説明

ダイボンダ及び半導体製造方法

【課題】1つのシリンジで塗布する場合には、塗布面積が大きい場合には時間がかかる。また、複数のシリンジで塗布する場合には、それぞれのシリンジの違い(圧力さ、ペースト量、等)により、流動性材料を同一の塗布量にすることが難しく、塗布むらや断線が発生し易い。本発明の目的は、上記のような問題に鑑み、複数のシリンジで塗布作業を短時間とし、かつ、塗布形状が安定した半導体製造方法を提供する
【解決手段】X軸およびY軸方向に任意の距離を相対的に水平移動する基板に流動性材料で所定のパターンを描画塗布して形成するペースト塗布方法であって、複数のシリンジそれぞれが異なるサブパターンを描画塗布して1つのパターンを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイボンダ及び半導体製造方法に関わり、特に、半導体製造装置におけるダイボンディングや部品マウントに適用する複数ヘッドで描画塗布するペースト塗布方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、半導体装置(または半導体集積回路装置)の製造プロセスにおいては、ダイボンディング用液状接着剤(例えば、エポキシ系接着剤)、等の流動性材料をプリント基板等の被塗布基板に塗布する。このとき、先に、下方に塗布ノズル(以下、ノズルと称する)があるシリンジにペースト状の接着剤を入れておいて、そこにディスペンサ装置から一定の時間、空気等の加圧気体を供給して、シリンジのノズルから所定量の流動性材料を吐出させることにより、被塗布基板(以下、基板と称する)に接着剤等の流動性材料を塗布する。塗布時には、このノズルを基板に近接させた状態で、シリンジをXY平面内で2次元的に一筆書き走査することによって描画塗布動作を行う(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−26851号公報
【特許文献2】特開2003−53238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように、従来のペースト塗布では、1つのシリンジ(シングルノズル)で流動性材料を塗布する方式と複数のシリンジ(例えば、シングルノズルで2つのシリンジ)で流動性材料を塗布する方式とがある。
しかし、1つのシリンジで塗布する場合には、塗布面積が大きい場合には時間がかかる。また、複数のシリンジで塗布する場合には、それぞれのシリンジの違い(圧力さ、ペースト量、等)により、流動性材料を同一の塗布量にすることが難しく、塗布むらや断線が発生し易い。
本発明の目的は、上記のような問題に鑑み、複数のシリンジで塗布作業を短時間とし、かつ、塗布形状が安定したダイボンダ及び半導体製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、本発明の半導体製造方法は、X軸およびY軸方向に任意の距離を相対的に水平移動する基板に流動性材料で所定のパターンを描画塗布して形成する半導体製造方法であって、複数のシリンジそれぞれが異なるサブパターンを描画塗布して1つのパターンを形成するものである。
【0006】
また、上記発明の半導体製造方法において、前記複数のシリンジが描画塗布するパターンは、少なくともそれぞれのパターンの交差部分で描画パターンを交差しないことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、複数のシリンジで塗布作業を短時間とすることが可能となり、かつ、塗布形状が安定したダイボンダ及び半導体製造方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1A】本発明に使用するペースト塗布装置の一実施例を示す斜視図である。
【図1B】本発明に使用するペースト塗布装置の一実施例を示す斜視図である。
【図1C】本発明に使用するダイボンダの一実施例を示す概略図である。
【図2】本発明に使用するペースト塗布装置における主制御部とその制御系統の一実施例を示すブロック図である。
【図3】本発明のペースト塗布方法の全体的な動作を示すフローチャートである。
【図4】従来のペースト塗布方法について説明するための図である。
【図5】本発明のペースト塗布方法について説明するための図である。
【図6】従来のペースト塗布方法について説明するための図である。
【図7】本発明のペースト塗布方法の一実施例について説明するための図である。
【図8】本発明のペースト塗布方法の一実施例について説明するための図である。
【図9】本発明のペースト塗布方法の一実施例について説明するための図である。
【図10】本発明のペースト塗布方法の一実施例について説明するための図である。
【図11】本発明のペースト塗布方法の一実施例について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、流動性材料の所定のパターンを描画塗布して形成するペースト塗布方法およびペースト塗布装置であって、複数ヘッド(複数シリンジ)で流動性材料の塗布量および形状を安定的に供給し、安定でかつ高速で描画可能なペースト塗布方法を提案する。なお、本書では、1シリンジに1ノズル(シングルノズル)方式のペースト塗布方法について説明する。
また本発明では、複数のシリンジでそれぞれ異なるサブパターンで描画を行い、当該サブパターンを組み合わせて1つのパターン(塗布パターン)を形成する。また本発明では、塗布パターンの交差部分でサブパターンが交差しないペースト塗布方法である。
複数シリンジで別々の異なるサブパターンの描画を分担することで、他のシリンジと同じ塗布量、同じ塗布形状である必要性を低減することができる。
また、複数のシリンジで塗布(描画)処理動作を並列処理でき、高速描画可能となり、生産性が向上する。
さらに、複数のシリンジでも、交差部分の存在する描画パターンに対応でき、描画塗布を並列処理して高速描画可能となるので、生産性が向上する。
【0010】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、本発明は、本実施例に限定されるわけではなく、本発明が属する技術分野において、通常の知識を有する者であれば、本発明の思想と精神に基づいて、本発明を修正若しくは変更できる発明が含まれることは勿論である。また、各図の説明において、共通な機能を有する構成要素には同一の参照番号を付し、できるだけ説明の重複を避けるため、説明を省略するようにした。
【0011】
以下、本発明の実施形態を図1Aと図1Bを用いて説明する。図1Aは、従来のペースト塗布装置の一実施例を示す斜視図である。図1Bは、本発明によるペースト塗布装置の一実施例を示す斜視図である。図1Aは、シリンジの数が1のペースト塗布装置の一実施例を示す斜視図であり、図1Bは、複数のシリンジ(例えば、シリンジ数が2)を備えた本発明のペースト塗布装置の一実施例を示す斜視図である。
本書では、まず図1Aによってペースト塗布装置の概略構成を説明し、図1Bによって本発明に使用するペースト塗布装置について説明する。
100と100’は本発明のペースト塗布装置、1は架台、2はZ軸テーブル支持架台、3はX軸移動テーブル、4はX軸サーボモータ、5はY軸移動テーブル、6はY軸サーボモータ、7は基板保持機構、8はθ軸移動テーブル、9は基板、10はZ軸移動テーブル支持ブラケット、11はZ軸移動テーブル、11aは支持ベース、12はZ軸サーボモータ、13は流動性材料(ペースト)を収納するシリンジ、14はノズル支持具、15は画像認識カメラ、16は距離計、17は主制御部、18は副制御部、18aはハードディスク、18bはDVD、19はモニタ、20はキーボード、21は配線、26はZ軸テーブル指示架台をY軸方向に移動するためのガイドレールである。ペースト塗布装置100’は、1つのシリンジ13を有するタイプである。複数のシリンジで塗布作業を行うには、複数個のペースト塗布装置100’を用意して行う。
【0012】
図1Aのペースト塗布装置100’において、架台1上には、X軸移動テーブル3とが設けられ、このX軸移動テーブル3上には、これと直交するようにして、Y軸移動テーブル5が設けられている。このY軸移動テーブル5は、X軸移動テーブル3に設けられているX軸サーボモータ4の駆動により、X軸移動テーブル3上をX軸方向に移動する。Y軸移動テーブル5上には、基板保持機構7が設けられている。この基板保持機構7は、Y軸移動テーブル5に取り付けられているY軸サーボモータ6の駆動により、Y軸移動テーブル5上をY軸方向に移動する。また、基板保持機構7にθ軸移動テーブル8が取り付けられており、図示しないθ軸サーボモータによるθ軸移動テーブル8の回転駆動により、基板保持機構7がθ軸方向(Z軸廻りの回転方向)に回転駆動される。基板9は基板保持機構7に取り付けられ、X、Y、θ軸の各移動テーブル3、5、8のサーボモータの駆動により、X、Y軸方向に移動したり、θ軸方向に回転したりして所定の位置に位置決めされる。
【0013】
なお、この実施形態では、基板9をその面方向に移動させてその位置決めを行い、また、流動性材料の塗布を行なう。しかし、ノズルを移動させることにより、同様の位置決めやペースト塗布の制御をすることも可能であることはいうまでもない。さらに、これら移動テーブル3、5、8を駆動する機構全体またはノズルを基板9の面方向に移動させる機構を、総称して、テーブル駆動機構という。
例えば、Z軸テーブル支持架台2がガイドレール26上でY軸方向に移動するようにし、Z軸テーブル支持架台2にX軸方向移動用のガイドレール(図示しない)を設け、Z軸移動テーブル支持ブラケット10をガイドレールに沿って移動するようにしてX軸方向に移動しても良い。なお、駆動部についての図示も周知であり、省略する。
【0014】
架台1上には、また、Z軸テーブル支持架台2が設けられており、このZ軸テーブル支持架台2には、Z軸移動テーブル支持ブラケット10を介して、Z軸移動テーブル11が設けられている。Z軸移動テーブル11上には、支持ベース11aがZ軸方向に移動可能に取り付けられており、Z軸移動テーブル11に取り付けられているZ軸サーボモータ12を駆動することにより、支持ベース11aがZ軸方向(上下方向)に移動する(この駆動系を、以下、ノズル駆動機構という)。この支持ベース11aには、ノズル支持具14を下端部に備えたシリンジ13や照明の可能な光源を備えた鏡筒を有する画像認識カメラ15、距離計16などが取り付けられている。このノズル支持具14の先端には、図示しないが、ノズルが設けられている。
【0015】
なお、シリンジ13は、図示しないリニアガイドの可動部に着脱自在に取り付けられている。また、画像認識カメラ15は、基板9の位置合わせやペーストパターンの形状認識などのために、基板9に対向するようにして設けられている。
【0016】
架台1の下部には、主制御部17が設置されており、この主制御部17は、配線21により、別設した副制御部18と接続されている。副制御部18は、ハードディスク18aやDVD18bなどの記憶媒体を用いた外部記憶装置やモニタ19、キーボード20を備えている。
【0017】
主制御部17は、各テーブル3、5、11のサーボモータ4、6、12やθ軸移動テーブル8のサーボモータなどを制御する。主制御部17での各種処理のためのデータがキーボード20から入力され、画像認識カメラ15で捉えた画像や主制御部17での処理状況がモニタ19で表示される。また、キーボード20から入力されたデータなどは、外部記憶装置であるハードディスク18aやDVD18bなどの記憶媒体に記憶保管される。
【0018】
図1Bは、図1Aが1シリンジであるのに対し、2シリンジを備えたペースト塗布装置である。本発明のペースト塗布装置100は、2つ以上のノズル(シリンジ)を用いて塗布するため、図1Bのように、Z軸テーブル支持架台2、Z軸移動テーブル支持ブラケット10、Z軸移動テーブル11、支持ベース11a、Z軸サーボモータ12、シリンジ13、ノズル13a、ノズル支持具14、画像認識カメラ15、および距離計16を2組設けている。
【0019】
次に、図1Bのペースト塗布装置100の制御方法を、図2によって説明する。図2は、図1Bにおける主制御部17とその制御系統の一具体例を示すブロック図である。8aはθ軸サーボモータ、13aはノズル、17aはマイクロコンピュータ、17bはモータコントローラ、17cはデータ通信バス、17dは外部インターフェース、17eは画像処理装置、17f〜17iはモータドライバ、22は負圧源、23は正圧源、22a、23aはレギュレータ、24はバルブユニット、25は大気、26はガイドレールである。
なお、Z軸テーブル支持架台2、Z軸移動テーブル支持ブラケット10、Z軸移動テーブル11、支持ベース11a、Z軸サーボモータ12、シリンジ13、ノズル13a、ノズル支持具14、画像認識カメラ15、および距離計16に関しての説明は、1組として説明するが、2組がそれぞれ個々に動作可能である。
【0020】
図2において、主制御部17は、マイクロコンピュータ17aやモータコントローラ17b、モータドライバ17f〜17i、画像認識カメラ15で得られる映像信号を処理する画像処理装置17e、副制御部18との間の信号伝送やレギュレータ22a、23a、バルブユニット24の制御および距離計16の測定入力を行なう外部インターフェース17dを内蔵しており、マイクロコンピュータ17aやモータコントローラ17b、外部インターフェース17d、画像処理装置17eがデータ通信バス17cによって互いに接続されている。
【0021】
また、マイクロコンピュータ17aには、図示しないが、主演算部や後述する塗布描画を行なうための処理プログラムを格納したROM、主演算部での処理結果や外部インターフェース17dおよびモータコントローラ17bからの入力データを格納するRAM、外部インターフェース17dやモータコントローラ17bとデータをやり取りする入出力部などを備えている。
【0022】
上記各テーブル3、5、11を駆動するサーボモータ4、6、12やθ軸移動テーブル8(図1A)を回転駆動するθ軸サーボモータ8aには、回転量を検出するエンコーダが内蔵されており、その検出結果を該当するモータドライバ17f、17g、17i、17hに戻して基板9やノズル13aの位置制御を行なっている。
【0023】
サーボモータ4、6、8a、12は、キーボード20から入力されてマイクロコンピュータ17a内蔵のRAMに格納されているデータに基いて、正逆回転する。これにより、基板保持機構7に保持された基板9が、Z軸移動テーブル11を介して支持されるノズル13aに対し、X、Y軸方向に任意の距離を移動する。その移動中、シリンジ13に僅かな気圧が継続して印加されることにより、ノズル13aの先端部のペースト吐出口から流動性材料が吐出され、基板9に所望のペーストパターンが塗布描画される。
【0024】
流動性材料の塗布制御のための吐出圧制御機構は、正圧源23から供給された圧縮空気の圧力を調整するためのレギュレータ23aと、負圧源22から供給された負圧の空気の圧力を調整するレギュレータ22aと、これらレギュレータ22a、23aからの圧力の調整された空気配管と大気25へ開放する配管とを夫々切替制御するためのバルブユニット24とからなり、この吐出圧制御機構により、バルブユニット24からシリンジ13内の流動性材料に所望の圧力が加えられて、吐出圧が制御される構成となっている。
【0025】
また、基板保持機構7の保持された基板9がX、Y軸方向への水平移動中に、距離計16がノズル13aと基板9との間の間隔(以下、ノズル13aの高さという)を計測し、この計測結果に基づいて、ノズル13aの高さが略一定に維持されるように、Z軸サーボモータ12が駆動されてノズル13aがZ方向に移動する制御が行なわれる。
なお、ペースト塗布装置100、100’は、各軸を駆動するモータにサーボモータを使用したが、DCモータ、リニアモータ、振動モータ、ステッピングモータ、ユニバーサルモータ等を使用することもできる。
【0026】
次に、X軸移動テーブル及ぶY軸移動テーブルを使用せずに、シリンジ1がX方向、Y方向、Z方向及びθ方向に移動及び回転するダイボンダ100cの概略図を図1Cに示す。
ダイボンダ210は大別してウェハ供給部201と、基板供給・搬送部202と、ダイボンディング部203と、これ等を制御する制御部(図示なし)とを有する。
ウェハ供給部201は、ウェハカセットリフタ211とウエハホルダ212とを有する。ウェハカセットリフタ211は、ウェハリングが充填されたウェハカセット(図示せず)を有し,順次ウェハリングをウエハホルダ212に供給する。ウエハホルダ212は、所望するダイをウェハリングからピックアップできるように、ウェハリングを移動する。
基板供給・搬送部202はスタックローダ221と、フレームフィーダ222と、アンローダ223とを有する。スタックローダ221は、ダイを接着する基板(例えば、リードフレーム)をフレームフィーダ222に供給する。フレームフィーダ222は、基板をフレームフィーダ222上の2箇所の処理位置を介してアンローダ223に搬送する。アンローダ223は、搬送された基板を保管する。
ダイボンディング部203はプリフォーム部231と、ボンディングヘッド部232とを有する。プリフォーム部231は、フレームフィーダ222により搬送されてきた基板にダイ接着剤を塗布する。プリフォーム部231には、シリンジ13を独立してX方向、Y方向、Z方向及びθ方向に移動及び回転させるプリフォームヘッド231aを有する。X方向、Y方向、Z方向への移動とθ方向への回転は、リニアモータ、サーボモータ、DCモータ、振動モータ、ステッピングモータ、ユニバーサルモータなどを用いことができる。ここでは、X方向、Y方向、Z方向及びθ方向に移動にはリニアモータを使用し、θ方向への回転にはサーボモータを使用する場合について説明する。
プリフォームヘッド231aには2つのシリンジ13があって、2つのシリンジ13はそれぞれ独立に駆動することができる。プリフォームヘッド231aはモータコントローラ17b(図2)によって、2つのシリンジ13を図5、図7〜図11に示す塗布方法で塗布できるように、X方向、Y方向、Z方向に移動する各リニアモータ及びθ方向に回転するサーボモータを制御する。
ボンディングヘッド部232は、ウエハホルダ212からダイをピックアップして上昇し、ダイをフレームフィーダ222上のボンディング位置まで移動させる。そして、ボンディングヘッド部232は、ボンディングポイントでダイを下降させ、ダイ接着剤が塗布された基板上にダイをボンディングする。
【0027】
図3は、本発明に使用するペースト塗布装置100の全体的な動作を示すフローチャートである。以下、図1Aおよび図2も参照して、この実施形態の動作を説明する。
図3において、まず、電源を投入すると、ステップS100では、ペースト塗布装置の初期設定が実行される。
【0028】
この初期設定工程の後、ステップS200では、サーボモータ4、6、8a、12を駆動することにより、基板保持機構7をX、Y、θ軸方向に移動させて所定の基準位置に位置決めする。また、これと同時に、ノズル13aも、そのペースト吐出口がペースト塗布を開始する位置(即ち、流動性材料塗布開始点)となるように、所定の原点位置に設定される。さらに、流動性材料のパターンデータや基板位置データ、流動性材料吐出終了位置データなどの設定を行なう。なお、先に述べたように、これら各データの入力はキーボード20から行なわれ、入力されたデータはマイクロコンピュータ17aに内蔵されたRAMに格納される。
【0029】
次に、ステップS300では、基板9を基板吸着機構7に搭載して保持させ、続いて、基板予備位置決め処理を行なう。
この基板予備位置決め処理では、基板保持機構7に搭載された基板9の位置決め用マークを画像認識カメラ15で撮影し、その撮影画像から位置決め用マークの重心位置を画像処理で求めて、基板9のθ軸方向での傾きを検出し、これに応じてサーボモータ8aを駆動し、このθ軸方向の傾きも補正する。
なお、シリンジ13内の流動性材料の残り量(内容量)が少ない場合には、次のペースト塗布作業の途中で流動性材料の途切れがないようにするために、前もってシリンジ13をノズル13aとともに交換する。シリンジ13やノズル13aを交換した場合には、X、Y軸面での位置ずれが生ずることがある。この位置ずれをなくすために、基板9でのパターンを形成しない領域で交換した新たなノズル13aを用いて十字マークの描画を行ない、この十字マークを画像認識カメラ15で撮影して、その撮影画像から十字マークの交点の重心位置を画像処理で求める。そして、この重心位置と基板9上の位置決め用マークの重心位置との間の距離を算出し、その算出結果をノズル13aの流動性材料吐出口の位置ずれ量(dx,dy)として、マイクロコンピュータ17aに内蔵のRAMに格納する。これにより、基板予備位置決め処理(ステップS400)を終了する。
ノズル13aの位置ずれ量(dx,dy)は、後に行なうパターンの塗布描画動作時、ノズル13aの位置ずれを補正するために用いるものである。
【0030】
次に、ステップS400では、流動性材料のパターン描画処理を行なう。
このパターン描画処理では、塗布開始位置にノズル13aの流動性材料吐出口を位置付けるために、基板9を移動させ、ノズル13aの位置の比較および調整移動を行なう。このために、まず、先の基板予備位置決め処理(ステップS400)で得られてマイクロコンピュータ17aのRAMに格納されたノズル13aの位置ずれ量(dx,dy)が、予め設定されたノズル13aの位置ずれ量の許容範囲(△X,△Y)にあるか否かの判断を行なう。
位置ずれ量(dx,dy)がこの許容範囲内(△X≧dxおよび△Y≧dy)にあれば、そのままとし、許容範囲外(△X<dxまたは△Y<dy)であれば、この位置ずれ量(dx,dy)を基に、基板9を移動させることにより、ノズル13aの流動性材料吐出口と基板9の所望位置との間のずれを解消させ、ノズル13aを所望位置に位置決めする。
【0031】
次に、Z軸サーボモータ12を動作させて、ノズル13aの高さを流動性材料のパターン描画高さに設定する。ノズルの初期移動距離データに基づいてノズル13aを初期移動距離分下降させる。続いて、基板9の表面高さを距離計14で測定することにより、ノズル13aの高さが流動性材料のパターンを描画する高さに設定されているか否かを確認する。描画高さに設定できていない場合には、ノズル13aを微小距離下降させ、以下、基板9の表面高さの計測とノズル13aの微小距離下降とを交互に繰り返し行ない、ノズル13aの高さをパターンを塗布描画するための高さに設定する。また、シリンジ13が交換されていないときには、ノズル13aの位置ずれ量(dx,dy)のデータはないので、パターン描画処理に入ると、直ちに上記のノズル13aの高さ設定を行なう。
【0032】
以上の処理が終了すると、次に、マイクロコンピュータ17aのRAMに格納された流動性材料のパターンデータに基づいて、サーボモータ4、6が駆動される。これにより、ノズル13aのペースト吐出口が基板28に対向した状態で、このパターンデータに応じて、基板9がX、Y方向に移動する。そして、これとともに、正圧源23からレギュレータ23aとバルブユニット24を介してシリンジ13に所定の吐出圧が印加され、当該シリンジ13のノズル13aのペースト吐出口からのペーストの吐出が開始される。これにより、基板9への塗布描画が開始される。
【0033】
そして、これとともに、先に説明したように、マイクロコンピュータ17aは、距離計16からノズル13aの高さの実測データを入力し、この実測データから基板9の表面のうねりを測定し、この測定値に応じてノズル駆動機構(Z軸サーボモータ12)を動作させる。これにより、ノズル13aの高さが設定値に略一定に維持される。
【0034】
そして、これと共に、先に説明したように、マイクロコンピュータ17aは、距離計16からノズル13aの高さの実測データを入力子、この実測データから基板9の表面のうねりを測定し、この測定値に応じてノズル駆動機構(Z軸サーボモータ12)を動作させる。これにより、ノズル13aの高さが設定値に略一定に維持される。
【0035】
ステップS500では、塗布描画を終了した基板を排出する。
ステップS600では、全ての基板について、塗布作業が終了したか否かを判定する。否であればステップS200に戻る。また、全ての基板について塗布作業が終了した場合には、装置の電源をオフする。
【0036】
次に、図4と図5によって、従来のペースト塗布方法と本発明による塗布方法について説明する。図4は、従来のペースト塗布方法について説明するための図であり、図5は本発明のペースト塗布方法について説明するための図である。
なお、シリンジのノズルの先端部のペースト吐出口から流動性材料が吐出され、基板に所望のパターンが塗布描画されることを、以下、シリンジでパターンを描画塗布するとして説明する。
【0037】
図4(a)に示すように、シリンジ402で、始点40から、矢印41、42、43、44、45、46、47、48の順に描画塗布すると、パターン403が形成される。また、高速化のため、図4(b)に示すように、別のシリンジ422で、始点40から、矢印41、42、43、44、45、46、47、48の順に、図4(a)と同一パターンを描画塗布しようとすると、パターン423が形成される。
しかし、パターン403の描画塗布には、液面h0とペースト残量が多いシリンジを用いており、パターン423の描画塗布には、液面h2と流動性材料の残量が少ないシリンジを用いているため、パターン403は塗布量が多く、パターン423は塗布量が少なくなる。
【0038】
そこで、本発明では、図5(a)に示すように、シリンジ502で、矢印531に沿って一方のサブパターンを描画塗布し、シリンジ503で矢印521、次に矢印522に沿って他方のサブパターンを描画塗布する。この結果、領域501内にパターン504が形成される。
同様に、図5(b)に示すように、図5(a)と同一のパターンを描画塗布しようとする。この場合、シリンジ502で、矢印531に沿って一方のサブパターンを描画塗布し、シリンジ503で矢印521、次に矢印522に沿って他方のサブパターンを描画塗布する。この結果、領域501内に描画塗布されたパターン504とほぼ同一の塗布量のパターン524が領域521内に形成される。
【0039】
次に、図6、図7、図8、図9、および図10によって、従来のペースト塗布方法と本発明による、描画塗布する場合の交差部分の塗布方法について説明する。図6は、従来のペースト塗布方法について説明するための図であり、図7〜図10は、本発明のペースト塗布方法の一実施例について説明するための図である。
【0040】
図6において、図6(a)に示すように、従来は、シリンジで矢印61に沿って描画塗布すると、一方のサブパターン602が形成される。次に、異なるシリンジで、図6(b)に示すように、描画塗布すると、他方のサブパターン603が形成される。
しかし、サブパターン603の描画塗布時には、すでに、サブパターン602が形成されているため、図6(c)に示すように、交差部分または交差後に断線644が発生し、塗布描画されたサブパターンが、サブパターン642と642’とに分離する。
【0041】
そこで、図7の本発明の一実施例では、図6(a)と同様に、図7(a)で示すように、シリンジで、矢印71に沿って描画塗布すると、サブパターン702が形成される。次に、異なるシリンジで、図7(b)に示すように、矢印72と矢印73に示すように描画塗布する。この経路は、図6(b)の矢印62と同一である。しかし、本発明の一実施例では、サブパターン702と交差する部分では描画塗布をしない。即ち、経路を矢印72と矢印73と交差部分で分離して描画塗布する。
この結果、図7(c)に示すように、サブパターン703の描画塗布時には、断線が発生しない。
【0042】
また、図8の本発明の一実施例では、シリンジで、図8(a)に示すように、矢印81に沿って描画塗布すると、サブパターン802が形成される。次に、異なるシリンジで、図8(b)に示すように、矢印82に示すように描画塗布する。この矢印81と82の経路は、×字状の交差部分で、描画塗布するための経路を曲げて「く」の字状の経路としたものである。この結果、本発明の一実施例では、サブパターン802とサブパターン803の交差部分では、描画塗布経路が互いに交差しないように描画塗布を行うことができる。即ち、最終的に形成されたパターン842では断線が発生しない。このため、図8(c)に示すように、パターン842の描画塗布時には、断線が発生しない。
【0043】
また図9の本発明の一実施例では、シリンジで、図9(a)に示すように、矢印81’に沿って描画塗布すると、サブパターン802’が形成される。次に、異なるシリンジで、図9(b)に示すように、矢印82’に示すようにサブパターン803’を描画塗布する。この矢印81’と82’の経路は、×字状の交差部分で、描画塗布するための経路を曲げて「く」の字状または逆「く」の字状の経路としたものであり、図8の経路81および82と比べて、交差部分の距離を離したものである。この結果、本発明の一実施例では、サブパターン802’とサブパターン803’の交差部分では、描画塗布経路が互いに交差しないように描画塗布を行うことができる。即ち、出来上がったパターン842’では断線が発生しない。このため、図9(c)に示すように、パターン842’の描画塗布時には、断線が発生しない。
【0044】
また図10の本発明の一実施例では、シリンジで、図10(a)に示すパターン101を形成する描画塗布する場合のサブパターンの一実施例を、図10(b)と図10(c)で示している。
図10(b)に示すように、矢印111、112、および113のサブパターンを組み合わせることで、パターン101’が形成される。また、図10(c)に示すように、矢印121、122、および123のサブパターンを組み合わせることで、パターン101’’が形成される。
この結果、本発明の一実施例では、それぞれのサブパターンの交差部分では、描画塗布経路が互いに交差しないように描画塗布を行うことができる。即ち、出来上がったパターン101(101’、101’’)では断線が発生しない。
【0045】
図11の本発明の一実施例を示す。本実施例は、2つのシリンジ13のノズル径が異なる場合である。ノズル径が細いシリンジ13でパターンAを塗布する。次に、ノズル径が太いシリンジ13で、塗布されたパターンAに重ねてパターンBを塗布する。このとき、バターンBはパターンAを完全に重ねるのではなく、先端の一部分を重ね内容にしてもよい。接着面から接着剤がはみ出すことなく、接着剤の塗布量を制御することができる。接着剤の塗布量をパターンの組み合わせで制御することもできる。
ノズル径に代わって、2つのシリンジ間で接着剤を塗布する際の圧力を変えて、異なる塗布量を塗布するようにしてもよい。
【0046】
さらに、図7の実施例では、それぞれ別のシリンジで描画塗布することによって、高速化が実現可能となる。また図8の実施例でも、それぞれ別のシリンジで描画塗布することによって、高速化が実現可能となる。
なお、図7および図8の実施例において、経路71と、経路72および73を同一のシリンジで描画塗布しても良い。また、経路81と、経路82を同一のシリンジで描画塗布しても良い。
【0047】
上述のように、本発明によれば、複数ノズル(複数シリンジ)で別々の経路の描画塗布を分担することで、塗布量および形状が安定的に供給可能なペースト塗布方法を提供することができる。
また、本発明によれば、描画経路の交差部分で交差をしないようにすることで、パターンの断線が発生せず、塗布量および形状が安定的に供給可能なペースト塗布方法を提供することができる。
さらに、複数のシリンジで描画塗布することで、生産性が向上する。
【0048】
またさらに、複数のシリンジで別々の描画経路を分担させることで、それぞれのシリンジで厳密に同じ量および形状である必要が低くなる。従って、ノズル、圧力、速度、高さ、およびパターン形状等の諸パラメータを、使用するシリンジ間で厳密に揃える必要がなくなり、かつ、段取り作業の工数や作業者の熟練度を必要としなくなる。
また、それぞれのシリンジで別々のパターンを描画塗布することになるので、ノズル径、圧力、速度を、それぞれ別々に設定することができ、描画塗布の自由度が増大する。例えば、1つのシリンジを基板の凹凸などの穴埋めに使用することも可能となる。また、例えば、複雑な形状の塗布パターンを実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、ダイボンディング用液状接着剤またはマウンタ用液状接着剤をプリント基板等の被塗布基板に塗布する他、例えば、LED、LSI等の半導体素子における、チップコーティング用等の充填剤を塗布する製造装置にも適用可能である。
【符号の説明】
【0050】
100、100’:ペースト塗布装置、 1:架台、 2:Z軸テーブル支持架台、 3:X軸移動テーブル、 4:X軸サーボモータ、 5:Y軸移動テーブル、6:Y軸サーボモータ、 7:基板保持機構、 8:θ軸移動テーブル、 8a:θ軸サーボモータ、 9:基板、 10:Z軸移動テーブル支持ブラケット、 11:Z軸移動テーブル、 11a:支持ベース、 12:Z軸サーボモータ、 13:シリンジ、 13a:ノズル、 14:ノズル支持具、 15:画像認識カメラ、 16:距離計、 17:主制御部、 17a:マイクロコンピュータ、 17b:モータコントローラ、 17c:データ通信バス、 17d:外部インタフェース、 17e:画像処理装置、 17f〜17i:モータドライバ、 18:副制御部、 18a:ハードディスク、 18b:DVD、 19:モニタ、 20:キーボード、 21:配線、 26:ガイドレール、 22:負圧源、 22a、23a:レギュレータ、 23:正圧源、 24:バルブユニット、 25:大気。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X軸およびY軸方向に任意の距離を相対的に水平移動する基板に流動性材料で所定のパターンを描画塗布して形成するペースト塗布方法であって、複数のシリンジそれぞれが異なるサブパターンを描画塗布して1つのパターンを形成することを特徴とする半導体製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の半導体製造方法において、前記複数のシリンジが描画塗布するパターンは、少なくともそれぞれのパターンの交差部分で描画パターンを交差しないことを特徴とする半導体製造方法。
【請求項3】
接着剤を塗布する複数のシリンジと前記複数のシリンジ駆動する駆動機構とを有するプリフォーム機構と、
前記駆動機構を個別に駆動することができ、前記複数のシリンジが複数の異なる塗布パターンで前記接着剤を塗布するように制御する制御部と、
を有するダイボンダ。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−199455(P2012−199455A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−63524(P2011−63524)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(300022504)株式会社日立ハイテクインスツルメンツ (607)
【Fターム(参考)】