内に対応の仕切壁部分が存在している。大きめの寸法という表現の意味することは、図4及び図5に示されている上記の初期横方向寸法a又はcが、ロータ2の軸12の長手軸線に対してステータの半径方向平面で見たとき、対応のストラット15の横方向寸法bを明らかに超えていることである。
【0018】
鋳造作業を完了した後、スタブ端部19の形状及び寸法を各個別のストラット15の形状及び寸法に適合させ、それにより、スタブ端部の端部エッジ31とストラット15の対応の端部エッジ33、34との間に連続的かつ段差のない移行が得られ、さらにストラット15を入口部分10内及び対応のフラップ25に対して非常に正確に位置決めできるようにするために、入口部分の鋳造部品、すなわち、内側リング13と、おそらくは外側リング14とに対して、材料加工による1つ又は2つのさらなる寸法出し作業を加える。ストラットの相対位置決めを非常に小さい許容誤差で行い、それにより、フラップの背後のファンに伝搬してベーンの破壊を生じるエクサイテーションを発生させる可能性があるストラット及びフラップ間の段差を避けることが最も重要である。
【0019】
図4は、材料をスタブ端部19の両側面35、36から、またスタブ端部の向き合った内側面37、38からも除去することによる横方向寸法の減少及びストラットの適正位置への適応を示す。おそらく、内側面からの材料は省くことができる。
【0020】
図5は、特にストラットの位置決めに関して考えられる最悪の許容誤差結果を有する極端な状況を示す。スタブ端部の壁27の外側36及びスタブ端部の対向壁26の内側37の一方で、比較的大量の材料が除去されるであろう。材料の除去は好ましくは、たとえば放電加工(EDM)又は電解加工(ECM)又はフライス加工によって行われる。EDMは、火花発生のために不導液内でパルス直流を使用して、ストラットの壁を加工する。ECMは、電気エネルギーを使用し、それにより、金属をストラットから電解溶液内へ溶解させる化学反応を生じる。
【0021】
図6は、フライス盤又はEDM装置などのコンピュータ制御加工機40によってスタブ端部19の壁面から材料を除去するための固定具39内に内側リング13を取り付ける配置を概略的に示す。装置は、各最終表面位置決めの座標を含む入力データに基づいて、1つのスタブ端部上の、入力データから避けるすべての壁面で最終結果が達成されるまで、続いて次のスタブ端部に取り掛かるなど、すべてのスタブ端部について加工が完了するまで、動作する。ストラット15は、材料の除去前に適正に位置決めされて、スタブ端部19に仮留めされ、また別法として、ストラットは材料除去作業後に位置決めされて、各スタブ端部19及び対応のストラット15の端部エッジ31〜34間の接合部全体に沿って連続溶接が行われる。ストラットの外端部では、外側リング14から内向きに突出したスタブ端部41の間で同様の接合面が溶接される。このリング14は通常、大きめの寸法にした後に材料加工を行う必要がない、たとえばECMによって小さい許容誤差で製造されることができる。しかしながら、原則的には本発明による同じ方法を、外側リング14のスタブ端部にも適用することができる。
【0022】
図8は、ストラット15の1つの背後のフラップ25の相対位置付けを示している。フラップ25は、ストラットから離してステータ1の構造部に取り付けられ、図示の例では、半径方向に延びる軸線42に対して回動式に軸支されている。さらに、ストラット及びフラップは対称的な形状又は配置にないが、それらの位置の相対関係を非常に小さい許容誤差で整えなければならないことは明かである。
【0023】
発明をその好適な実施形態に関して図示し、説明してきたが、発明の範囲から逸脱しない限り、発明の形及び詳細に他のさまざまな変化及び省略を加えてもよいことは、当業者に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明による支持構造部を備えることができるガスタービンエンジンの概略破断図である。
【図2】支持構造部の斜視図である。
【図3】支持構造部の端面図である。
【図4】支持構造部の一部分の破断した拡大断面図である。
【図5】支持構造部の一部分の破断した拡大断面図である。
【図6】本発明による方法を達成するための装置の概略図である。
【図7】本発明の支持構造部の内側リングの一部を形成するスタブ端部分の斜視図である。
【図8】ストラット、及びストラットの下流側に配置されたフラップエーロフォイルの断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータ部材(1)内にロータ部材(2)を回転可能に支持するための、タービン又はコンプレッサエンジン内の支持構造部において、内側リング(13)と、外側リング(14)と、内側リング及び外側リング間に半径方向に延在する複数のストラット(15)とを備え、リングの少なくとも一方が、ストラットの方向に突出してストラット用の端部接続部を形成する一体型部分を有する、支持構造部であって、本リング(複数可)の前記一体型端部接続部分(19)はリングと共に、最初に対応のストラットの断面寸法より大きめの断面寸法を有する金属合金を鋳造し、少なくとも1つの横表面の材料除去加工であって、それにより、各対応のストラットの断面寸法及び適正位置に一致するための最終寸法及び位置を達成できるようにする、材料除去加工を施すことによって形成されることを特徴とする、支持構造部。
【請求項2】
前記ストラット(15)及び端部接続部分(19)は、壁(26、27、30)によって包囲されたダクト(21、22)を有し、前記壁は、最終寸法及び位置決めが得られるように、外側及び/又は内側が加工されることを特徴とする、請求項1に記載の支持構造部。
【請求項3】
フラップエーロフォイル(25)が、1つ又は幾つかのストラット(15)の下流側に回動式に取り付けられる、請求項1又は2に記載の支持構造部。
【請求項4】
ステータ部材(1)内にロータ部材(2)を回転可能に支持するための、タービン又はコンプレッサエンジン内の支持構造部であって、内側リング(13)と、外側リング(14)と、内側リング及び外側リング間に半径方向に延在する複数のストラット(15)とを備え、リングの少なくとも一方が、ストラットの方向に突出してストラット用の端部接続部分(19、41)を形成する一体型部分を有する、支持構造部を組み立てる方法であって、本リング(複数可)の前記一体型端部接続部分(19、41)をリングと共に、最初に対応のストラット(15)の断面寸法(b)より大きめの断面寸法(a/c)を有する金属合金によって鋳造し、それに続いて、少なくとも1つの横表面(35〜38)の材料除去加工であって、それにより、各対応のストラットの断面寸法(b)及び適正位置に一致するための最終寸法及び位置を達成できるようにする、材料除去加工を施すことを特徴とする方法。
【請求項5】
前記材料除去加工は、放電加工(EDM)によって行われることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記材料除去加工は、電解加工(ECM)によって行われることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記端部接続部分(19)は、内側リング(13)の半径方向外向き突出部分であることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記ストラット(15)は、壁部分(26〜29)によって包囲されたダクト(21、22)を備えており、壁部分(26〜29)の横表面(35〜38)の少なくとも2つが、外側面(35、36)及び内側面(37、38)であることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
各端部接続部分(19)の前記横表面(35〜38)は、両外側面(35、36)及び向き合った内側面(37、38)であることを特徴とする、請求項8に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2008−500488(P2008−500488A)
【公表日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−514968(P2007−514968)
【出願日】平成16年5月27日(2004.5.27)
【国際出願番号】PCT/SE2004/000824
【国際公開番号】WO2005/116405
【国際公開日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【出願人】(500204267)ボルボ エアロ コーポレイション (26)
【Fターム(参考)】