説明

ダイシングフレーム洗浄方法及びその装置

【課題】ダイシングフレームwに付着した糊剤などの汚染物質を、溶剤を使用することなく、高品質且つ能率的にダイシングフレームwから分離させる。
【解決手段】メラミンスポンジ材からなるロール体11aをこれの周面の中心線(中心軸12)回りへ回転させ、該回転中にダイシングフレームwの被洗浄面に注水しながら該ロール体11aの周面をダイシングフレームwの上下面である被処理面に押し当てるように実施するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイシングフレームの洗浄方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイサーでウエハをダイシングする際、予めステンレス材などの略円板状の金属板からなる図に示すような厚さ数mm程度のダイシングフレームの上面に糊剤を介してウエハを接着するのであり、ダイサーはこのように接着されたウエハを切刃で切り込むように作動する。このように使用されるダイシングフレームは、ダイシングの終了した後、その上面からウエハを取り除かれ、上面の糊剤を洗浄除去された後、再使用される。
【0003】
上記糊剤の洗浄除去は、現状では、溶剤の一種であるエヌメチルピィロリドン(NMP)液などに、ウエハの取り除かれたダイシングフレームを浸漬して、その糊剤をゼリー状に軟化させた後、特許文献1に示すような洗浄機を使用して洗浄するようにしている。
【0004】
この洗浄機は外方から供給されたダイシングフレームの上下面を一枚づつロールブラシで摺擦してこれに付着している糊剤をダイシングフレームから分離させた後に、その糊剤を水で洗い流すものとなされている。
【0005】
【特許文献1】特開2002−326061号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した洗浄機では、糊剤を洗い流した水に、その糊剤の軟化に使用されたエヌメチルピィロリドン(NMP)液などの溶剤が混入するようになるため、この水をそのまま自然界へ放流できないなどの問題がある。
【0007】
本発明は、斯かる問題点に鑑みて創案されたものであり、即ち、ダイシングフレームに付着した糊剤などの汚染物質を、溶剤を使用することなく、高品質且つ能率的にダイシングフレームから分離させることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るダイシングフレームの洗浄方法は、請求項1に記載したように、メラミンスポンジ材からなるロール体をこれの周面の中心線(回転中心軸12)回りへ回転させ、該回転中にダイシングフレームの被洗浄面に注水しながら該ロール体の周面を前記被処理面に押し当てるように実施することを特徴とするものである。
このさい、請求項2に記載したように、ロール体の周面を円筒状となして実施するのがよい。
【0009】
一方、本発明に係るダイシングフレームの洗浄装置は、請求項3に記載したように、メラミンスポンジ材からなるロール体と、該ロール体をこれの周面の中心線(回転中心軸12)回りへ回転させる回転駆動手段とを備えたものとなす。
【0010】
この発明は次のように具体化するのがよい。
即ち、請求項4に記載したように、ダイシングフレームを特定平面に沿わせた姿勢に保持し特定方向へ移送する被処理物移送手段と、該移送手段のダイシングフレーム移送経路を挟む両側に特定姿勢となされて位置された対状の2つの回転ロール部と、該2つの回転ロール部を前記移送経路途中の該経路と交叉する方向へ対称状に近接離反作動させるロール上下駆動手段と、該2つの回転ロール部をこれのロール体の周面の中心線回りへ回転させる回転駆動手段と、該2つの回転ロール部に対応した位置から前記移送経路上のダイシングフレームの被処理面に水を注水するための注水手段2eとを設け、上記ロール体のそれぞれがメラミンスポンジ材で形成されている構成となす。
【0011】
或いは請求項5に記載したように、ダイシングフレームを特定平面に沿わせた姿勢に保持しつつ特定方向へ移送する被処理物移送手段と、該移送手段のダイシングフレーム移送経路上の前後2箇所の各箇所に設けられるもので前記各箇所において前記移送経路を挟む両側にて特定姿勢に保持される対状の2つの回転ロール部と、前記各箇所の対状の2つの回転ロール部を前記移送経路途中の該経路と交叉する方向へ対称状に近接離反作動させるロール上下駆動手段と、前記回転ロール部のそれぞれをこれのロール体の周面の中心線回りへ回転させる回転駆動手段と、前記回転ロール部に対応した位置から前記移送経路上のダイシングフレームの被処理面に水を注水するための注水手段2eとを設け、前後箇所の何れか一方箇所の対状の2つの回転ロール部はダイシングフレームの移送方向に向かっての左右端部に同時に押し当てられる左右一対のロール体11a、11aを具備し、そして他方箇所の対状の2つの回転ロール部はダイシングフレームの移送方向に向かっての左右巾中央部に押し当てられるロール体11bを具備した構成となす。
【0012】
そして上記した請求項4又は5記載の発明は次のように具体化するのがよい。
即ち、請求項6に記載したように、前記対状の2つの回転ロール部が前記回転駆動手段で回転駆動され前記上下送り手段の作動によりダイシングフレームの被処理面に押し当てられた状態で該被処理面を摺擦洗浄しているとき、前記上下送り手段が前記対状の2つの回転ロール部をそれらのロール体の摩耗速度に関連した特定速度で漸次に近接させるように作動するものとなす。
【0013】
また請求項7に記載したように、前記ロール体が前記中心線の方向を複数のロール部分に分割されており、且つ、該ロール部分のそれぞれが脱着可能になされている構成となす。
【発明の効果】
【0014】
上述した本発明によれば、次のような効果が得られる。
即ち、請求項1に記載したものによれば、糊剤などの汚染物質が付着したダイシングフレームを溶剤の一種であるエヌメチルピィロリドン(NMP)液などに浸漬しないでも、その糊剤などをダイシングフレームから比較的簡易な処理で確実に除去することができるのであり、また糊剤の除去処理のさいに排出されるもので糊剤などの混入した廃水はそのまま或いは濾過処理の後に自然界に放流しても差し支えないものとなる。
【0015】
請求項2に記載したものによれば、ダイシングフレームの上下面を均等且つ能率的に摺擦することができてダイシングフレームに付着した糊剤を効果的に除去することができるものとなる。
【0016】
請求項3に記載のものによれば、請求項1記載の発明の場合と同様な効果を簡易な機構により得ることができるものとなる。
【0017】
請求項4に記載のものによれば、請求項1記載の発明の場合と同様な効果が得られると共に、ダイシングフレームに付着した糊剤の除去処理を自動的にしかも連続的且つ安定的に実施することのできるものとなる。
【0018】
請求項5に記載のものによれば、請求項4記載の発明の場合と同様な効果が得られると共に、ダイシングフレームの上下面の左右端部を一方の摺擦手段のロール体により、そしてその左右方向中央部を他方の摺擦手段のロール体により別々に摺擦することができ、このさい一方の摺擦手段と他方の摺擦手段との間でこれら摺擦手段のロール体の消耗速度を出来るだけ差異の生じるものとなすことができると同時に、各摺擦手段ごとのロール体についてその全体が成る可く均一的に消耗するようにそれら摺擦手段のロール体の長さを決定することができて、各摺擦手段のロール体の新替が合理的に行えるものとなる。
【0019】
請求項6に記載のものによれば、ロール体の使用による消耗にも拘わらず、ロール体が長期に渡ってダイシングフレームの上下面を均等且つ安定的に摺擦することができ、ダイシングフレームに付着した糊剤を長期に渡って確実に除去することができるものである。
【0020】
請求項7に記載のものによれば、各ロール体ごとにロール部分を交換装着することにより最も消耗の激しいロール部分のみを新替することができて、各ロール体の摺擦能力を長期に渡って安価に維持させることができるものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1は本発明に係るダイシングフレーム洗浄装置の側面図、図2は前記洗浄装置の平面図、図3は前記洗浄装置をダイシングフレームの搬送方向前方から見た断面図、図4は前記洗浄装置の要部をダイシングフレームの搬送方向前方から見た図、図5は前記洗浄装置の要部をダイシングフレームの上方から見た図、図6は前記洗浄装置のロール体の断面図である。
【0022】
図1及び図2において、100は方形体形状の装置ケーシングであり、これに内方には、洗浄すべきダイシングフレームwが水平姿勢となされて台a1上に段重ねされた状態で投入特定位置p01に投入配置されるものとした被処理物投入部1と、ダイシングフレームwの上下面を前後2つの摺擦手段2a、2bで摺擦することによりダイシングフレームwに付着した糊剤などの汚染物質をダイシングフレームwから細片状の洗い流し可能に分離させるものとした摺擦洗浄部2と、ダイシングフレームw表面から分離された状態の糊剤などを注水処理により洗い流すものとした注水洗浄部3と、注水洗浄された後のダイシングフレームwを乾燥させるものとした乾燥処理部4と、台a1を取出特定位置p02に位置され該台a1上に洗浄済みのダイシングフレームwを水平姿勢状態に段重ねされると共に該台a1上に段重ね状に収集されたダイシングフレームwを該台a1と共に外方へ取り出すことを可能とした被処理物取出部5とが設けられている。
6は摺擦洗浄部2、注水洗浄部3及び乾燥処理部4を支持するための縦向き支持板であり、7はキャスターで、8は長さ調整可能な支持脚である。
【0023】
被処理物投入部1は、ダイシングフレームwが段重ね状に載置されている台a1を上下作動させて最上位のダイシングフレームwの高さを第一特定位置p1に合致させるための台上下駆動手段1bを備えている。
【0024】
そして被処理物投入部1と摺擦洗浄部2との間には、第一特定位置p1のダイシングフレームwを吊り搬送し第二特定位置p2に落下させる供給側吊り搬送部9と、第二特定位置p2のダイシングフレームwを摺擦洗浄部2の受入れ位置である第三特定位置p3まで押し込むものとした押し込み供給部10とが設けられている。
【0025】
摺擦洗浄部2は本発明の要部をなすものであって、第三特定位置p3近傍まで押し込まれたダイシングフレームwを水平姿勢のままさらに前方へ搬送するための第一搬送部2cを備えると共に、前後2つの摺擦手段2a、2bを第一搬送部p1の搬送経路途中に形成されている。
【0026】
第一搬送部2cは上下一対の左右向き搬送ローラ2d、2dからなる搬送ローラ組を複数設けると共に各搬送ローラ組の下側の左右向き搬送ローラ2dを図示しない電動モータで回転させるものとなされており、ダイシングフレームwを各搬送ローラ組の上下一対の左右向き搬送ローラ2d、2dにより順次に挟み付け、それぞれの搬送ローラ組の下側の左右向き搬送ローラ2dがその回転によりダイシングフレームw下面に送り力を付与することにより、第三特定位置p3の近傍に達したダイシングフレームwを水平姿勢のままさらに前方へ搬送し注水洗浄部3の受入れ位置である第四特定位置p4まで搬送するものとなされている。
【0027】
そして第一搬送部2cの複数の搬送ロール組の各相互間箇所の前寄りの一つに前側の摺擦手段2aが形成されており、また前記相互間箇所の後寄りの一つに後側の摺擦手段2bが形成されている。
【0028】
図3及び図4に示すように、前側の摺擦手段2aは、それぞれがメラミンスポンジ材で形成された比較的短い左右向きの円筒周面を有する2つのロール体11a、11aを特定距離を隔てて左右向き回転中心軸12にこれと同心に固定してなる回転ロール部13を上下の対状に配設されると共に、これら一対の回転ロール部13、13を近接離反移動させるロール上下駆動手段14と、各回転ロール部13をその中心軸回りへ任意な回転速度で回転させるための回転駆動手段15とを備えている。
このさい、各ロール体13はその左右方向長さL1を、図5に示すように、例えば、ダイシングフレームwの外径の凡そ4分の1長さ程度となされ、ダイシングフレームwの左右の各端部の一定範囲を摺擦し得るものとなされる。
【0029】
一方、後側の摺擦手段2bは、メラミンスポンジ材で形成され図5に示すように比較的長い左右向きの円筒周面を有する1つのロール体11bを左右向き回転中心軸12にこれと同心に固定してなる回転ロール部13を有するほかは、前側の摺擦手段2aの場合に準じた構造となされているのであって、即ち、回転ロール部13を上下の対状に設けられると共に、これら一対の回転ロール部13・・・を近接離反移動させるロール上下駆動手段14と、各回転ロール部13をその左右向き回転中心軸12回りへ任意な回転速度で回転させるための回転駆動手段15とを備えたものとなされている。
このさい、ロール体11bはその左右方向長さL2を、例えば、ダイシングフレームwの外径の凡そ2分の1長さ程度となされ、ダイシングフレームの左右方向中央部を摺擦し得るものとなされる。
【0030】
前後の摺摩手段2a、2bにおける各ロール体11a、11bは、例えば外径凡そ40mm〜60mm程度となされており、また左右方向を複数に分割して複数のロール部分b1のそれぞれを脱着可能に集合させたものとなされている。各ロール部分b1は、図6に示すように、直径凡そ20mm〜30mm程度の内孔16aを有し肉厚数mmの合成樹脂材製短管16を中心部に配置され、該短管16の外周面にメラミンスポンジ材からなる円筒部材の内周面を接着剤で固着された状態となされている。
【0031】
各ロール体11a、11bをその対応する左右向き回転中心軸12に固定させるさいは、複数のロール部分b1をそれぞれの合成樹脂材製短管16の内孔16cやスペーサを介して各左右向き回転中心軸12の特定位置に外嵌状に位置させると共に各ロール部分b1をその交換装着が可能なようにネジ止め部材17を介して締結状に固定化させる。
【0032】
上記ロール上下駆動手段14のそれぞれは、縦向き支持板6の片面に基礎板6aを固着し、該基礎板6aの上下方向箇所に前後一対の縦向き案内軌道部材18、18を第一搬送部2cの搬送経路の高さ位置で振り分けとなるように固定し、これら一対の案内軌道部材18、18に上下一対の箱形案内台19、19を上下移動のみ自在に案内させると共に、これら案内台19、19のそれぞれに逆ネジの関係となる雌ネジを具備したナット部材20を固定し、これらナット部材20、20のそれぞれに、上半部及び下半部に逆向きの雄ネジの形成された単一のネジ軸21の対応する雄ネジを螺合させ、一方では基礎板6aの比較的上方箇所から片持ち状に張り出された左右向き支持板22にネジ軸21を回転のみ自在に支持する軸受部材23を固定すると共に、左右向き支持板22の先端寄り箇所の下面にサーボモータ24を上向き姿勢に固定し、このサーボモータ24の出力軸に固定された歯付原動車25と、ネジ軸21の上端部に固定された歯付従動車26とに無端状の歯付ベルト27を掛け回した構成となされている。
なお、歯付従動車26の上側には該従動車26の回転位置を検出するセンサ28が設けられている。
【0033】
そして上記回転駆動手段15のそれぞれは、各案内台19に電動モータ29を第一搬送部2cの搬送方向前側へ向かって右向きとなるように固定し、一方では上下一対の左右向き回転中心軸12、12のそれぞれを、その対応する案内台19に固定された左右向き軸受部材30に回転のみ自在に挿設し、これら回転中心軸12、12とその対応する電動モータ29の出力軸とを平歯車機構31を介して連動連結した構成となされている。
さらに各案内台19或いはこれの近傍にはその対応するロール体11a、11bの周辺の第一搬送部2cへ向け水を供給するための注水ノズル2eが設けられる。
【0034】
上記のように形成された前後の摺擦手段2a、2bのそれぞれは第一搬送部2cで水平姿勢を維持されて前方へ水平に搬送されているダイシングフレームwの上下面に注水ノズル2eが水を供給し、該上下面を、ロール体11a、11bが均等な圧力で挟み付けて摺擦するものとなされる。このさい、各ロール体11a、11bはダイシングフレームwに第一搬送部2cの搬送方向後側へ向かう摩擦力を付与する方向へ回転されるものとなすのが効果的な摺擦作用を発生させる上で好ましい。
【0035】
注水洗浄部3は、第一搬送部2cの搬送したダイシングフレームwを受け継いでさらに前方へ水平姿勢のまま搬送する第二搬送部3aと、この第二搬送部3aで搬送されているダイシングフレームwに上下から水を噴射するものとした複数の注水ノズル3bとを備えたものとなされている。
【0036】
上記第二搬送部3aはダイシングフレームwを挟み付けてこれに送り力を付与する上下一対の左右向き搬送ローラ32、32や、ダイシングフレームwを下方から支持して送り力を付与する左右向きの支持搬送ローラ33を備えたものとなされる。このさい、下側の左右向き搬送ローラ32や、支持搬送ローラ33は任意な回転速度の得られる電動モータにより回転駆動される。このさい、下側の左右向き搬送ローラ32は第一搬送部2cに同調した搬送速度の得られるものとなされる。
【0037】
乾燥処理部4は、第二搬送部3aの搬送したダイシングフレームwを挟み付けてこれに送り力を付与すると共にダイシングフレームwの上下面に接触してこれに付着した水を吸引除去するものとした上下一対の左右向きスポンジ搬送ローラ34、34やこれらのローラ34、34から適時に水分を絞り除去する図示しない水分排除機構を具備した水分拭い取り装置や、この水分拭い取り装置で処理された後のダイシングフレームwを挟み付けてこれに送り力を付与する上下一対の左右向き搬送ローラ35、35を備えて、これら搬送ローラ34、35によりダイシングフレームwを乾燥処理部4のダイシングフレームw搬送方向前側まで水平姿勢のまま搬送するものとなされた第三搬送部4aと、この第三搬送部4aで搬送され水分拭い取り装置の後側に達したダイシングフレームwに上下から空気を噴き当ててその上下面に付着した水分を蒸散させるように作用する複数の空気噴射ノズル4bとを備えたものとなされている。
【0038】
被処理物取出部5は、台a1上にダイシングフレームwが載置されているときには台a1上の最上位のダイシングフレームwの高さを、一方、台a1上にダイシングフレームwが載置されていないときには台a1上面の高さを、第六特定位置p6の下側近傍に合致させるための台上下駆動手段5aが設けられたものとなされている。
【0039】
そして乾燥処理部4と被処理物取出部5との間には、第三搬送部4aの搬送終点まで搬送されたダイシングフレームwを第五特定位置p5まで引き移動させる引寄せ取出部36と、第五特定位置p5のダイシングフレームwを第六特定位置p6まで吊り搬送しここで落下させるものとした取出側吊り搬送部37とが設けられている。
【0040】
次に上記した洗浄装置の使用例及び各部の作動について説明する。
作業者はウエハの取り除かれたダイシングフレームwを、エヌメチルピィロリドン(NMP)液などの溶剤に浸漬するなどの前処理をすることなく台a1上に水平状且つ段重ね状に載置し、この状態の台a1を被処理物投入部1内の投入特定位置p01に押し込むと共に、被処理物取出部5の内方には空状態の台a1を取出特定位置p02に挿入し、この後、図示しない制御装置の始動スイッチを入り操作する。
【0041】
これにより、台上下駆動手段1aが作動し、台a1上の最上位のダイシングフレームwの高さを第一特定位置p1に合致させるのであり、この合致に関連して、供給側吊り搬送部9が第一特定位置p1に合致された一枚のダイシングフレームwを吊り搬送し第二特定位置p2に落下させる。次に押し込み供給部10が第二特定位置p2のダイシングフレームwを第三特定位置p3へ向け押し込み移動させる。
【0042】
一方、台a1上に載せられたダイシングフレームw群は第一特定位置p1のダイシングフレームwを次工程へ吊り搬送されることにより、その分、台a1上の最上位のダイシングフレームwの高さは低くなるが、これに関連して、台上下駆動手段1aが現時点の台a1上の最上位のダイシングフレームwの高さを自動的に第一特定位置p1に合致させるように台a1の高さを調整し、次の供給側吊り搬送部9による最上位のダイシングフレームwの吊り搬送に備える。
【0043】
押し込み供給部10によるダイシングフレームwの押し込み移動が一定程度まで進行したとき、第一搬送部2cは左右向き搬送ローラ2dによりそのダイシングフレームwを水平姿勢状態でさらに前方へ適当速度で搬送する。
【0044】
こうして搬送されるダイシングフレームwが前側の摺擦手段2aに到達したとき、この摺擦手段2aの上下一対の回転ロール部13、13のロール体11a、11aが電動モータ29、29の作動により回転駆動されながらサーボモータ24の作動により上下方向へ近接移動されて、そのダイシングフレームwの上下面に適当圧力で押圧される。
【0045】
このさい、各ロール体11aのダイシングフレームwに対する押圧力は、直径50mm〜60mm程度のロール体11aがダイシングフレームwに圧接されたときにその径方向へ凡そ2mm程度圧縮変形される程度の大きさとなされるのであり、この押圧力の調整はサーボモータ24のトルクの変化により実現される。各ロール体11aの回転速度は電動モータ29の回転速度の変更調整により任意な大きさに設定されるようになすのがよいのであり、例えば、毎分数百回転程度に設定される。
【0046】
また第一搬送部2cの作動中には、ダイシングフレームの搬送経路の上下に設けられた注水ノズル2eから洗剤の含まれない水道水などの真水が比較的少ない流量で噴射される。
【0047】
これにより、前側の摺擦手段2aの各ロール体11aはダイシングフレームwの上下面の左右端部の特定範囲(図5中のダイシングフレームの斜線箇所)を適当圧で摺擦するものとなり、この摺擦中には、ロール体11aのメラミンスポンジ材が吸水した状態で回転されるため、これらロール体11aのメラミンスポンジ材は回転に伴う遠心力の作用も加わってその比較的硬質な外周面がダイシングフレームwの上下面に均等に当接した状態となって、ダイシングフレームwの上下面の何れか一方の面又は両面に付着した糊剤を細片化させつつダイシングフレームw表面から効果的に分離させるものとなる。
【0048】
このようなロール体11aの処理中、ロール体11aの外周面はミラミンスポンジ材の硬質性の故にその表面が細片化状に破砕されてポロポロと剥げ落ちるように摩耗していくのであり、この摩耗はロール体11aのダイシングフレームwに対する圧接力を低下させるため、該圧接力の低下を回避するべく、上下のロール体11aは自動制御により摩耗を補う速度で連続的に或いは断続的に近接移動させられるのである。この近接移動の速度は実際の処理結果に基づいてその大きさを決定すればよいのであり、例えば、ダイシングフレームwを40枚〜50枚程度処理したときに上下の各回転ロール部13が凡そ0.1mm〜0.2mm程度移動するような大きさとなすのがよい。この近接移動により、ロール体11aはダイシングフレームwの摺擦中、常に最適圧力で接触され、その効果的な処理がいつまでも継続されるものとなる。
【0049】
前側の摺擦手段2aによる処理の終了したダイシングフレームwは、この後、後側の摺擦手段2bに到達するが、このとき、後側の摺擦手段2bの上下一対の回転ロール部13、13のロール体11bが前側の摺擦手段2aの場合に準じて作動されるのであり、これにより上下のロール体11b、11bはダイシングフレームwの左右方向中央部の上下面の何れか一方の面又は両面に付着した糊剤を前側の摺擦手段2aの場合と同様に細片化させつつダイシングフレームwから効果的に分離させるものとなり、またダイシングフレームwの摺擦処理中、上下のロール体11b、11bが適当速度で近接移動されてその効果的な処理が先と同様にいつまでも継続されるものとなる。
【0050】
こうして前後の摺擦手段2a、2bにより摺擦処理されたダイシングフレームwはその上下面に付着していた糊剤などの汚染物質を完全な非結合状態となされた状態となっており、以後、第一搬送部2cにより注水洗浄部3の第二搬送部3aの搬送始点まで搬送される。
【0051】
第二搬送部3aは上下一対の左右向き搬送ローラ32、32や左右向き支持ローラ33により該ダイシングフレームwを受け継いで水平姿勢のままさらに前方へ搬送するのであり、この搬送中にダイシングフレームwはその上下面の全体に注水ノズル3bから水を噴射され、その表面上に洗い流し可能な状態で存在している糊剤などを下方へ洗い流される。
【0052】
第二搬送部3aで搬送されたダイシングフレームwは次に乾燥処理部4の第三搬送部4aの左右向きスポンジ搬送ローラ34、34にその上下面を挟持されて前方へ搬送されるのであり、この搬送中に各スポンジ搬送ローラ34の外周面がダイシングフレームwに接触してこれの上下面に付着した水分を拭い去るように吸引除去する。この後、第三搬送部4aはこのダイシングフレームwをさらに前方へ搬送するのであり、この搬送中に、空気噴射ノズル4bが該ダイシングフレームwの上下面の全体に空気(湿度の低いものがよい)を吹きかけることにより、該ダイシングフレームwの上下面に極薄厚状に付着している状態の極小径の水粒からなる水分を蒸散させるのである。
【0053】
第三搬送部4aの搬送終点までダイシングフレームwが搬送されると、引き寄せ取出部36がそのダイシングフレームwを第五特定位置p5まで引き移動させ、次に取出側吊り搬送部37がそのダイシングフレームwを第六特定位置p6に吊り搬送する。こうして搬送されたダイシングフレームwは第六特定位置p6にて取出側吊り搬送部37の吊り支持を解放されるのであり、この解放により、被処理物取出部5において既に台上下駆動手段5aの作動により特定高さに保持されている台a1の上面に直接に落下され或いは台a1上の既に載せられているダイシングフレームwの最上位のものの真上に落下されて段重ね状態に支持されるものとなる。
【0054】
こうしてダイシングフレームwが台a1に支持されたとき、この支持されたダイシングフレームwの高さが第六特定位置p6よりも僅かに低い状態となるように、台上下駆動手段5aが台a1の高さを自動的に調整する。
【0055】
以上は1枚のダイシングフレームwの処理における各部の作動を処理順に説明したのであるが、実際の処理においては、被処理物投入部1の台a1上のダイシングフレームwは1枚づつ次々と自動的に後工程へ搬送されて洗浄され乾燥された後、被処理物取出部5の台a1上に段重ね状に載置されていくのであり、この処理中に、被処理物投入部1の台a1上のダイシングフレームwが無くなって最後のダイシングフレームwが被処理物取出部5の台a1上に収集されたとき、各部の作動は自動的に或いは作業者による停止スイッチの入り操作により停止される。
【0056】
この後、作業者は被処理物取出部5から台a1上に段重ね状に載置された処理済みのダイシングフレームw群をこれを支持した台a1と共に外方へ取り出す。以後は上記と同様な処理が繰り返される。
【0057】
上記した摺擦洗浄部2や注水洗浄部3の処理では水に糊剤などの混入した廃水が生じるが、この廃水はそのまま、或いは糊剤を漉し取った後に、自然界に放流される。
【0058】
また摺擦洗浄部2でダイシングフレームwを摺擦洗浄するとき、図5から判断されるように、前側の摺擦手段2aの各ロール体11aはダイシングフレームwの左右各端部上を前後方向の比較的長い距離L3に渡って圧接されるものとなり、一方、後側の摺擦手段2bの各ロール体11bはダイシングフレームwの左右方向中央部上を前後方向の比較的短い距離(例えば距離13の半分大きさ)に渡って圧接されるものとなるのであり、したがって前後の摺擦手段2a、2bのロール体11a、11bの消耗速度は大きく相違し、その交換時期が大幅に異なるものとなるが、この場合、消耗の激しい前後何れかの各ロール体11a又は11bのみを新しいものと交換するように対処することができる。
【0059】
また前後の各ロール体11a、11bにおいて、その左右方向各部の消耗速度はダイシングフレームwのサイズなどにも関連して大きく相違することが生じ得るのであり、このような場合は激しく消耗したロール部分b1のみをが新しいものと交換するように対処することができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明に係るダイシングフレーム洗浄装置の側面図である。
【図2】前記洗浄装置の平面図である。
【図3】前記洗浄装置をダイシングフレームの搬送方向前方から見た断面図である。
【図4】前記洗浄装置の要部をダイシングフレームの搬送方向前方から見た図である。
【図5】前記洗浄装置の要部をダイシングフレームの上方から見た図である。
【図6】前記洗浄装置のロール体の断面図である。
【符号の説明】
【0061】
2a 前側の摺擦手段
2b 後側の摺擦手段
2c 第一搬送部(被処理物移送手段)
2e 注水手段(注水ノズル)
11a 前側の摺擦手段2aのロール体
11b 後側の摺擦手段2bのロール体
12 左右向き回転軸
13 回転ロール部
14 ロール上下駆動手段
15 回転駆動手段
b1 ロール部分
w ダイシングフレーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メラミンスポンジ材からなるロール体をこれの周面の中心線回りへ回転させ、該回転中にダイシングフレームの被洗浄面に注水しながら該ロール体の周面を前記被処理面に押し当てるように実施することを特徴とするダイシングフレーム洗浄方法。
【請求項2】
ロール体の周面を円筒状となして実施することを特徴とする請求項1記載のダイシングフレーム洗浄方法。
【請求項3】
メラミンスポンジ材からなるロール体と、該ロール体をこれの周面の中心線回りへ回転させる回転駆動手段とを備えていることを特徴とするダイシングフレーム洗浄装置。
【請求項4】
ダイシングフレームを特定平面に沿わせた姿勢に保持し特定方向へ移送する被処理物移送手段と、該移送手段のダイシングフレーム移送経路を挟む両側に特定姿勢となされて位置された対状の2つの回転ロール部と、該2つの回転ロール部を前記移送経路途中の該経路と交叉する方向へ対称状に近接離反作動させるロール上下駆動手段と、該2つの回転ロール部のそれぞれをこれのロール体の周面の中心線回りへ回転させる回転駆動手段と、該2つの回転ロール部に対応した位置から前記移送経路上のダイシングフレームの被処理面に水を注水するための注水手段とを設け、上記ロール体のそれぞれがメラミンスポンジ材で形成されていることを特徴とするダイシングフレーム洗浄装置。
【請求項5】
ダイシングフレームを特定平面に沿わせた姿勢に保持し特定方向へ移送する被処理物移送手段と、該移送手段のダイシングフレーム移送経路上の前後2箇所の各箇所に設けられるもので前記各箇所において前記移送経路を挟む両側にて特定姿勢に保持される対状の2つの回転ロール部と、前記各箇所の対状の2つの回転ロール部を前記移送経路途中の該経路と交叉する方向へ対称状に近接離反作動させるロール上下駆動手段と、前記回転ロール部のそれぞれをこれのロール体の周面の中心線回りへ回転させる回転駆動手段と、前記回転ロール部に対応した位置から前記移送経路上のダイシングフレームの被処理面に水を注水するための注水手段とを設け、前後箇所の何れか一方箇所の対状の2つの回転ロール部はダイシングフレームの移送方向に向かっての左右端部に同時に押し当てられる左右一対のロール体を具備し、そして他方箇所の対状の2つの回転ロール部はダイシングフレームの移送方向に向かっての左右巾中央部に押し当てられるロール体を具備していることを特徴とするダイシングフレーム洗浄装置。
【請求項6】
前記対状の2つの回転ロール部が前記回転駆動手段で回転駆動され前記ロール上下九駆動手段の作動によりダイシングフレームの被処理面に押し当てられた状態で該被処理面を摺擦洗浄しているとき、前記ロール上下駆動手段が前記対状の2つの回転ロール部をそれらのロール体の摩耗速度に関連した特定速度で漸次に近接させるように作動する構成を特徴とする請求項4又は5記載のダイシングフレーム洗浄装置。
【請求項7】
前記ロール体が前記中心線の方向を複数のロール部分に分割されており、且つ、該ロール部分のそれぞれが脱着可能になされていることを特徴とする請求項3、4、5又は6記載のダイシングフレーム洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−178707(P2009−178707A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−48708(P2008−48708)
【出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(591182950)大宮工業株式会社 (10)
【Fターム(参考)】