説明

ダイシング−ダイボンディングテープ、粘接着剤層付き半導体チップの作製キット及び粘接着剤層付き半導体チップの製造方法

【課題】粘接着剤層を精度よくダイシングでき、粘接着剤層付き半導体チップのピックアップ性を高めることができるダイシング−ダイボンディングテープを提供する。
【解決手段】本発明に係るダイシング−ダイボンディングテープ1は、粘接着剤層3と基材層4とダイシング層5とを備える。ダイシング時に、ダイシング層5の外周部分に環状のダイシングリング26が貼り付けられる。ダイシング層5の径は基材層4の径よりも大きい。ダイシングリングの内径をXとしたときに、ダイシング層5の径が1Xを超え、基材層4の径が0.91X以上である。本発明に係る粘接着剤層付き半導体チップの作製キットは、ダイシング−ダイボンディングテープ1とダイシングリング26とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘接着剤層付き半導体チップを得るために用いられ、該粘接着剤層付き半導体チップをダイボンディングするために用いられるダイシング−ダイボンディングテープ、並びに該ダイシング−ダイボンディングテープを用いた粘接着剤層付き半導体チップの作製キット及び粘接着剤層付き半導体チップの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハから半導体チップを切り出す際には、先ダイシング法と呼ばれているダイシング法が用いられている。先ダイシング法の一例は、例えば、下記の特許文献1に開示されている。
【0003】
先ダイシング法では、先ず、半導体ウェーハの表面に切り込みを形成する。次に、切り込みが形成された半導体ウェーハの表面に、保護シートを貼り付ける。その後、半導体ウェーハの裏面を切り込み部分まで研削して、半導体ウェーハの厚みを薄くし、個々の半導体チップに分割する。個々の半導体チップに分割された分割後半導体ウェーハの表面には、保護シートが貼り付けられている。
【0004】
また、上記先ダイシング法により得られた個々の半導体チップを基板上に容易に実装するために、半導体チップの裏面にダイボンディング層が貼り付けられることが多い。このダイボンディング層付き半導体チップを得るために、ダイボンディング層とダイシング層とを備えるダイシング−ダイボンディングテープが用いられている。
【0005】
ダイシング−ダイボンディングテープの一例として、下記の特許文献2,3には、接着シートと基材(ダイシングテープ)とが積層されたダイシング−ダイボンディングテープが開示されている。このダイシング−ダイボンディングテープにおける接着シートは、ダイボンディング層であり、半導体チップに接着剤層を積層して、接着剤層付き半導体チップを得るためのシートである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−245467号公報
【特許文献2】特開2005−260204号公報
【特許文献3】特開2006−080142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2,3に記載のダイシング−ダイボンディングテープを用いて接着剤層付き半導体チップを得る際には、ダイシング−ダイボンディングテープを接着シート側から、分割後半導体ウェーハに貼り付ける。次に、レーザー光を照射したり、加熱又は冷却等したりして、接着シートを改質させる。次に、改質された接着シートと基材とを引き延ばして、該接着シートを分割後半導体ウェーハの切断部分に沿って切断し、かつ個々の半導体チップを離間して、半導体チップの下面に切断された接着剤層を形成する。その後、接着剤層付き半導体チップを基材から剥離して、取り出す。取り出された接着剤層付き半導体チップは、接着剤層側から基板上に実装される。
【0008】
特許文献2,3に記載のダイシング−ダイボンディングテープでは、基材と接着シートとを引き延ばしたときに、接着シートが所望の位置で適切に切断されないことがある。例えば、半導体チップの下方に、接着剤層が確実に配置されないことがある。このため、接着剤層付き半導体チップを接着対象部材に積層して接着させた場合に、半導体チップが傾いたり、半導体チップが十分に接着されなかったりする。
【0009】
さらに、特許文献2,3では、ダイシング−ダイボンディングテープを接着シート側から、分割後半導体ウェーハに貼り付けた後に、レーザー光を照射したり、加熱又は冷却等したりして、接着シートを改質させている。特許文献2,3では、このような改質させる余計な工程を実施する必要があり、余計な時間がかかる。さらに、このような改質を行うための設備を準備しなければならない。
【0010】
本発明の目的は、粘接着剤層を精度よく切断でき、粘接着剤層付き半導体チップのピックアップ性を高めることができるダイシング−ダイボンディングテープ、並びに該ダイシング−ダイボンディングテープを用いた粘接着剤層付き半導体チップの作製キット及び粘接着剤層付き半導体チップの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の広い局面によれば、粘接着剤層と、上記粘接着剤層の一方の表面に積層されている基材層と、上記基材層の上記粘着剤層側とは反対の表面に積層されているダイシング層とを備え、ダイシング時に、上記ダイシング層の外周部分に環状のダイシングリングが貼り付けられ、上記ダイシング層の径が上記基材層の径よりも大きく、上記ダイシングリングの内径をXとしたときに、上記ダイシング層の径が1Xを超え、上記基材層の径が0.91X以上である、ダイシング−ダイボンディングテープが提供される。
【0012】
本発明の広い局面によれば、ダイシング−ダイボンディングテープと環状のダイシングリングとを有する粘接着剤層付き半導体チップの作製キットであって、上記ダイシング−ダイボンディングテープが、粘接着剤層と、上記粘接着剤層の一方の表面に積層されている基材層と、上記基材層の上記粘着剤層側とは反対の表面に積層されているダイシング層とを備え、ダイシング時に、上記ダイシング層の外周部分に環状の上記ダイシングリングが貼り付けられ、上記ダイシング層の径が上記基材層の径よりも大きく、上記ダイシングリングの内径をXとしたときに、上記ダイシング層の径が1Xを超え、上記基材層の径が0.91X以上である、粘接着剤層付き半導体チップの作製キットが提供される。
【0013】
本発明に係るダイシング−ダイボンディングテープ及び本発明に係る粘接着剤層付き半導体チップの作製キットのある特定の局面では、上記基材層が、非粘着性を有する非粘着層である。
【0014】
本発明に係るダイシング−ダイボンディングテープ及び本発明に係る粘接着剤層付き半導体チップの作製キットの他の特定の局面では、上記基材層は、アクリル系ポリマーを含む組成物を架橋させた架橋体により形成されている。
【0015】
本発明に係る粘接着剤層付き半導体チップの製造方法は、上述したダイシング−ダイボンディングテープ又は上述した粘接着剤層付き半導体チップの作製キットを用いて、かつ保護シート及び該保護シートの一方の表面に積層されており、かつ個々の半導体チップに分割されている分割後半導体ウェーハを有する積層体を用いて、上記ダイシング−ダイボンディングテープの上記粘接着剤層を、上記積層体の上記分割後半導体ウェーハに貼り付ける工程と、上記ダイシング層を環状の上記ダイシングリングに貼り付ける工程と、上記保護シートを上記分割後半導体ウェーハから剥離する工程と、上記粘接着剤層と上記基材層とを引き延ばすことにより、上記粘接着剤層を、上記分割後半導体ウェーハの切断部分に沿って切断し、かつ上記分割後半導体ウェーハにおける個々の上記半導体チップを離間させる工程と、ダイシングの後に、上記半導体チップが貼り付けられた上記粘接着剤層を上記基材層から剥離し、半導体チップを上記粘接着剤層ごと取り出す工程とを備える。
【0016】
本発明に係る接着剤層付き半導体チップの製造方法のある特定の局面では、半導体ウェーハの表面に、該半導体ウェーハを個々の半導体チップに分割するための切り込みを形成する工程と、切り込みが形成された上記半導体ウェーハの表面に保護シートを貼り付ける工程と、上記保護シートが貼り付けられた上記半導体ウェーハの裏面を研削し、上記半導体ウェーハを個々の半導体チップに分割し、上記積層体を得る工程とがさらに備えられる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るダイシング−ダイボンディングテープは、ダイシング時に、上記ダイシング層の外周部分に環状のダイシングリングが貼り付けられ、上記ダイシング層の径が上記基材層の径よりも大きく、上記ダイシングリングの内径をXとしたときに、上記ダイシング層の径が1Xを超え、上記基材層の径が0.91X以上であるので、上記粘接着剤層と上記基材層とを引き延ばすことにより、上記粘接着剤層を、上記分割後半導体ウェーハの切断部分に沿って精度よく切断できる。この結果、粘接着剤層付き半導体チップのピックアップ性を高めることができる。
【0018】
本発明に係る粘接着剤層付き半導体チップの作製キットでは、ダイシング時に、上記ダイシング層の外周部分に環状のダイシングリングが貼り付けられ、上記ダイシング層の径が上記基材層の径よりも大きく、上記ダイシングリングの内径をXとしたときに、上記ダイシング層の径が1Xを超え、上記基材層の径が0.91X以上であるので、上記粘接着剤層と上記基材層とを引き延ばすことにより、上記粘接着剤層を、上記分割後半導体ウェーハの切断部分に沿って精度よく切断できる。この結果、粘接着剤層付き半導体チップのピックアップ性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1(a)及び(b)は、本発明の一実施形態に係るダイシング−ダイボンディングテープを模式的に示す部分切欠平面図及び部分切欠正面断面図である。
【図2】図2(a)及び(b)は、図1に示すダイシング−ダイボンディングテープの変形例を模式的に示す部分切欠平面図及び部分切欠正面断面図である。
【図3】図3(a)及び(b)は、図1に示すダイシング−ダイボンディングテープの他の変形例を模式的に示す部分切欠平面図及び部分切欠正面断面図である。
【図4】図4(a)〜(d)は、粘接着剤層付き半導体チップを製造する際に用いられる積層体を得る各工程の一例を説明するための部分切欠正面断面図である。
【図5】図5(a)及び(b)は、本発明の一実施形態に係るダイシング−ダイボンディングテープを用いて、粘接着剤層付き半導体チップを製造する方法の一例を説明するための部分切欠正面断面図である。
【図6】図6(a)及び(b)は、本発明の一実施形態に係るダイシング−ダイボンディングテープを用いて、粘接着剤層付き半導体チップを製造する方法の一例を説明するための部分切欠正面断面図である。
【図7】図7(a)は、ダイシング−ダイボンディングテープをダイシングリングに貼り付けるときの状態を示す正面断面図であり、図7(b)は、ダイシング−ダイボンディングテープをダイシングリングに貼り付けた後の状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0021】
本発明に係るダイシング−ダイボンディングテープは、粘接着剤層と、上記粘接着剤層の一方の表面に積層されている基材層と、上記基材層の上記粘着剤層側とは反対の表面に積層されているダイシング層とを備える。本発明に係るダイシング−ダイボンディングテープは、ダイシング時に、上記ダイシング層の外周部分に環状のダイシングリングが貼り付けられる。上記ダイシング層の径は、上記基材層の径よりも大きい。上記ダイシングリングの内径をXとしたときに、上記ダイシング層の径が1Xを超え、上記基材層の径が0.91X以上である。
【0022】
本発明に係る粘接着剤層付き半導体チップの作製キットは、ダイシング−ダイボンディングテープと環状のダイシングリングとを有する。本発明に係る粘接着剤層付き半導体チップの作製キットで用いられる上記ダイシング−ダイボンディングテープは、本発明に係るダイシング−ダイボンディングテープである。
【0023】
上記ダイシング層の径が上記基材層の径よりも大きく、上記ダイシング層の径が1Xを超えるので、上記ダイシング層にダイシングリングを貼り付けることが可能である。すなわち、上記ダイシング層にダイシングリングを貼り付けることが可能であるように、上記ダイシング層の径が1Xを超える。
【0024】
本発明では、ダイシング時に、上記ダイシング層の外周部分に環状のダイシングリングが貼り付けられ、上記ダイシング層の径が上記基材層の径よりも大きく、上記ダイシングリングの内径をXとしたときに、上記ダイシング層の径が1Xを超え、上記基材層の径が0.91X以上であるので、上記粘接着剤層と上記基材層とを引き延ばすことにより、上記粘接着剤層を、上記分割後半導体ウェーハの切断部分に沿って精度よく切断できる。この結果、粘接着剤層付き半導体チップのピックアップ性を高めることができる。
【0025】
具体的には、分割後半導体ウェーハの片面に上記粘接着剤層と上記基材層とを積層した後、該粘接着剤層と基材層とを引き延ばしたときに、上記基材層が切断されたり、割れたりせずに、分割後半導体ウェーハの切断部分に沿って、粘接着剤層のみを精度よく切断することが可能になる。なお、上記分割後半導体ウェーハの片面に積層された粘接着剤層と基材層とを引き延ばしたときに、該粘接着剤層のみが切断される性質を割裂性と呼ぶことがある。
【0026】
本発明では、上記粘接着剤層を加熱又は冷却したり、またはレーザー光を照射するなどの粘着剤層を改質しても良いが、改質しなくとも、上記粘接着剤層を常温で精度よく切断できる。粘接着剤層を改質しない場合には、粘接着剤層付き半導体チップの製造効率をかなり高めることができる。さらに、上記粘接着剤層を改質させるための設備を準備する必要もない。
【0027】
本発明者らは、特に、上記基材層の径が大きいほど、粘接着剤層をより一層精度よく切断でき、粘接着剤層付き半導体チップのピックアップ性をより一層高めることができることを見出した。粘接着剤層をより一層精度よくダイシングし、粘接着剤層付き半導体チップのピックアップ性をより一層高める観点からは、上記基材層の径は大きいほどよい。従って、粘接着剤層をより一層精度よくダイシングし、粘接着剤層付き半導体チップのピックアップ性をより一層高める観点からは、上記基材層の径は好ましくは0.92X以上、より好ましくは0.93X以上、更に好ましくは0.95X以上、最も好ましくは0.97X以上である。
【0028】
上記基材層の径は、ダイシングリングの内径と同じか、又はダイシングリングの内径よりも大きくてもよい。上記基材層の径は、1X以上であってもよく、1Xを超えていてもよく、1.001X以上であってもよく、1.01X以上であってもよく、1.02X以上であってもよく、1.03X以上であってもよい。
【0029】
上記ダイシング層の外周部分に環状のダイシングリングを貼り付ける作業を容易にし、ダイシングリングに貼り付けられた上記ダイシング層の剥離を抑制する観点からは、上記基材層の径は、好ましくは1.03X以下、より好ましくは1.02X以下、より一層好ましくは1.01X以下、更に好ましくは1.001X以下、特に好ましくは1X以下、最も好ましくは1X未満である。
【0030】
一方で、上記ダイシング層の外周部分に環状のダイシングリングを貼り付ける作業を容易にし、ダイシングリングに貼り付けられた上記ダイシング層の剥離を抑制する観点からは、上記基材層の径は小さいほどよい。従って、上記ダイシング層の外周部分に環状のダイシングリングを貼り付ける作業を容易にし、ダイシングリングに貼り付けられた上記ダイシング層の剥離を抑制する観点からは、上記基材層の径は、好ましくは0.99X以下、より好ましくは0.97X以下である。
【0031】
上記ダイシング層の径が大きいほど、上記ダイシング層の外周部分に環状のダイシングリングを貼り付ける作業が容易になり、ダイシングリングに貼り付けられた上記ダイシング層の剥離を抑制できる。このため、上記ダイシング層の径は、好ましくは1.01X以上、より一層好ましくは1.03X以上、更に好ましくは1.06X以上である。
【0032】
上記ダイシング層の径が上記基材層の径よりも大きいほど、上記ダイシング層の外周部分に環状のダイシングリングを貼り付ける作業が容易になり、ダイシングリングに貼り付けられた上記ダイシング層の剥離を抑制できる。上記ダイシング層の径と上記基材層との径との差の絶対値は、好ましくは0.001X以上、より好ましくは0.01X以上、より一層好ましくは0.02X以上、更に好ましくは0.04X以上である。
【0033】
上記ダイシング層の径は、上記ダイシングリングの外径と同じか、又は上記ダイシングリングの外径よりも小さいことが好ましい。
【0034】
本発明に係るダイシング−ダイボンディングテープでは、上記基材層の一部の領域の径が上記ダイシング層の径よりも大きくてもよく、上記基材層の一部の領域の径が0.91X(又は好ましい上限以下)未満であってもよい。但し、上記基材層の径が上記ダイシング層の径よりも大きい一部の領域又は上記基材層の径が0.91X未満(又は好ましい上限以下)である一部の領域は、基材層の外周の30%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましく、10%以下であることが更に好ましく、5%以下であることが特に好ましく、0%であることが最も好ましい。言い換えれば、上記基材層の径が上記ダイシング層の径よりも小さい領域又は上記基材層の径が0.91X以上(又は好ましい下限以上)である領域は、上記基材層の外周の70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることが更に好ましく、95%以上であることが特に好ましく、100%であることが最も好ましい。上記基材層の径が上記ダイシング層の径よりも小さい領域又は上記基材層の径が0.91X以上(又は好ましい下限以上)である領域が多いほど、粘接着剤層のみをより一層精度よく切断することが可能である。
【0035】
本発明に係るダイシング−ダイボンディングテープでは、上記ダイシング層の一部の領域の径が1X以下であってもよい。但し、上記ダイシング層の径が1X以下(又は好ましい上限以下)である一部の領域は、上記ダイシング層の外周の30%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましく、10%以下であることが更に好ましく、5%以下であることが特に好ましく、0%であることが最も好ましい。言い換えれば、上記ダイシング層の径が1X以上(又は好ましい下限以上)である領域は、上記ダイシング層の外周の70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることが更に好ましく、95%以上であることが特に好ましく、100%であることが最も好ましい。上記ダイシング層の径が1X以上(又は好ましい下限以上)である領域が多いほど、ダイシングリングに貼り付けられた上記ダイシング層の剥離をより一層抑制できる。
【0036】
本発明に係る粘接着剤層付き半導体チップの製造方法は、上述したダイシング−ダイボンディングテープ又は上述した粘接着剤層付き半導体チップの作製キットを用いて、かつ、保護シート及び該保護シートの一方の表面に積層されており、かつ個々の半導体チップに分割されている分割後半導体ウェーハを有する積層体を用いて、上記ダイシング−ダイボンディングテープの上記粘接着剤層を、上記積層体の上記分割後半導体ウェーハに貼り付ける工程と、上記ダイシング層を環状の上記ダイシングリングに貼り付ける工程と、上記保護シートを上記分割後半導体ウェーハから剥離する工程と、上記粘接着剤層と上記基材層とを引き延ばすことにより、上記粘接着剤層を、上記分割後半導体ウェーハの切断部分に沿って切断し、かつ上記分割後半導体ウェーハにおける個々の上記半導体チップを離間させる工程と、ダイシングの後に、上記半導体チップが貼り付けられた上記粘接着剤層を上記基材層から剥離し、半導体チップを上記粘接着剤層ごと取り出す工程とを備える。
【0037】
本発明に係る粘接着剤層付き半導体チップの製造方法では、上記粘接着剤層と上記基材層とを引き延ばすことにより、上記粘接着剤層を、上記分割後半導体ウェーハの切断部分に沿って精度よく切断できる。この結果、粘接着剤層付き半導体チップのピックアップ性を高めることができる。
【0038】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態及び実施例を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0039】
(ダイシング−ダイボンディングテープ)
図1(a)及び(b)は、本発明の一実施形態に係るダイシング−ダイボンディングテープを模式的に示す図である。図1(a)は部分切欠平面図であり、図1(b)は図1(a)中のI−I線に沿う部分切欠正面断面図である。なお、図1及び後述の図では、図示の便宜上、寸法及び大きさは、実際の寸法及び大きさから適宜変更している。
【0040】
図1(a)及び(b)に示すように、ダイシング−ダイボンディングテープ1は、長尺状の離型層2を有する。離型層2の上面2aに、粘接着剤層3と、基材層4と、ダイシング層5とがこの順に積層されている。粘接着剤層3の一方の表面3a(第1の表面)に、基材層4が積層されている。粘接着剤層3の他方の表面3b(第2の表面)に離型層2が積層されている。基材層4の一方の表面4a(第1の表面)に粘接着剤層3が積層されている。基材層4の粘接着剤層3側とは反対の他方の表面4b(第2の表面)に、ダイシング層5が積層されている。
【0041】
長尺状の離型層2の上面2aに、粘接着剤層3、基材層4及びダイシング層5を有する複数の積層物が等間隔に配置されている。該積層物の側方において、離型層2の上面2aに保護シートが設けられていてもよい。
【0042】
粘接着剤層3及び基材層4の平面形状は、略円形である。ダイシング層5の平面形状は略円形である。粘接着剤層3の径は、基材層4の径と同じであってもよく、異なってもよい。基材層4の径は、粘接着剤層3の径よりも大きいことが好ましい。基材層4の外周側面は、粘接着剤層3の外周側面3cよりも外側に張り出していることが好ましい。また、基材層4の外周側面は、粘接着剤層3により覆われていないことが好ましく、粘着性を有さないことが好ましい。粘接着剤層3と基材層4との大きさがこのような好ましい関係を満足すると、粘接着剤層3に半導体ウェーハを貼り付ける際に、基材層4が設けられている位置に対応する部分に半導体ウェーハを正確に位置合わせできる。また、半導体ウェーハを粘接着剤層3により一層確実に貼り付けることができる。
【0043】
ダイシング層5の径は、粘接着剤層3及び基材層4の径よりも大きい。ダイシング層5の外周側面は、粘接着剤層3及び基材層4の外周側面よりも外側に張り出している。ダイシング層5と粘接着剤層3及び基材層4との大きさがこのような好ましい関係を満足することによっても、粘接着剤層3に半導体ウェーハを貼り付ける際に、粘接着剤層3の基材層4が貼り付けられている部分に、半導体ウェーハを正確に位置合わせすることができる。貼り付けの後には、半導体ウェーハが貼り付けられた粘接着剤層3の一方の表面3a上に基材層4を確実に配置できる。このため、基材層4からの粘接着剤層3の剥離性を高めることで、ダイシングの後に、粘接着剤層3付き半導体チップを、基材層4から容易に剥離できる。特に、基材層4が非粘着性を有する非粘着層である場合には、粘接着剤層3付き半導体チップを、基材層4からより一層容易に剥離できる。このため、生産ロスを低減でき、歩止まりを向上できる。さらに、ダイシングリングと半導体ウェーハとを異なる層に貼り付けることができるので、粘接着剤層3と基材層4とダイシング層5とをそれぞれ最適な材料により構成できる。このため、切削性及びピックアップ性と、ダイボンディング後の接合信頼性とを高くすることができる。
【0044】
離型層2は、例えば、離型フィルムである。離型層2は、粘接着剤層3の半導体ウェーハが貼り付けられる他方の面3bを保護するために用いられる。なお、離型層2は、必ずしも用いられていなくてもよい。
【0045】
離型層2を構成する材料としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、及びポリイミド樹脂などのプラスチック樹脂等が挙げられる。
【0046】
離型層2の表面は離型処理されていてもよい。離型層は単層であってもよく、複数層であってもよい。離型層が複数層である場合には、各層は異なる樹脂により形成されていてもよい。
【0047】
離型層2の取扱い性又は剥離性をより一層高める観点からは、離型層2の厚みは、好ましくは10μm以上、好ましくは100μm以下である。
【0048】
粘接着剤層3は、半導体チップのダイボンディングに用いられる層である。粘接着剤層3は、半導体チップを基板又は他の半導体チップ等に接合するために用いられる。
【0049】
粘接着剤層3は、例えば適宜の硬化性樹脂などの硬化性化合物を含む硬化性樹脂組成物、又は熱可塑性樹脂等により形成される。硬化前の上記硬化性樹脂組成物は柔らかいので、外力により容易に変形する。粘接着剤層3付き半導体チップを得た後に、得られた粘接着剤層3付き半導体チップを粘接着剤層3側から基板等の被着体に積層する。その後、熱又は光のエネルギーを与えて、粘接着剤層3を硬化させることにより、粘接着剤層3を介して、被着体に半導体チップを強固に接合させることができる。
【0050】
上記硬化性樹脂組成物を硬化させるために、硬化剤が用いられる。該硬化剤としては、例えば、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸等の加熱硬化型酸無水物系硬化剤、フェノール系硬化剤、アミン系硬化剤もしくはジシアンジアミド等の潜在性硬化剤、及びカチオン系触媒型硬化剤等が挙げられる。硬化速度又は硬化物の物性等を調整するために、上記硬化剤と硬化促進剤とを併用してもよい。
【0051】
粘接着剤層3の厚みは特に限定されない。粘接着剤層3の厚みは、好ましくは1μm以上、好ましくは100μm以下である。粘接着剤層3の厚みは、より好ましくは3μm以上、より好ましくは60μm以下である。粘接着剤層3の厚みが上記下限以上及び上記上限以下であると、半導体チップの貼り付けが容易であり、更に半導体装置の薄型化に対応できる。
【0052】
基材層4は、粘着性を有していてもよく、非粘着性を有していてもよい。基材層4は、非粘着性を有することが好ましい。
【0053】
なお、「非粘着性」とは、表面が粘着性を有さないだけでなく、表面を指で触ったときにくっつかない程度の粘着性を有する場合も含まれることとする。具体的には、「非粘着」とは、基材層4をステンレス板に貼り付けて、基材層4を300mm/分の剥離速度で剥離したときに、粘着力が0.05N/25mm幅以下であることを意味する。
【0054】
基材層4は、例えば、活性エネルギー線硬化型又は熱硬化型の粘着性を有する組成物を用いて形成できる。基材層4が非粘着性を有するようにするためには、活性エネルギー線の照射量を多くすればよい。基材層4が粘着性を有するようにするためには、活性エネルギー線を照射しなかったり、活性エネルギー線の照射量を少なくしたりすればよい。
【0055】
基材層4は、アクリル系ポリマーを含む組成物により形成されていることが好ましい。基材層4は、アクリル系ポリマーを含む組成物を架橋させた架橋体により形成されていることが好ましい。この場合には、ダイシングの際の切削性をより一層高くすることができる。また、基材層4の極性、貯蔵弾性率又は破断伸度を容易に制御及び設計できる。
【0056】
上記アクリル系ポリマーは特に限定されない。上記アクリル系ポリマーは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルポリマーであることが好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルポリマーとして、炭素数1〜18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルポリマーが好適に用いられる。炭素数1〜18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルポリマーの使用により、基材層4の極性が充分に低くなり、基材層4の表面エネルギーが低くなり、かつ粘接着剤層3の基材層4からの剥離性が高くなる。
【0057】
上記組成物は、活性エネルギー線反応開始剤及び熱反応開始剤の内の少なくとも一方を含むことが好ましく、活性エネルギー線反応開始剤を含むことがより好ましい。活性エネルギー線反応開始剤は、光反応開始剤であることが好ましい。
【0058】
上記活性エネルギー線には、紫外線、電子線、α線、β線、γ線、X線、赤外線及び可視光線が含まれる。これらの活性エネルギー線のなかでも、硬化性に優れ、かつ硬化物が劣化し難いため、紫外線又は電子線が好ましい。
【0059】
上記光反応開始剤として、例えば、光ラジカル発生剤又は光カチオン発生剤等を使用できる。上記熱反応開始剤としては、熱ラジカル発生剤等が挙げられる。上記組成物には、粘着力を制御するためにイソシアネート系架橋剤を添加してもよい。
【0060】
基材層4の厚みは特に限定されない。基材層4の厚みは、好ましくは1μm以上、好ましくは100μm以下である。基材層4の厚みは、より好ましくは5μm以上、より好ましくは60μm以下である。基材層4の厚みが上記下限以上であると、エクスパンド性がより一層高くなる。基材層4の厚みが上記上限以下であると、厚みがより一層均一になり、ダイシングの精度がよく一層高くなる。
【0061】
ダイシング層5は、基材5Aと、基材5Aの一方の表面(第1の表面)に積層された粘着剤層5Bとを有する。基材層4の他方の表面4bに、ダイシング層5が粘着剤層5B側から貼り付けられている。ダイシング層5は、基材層4を介して粘接着剤層3に間接的に貼り付けられている。
【0062】
ダイシング層5は、粘接着剤層3及び基材層4の外周側面よりも外側に張り出している延長部5xを有する。ダイシング層5の延長部5xの片面が、粘着剤層5Bにより離型層2の上面2aに貼り付けられている。すなわち、粘接着剤層3及び基材層4の外周側面よりも外側の領域で、ダイシング層5が離型層2の上面2aに貼り付けられている。
【0063】
ダイシング層5が延長部5xを有するのは、粘接着剤層3の表面3bに半導体ウェーハを貼り付ける際に、粘接着剤層3の外周側面3cよりも外側に位置する延長部5xの粘着剤層5Bに、ダイシングリングを貼り付けるためである。
【0064】
ダイシング層5の基材5Aを構成する材料としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、及びポリイミド樹脂などのプラスチック樹脂等が挙げられる。なかでも、エクスパンド性に優れており、環境負荷が小さいため、ポリオレフィン系樹脂が好適に用いられる。
【0065】
粘着剤層5Bは特に限定されない。粘着剤層5Bを構成する粘着剤の具体例として、アクリル系粘着剤、特殊合成ゴム系粘着剤、合成樹脂系粘着剤及びゴム系粘着剤等が挙げられる。なかでも、感圧タイプのアクリル系粘着剤が好ましい。感圧タイプのアクリル系粘着剤が用いられた場合、ダイシングリングを粘着剤層5Bからより一層容易に剥離できる。さらに、粘着剤層5Bのコストを低減できる。基材層4とダイシング層5との剥離力は、粘接着剤層3と基材層4との剥離力よりも大きいことが好ましい。このような剥離力を満足するように粘着剤層5Bが構成されていることが好ましい。
【0066】
ダイシング層5の厚みは特に限定されない。ダイシング層5の厚みは、好ましくは10μm以上、好ましくは200μm以下である。ダイシング層5の厚みは、より好ましくは60μm以上、より好ましくは150μm以下である。ダイシング層5の厚みが上記下限以上及び上記上限以下であると、離型層2の剥離性及びダイシング層5のエクスパンド性がより一層高くなる。
【0067】
図1(a)及び(b)に示すダイシング−ダイボンディングテープ1では、ダイシング層5は略円形である。図2(a)及び(b)に、ダイシング−ダイボンディングテープの変形例を示す。図1(a)及び(b)に示すダイシング−ダイボンディングテープ1と図2に示すダイシング−ダイボンディングテープ11とでは、ダイシング層の形状のみが異なる。ダイシング−ダイボンディングテープ1におけるダイシング層5及びダイシング−ダイボンディングテープ11におけるダイシング層12はともに略円形である。ダイシング−ダイボンディングテープ11におけるダイシング層12は貼付起点12Cを有する。より具体的には、ダイシング層12は、貼付起点12C部分を除いて円形である。ダイシング層12では、ダイシング層12の径に関しては、貼付起点12を除く部分の径が上述した関係を満足する。ダイシング層12は、粘接着剤層3及び基材層4の外周側面よりも外側に張り出している延長部12xを有する。ダイシング層12の延長部12xの片面が、粘着剤層12Bにより離型層2の上面2aに貼り付けられている。
【0068】
このように、ダイシング層の一部の領域に貼付起点が設けられていていることが好ましい。また、1つのダイシング層に複数の貼付起点が設けられていることが好ましく、少なくとも2つの貼付起点が設けられていることが好ましい。1つのダイシング層に複数の貼付起点が設けられている場合には、ダイシング層の一端側と該一端側とは反対の他端側とに、貼付起点が設けられていることが好ましい。この場合には、ダイシング−ダイボンディングテープの使用時の方向性をなくすことができる。また、例えば、一端側の貼付起点からダイシング層をうまく貼り付けられない場合などに、他端側の貼付起点からダイシング層を貼り付けることが可能である。より具体的には、一端側の貼付起点からダイシング層をうまく貼り付けられない場合などに、長尺状のダイシング−ダイボンディングテープを一旦巻き取った後に、再度巻き出すことにより、他端側の貼付起点からダイシング層を貼り付けることが可能である。
【0069】
また、図1(a)及び(b)に示すダイシング−ダイボンディングテープ1では、ダイシング層5は、基材5Aと粘着剤層5Bとが積層された多層構造を有する。図3(a)及び(b)に示すダイシング−ダイボンディングテープ16のように、単層のダイシング層16を形成してもよい。この場合には、ダイシング層16を、粘着性を有する材料により形成することが好ましい。
【0070】
(粘接着剤層付き半導体チップの製造方法)
次に、図1(a),(b)に示すダイシング−ダイボンディングテープ1を用いた場合の粘接着剤層付き半導体チップの製造方法の一例を以下説明する。
【0071】
先ず、ダイシング−ダイボンディングテープ1と、積層体21とを有する。
【0072】
図4(d)に示すように、積層体21は、保護シート22と、保護シート22の一方の表面22a(第1の表面)に積層されている分割後半導体ウェーハ23とを有する。分割後半導体ウェーハ23は個々の半導体チップに分割されている。分割後半導体ウェーハ23の平面形状は略円形である。
【0073】
積層体21は、図4(a)〜(d)に示す各工程を経て、以下のようにして得ることができる。
【0074】
先ず、図4(a)に示すように、半導体ウェーハ23Aを用意する。半導体ウェーハ23Aは分割前半導体ウェーハである。半導体ウェーハ23Aの平面形状は略円形である。半導体ウェーハ23Aの表面23aには、マトリックス状にストリートによって区画された各領域に、個々の半導体チップを構成するための回路が形成されている。
【0075】
図4(b)に示すように、用意した半導体ウェーハ23Aを表面23a側からダイシングする。ダイシングの後、半導体ウェーハ23Aは分断されていない。半導体ウェーハ23Aの表面23aには、個々の半導体チップに分割するための切り込み23cが形成されている。ダイシングは、例えば、高速回転するブレードを備えるダイシング装置等を用いて行われる。
【0076】
次に、図4(c)に示すように、半導体ウェーハ23Aの表面23aに、保護シート22を貼り付ける。その後、半導体ウェーハ23Aの裏面23bを研削し、半導体ウェーハ23Aの厚みを薄くする。ここでは、半導体ウェーハ23Aの裏面23bは、切り込み23c部分まで研削している。このようにして、図4(d)に示す積層体21を得ることができる。
【0077】
半導体ウェーハ23Aの裏面23bは、切り込み23c部分まで研削することが好ましい。研削は、例えば研削磁石等を備えるグラインダなどの研削機を用いて行われる。研削時には、半導体ウェーハ23Aの表面23aには保護シート22が貼り付けられているので、回路に研削屑が付着しない。また、研削後に半導体ウェーハ23Aが個々の半導体チップに分割されても、複数の半導体チップがばらばらにならずに保護シート22に貼り付けられたままである。
【0078】
積層体21を得た後、図5(a)に示すように、積層体21を保護シート22側からステージ25上に載せる。ステージ25上には、分割後半導体ウェーハ23の外周側面から一定間隔を隔てられた位置に、円環状のダイシングリング26が設けられている。ダイシング−ダイボンディングテープ1の離型層2を剥離しながら、又は離型層2を剥離した後に、露出した粘接着剤層3の他方の表面3bを、分割後半導体ウェーハ23の裏面23bに貼り付ける。また、露出したダイシング層5の延長部5xに位置する粘着剤層5Bを、円環状のダイシングリング26に貼り付ける。
【0079】
図7(a)にダイシング層5をダイシングリング26に貼り付ける際の状態を正面断面図で示し、図7(b)にダイシング層5をダイシングリング26に貼り付けた後の状態を平面図で示す。
【0080】
図7(a)及び(b)に示すように、通常、ダイシング層5をダイシングリング26に貼り付ける際には、剥離エッジ32を用いて、ダイシング層5を離型層2の上面2aから剥離する。ダイシング層5をダイシングリング26に貼り付けて、ロール31で押さえ付ける。そして、粘接着剤層3、基材層4及びダイシング層5に皺が生じないように、粘接着剤層3、基材層4及びダイシング層5を引き延ばしながら、ダイシング層5の外周部分をダイシングリング26に貼り付ける。なお、図7(b)では、基材層4の径はA、ダイシング層5の径はB、ダイシングリング26の内径はX、ダイシングリング26の外径はYである。
【0081】
ダイシング層5をダイシングリング26に貼り付けた後、図5(b)に示すように、粘接着剤層3が貼り付けられた分割後半導体ウェーハ23をステージ25から取り出して、裏返す。このとき、ダイシングリング26をダイシング層5に貼り付けた状態で取り出す。取り出した分割後半導体ウェーハ23を表面23aが上方になるように裏返して、別のステージ27上に載せる。
【0082】
次に、図6(a)に示すように、分割後半導体ウェーハ23の表面23aから保護シート22を剥離する。保護シート22を剥離する際に、剥離を容易にするために、保護シート22を加熱してもよい。ただし、保護シート22を加熱する際に、粘接着剤層3を改質しないほうが好ましい。
【0083】
次に、図6(b)に示すように、粘接着剤層3と基材層4とダイシング層5とを引き延ばして、粘接着剤層をのみを切断する。このとき、分割後半導体ウェーハ23の切断部分23cに沿って切断し、かつ分割後半導体ウェーハ23における個々の半導体チップを離間させる。粘接着剤層3は、分割後半導体ウェーハ23の裏面23bに貼り付けられているため、分割後半導体ウェーハ23の切断部分23cに沿って、すなわちダイシングラインに沿って、粘接着剤層3を切断できる。粘接着剤層3の切断の後に、粘接着剤層3には切断部分3cが形成される。
【0084】
なお、本明細書では、粘接着剤層3を引き延ばして切断することを、割裂するともいう。粘接着剤層3を引き延ばして切断する作業(割裂)には、ダイシングも含まれることとし、ダイシング−ダイボンディングテープ1は、粘接着剤層3を引き延ばして切断する(割裂する)ために用いることができる。ダイシング−ダイボンディングテープ1は、言い換えれば、割裂−ダイボンディングテープである。
【0085】
粘接着剤層3を引き延ばす方法としては、例えば、粘接着剤層3の下方から突き上げて、粘接着剤層3、基材層4及びダイシング層5に、図6(b)に示す力Aを付与する方法が挙げられる。力Aの付与により、結果として粘接着剤層3、基材層4及びダイシング層5に外側に向かって引っ張られる力B1,B2が付与され、粘接着剤層3が引き延ばされる。
【0086】
基材層4及びダイシング層5の大きさが特定の上記関係を満たす。従って、粘接着剤層3、基材層4及びダイシング層5を引き延ばすことにより、基材層4が切断されることなく、分割後半導体ウェーハ23の切断部分23cに沿って、粘接着剤層3のみを精度よく切断できる。このため、半導体チップの下方において、粘接着剤層3の欠けが生じ難い。粘接着剤層3を精度よく切断できるため、粘接着剤層3付き半導体チップのピックアップ性が高くなる。粘接着剤層3の欠けが生じ難いので、粘接着剤層付き半導体チップを接着対象部材に積層して接着させた場合に、半導体チップが傾き難く、かつ半導体チップの接合信頼性が高くなる。
【0087】
粘接着剤層3と基材層4とダイシング層5とを引き延ばす前又は間に、粘接着剤層3を改質しないことが好ましい。粘接着剤層3と基材層4とダイシング層5を引き延ばす前又は間に、粘接着剤層3を改質するために、粘接着剤層3を加熱及び冷却せず、かつレーザー光を照射しないことが好ましい。粘接着剤層3と基材層4とダイシング層5を引き延ばす前又は間に、粘接着剤層3を改質するために、粘接着剤層3を加熱(保護シート22を剥離するための加熱を除く)及び冷却せず、かつレーザー光を照射しないことが好ましい。ただし、粘接着剤層3を改質してもよい。粘接着剤層3を改質しない場合には、粘接着剤層3付き半導体チップの製造効率がかなり高くなる。
【0088】
粘接着剤層3を切断した後、粘接着剤層3が積層された状態で、半導体チップを粘接着剤層3ごと基材層4から剥離して、取り出す。このようにして、粘接着剤層3付き半導体チップを得ることができる。ダイシング−ダイボンディングテープ1を用いた場合には、分割後半導体ウェーハ23が貼り付けられている粘接着剤層3部分の下方には、非粘着性を有する基材層4が位置しているので、粘接着剤層3付き半導体チップのピックアップ性が高くなる。粘接着剤層3の切断の後、粘接着剤層3付き半導体チップを基材層4から剥離する前に、ダイシング層5を引き延ばして、個々の半導体チップ間の間隔をさらに拡張してもよい。
【0089】
以下、実施例及び比較例を挙げることにより、本発明を具体的に説明する。本発明は、以下の実施例に限定されない。
【0090】
(アクリル系ポリマー1)
2−エチルヘキシルアクリレート95重量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート5重量部、光ラジカル発生剤であるイルガキュア651(チバ・ジャパン社製、50%酢酸エチル溶液)0.2重量部、及びラウリルメルカプタン0.01重量部を酢酸エチルに溶解させ、溶液を得た。この溶液に紫外線を照射して重合を行い、ポリマーの酢酸エチル溶液を得た。さらに、この溶液の固形分100重量部に対して、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工社製、カレンズMOI)3.5重量部を反応させて、アクリル共重合体(アクリル系ポリマー1)を得た。得られたアクリル系ポリマー1の重量平均分子量は70万であり、酸価は0.86(mgKOH/g)であった。
【0091】
また、基材層を形成するための組成物を構成する材料として、以下の化合物を用意した。
【0092】
(光重合開始剤)
イルガキュア651(チバ・ジャパン社製)
【0093】
(オリゴマー)
U324A:新中村化学工業社製、ウレタンアクリルオリゴマー(10官能のウレタンアクリルオリゴマー)、重量平均分子量:1,300
【0094】
(架橋剤)
コロネートL−45:日本ポリウレタン工業社製、イソシアネート系架橋剤
【0095】
(ダイシング層)
ポリエチレン(プライムポリマー社製、M12)を原料として用いて、Tダイ法により、厚み100μmのダイシング層であるポリエチレンフィルムを製造した。
【0096】
(実施例1)
実施例1では、図1(a),(b)に示すダイシング−ダイボンディングテープを形成した。
【0097】
上記アクリル系ポリマー1を100重量部と、イルガキュア651を1重量部と、ウレタンアクリルオリゴマーであるU324Aを15重量部と、コロネートL−45を1重量部とを配合し、組成物を得た。得られた組成物を離型PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム上に塗工し、110℃で5分間乾燥し、溶媒を除去し、組成物層を形成した。
【0098】
次に、得られた組成物層の全領域に、水銀灯を用いて、2000mJ/cmのエネルギーとなるように光を照射し、組成物層を硬化させた。このようにして、非粘着性を有する非粘着層である基材層(厚み20μm)を得た。
【0099】
得られた基材層を用いて、以下の要領で、ダイシング−ダイボンディングテープを作製した。
【0100】
G−2050M(日油社製、エポキシ含有アクリルポリマー、重量平均分子量Mw20万)15重量部と、EXA−7200HH(DIC社製、ジシクロペンタジエン型エポキシ)70重量部と、HP−4032D(DIC社製、ナフタレン型エポキシ)15重量部と、YH−309(三菱化学社製、酸無水物系硬化剤)38重量部と、2MAOK−PW(四国化成社製、イミダゾール)8重量部と、S320(チッソ社製、アミノシラン)2重量部と、MT−10(トクヤマ社製、表面疎水化ヒュームドシリカ)4重量部とを配合し、配合物を得た。得られた配合物を溶剤であるメチルエチルケトン(MEK)に固形分60重量%となるように添加し、攪拌し、塗液を得た。
【0101】
得られた塗液を離型PETフィルム上に厚み7μmになるように塗工し、110℃のオーブン内で2分間加熱乾燥した。このようにして、離型PETフィルム上に、粘接着剤層を形成した。その後、粘接着剤層を円形に切り抜いた。
【0102】
次に、粘接着剤層の離型PETフィル側とは反対の表面上に、得られた基材層を60℃でラミネートし、ラミネート体を得た。基材層が粘接着剤層よりも大きく、基材層が粘接着剤層の外周側面よりも側方に張り出している領域を有するように、基材層を円形に切り抜いた。
【0103】
その後、基材層の粘接着剤層側とは反対の表面上に、ダイシング層であるエレグリップUHP−0810FX(オレフィン基材(基材の厚み80μm)の片面にアクリル系粘着剤層(粘着剤層の厚み10μm)が形成されたUV硬化型ダイシングテープ、電気化学工業社製)を粘着剤層側から貼り付けた。
【0104】
その後、ダイシング層を切り抜いた。このようにして、離型PETフィルム/粘接着剤層/基材層/ダイシング層がこの順で積層された4層の積層構造を有するダイシング−ダイボンディングテープを作製した。得られたダイシング−ダイボンディングテープでは、粘接着剤層、基材層及びダイシング層の径は下記の表1に示す値であった。
【0105】
また、下記の表1に示す内径及び外径を有するダイシングリングを用意した。
【0106】
(評価)
直径300mm(12inch)の半導体ウェーハ(シリコンウェーハ、厚み80μm)の表面に深さ100μmの切り込みを入れた。次に、半導体ウェーハの表面に保護シートであるバックグラインディングテープ イクロスSB135S−BN(三井化学社製、オレフィンの片面にアクリル系粘着剤が塗布されている)をアクリル系粘着剤側からラミネートした。次に、半導体ウェーハの厚みが50μmになるまで半導体ウェーハの裏面の研磨と鏡面仕上げを行った。このようにして、保護シートと、分割後半導体ウェーハとの積層体を得た。
【0107】
次に、ウェーハマウンターDAM−812M(タカトリ社製)を用いてダイシング−ダイボンディングテープを積層体の分割後半導体ウェーハの裏面及びダイシングリングに貼り付けた。尚、積層体の分割後半導体ウェーハをのせるステージは60℃に設定した。
【0108】
次に、粘接着剤層が貼り付けられた分割後半導体ウェーハをステージから取り出して、裏返し、別のステージ上に載せた。その後、分割後半導体ウェーハの表面から、60℃で保護シートを剥離した。このとき、粘接着剤層は改質しなかった。
【0109】
ダイボンダーbestem D−02(キャノンマシーナリー社製)を用いて、25℃でエクスパンド量4.5mmとして、粘接着剤層と基材層とダイシング層とを引き延ばして、粘接着剤層を切断した。
【0110】
粘接着剤層の切断の後に、分割後半導体ウェーハの切断部分に沿って粘着剤層が切断されている個々の半導体チップの数の割合を評価した。
【0111】
次に、割裂後に、ダイボンダーbestem D−02(キャノンマシーナリー社製)を用いて、コレットサイズ8mm角、突き上げ速度5mm/秒、ピックアップ温度25℃の条件で、20個の粘接着剤層付き半導体チップを連続してピックアップした。粘接着剤層付き半導体チップのピックアップ性を下記の基準で判定した。
【0112】
[ピックアップ性の判定基準]
○:ピックアップできなかった粘接着剤層付き半導体チップなし
×:ピックアップできなかった粘接着剤層付き半導体チップあり
【0113】
結果を下記の表1に示す。
【0114】
【表1】

【符号の説明】
【0115】
1…ダイシング−ダイボンディングテープ
2…離型層
2a…上面
3…粘接着剤層
3a…一方の表面
3b…他方の表面
3c…外周側面
3d…切断部分
4…基材層
4a…一方の表面
4b…他方の表面
5…ダイシング層
5A…基材
5B…粘着剤層
5x…延長部
11,16…ダイシング−ダイボンディングテープ
12,17…ダイシング層
12A…基材
12B…粘着剤層
12C…貼付起点
12x…延長部
21…積層体
22…保護シート
22a…一方の表面
23…分割後半導体ウェーハ
23A…半導体ウェーハ
23a…表面
23b…裏面
23c…切り込み
25…ステージ
26…ダイシングリング
27…ステージ
31…ロール
32…剥離エッジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘接着剤層と、
前記粘接着剤層の一方の表面に積層されている基材層と、
前記基材層の前記粘着剤層側とは反対の表面に積層されているダイシング層とを備え、
ダイシング時に、前記ダイシング層の外周部分に環状のダイシングリングが貼り付けられ、
前記ダイシング層の径が前記基材層の径よりも大きく、
前記ダイシングリングの内径をXとしたときに、前記ダイシング層の径が1Xを超え、前記基材層の径が0.91X以上である、ダイシング−ダイボンディングテープ。
【請求項2】
前記基材層が、非粘着性を有する非粘着層である、請求項1に記載のダイシング−ダイボンディングテープ。
【請求項3】
前記基材層が、アクリル系ポリマーを含む組成物を架橋させた架橋体により形成されている、請求項1又は2に記載のダイシング−ダイボンディングテープ。
【請求項4】
ダイシング−ダイボンディングテープと環状のダイシングリングとを有する粘接着剤層付き半導体チップの作製キットであって、
前記ダイシング−ダイボンディングテープが、粘接着剤層と、
前記粘接着剤層の一方の表面に積層されている基材層と、
前記基材層の前記粘着剤層側とは反対の表面に積層されているダイシング層とを備え、
ダイシング時に、前記ダイシング層の外周部分に環状の前記ダイシングリングが貼り付けられ、
前記ダイシング層の径が前記基材層の径よりも大きく、
前記ダイシングリングの内径をXとしたときに、前記ダイシング層の径が1Xを超え、前記基材層の径が0.91X以上である、粘接着剤層付き半導体チップの作製キット。
【請求項5】
前記基材層が、非粘着性を有する非粘着層である、請求項4に記載の粘接着剤層付き半導体チップの作製キット。
【請求項6】
前記基材層が、アクリル系ポリマーを含む組成物を架橋させた架橋体により形成されている、請求項4又は5に記載の粘接着剤層付き半導体チップの作製キット。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のダイシング−ダイボンディングテープを用いて、かつ、
保護シート及び該保護シートの一方の表面に積層されており、かつ個々の半導体チップに分割されている分割後半導体ウェーハを有する積層体を用いて、
前記ダイシング−ダイボンディングテープの前記粘接着剤層を、前記積層体の前記分割後半導体ウェーハに貼り付ける工程と、
前記ダイシング層を環状のダイシングリングに貼り付ける工程と、
前記保護シートを前記分割後半導体ウェーハから剥離する工程と、
前記粘接着剤層と前記基材層とを引き延ばすことにより、前記粘接着剤層を、前記分割後半導体ウェーハの切断部分に沿って切断し、かつ前記分割後半導体ウェーハにおける個々の前記半導体チップを離間させる工程と、
ダイシングの後に、前記半導体チップが貼り付けられた前記粘接着剤層を前記基材層から剥離し、半導体チップを前記粘接着剤層ごと取り出す工程とを備える、粘接着剤層付き半導体チップの製造方法。
【請求項8】
請求項4〜6のいずれか1項に記載の粘接着剤層付き半導体チップの作製キットを用いて、かつ
保護シート及び該保護シートの一方の表面に積層されており、かつ個々の半導体チップに分割されている分割後半導体ウェーハを有する積層体を用いて、
前記ダイシング−ダイボンディングテープの前記粘接着剤層を、前記積層体の前記分割後半導体ウェーハに貼り付ける工程と、
前記ダイシング層を環状の前記ダイシングリングに貼り付ける工程と、
前記保護シートを前記分割後半導体ウェーハから剥離する工程と、
前記粘接着剤層と前記基材層とを引き延ばすことにより、前記粘接着剤層を、前記分割後半導体ウェーハの切断部分に沿って切断し、かつ前記分割後半導体ウェーハにおける個々の前記半導体チップを離間させる工程と、
ダイシングの後に、前記半導体チップが貼り付けられた前記粘接着剤層を前記基材層から剥離し、半導体チップを前記粘接着剤層ごと取り出す工程とを備える、粘接着剤層付き半導体チップの製造方法。
【請求項9】
半導体ウェーハの表面に、該半導体ウェーハを個々の半導体チップに分割するための切り込みを形成する工程と、
切り込みが形成された前記半導体ウェーハの表面に保護シートを貼り付ける工程と、
前記保護シートが貼り付けられた前記半導体ウェーハの裏面を研削し、前記半導体ウェーハを個々の半導体チップに分割し、前記積層体を得る工程とをさらに備える、請求項7又は8に記載の粘接着剤層付き半導体チップの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−65625(P2013−65625A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−202221(P2011−202221)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】