説明

ダイボンドフィルム

【課題】高流動性と高信頼性とを両立したダイボンドフィルムを提供する。
【解決手段】少なくとも3つの重合鎖が放射状に伸びる星型構造を有する共重合体と、エポキシ樹脂と、硬化剤と、フィラーとを含有するダイボンドフィルムであって、前記共重合体のガラス転移点が60℃以下であるダイボンドフィルムである。前記共重合体は10〜40重量部含み、前記エポキシ樹脂及び硬化剤は30〜45重量部含み、また前記共重合体と前記エポキシ樹脂と前記硬化剤との合計100重量部に対して、前記フィラーを40〜180重量部含むことが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体チップを基板に接着するために用いるダイボンドフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体パッケージの小型化に伴い、半導体チップと同等サイズであるCSP(Chip Size Package)、さらに、半導体チップを多段に積層したスタックドCSPが普及している(例えば、特許文献1〜5参照。)。これらの例としては、図1に示すような配線4などに起因する凹凸を有する基板3上に半導体チップA1を積層したパッケージ、又は、図2に示すような同サイズの半導体チップA1を2つ以上使用し、ワイヤ2などに起因する凹凸を有する半導体チップ上にさらに別の半導体チップを積層したパッケージなどがある。このようなパッケージには、凹凸を埋込み、かつ上部の半導体チップとの絶縁性を確保することが可能なダイボンドフィルムが求められている。なお、図1及び図2中、b1は接着剤である。
【0003】
ダイボンドフィルムは、通常、主として樹脂とフィラーとから構成され、樹脂は熱硬化性成分と、高分子量成分とを組み合わせて構成される。熱硬化性成分としては、耐熱性、耐湿性の観点から、特にエポキシ樹脂が好適に用いられており、高分子量成分としては、架橋性基を有するポリイミド樹脂、(メタ)アクリル樹脂等が用いられており、中でもアクリルゴムが好適に用いられている。
【0004】
ダイボンドフィルムの特性としては、プロセス適合性(ラミネート性、ダイシング性、ピックアップ性)、埋込性、信頼性(耐リフロー性)などが要求される。この中で、埋込性の要求を満たすには、樹脂の流動性を高める、具体的には、Bステージでの低粘度化を実現すればよく、高分子量成分を低分子量化すれば、分子同士の絡み合いが少なくなり全体としての粘度を低下させることができる。ところが、信頼性の要求を満たすには、樹脂を高分子量化しなければならず、そうすると流動性が低下してしまう。すなわち、流動性を高めようとすると信頼性が低下し、信頼性を高めようとすると流動性が低下することとなり、流動性と信頼性はトレードオフの関係にあり、従来はそれらを両立することができなかった。
【0005】
【特許文献1】特開2001−279197号公報
【特許文献2】特開2002−222913号公報
【特許文献3】特開2002−359346号公報
【特許文献4】特開2001−308262号公報
【特許文献5】特開2004−072009号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の従来の問題点に鑑みなされたものであり、以下の目的を達成することを課題とする。すなわち、
本発明の目的は、高流動性と高信頼性とを両立したダイボンドフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための手段は以下の通りである。
(1)少なくとも3つの重合鎖が放射状に伸びる星型構造を有する共重合体と、エポキシ樹脂と、硬化剤と、フィラーとを含有するダイボンドフィルムであって、
前記共重合体のガラス転移点が60℃以下であることを特徴とするダイボンドフィルム。
【0008】
(2)前記共重合体を10〜40重量部含み、前記エポキシ樹脂及び硬化剤を30〜45重量部含み、前記共重合体と前記エポキシ樹脂と前記硬化剤との合計100重量部に対して、前記フィラーを40〜180重量部含むことを特徴とする(1)に記載のダイボンドフィルム。
【0009】
(3)前記共重合体がアクリルゴムであることを特徴とする(1)または(2)に記載のダイボンドフィルム。
【0010】
(4)前記共重合体の重量平均分子量が30000〜1000000であることを特徴とする(1)から(3)のいずれかに記載のダイボンドフィルム。
【0011】
(5)前記共重合体における各重合鎖の重量平均分子量が10000〜300000であることを特徴とする(4)に記載のダイボンドフィルム。
【0012】
(6)前記硬化剤の軟化温度が150℃以下であることを特徴とする(1)から(5)のいずれかに記載のダイボンドフィルム。
【0013】
(7)前記硬化剤の少なくとも1種がフェノール系ノボラックであることを特徴とする(6)に記載のダイボンドフィルム。
【0014】
(8)さらに、カップリング剤を含有することを特徴とする(1)から(7)のいずれかに記載のダイボンドフィルム。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、高流動性と高信頼性とを両立したダイボンドフィルムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明のダイボンドフィルムは、少なくとも3つの重合鎖が放射状に伸びる星型構造を有する共重合体と、エポキシ樹脂と、硬化剤と、フィラーとを含有するダイボンドフィルムであって、前記共重合体のガラス転移点が60℃以下であることを特徴とする。
【0017】
すなわち、本発明のダイボンドフィルムは、硬化性成分と高分子量成分とからなる樹脂成分のうちの高分子量成分を、少なくとも3つの重合鎖が放射状に伸びる星型構造を有する共重合体(以下、「星型共重合体」と呼ぶことがある。)としたものである。星型共重合体は、同程度の分子量の直鎖状の重合体と比較して流動性が高く、低粘度であるという特徴を有する。これは、直鎖状の重合体は分子量が大きくなると分子鎖が長くなり、隣接する分子同士で絡み合いが生じるが、星型共重合体は中心から重合鎖が放射状に伸びる構造のため、直鎖状の重合体ほど重合鎖部分が長くならず、絡み合いの発生が少ないことに起因すると推察される。従って、高分子量でありながら低粘度である星型共重合体をダイボンドフィルムの高分子量成分として用いることにより、ダイボンドフィルム全体として、高流動性と高信頼性とを両立することができる。
以下に先ず、本発明において用いられる星型共重合体について詳述する。
【0018】
[星型共重合体]
本発明のダイボンドフィルムにおいて使用される星型共重合体は、少なくとも3つの重合鎖が放射状に伸びる星型構造を有する、ガラス転移点が60℃以下の共重合体であるが、具体的には、(メタ)アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ウレタン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、フェノキシ樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂等が挙げられ、中でも、アクリルゴムが好ましい。
当該星型共重合体は、樹脂混和物の流動性、硬化物の強靭性という観点から、ガラス転移点Tgが60℃以下のものを用いるが、好ましくは50℃以下であり、より好ましくは40℃以下である。
【0019】
アクリルゴムは、アクリル酸エステルを主成分とし、主として、ブチルアクリレートとアクリロニトリルなどの共重合体や、エチルアクリレートとアクリロニトリルなどの共重合体などからなるゴムであって、本発明においては、上述のように星型構造を有する。
【0020】
前記星型共重合体の重量平均分子量は、ダイボンドフィルムとしての高信頼性を得るという観点から、30000〜1000000であることが好ましく、60000〜800000であることがより好ましく、100000〜600000であることがさらに好ましい。なお、当該重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)で標準ポリスチレンによる検量線を用いたポリスチレン換算値である。
またこの場合において、各重合鎖の重量平均分子量は、10000〜300000であることが好ましく、30000〜200000であることがより好ましく、50000〜150000であることがさらに好ましい。なお、各重合鎖の重量平均分子量は、分子全体の重量平均分子量を重合鎖の数で除した数値である。
重量平均分子量が同程度の星型共重合体同士であって、同様のモノマーから構成される場合、重合鎖の数が多いほど1本当たりの重合鎖が短くなるため、流動性が向上し、ひいては低粘度となると考えられる。従って、重量平均分子量はそのままとし、より低粘度としたい場合は、重合鎖の数を増やせば低粘度とすることができる。
【0021】
本発明において、星型共重合体の樹脂中に占める割合としては、5〜80重量%であることが好ましく、10〜60重量%であることがより好ましく、15〜40重量%であることがさらに好ましい。
【0022】
以下に、星型共重合体の具体例とその合成方法の一例を挙げるが、本発明に係る星型共重合体は以下の合成方法に限定されるものではない。
本発明に係る星型共重合体は、例えば、多官能開始剤としてハロゲン化合物と、配位子としてアミン化合物と、触媒として周期律表第7族〜11族元素の遷移金属とを用いて、3種以上のモノマー種を原子移動ラジカル重合により重合することにより合成することができる。
以下に、まず当該合成方法において用いられる各成分について説明する。
【0023】
[モノマー種]
モノマー種は、特に限定されず、種々のものを用いることができる。例えば、以下のモノマーを挙げることができる。なお、以下の構造式はアクリル系のものを示すが、メタクリル系のものも使用可能である。すなわち、(1)〜(7)の構造において、CH=CH−を、CH=C(CH)−に置き換えたものも使用可能である。
【0024】
【化1】


【0025】
前記(1)のRは、炭素数1〜20の脂肪族基、又は炭素数6〜20の芳香族基を表すが、脂肪族基としては、具体的には、炭素数1〜20のアルキル基、アルコキシアルキル基を表し、直鎖状でも分岐状でもよく、中でも、炭素数1〜10の直鎖状のアルキル基が好ましく、炭素数2〜8の直鎖状のアルキル基がより好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロへキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、ステアリル基、2−メトキシエチル基、2−エトキシエチル基、2−プロポキシエチル基、2−ブトキシエチル基、3−メトキシプロピル基、3−メトキシブチル基、4−メトキシブチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシプロピル基等が挙げられる。
一方、芳香族基としては、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基を表し、中でも、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜11のアラルキル基が好ましい。具体的には、フェニル基、トルイル基、ベンジル基等が挙げられる。
【0026】
前記(3)のRは、H又は炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子を表すが、中でも、H又は炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子が好ましく、H又は炭素数1〜2の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子がより好ましい。例えば、炭素数1〜5のアルキル基、塩素、臭素を表し、より具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基等が挙げられる。
【0027】
前記(4)のR、Rは、H又は炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基を表すが、R、Rが表す脂肪族炭化水素基としては、中でも、H又は炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基が好ましい。例えば、炭素数1〜4のアルキル基を表し、より具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等が挙げられる。また、R、Rが表すアルキル基はアミノ基で置換されていてもよい。
【0028】
前記(5)のRは、炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基を表すが、Rが表す炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基としては、中でも、炭素数1〜2の脂肪族炭化水素基が好ましい。例えば、炭素数1〜4のアルキレン基を表し、より具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、等が挙げられる。
また、R、RはH又は炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基又は炭素数6〜10の芳香族炭化水素基を表すが、R、Rが表す脂肪族炭化水素基としては、中でも炭素数1〜2の脂肪族炭化水素基が好ましい。例えば、炭素数1〜4のアルキル基を表し、より具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等が挙げられる。炭素数6〜10の芳香族炭化水素基としては、具体的には、フェニル基、トルイル基、ベンジル基等が挙げられる。
【0029】
前記(7)のRは、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基を表すが、中でも、炭素数2〜4の脂肪族炭化水素基が好ましい。例えば、炭素数1〜5のアルキレン基を表し、より具体的には、メチレン基、エチレン基、プロパンジイル基、ブタンジイル基、ペンタンジイル基、等が挙げられる。
また、R、R、Rは炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基、炭素数1〜5のアルコキシ基を表すが、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基としては、中でも、炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基が好ましく、炭素数2〜3の脂肪族炭化水素基がより好ましい。例えば、炭素数1〜5のアルキル基を表し、より具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基等が挙げられる。炭素数1〜5のアルコキシ基としては、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などを表す。
【0030】
前記(1)〜(7)の中でも、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリロニトリルが好ましい。
なお、「(メタ)アクリル酸」の表記は、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を示す。
【0031】
また、本発明の製造方法において用いられるモノマー種としては、架橋性官能基を有するモノマーも好適に用いることができる。その例を以下に示すが、本発明は以下のものに限定されることはない。
【0032】
【化2】

【0033】
前記(8)、(9)中、Rは、炭素数1〜5の2価の脂肪族炭化水素基を示し、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基等が挙げられ、中でも、メチレン基が好ましい。
また、以上の(8)、(9)はアクリレート系の例示であるが、メタクリレート系のものも使用可能である。すなわち、(8)、(9)において、CH=CH−を、CH=C(CH)−に置き換えたものも使用可能である。
以上の(8)〜(10)においては、(メタ)アクリル酸グリシジルが好ましい。
【0034】
以上の(1)〜(10)のモノマー種のうちの1種として、(メタ)アクリロニトリルを用いることが好ましい。また、少なくとも1種として、架橋性官能基を有するモノマーを用いることが好ましい。具体的な組み合わせの例としては、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、及び(メタ)アクリロニトリル、アクリル酸メチル、アクリル酸プロピルなどを好適に挙げることができる。
【0035】
モノマーの配合量としては、(メタ)アクリロニトリルやアミノ基含有モノマーを除き、特に制限はなく自由に設定することができる。本発明においては、アクリロニトリルやアミノ基含有モノマーの配合量として、使用するモノマー種の全体量に対してモル分率で、10%以上が可能であり、20%以上が好ましく、30%以上がより好ましく、40%以上がさらに好ましく、上限は概ね60%である。
なお、ここでいうアミノ基含有モノマーとしては以下のモノマーなどが好適に使用される。また、以下のモノマー中のRは、−CH又は−Cを表す。
【0036】
【化3】

【0037】
[多官能開始剤]
本合成方法における多官能開始剤はハロゲン化合物であり、一般には、1分子中に3個以上のハロゲン原子を含む化合物が挙げられ、好ましくは、ハロゲン原子がBr又はClである化合物であり、さらに好ましくは、ハロゲン原子がBrである化合物であり、最も好ましくは、臭素化アルキルである。なお、多官能開始剤の官能数が星型共重合体の重合鎖の数となるため、合成しようとする星型共重合体の重合鎖の数を考慮し多官能開始剤を選択することが好ましい。
以下に、本発明において好適に用いられる多官能開始剤の具体例を官能数別に示すが、本発明は以下のものに限定されることはない。
【0038】
(3官能;R(Br)
【化4】


(Rは、グリセリン、又はフロログルシノール等が挙げられる。)
【0039】
(4官能;R(Br)
【化5】


(Rは、ペンタエリトリトール又はカリックスアレン[4]等が挙げられる。)
【0040】
(5官能;R(Br)
【化6】


(Rは、グルコース、フルクトース、グルコピラノース等が挙げられる。)
【0041】
(6官能;R(Br)
【化7】


(Rは、カリックスアレン[6]、又はグルシトール等が挙げられる。)
【0042】
なお、7官能以上の化合物は、1分子中に7個以上のOH基を有する化合物に、所定の酸ハロゲン化物を反応させることにより得ることができる。ここで、所定の酸ハロゲン化物としては、2−ブロモプロピオン酸クロライド、2−ブロモプロピオン酸ブロマイド、2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸クロライド、2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸ブロマイドが挙げられる。但し、ここに挙げた例は一例であり、これらに制限されるものではない。
【0043】
多官能開始剤の使用量としては、モノマーに対して、モル比で200:1〜20000:1であることが好ましい。
【0044】
[配位子]
本合成方法における配位子は、アミン化合物であり、1分子中に2個以上のN原子を有するアミン化合物を用いることが好ましい。そのようなアミン化合物としては、例えば、以下のものが挙げられる。
【0045】
【化8】


(Rは炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基を示し、R、Rは、H又は炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基を示す。)
【0046】
で表される炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基が挙げられる。また、R、Rで表される炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基が挙げられる。
【0047】
配位子の使用量としては、用いる金属に対し、モル比で0.5:1〜2:1であることが好ましい。
【0048】
[触媒]
本合成方法において用いられる触媒は、周期律表第7族〜11族元素の遷移金属であり、具体的には、マンガン、テクネチウム、レニウム、鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金、銅、銀、金が挙げられ、中でも、銅、ルテニウム、ニッケル、鉄が好ましく、銅が最も好ましい。特に、銅を使用すると、触媒活性が高く、高重合率、高分子量化を達成しやすい。
【0049】
触媒の使用量としては、開始剤に対し、モル比で1:0.5〜1:10であることが好ましい。
【0050】
[溶媒]
本合成方法において使用し得る溶媒としては、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ベンゼン、トルエン等の炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等のアルコール系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホリックアミド等のアミド系溶媒などが好適に使用することができる。これらは、単独又は組み合わせて使用してもよい。但し、ここに挙げた例は一例であり、これらに制限されるものではない。
【0051】
[その他の成分]
本発明の製造方法において用いられる他の成分としては、触媒活性を上げるためルイス酸(例えば、アルミニウムアルコキシド等)、又は無機塩(例えば、炭酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム等)、又は還元剤(例えば、2−エチルヘキサン酸すず等)を添加することも可能である。
【0052】
[原子移動ラジカル重合]
本合成方法において採用される原子移動ラジカル重合は、開始剤としてハロゲン化合物等を、触媒として遷移金属を用い、アクリル系などのモノマーを重合する重合法であり、ラジカル重合でありながら停止反応等の副反応が起こりにくく分子量分布の狭い重合体(Mw/Mn=1.1〜2.2)が得られるとともに、モノマーと開始剤の仕込み比によって、製造しようとする重合体の分子量を自由に制御し得るという「リビングラジカル重合法」の特徴に加えて、官能基変換反応に比較的有利なハロゲンを末端に有し、開始剤や触媒の設計の自由度が大きいことから、特定の官能基を有する重合体の製造方法として有用である。この原子移動ラジカル重合法としては、例えば、マクロモレキュールズ(Macromolecules)1995年、28巻、1721頁、7901頁,Matyjaszewskiら、ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカルソサエティー(J.Am.Chem.Soc.)1995年、117巻、5614頁、サイエンス(Science)1996年、272巻、866頁、国際公開第96/30421号パンフレット,国際公開第97/18247号パンフレット、国際公開第98/01480号パンフレット,国際公開第98/40415号パンフレット、特開平9−208616号公報、特開平8−41117号公報等に記載されている。
【0053】
次に、本発明の星型共重合体の製造方法における、星型共重合体の合成の手順について説明する。
まず、本合成方法におてる合成のために用意した容器内に触媒を秤取して、容器内を減圧、窒素雰囲気下とし、各モノマー種と、配位子と、溶媒とを加える。次いで、窒素によりバブリングし、脱酸素を図る。再度窒素雰囲気下とし、別途調製した開始剤溶液を加え、重合を進行させる。このときの温度は10〜100℃程度で、最後に、反応溶液を精製し、目的とする星型共重合体を得る。
【0054】
本合成方法において、上記重合においては、酸素、水分の除去が重要である。また、重合反応を潤滑に進行させるため、モノマー、開始剤、配位子、金属、溶媒の純度を上げることが重要である。
【0055】
[エポキシ樹脂]
本発明のダイボンドフィルムは、硬化性成分としてエポキシ樹脂を含有する。エポキシ樹脂は、硬化して接着作用を有するものであれば特に限定されない。ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂などの二官能エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂やクレゾールノボラック型エポキシ樹脂などのノボラック型エポキシ樹脂などを使用することができる。また、多官能エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、複素環含有エポキシ樹脂または脂環式エポキシ樹脂など、一般に知られているものを適用することができる。
【0056】
特にBステージ状態でのフィルムの可撓性が高い点でエポキシ樹脂の分子量が1000以下であることが好ましく、さらに好ましくは500以下である。
また、可撓性に優れる分子量500以下のビスフェノールA型又はビスフェノールF型エポキシ樹脂50〜90重量部と、硬化物の耐熱性に優れる分子量が800〜3000の多官能エポキシ樹脂10〜50重量%とを併用することも好ましい。
【0057】
[硬化剤]
エポキシ樹脂の硬化剤としては、通常用いられている公知の硬化剤を使用することができ、例えば、アミン類、ポリアミド、酸無水物、ポリスルフィド、三フッ化ホウ素、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSのようなフェノール性水酸基を1分子中に2個以上有するビスフェノール類、フェノールノボラック樹脂、キシリレン変性フェノール樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂又はクレゾールノボラック樹脂等のフェノール樹脂などが挙げられる。
【0058】
一方、本発明においては、ダイボンドフィルム作製前におけるワニスの状態での相溶性が悪化する場合には、エポキシ樹脂の硬化剤を所定のものに変更することで改善することができる。当該所定の硬化剤としては、軟化温度が150℃以下(好ましくは140℃以下、より好ましくは130℃以下である。)であるものが挙げられる。具体的には、フェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、トリフェノールメタン樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂等 が挙げられ、中でも、フェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂が好ましい。
硬化剤の含有量としては、全エポキシ樹脂のエポキシ基数と全硬化剤の水酸基数の当量比としては0.5〜2で配合することが好ましい。
【0059】
[フィラー]
さらに、本発明のダイボンドフィルムには、Bステージ状態における接着シートのダイシング性の向上、接着シートの取扱い性の向上、熱伝導性の向上、溶融粘度の調整、チクソトロピック性の付与などを目的として、好ましくはフィラー、より好ましくは無機フィラーを配合することが好ましい。
【0060】
無機フィラーとしては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、アルミナ、窒化アルミニウム、ほう酸アルミウイスカ、窒化ホウ素、結晶性シリカ、非晶性シリカ、アンチモン酸化物などが挙げられる。熱伝導性向上のためには、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、結晶性シリカ、非晶性シリカ等が好ましい。溶融粘度の調整やチクソトロピック性の付与の目的には、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、アルミナ、結晶性シリカ、非晶性シリカ等が好ましい。また、ダイシング性を向上させるためにはアルミナ、シリカが好ましい。
【0061】
本発明において、上記フィラーを樹脂100重量部に対して、40〜180重量部含むことが、ダイシング性が向上する点、および接着シート硬化後の貯蔵弾性率が170℃で20〜600MPaになり、ワイヤボンディング性が良好となる点で好ましく、60〜160重量部であることがより好ましく、60〜120重量部であることがさらに好ましい。
【0062】
[各成分の含有量]
本発明のダイボンドフィルムにおいて、前記各成分の含有量は、前記共重合体は10〜40重量部であり、前記エポキシ樹脂及び硬化剤は30〜45重量部であり、前記フィラーは、前記共重合体と前記エポキシ樹脂と前記硬化剤との合計100重量部に対して、40〜180重量部であることが好ましい。各成分の含有量を上記数値範囲とすることで、凹凸を埋込み、かつ半導体チップとの絶縁性を確保することが可能となる。
また、各成分の含有量は、好ましくは、前記共重合体は12〜35重量部であり、前記エポキシ樹脂及び硬化剤は33〜42重量部であり、前記フィラーは、前記共重合体と前記エポキシ樹脂と前記硬化剤との合計100重量部に対して、60〜160重量部であり、より好ましくは、前記共重合体は15〜30重量部であり、前記エポキシ樹脂及び硬化剤は35〜40重量部であり、前記フィラーは、前記共重合体と前記エポキシ樹脂と前記硬化剤との合計100重量部に対して、60〜120重量部である。
【0063】
[その他の成分]
本発明のダイボンドフィルムには、その他の成分として、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、硬化促進剤、レベリング剤、酸化防止剤、イオントラップ剤などを含んでいてもよい。
【0064】
<ダイボンドフィルムの作製>
次に、本発明のダイボンドフィルムを作製する各工程について説明する。以下に示す工程は一例であり、本発明のダイボンドフィルムは以下の工程に限定されるものではない。
(1)ワニスの調製
前記高分子量成分、エポキシ樹脂を主成分とする熱硬化性成分、フィラー、及び他の成分を有機溶媒中で混合、混練してワニスを調製する。ワニスの調製に用いる有機溶媒は、材料を均一に溶解、混練又は分散できるものであれば制限はなく、従来公知のものを使用することができる。このような溶剤としては、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N―メチルピロリドン、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、トルエン、キシレン等が挙げられる。乾燥速度が速く、価格が安い点でメチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどを使用することが好ましい。
【0065】
ワニスの調製に用いる際の有機溶媒の使用量には特に制限はなく、有機溶媒は加熱乾燥などによりダイボンドフィルムから除去されるものであるが、ダイボンドフィルム作製後の有機溶媒量(残存揮発分)は全重量基準で0.01〜3重量%が好ましく、耐熱信頼性の観点からは全重量基準で0.01〜2重量%がより好ましく、全重量基準で0.01〜1.5重量%がさらに好ましい。
【0066】
上記の混合、混練は、通常の撹拌機、らいかい機、三本ロール、ボールミル等の分散機を適宜、組み合わせて行うことができる。
【0067】
(2)基材への塗工
上記(1)で得られたワニスを基材上に塗工し、ワニスの層を形成する。基材としては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリイミドフィルム、ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリエーテルナフタレートフィルム、メチルペンテンフィルムなどを用いることができる。塗工には、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリイミドフィルム等を用いることができ、塗工厚みは、最終的なダイボンドフィルムの厚さを考慮して決定されるが、10〜250μmとすることが好ましい。
【0068】
(3)加熱乾燥
上記(2)で得られた、ワニスを塗工した基材を加熱乾燥する。加熱乾燥の条件は、使用した溶媒が充分に揮散する条件であれば特に制限はないが、通常60℃〜200℃で、0.1〜90分間加熱して行う。
加熱乾燥後、基材を除去してダイボンドフィルム(Bステージフィルム)得ることができる。
【0069】
ダイボンドフィルムの厚さは、基板の配線回路や下層の半導体チップに付設された金ワイヤ等の凹凸を充てん可能とするため、5〜250μmとすることが好ましい。5μmより薄いと応力緩和効果や接着性が乏しくなる傾向があり、250μmより厚いと経済的でなくなる上に、半導体装置の小型化の要求に応えられない。なお、接着性が高く、また、半導体装置を薄型化できる点で20〜100μmがより好ましく、さらに好ましくは40〜80μmである。
【0070】
本発明のダイボンドフィルムは、加熱圧着により基板などとチップとを接着し、ダイボンドフィルムで基板表面の凹凸や中空ワイヤを充てんできるような溶融粘度を有することが必要であり、硬化前(Bステージ状態)の接着シートの100℃における溶融粘度は100Pa・s以上2500Pa・s以下であることが、基板表面の凹凸や中空ワイヤの充てん性が優れる点から好ましく、さらに200〜1500Pa・sであることが好ましく、300〜1300Pa・sであることがより好ましい。
【0071】
本発明において、溶融粘度は、後述する回転式粘弾性測定装置により硬化前のダイボンドフィルムについて測定、算出して得ることができる。
【0072】
本発明のダイボンドフィルムは、前述のように、硬化前(Bステージ状態)のタック強度は、25℃において78.4〜294mN(8〜30gf)、40℃において392〜784mN(40〜80gf)であることが好ましいが、さらに、60℃においては、588〜2940mN(60〜300gf)、80℃においても、588〜2940mN(60〜300gf)であることが室温でべたつきが少なく加工性に優れるとともに、60℃以上でべたつきがありラミネート加工性に優れるという点で好ましいものである。
【0073】
本発明のダイボンドフィルムは加工性向上のため、特定の貯蔵弾性率を有することが必要であり、本発明においては、硬化前(Bステージ状態)の接着シートの25℃における動的粘弾性測定による貯蔵弾性率が200〜3000MPaであると、ダイシング性が優れる点で好ましい。ダイシング性に優れ、かつウエハとの密着性が優れる点で500〜2000MPaがより好ましい。また、硬化前(Bステージ状態)の接着シートの80℃における動的粘弾性測定による貯蔵弾性率が0.1〜10MPaであると、80℃でウエハにラミネート可能である。特にウエハへの密着性が高い点で、0.5〜5MPaであるとことがより好ましい。
【0074】
さらに、本発明のダイボンドフィルムにおいて、硬化後(Cステージ状態)のダイボンドフィルムの260℃における動的粘弾性測定による貯蔵弾性率は、良好なワイヤボンディング性を得るために5〜200MPaであることが好ましい。貯蔵弾性率は、より好ましくは10〜150MPa、さらに好ましくは20〜100MPaである。
【0075】
本発明のダイボンドフィルムは単層として用いるばかりでなく、多層構造として用いてもよく、例えば、上述したダイボンドフィルムを2枚以上ラミネートしたもの、あるいは、本発明のダイボンドフィルムとそれ以外のダイボンドフィルムを複数ラミネートしたものとして用いてもよい。本発明のダイボンドフィルムとそれ以外のダイボンドフィルムをラミネートする場合には、本発明のダイボンドフィルムはダイシングテープ側にすることが好ましい。
【実施例】
【0076】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0077】
[実施例1]
まず、星型アクリルゴムの合成に必要な配位子及び3官能開始剤を以下のようにして合成した。
(配位子の合成)
三方コックを備えたジムロートとセプタムラバとを50ml二口ナスフラスコに装着し、N雰囲気下にした後、蟻酸25.0ml(521.4mmol)を秤取した。0℃に冷却した後、ホルムアルデヒド10.0ml(123.2mmol)を加え、そのまま0℃の状態で1時間攪拌した。この反応液に、トリス(2−アミノエチル)アミン 1.5ml(10.0mmol)を蒸留水5mlに溶解させた水溶液を約10分かけて滴下した。その後、反応液を室温に戻し、窒素気流下とした。次に95℃に設定したオイルバスにこの反応器を設置し緩やかに10時間還流した。次いで、室温に戻し、溶媒をエバポレータにて除去した後、残渣を飽和NaOH水溶液で処理した。有機層を抽出した後、硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下溶媒を留去し、薄黄色液体のヘキサメチル化トリス(2−アミノエチル)アミン(以下、MeTRENと称す)1.9g(収率86%)を得た。構造はH、13C−NMRより確認した。
【0078】
(3官能開始剤の合成)
三方コック、セプタムラバを備えた100ml二口ナスフラスコにフロログルシノール1.00g(7.93mmol)を秤取した。N雰囲気にした後、脱水テトラヒドロフラン(以下、THFと称す)40.0mlを加えた。さらに、トリエチルアミン(以下、EtNと称す)3.9ml(27.8mmol)を加え、0℃に冷却した。次いで、2−ブロモプロピオン酸クロリド2.8ml(27.8mmol)をゆっくりと滴下した後、室温に戻し2時間反応を進行させた。反応追跡はTLC(薄層クロマトグラフィー)を用いて行い、原料のスポットが消失したとき、反応終了とみなした。反応終了後、ろ過し溶液中の塩酸塩を取り除き、溶媒をエバポレータにて留去した。残渣をMeOHにより再結晶することで白色固体の生成物2.4g(収率57%)で得た。構造はH、13C−NMRより確認した。
【0079】
(星型アクリルゴムの合成)
三方コック、セプタムラバを100ml二口フラスコに装着し、Cu(0) 9.5mg(0.15mmol)、CuBr 3.4mg(0.015mmol)を秤取した。反応容器内をN雰囲気とし、アクリル酸ブチル(BA) 9.9g(77.64mmol)、アクリル酸エチル(EA) 7.4g(73.98mmol)、メタクリル酸グリシジル(GMA) 0.8g(5.43mmol)、アクリロニトリル(AN) 7.6g(142.95mmol)、脱水DMSO(ジメチルスルホキシド) 29.4ml、MeTREN 34.6mg(0.15mmol)の順に加えた。更に、上記のように合成した3官能開始剤106.2mgを脱水DMSO 4.0mlに溶解させた溶液3.0mlを加えた。反応系内をNフロー(400ml/min×15min)により脱酸素した後、設定温度30℃のオイルバスに反応容器を設置し、25時間反応を進行させた。反応終了後、MEK 30mlを加え、系内の粘度を落としメンブランフィルター(PTFE、0.2μm)を用いてろ過した。ろ液をMeOH 600mlで再沈殿した後、40℃で減圧乾燥することで薄黄白色ゴム状の生成物13.6g(収率53%)で得た。
合成した星型アクリルゴムの重量平均分子量は20万であった。また、ガラス転移点Tgは44℃であった。なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により得られた値である。
【0080】
次に、得られた星型アクリルゴムを用いて、以下の通りワニスを調製した。
〈ワニスの調製〉
上記のように合成した星型アクリルゴム17.9g、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(東都化成(株)製、YDF−8170C)29.0g、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(東都化成(株)製、YDCN−703)9.7g、フェノールノボラック樹脂(大日本インキ化学工業(株)製、LF−4871)27.4g、シリカフィラ(アドマファイン(株)製、SO-C2)40.8g、硬化促進剤(四国化成工業(株)製、2PZ-CN)0.1g、カップリング剤(日本ユニカー(株)製、A-189)0.3gおよび(日本ユニカー(株)製、A-1160)0.5gからなる組成物に、シクロヘキサノンを加えて、攪拌脱泡し、ワニスを調製した。なお、フェノール硬化剤の軟化温度は130℃である。
【0081】
〈ダイボンドフィルムの塗工〉
アプリケータ自動塗工機(テスター産業(株)製)を用いて、PET基材(帝人デュポン(株)製 A53)上に調製したワニスを塗布し、ギャップを調整したアプリケータで塗工した。得られたフィルムを、オーブン中120℃/20minの条件で加熱乾燥した。その後、PET基材を引き剥がすことで、膜厚40μmのBステージフィルムを得た。
【0082】
〈ダイボンドフィルムの後硬化〉
得られたフィルムをオーブン中で120℃/30min、140℃/1h、175℃/2hの条件で加熱硬化することでCステージフィルムとした。
【0083】
[実施例2]
実施例1の「ワニスの調製」において、硬化剤をLF−4871から、キシレン変性ノボラック(三井化学製、XLC−LL、軟化温度:76.5℃)33.8gに変更してワニスを調製したこと以外は実施例1と同様にしてダイボンドフィルムを作製した。
【0084】
[実施例3]
実施例1の「ワニスの調製」において、硬化剤をLF−4871に代え、LF−4871を8.0g、及び実施例2で用いたXLC−LLを24.0g、すなわち、LF−4871とXLC−LLとを1:3の割合で用いてワニスを調製したこと以外は実施例1と同様にしてダイボンドフィルムを作製した。
【0085】
[実施例4]
実施例1の「ワニスの調製」において、硬化剤をLF−4871に代え、LF−4871を15.1g、及び実施例2で用いたXLC−LLを15.1g、すなわち、LF−4871とXLC−LLとを1:1の割合で用いてワニスを調製したこと以外は実施例1と同様にしてダイボンドフィルムを作製した。
【0086】
[実施例5]
実施例1の「ワニスの調製」において、硬化剤をLF−4871に代え、LF−4871を21.6g、及び実施例2で用いたXLC−LLを7.2g、すなわち、LF−4871とXLC−LLとを3:1の割合で用いてワニスを調製したこと以外は実施例1と同様にしてダイボンドフィルムを作製した。
【0087】
[比較例1]
実施例1の「ワニスの調製」において、星型アクリルゴム17.9gに代え、直鎖状のアクリルゴム(ナガセケムテックス(株)製、HTR−860P−3、重量平均分子量:80万)17.9gを用いてワニスを調製したこと以外は実施例1と同様にしてダイボンドフィルムを作製した。なお、「HTR−860P−3」の重量平均分子量は、GPCによる分子量である。
【0088】
[比較例2]
実施例1の「ワニスの調製」において、星型アクリルゴム17.9gに代え、直鎖状のアクリルゴム(ナガセケムッテクス(株)製、HTR−860P−3(分子量低減品) 、重量平均分子量:20万)17.9gを用いてワニスを調製したこと以外は実施例1と同様にしてダイボンドフィルムを作製した。
【0089】
[比較例3]
実施例1の「ワニスの調製」において、星型アクリルゴム17.9gに代え、直鎖状のアクリルゴム(ナガセケムッテクス(株)製、HTR−860P−3、重量平均分子量:80万)17.9gを用い、硬化剤をLF−4871から、キシレン変性ノボラック(三井化学製、XLC−LL、軟化温度:76.5℃)33.8gに変更してワニスを調製したこと以外は実施例1と同様にしてダイボンドフィルムを作製した。
【0090】
[比較例4]
実施例1の「ワニスの調製」において、星型アクリルゴム17.9gに代え、直鎖状のアクリルゴム(ナガセケムッテクス(株)製、HTR−860P−3、重量平均分子量:20万)17.9gを用い、硬化剤をLF−4871から、キシレン変性ノボラック(三井化学製、XLC−LL、軟化温度:76.5℃)33.8gに変更してワニスを調製したこと以外は実施例1と同様にしてダイボンドフィルムを作製した。
【0091】
[評価]
上記より得られた実施例、比較例のダイボンドフィルムの各々について、以下の評価を行った。
【0092】
(1)タック力の測定
タック力は、JIS Z0237-1991に準じたプローブタック試験で評価した。レスカ製タックテスタを用い、プローブ径:φ5.1mm、接触速さ:2mm/sec、引き剥がし速さ10mm/secの条件で引き剥がし強度を測定し、タック力とした。接触条件は、接触荷重:0.98N/cm、接触時間:1sec、測定温度:40℃を標準とした。
【0093】
(2)溶融粘度測定
未硬化のフィルムを60℃でラミネートすることで膜厚を200μm以上とし、φ26.0mmの円状に切り抜いた後、回転式粘弾性測定装置(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製 ARES−RDA)を用いて下記の条件で溶融粘度と温度依存性を測定した。
昇温速度:5℃/min、周波数:1Hz、測定温度:30〜200℃、歪み:5.0%
【0094】
(3)ピール強度測定
Bステージのダイボンドフィルムを5.0mm×5.0mmの打ち抜き型を用いて打ち抜き、ハーフカットしたチップに40℃でラミネートし、熱圧着試験機(日立化成テクノプラント(株)製)を用いて基板に熱圧着した。その後、加熱硬化した。さらにその後、260℃の熱板に15秒放置後、接着力試験機(日立化成テクノプラント(株)製)を用いてピール強度を測定した。使用部材、測定条件を下記に示す。
チップサイズ:5.0mm×5.0mm×280μmt
基板:20mm×10mm×100μmt
ソルダレジスト:AUS 308
熱圧着条件:120℃/0.5kg/3s
ピール強度測定速度:0.5mm/sec
【0095】
(4)ダイシェア強度測定
Bステージのダイボンドフィルムを6.5mm×6.5mmの打ち抜き型を用いて打ち抜き、チップに40℃でラミネートし、熱圧着試験機(日立化成テクノプラント(株)製)を用いて基板に熱圧着した。その後、加熱硬化した。さらにその後、260℃の熱板に30秒放置後、万能ボンドテスタ(Dage 社製 シリーズ4000)を用いてダイシェア強度を測定した。
チップサイズ:6.5mm×6.5mm×280μmt
基板:20mm×10mm×100μmt
ソルダレジスト:AUS308
熱圧着条件:120℃/0.5kg/3s
ダイシェア強度測定速度:50μm/sec
【0096】
(5)粘弾性測定(260℃弾性率)
粘弾性アナライザー(レオメトリック製 RSA-2)を用いて、下記の条件でCステージダイボンドフィルムの貯蔵弾性率、tanδの温度依存を測定した。
昇温速度:5℃/min、周波数:1Hz、測定温度:−50〜300℃
【0097】
(6)はんだ耐熱温度評価方法
BステージフィルムをUBE POLYIMIDE FILM UPILEX 50Sで両面ラミネートし、加熱硬化した。その後、高温高湿槽にて85℃/85%RH/48hの条件で吸湿させた。吸湿後、1cm角に切り抜いたサンプルを所定の温度に設定したホットプレート上に置き、発泡を目視にて以下の評価基準に従い評価した。
−評価基準−
所定の温度に設定したホットプレート上にサンプルを置き、1min以上発泡が観測されなかったものをOK、1min以内に発泡が観測されたものをNGとし、それぞれのフィルムについて計5サンプル評価した。
○:5サンプル全てがOKであったフィルム
△:5サンプル中1つでもNGであったフィルム
×:5サンプル全てがNGであったフィルム
【0098】
以上の評価結果を表1〜表3に示す。表1は、実施例1及び6並びに比較例1及び2とを対比した表であり、星型アクリルゴムの有無とその配合量による性能の差異を示す。表2は、実施例2と、比較例1〜4とを対比した表であり、星型アクリルゴムの有無、及び硬化剤の変更に伴う性能の差異を示す。表3は、実施例2〜5と、比較例1とを対比した表であり、硬化剤を単独使用の場合、及び2種を併用した場合の性能の差異を示す。
【0099】
【表1】

【0100】
【表2】

【0101】
【表3】

【0102】
表1より、実施例1のダイボンドフィルムはBステージにおける120℃溶融粘度は、低分子量のアクリルゴムを用いた比較例2のダイボンドフィルムの1/3強の結果が得られ、星型アクリルゴムが流動性の向上に寄与していることが分かる。また、はんだ耐熱温度の評価も良好であり、星型アクリルゴムが高信頼性に寄与していることを示している。
また、表2、表3より、軟化温度が150℃以下の硬化剤を使用した実施例2は、高流動性をハイレベルで維持しながらも、信頼性において比較例と同等の性能を示し、星型アクリルゴム使用による相溶性の問題が改善されたことが分かる。さらに、前記硬化剤とそれ以外の硬化剤とを併用しても、高信頼性を維持できることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】CSPの一実施態様を示す断面図である。
【図2】スタックドCSPの一実施態様を示す断面図である。
【符号の説明】
【0104】
A1 半導体チップ
b1 接着剤
2 ワイヤ
3 基板
4 配線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも3つの重合鎖が放射状に伸びる星型構造を有する共重合体と、エポキシ樹脂と、硬化剤と、フィラーとを含有するダイボンドフィルムであって、
前記共重合体のガラス転移点が60℃以下であることを特徴とするダイボンドフィルム。
【請求項2】
前記共重合体を10〜40重量部含み、前記エポキシ樹脂及び硬化剤を30〜45重量部含み、前記共重合体と前記エポキシ樹脂と前記硬化剤との合計100重量部に対して、前記フィラーを40〜180重量部含むことを特徴とする請求項1に記載のダイボンドフィルム。
【請求項3】
前記共重合体がアクリルゴムであることを特徴とする請求項1または2に記載のダイボンドフィルム。
【請求項4】
前記共重合体の重量平均分子量が30000〜1000000であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のダイボンドフィルム。
【請求項5】
前記共重合体における各重合鎖の重量平均分子量が10000〜300000であることを特徴とする請求項4に記載のダイボンドフィルム。
【請求項6】
前記硬化剤の軟化温度が150℃以下であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のダイボンドフィルム。
【請求項7】
前記硬化剤の少なくとも1種がフェノール系ノボラックであることを特徴とする請求項6に記載のダイボンドフィルム。
【請求項8】
さらに、カップリング剤を含有することを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載のダイボンドフィルム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−231469(P2009−231469A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−73903(P2008−73903)
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】