説明

ダイシング加工装置

【課題】単一のイオンブロー手段を用いて、装置内の複数箇所においてワークに除電処理を施すことができるダイシング加工装置を提供すること。
【解決手段】ダイシング加工装置1は、噴出口143からのイオン化されたエアが、スピンナ洗浄手段10のスピンナテーブル101上のワークおよび仮置部11上のワークに吹き付けるように調整する調整部144を有するイオンブロー手段14を備える。調整部144は、スピンナ洗浄手段101のスピンナテーブル101から仮置部11までワークを搬送している間は、搬送アーム13に保持されたワークへ向けてイオン化されたエアを吹き付けるように噴出口143の向きを調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハなどのワーク(被加工物)を加工手段まで搬送してダイシング加工を施す装置に係り、特に、ワークの除電処理に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程においては、ワーク表面に分割予定ラインが格子状に配列され、この分割予定ラインによって区画された複数の領域それぞれにIC,LSIなどのデバイスが形成される。そして、これらのデバイスが形成された各領域が分割予定ラインに沿って切断、すなわち、ダイシングされることにより、個々のチップが製造される。
【0003】
ワークをダイシングする装置としては、チャックテーブルに吸着保持されたワークを、切削ブレードによって切削する切削装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
このような切削装置においては、ワークの加工時および洗浄時に静電気が発生し、この静電気がワークに形成されたデバイスにダメージを与え品質が低下する原因となることがあった。そこで、ワークに帯電した静電気を除去するために、切削装置内に、イオン化されたエアを噴出するイオンブロー手段を設置する技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−358093号公報
【特許文献2】特開2004−327613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ダイシング加工装置内において特に除電が必要とされる箇所としては、スピンナ洗浄部分および処理後のワークをカセットに収容する直前にワークを載せる仮置部が挙げられる。
【0007】
しかしながら、スピンナ洗浄部分用および仮置部用にそれぞれイオンブロー手段を設置する場合には、加工装置にこれらのイオンブロー手段を配置するスペースが必要となり、他の構成部材のためのスペースを圧迫するという問題がある。また、2つのイオンブロー手段のための材料費が必要となるだけでなく、これらのイオンブロー手段をダイシング加工装置に設置するための作業費が必要となるため、ダイシング加工装置の製造コストが上昇するという問題がある。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、単一のイオンブロー手段を用いて装置内の複数箇所においてワークに除電処理を施すことができるダイシング加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のダイシング加工装置は、ワークを保持する保持手段と、前記保持手段に保持された前記ワークを加工する加工手段と、複数の前記ワークを収容したカセットを載置するカセットステージと、前記カセットに前記ワークを収容する直前に前記ワークを仮置する仮置部と、前記加工手段で加工された前記ワークをスピン洗浄するスピンナ洗浄手段と、前記ワークにイオン化されたエアを吹きつけて前記ワークの帯電を緩和するイオンブロー手段と、前記保持手段と前記仮置部と前記スピンナ洗浄手段との間において前記ワークを搬送する搬送手段と、有するダイシング加工装置であって、前記イオンブロー手段は、前記イオン化されたエアを噴出する噴出口と、前記噴出口の向きを調整することによって前記イオン化されたエアの吹きつけ位置を調整する調整部と、前記調整部を動作させる制御部と、を有し、前記制御部は、前記スピンナ洗浄手段によって前記ワークが洗浄された後に、前記スピンナ洗浄手段の保持テーブルからワークが搬出される際には、前記噴出口を前記保持テーブル上の前記ワークへ向けて前記イオン化されたエアを吹き付けるよう前記調整部を動作させ、前記ワークを前記カセットに収容する直前に、前記仮置部に前記ワークが載置される際には、前記噴出口を前記仮置部上の前記ワークへ向けて前記イオン化されたエアを吹き付けるよう前記調整部を動作させることを特徴とする。
【0010】
このダイシング加工装置によれば、調整部によりイオンブロー手段の噴出口をスピンナ洗浄手段の保持テーブル上のワークおよび仮置部上のワークにイオン化されたエアが吹き付けるように動作させていることから、装置内を搬送されるワークに追従してイオン化されたエアを吹き付けることができる。これにより、単一のイオンブロー手段を用いて装置内の複数箇所においてワークに除電処理を施すことが可能となる。
【0011】
上記ダイシング加工装置においては、前記制御部が、前記搬送手段が前記スピンナ洗浄手段の保持テーブルから前記仮置部まで前記ワークを搬送している間は、前記噴出口を前記搬送手段に保持された前記ワークへ向けてイオン化されたエアを吹き付けるよう前記調整部を動作させる形態を含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、単一のイオンブロー手段を用いて装置内の複数箇所においてワークに除電処理を施すことができるダイシング加工装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態に係るダイシング加工装置の全体を示す斜視図である。
【図2】同装置に設けられた切削加工手段を示す斜視図である。
【図3】同装置に設けられたイオンブロー手段の動作を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係るダイシング加工装置1の全体を示す斜視図である。なお、以下においては、説明の便宜上、図1に示す右下方側(図1に示すX軸方向側)を「前方側」と呼び、左上方側(図1に示す−X軸方向側)を「後方側」と呼ぶものとする。また、図1に示す左方側(図1に示すY軸方向側)を「左方側」と呼び、右方側(図1に示す−Y軸方向側)を「右方側」と呼ぶものとする。さらに、図1に示す上方側(図1に示すZ軸方向側)を「上方側」と呼び、下方側(図1に示す−Z軸方向側)を「下方側」と呼ぶものとする。
【0015】
図1に示すように、本実施の形態に係るダイシング加工装置1においては、ワークWに対して、装置内部に配設された切削加工手段によって切削加工を施すと共に、切削後のワークWにスピンナ洗浄手段10によって洗浄処理を施すように構成されている。
【0016】
ここで、ダイシング加工装置1の被加工物であるワークWについて説明する。ワークW表面には、分割予定ラインが格子状に配列され、この分割予定ラインによって区画された複数の領域それぞれに図示しないIC,LSIなどのデバイスが形成されている。ワークWは、ダイシング加工装置1により分割予定ラインに沿って切削加工され、個々のチップに分割される。
【0017】
ワークWは、特に限定されないが、例えば、シリコン(Si),ガリウムヒソ(GaAs),シリコンカーバイト(SiC)などの半導体ウェーハや、チップ実装用としてウェーハの裏面に設けられるDAFなどの粘着部材、あるいは、半導体製品のパッケージ、または、セラミック,ガラス,サファイア(Al)系の無機材料基板、LCDドライバなどの各種電子部品、さらには、ミクロンオーダーの加工位置精度が要求される各種加工材料などが挙げられる。
【0018】
ワークWは、環状フレームFの開口部の中心に、拡張テープTを介して支持された状態でダイシング加工装置1に供給される。拡張テープTは、片面(図1に示す上面)が粘着面であり、その粘着面に環状フレームFおよびワークWが貼着される。環状フレームFは、金属などの板材で構成される。
【0019】
拡張テープTを介して環状フレームFに支持されたワークW(以下、「フレームに貼付されたワーク2」という)は、ワーク収容用のカセット3内に、ワークWを上側に配置した状態で収容される。カセット3の内部には、環状フレームFの端部近傍を支持するための左右一対の支持部が上下方向に複数設けられている。この支持部により、フレームに貼付されたワーク2が水平な状態で、かつ、上下方向に一定の間隔をもってカセット3内に収容される。
【0020】
本実施の形態に係るダイシング加工装置1は、図1に示すように、カセット3が上面に載置される基台4と、この基台4の後方側(図1に示す−X軸方向側)に設けられたキャビネット5とを備える。なお、このキャビネット5の左方側側面5aには、操作表示盤6が設けられている。この操作表示盤6は、例えば、タッチパネルで構成される。ダイシング加工に関わる各種設定などは、この操作表示盤6を利用して行われる。
【0021】
基台4上の中央には、ワークWを保持する保持手段としてのチャックテーブル7が設けられている。チャックテーブル7は、基台4内に配設された負圧発生機構に接続され、ワークWを吸着保持可能に構成されている。また、チャックテーブル7は、基台4内に配設された回転駆動機構に接続され、吸着保持したワークWを回転可能に構成されている。
【0022】
チャックテーブル7は、チャックテーブル7を前後方向に搬送可能なテーブル搬送機構の一部を構成するベーステーブル8上に設けられている。このテーブル搬送機構は、基台4の内部に配設された駆動手段に接続され、切削加工前におけるフレームに貼付されたワーク2を着脱する基台4上のワーク着脱位置と、後述する切削加工手段20による加工位置との間でチャックテーブル7を前後方向に往復移動可能に構成されている。
【0023】
基台4上のチャックテーブル7を挟んで左方側部分にはカセットステージ9が設けられ、右方側部分にはスピンナ洗浄手段10が設けられている。カセットステージ9には、複数のフレームに貼付されたワーク2が収容されたカセット3がセットされる。カセットステージ9は、図示しない昇降機構に接続され、上下方向に移動可能に構成されている。
【0024】
スピンナ洗浄手段10は、スピンナテーブル101と、スピンナテーブル101の周囲に設けられた4つのクランプ102とを備える。スピンナテーブル101は、図示しない昇降機構に接続されている。この昇降機構は、スピンナテーブル101を、基台4の表面に露出するワーク受け渡し位置と、基台4内のワーク洗浄位置との間を上下方向に移動させる。ワーク受け渡し位置では、切削加工後または洗浄後のフレームに貼付されたワーク2が着脱される。ワーク洗浄位置では、回転するワークWに対して洗浄処理が施される。洗浄処理においては、洗浄水ノズルから洗浄水が噴出されてワークWが洗浄された後、乾燥エアが吹き付けられる。なお、スピンナテーブル101は、チャックテーブル7と同様に、基台4内に配設された負圧発生機構および回転駆動機構に接続され、ワークWを吸着保持すると共に回転可能に構成されている。
【0025】
チャックテーブル7の上方には、フレームに貼付されたワーク2が一時的に載置される(仮置きされる)仮置部11が設けられている。仮置部11は、互いに接近、離間可能に構成された一対のガイドレール11a、11bを備えている。これらのガイドレール11a、11bは、チャックテーブル7とカセットステージ9との間の基台4から露出すると共に、チャックテーブル7上を延出するように折り曲げられた形状(L字形状)を有している。
【0026】
チャックテーブル7の上方領域には、搬送手段としての搬送アーム12が設けられている。搬送アーム12は、カセット3内のフレームに貼付されたワーク2を、ワーク着脱位置に配置されたチャックテーブル7に搬送する。搬送アーム12は、キャビネット5の前面5bで左右方向に延在して設けられたリニアガイド121と、このリニアガイド121に沿って左右方向に移動可能に支持されるアーム122とを有している。アーム122には、左方側に延出してクランプ部123が設けられると共に、下方側に向けて複数(本実施の形態では4つ)の吸着パッド124が設けられている。クランプ部123は、カセット3に収容された状態のフレームに貼付されたワーク2の環状フレームFを把持する。吸着パッド124は、仮置部11に載置された状態のフレームに貼付されたワーク2の環状フレームFを吸着保持する。また、アーム122は、上下方向に伸縮し、フレームに貼付されたワーク2を吸着保持した状態で上下方向に移動可能に構成されている。
【0027】
スピンナ洗浄手段10の上方領域には、搬送手段としての搬送アーム13が設けられている。搬送アーム13は、チャックテーブル7上のフレームに貼付されたワーク2をスピンナテーブル101上に搬送する一方、スピンナテーブル101上のフレームに貼付されたワーク2を仮置部11に搬送する。搬送アーム13は、キャビネット5の前面5bで左右方向に延在して設けられたリニアガイド131と、このリニアガイド131に沿って左右方向に移動可能に支持されるアーム132とを有している。アーム132には、下方側に向けて複数(本実施の形態では4つ)の吸着パッド133が設けられている。吸着パッド133は、仮置部11に載置された状態のフレームに貼付されたワーク2の環状フレームFを吸着保持する。また、アーム132は、上下方向に伸縮し、フレームに貼付されたワーク2を吸着保持した状態で上下方向に移動可能に構成されている。
【0028】
基台4上におけるスピンナ洗浄手段10の右方側には、イオンブロー手段14が設けられている。イオンブロー手段14は、基台4の前端および後端部に立設された一対の支柱部141a、141bと、これらの支柱部141a、141bの上端部間に回動可能に取り付けられた回動部142と、この回動部142の一面に複数配列して設けられた円筒形状の噴出口143とを備えている。噴出口143は、回動部142の一面で左方側に向かって開口する円筒形状に設けられている。支柱部141a、141bおよび回動部142の内部には、イオン化されたエア(以下、適宜「イオン化エア」という)の流動路が形成され、噴出口143と連通している。また、これらの流動路は、基台4内に装備された図示しないイオン化エア生成装置に接続されている。このイオン化エア生成装置で生成されたイオン化エアが、支柱部141a、141bおよび回動部142内の流動路を通過して噴出口143から噴出される。なお、イオン化エア生成装置としては、例えば、針状の電極に電圧をかけてコロナ放電を起こし、この電極付近を通過するエアをイオン化する装置などが適している。
【0029】
支柱部141a、141bには、調整部144が設けられている。調整部144は、基台4内に装備された図示しない駆動機構に接続され、回動部142の回動位置を調整することで噴出口143を任意の向きに調整する。これにより、噴出口143からのイオン化エアの吹き付け位置が調整される。調整部144による回動部142の回動位置の調整は、後述する制御部15からの制御信号に基づく。
【0030】
制御部15は、本実施の形態に係るダイシング加工装置1全体の制御を行う。例えば、制御部15は、搬送アーム12、13における搬送制御、チャックテーブル7における移動制御および回転制御、ならびに、スピンナ洗浄手段10における昇降制御、回転制御および洗浄制御を行う。また、制御部15は、イオンブロー手段14における噴出口143からの噴出制御や、回動部142の回動制御(イオン化エアの吹き付け位置の調整制御)を行う。
【0031】
ここで、本実施の形態に係るダイシング加工装置1が有する加工手段としての切削加工手段20の構成について説明する。図2は、本実施の形態に係るダイシング加工装置1が有する切削加工手段20の斜視図である。なお、図2においては、ベーステーブル8がテーブル搬送機構により後方側に移動され、チャックテーブル7加工位置に配置された状態について示している。上述したように、切削加工手段20は、キャビネット5内に配置されている。
【0032】
切削加工手段20は、フレームに貼付されたワーク2を保持したチャックテーブル7と、切削ブレード21を有する一対のブレードユニット22a、22bとを相対移動させてワークWを切削するように構成されている。切削加工手段20は、テーブル搬送機構を跨ぐように立設した門型の柱部23を備えている。柱部23の前面には、チャックテーブル7の上方において一対のブレードユニット22a、22bを左右方向に移動させる一対のブレードユニット移動機構24a、24bが設けられている。
【0033】
ブレードユニット移動機構24a、24bは、左右方向(Y軸方向)に延びる一対のガイドレールをスライド可能に設けられた一対のY軸テーブル25a、25bを備えている。また、ブレードユニット移動機構24a、24bは、各Y軸テーブル25a、25bの前面に配置され、上下方向(Z軸方向)に延びる一対のガイドレールをスライド可能なZ軸テーブル26a、26bを備えている。これらのZ軸テーブル26a、26bの下端部にブレードユニット22a、22bが取り付けられている。
【0034】
このような構成を有し、切削加工手段20は、加工位置に配置されたチャックテーブル7の位置を調整するとともに、ブレードユニット移動機構24a、24bでブレードユニット22a、22bの位置を調整し、チャックテーブル7上のワークWに対して切削加工を行う。
【0035】
次に、本実施の形態に係るダイシング加工装置1におけるワークWに対する切削加工動作について図1および図2を参照しながら説明する。ワークWに対する切削加工を行う場合、カセットステージ9が上昇または下降して所定の高さに位置した後、搬送アーム12が左方側に移動する。そして、クランプ部123によりカセット3内のフレームに貼付されたワーク2のうちの1枚が把持された状態で右方側に引き出され、仮置部11に仮置される。
【0036】
仮置部11に仮置されたフレームに貼付されたワーク2は、チャックテーブル7と同心に位置合わせされる。そして、搬送アーム12の吸着パッド124により吸着保持された後、搬送アーム12が下方側に伸び、フレームに貼付されたワーク2がチャックテーブル7上に載置されると、吸着パッド124の吸着が解除される。なお、チャックテーブル7は、負圧発生機構により負圧が発生した状態となっている。これにより、フレームに貼付されたワーク2は、ワーク着脱位置に位置付けられているチャックテーブル7上に吸着保持される。
【0037】
続いて、ワークWへの切削加工工程に移る。切削加工工程においては、まず、ベーステーブル8が移動することにより、フレームに貼付されたワーク2を保持したチャックテーブル7が、後方側の一対のブレードユニット22a、22bに対向する加工位置に移動される(図2参照)。そして、一対のブレードユニット22a、22bの切削ブレード21が、Y軸テーブル25a、25bによってワークWのX軸方向の分割予定ラインに位置合わせされる。その後、一対のブレードユニット22a、22bが、Z軸テーブル26a、26bによって下方移動され、高速回転した切削ブレード21によってワークWが切り込まれる。
【0038】
切削ブレード21によりワークWが切り込まれると、チャックテーブル7が前方側(X軸方向側)に切削送りされ、ワークWの分割予定ラインに沿って切削加工が施される。1本の分割予定ラインに沿ってワークWを切削し終えると、一対のブレードユニット22a、22bがY軸方向に1チップ分だけ移動し、切削ブレード21が隣接する分割予定ラインに位置合わせされる。そして、再びチャックテーブル7が前方側(X軸方向側)に切削送りされ、当該分割予定ラインに沿って切削加工が施される。この動作が繰り返されて、ワークWのX軸方向のすべての分割予定ラインに沿って切削加工が施される。
【0039】
チャックテーブル7上のワークWについて、X軸方向のすべての分割予定ラインに沿ってダイシング加工が施されると、チャックテーブル7が90度回転し、ワークWのY軸方向の分割予定ラインに沿った切削加工が開始される。そして、チャックテーブル7上のワークWのすべての分割予定ラインに沿った切削加工が完了すると、チャックテーブル7はワーク着脱位置に戻される。
【0040】
続いて、フレームに貼付されたワーク2が、搬送アーム13によってスピンナ洗浄手段10に搬送され、ワークWの洗浄工程に移る。この場合、搬送アーム13のアーム132が下方側に伸び、吸着パッド133が環状フレームFに吸着する。同時に、チャックテーブル7の負圧吸着が解除され、フレームに貼付されたワーク2全体が吸着パッド133に保持される。そして、アーム132が上方側に縮み、フレームに貼付されたワーク2を上昇させてから右方側に移動する。スピンナ洗浄手段10の上方において、搬送アーム13のアーム132が下方側に伸び、フレームに貼付されたワーク2がスピンナテーブル101上に載置されると、吸着パッド133の吸着が解除される。なお、スピンナテーブル101は、負圧発生機構により負圧が発生した状態となっている。これにより、フレームに貼付されたワーク2は、スピンナ洗浄手段10のワーク受け渡し位置に位置付けられているスピンナテーブル101上に吸着保持される。
【0041】
続いて、スピンナテーブル101がワーク洗浄位置に下降して回転し、さらにクランプ102によって環状フレームFが保持される。その後、回転するワークWに洗浄水ノズルから洗浄水が噴出されて、ワークWが洗浄される。この洗浄後、ワークWには乾燥エアが吹き付けられるなどの乾燥処理がなされる。ワークWの洗浄および乾燥が完了すると、スピンナテーブル101がワーク受け渡し位置に上昇する。
【0042】
このように、スピンナ洗浄手段10による洗浄工程においては、スピンナテーブル101が高速回転することによりワークWが洗浄される。そのため、ワークWを保持するスピンナテーブル101表面と、スピンナテーブル101に接触するワークW裏面との間には、摩擦によって静電気が生じる。したがって、ワークWに形成されたデバイスの品質低下を防ぐためにも、ワークWに帯電した静電気を除去する必要がある。
【0043】
そこで、ワーク受け渡し位置にスピンナテーブル101が上昇すると同時またはその一定時間前から、ワークWに帯電した静電気を除去するため、イオンブロー手段14の噴出口143から、スピンナテーブル101上のワークWの上面に向かって、イオン化エアが噴出される。イオン化エアは、プラスイオンとマイナスイオンとを適宜生成する。ワークWに帯電した静電気がプラスである場合は、マイナスイオンによって中和される。一方、ワークWに帯電した静電気がマイナスである場合は、プラスイオンによって中和される。このようにワークWの上面に向けてイオン化されたエアを噴出することにより、ワークWに帯電した静電気を除去することができる。
【0044】
続いて、搬送アーム13のアーム132が下方側に伸び、吸着パッド133が環状フレームFに吸着する。同時に、スピンナテーブル101の負圧吸着が解除され、フレームに貼付されたワーク2全体が、搬送アーム13に保持される。そして、搬送アーム13が左方側に移動され、フレームに貼付されたワーク2が仮置部11上まで搬送される。
【0045】
ワークWをスピンナテーブル101の保持面から離反すると、ワークWの裏面には剥離帯電が発生する。そのため、スピンナテーブル101の保持面からワークWを離反させ、搬送アーム13によって仮置部11まで搬送する際にも、イオンブロー手段14の噴出口143から、搬送中のワークWの上面および下面に向かって、イオン化エアが噴出される。このように搬送中のワークWの上面および下面に向けてイオン化エアを噴出することにより、ワークWに帯電した静電気をより効果的に除去することができる。
【0046】
仮置部11に載置されたフレームに貼付されたワーク2は、搬送アーム12のクランプ部123によって把持された後、アーム122が左方側に移動することにより、カセット3内に搬入される。このとき、カセット3に搬入されるワークWの除電を確実にするため、イオンブロー手段14の噴出口143から、仮置部11上のワークWの上面および下面に向かって、イオン化されたエアが噴出される。このようにカセット3内の収容される直前のワークWの上面および下面に向けてイオン化エアを噴出することにより、ワークWに帯電した静電気をより効果的に除去することができる。
【0047】
以上のように、本実施の形態に係るダイシング加工装置1において、ワークWはカセット3から搬出されて、ダイシング加工工程と洗浄工程がなされた後、カセット3に搬入される。この場合において、ワークWには、スピンナ洗浄手段10による洗浄処理後、スピンナテーブル101から仮置部11までの搬送工程、ならびに、仮置部11に載置された状態でイオン化エアが上面および下面(スピンナテーブル101上では上面のみ)に噴出されることから、カセット3内に収容するまでに効果的にワークWに帯電した静電気を除去することができる。
【0048】
図3は、本実施の形態に係るダイシング加工装置1のイオンブロー手段14の噴出口143の動作を説明するための模式図である。なお、図3(a)ではワークWがスピンナテーブル101上に配置された状態を示し、図3(b)ではワークWがスピンナテーブル101から仮置部11まで搬送されている途中の状態を示し、図3(c)ではワークWが仮置部11上に配置された状態を示している。なお、イオンブロー手段14の噴出口143から噴出されるイオン化エアの噴出圧は、常に一定であるものとする。
【0049】
図3(a)に示すように、ワークWがスピンナテーブル101上に配置される場合には、矢印Aで示すように噴出口143から噴出されるイオン化エアの吹き付け位置が、スピンナテーブル101上のワークWの上面となるように、制御部15によって調整部144が動作される。これにより、噴出口143が下方側に向くように回動部142の回動位置が調節され、噴出口143から、スピンナテーブル101上のワークWの上面に向かって、イオン化エアが噴出される。
【0050】
また、図3(b)に示すように、ワークWがスピンナテーブル101から仮置部11まで搬送されている途中である場合には、矢印Bで示すように噴出口143から噴出されるイオン化エアの吹き付け位置が、搬送中のワークWの上面および下面となるように、制御部15によって調整部144が動作される。これにより、図3(a)に示す状態から噴出口143が上方側に向くように回動部142の回動位置が調節され、スピンナテーブル101から仮置部11まで搬送中のワークWの上面および下面に向かって、イオン化エアが噴出される。静電気はワークWの裏面にも帯電しているため、ワークWの下面にもイオン化エアを吹き付けることは、ワークWの除電に効果的である。
【0051】
さらに、図3(c)に示すように、ワークWが仮置部11上に配置された場合には、矢印Cで示すように噴出口143から噴出されるイオン化エアの吹き付け位置が、仮置部11上のワークWの上面および下面となるように、制御部15によって調整部144が動作される。これにより、図3(b)に示す状態から噴出口143が下方側に向くように回動部142の回動位置が調節され、仮置部11上のワークWの上面および下面に向かって、イオン化エアが噴出される。
【0052】
すなわち、本実施の形態に係るダイシング加工装置1においては、スピンナ洗浄手段10による洗浄処理からカセット3に収容されるまでの間、ワークWの位置に追従して噴出口143の向きを調整し、イオン化されたエアをその上面(上面および下面)に吹き付けている。これにより、帯電し易い洗浄処理の直後から、カセット3に収容される直前までワークWに帯電した静電気を効果的に除去することができるものとなっている。
【0053】
以上説明したように、本実施の形態に係るダイシング加工装置1によれば、調整部144により噴出口143を、チャックテーブル7上のワークWおよび仮置部11上のワークWにイオン化されたエアが吹き付けるように動作させている。これにより、装置内を移動するワークWに追従して、イオン化されたエアを吹き付けることができる。この結果、単一のイオンブロー手段14を用いて装置内の複数箇所においてワークWに除電処理を施すことが可能となる。したがって、装置内のスペースを圧迫することなく、ワークWの確実な除電が可能なイオンブロー手段14を備えたダイシング加工装置1が実現できる。
【0054】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0055】
例えば、上記実施の形態においては、イオンブロー手段14の噴出口143から噴出されるイオン化されたエアの噴出圧が常に一定である場合について説明しているが、その噴出圧については適宜変更が可能である。例えば、ワークWとの距離に応じて噴出圧を調整するようにしてもよい。また、ワークWにおける帯電量に応じてその噴出圧を調整することも可能である。これらのように変更する場合、ワークWとの距離またはワークWにおける帯電量に応じて柔軟に噴出圧を調整できるので、より効果的にワークWに対して除電処理を施すことが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
単一のイオンブロー手段を用いて、装置内の複数箇所においてワークに除電処理を施すことができるため、上記ダイシング加工装置に限られず、レーザによるダイシング加工、研削加工、研磨加工などを行う、種々の加工装置に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0057】
1 ダイシング加工装置
2 フレームに貼付されたワーク
3 カセット
4 基台
5 キャビネット
5a 左方側側面
5b 前面
6 操作表示盤
7 チャックテーブル
8 ベーステーブル
9 カセットステージ
10 スピンナ洗浄手段
101 スピンナテーブル
102 クランプ
11 仮置部
11a,11b ガイドレール
12,13 搬送アーム
121,131 リニアガイド
122,132 アーム
123 クランプ部
124,133 吸着パッド
14 イオンブロー手段
141a,141b 支柱部
142 回動部
143 噴出口
144 調整部
15 制御部
20 切削加工手段
21 切削ブレード
22a,22b ブレードユニット
23 柱部
24a,24b ブレードユニット移動機構
W ワーク
F 環状フレーム
T 拡張テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを保持する保持手段と、
前記保持手段に保持された前記ワークを加工する加工手段と、
複数の前記ワークを収容したカセットを載置するカセットステージと、
前記カセットに前記ワークを収容する直前に前記ワークを仮置する仮置部と、
前記加工手段で加工された前記ワークをスピン洗浄するスピンナ洗浄手段と、
前記ワークにイオン化されたエアを吹きつけて前記ワークの帯電を緩和するイオンブロー手段と、
前記保持手段と前記仮置部と前記スピンナ洗浄手段との間において前記ワークを搬送する搬送手段と、を有するダイシング加工装置であって、
前記イオンブロー手段は、
前記イオン化されたエアを噴出する噴出口と、
前記噴出口の向きを調整することによって前記イオン化されたエアの吹きつけ位置を調整する調整部と、
前記調整部を動作させる制御部と、を有し、
前記制御部は、前記スピンナ洗浄手段によって前記ワークが洗浄された後に、前記スピンナ洗浄手段の保持テーブルからワークが搬出される際には、前記噴出口を前記保持テーブル上の前記ワークへ向けて前記イオン化されたエアを吹き付けるよう前記調整部を動作させ、前記ワークを前記カセットに収容する直前に、前記仮置部に前記ワークが載置される際には、前記噴出口を前記仮置部上の前記ワークへ向けて前記イオン化されたエアを吹き付けるよう前記調整部を動作させることを特徴とするダイシング加工装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記搬送手段が前記スピンナ洗浄手段の保持テーブルから前記仮置部まで前記ワークを搬送している間は、前記噴出口を前記搬送手段に保持された前記ワークへ向けてイオン化されたエアを吹き付けるよう前記調整部を動作させる請求項1記載のダイシング加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−49359(P2012−49359A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−190644(P2010−190644)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】